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2024-27450基地局、移動通信体、通信方法及び通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027450
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】基地局、移動通信体、通信方法及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 11/00 20060101AFI20240222BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240222BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20240222BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20240222BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H04B11/00 D
H04W72/04 132
H04W72/08
B63C11/00 C
B63C11/00 B
B63C11/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130246
(22)【出願日】2022-08-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】片岡 雅法
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ31
5K067KK01
(57)【要約】
【課題】海中等の水中の広い範囲において大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行う。
【解決手段】基地局は、水中を移動可能な移動通信体との間で通信に係る信号の送受信を行う第1アンテナと、信号に基づく移動通信体との間の通信状況を取得する取得部と、通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように移動通信体との間の通信モードを決定する決定部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動可能な移動通信体との間で通信に係る信号の送受信を行う第1アンテナと、
前記信号に基づく前記移動通信体との間の通信状況を取得する取得部と、
前記通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記移動通信体との間の通信モードを決定する決定部と、を備える、
基地局。
【請求項2】
前記信号は、前記通信状況を確認するための制御信号である、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記通信状況は、前記基地局から前記移動通信体に送信された信号の受信レベルである、
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記決定部は、前記受信レベルと予め設定された閾値との比較に基づいて前記通信モードを決定する、
請求項3に記載の基地局。
【請求項5】
前記通信状況は、前記移動通信体から前記基地局に送信された信号の受信レベルである、
請求項1に記載の基地局。
【請求項6】
前記第1アンテナは、前記制御信号を所定時間ごとに前記移動通信体に送る、
請求項2に記載の基地局。
【請求項7】
前記決定部は、前記通信状況を示すパラメータ値の変化値が前記通信モードにおいて許容される第1許容閾値以上である場合に、前記制御信号を前記第1アンテナから送信すると決定する、
請求項2に記載の基地局。
【請求項8】
前記決定部は、前記通信状況を示すCINR(Carrier To interference and Noise Ratio)の変化値が前記通信モードにおいて許容される第2許容閾値以上である場合に、前記制御信号を前記第1アンテナから送信すると決定する、
請求項2に記載の基地局。
【請求項9】
前記決定部は、(n-1)回目(n:2以上の整数)の前記制御信号の送信タイミングから所定時間が経過した場合に、n回目の前記制御信号を前記第1アンテナから送信すると決定する、
請求項2に記載の基地局。
【請求項10】
水中又は地上に配置された基地局との間で通信に係る信号の送受信を行う第2アンテナと、
前記基地局から送信された信号を前記第2アンテナを介して受信する信号受信部と、
前記信号受信部により受信された前記信号の受信レベルを測定する測定部と、
前記受信レベルに基づく前記基地局からの指示に従って、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記基地局との間の通信モードを変更する制御部と、を備える、
移動通信体。
【請求項11】
前記信号は、前記基地局との間の通信状況を確認するための制御信号である、
請求項10に記載の移動通信体。
【請求項12】
前記通信モードは、前記使用周波数の帯域を定義する、
請求項10に記載の移動通信体。
【請求項13】
水中又は地上に配置された基地局と、前記水中を移動可能な移動通信体と、を備え、
前記基地局は、
前記移動通信体との間で通信に係る信号の送受信を行う第1アンテナと、
前記信号に基づく前記移動通信体との間の通信状況を取得する取得部と、
前記通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記移動通信体との間の通信モードを決定する決定部と、を備え、
前記移動通信体は、
前記基地局との間で通信に係る信号の送受信を行う第2アンテナと、
前記基地局から送信された信号を前記第2アンテナを介して受信する信号受信部と、
前記信号受信部により受信された前記信号に基づく前記基地局による決定に従って、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記基地局との間の通信モードを変更する制御部と、を備える、
通信システム。
【請求項14】
水中又は地上に配置された基地局が前記水中を移動可能な移動通信体との間の通信状況を確認するための制御信号を送信するステップと、
前記移動通信体により測定された前記制御信号の受信レベルを前記基地局に送信するステップと、
前記基地局が前記受信レベルに基づいて前記移動通信体との通信の通信モードを決定するステップと、
前記基地局及び前記移動通信体において、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記通信モードを変更するステップと、を有する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、海中等の水中での通信を行う基地局、移動通信体、通信方法及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中(例えば海中)において基地局と端末との間で通信を行う通信技術が知られている。例えば、海中等の水中では音波を利用した通信が主流である。しかし、海中等の水中において、音波による通信は沿岸での乱反射、通信速度が遅い等の理由から、データ量の大きなデータ通信を行うことが困難である。一方で、大容量のデータ通信を高速に行うことが可能な光通信を海中等の水中において利用しようとすると、海中等の水中特有の濁り等によって光の直進性が保たれにくくデータ通信の実現が困難であると言われている。そこで、大容量かつ高速でのデータ通信を可能とするために、海中等の水中において電磁波を用いた無線通信を実現するための開発が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、通信方式が異なる複数の通信部を有し、深度が浅い領域では複数の通信部のうち電波を使用する通信部を選択し、深度が深い領域では複数の通信部のうち音波を使用する通信部を選択し、選択した通信部を用いて水中で無線通信する、水中移動体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-61159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、海洋探査等において探査を行う水中航走体(移動通信体の一例)が海中に投入され、水中航走体が取得したデータを無線通信によって水上艇(通信装置の一例)等に送信することにより、海洋探査におけるデータ収集の効率化が図られている。特に、水中航走体を用いた海洋探査では探査領域が広域に広がることが少なくなく、より広範囲でデータ通信を行うことが望まれている。
【0006】
ここで、海水の導電率は大きく、海水の電磁波の減衰量は例えば1MHzで38.6dB/m、10MHzで121dB/m、100MHzで369dB/mと非常に大きい。このため、海中での電磁波を用いた無線通信の実用化の障壁が高い。例えば海中でも数m(メートル)程度の無線通信であればコイルによる結合器とウェーブレットOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術とを用いることで実現可能であるが、例えば数百m(メートル)から数千m(メートル)の無線通信を行うことは実用上難しいという課題がある。
【0007】
上述した特許文献1の構成では、水中移動体の深度に応じて無線通信として電波を使用するか、或いは音波を使用するかの切り換えが行われている。このため、例えば深度が深い場合には一律に音波を使用するため、水中移動体のデータ通信を高速に行うことが困難となる。
【0008】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、海中等の水中の広い範囲において大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行う基地局、移動通信体、通信方法及び通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、水中を移動可能な移動通信体との間で通信に係る信号の送受信を行う第1アンテナと、前記信号に基づく前記移動通信体との間の通信状況を取得する取得部と、前記通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記移動通信体との間の通信モードを決定する決定部と、を備える、基地局を提供する。
【0010】
また、本開示は、水中又は地上に配置された基地局との間で通信に係る信号の送受信を行う第2アンテナと、前記基地局から送信された信号を前記第2アンテナを介して受信する信号受信部と、前記信号受信部により受信された前記信号の受信レベルを測定する測定部と、前記受信レベルに基づく前記基地局からの指示に従って、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記基地局との間の通信モードを変更する制御部と、を備える、移動通信体を提供する。
【0011】
また、本開示は、水中又は地上に配置された基地局と、前記水中を移動可能な移動通信体と、を備え、前記基地局は、前記移動通信体との間で通信に係る信号の送受信を行う第1アンテナと、前記信号に基づく前記移動通信体との間の通信状況を取得する取得部と、前記通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記移動通信体との間の通信モードを決定する決定部と、を備え、前記移動通信体は、前記基地局との間で通信に係る信号の送受信を行う第2アンテナと、前記基地局から送信された信号を前記第2アンテナを介して受信する信号受信部と、前記信号受信部により受信された前記信号に基づく前記基地局による決定に従って、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記基地局との間の通信モードを変更する制御部と、を備える、通信システムを提供する。
【0012】
また、本開示は、水中又は地上に配置された基地局が前記水中を移動可能な移動通信体との間の通信状況を確認するための制御信号を送信するステップと、前記移動通信体により測定された前記制御信号の受信レベルを前記基地局に送信するステップと、前記基地局が前記受信レベルに基づいて前記移動通信体との通信の通信モードを決定するステップと、前記基地局及び前記移動通信体において、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように前記通信モードを変更するステップと、を有する、通信方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、海中等の水中の広い範囲において大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る通信システムの使用環境例を模式的に示す図
図2】通信システムを構成するマスタ及びターミナル間の無線通信の動作概要例を模式的に示す図
図3】マスタ側の通信設備及びターミナル側の通信設備が備えるPLCアダプタのハードウェア構成例を示すブロック図
図4】マスタ側のPLCアダプタのCPUの機能的構成例を示すブロック図
図5】ターミナル側のPLCアダプタのCPUの機能的構成例を示すブロック図
図6】長距離通信モードと近距離高速通信モードとの間の切り換えを模式的に示す図
図7】本実施の形態に係る通信システムの全体的な動作手順例を示すシーケンス図
図8図7のステップSt3、St4、St13、St14の動作手順の詳細を示すシーケンス図
図9図8のステップSt41の動作手順の詳細を示すフローチャート
図10図8のステップSt34の動作手順の詳細を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る基地局、移動通信体、通信方法及び通信システムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
以下の実施の形態(「本実施の形態」と称する)では、水中として海中を例示し、海中において電磁波(電波)を使用して基地局と移動通信体との間で無線通信を行うユースケースを説明する。
【0017】
(システム構成)
まず、図1を参照し、本実施の形態に係る通信システム100の使用環境例を説明する。図1は、本実施の形態に係る通信システム100の使用環境例を模式的に示す図である。図2は、通信システム100を構成するマスタ及びターミナル間の無線通信の動作概要例を模式的に示す図である。通信システム100は、海中での無線通信が可能となるように配置される(図1参照)。具体的には、通信システム100は、マスタに相当する通信設備M1として水上艇SH1、陸上基地局SA1(ともに基地局の一例)と、ターミナルに相当する通信設備T1として水中ドローンMD1、無人潜水機AV1(ともに移動通信体の一例)とを含む。それぞれの通信設備M1、T1は、伝送コイルとPLC(Power Line Communication)アダプタとを含む(図2参照)。例えば、水上艇SH1の通信設備M1は伝送コイルCL1(アンテナAnt1)及びPLCアダプタ10を備え、陸上基地局SA1の通信設備M1は伝送コイルCL1(アンテナAnt2)及びPLCアダプタ10を備える。例えば、水中ドローンMD1の通信設備T1は伝送コイルCL2(アンテナAnt3)及びPLCアダプタ20を備え、無人潜水機AV1の通信設備T1は伝送コイルCL2(アンテナAnt4)及びPLCアダプタ20を備える。
【0018】
伝送コイルCL1、CL2のそれぞれは、例えば環状に形成され、全体が樹脂製カバーにより被覆されることで海水から絶縁され、磁界結合方式(言い換えると、電磁誘導方式)により磁界結合された他の伝送コイルとの間で電力伝送だけでなくデータ通信を行う。伝送コイルCL1、CL2のそれぞれは、例えばキャブタイヤケーブル、ヘリカルコイル、或いはスパイラルコイルにより形成される。ヘリカルコイルは、同一平面内ではなく、磁界結合方式による電力伝送方向に沿って、螺旋状に巻回された環状コイルである。ヘリカルコイルの採用により、巻回された伝送コイルCL1、CL2のそれぞれの内部空間を広く確保できる。スパイラルコイルは、同一平面内においてスパイラル形状に形成された環状コイルである。スパイラルコイルの採用により、伝送コイルCL1、CL2のそれぞれの薄型化が可能となる。なお、図1ではスパイラルコイルの採用例が図示されている。
【0019】
また、伝送コイルCL1、CL2のそれぞれは、円形状の開口面を有し、それぞれの開口面が互いに鉛直上方を向くように海中に配置される。ここで、鉛直上方とは、ほぼ扁平とみなすことが可能な海底面SE1に対してほぼ垂直な鉛直方向の上方向に存在する海面に向かう方向を示している。
【0020】
伝送コイルCL1、CL2が海中における無線通信に使用する使用周波数の帯域は、伝送コイルCL1、CL2のインダクタンス、直径、巻き数等の各種のコイル特性に基づき定まる。伝送コイルCL1、CL2の直径は、例えば数m(メートル)~数十m(メートル)である。また、伝送コイルCL1、CL2の太さが太い程(つまり、伝送コイルの線径が大きい程)、伝送コイルCL1、CL2での電気抵抗が減って電力損失が小さくなる。また、伝送コイルCL1、CL2を介して伝送される電力は、例えば50W以上であり、kWオーダーでもよい。
【0021】
なお、図2には図示を省略しているが、伝送コイルCL1、CL2のそれぞれには、コンデンサが直列に接続されている。伝送コイルCL1及びコンデンサ、伝送コイルCL2及びコンデンサのそれぞれにより、電力伝送及びデータ通信の際の共振回路が形成される。伝送コイルCL1、CL2のそれぞれは、自身に接続されている対応するPCLアダプタ(例えば、伝送コイルCL1に対応するPLCアダプタ10、伝送コイルCL2に対応するPLCアダプタ20)からのデータあるいは電力を、隣接する他の伝送コイルに向けて伝送する。
【0022】
PLCアダプタ10は、海上(水上の一例)に停泊している水上艇SH1が備えるマスタ側の通信設備M1(図2参照)内に設けられる。また、PLCアダプタ10は、陸上に配置されている陸上基地局SA1が備えるマスタ側の通信設備M1(図2参照)内に設けられてもよい。PLCアダプタ10は、伝送コイルCL1(具体的には、水上艇SH1が備えるアンテナAnt1、或いは陸上基地局SA1が備えるアンテナAnt2)との間で有線接続され、他の伝送コイルCL2から伝送されたデータ(例えば無人潜水機AV1が海洋探査等で取得した各種データ)を、伝送コイルCL1を介して取得して通信設備M1に出力する。PLCアダプタ10は、PLCアダプタ20との間でデータ通信を行うとともに、電源設備(図示略)から送電された電力を受電及び給電しながら他の伝送コイルCL2に電力を送電する。なお、PLCアダプタ10の詳細な構成例については、図3を参照して後述する。
【0023】
PLCアダプタ20は、水中ドローンMD1が備えるターミナル側の通信設備T1(図2参照)内に設けられる。また、PLCアダプタ20は、無人潜水機AV1が備えるターミナル側の通信設備T1(図2参照)内に設けられる。PLCアダプタ20は、伝送コイルCL2(具体的には、水中ドローンMD1が備えるアンテナAnt3、或いは無人潜水機AV1が備えるアンテナAnt4)との間で有線接続され、他の伝送コイルCL1から伝送されたデータ或いは電力を、伝送コイルCL2を介して取得したり受電及び給電したりする。なお、PLCアダプタ20の詳細な構成例については、図3を参照して後述する。
【0024】
水上艇SH1は、基地局の一例であり、例えば海上に停泊している(図1参照)。水上艇SH1は、マスタ側の通信設備M1(図2参照)を備える。水上艇SH1が備えるマスタ側の通信設備M1は、後述するPLCアダプタ10、20間の動作(図7参照)に基づき、水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1との間で、近距離高速通信(例えば10Mbpsの伝送速度)で無線通信したり長距離通信モードで無線通信したりする。
【0025】
陸上基地局SA1は、基地局の一例であり、例えば沿岸近くの陸上に配置されている(図1参照)。なお、陸上基地局SA1の配置箇所は、水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1との間で通信可能な位置に配置されていれば、沿岸近くの陸上に限定されなくてよい。陸上基地局SA1は、マスタ側の通信設備M1(図2参照)を備える。陸上基地局SA1が備えるマスタ側の通信設備M1は、後述するPLCアダプタ10、20間の動作(図7参照)に基づき、水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1との間で、近距離高速通信(例えば10Mbpsの伝送速度)で無線通信したり長距離通信モードで無線通信したりする。
【0026】
水中ドローンMD1は、移動通信体の一例であり、例えば海中における比較的浅い深度のエリアにおける海洋探査等の目的で移動したり各種のデータを採取(取得)したりする機能を有する。水中ドローンMD1は、ターミナル側の通信設備T1(図2参照)を備える。水中ドローンMD1が備えるターミナル側の通信設備T1は、後述するPLCアダプタ10、20間の動作(図7参照)に基づき、水上艇SH1或いは陸上基地局SA1との間で、近距離高速通信(例えば10Mbpsの伝送速度)で無線通信したり長距離通信モードで無線通信したりする。なお、水中ドローンMD1は、バッテリ(図示略)を内蔵して搭載してもよい。
【0027】
無人潜水機AV1は、移動通信体の一例であり、例えば海中における比較的深い深度のエリアにおける海洋探査等の目的で移動したり各種のデータを採取(取得)したりする機能を有する。無人潜水機AV1は、ターミナル側の通信設備T1(図2参照)を備える。無人潜水機AV1が備えるターミナル側の通信設備T1は、後述するPLCアダプタ10、20間の動作(図7参照)に基づき、水上艇SH1或いは陸上基地局SA1との間で、近距離高速通信(例えば10Mbpsの伝送速度)で無線通信したり長距離通信モードで無線通信したりする。なお、無人潜水機AV1は、水中航走体であるAUV(Autonomous Underwater Vehicle)であってよい。AUVは、例えば、遠隔操作無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)、無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、あるいは、自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)である。なお、無人潜水機AV1は、バッテリ(図示略)を内蔵して搭載してもよい。
【0028】
ここで、マスタ側の通信設備M1の伝送コイルCL1とターミナル側の通信設備T1の伝送コイルCL2との間の伝送について簡単に説明する。
【0029】
一次側である伝送コイルCL1の共振回路では、PLCアダプタ10からの電流が伝送コイルCL1に流れると、伝送コイルCL1の周囲に一次側磁界が発生する。この発生した一次側磁界による振動は、伝送コイルCL1の共振回路での共振周波数と同一の周波数で共振する二次側である伝送コイルCL2の共振回路に無線(いわゆるワイヤレス)で伝送される。このように、一次側である伝送コイルCL1の周囲に発生して二次側である伝送コイルCL2にワイヤレスで伝送される一次側磁界は鎖交磁束と称されることがある。
【0030】
二次側である伝送コイルCL2の共振回路では、鎖交磁束である一次側磁界の振動(言い換えると、磁界結合)により伝送コイルCL2に同様の二次側磁界が励起されることによって電流が発生する。従って、伝送コイルCL2の周囲にも同様な鎖交磁束である二次側磁界が発生する。なお、伝送コイルCL1側の一次側磁界の振動によって伝送コイルCL2に発生した電流は伝送コイルCL1側で生じた電流に比べると小さい。このため、PLCアダプタ20は、伝送コイルCL2に発生した電流のレベル(大きさ)を所定レベルに増幅などの制御を施す。この所定レベルは、例えば、PLCアダプタ10、20のそれぞれにおいて共通であってよい。これにより、二次側磁界のレベル(大きさ)が一次側磁界のレベル(大きさ)と同等となり、伝送コイル間のデータ通信あるいは電力伝送における減衰が抑制可能となる。
【0031】
なお、上述した説明は、伝送コイルCL1、CL2の順にデータ通信あるいは電力伝送が行われる例を説明したが、逆向き、つまり、伝送コイルCL2、CL1の順にデータ通信あるいは電力伝送が行われる場合の説明にも同様に適用可能である。
【0032】
次に、図3を参照し、PLCアダプタ10、20の内部構成例を説明する。図3は、マスタ側の通信設備M1及びターミナル側の通信設備T1が備えるPLCアダプタのハードウェア構成例を示すブロック図である。PLCアダプタ10、20の内部構成はほぼ同じであるため、ここではPLCアダプタ10を代表して例示説明し、同様な内容がPLCアダプタ20の説明として適用可能である。
【0033】
PLCアダプタ10(20)は、例えば、直交周波数分割多重方式(ODFM:Orthogonal Frequency Disivion Multiplexing)を用いてデジタル信号処理を行って通信する。PLCアダプタ10(20)は、コントローラPRC1、メモリ40、AFE44を有する。コントローラPRC1は、CPU(Central Processing Unit)31、PLC(Power Line Communication)_PHY(Physics)ブロック32、PLC_MAC(Media Access Control)ブロック33を含む。
【0034】
CPU31は、メモリ40に記憶されたプログラム及びデータを用いて、PLC_MACブロック33及びPLC_PHYブロック32の処理を制御し、PLCアダプタ10(20)の各部の処理を制御する。CPU31の機能的構成例については、図5及び図6を参照して後述する。
【0035】
PLC_PHYブロック32は、図2の伝送コイルCL1(CL2)を介してデータ通信を行うための送信信号及び受信信号のPHY層(Physical Layer)での処理を管理する。ここでいうデータ通信には、マスタ側の通信設備M1とターミナル側の通信設備T1との間でやり取りされるユーザデータの通信に限定せず、マスタ側の通信設備M1とターミナル側の通信設備T1との間でやり取りされる制御信号(図7参照)の通信も含み、以下の説明においても同様である。
【0036】
PLC_MACブロック33は、図2の伝送コイルCL1(CL2)を介してデータ通信を行うための送信信号及び受信信号のMAC層(Media Access Control Layer)での処理を管理する。
【0037】
AFE44は、DA(Digital Analog)変換器(図示略)、AD(Analog Digital)変換器(図示略)、可変増幅器(不図示)を有する。AFE44は、DA変換器に入力された送信信号であるデジタル信号をアナログ信号に変換してPLCアダプタ10(20)に接続される伝送コイルCL1(CL2)に出力する。AFE44は、伝送コイルCL1(CL2)から可変増幅器に入力された受信信号であるアナログ信号のゲイン調整を行って適宜増幅してAD変換器に入力させ、AD変換器に入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0038】
また、PLCアダプタ10(20)は、例えば、Ethernet(登録商標)に対応した有線LAN(Local Area Network)_MACブロック39、SDRAMコントローラ38、フラッシュメモリインターフェース37、GPIO(General-Purpose Input/Output)35、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)36、クロックIC34を有してよい。なお、図3では、インターフェースを便宜的に「IF」と略記し、クロックを便宜的に「CLK」と略記している。
【0039】
有線LAN_MACブロック39には、Ethernet(登録商標)に対応した有線LAN_PHYブロック43が接続される。有線LAN_MACブロック39は、有線LANケーブル(図示略)を介してデータ通信を行うための送信信号及び受信信号のMAC層での処理を管理する。
【0040】
有線LAN_PHYブロック43は、有線LANケーブル(図示略)を介してデータ通信を行うための送信信号及び受信信号のPHY層での処理を管理する。
【0041】
SDRAMコントローラ38は、SDRAM42に対する読み出し処理及び書き込み処理を制御する。
【0042】
フラッシュメモリインターフェース37は、フラッシュメモリ41に対する読み出し処理及び書き込み処理を制御する。
【0043】
SDRAM42及びフラッシュメモリ41は、メモリ40の一部でよい。
【0044】
GPIO35は、汎用入出力インターフェースである。
【0045】
UART36は、入力されたデータに対し、シリアルパラレル変換またはパラレルシリアル変換を行って出力する。
【0046】
クロックIC34は、振動子(OSC:Oscillator)45が発振する信号に同期したクロックを各部に供給する。なお、図3では、振動子を便宜的に「OSC」と略記している。
【0047】
コントローラPRC1は、例えばデータ通信のための基本的な制御あるいは変復調を含むデジタル信号処理を行う。コントローラPRC1は、有線LAN_PHYブロック43において取得されたデータを変調して送信信号を生成し、AFE44に出力する。また、コントローラPRC1は、AFE44において取得された伝送コイルCL1(CL2)から入力された受信信号を復調して受信データを生成し、有線LAN_PHYブロック43に出力する。
【0048】
PLCアダプタ10(20)によるデータ通信は、次のような手順で行われる。
【0049】
送信の場合、コントローラPRC1は、送信用のデータ或いは制御信号(後述する図7参照)を、有線LAN_PHYブロック43を介して入力し、その入力された送信用のデータ或いは制御信号に対してデジタル信号処理を施すことで、送信用のデジタル信号を生成する。この生成されたデジタル信号は、コントローラPRC1からAFE44に入力されてアナログ信号に変換される。この変換されたアナログ信号は、伝送コイルCL1(CL2)を介して他の伝送コイルCL2(CL1)に伝送される。デジタル信号処理では、例えば、ODFMによる変調が行われる。
【0050】
受信の場合、伝送コイルCL1(CL2)を介して他の伝送コイルCL2(CL1)から受信されたアナログ信号は、AFE44に入力され、AFE44においてゲイン調整された後、デジタル信号に変換される。この変換されたデジタル信号は、コントローラPRC1に入力される。コントローラPRC1は、入力されたデジタル信号に対してデジタル信号処理を施すことで、送信用のデータ或いは制御信号に対応するデジタルデータを取得する。
【0051】
次に、図4及び図5を参照し、PLCアダプタ10のCPU31a、PLCアダプタ20のCPU31bの内部構成例を説明する。図4は、マスタ側のPLCアダプタ10のCPU31aの機能的構成例を示すブロック図である。図5は、ターミナル側のPLCアダプタ20のCPU31bの機能的構成例を示すブロック図である。
【0052】
図4に示すように、CPU31aは、機能的構成として、制御信号/測定感度入力部51、受信感度測定部52、通信モード決定部53、通信モード設定部54、制御信号生成部55を有する。
【0053】
制御信号/測定感度入力部51は、ターミナル側のPLCアダプタ20から送信されてマスタ側のPLCアダプタ10が受信した制御信号を入力して取得する。なお、この制御信号は、PLCアダプタ10、20間の通信状況を確認するための役割を有し、ターミナル側のPLCアダプタ20が測定した測定感度を含んでいる。制御信号/測定感度入力部51は、制御信号の受信感度(測定感度)の測定指示を受信感度測定部52に送る。制御信号/測定感度入力部51は、制御信号に含まれている測定感度(a)を取得して通信モード決定部53に送る。以下、ターミナル側のPLCアダプタ20が測定した測定感度を「測定感度(a)」と称し、マスタ側のPLCアダプタ10が測定した測定感度を「測定感度(b)」と称する。
【0054】
受信感度測定部52は、制御信号/測定感度入力部51からの測定指示に基づいて、ターミナル側のPLCアダプタ20から送信されてマスタ側のPLCアダプタ10が受信した制御信号の受信感度(つまり、測定感度(b))を測定する。受信感度測定部52は、測定感度(b)の測定結果を通信モード決定部53に送る。
【0055】
通信モード決定部53は、制御信号/測定感度入力部51からの測定感度(a)及び受信感度測定部52からの測定感度(b)のうち少なくとも1つとメモリ40に記憶されている各種の閾値との比較に基づいて、無線通信の通信モード(つまり、PLCアダプタ10、20間で使用する無線通信の使用周波数の帯域)を決定する。通信モードの決定の詳細については、図9を参照して後述する。通信モード決定部53は、通信モードの決定結果を通信モード設定部54及び制御信号生成部55に送る。
【0056】
通信モード設定部54は、通信モード決定部53により決定された通信モードをPLCアダプタ10が無線通信において使用するようにメモリ40に設定する。
【0057】
制御信号生成部55は、通信モード決定部53により決定された通信モードの情報を含む制御信号(例えばパケット)を生成し、その生成された制御信号の送信をPLC_MACブロック33に指示する。
【0058】
図5に示すように、CPU31bは、機能的構成として、制御信号/通信モード入力部61、受信感度測定部62、通信モード設定部63、制御信号生成部64を有する。
【0059】
制御信号/通信モード入力部61は、マスタ側のPLCアダプタ10から送信されてターミナル側のPLCアダプタ20が受信した制御信号を入力して取得する。なお、この制御信号には、マスタ側のPLCアダプタ10が決定した通信モードの情報が含まれている。制御信号/通信モード入力部61は、制御信号の受信感度(測定感度)の測定指示を受信感度測定部62に送る。制御信号/通信モード入力部61は、マスタ側のPLCアダプタ10が決定した通信モードの情報を通信モード設定部63に送る。
【0060】
受信感度測定部62は、制御信号/通信モード入力部61からの測定指示に基づいて、マスタ側のPLCアダプタ10から送信されてターミナル側のPLCアダプタ20が受信した制御信号の受信感度(つまり、測定感度(a))を測定する。受信感度測定部62は、測定感度(a)の測定結果を制御信号生成部64に送る。
【0061】
通信モード設定部63は、制御信号/通信モード入力部61からの通信モードの情報が示す通信モードをPLCアダプタ20が無線通信において使用するようにメモリ40に設定する。
【0062】
制御信号生成部64は、受信感度測定部62により測定された測定感度(a)の情報を含む制御信号(例えばパケット)を生成し、その生成された制御信号の送信をPLC_MACブロック33に指示する。
【0063】
次に、図6を参照して、通信モード、長距離通信モードと近距離高速通信モードとの間の切り換えについて説明する。図6は、長距離通信モードと近距離高速通信モードとの間の切り換えを模式的に示す図である。図6に示す2つのグラフの横軸は周波数を示し、同グラフの縦軸は受信感度(言い換えると、信号強度)を示す。
【0064】
本実施の形態に係る通信システム100では、海中を移動しているターミナル側の通信設備T1がマスタ側の通信設備M1に近づくと(例えば1m(メートル)程度)、マスタ側のPLCアダプタ10は、通信モードとして近距離高速通信モード(例えば1倍モード)を使用するように決定してその近距離高速通信モードをシームレスに切り換えるよう設定する。更に、マスタ側のPLCアダプタ10は、その決定した近距離高速通信モードを使用するように、ターミナル側のPLCアダプタ20にもその同じ通信モード(近距離高速通信モード)を設定させる。なお、1倍モードとは、図6に示すように、無線通信の使用周波数の帯域として2MHzから28MHzを使用することが可能な通信モードであり、海中であっても高速な無線通信を実現可能な通信モードである。
【0065】
一方、海中を移動しているターミナル側の通信設備T1がマスタ側の通信設備M1から遠のくように離れると(例えば数m(メートル)程度)、マスタ側のPLCアダプタ10は、通信モードとして長距離通信モード(例えば1/16倍モード)を使用するように決定してその近距離高速通信モードをシームレスに切り換えるよう設定する。更に、マスタ側のPLCアダプタ10は、その決定した近距離高速通信モードを使用するように、ターミナル側のPLCアダプタ20にもその同じ通信モード(近距離高速通信モード)を設定させる。なお、1/16モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/16倍した値の範囲(具体的には、2/16MHz(=125kHz)から28/16MHz(=1.75MHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中で長距離離れていても無線通信を実現可能な通信モードである。
【0066】
ここで、通信モードの詳細について説明する。
【0067】
通信モードとは、マスタ側のPLCアダプタ10とターミナル側のPLCアダプタ20とが海中において無線通信を行う際に使用する使用周波数の帯域を定める。本実施の形態では、1倍モード、1/2モード、1/4モード、1/8モード、1/16モード、1/32モード、1/64モードの通信モードが使用される。なお、通信モードは、これらに限定されなくてもよい。1倍モード及び1/16モードについては上述したので、ここでは説明を省略する。
【0068】
1/2モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/2倍した値の範囲(具体的には、2/2MHz(=1MHz)から28/2MHz(=14MHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中であっても1倍モード程ではないが比較的高速な無線通信を実現可能な通信モードである。
【0069】
1/4モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/4倍した値の範囲(具体的には、2/4MHz(=500kHz)から28/4MHz(=7MHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中であっても1/2モード程ではないが比較的高速な無線通信を実現可能な通信モードである。
【0070】
1/8モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/8倍した値の範囲(具体的には、2/8MHz(=250kHz)から28/8MHz(=3.5MHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中であっても1/4モード程ではないが比較的高速な無線通信を実現可能な通信モードである。
【0071】
1/32モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/32倍した値の範囲(具体的には、2/32MHz(=62.5kHz)から28/32MHz(=875kHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中で1/16モードの使用時に比べて長距離離れていても無線通信を実現可能な通信モードである。
【0072】
1/64モードとは、1倍モードの使用周波数の帯域の上限及び下限のそれぞれを1/64倍した値の範囲(具体的には、2/64MHz(=31.25kHz)から28/64MHz(=437.5kHz)までの範囲)を無線通信の使用周波数の帯域として使用することが可能な通信モードであり、海中で1/32モードの使用時に比べて長距離離れていても無線通信を実現可能な通信モードである。
【0073】
(システム動作)
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る通信システム100の全体的な動作手順例を説明する。図7は、本実施の形態に係る通信システム100の全体的な動作手順例を示すシーケンス図である。図7では、水上艇SH1或いは陸上基地局SA1が備える通信設備M1のPLCアダプタ10と、水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1が備える通信設備T1のPLCアダプタ20との間で行われる制御信号の送受信を説明する。
【0074】
図7において、PLCアダプタ10は、PLCアダプタ10、20間の通信状況を確認するための制御信号を生成し、最も高速な通信モード(1倍モード)を選択してその選択した通信モードで生成した制御信号をPLCアダプタ20に送信したり、PLCアダプタ20から送信された制御信号を受信したりする(ステップSt1)。PLCアダプタ20は、ステップSt1で送信された制御信号を受信したり、PLCアダプタ10、20間の通信状況を確認するための制御信号を生成し、最も高速な通信モード(1倍モード)を選択してその選択した通信モードで生成した制御信号をPLCアダプタ10に送信したりする(ステップSt11)。なお、PLCアダプタ10は、PLCアダプタ20からの制御信号を受信した場合、その制御信号を受信した旨のACK(ACKnowledgement)を生成して同じ通信モードでPLCアダプタ20に送る。同様に、PLCアダプタ20は、PCLアダプタ10からの制御信号を受信した場合、その制御信号を受信した旨のACKを生成して同じ通信モードでPLCアダプタ10に送る。
【0075】
PLCアダプタ10は、ACK有り(つまり、PLCアダプタ20からの制御信号を受信した)の場合(ステップSt2、YES)、ステップSt3以降の処理を実行する。一方、ACK無し(つまり、PLCアダプタ20からの制御信号がPLCアダプタ10において受信されない)の場合(ステップSt2、NO)、PLCアダプタ10はACK有りとなるまでステップSt1、St2の処理を繰り返す。同様に、PLCアダプタ20は、ACK有り(つまり、PLCアダプタ10からの制御信号を受信した)の場合(ステップSt12、YES)、ステップSt13以降の処理を実行する。一方、ACK無し(つまり、PLCアダプタ10からの制御信号がPLCアダプタ20において受信されない)の場合(ステップSt12、NO)、PLCアダプタ20はACK有りとなるまでステップSt11、St12の処理を繰り返す。
【0076】
PLCアダプタ10は、帯域切換用テスト信号送信(つまり、通信モード(言い換えると、使用周波数の帯域)を切り換えるために、テスト的に制御信号をPLCアダプタ20に送信する動作)を実行する(ステップSt3)。PLCアダプタ10は、ステップSt3の処理結果を受けて、通信モードを選択する(ステップSt4)。PLCアダプタ10は、ステップSt4で選択した通信モードを使用してPLCアダプタ20との間で海中通信を実行する(ステップSt5)。なお、PLCアダプタ10は、ステップSt3からステップSt5までの一連の処理をループ処理として繰り返して実行する。また、ステップSt3からステップSt5までの一連の処理の詳細については、図8を参照して後述する。
【0077】
一方、PLCアダプタ20は、帯域切換用テスト信号受信(つまり、通信モード(言い換えると、使用周波数の帯域)を切り換えるために、テスト的にPLCアダプタ10から送信された制御信号を受信する動作)を実行する(ステップSt13)。PLCアダプタ20は、ステップSt13の処理結果を受けて、通信モードを選択する(ステップSt14)。PLCアダプタ20は、ステップSt1で選択した通信モードを使用してPLCアダプタ10との間で海中通信を実行する(ステップSt15)。なお、PLCアダプタ20は、ステップSt13からステップSt15までの一連の処理をループ処理として繰り返して実行する。また、ステップSt13からステップSt15までの一連の処理の詳細については、図8を参照して後述する。
【0078】
次に、図8を参照して、図7のステップSt3、St4、St13、St14の動作の詳細について説明する。図8は、図7のステップSt3、St4、St13、St14の動作手順の詳細を示すシーケンス図である。
【0079】
図8において、PLCアダプタ10は、PLCアダプタ20との間の通信状況を確認するための制御信号を生成してPLCアダプタ20に送信する(ステップSt31)。PLCアダプタ20は、ステップSt31で送信された制御信号を受信したとする(ステップSt131)。PLCアダプタ20は、ステップSt131で受信した制御信号の受信感度に相当する測定感度(a)を測定する(ステップSt132)。PLCアダプタ20は、ステップSt132で測定した測定感度(a)の情報を含む制御信号を生成してPLCアダプタ10に送信する(ステップSt133)。
【0080】
PLCアダプタ10は、ステップSt133で送信された制御信号を受信する(ステップSt32)。PLCアダプタ10は、ステップSt32で受信した制御信号の受信感度に相当する測定感度(b)を測定する(ステップSt33)。PLCアダプタ10は、ステップSt3で受信した制御信号に含まれる測定感度(a)の情報とステップSt33で測定した測定感度(b)の情報とのうち少なくとも1つに基づいて、PLCアダプタ10、20間での無線通信に使用する使用周波数の帯域を定める通信モードを決定する(ステップSt41)。このステップSt41の動作の詳細については、図9を参照して後述する。
【0081】
PLCアダプタ10は、ステップSt41で決定した通信モードの情報を含む制御信号を生成してPLCアダプタ20に送信する(ステップSt42)。更に、PLCアダプタ10は、ステップSt41で決定した通信モードの情報に基づいて、その通信モードをPLCアダプタ20との間の無線通信に使用するように設定する(ステップSt43)。
【0082】
PLCアダプタ20は、ステップSt42で送信された制御信号を受信し、その制御信号に含まれる通信モードの情報を取得する(ステップSt141)。PLCアダプタ20は、ステップSt141で受信した通信モードの情報に基づいて、その通信モードをPLCアダプタ10との間の無線通信に使用するように設定する(ステップSt142)。ステップSt43、St142の後、PLCアダプタ10、20のそれぞれは、互いに設定した通信モードを用いて、海中通信を開始して実行する(ステップSt5、St15)。
【0083】
PLCアダプタ10は、PLCアダプタ20との間で海中通信を開始した後、通信品質の変化があると判定した場合(ステップSt34、YES)、改めてステップSt31の処理を実行する。通信品質の変化があるか否かの判定の詳細については、図10を参照して後述する。なお、PLCアダプタ10は、通信品質の変化がないと判定した場合でも、PLCアダプタ20との間で海中通信を開始してから所定時間(例えば30秒)が経過する度に、ステップSt31の処理を実行してもよい。これにより、海中の通信状況が急に変化した場合(例えば地震等で海流が急激に変化した時)でも、PLCアダプタ10とPLCアダプタ20との間で適切な通信モードの設定が可能となることにより、シームレスな無線通信の実現が可能となる。
【0084】
次に、図9を参照して、図8のステップSt41の動作の詳細について説明する。図9は、図8のステップSt41の動作手順の詳細を示すフローチャートである。図9に示す各ステップ(処理)は、PLCアダプタ10のCPU31aにより主に実行される。
【0085】
図9において、CPU31aは、測定感度(a)及び測定感度(b)のうち少なくとも1つ(例えば測定感度(b))がメモリ40に記憶されている第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップSt411)。第1の閾値は、PLCアダプタ10、20間の無線通信に使用する通信モードとして1倍モードの使用が許可される時の信号(例えば制御信号)の受信感度(測定感度)に相当する。CPU31aは、測定感度(b)が第1の閾値以上であると判定した場合(ステップSt411、YES)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1倍モードと決定する(ステップSt412)。
【0086】
一方、CPU31aは、測定感度(b)が第1の閾値未満であると判定した場合(ステップSt411、NO)、メモリ40に記憶されている第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップSt413)。第2の閾値は、第1の閾値より小さく、PLCアダプタ10、20間の無線通信に使用する通信モードとして1/2モードの使用が許可される時の信号(例えば制御信号)の受信感度(測定感度)に相当する。CPU31aは、測定感度(b)が第2の閾値以上であると判定した場合(ステップSt413、YES)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1/2モードと決定する(ステップSt414)。
【0087】
一方、CPU31aは、測定感度(b)が第2の閾値未満であると判定した場合(ステップSt413、NO)、メモリ40に記憶されている第3の閾値以上であるか否かを判定する(ステップSt415)。第3の閾値は、第2の閾値より小さく、PLCアダプタ10、20間の無線通信に使用する通信モードとして1/4モードの使用が許可される時の信号(例えば制御信号)の受信感度(測定感度)に相当する。CPU31aは、測定感度(b)が第3の閾値以上であると判定した場合(ステップSt415、YES)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1/4モードと決定する(ステップSt416)。
【0088】
一方、CPU31aは、測定感度(b)が第3の閾値未満であると判定した場合(ステップSt415、NO)、メモリ40に記憶されている第4の閾値以上であるか否かを判定する(ステップSt417)。第4の閾値は、第3の閾値より小さく、PLCアダプタ10、20間の無線通信に使用する通信モードとして1/8モードの使用が許可される時の信号(例えば制御信号)の受信感度(測定感度)に相当する。CPU31aは、測定感度(b)が第4の閾値以上であると判定した場合(ステップSt417、YES)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1/8モードと決定する(ステップSt418)。
【0089】
一方、CPU31aは、測定感度(b)が第4の閾値未満であると判定した場合(ステップSt417、NO)、メモリ40に記憶されている第5の閾値以上であるか否かを判定する(ステップSt419)。第5の閾値は、第4の閾値より小さく、PLCアダプタ10、20間の無線通信に使用する通信モードとして1/16モードの使用が許可される時の信号(例えば制御信号)の受信感度(測定感度)に相当する。CPU31aは、測定感度(b)が第5の閾値以上であると判定した場合(ステップSt419、YES)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1/16モードと決定する(ステップSt420)。
【0090】
一方、CPU31aは、測定感度(b)が第5の閾値未満であると判定した場合(ステップSt419、NO)、PLCアダプタ10、20間の無線通信用の通信モードを1/32モードと決定する(ステップSt421)。なお、上述した説明では、各種の閾値と比較する測定感度は測定感度(b)である場合を例示して説明したが、測定感度(b)の代わりに、測定感度(a)でもよいし、測定感度(b)及び測定感度(a)の平均値でもよい。
【0091】
次に、図10を参照して、図8のステップSt34の動作の詳細について説明する。図10は、図8のステップSt34の動作手順の詳細を示すフローチャートである。図10に示す各ステップ(処理)は、PLCアダプタ10のCPU31aにより主に実行される。
【0092】
図10において、CPU31aは、周期的に取得している測定感度(a)及び測定感度(b)のうち少なくとも1つ(例えば測定感度(b))の変化値が現在の通信モードに対応する所定の閾値(第1許容閾値)以上であるか否かを判定する(ステップSt341)。第1許容閾値は、通信モード(言い換えると、使用周波数の帯域)ごとに異なる値に定められてメモリ40に保存されており、その通信モードの使用が許容されるための測定感度の差分値の閾値である。なお、第1許容閾値は、通信モードに関わらず固定値であってもよい。CPU31aは、測定感度(b)の変化値が第1許容閾値以上であると判定した場合(ステップSt341、YES)、ステップSt3、St13の処理(つまり、帯域切換用テスト信号送受信)の処理を実行したり、その実行を他のPCLアダプタ(つまり、PLCアダプタ20)に指示したりする。
【0093】
一方、CPU31aは、測定感度(b)の変化値が第1許容閾値未満であると判定した場合(ステップSt341、NO)、周期的に受信している制御信号の受信時のCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio)である搬送波レベル対干渉・雑音比(つまり、電磁波のクリアさ)の変化値が現在の通信モードに対応する所定の閾値(第2許容閾値)以上であるか否かを判定する(ステップSt342)。第2許容閾値は、通信モード(言い換えると、使用周波数の帯域)ごとに異なる値に定められてメモリ40に保存されており、その通信モードの使用が許容されるためのCINRの差分値の閾値である。なお、第2許容閾値は、通信モードに関わらず固定値であってもよい。CPU31aは、CINRの変化値が第2許容閾値以上であると判定した場合(ステップSt342、YES)、ステップSt3、St13の処理(つまり、帯域切換用テスト信号送受信)の処理を実行したり、その実行を他のPLCアダプタ(つまり、PLCアダプタ20)に指示したりする。
【0094】
一方、CPU31aは、CINRの変化値が第2許容閾値未満であると判定した場合(ステップSt342、NO)、前回の制御信号のPLCアダプタ20への送信タイミング或いは前回の制御信号のPLCアダプタ20からの受信タイミングからの経過時間が現在の通信モードに対応する所定の閾値(第3許容閾値)以上であるか否かを判定する(ステップSt343)。第3許容閾値は、メモリ40に保存されており、通信モードの使用を切り換えることを指示するための経過時間に関する閾値である。CPU31aは、経過時間(上述参照)が第3許容閾値以上であると判定した場合(ステップSt343、YES)、ステップSt3、St13の処理(つまり、帯域切換用テスト信号送受信)の処理を実行したり、その実行を他のPLCアダプタ(つまり、PLCアダプタ20)に指示したりする。一方、CPU31aは、経過時間(上述参照)が第3許容閾値以上であると判定した場合(ステップSt343、NO)、ステップSt341の処理を実行する。
【0095】
以上により、本実施の形態に係る通信システム100では、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、水中を移動可能な移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)との間で通信に係る信号(例えば制御信号)の送受信を行う第1アンテナ(アンテナAnt1、Ant2)と、その信号に基づく移動通信体との間の通信状況を取得する取得部(例えば制御信号/測定感度入力部51)と、通信状況に基づいて、現在の通信での使用周波数帯を低周波側又は高周波側に切り換えるように移動通信体との間の通信モードを決定する決定部(例えば通信モード決定部53)と、を備える。これにより、基地局は、海中等の水中の広い範囲において、海中等の水中を移動可能な移動通信体との間で通信大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行うことができる。
【0096】
また、信号は、通信状況を確認するための制御信号である。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、制御信号を送る度に、水中を移動可能な移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)との間の通信状況を確認できる。
【0097】
また、通信状況は、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)から移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)に送信された信号の受信レベル(例えば受信感度)である。これにより、基地局は、移動通信体が受信した基地局からの制御信号の受信レベルを用いて、移動通信体との間の通信状況を簡易に確認できる。
【0098】
また、決定部(例えば通信モード決定部53)は、受信レベル(例えば受信感度)と予め設定された閾値(図9参照)との比較に基づいて通信モードを決定する。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)から受信する制御信号の受信レベルを用いて、海中において無線通信に使用する使用周波数の帯域を適切に決定できる。
【0099】
また、通信状況は、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)から基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)に送信された信号の受信レベルである。これにより、基地局は、基地局が受信した移動通信体からの制御信号の受信レベルを用いて、移動通信体との間の通信状況を簡易に確認できる。
【0100】
また、第1アンテナ(アンテナAnt1、Ant2)は、制御信号を所定時間ごとに移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)に送る。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、移動通信体との間の通信状況を定期的(周期的)に取得でき、通信状況の変化にも追従して通信モードを適応的に決定できる。
【0101】
また、決定部(例えば通信モード決定部53)は、通信状況を示すパラメータ値(例えば受信感度である測定感度)の変化値が通信モードにおいて許容される第1許容閾値以上である場合に、制御信号を第1アンテナから送信すると決定する。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)との間の通信状況の変化値(例えば測定感度の変化値)が第1許容閾値を超えて変化していることを検知でき、通信状況に合わせた通信モードの決定を行うことができる。
【0102】
また、決定部(例えば通信モード決定部53)は、通信状況を示すCINR(Carrier To interference and Noise Ratio)の変化値が通信モードにおいて許容される第2許容閾値以上である場合に、制御信号を第1アンテナから送信すると決定する。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)との間の通信状況の変化値(例えばCINRの変化値)が第2許容閾値を超えて変化していることを検知でき、通信状況に合わせた通信モードの決定を行うことができる。
【0103】
また、決定部(例えば通信モード決定部53)は、(n-1)回目(n:2以上の整数)の制御信号の送信タイミングから所定時間(例えば第3許容閾値)が経過した場合に、n回目の制御信号を第1アンテナから送信すると決定する。これにより、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)は、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)との間で制御信号を送信したタイミング或いは受信したタイミングから一定時間が経過したことを検知でき、一定時間経過した場合に通信状況が変化し得ることに鑑みて通信状況に合わせた通信モードの決定を行うことができる。
【0104】
また、本実施の形態に係る通信システム100では、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)は、水中又は地上に配置された基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)との間で通信に係る信号の送受信を行う第2アンテナ(アンテナAnt3、Ant4)と、基地局から送信された信号を第2アンテナを介して受信する信号受信部(例えばコントローラ30)と、信号受信部により受信された信号の受信レベルを測定する測定部(例えば受信感度測定部62)と、受信レベルに基づく基地局からの指示に従って、現在の通信での使用周波数を低周波側又は高周波側に切り換えるように基地局との間の通信モードを変更する制御部(例えば通信モード設定部63)と、を備える。これにより、移動通信体は、海中等の水中の広い範囲において、水中又は地上に配置された基地局との間で通信大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行うことができる。
【0105】
また、信号は、基地局との間の通信状況を確認するための制御信号である。これにより、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)は、制御信号を送る度に、水中又は地上に配置された基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10)との間の通信状況を確認できる。
【0106】
また、通信モードは、使用周波数の帯域を定義する。これにより、移動通信体(例えば水中ドローンMD1或いは無人潜水機AV1の通信設備T1のPLCアダプタ20)は、基地局(例えば水上艇SH1或いは陸上基地局SA1の通信設備M1のPLCアダプタ10との間での制御信号の送受信に基づいて、海中等の水中において無線通信する際の使用周波数の帯域を適切に設定することができる。
【0107】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、海中等の水中の広い範囲において大容量かつ高速のデータ通信を安定的に行う通信装置、移動通信体、通信方法及び通信システムとして有用である。
【符号の説明】
【0109】
10、20 PLCアダプタ
31、31a、31b CPU
32 PLC_PHY
33 PLC_MAC
34 CLK
35 GPIO
36 UART
37 フラッシュIF
38 SDRAMコントローラ
39 有線LAN_MAC
40 メモリ
41 フラッシュメモリ
42 SDRAM
43 有線LAN_PHY
44 AFE
45 OSC
51 制御信号/測定感度入力部
52、62 受信感度測定部
53 通信モード決定部
54 通信モード設定部
55 制御信号生成部
61 制御信号/通信モード入力部
100 通信システム
AV1 無人潜水機
CL1、CL2 伝送コイル
MD1 水中ドローン
SA1 陸上基地局
SH1 水上艇
図1
図2
図3
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図10