(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027473
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20240222BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130293
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】野田 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】楠村 拓也
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC15
3D054CC34
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグの本体部の先端側が下方に傾くことを抑制することができる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員保護装置は、膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止めるバッグ本体部30aと、インフレーターに接続され、ラップベルト部13に沿って延び、インフレーターから放出される膨張用ガスをバッグ本体部30aまで案内してバッグ本体部30aに膨張用ガスを流入させる導管部30bとを有し、ラップベルト部13に設けられたエアバッグ30を備え、バッグ本体部30aが膨張した状態において、シートの左右方向における導管部30bのタング側の端部である先端部30bx1は、バッグ本体部30aのタング側の端部である先端部30ax1と同等か、先端部30ax1よりもタングに近い位置まで延びている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、
膨張用ガスを放出するインフレーターと、
前記ラップベルト部に設けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して前記乗員を受け止める本体部と、前記インフレーターに接続され、前記ラップベルトに沿って延び、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記本体部の流入口まで案内して前記本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、
を備え、
前記本体部が膨張した状態において、前記シートの左右方向における前記導管部の前記タング側の端部は、前記本体部の前記タング側の端部と同等か、前記本体部の前記タング側の端部よりも前記タングに近い位置まで延びていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、
膨張用ガスを放出するインフレーターと、
前記ラップベルト部に設けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して前記乗員を受け止める本体部と、前記インフレーターに接続され、前記ラップベルトに沿って延び、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記本体部の流入口まで案内して前記本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、
を備え、
前記本体部が膨張した状態において、前記導管部と前記本体部との接触領域における前記導管部の前記シートの左右方向の前記タング側の端部は、前記接触領域における前記導管部の前記左右方向の前記インフレーター側の端部よりも、前記シートの前後方向の幅が広い形状であることを特徴とする乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートに着座した乗員を保護するための構成として、シートベルトが広く用いられている。また特許文献1では、シートベルトの装着時において乗員の腰部を拘束するラップベルト部にエアバッグを設ける構成が記載されている。特許文献1に記載のエアバッグは、膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止める本体部と、インフレーターから放出される膨張用ガスを本体部まで案内する導管部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導管部は、シートの左右方向におけるタング側の端部である先端部において上面と底面とを連結させる必要があることから、先端側が次第に収束して鉛直方向の幅が狭くなる。ここで特許文献1の構成では、エアバッグの本体部が膨張した状態において、導管部の先端部が、シートの左右方向における本体部のタング側の端部である先端部よりもタングから離れた位置に位置している。このような構成では、膨張した状態の本体部と導管部との接触領域内に導管部の先端側の収束開始点が位置しやすくなることから、本体部の先端側が導管部の先端側の形状に沿って下方に下がり、本体部が傾いてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、エアバッグの本体部の先端側が下方に傾くことを抑制することができる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の代表的な構成は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、膨張用ガスを放出するインフレーターと、前記ラップベルト部に設けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して前記乗員を受け止める本体部と、前記インフレーターに接続され、前記ラップベルトに沿って延び、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記本体部の流入口まで案内して前記本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、を備え、前記本体部が膨張した状態において、前記シートの左右方向における前記導管部の前記タング側の端部は、前記本体部の前記タング側の端部と同等か、前記本体部の前記タング側の端部よりも前記タングに近い位置まで延びていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ラップベルトに設けられたエアバッグの本体部が膨張した状態において、シートの左右方向におけるエアバッグの導管部のタング側の端部が、本体部のタング側の端部と同等か、本体部のタング側の端部よりもタングに近い位置まで延びている。これにより導管部の先端側(タング側の端部側)の収束開始点の位置を、膨張した状態の本体部と導管部との接触領域よりもタング側の接触領域外にシフトさせやすくなる。このため、膨張した状態の本体部が、導管部の先端側の形状に沿って下方に下がりにくくなり、本体部の先端側(タング側の端部側)が下方に傾くことを抑制することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明の他の構成は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、タングと、前記タングが結合されるバックルと、前記タングが前記バックルに結合された状態において前記シートに着座した前記乗員の腰部を拘束するラップベルト部と、を少なくとも有するシートベルトと、膨張用ガスを放出するインフレーターと、前記ラップベルト部に設けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して前記乗員を受け止める本体部と、前記インフレーターに接続され、前記ラップベルトに沿って延び、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記本体部の流入口まで案内して前記本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、を備え、前記本体部が膨張した状態において、前記導管部と前記本体部との接触領域における前記導管部の前記シートの左右方向の前記タング側の端部は、前記接触領域における前記導管部の前記左右方向の前記インフレーター側の端部よりも、前記シートの前後方向の幅が広い形状であることを特徴とする。
【0009】
エアバッグの導管部は、シートの前後方向の両端部において上面と底面とを連結させる必要があることから、導管部の先端側と同様に、前記前後方向の一端側と他端側がそれぞれ次第に収束して鉛直方向の幅が狭くなる。ここでエアバッグの導管部と本体部との接触領域における導管部の前記左右方向のインフレーター側の端部は、当該接触領域が導管部の先端側(タング側の端部側)まで延びていることから、導管部の先端側の収束開始点から離れた位置にあるため、前記前後方向の一端側と他端側では次第に収束するものの、鉛直方向の幅が狭くなりにくい。また、本発明によれば、本体部が膨張した状態において、導管部と本体部との接触領域における導管部の前記左右方向のタング側の端部が、当該接触領域におけるインフレーター側の端部よりも、前記前後方向の幅が広い形状となっている。このため、当該接触領域における導管部のタング側の端部が導管部の先端側の収束開始点付近に位置する場合であっても、当該接触領域のタング側の端部における前記前後方向の一端側と他端側の収束開始点を当該接触領域外にシフトさせやすくなる。これにより当該接触領域における導管部のタング側の端部における鉛直方向の幅を前記前後方向の両端部において広く保ちやすくなる。従って、膨張した状態の本体部が、導管部の先端側の形状に沿って下方に下がりにくくなり、本体部の先端側が下方に傾くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
【
図2】乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
【
図3】乗員保護装置を搭載したシートの正面図である。
【
図4】乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
【
図5】
図3に示すA-A部を切断したバッグ組付体の断面図である。
【
図6】エアバッグが膨張した状態のバッグ組付体を下側から見た斜視図である。
【
図7】エアバッグを構成するバッグ本体部と導管部の展開平面図である。
【
図8】エアバッグの膨張完了時のバッグ本体部と導管部を後方から見た図である。
【
図9】エアバッグの膨張完了時のバッグ本体部と導管部を後方から見た図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置におけるエアバッグの膨張完了時のバッグ本体部と導管部を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、まず本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置10の全体構成について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明において、左右方向は、乗員保護装置10を搭載したシートの左方向と右方向、具体的にはシート1に着座する乗員Mから見た左方向と右方向を意味する。前後方向は、乗員保護装置10を搭載したシート1の前方向と後方向、具体的にはシート1に着座する乗員Mから見た前方向と後方向を意味する。
【0012】
図1は、乗員保護装置10を搭載したシート1の斜視図である。
図2は、乗員保護装置10を搭載したシート1の左側面図である。
図3は、乗員保護装置10を搭載したシート1の正面図であり、シート1に着座してシートベルト11を装着した状態の乗員Mと膨張状態のエアバッグ30を二点鎖線で示している。
図4は、乗員保護装置10を搭載したシート1の左側面図であり、エアバッグ30が膨張した状態を示し、シート1に着座してシートベルト11を装着した状態の乗員Mを二点鎖線で示している。
【0013】
図1~
図4に示す様に、乗員保護装置10は、車両の後部座席の左側のシート1に搭載されており、シート1に着座した乗員Mを保護するために設けられている。乗員保護装置10は、シートベルト11、エアバッグ30を備えるバッグ組付体29、及びエアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター24から構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5を備える。なお、乗員保護装置10は、車両の後部座席の左側のシート1だけでなく、車両の他の座席にも設けることができる。
【0014】
シートベルト11は、滑り性能が良好なポリエステル繊維等を編んだ帯状の材料で形成されている。シートベルト11は、シート1に着座した乗員Mの左肩口付近において、その上端11a側を背もたれ部2の左上縁付近の内部に設けられた巻き取り装置15から繰り出し可能に構成されている。シートベルト11の下端11b側は、座部5の左側に設けられたアンカ部材17に固定された固定端となっている。また、シートベルト11の中間部位には、タング20が設けられている。タング20は、シート1の座部5の右側に設けられたバックル19に締結される。乗員Mがシート1に着座し、タング20がバックル19に締結された状態が、乗員Mにシートベルト11が装着された状態である。
【0015】
乗員Mに装着された状態のシートベルト11は、タング20から巻き取り装置15側に延び、乗員Mの上半身MUの前面側に配置され、乗員Mの上半身MUを拘束可能な部位であるショルダーベルト部12と、タング20から下端11b側に延び、乗員Mの腰部MWの前面側に配置され、腰部MWを拘束可能な部位であるラップベルト部13を有する。なお、乗員Mは、バックル19に設けられた不図示のリリースボタンを押圧操作することによってタング20のバックル19に対する締結状態を解除し、タング20をバックル19から取り外すことができる。
【0016】
巻き取り装置15は、シートベルト11の急激な引き出しがある場合は引き出しを停止させ、さらに車両の衝突等があれば引き出したシートベルト11を巻き取り可能に構成されたプリテンショナー機構16を有する。プリテンショナー機構16は、汎用のものであって、内蔵したガスジェネレータを作動させてシートベルト11を巻き付けていた軸を回転させて、シートベルト11を瞬時に巻き取るものである。
【0017】
インフレーター24は、膨張用ガスを放出するインフレーター本体25と、インフレーター本体25から放出された膨張用ガスをエアバッグ30に案内するパイプ部26から構成されている。インフレーター本体25は、シート1の座部5を支持するシートフレーム4に取り付けられている。パイプ部26は、インフレーター本体25から延出し、座部5の底面から側面に沿うように略L字状に屈曲した形状をしている。
【0018】
バッグ組付体29は、バッグ本体部30aと導管部30bから構成されるエアバッグ30と、バッグ連結部52と、バッグカバー59を備える。バッグ本体部30aは、エアバッグ30が作動する前の状態では、折り畳まれた状態でバッグカバー59の内部に収納されている。エアバッグ30の導管部30bは、インフレーター24のパイプ部26に接続されており、インフレーター24から放出される膨張用ガスを取り込んでバッグ本体部30aまで案内する。エアバッグ30の導管部30bの基端部30bx2と、インフレーター24のパイプ部26は、クランプ27で締結されることによって連結されている。
【0019】
次に、乗員保護装置10による乗員Mの保護動作について説明する。まず車両が衝突すると、巻き取り装置15のプリテンショナー機構16が作動し、乗員Mのシート1への着座姿勢を安定させるために乗員Mに装着したシートベルト11が巻き取られる。これによりシートベルト11のラップベルト部13がタング20側に引き込まれるとともに、ラップベルト部13から連なるショルダーベルト部12が乗員Mの肩口側に引き込まれる。その後、インフレーター24が作動し、膨張用ガスがインフレーター本体25からパイプ部26、エアバッグ30の導管部30bを経由してエアバッグ30のバッグ本体部30aに供給されると、バッグ本体部30aが膨張する。これにより前方移動する乗員Mの上半身MUがバッグ本体部30aに受け止められて乗員Mが保護される。
【0020】
次に、バッグ組付体29の構成について説明する。
図5は、
図3に示すA-A部を切断したバッグ組付体29の断面図である。
図6は、エアバッグ30が膨張した状態のバッグ組付体29を下方から見た斜視図であり、バッグカバー59は省略している。
図7は、エアバッグ30を構成するバッグ本体部30aと導管部30bの展開平面図である。
図5、
図6、
図7に示す様に、バッグ組付体29は、エアバッグ30、バッグ連結部52、及びバッグカバー59を備える。
【0021】
エアバッグ30は、膨張用ガスにより膨張して乗員Mを受け止める本体部としてのバッグ本体部30aと、インフレーター24のパイプ部26に接続され、インフレーター24から放出される膨張用ガスをバッグ本体部30aの流入口30a3aまで案内してバッグ本体部30aに膨張用ガスを流入させる導管部30bから構成されている。バッグ本体部30aと導管部30bは、縫合されることによって連結されている。
【0022】
膨張完了時のバッグ本体部30aは、乗員M側に配置され、前方移動する乗員Mの上半身MUを受け止める後壁部30a1と、乗員M側とは反対の前側に配置される前壁部30a2と、下側に配置され、乗員Mの大腿部MFに支持される下壁部30a3と、左右にそれぞれ配置される左壁部30a4、右壁部30a5を有する。また、バッグ本体部30aの後壁部30a1の上下方向の中間部分には、バッグ本体部30aの膨張完了時において後壁部30a1の上部を乗員M側に近接させるように屈曲させるための屈曲用縫合部30a1aが設けられている。
【0023】
また、バッグ本体部30aの下壁部30a3には、導管部30b内の膨張用ガスを流入させるための開口部である二つの流入口30a3aが設けられている。さらにバッグ本体部30aの左壁部30a4と右壁部30a5には、バッグ本体部30a内に流入した膨張用ガスの余剰分を排気するための開口部であるベントホール30a4a、30a5aが設けられている。
【0024】
また、バッグ本体部30aは、ポリエステル繊維を平織り等して形成した織布であるバッグ用基布で形成された後側材61と前側材62の縁部61a、62a同士を縫合することによって形成されている。後側材61は、後壁部30a1、下壁部30a3、左壁部30a4の後部側、及び右壁部30a5の後部側を形成する。前側材62は、前壁部30a2、左壁部30a4の前部側、及び右壁部30a5の前部側を形成する。また、後壁部30a1の屈曲用縫合部30a1aは、後側材61の略長円状の縫合予定部61bが摘ままれて二つ折りにされ、重なった部分が縫合されることで形成されている。
【0025】
導管部30bは、インフレーター24のパイプ部26とバッグ本体部30aにそれぞれ連結され、ラップベルト部13の長手方向に沿って延びる筒状の部材である。導管部30bは、バッグ本体部30aの流入口30a3aと連通する連通口30b1を有する。この連通口30b1の径を確保するために、導管部30bの先端部30bx1側の前後方向の幅は基端部30bx2側の幅よりも広くなっている。導管部30bの内部の膨張用ガスは、連通口30b1、流入口30a3aを経由して、バッグ本体部30aの内部に流入する。
【0026】
また、導管部30bは、バッグ本体部30aの素材と同じ素材であるバッグ用基布で形成された下側材63と上側材64の縁部63a、64a同士を縫合することによって形成されている。下側材63は、縫合部63bにおいてバッグ連結部52に縫合されることによりバッグ連結部52と連結されている。上側材64は、連通口30b1の周縁64bがバッグ本体部30aを形成する後側材61の流入口30a3aの周縁61cに縫合されることによりバッグ本体部30aの下壁部30a3に連結されている。なお、下側材63と上側材64の外形寸法は同じとなっている。
【0027】
バッグ連結部52は、エアバッグ30を形成するバッグ用基布と同様の素材で形成された筒状の部材であり、エアバッグ30をラップベルト部13に連結する部材である。バッグ連結部52の筒内部の空間は、ラップベルト部13が挿通されるベルト挿通部52aとなっている。ベルト挿通部52aにラップベルト部13が挿通された後、両者が縫合されることでバッグ連結部52とラップベルト部13とが連結される。また、バッグ連結部52の上面は、エアバッグ30の導管部30bを形成する下側材63の縫合部63bに縫合されて連結される。
【0028】
バッグカバー59は、シート1の素材に使用されるようなファブリックで形成された筒状の部材である。バッグカバー59は、筒内部に折り畳まれた状態のエアバッグ30のバッグ本体部30a、導管部30bの一部、バッグ連結部52、及びラップベルト部13におけるバッグ組付体29に組み付けられる部分を収容する。バッグカバー59は、エアバッグ30のバッグ本体部30aが膨張する際にバッグ本体部30aから圧力を受けてその一部が破断し、バッグ本体部30aをバッグカバー59から突出させる。
【0029】
図8は、エアバッグ30の膨張完了時のバッグ本体部30aと導管部30bを後方(乗員M側)から見た図である。
図8に示す様に、エアバッグ30のバッグ本体部30aが膨張した状態において、左右方向における導管部30bのタング20側の端部である導管部30bの先端部30bx1は、バッグ本体部30aのタング20側の端部であるバッグ本体部30aの先端部30ax1と同等の位置まで延びている。本実施形態のシート1は、車両の後部座席の左側のシートであり、巻き取り装置15やアンカ部材17も左側に配置されている。このため、バッグ本体部30aの先端部30ax1は、左右方向におけるバッグ本体部30aの車内側の端部であり、右端部でもある。同様に、導管部30bの先端部30bx1は左右方向における導管部30bの車内側の端部であり、右端部でもある。また、導管部30bの先端部30bx1は、インフレーター24に接続される側の端部とは反対側の端部でもある。そして左右方向において、バッグ本体部30aの先端部30ax1と導管部30bの先端部30bx1は同等の位置に位置している。ここでいう同等の位置には、左右方向におけるバッグ本体部30aの先端部30ax1と導管部30bの先端部30bx1の位置が完全に同一の構成の他に、公差の範囲でずれている構成が含まれる。
【0030】
このようにバッグ本体部30aの先端部30ax1と導管部30bの先端部30bx1との位置関係を設定することにより、次の効果を奏する。即ち、導管部30bは、その先端部30bx1において上面30by1と底面30by2とを連結させる必要があることから、先端部30bx1側が次第に収束して鉛直方向の幅が狭くなる。このため、導管部30bの先端部30bx1が左右方向におけるバッグ本体部30aの先端部30ax1よりもタング20から離れた位置(車外側、アンカ部材17側)に位置している場合、膨張した状態のバッグ本体部30aと導管部30bとの接触領域内に導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点が位置しやすくなることから、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が導管部30bの先端部30bx1側の形状に沿って下方に下がり、バッグ本体部30aが傾いてしまうおそれがある。
【0031】
これに対して導管部30bの先端部30bx1を上記配置とすることにより、導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点の位置を、バッグ本体部30aと導管部30bとの接触領域よりもタング20側の接触領域外にシフトさせやすくなる。このため、膨張した状態のバッグ本体部30aが、導管部30bの先端部30bx1側の形状に沿って下方に下がりにくくなり、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことを抑制することができる。従って、バッグ本体部30aによって乗員Mを受け止める際に、バッグ本体部30aがその中心付近で乗員Mを受け止めやすくなり、乗員Mの安全性をより確保しやすくなる。
【0032】
なお、導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点の位置は、膨張した状態のバッグ本体部30aと導管部30bとの接触領域外に位置するのが望ましい。しかしながら、当該接触領域内に位置する場合であっても、本実施形態の構成によれば、導管部30bの先端部30bx1がバッグ本体部30aの先端部30ax1よりタング20から離れた位置に配置されている構成と比較して、導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点の位置をタング20側にシフトさせることができるため、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことを抑制する効果を得ることができる。
【0033】
また、
図9に示す様に、バッグ本体部30aが膨張した状態において、左右方向における導管部30bの先端部30bx1が、バッグ本体部30aの先端部30ax1よりもタング20に近い位置まで延びている構成としてもよい。これにより導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点の位置をバッグ本体部30aと導管部30bとの接触領域外にさらにシフトさせやすくなり、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことをさらに抑制しやすくなる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る乗員保護装置10は、第1実施形態の構成に対し、エアバッグ30の導管部30bの形状のみが異なり、その他の構成は第1実施形態の構成と同様である。
図10は、本実施形態に係る乗員保護装置10におけるエアバッグ30の膨張完了時のバッグ本体部30aと導管部30bを下方から見た斜視図である。
図10に示す様に、バッグ本体部30aが膨張した状態における導管部30bとバッグ本体部30aとの接触領域を接触領域Vとする。このとき、本実施形態に係るエアバッグ30の導管部30bは、接触領域Vにおける導管部30bの左右方向のタング20側の端部30bx3が、接触領域Vにおけるインフレーター24側の端部30bx4よりも、前後方向の幅が広い形状となっている。つまり接触領域Vにおける導管部30bのタング20側の端部30bx3の前後方向の幅L1が、接触領域Vにおけるインフレーター24側の端部30bx4の前後方向の幅L2よりも広くなっている。なお、ここでいう導管部30bの前後方向の幅とは、接触領域Vにおける導管部30bの端部30bx3、30bx4を基準として、その位置における導管部30bの前後方向の幅を意味するものであり、当該位置における前後方向の導管部30bとバッグ本体部30aとの接触部分の幅ではなく、当該接触部分の幅と非接触部分の幅とを合わせた幅を意味するものである。
【0036】
エアバッグ30の導管部30bは、左右方向の先端部30bx1だけでなく、前後方向の両端部において上面30by1と底面30by2とを連結させる必要がある。このため、導管部30bの先端部30bx1側と同様に、前後方向の一端側と他端側はそれぞれ次第に収束して鉛直方向の幅が狭くなる。ここで接触領域Vにおける導管部30bのインフレーター24側の端部30bx4は、接触領域Vが導管部30bの先端部30bx1側まで延びていることから、先端部30bx1側の収束開始点から離れた位置にあるため、前後方向の一端側と他端側では次第に収束するものの、鉛直方向の幅が狭くなりにくい。
【0037】
また、本実施形態の構成によれば、バッグ本体部30aが膨張した状態において、接触領域Vにおける導管部30bのタング20側の端部30bx3の前後方向の幅L1が、接触領域Vにおけるインフレーター24側の端部30bx4の前後方向の幅L2よりも広くなっている。このため、接触領域Vにおける導管部30bのタング20側の端部30bx3が導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点付近に位置する場合であっても、導管部30bの端部30bx3における前後方向の一端側と他端側の収束開始点を接触領域V外にシフトさせやすくなるため、導管部30bの端部30bx3における鉛直方向の幅を前後方向の両端部において広く保ちやすくなる。従って、膨張した状態のバッグ本体部30aが、導管部30bの先端部30bx1側の形状に沿って下方に下がりにくくなり、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことを抑制することができる。
【0038】
なお、接触領域Vにおける導管部30bのタング20側の端部30bx3の前後方向の収束開始点の位置は、接触領域Vの外側に位置するのが望ましい。しかしながら、接触領域Vの内側に位置する場合であっても、本実施形態の構成によれば、接触領域Vにおける導管部30bの端部30bx3の前後方向の幅L1が端部30bx4の前後方向の幅L2以下の構成と比較して、導管部30bの端部30bx3の前後方向の収束開始点の位置を接触領域Vの中心側から外側にシフトさせることができるため、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことを抑制する効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、バッグ本体部30aが膨張した状態において、左右方向における導管部30bの先端部30bx1の位置が、バッグ本体部30aの先端部30ax1よりもインフレーター24側に位置する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、第1実施形態の構成と同様に、左右方向において、導管部30bの先端部30bx1がバッグ本体部30aの先端部30ax1と同等の位置まで延びている構成や、バッグ本体部30aの先端部30ax1よりもタング20側まで延びている構成としてもよい。このような構成により、導管部30bの先端部30bx1側の収束開始点の位置を、接触領域Vの外側にシフトさせやすくなり、バッグ本体部30aの先端部30ax1側が下方に傾くことをさらに抑制することができる。
【0040】
また、第1実施形態、第2実施形態では、シートベルト11がショルダーベルト部12とラップベルト部13を備えるいわゆる三点式のシートベルト11を例示して乗員保護装置10を説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、シートベルト11がショルダーベルト部12を備えずにラップベルト部13を備えるいわゆる二点式のシートベルト11に本発明を適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…シート、10…乗員保護装置、11…シートベルト、13…ラップベルト部、19…バックル、20…タング、24…インフレーター、30…エアバッグ、30a…バッグ本体部、30a3a…流入口、30b…導管部、M…乗員、MW…腰部