(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027466
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】細径同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/18 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H01B11/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130270
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】591147421
【氏名又は名称】伸光精線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一宏
【テーマコード(参考)】
5G319
【Fターム(参考)】
5G319FA01
5G319FA04
5G319FC01
5G319FC18
5G319FC20
5G319FC25
(57)【要約】
【課題】誘電体の外形を変えずに内部構造を変更しただけの簡単な構成で、細径同軸ケーブルの長手方向に沿った特性インピーダンスを安定させる細径同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】、打数2nで編組シールド線が周囲に巻き付けられた誘電体に中心軸C周りに等角度間隔で形成する管状空隙の個数mを、打数2nのnの約数と異なる個数とし、中心軸C周りに360/n度毎に同一の分布荷重のパターンが繰り返される領域と、中心軸C周りに360/m毎に分割される環状空隙を覆う誘電体の外環状部の部分の配置ピッチを異ならせて、各管状空隙の収縮量を分散させることにより、管状空隙全体の空間量を安定化して細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ
0を長手方向で一定とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って配線される中心導体と、
前記中心導体の外周を被覆し、m個の管状空隙が前記中心軸の軸周りに等角度間隔で前記中心軸に沿って形成された誘電体と、
それぞれ同一断面形状のn組の内側編組シールド線とn組の外側編組シールド線とを、交差させながら編み合わせて、前記誘電体の周囲に打数2nの編組シールド線をスパイラル状に巻き付けてなる編組シールド層とを備えた細径同軸ケーブルであって、
前記誘電体に形成された管状空隙の個数mは、nの約数の個数を除く、4個から12個までのいずれかの個数であることを特徴とする細径同軸ケーブル。
【請求項2】
打数2nが16の編組シールド線が巻き付けられる誘電体の外径が3mm以下であり、
前記管状空隙の個数mは、nの約数の個数を除く、6個から10個までのいずれかの個数であることを特徴とする細径同軸ケーブル。
【請求項3】
m個の管状空隙の中心軸に直交する断面形状は、全て同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の細径同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心導体を囲う誘電体内にケーブルの長手方向に沿って複数の管状空隙が形成された細径同軸ケーブルに関し、特に、誘電体の周囲に複数の編組シールド線をスパイラル状に巻き付けた編組シールド層が形成された細径同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、
図18に示す構造の細径同軸ケーブル100には、高速伝送化とともにケーブル径を1mm程度するダウンサイズ化が求められ、特性インピーダンスを50Ωとしながら、編組シールド層101の外径を小径化するために、中心導体102とその周囲の編組シールド層101とを絶縁するフッ素樹脂等からなる誘電体103に複数の管状空隙104を形成して、誘電体103全体のみかけの比誘電率ε’を低下させた細径同軸ケーブル100が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
すなわち、同軸ケーブルの誘電体103の比誘電率をε、編組シールド層101の内径をD、中心導体102の外径をdとすると、同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0は、
【0004】
【0005】
で表され、誘電体を構成するフッ素樹脂の比誘電率が2.1であるのに対し、空気の比誘電率はほぼ1であるので、
図19に示すように、誘電体103内に多数の管状空隙104を中心導体102と平行に形成すれば、誘電体103のみかけの比誘電率ε’が低下し、細径同軸ケーブル100の特性インピーダンスZ
0を50Ωに維持しつつ、編組シールド層101の内径Dを小径化できる。
【0006】
中心導体102の中心軸C周りに円筒状に形成された誘電体103内に効率的に多数の管状空隙104を形成するため、各管状空隙104は、外環状部103Bと内環状部103Aの間に放射状に中心軸C周りに等角度間隔で形成されるリブ部103Cで遮られた同一の断面形状となっている。放射状形成されるリブ部103Cの枚数が13を超えると、リブ部103Cの存在によって誘電体103の空隙率が低下し、編組シールド層101の内径Dを小径化できない。また、リブ部103Cの枚数が3以下となると、管状空隙104の外側を覆う外環状部103Bは、中心軸C周りの角度が120度以上離れたリブ部103Cの間に支持されることになるので、十分な強度が得られず、わずかな外力を受けても変形したり、破損する。そこで、リブ部103Cで遮られる管状空隙104の個数mは、通常4乃至12個となっている。
【0007】
一方、このような構造の細長同軸ケーブル100の編組シールド層101は、高周波信号の漏れがないように、数本の素線105を帯状に一体とした編組シールド線106を一組とし、複数組の内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとを交互に交差させながら編み合わせて、誘電体103の周囲に形成している(特許文献3、特許文献4)。内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとは、中心軸Cに沿って互いに逆方向にスパイラル状に巻き付けて、円筒状の誘電体103の表面に取り付けるので、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとは、同一組数n(nは、整数)となっていて、2n組の編組シールド線106で、中心軸C周りの誘電体103の表面の全周を可能な限り密に覆うようになっている。
【0008】
この編組シールド層101を編み合わせる編組シールド線106の総組数2nを打数といい、例えば、
図3に示す細長同軸ケーブル100の編組シールド層101は、打数が16であり、8組の内側編組シールド線106Aと8組の外側編組シールド線106Bとを順次交差させながら編み合わせて形成されている。これにより、誘電体103の表面のほぼ全面が、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとが重ねられた部分で覆われ、高周波信号の漏れを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-293862号公報
【特許文献2】特開2009-37911号公報
【特許文献3】特開2014-235923号公報
【特許文献4】特許第5186604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
編組シールド層101を形成する工程では、誘電体103の表面で編み合わされた編組シールド線106が緩まず、密に誘電体103の表面に密着するように、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bに所定の張力をかけながら、誘電体103にスパイラル状に巻き付ける。その結果、
図19、
図20に示すように、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとが重なる部分で、誘電体103の外環状部103Bに中心軸Cに向かう比較的大きな圧縮荷重が作用する。
【0011】
n組の内側編組シールド線106Aとn組の外側編組シールド線106Bとは、中心軸C周りに同一パターンでスパイラル状に巻き付けられるので、細径同軸ケーブル100の中心軸Cに沿った任意の位置で、中心軸C周りの360度/n毎に内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとは同一の配置パターンが繰り返され、360度/n毎に分割した各領域において、誘電体103の外環状部103Bが編組シールド線106から中心軸Cの方向に受ける分布荷重のパターンは全て同一パターンとなる。
【0012】
ここで、通常4乃至12個である管状空隙104の個数mが、打数2nのnの約数に一致していると、管状空隙104の両側のリブ部103Cの間の角度は、360度/mであり、360度/n毎に分割した各領域の中心軸C周りの角度若しくはその整数倍の角度に一致する。その結果、細径同軸ケーブル100の中心軸Cに沿った任意の位置において、全ての管状空隙104の両側のリブ部103Cに掛け渡された外環状部103Bの部分は、それぞれ編組シールド線106から中心軸Cの方向に同一パターンの分布荷重を受ける。
【0013】
一方、細径同軸ケーブル100の誘電体103には、細径同軸ケーブル100の配線を容易にするために可撓性が求められ、誘電体103を、フッ素樹脂等の縦弾性係数の小さい材料で成形しているのに加え、小径化する誘電体103内に可能な限り大きな空隙を設けるために外環状部103Bの放射方向(中心軸Cに直交する方向)の厚さを薄肉としているので、各管状空隙104の外側を覆う外環状部103Bは、編組シールド線106からの圧縮荷重を受けて中心軸Cの方向に撓みやすく、それぞれ同一パターンの分布荷重を受けて、同一の撓み量で変形する。その結果、細径同軸ケーブル100の中心軸Cに沿った任意の位置において、全ての管状空隙104は、1個の管状空隙104の収縮量のm倍収縮する。
【0014】
また、いずれかの管状空隙104の両側のリブ部103Cの間に掛け渡された外環状部103Bについて着目すれば、その外側で内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bは、細径同軸ケーブル100の長手方向(中心軸Cの軸線方向)に沿ってスパイラル状に巻き付けられるので、細径同軸ケーブル100の長手方向の移動にともなって、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bの配置パターンが変化し、外環状部103Bが編組シールド線106から受ける分布荷重のパターンも変化する。その結果、細径同軸ケーブル100の軸方向の移動にともなって、一対のリブ部103Cの間に掛け渡された個々の外環状部103Bの変位も変化し、誘電体103全体の空隙量は、いずれか1個の管状空隙104の空隙量の変化に対してm倍の量で変化する。
【0015】
特に、分布荷重のうち、中心軸C方向に作用する最大圧縮加重は、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bが重なる部分の中間の位置(以下、最大荷重位置という)と考えられ、最大荷重位置が管状空隙104の両側のリブ部103Cの中間にある場合に、外環状部103Bの変位は最大となり、管状空隙104の空隙量は最小となり、リブ部103Cの位置にある場合に、外環状部103Bの変位は最小となり、管状空隙104の空隙量は最大となる。
【0016】
例えば、
図19に示す細径同軸ケーブル100の管状空隙104の個数mは、8であり、打数2nが16であるnに一致するので、P1の位置で切断した
図19に示す縦断面図に表す通り、中心軸C周りに45度毎に8分割した各領域において、最大荷重位置は、リブ部103Cの放射線上にあり、中心軸Cの方向に作用する最大圧縮荷重はリブ部103Cの軸方向に作用し、誘電体103の外環状部103Bは大きく変形しない。その結果、P1の位置で、誘電体103内の空隙量は最大となる。
【0017】
また、中心軸Cの方向でP1と異なるP3の位置では、
図20に示すように、中心軸C周りに45度毎に8分割した各領域において、最大荷重位置は、管状空隙104の両側のリブ部103Cの中間にあり、外環状部103Bに最大の曲げモーメントが発生して中心軸Cの方向に最も撓むので、管状空隙104の収縮量は最大となる。その結果、P3の位置で、誘電体103の全体は、収縮量が最大となる1個の管状空隙104の収縮量のm倍の量で収縮し、誘電体103内の空隙量は、P1の位置から大きく変化した最小値となる。
【0018】
以上の通り、従来の細径同軸ケーブル100では、ケーブル100の長手方向に沿って、誘電体103全体の空隙量が、1個の管状空隙104の空隙の変化量に管状空隙104の個数mを乗じた変化量で変化するので、誘電体103のみかけの比誘電率ε’が細径同軸ケーブル100の長手方向の位置によって大きく変化し、特性インピーダンスZ0が一定とならず、その結果、高周波信号の伝送効率が低下するという問題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、誘電体の外形を変えずに内部構造を変更しただけの簡単な構成で、細径同軸ケーブルの長手方向に沿った特性インピーダンスを安定させる細径同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の細径同軸ケーブルは、中心軸に沿って配線される中心導体と、中心導体の外周を被覆し、m個の管状空隙が中心軸の軸周りに等角度間隔で中心軸に沿って形成された誘電体と、それぞれ同一断面形状のn組の内側編組シールド線とn組の外側編組シールド線とを、交差させながら編み合わせて、誘電体の周囲に打数2nの編組シールド線をスパイラル状に巻き付けてなる編組シールド層とを備えた細径同軸ケーブルであって、
誘電体に形成された管状空隙の個数mは、nの約数の個数を除く、4個から12個までのいずれかの個数であることを特徴とする。
【0021】
誘電体に形成される管状空隙の個数が4個以上であるので、管状空隙の外側を覆う外環状部は、中心軸C周りの角度が90度以下の間隔の一対のリブ部の間に支持され、外管状部に大きな曲げモーメントが生じない。また、管状空隙の個数が12個以下で、管状空隙間を遮るリブ部の枚数が12枚以下となるので、多数のリブ部によって誘電体内の空間容量が減少することがない。
【0022】
nの約数をNとすると、中心軸Cに沿った任意の位置で、中心軸C周りに360度/N毎に、内側編組シールド線と外側編組シールド線の配置パターンが繰り返され、360度/N毎に分割した各領域において、編組シールド線から中心軸Cの方向に作用する圧縮荷重の分布荷重のパターンは全て同一パターンとなる。
【0023】
一方、m個の管状空隙が形成された誘電体の管状空隙を遮るリブ部は、中心軸C周りに360度/mの間隔で、中心軸Cから放射方向に形成され、mは、nの約数Nと異なるので、中心軸C周りで管状空隙両側の一対のリブ部間の間隔と、同一の分布荷重のパターンが繰り返される領域の間隔は、
【0024】
【0025】
度毎にずれ、細径同軸ケーブルの長手方向(以下、単に長手方向という)の任意の位置で、管状空隙の外側を覆う一対のリブ部の間の部分には、各管状空隙毎に異なる分布荷重のパターンが作用する。
【0026】
その結果、長手方向のいずれの位置であっても、m個の管状空隙の収縮量は管状空隙毎に分散した量となり、そのうち、N箇所の最大荷重位置のうちの数カ所の最大荷重位置がリブ部若しくはその近傍の放射線上に位置するいずれか数個の管状空隙は、大きく収縮することがなく、誘電体の全体で収縮量は大きく変化しない。従って、細径同軸ケーブルの長手方向で、誘電体の空隙率は大きく変化することがなく、誘電体のみかけの比誘電率ε’が長手方向に沿ってほぼ安定し、細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0は所定値を維持する。
【0027】
請求項2に記載の細径同軸ケーブルは、打数2nが16の編組シールド線が巻き付けられる誘電体の外径が3mm以下であり、管状空隙の個数mは、nの約数の個数を除く、6個から10個までのいずれかの個数であることを特徴とする。
【0028】
外径が3mm以下の誘電体に形成される管状空隙の個数が6個以上であるので、管状空隙の外側を覆う誘電体の外環状部の厚みが薄肉となっても、中心軸C周りの角度が60度以下の間隔の一対のリブ部の間に支持されるので、破損しにくい。また、管状空隙の個数が10個以下で、管状空隙間を遮るリブ部の枚数は10枚以下となるので、誘電体内に一定の空間容量を確保できる。
【0029】
誘電体の周囲に編組シールド線を巻き付ける一般の編組機の打数2nは16であり、管状空隙の個数mは、nが8となる8の約数と異なるので、8個の管状空隙の収縮量は管状空隙毎に異なり、分散した量となり、長手方向の異なる位置で誘電体全体の空隙量は大きく変化せず、誘電体のみかけの比誘電率ε’は長手方向に沿ってほぼ一定で、一般の編組機で編組シールド層を形成した細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0は大きく変化しない。
【0030】
請求項3に記載の細径同軸ケーブルは、m個の管状空隙の中心軸に直交する断面形状は、全て同一であることを特徴とする。
【0031】
m個の管状空隙の中心軸に直交する断面形状が同一断面形状で、管状空隙の個数mが、nの約数の個数と異なる場合には、細径同軸ケーブルの長手方向に沿った1個の管状空隙の収縮量の変化は、誘電体全体でm倍の収縮量の変化とならないので、管状空隙の個数mが、nの約数の個数に一致する場合に比べて、より長手方向に沿った細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0を安定する。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明によれば、誘電体に、打数2nの編組シールド線が巻き付けられる場合に、誘電体の管状空隙の個数mを、nの約数と異なる個数mとする簡単な構成で、細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0を安定させ、高周波信号の伝送効率を上げることができる。
【0033】
誘電体に形成される管状空隙の個数が4個以上であるので、管状空隙の外側を覆う外環状部は、中心軸C周りの角度が90度以下の間隔の一対のリブ部の間に支持され、不用意な外力を受けても十分な強度が得られる。また、管状空隙の個数が12個以下であるので、管状空隙間を遮るリブ部の枚数は12枚以下となり、ケーブルの小径化が可能な程度に誘電体の空隙率を、所定値以上とすることができる。
【0034】
請求項2の発明によれば、一般の編組機で誘電体に打数16の編組シールド線が巻き付けられる場合に、6個から10個の誘電体の管状空隙の個数mを、nが8となる8の約数と異ならせるだけの簡単な構成で、一般の編組機で編組シールド線を巻き付けた細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0を安定させ、高周波信号の伝送効率を上げることができる。
【0035】
誘電体に形成される管状空隙の個数が6個以上であるので、外径が3mm以下の誘電体の管状空隙の外側を覆う外環状部が薄肉となっても、中心軸C周りの角度が60度以下の間隔の一対のリブ部の間に支持され、十分な強度が得られる。また、管状空隙の個数が10個以下であるので、管状空隙間を遮るリブ部の枚数は10枚以下となり、ケーブルの小径化が可能な程度に誘電体の空隙率を、所定値以上とすることができる。
【0036】
請求項3の発明によれば、m個の管状空隙の中心軸に直交する断面形状がそれぞれ異なる場合に比べて、より効果的に長手方向に沿った細径同軸ケーブルの特性インピーダンスZ0を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る細径同軸ケーブル1の要部平面図である。
【
図2】打数16で誘電体2の周囲に編組シールド線106を巻き付ける編組機30の概略図である。
【
図3】
図1若しくは
図18に示す編組シールド層101の要部を平面に展開した展開図である。
【
図4】
図3に示す編組シールド層101を
図1のP1-P1線の位置で切断した断面図である。
【
図5】
図3に示す編組シールド層101を
図1のP2-P2線の位置で切断した断面図である。
【
図6】
図3に示す編組シールド層101を
図1のP3-P3線の位置で切断した断面図である。
【
図7】
図1の細径同軸ケーブル1を、P1-P1線で切断した縦断面図である。
【
図8】
図1の細径同軸ケーブル1を、P3-P3線で切断した縦断面図である。
【
図9】本発明の第2実施の形態に係る細径同軸ケーブル20の編組シールド層21の要部を平面に展開した展開図である。
【
図10】
図9の編組シールド層21を拡大した拡大展開図である。
【
図11】
図10に示す編組シールド層21をP4-P4線で切断した断面図である。
【
図12】
図10に示す編組シールド層21をP5-P5線で切断した断面図である。
【
図13】
図10に示す編組シールド層21をP6-P6線で切断した断面図である。
【
図14】細径同軸ケーブル20を、
図10のP4-P4線で切断した縦断面図である。
【
図15】細径同軸ケーブル20を、
図10のP6-P6線で切断した縦断面図である。
【
図16】管状空隙5の個数mか打数2nが16のnと同一の8個の誘電体2’に換えた細径同軸ケーブル20’を、
図10のP4-P4線で切断して示す比較縦断面図である。
【
図17】管状空隙5の個数mか打数2nが16のnと同一の8個の誘電体2’に換えた細径同軸ケーブル20’を、
図10のP6-P64線で切断して示す比較縦断面図である。
【
図18】細径同軸ケーブル100の要部平面図である。
【
図19】
図18の細径同軸ケーブル100を、P1-P1線で切断した縦断面図である。
【
図20】
図18の細径同軸ケーブル100を、
図18のP3-P3線で切断した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の第1実施の形態に係る細径同軸ケーブル1を、
図1乃至
図8を用いて説明する。以下の本明細書中の説明では、
図1に図示する細径同軸ケーブル1の中心軸Cに沿った方向(上下方向)を長手方向と、図中12時の方向を0度若しくは360度として、中心軸C周りの各方向を時計回りの角度で表して説明する。
【0039】
細径同軸ケーブル1は、
図1、
図7に示すように、中心軸Cに沿って配線される中心導体3と、中心導体3から外方に向かって同軸上に積層され、その内側の外周面を被覆する誘電体2、編組シールド層101及び絶縁シース4とから構成されている。
【0040】
中心導体3は、強度と導電性に優れた銅若しくは銅合金の複数の細線を撚り合わせた撚り線若しくは細線に高導電性の金属をメッキした単線のいずれでもよいが、本実施の形態に係る同軸ケーブルは、絶縁シース4の外径が1mmの細径同軸ケーブル1であるので、単線が用いられている。
【0041】
絶縁シース4は、ポリエステル、ポリプロピレン等の絶縁性合成樹脂を編組シールド層101の周囲に押出成形して形成され、編組シールド層101を外部と絶縁するとともに、編組シールド層101内の細径同軸ケーブル1の各部を外力から保護する。
【0042】
誘電体2は、長尺成形品を成形する成形性、ケーブルの強度、可撓性及び低誘電率が求められることから、熱可塑性樹脂のフッ素樹脂やポリオレフィン樹脂が成形材料として用いられるが、ここでは、比誘電率が2.1、ヤング率が0.5GPaであるPTFE(ポリテトラクレオロエチレン)を成形材料として円筒状に成形される。
【0043】
誘電体2は、
図7に示すように、中心導体3の周囲を囲う内環状部2Aと、中心軸Cから放射方向に沿って内環状部2Aから40度間隔で板状に設けられた9枚のリブ部2Cと、各リブ部2Cの外端を環状に連結する外環状部2Bとが、中心軸C周りに一体に形成され、これにより、内環状部2Aとリブ部2Cと外環状部2Bに囲まれたそれぞれ扇形の同一断面形状の9個の管状空隙5が、中心軸C周りの40度間隔で形成されている。
【0044】
このように構成される誘電体2は、例えば、押出成形機におけるダイスと、中心導体3を挿通させる挿通孔が形成されたニップルとの間に、内環状部2Aとリブ部2Cと外環状部2Bとを形成するための成形流路を形成しておき、挿通孔に中心導体3を挿通させながら、挿通孔と成形流路に加熱溶融させた成形樹脂を流入し、挿通孔と成形流路を通して押出される成形樹脂によって、9個の管状空隙5が形成された誘電体2を成形する。
【0045】
管状空隙5を設けると、誘電体2の見かけ上の比誘電率ε’が低下するので、50Ωの特性インピーダンスを50Ωに保ちつつ、同軸ケーブルを細径化できる。ここで、各管状空隙5の空間容量を大きくすれば、誘電体2全体の空隙率が上昇し、編組シールド層101の内径をより小径化できるが、各管状空隙5を支持するその両側のリブ部2C間の間隔が広がり、管状空隙5の空間を維持する強度が損なわれる。一方、管状空隙5の両側のリブ部2C間の間隔を狭めれば、所定の強度が得られるが、リブ部2Cの枚数が増加することによって、誘電体2内に設ける空間容量が減少する。そこで、本発明では、管状空隙5の個数mを4個乃至12個とし、中心軸C周りで管状空隙5を遮るリブ部2Cの枚数を4枚乃至12枚としている。更に、各管状空隙5について、むらなく一定の強度を得て、誘電体2の全体でより大きな空間容量を得るため、4枚乃至12枚のリブ部2Cは、中心軸C周りに等角度間隔で管状空隙5の間を遮る放射方向に配設され、各管状空隙5は、同一の断面形状(ここでは、扇形)となっている。
【0046】
本実施の形態では、細径同軸ケーブル1の外径が1mmで、誘電体2の外径が0.73mmであるので、誘電体2内に中心軸C周りで同一断面形状の11個以上の管状空隙5を設けると、管状空隙5を遮るリブ部2Cも11枚以上となり、誘電体2全体の空隙率が著しく低下し、編組シールド層101の外径が1mm以下であるので、特性インピーダンスを50Ωとすることはできない。一方、管状空隙5を覆う外環状部2Bは、ケーブルを可撓性とするためにヤング率の低い材料で形成され、また、細径同軸ケーブル1の外径が1mmで、外環状部2Bの厚みは更に薄肉であるので、管状空隙5の個数を5個以下とすると、中心軸C周りのリブ部2Cの間隔が72度以上となり、リブ部2Cの間に掛け渡される外環状部2Bの強度を維持することができず、意図しない外力を受けて、外環状部2Bで覆われる管状空隙5の空隙が消滅したりケーブル表面の一部が凹む恐れがある。従って、誘電体2の外径が1mm以下である場合には、管状空隙5の個数mは、6個から10個とすることが望ましく、更に、後述するように、編組シールド層101の打数2nが「16」である場合には、個数mが「8」の約数Nに一致しないように、本実施の形態では管状空隙5の個数mを9個としている。
【0047】
本実施の形態に係る編組シールド層101の構成は、上述した従来の細径同軸ケーブル100の編組シールド層101と同一であるので、同一番号を付して以下説明する。
図3乃至
図6に示すように、編組シールド層101は、4本の素線105を帯状に一体とした編組シールド線106を一組とし、8組の内側編組シールド線106Aと同組数の8組の外側編組シールド線106Bとを順次交差させながら編み合わせて、誘電体2の周囲にスパイラル状に巻き付けて形成される。このうち、一組の編組シールド線106を構成する素線105の本数を持数、編み合わされる編組シールド線106の総組数を打数といい、本実施の形態では、持数が4、打数2nが16で、nは8となっている。
【0048】
図2は、8組の内側編組シールド線106Aと8組の外側編組シールド線106Bとを誘電体2の周囲にスパイラル状に巻き付けて編組シールド層101を形成する打数16の編組機30の概略図である。同図中の供給リール31には、9個の管状空隙5が形成された誘電体2の中心軸Cに沿って中心導体3が貫通して固定されたケーブル中間体1Aが巻き取られている。供給リール31に巻き取られたこのケーブル中間体1Aは、ガイドリール32を介して上方のダイス34に送られ、ガイドリール32とダイス34の間で鉛直方向に沿って支持される。
【0049】
鉛直方向に支持されたケーブル中間体1Aの周りには、一側が誘電体2の外周面にスパイラル状に巻き付けられた8組の内側編組シールド線106Aの他側を、それぞれ所定の張力を発生させながら巻き付け方向に沿って引き出す8個の内側ボビン33Aと、一側が誘電体2の外周面に内側編組シールド線106Aと逆方向にスパイラル状に巻き付けられた8組の外側編組シールド線106Bの他側を、それぞれ所定の張力を発生させながら巻き付け方向に沿って引き出す8個の外側ボビン33Bとが、上下2段に分けて配設されている。
【0050】
鉛直方向に支持されたケーブル中間体1Aが、その外周面に巻き付けられたいずれかの内側編組シールド線106A若しくは外側編組シールド線106Bの張力が他に勝りその方向に屈曲しないように、全ての編組シールド線106に発生する張力はほぼ等しく、また、上段の8個の内側ボビン33Aと、下段の8個の外側ボビン33Bとは、それぞれケーブル中間体1Aの鉛直軸周りに等角度間隔で配設されている。
【0051】
このように、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとを順次交差させながら編み合わせて編組シールド層101を形成する一般の編組機では、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとは同組数であり、また、多数組の編組シールド線106を用いて効率よく編み合わせ、かつ、各編組シールド線106に連なる隣り合うボビン33間が移動中に干渉しないように、上段の8個の内側ボビン33Aと下段の8個の外側ボビン33Bとは、それぞれ、鉛直軸周りに45度間隔で配設されている。その結果、一般の編組機の打数2nは、8組の内側編組シールド線106Aと8組の外側編組シールド線106Bとを編み合わせる「16」であり、本実施の形態に係る編組シールド層101も上述の通り打数16の編組機で形成されている。
【0052】
上段側の8個の内側ボビン33Aと下段側の8個の外側ボビン33Bとは、図示するように、それぞれ内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bが異なる巻き付け方向に沿って巻き付けられるように鉛直軸周りで逆方向に回転し、鉛直軸周りで隣り合う内側ボビン33Aと外側ボビン33Bとは、逆方向に回転しながら、交互に上下動する。
【0053】
その結果、
図1、
図3に示すように、8組の内側編組シールド線106Aと8組の外側編組シールド線106Bとは、円筒状の誘電体2の中心軸Cに沿って互いに逆方向にスパイラル状にその表面に巻き付けられ、誘電体2のほぼ表面全体が、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bとが重なる部分で密に覆われる。
【0054】
図4乃至
図6の各図に示すように、細径同軸ケーブル1の中心軸Cに沿った各位置(P1、P2、P3)で、中心軸C周りの内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bの配置パターンは変化するが、いずれの位置(P1、P2、P3)であっても、中心軸C周りの45度毎に、同一の配置パターンが繰り返されので、誘電体2の外環状部2Bを中心軸C周りに45度毎に分割した各領域においては、同一配置パターンとなり、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bに発生する張力によって、外環状部2Bの各領域が中心軸Cの方向に受ける分布荷重のパターンは全て同一パターンとなる。
【0055】
分布荷重のうち、外環状部2Bが中心軸C方向に受ける最大圧縮加重は、内側編組シールド線106Aと外側編組シールド線106Bが重なる部分の中間の位置(以下、最大荷重位置という)で発生すると仮定し、最大荷重位置と最大圧縮荷重の作用方向を
図7、
図8において矢印で表すと、細径同軸ケーブル1の長手方向のP1の位置では、
図7に示すように、0度から315度までの45度の間隔で外環状部2Bの各位置に最大圧縮荷重が作用する。一方、誘電体2に等角度間隔で形成される管状空隙5の個数mは9個であるので、管状空隙5を隔てる9枚のリブ部2Cは、中心軸C周りに40度間隔で形成され、中心軸C周りに40度毎に分割された一対のリブ部2C間の外環状部2Bの部分に対する矢印で示す最大荷重位置は、中心軸C周りで5度づつ相対移動し、これにより各管状空隙5を覆う外環状部2Bの部分毎に撓み量は異なる。例えば、最大荷重位置が両側のリブ部2Cの中央にある外環状部2B
1は中心軸Cの方向に大きく撓み、外環状部2B
1で覆われた管状空隙5
1の空間容量が減少するが、最大荷重位置がリブ部2Cの放射線上若しくはその近傍にある外環状部2B
4、2B
5、2B
6の撓み量はわずかで、管状空隙5
4、5
5、5
6の空間容量は略変化しない。従って、外環状部2Bが撓むことによる各管状空隙5の収縮量は、管状空隙5毎に異なる量に分散し、誘電体2の全体での空隙率は大きく減少しない。
【0056】
また、細径同軸ケーブル1の中心軸Cに沿ったP1の位置からP3の位置に移動すると、
図8に示すように、各最大荷重位置は、P1の位置に比べて22.5度移動し、各外環状部2Bが編組シールド線106から受ける分布荷重のパターンも変化するが、細径同軸ケーブル1の長手方向のいずれの位置に移動しても、外環状部2Bを中心軸C周りに45度毎に分割した各領域では、外環状部2Bが受ける分布荷重のパターンは同一となっている。一方、管状空隙5を覆う外環状部2Bは、外環状部2Bを中心軸C周りに40度毎に分割した部分であるので、各管状空隙5を覆う外環状部2Bに対する矢印で示す最大荷重位置は、中心軸C周りに5度づつ相対移動し、各管状空隙5を覆う外環状部2B毎に撓み量が異なる。
【0057】
従来の細径同軸ケーブル100をP1及びP3の位置で切断した
図19、
図20の縦断面図と、本実施の形態に係る細径同軸ケーブル1を同じ位置で切断した
図7,
図8の縦断面図を比較すれば、明らかなように、本実施の形態に係る細径同軸ケーブル1によれば、細径同軸ケーブル1の長手方向の異なる位置であっても、9個の各管状空隙5の収縮量がそれぞれ異なる量に分散し、誘電体2全体の収縮量は大きく変動することがない。その結果、細径同軸ケーブル1の長手方向に沿って、誘電体2の空隙率は大きく変化することがなく、誘電体2のみかけの比誘電率ε’が長手方向に沿ってほぼ安定するので、細径同軸ケーブル1の特性インピーダンスZ
0は所定値を維持する。
【0058】
上記第1実施の形態に係る細径同軸ケーブル1では、1組の内側編組シールド線106Aと1組の外側編組シールド線106Bとを交互に順次交差させながら編み合わせて編組シールド層101を形成しているが、内側編組シールド線と外側編組シールド線のいずれか1組の編組シールド線を、他方の複数組の編組シールド線に交差させながら編み合わせて編組シールド層を形成するものであっても本発明を適用できる。
【0059】
以下、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bのいずれか一方の1組の編組シールド線を、他方の2組の編組シールド線に交差させながら編み合わせて編組シールド層21とした本発明の第2実施の形態に係る細径同軸ケーブル20を、
図9乃至
図15を用いて説明する。この第2実施の形態の説明において、第1実施の形態にかかる構成と同一若しくは同様に作用する構成については、同一番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
編組シールド層21は、第1実施の形態と同様に、8組の内側編組シールド線24Aと8組の外側編組シールド線24Bとを編み合わせる打数2nが「16」の編組機を用いてて形成するが、
図10乃至
図13に示すように、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bのいずれか一方の1組の編組シールド線24を、逆方向にスパイラル状に巻き付ける他方の2組の編組シールド線24に交差させながら、円筒状の誘電体2の表面にスパイラル状に巻き付ける点で異なる。すなわち、
図9、
図10に示すように、いずれか一方の1組の編組シールド線24A(例えば内側編組シールド線24A1)は、逆方向にスパイラル状に巻き付けられる他方の2組の編組シールド線24(例えば、外側編組シールド線24B1、24B2や外側編組シールド線24B3、24B4)と内外の位置を交差させながら編み合わされ、いずれか他方の1組の編組シールド線24(例えば外側編組シールド線24B3)は、逆方向にスパイラル状に巻き付けられる一方の2組の編組シールド線24(例えば、内側編組シールド線24A1、24A2や、内側編組シールド線24A3、24A4)と内外の位置を交差させながら編み合わされる。
【0061】
その結果、
図9に示すように、誘電体2のほぼ表面全体が、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bとが重なる積層部分(
図9の薄墨に着色した部分)で密に覆われ、高周波信号の漏れを防止できる。
【0062】
このように、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bとを交差させながら編み合わせて形成する編組シールド層21では、
図12に示すように、隣り合う編組シールド線24間の隙間で、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bの配置パターンが中心軸C周りの45度毎に異なり、厳密にいえば、中心軸C周りで90度毎(打数が2nである場合に360(2/n)度毎)に同一の配置パターンが繰り返されることになるが、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bによる圧縮荷重が重なって、実質的に圧縮荷重が誘電体2の外環状部2Bに作用する部分は、内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bとが重なる積層部分であり、この積層部分の配置パターンは、中心軸C周りの45度毎(打数が2nである場合に360/n度毎)に同一配置パターンが繰り返される。
【0063】
内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bとが重なる積層部分で圧縮荷重が作用するとすれば、外環状部2Bを中心軸C周りに45度毎に分割した各領域で、積層部分の配置パターンが同一であるので、積層部分の内側編組シールド線24Aと外側編組シールド線24Bの張力によって、各領域が中心軸Cの方向に受ける分布荷重のパターンも全て同一パターンとなる。分布荷重のうち、外環状部2Bが中心軸C方向に受ける最大圧縮加重は、積層部分の中間の最大荷重位置で発生するものと仮定し、最大荷重位置と最大圧縮荷重の作用方向を
図14、
図15において矢印で表すと、細径同軸ケーブル20の長手方向のP4の位置では、
図14に示すように、22.5度から337.5度までの45度の間隔で外環状部2Bの各位置に最大圧縮荷重が作用する。
【0064】
この第2実施の形態においても、編組シールド層21を形成する打数2nが16であるので、管状空隙の個数mは6個から10個のいずれかで「8」の約数とならない個数とするため、誘電体は、9個の管状空隙5が形成された第1実施の形態に係る誘電体2となっている。誘電体2に等角度間隔で形成される管状空隙5の個数mは9個であるので、管状空隙5を隔てる9枚のリブ部2Cは、中心軸C周りに40度間隔で形成され、中心軸C周りに40度毎に分割された一対のリブ部2C間の外環状部2Bの部分に対する矢印で示す最大荷重位置は、中心軸C周りで5度づつ相対移動し、これにより各管状空隙5を覆う外環状部2Bの部分毎に撓み量は異なる。つまり、9個の各管状空隙5を覆う中心軸C周りの間隔が40度の各外環状部2Bの部分において、最大荷重が作用する最大荷重位置は、それぞれ中心軸C周りで相対的に5度毎に異なる位置にあるので、必ず複数の最大荷重位置はリブ部2Cの放射線上若しくはその近傍に位置することとなり、その近傍にある外環状部2Bの部分の撓み量はわずかとなる。従って、外環状部2Bの部分のいずれかが撓んでも管状空隙5全体では大きく収縮することはなく、誘電体2の全体での空隙率はわずかに減少するにとどまる。
【0065】
また、細径同軸ケーブル20の中心軸Cに沿ったP4の位置からP6の位置に移動すると、
図15に示すように、各最大荷重位置は、P4の位置に比べて22.5度移動し、各外環状部2Bの部分が編組シールド線24から受ける分布荷重のパターンも変化するが、長手方向のいずれの位置であっても、外環状部2Bを中心軸C周りに45度毎に分割した各領域で、各領域が受ける分布荷重のパターンは全て同一となっている。一方、管状空隙5を覆う外環状部2Bの部分は、外環状部2Bを中心軸C周りに40度毎に分割した部分であるので、9個の各管状空隙5を覆う中心軸C周りの間隔が40度となる各外環状部2Bの部分において、最大荷重が作用する最大荷重位置が、それぞれ中心軸C周りで5度毎に異なる位置となる相対位置関係は変わらない。従って、長手方向のP4の位置と同様、P6の位置であっても、外環状部2Bの部分のいずれかが撓んでも管状空隙5全体では大きく収縮することがなく、誘電体2全体での空隙率はわずかに減少するにとどまる。
【0066】
この第2実施の形態について、9個の管状空隙5が形成された誘電体2を、8個の管状空隙104が形成された誘電体103とした細径同軸ケーブル20’を比較例とし、細径同軸ケーブル20’を、それぞれ長手方向の同じP4とP6の位置で切断した
図16、
図17の縦断面図と比較して説明する。
【0067】
比較例の細径同軸ケーブル20’の編組シールド層21も打数2nが16であるので、細径同軸ケーブル20と同様に、中心軸C周りの45度毎に同一配置パターンが繰り返され、外環状部103Bを中心軸C周りに45度毎に分割した各領域で、積層部分の配置パターンは同一であるので、各領域が中心軸Cの方向に受ける分布荷重のパターンも全て同一パターンとなり、矢印で示す最大荷重位置は、中心軸C周りに45度の間隔で存在する。
【0068】
一方、誘電体103の管状空隙104の個数mは、編組シールド21の打数2nが16で、8となるnと同数なので、管状空隙104の両側のリブ部103Cの間の角度は、同一の分布荷重のパターンが繰り返される間隔の45度に一致する。その結果、細径同軸ケーブル20’の全ての管状空隙104を覆う外環状部103Bの部分は、それぞれ編組シールド線24から中心軸Cの方向に同一パターンの分布荷重を受ける。つまり、細径同軸ケーブル20’の長手方向の位置にかかわらず、全ての管状空隙104を覆う外環状部103Bの部分は、全て同一パターンの分布荷重を受け、各外環状部103Bの部分は、相対的に同一位置となる最大荷重位置で最大荷重を受ける。
【0069】
例えば、
図14と同じP4の位置で細径同軸ケーブル20’を切断した
図16の縦断面図に示すように、P4の位置では、全ての管状空隙104を覆う外環状部103Bの部分で矢印で示す最大荷重位置がリブ部103Cの放射線上にあるので、最大圧縮荷重はリブ部103Cの軸方向に作用し、全ての管状空隙104を覆う外環状部103Bの部分は、ほぼ変形しない。その結果、P4の位置で、誘電体103の空隙率は最大となる。
【0070】
また、
図15と同じP6の位置で細径同軸ケーブル20’を切断した
図17の縦断面図に示すように、P4と長手方向で異なるP6の位置で、全ての管状空隙104を覆う外環状部103Bの部分で、矢印で示す最大荷重位置は、一対のリブ部103Cの中間にあり、各管状空隙104のそれぞれ収縮量は最大となる。その結果、P6の位置で、誘電体103の空隙率は、最小となる。
【0071】
細径同軸ケーブル20’をP4及びP6の位置で切断した
図16、
図17の縦断面図と、第2実施の形態に係る細径同軸ケーブル20を同じ位置で切断した
図14,
図15の縦断面図を比較すれば、明らかなように、第2実施の形態に係る細径同軸ケーブル20によれば、細径同軸ケーブル20の長手方向の異なる位置であっても、9個の各管状空隙5の収縮量はそれぞれ異なる量に分散され、誘電体2全体の収縮量は細径同軸ケーブル20の長手方向の位置にかかわらず、ほぼ同一となる。その結果、細径同軸ケーブル20の長手方向に沿って、誘電体2の空隙率は大きく変化することがなく、誘電体2のみかけの比誘電率ε’は長手方向に沿ってほぼ安定しているので、細径同軸ケーブル20の特性インピーダンスZ
0は所定値を維持する。
【0072】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上述の各実施の形態では、絶縁シース4の外径が1mmの細径同軸ケーブル1、20で説明したが、この外径に限らず、ダウンサイジングの目的で管状空隙を形成した細径同軸ケーブルであれば、種々の外径の同軸ケーブルに本発明を適用できる。
【0073】
例えば、外径が3mm以下の細径同軸ケーブルで外環状部2Bの厚みが薄肉となっても、管状空隙5の個数mが6個以上で10個以下であれば、外環状部2Bの強度を維持しつつ、所定値以上の空隙率を得ることができ、管状空隙5の個数mを、6個乃至10個のいずれかで、編組シールド層101の打数が2nである場合にnの約数Nと一致しない個数としてもよい。
【0074】
また、上述の各実施の形態では、全ての管状空隙5の中心軸Cに直交する断面形状が同一であるとして説明したが、各管状空隙5が異なる断面形状であっても、各管状空隙5を覆う外環状部2Bの部分には、相対的に異なる位置に最大圧縮荷重が作用し、それぞれ異なる収縮量で収縮するので、長手方向に沿って誘電体2全体の空隙率は大きく変化しない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、小径化する目的で、誘電体に多数の管状空隙が形成される細径同軸ケーブルに適している。
【符号の説明】
【0076】
1 細径同軸ケーブル(第1実施の形態)
2 誘電体
2A 内環状部
2B 外環状部
2C リブ部
3 中心導体
5 管状空隙
20 細径同軸ケーブル(第2実施の形態)
21 編組シールド層
24 編組シールド線
24A 内側編組シールド線
24B 外側編組シールド線
101 編組シールド層
106 編組シールド線
106A 内側編組シールド線
106B 外側編組シールド線
m 管状空隙の個数
C 中心軸
2n 打数
N nの約数