(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027469
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240222BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240222BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G09F9/00 304B
G09F9/00 350Z
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130280
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 和也
【テーマコード(参考)】
2H199
5G435
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA48
2H199CA59
2H199CA89
5G435AA12
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE02
5G435EE05
5G435EE13
5G435GG44
5G435LL07
(57)【要約】
【課題】表示パネルの効率的な放熱を達成すること。
【解決手段】画像表示装置100は、第1表示素子11aと、結像用の光学部材2a,2bと、第1表示素子11aと光学部材2a,2bを収納する光学ケースCAと、光学ケースCAを支持する第1金属フレーム52aと、第1表示素子11aから第1金属フレーム52aに熱を伝導させる放熱シート11sとを備え、第1金属フレーム52aは、放熱シート11sを貼付ける平坦部56tと、平坦部56tの近傍に配置される冷却フィン構造56sとを有する。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、
結像用の光学部材と、
前記表示素子と前記光学部材とを収納する光学ケースと、
前記光学ケースを支持する金属フレームと、
前記表示素子から前記金属フレームに熱を伝導させる放熱シートと、を備え、
前記金属フレームは、前記放熱シートを貼付ける平坦部と、前記平坦部の近傍に配置される冷却フィン構造とを有する、画像表示装置。
【請求項2】
前記放熱シートは、グラファイト製である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記金属フレームは、前記光学ケースの上部に連結され、前記光学ケースを吊るすように支持している、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記放熱シートは、前記光学ケースの前端の上部の形成された前記表示素子用の挿入口を介して前記光学ケース外に引き出されている、請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示素子から延びる配線が前記光学ケースの前記挿入口を介して前記光学ケース外に延びる、請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記光学ケースの前記挿入口は、前記表示素子の背面側において前記ホルダーとの間に隙間を有し、
前記放熱シートが前記隙間を介して外部に延びる、請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記光学ケースの前記挿入口は、前記表示素子の背面側において前記ホルダーとの間に隙間を有し、
前記配線が前記隙間を介して外部に延びる、請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記表示素子は、前記光学ケース中の前方端において、表示面が後方に向かうように配置されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記光学ケースは、封止されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記金属フレームの前記平坦部は、前記金属フレームの前部に設けられている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記金属フレームの前記冷却フィン構造は、前記金属フレームの前記前部において前記平坦部を挟むように配置されている、請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記金属フレームは、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、及びチタンの1つ以上を含む合金で形成される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記放熱シートの一端は、前記表示素子の裏面に貼り付けられ、前記放熱シートの他端は、前記平坦部に貼り付けられている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記表示素子から延びる配線は、前記金属フレーム上に配置される回路基板に接続され、
前記放熱シートは、前記配線を回避する経路で前記金属フレームの前部に延びている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記光学部材から出射された画像光が入射するコンバイナーを備え、
前記放熱シートは、前記コンバイナーの上端を回避し前記金属フレームの下を回り込む経路で前記金属フレームの前部に延びている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項16】
前記光学ケースと、前記金属フレームとは、外装ケースの内部に収納されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする画像表示装置に関し、特に金属フレームによって光学系を支持するタイプの画像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置として、表示パネルと、表示パネルを保持する筐体と、表示パネルから筐体に熱を伝導させる放熱シートとを備えるものが公知となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示パネルは、防水機能を有するケース中に収納されるが、表示パネルから延びる放熱シートの先端をケースに接着すると、発熱部である表示パネルと同じ空間に放熱シートの先端を接着することになり、ケース中に放熱部の起点を作りがちになる。そのため、放熱シートの先端から放熱したはずの熱の影響が表示パネルに戻される現象が生じ、放熱効率を下げる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における画像表示装置は、表示素子と、結像用の光学部材と、表示素子と光学部材を収納する光学ケースと、光学ケースを支持する金属フレームと、表示素子から金属フレームに熱を伝導させる放熱シートとを備え、金属フレームは、放熱シートを貼付ける平坦部と、平坦部の近傍に配置される冷却フィン構造とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の画像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図3】画像表示装置の斜め後方からの斜視図である。
【
図4】片側の表示装置の光学系的な内部構造を説明する側方断面図である。
【
図7】
図6の光学装置からシールド部材を除いた状態を示す斜視図である。
【
図9】表示部を支持する金属フレームを説明する平面図及び斜視図である。
【
図10】支持構造等の変形例を説明する斜視図である。
【
図11】上カバーの平面図、中カバーの平面図、及び下カバーの平面図である。
【
図12】光学装置の姿勢変化を説明する側面図である。
【
図14】バレル及びこれに保持された光学部材等の側方断面図である。
【
図16】表示ユニットを示す表側の斜視図、側断面図、及び裏側の斜視図である。
【
図20】画像表示装置の内部構造を説明する側断面斜視図である。
【
図22】変形例の画像表示装置の構造を説明する側断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、
図1、2等を参照して、本発明に係る画像表示装置の一実施形態について説明する。
【0008】
図1は、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する。)200の装着状態を説明する斜視図であり、
図2は、HMDの本体の正面図であり、
図3は、HMDの本体の後方かつ上方から斜視図である。HMD200は、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200又は画像表示装置100を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
HMD200は、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bと、表示装置100A,100Bを支持するテンプル状の一対の支持装置100Cと、情報端末であるユーザー端末90とを備える。第1表示装置100Aは、単独で画像表示装置として機能し、上部に配置される第1表示駆動部102aと、メガネレンズ状で眼前を覆う第1コンバイナー103aと、コンバイナー103aをその前方から覆う光透過カバー104aとで構成される。第2表示装置100Bも同様に、単独で画像表示装置として機能し、上部に配置される第2表示駆動部102bと、メガネレンズ状で眼前を覆う第2コンバイナー103bと、コンバイナー103bをその前方から覆う光透過カバー104bとで構成される。支持装置100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材であり、外観上一体化されている表示駆動部102a,102bを介して一対のコンバイナー103a,103bの上端側と、一対の光透過カバー104a,104bの上端側とを支持している。一対の表示駆動部102a,102bを組み合わせたものを駆動装置102と呼ぶ。一対の光透過カバー104a,104bを組み合わせたものをシェード104と呼ぶ。
【0010】
第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、光学的に同一又は左右反転させたものであり、第2表示装置100Bについては、詳細な説明を省略する。
【0011】
図2及び3を参照して、駆動装置102は、外観を構成する外装ケース7又はカバー部材70として、フロントカバー71と、中枠72と、ロアーカバー73とを有する。フロントカバー71は、駆動装置102の前部と上部とを覆う。フロントカバー71とシェード104とは、接合され一体化されている。中枠72は、駆動装置102に内蔵された光学部材等を両端で支持し、内蔵部品を主に前方から覆う。ロアーカバー73は、駆動装置102に内蔵された光学部材を主に後方や下方から覆う。中枠72の両端には、ヒンジ74が取り付けられており、一対の支持装置100Cを折り曲げ可能に支持している。
【0012】
図4は、第1表示装置100Aの光学的構造を説明する側方断面図である。第1表示装置100Aは、第1表示素子11aと第1表示部20aと第1回路部材80aとを備える。第1表示素子11aは、画像光生成装置である。第1表示部20aは、虚像を形成する結像光学系であり、投射レンズ21と、プリズムミラー22と、シースルーミラー23とを一体化した状態で有する。第1表示部20aのうち、投射レンズ21とプリズムミラー22とは、第1表示素子11aからの画像光MLが入射する第1投射光学系12aとして機能し、シースルーミラー23は、上記第1投射光学系12aから出射される画像光MLを瞳位置PP又は眼EYに向けて部分的に反射する部分透過ミラー123として機能する。第1投射光学系12aを構成する投射レンズ21及びプリズムミラー22は、映像光又は画像光MLが入射される第1光学部材及び第2光学部材にそれぞれ対応する。また、第1表示素子11aと投射レンズ21とプリズムミラー22とは、
図1に示す第1表示駆動部102aを構成する光学要素であり、シースルーミラー23は、
図1に示す第1コンバイナー103aに対応する。シースルーミラー23は、外側に凸の外形を有する。第1投射光学系12aを構成する投射レンズ21及びプリズムミラー22は、第1表示素子11aとともに相互にアライメントされた状態でバレル41内に固定されている。バレル41は、第1投射光学系12aを位置決めした状態で収納する光学ケースCAである。
【0013】
投射レンズ21等を構成する光学素子を収納したバレル41又は光学ケースCAは、第1金属フレーム52aに支持され、第1金属フレーム52aの下側に配置されている。第1金属フレーム52aは、カバー部材70によって覆われ、バレル41も、カバー部材70によって全体的に覆われている。第1金属フレーム52aは、金属材料で形成されている。バレル41とカバー部材70とは、遮光性の樹脂材料で形成され、バレル41の出射口41oにおいて、プリズムミラー22の一面を露出させている。バレル41は、上部41tが第1金属フレーム52aに嵌合するように当接し、第1金属フレーム52aに吊るされた状態で固定されている。結果的に、第1表示部20aは、バレル41の上部41tが第1金属フレーム52aに嵌合するように当接してネジ止めされることにより、第1金属フレーム52aに吊るされた状態で固定されている。第1金属フレーム52aは、第1回路部材80aを配置するための凹所REを上側に有する。カバー部材70は、バレル41等と組み合わせることで密閉性を高めた内部空間ESを有し、この内部空間ESにおいて、第1回路部材80aの上方に付属部品回路部材80cを収納する。
【0014】
第1表示装置100Aにおいて、第1表示素子11aは、自発光型の画像光生成装置である。第1表示素子11aは、画像光MLを第1投射光学系12aに出射する。バレル41は、投射レンズ21等の光学素子とともに第1表示素子11aを収納して支持する。第1表示素子11aは、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであり、2次元の表示面11dにカラーの静止画又は動画を形成する。第1表示素子11aは、第1回路部材80a、具体的には表示制御装置88に駆動されて表示動作を行う。第1表示素子11aは、有機ELディスプレイに限らず、無機EL、有機LED、LEDアレイ、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。第1表示素子11aは、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。第1表示素子11aとして、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0015】
本実施形態の場合、第1表示部20aは、2つの反射面を含み、シースルーミラー23及びプリズムミラー22よって光路の折り曲げが行われる。第1表示部20aは、軸外し光学系OSとなっている。投射レンズ21、プリズムミラー22、及びシースルーミラー23は、非軸対称に配置され、非軸対称な光学面を有する。この第1表示部20aでは、YZ面に平行な軸外し面内(すなわち基準面)内で光軸AXの折り曲げを行うことで、かかる軸外し面に沿って光学素子21,22,23が配列されている。具体的には、YZ面に平行な軸外し面(すなわち基準面)において、投射レンズ21から内反射面22bまでの光路部分P1と、内反射面22bからシースルーミラー23までの光路部分P2と、シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路部分P3とが、Z字状に2段階で折り返される配置となっている。結果的に、シースルーミラー23において光軸AXが交差する中央箇所の法線は、Z方向に対してθ=40~50°程度の角度をなす。この第1表示部20aでは、第1表示装置100Aを構成する光学素子21,22,23が縦方向に高さ位置を変えて配列されることになり、第1表示装置100Aの横幅の増大を防止することができる。さらに、プリズムミラー22等での反射による光路の折り畳みによって、光路部分P1~P3がZ字状に2段階で折り返される配置となっており、かつ、光路部分P1,P3が比較的水平に近いため、第1表示部20aを上下方向や前後方向に関しても小型化することできる。また、シースルーミラー23の中央箇所の傾斜角θが40~50°であることから、視線に対応する光路部分P3の傾きが一定とした場合、光路部分P2のZ軸に対する傾きが70°から90°となり、画像表示装置100のZ方向の厚みを低減することが容易になる。
【0016】
第1表示部20aのうち、投射レンズ21から内反射面22bまでの光路部分P1は、視点を基準とする後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。内反射面22bからシースルーミラー23までの光路部分P2は、前方に向かって斜め下方向に延びている。水平面方向(XZ面)を基準とした場合、光路部分P2の傾斜が光路部分P1の傾斜よりも大きくなっている。シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路部分P3は、後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。図示の例では、光軸AXのうち光路部分P3に対応する部分は、+Z方向に向かって、下向きを負として、-10°程度となっている。つまり、部分透過ミラー123は、光軸AX又は光路部分P3が所定角度上向き、つまり10°程度上向きとなるように画像光MLを反射する。結果的に、光軸AXのうち光路部分P3に対応する部分を延長した出射光軸EXは、前方の+Z方向に平行な中心軸HXに対して10°程度下向きに傾いて延びる。これは、人間の視線が水平方向より下側に約10°傾いた若干の伏し目状態で安定するからである。なお、瞳位置PPに対して水平方向に延びる中心軸HXは、第1表示装置100Aを装着した装着者USが直立姿勢でリラックスして正面に向いて水平方向又は水平線を注視した場合を想定したものとなっている。
【0017】
第1表示部20aのうち、投射レンズ21は、第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qを含む。投射レンズ21は、第1表示素子11aから出射された画像光MLを受けて、プリズムミラー22に入射させる。投射レンズ21は、第1表示素子11aから出射された画像光MLを平行光束に近い状態に集光する。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面すなわち入射面及び出射面は、自由曲面又は非球面であり、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面には、反射防止膜を形成することができる。
【0018】
プリズムミラー22は、ミラーとレンズとを複合させた機能を有する屈折反射機能を有する光学部材であり、投射レンズ21からの画像光MLを屈折させつつ反射する。プリズムミラー22は、入射部に対応する入射面22aと、反射部に対応する反射面である内反射面22bと、出射部に対応する出射面22cとを有する。プリズムミラー22は、前方から入射する画像光MLを、入射方向を反転させた方向(プリズムミラー22から見た光源の方向)に対して下方に傾斜した方向に折り返すように出射する。プリズムミラー22を構成する光学面である入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。プリズムミラー22の光学面、つまり入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、例えば自由曲面である。入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。プリズムミラー22は、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。内反射面22bについては、全反射によって画像光MLを反射するものに限らず、金属膜又は誘電体多層膜からなる反射面とすることもできる。この場合、内反射面22b上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜し、或いは金属で形成されたシート状の反射膜を貼り付ける。詳細な図示は省略するが、入射面22a及び出射面22c上には、反射防止膜を形成することができる。
【0019】
シースルーミラー23すなわち第1コンバイナー103aは、凹の表面ミラーとして機能する湾曲した板状の反射光学部材であり、プリズムミラー22からの画像光MLを反射するとともに外界光OLを部分的に透過させる。シースルーミラー23は、第1投射光学系12aの出射領域に配置されたプリズムミラー22からの画像光MLを瞳位置PPに向けて反射する。シースルーミラー23は、反射面23cと外側面23oとを有する。
【0020】
シースルーミラー23は、画像光MLを部分的に反射し、プリズムミラー22の出射面22cの光出射側に形成された中間像を拡大する。シースルーミラー23は、眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPを覆うとともに瞳位置PPに向かって凹形状を有し、外界に向かって凸形状を有する凹面ミラーである。瞳位置PP又はその開口PPaは、アイポイント又はアイボックスと呼ばれる。瞳位置PP又は開口PPaは、第1表示部20aの出射側における射出瞳EPに相当する。シースルーミラー23は、コリメーターであり、表示面11dの各点から出射された画像光MLの主光線であって、第1投射光学系12aのプリズムミラー22の出射側近傍に結像した後で一旦広がった画像光MLの主光線を瞳位置PPに収束させる。シースルーミラー23は、凹面ミラーとして、画像光生成装置である第1表示素子11aに形成され第1投射光学系12aによって再結像された中間像(不図示)を拡大視することを可能にする。より詳細には、シースルーミラー23は、視野レンズと同様に機能し、プリズムミラー22の出射面22cの後段に形成された中間像(不図示)の各点からの画像光MLをコリメートした状態で瞳位置PPに全体として集めるように入射させる。シースルーミラー23は、中間像と瞳位置PPとの間に配置される観点で、画角(眼の正面方向に延びる光軸AXを基準として上下左右における視野角を合わせたもの)に相当する有効領域EA以上の広がりを有することが必要となる。シースルーミラー23において、有効領域EAよりも外側に延びる外領域については、結像に直接影響しないので、任意の面形状とすることができるが、メガネレンズ状の外観を確保する観点からは、有効領域EAの外縁の面形状の曲率と同じ、又は当該外縁から連続的に変化するものであることが望ましい。
【0021】
シースルーミラー23は、板状体23bの裏面上に透過性反射膜23aを形成した構造を有する半透過型のミラー板である。シースルーミラー23の反射面23cは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。シースルーミラー23の反射面23cは、例えば自由曲面である。反射面23cは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。反射面23cは、有効領域EA以上の広がりを有する必要がある。反射面23cが有効領域EAよりも広い外領域に形成されている場合、有効領域EAの背後からの外界像と、上記外領域の背後からの外界像とに関して、見え方の差が生じにくくなる。
【0022】
シースルーミラー23の反射面23cは、画像光MLの反射に際して一部の光を透過させる。これにより、外界光OLがシースルーミラー23を通過するので、外界のシースルー視が可能になり、外界像に虚像を重ねることができる。この際、板状体23bが数mm程度以下に薄ければ、外界像の倍率変化を小さく抑えることができる。反射面23cの画像光MLや外界光OLに対する反射率は、画像光MLの輝度確保や、シースルーによる外界像の観察を容易にする観点で、想定される画像光MLの入射角範囲(有効領域EAに相当)において10%以上50%以下とする。シースルーミラー23の基材である板状体23bは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。板状体23bは、これを周囲から支持する支持板61と同一の材料で形成され、支持板61と略同一の厚みを有する。透過性反射膜23aは、例えば膜厚を調整した複数の誘電体層からなる誘電体多層膜で形成される。透過性反射膜23aは、膜厚を調整したAl、Ag等の金属の単層膜又は多層膜であってもよい。透過性反射膜23aは、例えば蒸着を利用した積層によって形成できるが、シート状の反射膜を貼り付けることによっても形成できる。板状体23bの外側面23oには、反射防止膜が形成されている。
【0023】
シースルーミラー23の前方には、光透過カバー104aが配置されている。光透過カバー104aは、高い光透過性を有する薄板状の部材であり、その上端は、カバー部材70に支持されている。光透過カバー104aは、外界に向かって凸形状を有し、一様な厚みを有する。光透過カバー104aは、画像光MLの結像に影響せず、その曲率は、シースルーミラー23と干渉しない範囲で、任意に設定することができる。光透過カバー104aは、数mm程度以下に薄く、外界像の観察に殆ど影響を与えない。光透過カバー104aは、例えば樹脂で形成され、表面に反射防止膜やハードコート層を形成してもよい。
【0024】
光路について説明すると、第1表示素子11aからの画像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から出射される。投射レンズ21を通過した画像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの画像光MLは、一旦中間像を形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって50%程度以下の反射率で反射される。シースルーミラー23で反射された画像光MLは、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、光透過カバー104aを透過し、シースルーミラー23やその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、第1表示装置100Aを装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0025】
図4に示す第1回路部材80a又は
図5に示す第2回路部材80bは、表示制御装置88を含む。表示制御装置88は、表示制御回路であり、第1表示素子11a等に対して画像に対応する駆動信号を出力し第1表示素子11a等の表示動作を制御する。表示制御装置88は、例えばIF回路、信号処理回路等を備え、外部から受け取った画像データ又は画像信号に応じて、第1表示素子11a等に2次元的な画像表示を行わせる。表示制御装置88は、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを統括するメイン基板を含むものであってもよい。メイン基板は、
図1に示すユーザー端末90との間で通信を行いユーザー端末90から受信した信号に対して信号変換を行うインターフェース機能や、第1表示装置100Aの表示動作と第2表示装置100Bの表示動作とを連携させる統合機能を有するものとすることができる。なお、表示制御装置88やユーザー端末90を備えないHMD200又は画像表示装置100も画像表示装置である。
【0026】
図4に示す付属部品回路部材80cは、表示制御装置88の制御下で動作し、
図2に示す付属部品であるカメラ3a、照度センサー3b、及び近接センサー3cを動作させ、
図3に示す近接センサー3d等を動作させる。具体的には、付属部品回路部材80cは、例えばカメラ3aによってHMD200の前方を撮影し、前方画像を取得する。また、付属部品回路部材80cは、照度センサー3bによってHMD200の周囲環境の明るさを検知し、例えば表示輝度の制御のための情報として表示制御装置88に出力する。付属部品回路部材80cは、近接センサー3cによってHMD200に前方から近接する物体を検知し、近接センサー3dによってHMD200に後方から近接する物体(具体的には装着者)を検知し表示制御装置88に出力する。
【0027】
図5は、HMD200又は画像表示装置100の分解斜視図である。光学装置101は、中枠72に下側から挿入され、軸受部材59aを用いて中枠72の両端に固定されている。光学装置101において、第1金属フレーム52aと第2金属フレーム52bとは連結され、上側や側面がシールド部材87aに覆われ、第1金属フレーム52aと第2金属フレーム52bとの繋ぎ目も、シールド部材87aに覆われる。第1金属フレーム52aとシールド部材87aとの間には、第1回路部材80aが配置され、第2金属フレーム52bとシールド部材87aとの間には、部分的に露出する状態で第2回路部材80bが配置される。第1回路部材80aと第2回路部材80bとは、FPC(Flexible Printed Circuits)部材82aによって電気的に通信可能に接続される。光学装置101の下側には、ロアーカバー73が組付けられる。ロアーカバー73の中央部に対しては、ノーズパッド部材76が下方から固定される。光学装置101を保持した中枠72の上部には、付属部品回路部材80cが固定され、付属部品回路部材80cから延びるFPC部材82dは、第2回路部材80bや不図示のカメラ装置等に接続されている。
【0028】
図6及び7を参照して、光学装置101について説明する。
図6は、シールド部材87aを接着材によって固定した状態を示す斜視図であり、
図7は、シールド部材87aを除いた状態を示す斜視図である。
【0029】
図6に示すシールド部材87aにおいて、コーナ部分87fから下方に向けて折曲部87hが設けられている。シールド部材87aのコーナ部分87fは、内側において接着材を充填するように支持構造50の上端に固定されており、シールド部材87aと支持構造50との間を封止している。シールド部材87aは、例えばマグネシウム合金で形成され、第1回路部材80aや第2回路部材80b(
図5参照)からの電波の放出を抑制する。シールド部材87aには、開口87o,87pが形成され、シールド部材87aの下に収納される第1回路部材80aや第2回路部材80bに接続されるFPC部材(不図示)の引き込みを可能にし、シールド部材87aの下に収納される回路部材80a,80bからの放熱を容易にする。開口87o,87pについては、FPC部材の引き込み後に、高い熱伝導性や放熱性を有する金属材料やグラファイトシートで覆われてもよい。これにより、回路部材80a,80bの周辺の封止性を高めることができる。第1金属フレーム52aと第2金属フレーム52bとの間の部分については、折曲部87hを下方及び前後方向から囲むように周辺シール部材89aが取り付けられている。周辺シール部材89aは、後述するジョイント50c(
図7参照)の周辺をシールして金属フレーム52a,52b上の凹部に水分が入り込むことを抑制する。
【0030】
図7に示す第1表示装置100Aにおいて、第1金属フレーム52aは、ネジのような締結具50f等を利用して
図4に示す第1表示部20aの上部41tに対して固定されており、第1表示部20aを吊るすように支持している。なお、第1金属フレーム52aの固定方法は、ネジ固定以外に、カシメによる固定、接着剤による固定、嵌合を用いた固定、ソケット式のような吊るし方、引っ掛ける吊るし方、接着剤固定のような、様々な手法とすることができる。
【0031】
第1金属フレーム52aには、矩形の開口52oが形成され、矩形の開口52oの周囲52rの一部(具体的には、+Z側を除いた3辺)が第1表示部20aのバレル41の上部41tと当接し密着する。第1金属フレーム52a上の凹所REには、第1回路部材80aが配置される。第1金属フレーム52aは、例えばマグネシウム合金で形成される。第1金属フレーム52aをマグネシウム合金で形成することにより、第1金属フレーム52aや第1表示部20aを放熱によって冷却する効果を持たせることができる。
【0032】
図7に示す第2表示装置100Bにおいて、第1表示装置100Aと同様に、第2金属フレーム52bは、ネジのような締結具50f等を利用して第2表示部20bの上部41tに対して固定されており、第2表示部20bを吊るすように支持している。第2金属フレーム52bには、矩形の開口52oが形成され、矩形の開口52oの周囲52rの一部(具体的には、+Z側を除いた3辺)が第2表示部20bのバレル41の上部41tと当接し密着する。なお、第2金属フレーム52b上の凹所REには、第2回路部材80bが配置される。第2金属フレーム52bをマグネシウム合金で形成することにより、第2金属フレーム52bや第2表示部20bを放熱によって冷却する効果を持たせることができる。
【0033】
第1金属フレーム52a及び第2金属フレーム52bは、マグネシウム合金で形成されるものに限らず、マンガン、アルミニウム、及びチタンの1つ以上を含む合金で形成されるものであってもよい。この種の合金は、金属フレーム52a,52bの剛性を高めつつ軽量化を図る観点で望ましい。金属フレーム52a,52bは、黒色の表面被覆が施されている。つまり、金属フレーム52a,52bは、黒色の表面塗装やメッキが施されており、表面からの輻射による放熱効果を高めるものとなっている。
【0034】
支持構造50は、第1金属フレーム52a及び第2金属フレーム52bに加えて、第1金属フレーム52aと第2金属フレーム52bとを連結して相対的に固定するジョイント50cを備える。ジョイント50cは、第1金属フレーム52aと同様にマグネシウム合金のような金属製の部材であり、締結具50g等を利用して第1金属フレーム52aの一端部に連結され、締結具50g等を利用して第2金属フレーム52bの他端部に連結されている。ジョイント50cには、ロアーカバー73を固定する締結部50kも設けられている。第1表示部20aを取り付けた第1金属フレーム52aと、第2表示部20bを取り付けた第2金属フレーム52bとは、中央のジョイント50cを介して、相互に光学的にアライメントされた状態で固定されている。このように、ジョイント50cを介して両金属フレーム52a,52bを連結することで、両金属フレーム52a,52bの配置関係の変更が容易になる。また、他の部品を組み込んだときに、個別の調整が可能になり、統合的な調整も可能になる。
【0035】
図8は、
図7に示すHMD200から支持構造50を除いた状態を説明する斜視図である。第1表示部20aは、第1投射光学系12aと第1コンバイナー103aとを一体化した状態で有するものであり、第2表示部20bは、第2投射光学系12bと第2コンバイナー103bとを一体化した状態で有するものである。第1投射光学系12aにおいて、バレル41には、第1コンバイナー103aがアライメントされた状態で接着等によって固定されている。第1投射光学系12aのバレル41は、第1表示素子11aを収納する空間を有し、第1表示素子11aを
図2に示す投射レンズ21等に対してアライメントされた状態で支持する。第2投射光学系12bにおいて、バレル41には、第2コンバイナー103bがアライメントされた状態で接着等によって固定されている。第2投射光学系12bのバレル41は、第2表示素子11bを収納する空間を有し、第2表示素子11bを
図2に示す投射レンズ21等に対してアライメントした状態で支持する。
【0036】
第1表示部20aにおいて、バレル41に設けられた締結部51fは、例えばネジ孔であり、
図7に示す締結具50fをねじ込むことで、バレル41の上部41tを第1金属フレーム52aに固定することができる。第2表示部20bにおいて、バレル41に設けられた締結部51fは、例えばネジ孔であり、
図7に示す締結具50fをねじ込むことで、バレル41の上部41tを第2金属フレーム52bに固定することができる。
【0037】
図9は、第1金属フレーム52aを説明する図である。
図9中で、領域AR1は、第1金属フレーム52aの平面図であり、領域AR2は、第1金属フレーム52aの裏側の斜視図である。第1金属フレーム52aは、開口52oを有し全体として略矩形状の平板部55aと、平板部55aから上方に突起する一対の補強突起55b,55cとを含む。+Z側である前側に配置された第1の補強突起55bは、平板部55aの外縁のうち、平板部55aの長手方向に延びる一対の辺のうち前側の辺に沿って設けられている。第1の補強突起55bは、+Y側である上側と-Y側である下側とに突起し、若干湾曲しつつ全体として横のX方向に延びている。また、-Z側である後側に配置された第2の補強突起55cは、平板部55aの外縁のうち、平板部55aの長手方向に延びる一対の辺のうち後側の辺に沿って設けられている。第2の補強突起55cは、+Y側である上側にのみ突起し、若干湾曲しつつ全体として横のX方向に延びている。一対の補強突起55b,55cは、第1金属フレーム52aの構造強度を高めるものであり、曲げや捩じりに対して比較的弱い平板部55aの強度を高める。
【0038】
補強突起55bの前面、つまり補強突起55bの前部55fには、平坦部56tと冷却フィン構造56sとが形成されている。平坦部56tには、後述する放熱シート11sの他端である導出端11qが貼り付けられる(
図7参照)。放熱シート11sの導出端11qを装着者USの顔から離れた前部55fに貼り付けることで、第1金属フレーム52aの後部の温度を相対的に下げる効果があり、HMD200又は画像表示装置100の後側の温度を相対的に下げることができる。冷却フィン構造56sは、凸条と凹溝とを交互に形成した立体形状を有し、空気との接触面積を増加させる。冷却フィン構造56sは、平坦部56tの左右の近傍に配置されている。冷却フィン構造56sを構成する凸条及び凹溝は、縦のY方向に延びる。冷却フィン構造56sは、平坦部56tで受け補強突起55bに沿って拡散した熱を、表面から空気を介して放熱し、或いは赤外線として放射する。冷却フィン構造56sを縦に延びるパターン形状とすることで、縦方向の対流を生じさせ易くなり、空気への放熱効果を高めることができる。なお、平坦部56tや冷却フィン構造56sの配置や構造は、単なる例示であり、補強突起55b以外の場所に平坦部56tや冷却フィン構造56sを設けることができる。
【0039】
第1金属フレーム52aにおいて、一端に形成された孔56aは、第1金属フレーム52aをジョイント50cに連結するために用いられる。第1金属フレーム52aにおいて、他端に形成された孔56jは、第1金属フレーム52aを、軸受部材59aを介して中枠72(
図5参照)に連結するために用いられる。第1金属フレーム52aにおいて、開口52oの周囲の4箇所に形成された孔56bは、第1金属フレーム52aをバレル41の上部41tに固定するために用いられる。つまり、孔56bを介して、
図7に示す締結具50fを
図8に示す締結部51fにねじ込むことで第1金属フレーム52aをバレル41の上部41tに安定して固定することができる。
【0040】
第1金属フレーム52aにおいて、平板部55aの上方であって一対の補強突起55b,55cに挟まれた空間は、第1回路部材80aを収容するための凹所REである。第1回路部材80aの上端の高さは、一対の補強突起55b,55cの上端の高さより高くなってもよい。第1金属フレーム52aにおいて、開口52oの周囲52rの3箇所に形成されたネジ孔56cは、第1回路部材80aを第1金属フレーム52aに固定するために用いられる。
【0041】
図示を省略するが、第2金属フレーム52bは、第1金属フレーム52aの左右方向つまり±X方向に関して反転した形状及び構造を有する。なお、第1金属フレーム52a自体は、左右対称な形状を有するものとすることができ、この場合、第2金属フレーム52bは、第1金属フレーム52aと反転させないで同一形状となる。
【0042】
第1金属フレーム52aの平板部55aの輪郭形状は、矩形状である必要はなく、バレル41の形状や用途に応じて適宜変更可能である。開口52oの形状も、矩形状である必要はない。一対の補強突起55b,55cは、平板部55aの長手辺に沿って延びるものに限らず、平板部55aの長手辺の一部に沿って延びるものであってもよく、長手辺以外の辺に沿って延びるものであってもよく、辺以外の内部にリブ状に設けられるものとすることができる。
【0043】
図10は、
図7に示す支持構造50の変形例を説明する斜視図である。
図10に示す光学装置101において、支持構造150は、第1金属フレーム52aと第2金属フレーム52bとジョイント50cとを一体的に形成した部材である。変形例のシールド部材187aの外周には、
図6に示すシールド部材87aの外周に設けられている折曲部87hが存在しない。
【0044】
図11は、外観を構成するカバー部材70の構成部品の平面図である。
図11中で、領域BR1は、フロントカバー71の平面図であり、領域BR2は、中枠72の平面図であり、領域BR3は、ロアーカバー73の平面図である。フロントカバー71は、SUS等の金属で形成されるが、樹脂材で形成されてもよい。中枠72は、樹脂材で形成されているが、金属で形成されてもよい。ロアーカバー73は、SUS等の金属で形成されるが、樹脂材で形成されてもよい。
【0045】
フロントカバー71は、
図5も参照して、天板71aと前板71bとを有する。天板71aは、中央で前後幅が広く左右両端で前後幅が徐々に減少している。前板71bは、左右両端で上下幅が増加している。前板71bの中央には、カメラ等の付属部品を露出させる開口78aが形成されている。フロントカバー71は、一様な厚みを有し、フロントカバー71の平面視の輪郭は、中枠72の輪郭と略等しくなっている。
【0046】
中枠72は、
図5も参照して、前板72aと後枠72bと後板72cと端部72dと下板領域72fとを有する。前板72aは、略一様な上下幅を有する。前板72aの中央には、裏面から-Z側に張り出すように、カメラ等の付属部品を収納するための複数の収納室77aが設けられている。後枠72bは、上端側に設けられ、フロントカバー71の天板71aの後縁と当接又は嵌合する。後枠72bに形成された一対のピン状の突起72iは、
図5に示す付属部品回路部材80cを固定するためのものである。前板72aの中央と後枠72b中央とはブリッジ72pによって連結されている。後板72cは、後枠72bから下方すなわち-Y側に張り出すように設けられている。後板72cは、2か所に切欠き72jを有し、切欠き72jにおいて上下幅が減少している。端部72dは、前板72aの両端に接続され、後枠72b又は後板72cの両端に接続されている。端部72dには、不図示の電子部品を収納する凹部77cが形成されている。端部72dには、フロントカバー71やロアーカバー73と連結するための締結部72mと、ロアーカバー73と連結するための締結部72nとが設けられている。また、締結部72nによって、光学装置101の軸受部材59aは下面側に固定される。下板領域72fは、前板72aの中央部の下端から後方すなわち-Z側に延びている。中枠72には、平面視で2つの開口AP1が形成され、支持構造150の第1金属フレーム52aや第2金属フレーム52bを収納可能になっている。
【0047】
ロアーカバー73は、
図5も参照して、中央部73aとバレル収納部73bと端部73cとを有する。中央部73aは、底壁73hと後壁73iとを有する。底壁73hには、突出領域73dが形成されている。突出領域73d及びその根元側の辺部分は、中枠72の下板領域72fと部分的に重複して配置され、下板領域72fと当接又は嵌合する。突出領域73dには、ロアーカバー73を中枠72の下板領域72fに固定するための締結部73pが設けられている。底壁73hの本体には、ロアーカバー73にノーズパッド部材76を固定するための締結部73qも設けられている。後壁73iは、中枠72の後板72cの外側の近傍に配置され、或いは後板72cの外側と当接する。バレル収納部73bは、中央部73aを挟むように一対で設けられており、下方突出部73sと、後方突出部73tとを有する。バレル収納部73bは、第1投射光学系12a又は第2投射光学系12bのバレル41を覆う部分であり、開口AP2を有する。開口AP2は、バレル41の出射口41oに対応して設けられており、画像光を通過させる。後方突出部73tの上端73kは、中枠72の後枠72bと当接又は嵌合する。端部73cには、ロアーカバー73をフロントカバー71の天板71aや中枠72の端部72dにおいて締結部72mに固定するための締結部73mが設けられ、ロアーカバー73を中枠72の端部72dにおいて締結部72nに固定するための締結部73nが設けられている。
【0048】
図12は、HMD200又は画像表示装置100の側面図であり、光学装置101の角度変化を説明する図である。
図12中で、領域CR1は、光学装置101の第1状態を示し、領域CR2は、光学装置101の第2状態を示す。光学装置101は、軸受部材59aに支持されて、X軸に平行に延びる回転軸RXの周りに回転可能になっており、5~10°程度を上限として角度姿勢を変化させることができる。この場合、光学装置101は、カバー部材70又は中枠72に対して角度が変化し、第1状態では、コンバイナー103a,103bが光透過カバー104a,104bから離れ、第2状態では、コンバイナー103a,103bが光透過カバー104a,104bに相対的に近づく。第1状態の場合、眼の位置が比較的上側に位置することを前提として、下向きに虚像が観察される。第2状態の場合、眼の位置が比較的下側に位置することを前提として、相対的に上側に虚像が観察される。
【0049】
図13は、HMD200又は画像表示装置100の裏面側の部分的な斜視図である。光学装置101は、中枠72及びロアーカバー73に対して可動であり、中枠72及びロアーカバー73と間に隙間CG1,CG2を有する。より具体的には、コンバイナー103a,103bの上端61gの表側と、中枠72の下板領域72fの後端72xとの間には、隙間CG1が形成されている。また、コンバイナー103a,103bの上端61gと、ロアーカバー73の下方突出部73sの前端73xとの間には、隙間CG2が形成されている。これらの隙間CG1,CG2については、カバー部材70の内部への流路のサイズや、カバー部材70の内部への流路の曲がり方を配慮しつつ防塵や防水が達成されるようにすることが望ましい。
【0050】
図14を参照して、
図7等に示す光学装置101に組み込まれるバレル41の構造について説明する。
図14中で、領域DR1は、バレル41及びこれに保持された第1表示素子11a及び光学部材2a,2bの側方断面図であり、領域DR2は、第1表示素子11a及びホルダー31を除いた状態の側方断面図であり、領域DR3は、さらにバレルカバー41uを除いた状態の側方断面図である。
【0051】
バレル41は、バレル本体41aとバレルカバー41uとを含み、第1光学部材2aを収納し、第2光学部材2bを保持する。バレル本体41a及びバレルカバー41uは、内部に固定される光学素子の支持精度や強度を考慮してポリカーボネート樹脂で形成される。バレル本体41aは、上方が開放されたバスタブ状の容器であり、底の一部に出射口41oを有する。バレルカバー41uは、バレル本体41aを上方から覆うように固定される。バレル本体41aは、2つの側板部材41cと底板部材41dと前板部材41eとを有する。2つの側板部材41cは、光軸AXが延びる軸外し面(YZ面に平行)に対して略平行に延び互いに離間する。底板部材41dは、光軸AXが延びる軸外し面(YZ面に平行)に垂直なXZ面に略沿って延び、後方端側に出射口41oが設けられている。前板部材41eは、底板部材41dの前方端と2つの側板部材41cの前方端とを連結している。
【0052】
なお、
図8に示すように、バレル本体41aは、2つの側板部材41cの上部から外側に張り出すように横方向又は±X方向に延びる2つの突起部41f,41gを有する。突起部41f,41gは、第1コンバイナー103aの上端61gを固定する部分であり、
図7に示す第1金属フレーム52aの補強突起55bの裏面に対向して配置される。
【0053】
図14に戻って、一方の側板部材41cの内側には、第1光学部材2aを構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qと、第2光学部材2bのプリズムミラー22とを支持する突起として、段差を有する案内凸部45a,45b,45c,45dが形成されている。なお、図示を省略しているが、他方の側板部材41c(
図15参照)の内面にも、案内凸部45a,45b,45c,45dと同様の案内凸部が形成されている。2つの側板部材41cの内面に設けられた2つの第1の案内凸部45aによって第1レンズ21oが片寄された状態で位置決めされてバレル本体41aに支持される。同様に、第2の案内凸部45bによって第2レンズ21pが位置決めされてバレル本体41aに支持され、第3の案内凸部45cによって第3レンズ21qが位置決めされてバレル本体41aに支持され、第4の案内凸部45dによってプリズムミラー22が位置決めされてバレル本体41aに支持される。案内凸部45a,45b,45c,45dによって光学素子21o,21p,21q,22を位置決めする際には、案内凸部45a,45b,45c,45dに形成された複数の位置決め面に光学素子21o,21p,21q,22の位置決め面を当接させ、当接箇所又はその周辺を接着材で固定する。プリズムミラー22等をバレル本体41aに固定する方法は、上記のような当接面での片寄を利用するものに限らず、嵌合その他の様々な手法を用いたものに置き換えることができる。
【0054】
バレルカバー41uは、底板部材41dの反対側に配置されバレル本体41aの内側を覆うことによって収納空間ISを形成する。バレルカバー41uは、天板41xと後部板41yとを備える。天板41xは、XZ面に平行に延び、後部板41yは、第2光学部材2bのプリズムミラー22の内反射面22bの外側を覆うように傾斜して配置される。バレルカバー41uにおいて、前方の+Z側には、周りから所定高さだけ低くされた位置決め用のホルダー台座41sが形成され、ホルダー台座41sの前方には、挿入口41zが形成されている。バレルカバー41uに設けられたホルダー台座41sは、後述するように組み立て時以降、ホルダー31の基部板31bに対向する。基部板31bは、挿入口41zを覆いつつバレル41に固定されることになる。後部板41yの内面41mは、XZ面及びXY面に対して傾斜し、プリズムミラー22の内反射面22bに沿って内反射面22bの近傍に延びている。内反射面22bの外側と、後部板41yの内面41mとの間には、一様な隙間GAが形成されている。
【0055】
図15に示すように、バレルカバー41uの外周に沿って延びる外縁42qとバレル本体41aの上端42pとの間には、例えば段差のような嵌合構造47a,47bが設けられ、相互の位置決めを達成できる。バレルカバー41uの外縁42qとバレル本体41aの上端42pとは、バレル本体41aとバレルカバー41uとの連結部CJとなっている。連結部CJにおいて、バレルカバー41uの外縁42qとバレル本体41aの上端42pとの隙間、つまり嵌合構造47a,47bと外縁42q又は上端42pとの隙間には、接着材又はシール材として機能する密閉部材SMが充填されている(
図14の領域DR2参照)。この場合、収納空間ISの機密性を高めることができる。バレルカバー41uの外縁42qに沿って設けられた密閉部材SMは、挿入口41zや出射口41oの周辺に設けられた後述する密閉部材SMとともに、バレル41を封止する役割を有する。
【0056】
図14を参照して、バレル41内において、第1光学部材2aと第2光学部材2bとの間には、絞り板部材26が配置されている。図示の場合、絞り板部材26は、プリズムミラー22の入射面22aに隣接して取り付けられている。
【0057】
プリズムミラー22の出射面22cの外縁と、出射口41oの縁部44との間には、それらの隙間であって内部側において、接着材又はシール材として機能する密閉部材SMが充填されている。密閉部材SMは、バレル本体41aの出射口41oと、第2光学部材2b又はプリズムミラー22の出射面22cの周囲との間を密閉する。この場合、第2光学部材2bの出射面22cは、外部に露出するが、第2光学部材2bの出射面22cよりも光学的に上流の光学面は、バレル41の防塵や防水によって保護される。バレル本体41aの出射口41oに沿って充填される密閉部材SMは、弾性接着材AOである。弾性接着材AOは、UV光のような硬化光によって硬化する例えばシリコーン系の光硬化性樹脂であるが、硬化後も弾性を有する。弾性接着材AOは、出射口41oに関して防塵や防水を可能にする。
【0058】
バレル41において、前板部材41eに臨む空間ISaには、ホルダー31に支持された第1表示素子11aが挿入口41zを介して上方から挿入され、位置決めされた状態で固定されている。バレル41は、ホルダー31等によって封止される。この場合、第1表示素子11aがバレル41内に配置され、外部からの衝撃の影響を受けにくくなり、製造工程における作業ミスで位置調整ズレが発生する状況が発生しにくくなる。第1表示素子11aは、ホルダー31により、バレル41すなわち光学ケースCA中の+Zの前方端において、表示面11dが-Z方向に相当する後方に向かうように配置されている。
【0059】
図16は、第1表示素子11aをホルダー31に組み付けた表示ユニットDUを説明する図である。
図16中で、領域ER1は、表示ユニットDUの表側を示す斜視図であり、領域ER2は、表示ユニットDUの側断面であり、領域ER3は、ホルダー31の裏側を示す斜視図である。
【0060】
図示の表示ユニットDUにおいて、第1表示素子11aとこれに付随する遮光板33とは、ホルダー31に固定され、相互に位置決めされている。
【0061】
第1表示素子11aは、板状の本体部分11kと、本体部分11kの上部に接続されて上方に延びるFPC(Flexible Printed Circuits)部11fとを有する。これらのうち、本体部分11kは、駆動回路11jが形成され本体部分11kの外形をなすシリコン基板SSと、有機EL材料を含んで構成される有機EL素子であって画像光MLとなるべきカラーの光を発生させる発光層11eと、シリコン基板SSと協働して発光層11eを密閉する封止用の保護ガラスGGとを備える。ここで、発光層11eは、表示面11dに相当する。第1表示素子11aは、FPC部11fから受けた駆動信号に従い発光動作を行うことで、保護ガラスGG側へ向けて画像光MLを出射させる。シリコン基板SSの裏面SSaには、可撓性又は弾性をする放熱シート11sの一端である導入端11pが貼り付けられている。放熱シート11sは、第1表示素子11aから
図7等に示す第1金属フレーム52aに熱を伝導させる役割を有する。放熱シート11sは、例えばグラファイト製の放熱部材RMであり、熱伝導性の高い接着材を用いてシリコン基板SSの裏面SSaに接着されている。放熱シート11sは、一方面に粘着層が形成され他方面にカバーが形成されたものである。放熱シート11sは、例えば複数のグラファイトシートを積層したものであってもよい。放熱シート11sは、例えば数100μm程度の厚みを有する。放熱シート11sの幅は、シリコン基板SSの裏面SSaの幅程度とするが、配置の引き回しの簡易性を考慮した場合、挿入口41zの幅以下とする。
【0062】
ホルダー31は、例えば遮光性を有する樹脂で形成された部材であり、側面視L字状に折れ曲がった外形を有する。ホルダー31は、第1表示素子11aを支持する支持フレーム31aと、支持フレーム31aの上部に接続されて支持フレーム31aと交差する方向(具体的には直交する方向)に延びる基部板31bとを有する。支持フレーム31aは、第1表示素子11aを支持した状態でバレル41に形成された挿入口41zを介してバレル41中に挿入される(
図14参照)。基部板31bは、支持フレーム31aの根元側に接続され、光出射側に相当する前方(つまり-Z側)に延び、バレル41中に挿入されない。支持フレーム31aは、矩形状の外形を有し、平板部31sと枠部31tとを含む。平板部31sは、上端で基部板31bに接続されている。枠部31tは、U字状で、第1表示素子11aを左右方向と下方向から囲む。支持フレーム31aは、平板部31sと枠部31tとに囲まれた矩形の開口A1を有する。開口A1には、第1表示素子11aの保護ガラスGGが嵌め込むように配置される。支持フレーム31aの内部であって、Y方向の上部と下部には、横のX方向に平行に延びる2つの支持領域31pが形成されている。上側の支持領域31pは、平板部31sの裏面側に凸条として形成され、下側の支持領域31pは、枠部31tの裏面側に段差として形成されている。両支持領域31pは、接着材を介して第1表示素子11aのシリコン基板SSのうち上下の表面領域SScに接着されている。これにより、第1表示素子11aが支持フレーム31aに対して間接的に位置決めされた状態で支持され、第1表示素子11aの表示面11dをXY面に略平行な所定の位置決めされた状態とすることができる。ホルダー31の基部板31bは、矩形平板状の外形を有し、下面31jは、XZ面に平行に延びる。基部板31bは、バレル41のバレルカバー41uに形成されたホルダー台座41s上に載置され、位置決め後にホルダー台座41sに固定される(
図14等参照)。基部板31bの外周部において、後方すなわち-Z側と横方向すなわち±X側との3辺において肉薄部35tが形成されている。基部板31bの上面31uは、位置決めのための3次元駆動装置のアームによる吸着や支持を容易にするため、滑らかで平坦になっている。
【0063】
遮光板33は、ホルダー31の支持フレーム31aに対して接着材や粘着材を利用して固定されている。遮光板33は、矩形の開口33pを設けた遮光絞りであり、遮光性を有する金属、樹脂等で形成されている。第1表示素子11aの表示面11dから出射される有効な画像光MLは、遮光板33によって遮られることなく開口33pを通過する。遮光板33を固定する際には、支持フレーム31aに形成された4つの突起31qが、遮光板33の左右に形成された突出部33cを上下から把持するようにして、位置決めが行われる。
【0064】
図17及び18を参照して、バレル41に対する表示ユニットDUの固定について説明する。
図17は、光学ユニット300を説明する拡大断面図であり、
図18は、光学ユニット300の組み立てを説明する図である。
図18中で、領域FR1は、バレル41に表示ユニットDUを組み付けた状態を示す平面図であり、領域FR2は、表示ユニットDUを組み付ける前の状態を示す平面図である。ここで、第1投射光学系12aを内蔵したバレル41と、第1コンバイナー103aとを組み合わせた第1表示部20aに対して、第1表示素子11aを含む表示ユニットDUを組付けたものを光学ユニット300と呼ぶ。
【0065】
バレル41の上面であるバレルカバー41uの天板41xに形成されたホルダー台座41sのうち左右及び後方の縁部分41rには、段差S1が形成されている。ホルダー台座41sの段差S1及びその近傍は、ホルダー31とバレル41とを接続する接着材AM1を保持する。接着材AM1は、例えばアクリル系の紫外線硬化樹脂である。後述するホルダー31の位置決め後に接着材AM1を硬化させる。
【0066】
表示ユニットDUのホルダー31のうち、支持フレーム31aの下端を挿入口41zから挿入し、支持フレーム31a全体を第1表示素子11aとともにバレル41中に進入させると、第1表示素子11aが空間ISaに収まり、基部板31bが窪んだホルダー台座41sに嵌り込むように載置され、座面41nと下面31jとが近接して対向する。この際、挿入口41zの大半が基部板31bによって塞がれた状態となって、ホルダー31中への塵や埃の侵入を抑制する。
【0067】
ホルダー31の基部板31bは、左右及び後方の縁部分に肉薄部35tを有する。肉薄部35tは、ホルダー台座41sの段差S1に向かう段差S2を形成する。結果的に、バレルカバー41uのホルダー台座41sに設けられた段差S1と、ホルダー31の肉薄部35tに設けられた段差S2とによって溝TRが形成される。この溝TRは、接着材塗布部AAの一部であり、ホルダー31とバレル41との間に供給された接着材AM1を、基部板31bの肉薄部35tの周辺に保持する役割を有する。
【0068】
ホルダー31の基部板31bの平面視のサイズ、つまりXZ面に投影したサイズは、ホルダー台座41sの平面視のサイズよりも小さく、かつ、
図7に示す第1金属フレーム52aに形成された開口52oの平面視のサイズよりも小さくなっている。これにより、第1金属フレーム52aをバレル41に固定した状態であっても、第1金属フレーム52aの開口52o越しにホルダー31をバレル41の上部41tに載置することができる。
【0069】
ホルダー31の支持フレーム31aの位置を挿入口41z内でX方向及びZ方向に微動させることができるように、挿入口41zの平面視の輪郭を、支持フレーム31a及び第1表示素子11aの平面視の輪郭より一まわり大きくしている。結果的に、ホルダー31の前方上部、つまり基部板31bと支持フレーム31aとのつなぎ目の前方+Z側において、挿入口41zが部分的に開放されて隙間G1が形成された状態となっている。つまり、挿入口41zは、第1表示素子11aの背面側又は+Z側においてホルダー31との間に隙間G1を有する。第1表示素子11aから延びる配線11rであるFPC部11fや放熱シート11sは隙間G1を介してバレル41の外部に延びる。ホルダー31をバレル41に対して位置決めして固定する前に、隙間G1を覆うように、挿入口41zの前方端と第1表示素子11aの放熱シート11s、FPC部11f等との間にこれらの間を充填するように封止部である接着材AM2を塗布し、後述するホルダー31の位置決め後に接着材AM2を硬化させる。接着材AM2は、硬化前に比較的粘度が高く形状維持が容易になっている。溝TRに対応する接着材AM1と隙間G1に対応する接着材AM2とを合わせると長方形の4辺のように閉じた形状となる。密閉部材SMである接着材AM1,AM2が塗布される箇所(溝TRや隙間G1)が接着材塗布部AAとなる。なお、ホルダー31において、FPC部11fの引出口周辺に隙間31iが形成される場合、隙間31iの周囲にも、防塵や防水を確保する目的で接着材AM3を塗布し充填することができる。
【0070】
図19を参照して、バレル41に対する第1コンバイナー103aの固定、すなわち第1投射光学系12aに対するシースルーミラー23の固定について説明する。
図19中で、領域GR1は、バレル41及び第1コンバイナー103aの正面図であり、領域GR2は、バレル41及び第1コンバイナー103aの平面図である。
【0071】
光学ユニット300において、バレル41の前側には、一対の突起部41f,41gが横方向外側に張り出すように形成されている。また、第1コンバイナー103aの上端61gには、一対の取付部62a,62bが内側すなわち-Z側に張り出すように形成されている。一対の取付部62a,62bの一対の対向する内側面62sは、バレル41の一対の外向きの横側面51sを挟むようにこれらと嵌合し、±X方向の位置決めが傾きを低減するように行われる。一対の取付部62a,62bの一対の後側面62tは、バレル41の段差状の一対の前側面51rに当接し、±Z方向の位置決めが傾きを低減するように行われる。さらに、一対の突起部41f,41gの底面59jから突起する複数の凸部59pは、一対の取付部62a,62bの一対の上面62jと当接し、±Y方向の位置決めが行われる。以上の位置決め後、つまり6軸の位置決め後、突起部41f,41gの底面59jと取付部62a,62bの上面62jとの間に周囲から接着材AM5を供給し、供給した接着材AM5を紫外線等で硬化させることにより、バレル41に対する第1コンバイナー103aの固定が完了する。
【0072】
図20及び21を参照して、放熱シート11sの引き回しについて説明する。
図20は、
図2に示すHMD200又は画像表示装置100のA-A矢視断面斜視図であり、
図21は、部分拡大断面図である。放熱シート11sの導入端11pは、接着部材を用いてシリコン基板SSの裏面SSaに対して接着されている。放熱シート11sは、シリコン基板SSの裏面SSaに沿って延び、封止された挿入口41zを通って第1金属フレーム52a又は平板部55aの下方に達している。つまり、放熱シート11sは、第1表示素子11a用の挿入口41zを介してバレル41すなわち光学ケースCA外に引き出されている。
図21を参照して、放熱シート11sは、第1金属フレーム52aの開口52oを通ることなく補強突起55bの裏面とバレル41の前板部材41eのとの隙間に沿って下側に延び、補強突起55bの下端部55hで折り返し、平坦部56tの表側に沿って上に延びる。放熱シート11sの導出端11qは、接着部材を用いて、補強突起55bの平坦部56tに対して張り付けられている。つまり、放熱シート11sは、シースルーミラー23である第1コンバイナー103aの上端61gを回避し第1金属フレーム52aの下を回り込む経路で第1金属フレーム52aの前部55fに延びている。結果的に、放熱シート11sは、配線11rを回避する経路で第1金属フレーム52aの前部55fに延びている。なお、配線11rは、後方の-Z方向に傾いて上方の+Y方向に延び、第1回路部材80aの下面に設けられたコネクタ(不図示)に接続されている。
【0073】
シリコン基板SS等で発生した熱は、放熱シート11sの一端である導入端11pを介して放熱シート11sに伝達され、放熱シート11sの他端で導出端11qに達する。導出端11qは、バレル41外に配置された第1金属フレーム52aの補強突起55bに形成された平坦部56tに貼り付けられており、シリコン基板SS等で発生した熱を第1金属フレーム52aの前部55fに効率的に導熱することができ、発熱部であるシリコン基板SSに戻されにくくなっている。つまり、放熱シート11sは、密閉されたバレル41内で発生した熱をバレル41外に効率的に放出することができる。
【0074】
以上で説明した実施形態の画像表示装置100又は第1表示装置100Aは、第1表示素子11aと、結像用の光学部材2a,2bと、第1表示素子11aと光学部材2a,2bを収納する光学ケースCAと、光学ケースCAを支持する第1金属フレーム52aと、第1表示素子11aから第1金属フレーム52aに熱を伝導させる放熱シート11sとを備え、第1金属フレーム52aは、放熱シート11sを貼付ける平坦部56tと、平坦部56tの近傍に配置される冷却フィン構造56sとを有する。
【0075】
また、第2表示装置100Bは、第2表示素子11bと、結像用の光学部材2a,2bと、第2表示素子11bと光学部材2a,2bを収納する光学ケースCAと、光学ケースCAを支持する第2金属フレーム52bと、第2表示素子11bから第2金属フレーム52bに熱を伝導させる放熱シート11sとを備え、第1金属フレーム52aは、放熱シート11sを貼付ける平坦部56tと、平坦部56tの近傍に配置される冷却フィン構造56sとを有する。
【0076】
上記画像表示装置100では、金属フレーム52a,52bが放熱シート11sを貼付ける平坦部56tと平坦部56tの近傍に配置される冷却フィン構造56sとを有するので、表示素子11a,11bで発生した熱を、金属フレーム52a,52bの平坦部56tに伝達させ、冷却フィン構造56sによって金属フレーム52a,52b外に効率的に放出することができる。
【0077】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
以上では、HMD200が第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを備えるとしたが、HMD200又は画像表示装置100は、単一の第1表示装置100A又は第2表示装置100Bを支持装置100Cによって眼前に支持するようなものであってもよい。
【0079】
第1金属フレーム52aや第2金属フレーム52bは、マグネシウム合金に限らず、アルミニウム合金その他の金属で形成することができる。具体的には、第1金属フレーム52aや第2金属フレーム52bは、マンガン、アルミニウム、及びチタンの1つ以上を含む合金で形成され得る。ジョイント50cも、マンガン、アルミニウム、及びチタンの1つ以上を含む合金で形成され得る。
【0080】
放熱シート11sは、導入端11pと導出端11qとの間において、第1金属フレーム52aに設けられた補強突起55bの裏面に接着されてもよい。或いは、放熱シート11sの導出端11qは、補強突起55bの裏面に接着されてもよい。
【0081】
図22は、変形例のHMD200を説明する断面図である。この場合、放熱シート11sがフロントカバー71の内面71iまで延び、フロントカバー71への放熱をより効率化している。フロントカバー71の内面71iには、放熱シート11sに接続されて横方向に延びる追加の放熱シート111sが張り付けられている。
【0082】
以上では、第1表示部20aが第1金属フレーム52aにネジ止めされる場合について説明したが、第1表示部20a又はバレル41を、ネジ止めに限らず、カシメ、接着等によって第1金属フレーム52aに固定することができる。この際、固定箇所は、も4箇所に限らず、様々な箇所とすることができ、連続的に延びる線状又は面状の固定も可能である。
【0083】
第1投射光学系12aや第1コンバイナー103aを第1金属フレーム52aに吊るすように連結して固定することもできる。この場合、第1投射光学系12a又はバレル41に第1コンバイナー103aを固定する必要がない。第1コンバイナー103aを第1金属フレーム52aに吊るす手法は、第1投射光学系12a又はバレル41を第1金属フレーム52aに吊るす際に用いた手法と同様のものを用いることができる。
【0084】
以上では、画像表示装置100が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記画像表示装置100は、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0085】
具体的な態様における画像表示装置は、表示素子と、結像用の光学部材と、表示素子と光学部材とを収納する光学ケースと、光学ケースを支持する金属フレームと、表示素子から金属フレームに熱を伝導させる放熱シートとを備え、金属フレームは、放熱シートを貼付ける平坦部と、平坦部の近傍に配置される冷却フィン構造とを有する。
【0086】
上記画像表示装置では、金属フレームが放熱シートを貼付ける平坦部と平坦部の近傍に配置される冷却フィン構造とを有するので、表示素子で発生した熱を、金属フレームの平坦部に伝達させ、冷却フィン構造によって金属フレーム外に効率的に放出することができる。
【0087】
具体的な態様における画像表示装置において、放熱シートは、グラファイト製である。グラファイトは、面方向に高い熱伝導効率を有し、表示素子から冷却フィン構造への伝熱効果を高めることができる。
【0088】
具体的な態様における画像表示装置において、金属フレームは、光学ケースの上部に連結され、光学ケースを吊るすように支持している。この場合、金属フレームの上部に様々な部品を取り付けることができ、かかる取り付け作業に際して光学ケースに精度的な影響が及ぶことを防止できる。
【0089】
具体的な態様における画像表示装置において、放熱シートは、光学ケースの前端の上部の形成された表示素子用の挿入口を介して光学ケース外に引き出されている。この場合、表示素子用の挿入口を放熱シートの引出口として用いることができる。
【0090】
具体的な態様における画像表示装置において、表示素子から延びる配線が光学ケースの挿入口を介して光学ケース外に延びる。この場合、表示素子用の挿入口を配線の引出口として用いることができる。
【0091】
具体的な態様における画像表示装置において、光学ケースの挿入口は、表示素子の背面側においてホルダーとの間に隙間を有し、放熱シートが隙間を介して外部に延びる。
【0092】
具体的な態様における画像表示装置において、光学ケースの挿入口は、表示素子の背面側においてホルダーとの間に隙間を有し、配線が隙間を介して外部に延びる。
【0093】
具体的な態様における画像表示装置において、表示素子は、光学ケース中の前方端において、表示面が後方に向かうように配置されている。光学ケース中で前方から後方に向かう光路が形成される場合、表示素子に貼り付けられた放熱シートを光学ケースの前方側に引き出し易くなり、観察者側の加熱を抑えることができる。
【0094】
具体的な態様における画像表示装置において、光学ケースは、封止されている。この場合、光学ケースからの熱の取り出しが容易でなくなる傾向が高まるが、光学ケースの内外に延びる放熱シートによって放熱効率を高めることができる。
【0095】
具体的な態様における画像表示装置において、金属フレームの平坦部は、金属フレームの前部に設けられている。この場合、観察者側の加熱をより抑えることができる。
【0096】
具体的な態様における画像表示装置において、金属フレームの冷却フィン構造は、金属フレームの前部において平坦部を挟むように配置されている。平坦部から冷却フィン構造への熱流を大きくすることができる。
【0097】
具体的な態様における画像表示装置において、金属フレームは、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、及びチタンの1つ以上を含む合金で形成される。
【0098】
具体的な態様における画像表示装置において、放熱シートの一端は、表示素子の裏面に貼り付けられ、放熱シートの他端は、平坦部に貼り付けられている。表示素子の裏面は、熱の導入端を広くすることができ、放熱シートへの熱流を大きくすることができる。
【0099】
具体的な態様における画像表示装置において、表示素子から延びる配線は、金属フレーム上に配置される回路基板に接続され、前記放熱シートは、配線を回避する経路で金属フレームの前部に延びている。
【0100】
具体的な態様における画像表示装置において、光学部材から出射された画像光が入射するコンバイナーを備え、放熱シートは、コンバイナーの上端を回避し金属フレームの下を回り込む経路で金属フレームの前部に延びている。
【0101】
具体的な態様における画像表示装置において、光学ケースと、金属フレームとは、外装ケースの内部に収納されている。
【符号の説明】
【0102】
2a,2b…光学部材、11a…第1表示素子、11b…第2表示素子、11d…表示面、11p…導入端、11q…導出端、11s…放熱シート、11r…配線、12a…第1投射光学系、12b…第2投射光学系、20a…第1表示部、20b…第2表示部、21,22,23…光学素子、23…シースルーミラー、23a…透過性反射膜、31…ホルダー、31a…支持フレーム、31b…基部板、33…遮光板、41…バレル、41a…バレル本体、41c…側板部材、41d…底板部材、41e…前板部材、41n…座面、41o…出射口、41s…ホルダー台座、41t…上部、41u…バレルカバー、41z…挿入口、44…縁部、50…支持構造、50c…ジョイント、52a…第1金属フレーム、52b…第2金属フレーム、52o…開口、55a…平板部、55b,55c…補強突起、55f…前部、56s…冷却フィン構造、56t…平坦部、61…支持板、61g…上端、70…カバー部材、71…フロントカバー、72…中枠、72a…前板、72b…後枠、72d…端部、73…ロアーカバー、73b…バレル収納部、73s…下方突出部、73t…後方突出部、74…ヒンジ、76…ノーズパッド部材、80a…第1回路部材、80b…第2回路部材、80c…付属部品回路部材、82a,82d…FPC部材、87a…シールド部材、87o,87p…開口、88…表示制御装置、89a…周辺シール部材、90…ユーザー端末、100…画像表示装置、100C…支持装置、101…光学装置、102…駆動装置、103a…第1コンバイナー、103b…第2コンバイナー、104…シェード、111s…放熱シート、300…光学ユニット、AX…光軸、CA…光学ケース、DU…表示ユニット、IS…収納空間、ML…画像光、OL…外界光、OS…軸外し光学系、P1-P3…光路部分、RM…放熱部材、ES…内部空間