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特開2024-27488調光積層体、および調光積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027488
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】調光積層体、および調光積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20240222BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
G02F1/137
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130324
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上村 龍志
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088MA01
2H189AA04
2H189AA05
2H189AA60
2H189AA64
2H189AA70
2H189BA10
2H189CA18
2H189DA73
2H189DA79
2H189EA02Y
2H189EA03Y
2H189FA56
2H189FA65
2H189FA74
2H189FA81
2H189GA45
2H189HA07
2H189LA03
2H189LA07
(57)【要約】
【課題】視認性を向上可能にした調光積層体、および調光積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】2つの封止シートと、2つの封止シートの間に位置して封止シートに封止された調光シート20と、を備える調光積層体であって、封止シートは、調光積層体の表面を構成する第1封止基材フィルム11Aと、第1封止基材フィルム11Aと調光シート20との間に位置する第1熱可塑性樹脂層11Bと、第1封止基材フィルム11Aと第1熱可塑性樹脂層11Bとの間、および第1熱可塑性樹脂層11Bと調光シート20との間の少なくとも一方に位置する第1プライマー層31と、を備え、第1封止基材フィルム11Aの屈折率と調光積層体の屈折率との差を0以上0.3以下にする第1プライマー層31を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの封止シートと、
前記2つの前記封止シートの間に位置して前記封止シートに封止された調光シートと、を備える調光積層体であって、
前記調光シートは、
複数の空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記透明樹脂層と一方の前記封止シートとの間に位置する第1透明電極フィルムと、
前記透明樹脂層と他方の前記封止シートとの間に位置する第2透明電極フィルムと、
を備え、
前記封止シートは、
前記調光積層体の表面を構成する透明な基材フィルムと、
前記基材フィルムと前記調光シートとの間に位置する熱可塑性樹脂層と、
前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間、および前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間の少なくとも一方に位置するプライマー層であって、前記基材フィルムの屈折率と前記調光積層体の屈折率との差を0以上0.3以下とする前記プライマー層を備える
ことを特徴とする調光積層体。
【請求項2】
前記プライマー層の厚さは2μm以下である
請求項1に記載の調光積層体。
【請求項3】
前記封止シートは、
前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間と、前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間とに、それぞれ前記プライマー層を備える、
請求項1に記載の調光積層体。
【請求項4】
前記プライマー層は、変性ポリオレフィンを含む
請求項1に記載の調光積層体。
【請求項5】
2つの封止シートの間に調光シートを配置して前記調光シートを前記封止シートの融着によって封止する調光積層体の製造方法であって、
前記調光シートは、
複数の空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記透明樹脂層と一方の前記封止シートとの間に位置する第1透明電極フィルムと、
前記透明樹脂層と他方の前記封止シートとの間に位置する第2透明電極フィルムと、
を備え、
前記封止シートは、
前記調光積層体の表面を構成する透明な基材フィルムと、
前記基材フィルムと前記調光シートとの間に位置する熱可塑性樹脂層と、
前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間、および前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間の少なくとも一方に位置するプライマー層であって、前記基材フィルムの屈折率と前記調光積層体の屈折率との差が0以上0.3以下とする前記プライマー層を備える
ことを特徴とする調光積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止シートに挟まれた調光シートを備える調光積層体、および調光積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備える。調光層は、複数の空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物とを備える。透明電極層間の印加電圧は、液晶組成物と透明樹脂層との間の屈折率差を変える。液晶組成物と透明樹脂層との間の屈折率差の変更は、透明から不透明に調光シートの状態を可逆的に変更する。
【0003】
調光積層体は、調光シートと、調光シートを挟む一対の封止シートとを備える。1つの封止シートは、調光シートの表面と端面とを覆う。他の封止シートは、調光シートの裏面と端面とを覆う。1つの封止シートの縁は、他の封止シートの縁に融着される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-034612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した調光積層体は、調光シートの耐水性を高める。一方、封止シートに調光シートを封止させる調光積層体は、調光積層体に入射した光の進行方向を調光シートと封止シートとの界面で各色の波長域に分散する。入射光の分散による虹色斑のような呈色は、調光積層体を通した物体の視認性を低下させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための調光積層体は、2つの封止シートと、前記2つの前記封止シートの間に位置して前記封止シートに封止された調光シートと、を備える調光積層体である。前記調光シートは、複数の空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、前記透明樹脂層と一方の前記封止シートとの間に位置する第1透明電極フィルムと、前記透明樹脂層と他方の前記封止シートとの間に位置する第2透明電極フィルムと、を備える。前記封止シートは、前記調光積層体の表面を構成する透明な基材フィルムと、前記基材フィルムと前記調光シートとの間に位置する熱可塑性樹脂層と、前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間、および前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間の少なくとも一方に位置するプライマー層と、を備える。そして、前記基材フィルムの屈折率と前記調光積層体の屈折率との差を0以上0.3以下とする厚さを前記プライマー層が有する。
【0007】
上記課題を解決するための調光積層体の製造方法は、2つの封止シートの間に調光シートを配置して前記調光シートを前記封止シートの融着によって封止する調光積層体の製造方法である。前記調光シートは、複数の空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、前記透明樹脂層と一方の前記封止シートとの間に位置する第1透明電極フィルムと、前記透明樹脂層と他方の前記封止シートとの間に位置する第2透明電極フィルムと、を備える。前記封止シートは、前記調光積層体の表面を構成する透明な基材フィルムと、前記基材フィルムと前記調光シートとの間に位置する熱可塑性樹脂層と、前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間、および前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間の少なくとも一方に位置するプライマー層と、を備える。そして、前記基材フィルムの屈折率と前記調光積層体の屈折率との差が0以上0.3以下となる厚さに前記プライマー層を形成する。
【0008】
上記各構成によれば、基材フィルムの屈折率と調光積層体の屈折率との差が0以上0.3以下となる厚さをプライマー層が有する。このため、調光積層体を構成する基材フィルムと他の層との間の屈折率差に起因した入射光の波長分散が抑制される。結果として、調光積層体を通した物体の視認性が高まる。
【0009】
上記調光積層体において、前記プライマー層の厚さは2μm以下でもよい。この構成によれば、上述した効果の実効性が高まる。また、プライマー層の厚さが調光積層体の光透過性を維持できる程度であると共に、プライマー層に要求される層間接着性を確保することも可能である。
【0010】
上記調光積層体において、前記封止シートは、前記基材フィルムと前記熱可塑性樹脂層との間と、前記熱可塑性樹脂層と前記調光シートとの間とに、それぞれ前記プライマー層を備えてもよい。この構成によれば、プライマー層の層数が増えるため、基材フィルムの屈折率と調光積層体の屈折率との差がプライマー層の厚さによって調整されやすい。
【0011】
上記調光積層体において、前記プライマー層は、変性ポリオレフィンを含有してもよい。この構成によれば、上述した効果の実効性が高まる。
【発明の効果】
【0012】
上記調光積層体、および調光積層体の製造方法によれば、調光積層体を通した物体の視認性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、調光積層体の斜視図である。
図2図2は、図1の2-2線断面図である。
図3図3は、調光層の層構成図である。
図4図4は、調光積層体の層構成図である。
図5図5は、変更例における調光積層体の層構成図である。
図6図6は、変更例における調光積層体の層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、調光積層体、および調光積層体の製造方法の一実施形態を示す。
[調光積層体]
調光積層体は、空間を区切る部材として用いられる。調光積層体そのものが空間を区切る部材であってもよいし、透明部材に貼り着けられた貼着体が空間を区切る部材であってもよい。貼着体は、1つの透明体に調光積層体を貼り着けられてもよいし、2つの透明部材に調光積層体を挟まれてもよい。空間を区切る部材は、窓ガラスや間仕切りである。窓ガラスは、車両や航空機の移動体に搭載されたり、オフィスビルや公共施設などの建物に設置されたりする。間仕切りは、車内空間や屋内空間に配置される。調光積層体は、平面状でもよいし曲面状でもよい。調光積層体は、透明粘着層を介して透明部材に貼り着けられる。透明粘着層の一例は、OCAフィルム(Optical Clear Adhesiveフィルム)である。
【0015】
調光積層体の駆動型式は、ノーマル型でもよいしリバース型でもよい。ノーマル型の調光積層体は、電圧信号の供給で不透明から透明に遷移し、かつ供給の停止によって透明から不透明に戻る。リバース型に適用される調光積層体は、電圧信号の供給によって透明から不透明に遷移し、かつ供給の停止によって不透明から透明に戻る。
【0016】
図1が示すように、調光積層体は、第1封止シート11、第2封止シート12、および調光シート20を備える。調光シート20は、第1封止シート11と第2封止シート12との間に配置されている。調光シート20の全体は、第1封止シート11の表面と対向する位置から見た平面視において、第1封止シート11に覆われている。調光シート20の全体は、第2封止シート12の裏面と対向する位置から見た平面視において、第2封止シート12に覆われている。
【0017】
信号伝送部51は、第1封止シート11と第2封止シート12との間を通じて、調光シート20の第1透明電極層21B(図3を参照)と、調光シート20の第2透明電極層22B(図2を参照)とに接続されている。信号伝送部51は、調光シート20を駆動する電圧信号を調光シート20に供給する。信号伝送部51は、導電性接続層とフレキシブル配線基板とから構成されてもよい。信号伝送部51は、導電ペースト層、導電テープ、およびリード線から構成されてもよい。
【0018】
図2が示すように、第1封止シート11は、第1封止基材フィルム11A、第1熱可塑性樹脂層11B、および第1プライマー層31(図4を参照)を備える。第2封止シート12は、第2封止基材フィルム12A、第2熱可塑性樹脂層12B、および第2プライマー層32(図4を参照)を備える。
【0019】
第1封止基材フィルム11Aは、第1熱可塑性樹脂層11Bと第1プライマー層31とを介して調光シート20に接合されている。調光シート20の全体は、第1熱可塑性樹脂層11Bと第1プライマー層31とに覆われている。第1封止シート11と調光シート20との間隙は、第1熱可塑性樹脂層11Bと第1プライマー層31とに充填されている。
【0020】
第2封止基材フィルム12Aは、第2熱可塑性樹脂層12Bと第2プライマー層32とを介して調光シート20に接合されている。調光シート20の全体は、第2熱可塑性樹脂層12Bと第2プライマー層32とに覆われている。第2封止シート12と調光シート20との間隙は、第2熱可塑性樹脂層12Bと第2プライマー層32とに充填されている。
【0021】
第2封止シート12の周縁は、第1封止シート11の周縁に接合されている。第1封止シート11と第2封止シート12との接合は、第1熱可塑性樹脂層11Bの一部、あるいは第2熱可塑性樹脂層12Bの一部を介した接合である。調光積層体の端面10Eは、各封止シート11,12の端面、およびこれらを接合する熱可塑性樹脂から構成される。これによって、調光シート20の全体は、各封止シート11,12によって封止されている。
【0022】
各封止基材フィルム11A,12Aは、それぞれ独立に無色透明フィルムでもよいし、有色透明フィルムでもよい。各封止基材フィルム11A,12Aの構成材料は、それぞれ独立に透明樹脂でもよいし、透明無機ガラスでもよい。透明樹脂の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン系樹脂、およびポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一種である。透明無機ガラスの一例は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一種である。各封止シート11、12は、調光シート20の紫外線耐性を向上する観点から、紫外線吸収剤を含有してもよい。封止シート11の構成樹脂は、封止シート12の構成樹脂と同一でもよいし、封止シート12の構成樹脂と異なってもよい。
【0023】
各封止基材フィルム11A,12Aは、それぞれ独立に単層構造体でもよいし、積層構造体でもよい。各封止基材フィルム11A,12Aの厚みは、調光シート20に対する防水性を向上する観点から、50μm以上であることが好ましい。各封止基材フィルム11A,12Aの厚みは、調光積層体の光透過性を向上する観点から、また調光シート20と各封止基材フィルム11A,12Aとを接合する作業性を向上する観点から、300μm以下であることが好ましい。
【0024】
[調光シート20]
図3が示すように、調光シート20は、第1透明電極フィルム21、第2透明電極フィルム22、および調光層23を備える。第1透明電極フィルム21は、第1電極基材フィルム21Aと、第1電極基材フィルム21Aに積層された第1透明電極層21Bとを備える。第2透明電極フィルム22は、第2電極基材フィルム22Aと、第2電極基材フィルム22Aに積層された第2透明電極層22Bとを備える。
【0025】
各電極基材フィルム21A,22Aは、それぞれ独立に無色透明フィルムでもよいし、有色透明フィルムでもよい。各電極基材フィルム21A,22Aの構成材料は、それぞれ独立に透明樹脂でもよいし、透明無機ガラスでもよい。透明樹脂の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリカーボネートからなる群から選択されるいずれか一種である。透明無機ガラスの一例は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0026】
各電極基材フィルム21A,22Aは、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。各電極基材フィルム21A,22Aの厚みは、調光シート20の機械的耐性を向上する観点から、20μm以上であることが好ましい。各電極基材フィルム21A,22Aの厚みは、調光シート20の光透過性を向上する観点から、200μm以下であることが好ましい。
【0027】
各透明電極層21B,22Bは、それぞれ独立に無色透明である。各透明電極層21B,22Bの構成材料は、それぞれ導電性無機酸化物、金属、および導電性有機高分子化合物からなる群から選択されるいずれか一種である。導電性無機酸化物の一例は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種である。金属は、金や銀のナノワイヤーである。導電性有機高分子化合物の一例は、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0028】
各透明電極層21B,22Bの厚みは、電気伝導性を向上する観点から、0.1μm以上であることが好ましい。各透明電極層21B,22Bの厚みは、光透過性を向上する観点から、10μm以下であることが好ましい。
【0029】
調光層23は、透明樹脂層23Pと液晶組成物23Lとを備える。調光層23は、調光層23の全体に分散されたスペーサを備える。調光層23は、第1透明電極層21Bと第2透明電極層22Bとの間に位置する。調光層23は、第1透明電極層21Bと第2透明電極層22Bとに直接的に接してもよいし、配向層を介して第1透明電極層21Bと第2透明電極層22Bとに接合されてもよい。配向層は、調光層23の液晶化合物に配向規制力を加える。配向層が液晶化合物に加える配向規制力は、調光層23を透明にする。第1透明電極層21Bと第2透明電極層22Bとは、第1電極基材フィルム21Aと第2電極基材フィルム22Aとの間に位置する。
【0030】
透明樹脂層23Pは、調光層23に複数の空隙を区画する。液晶組成物23Lは、液晶化合物と添加物とを含有する。添加剤は、粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、および二色性色素からなる群から選択されるいずれか一種である。透明樹脂層23Pは、電離線硬化性化合物の硬化体である。電離線硬化性化合物の一例は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。液晶組成物23Lは、透明樹脂層23Pに区画される空隙を充填する。液晶化合物の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0031】
透明樹脂層23Pと液晶組成物23Lとの総量に対する透明樹脂層23Pの含有率は、透明と不透明とを両立させやすい観点から、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。調光層23の厚みは、低消費電力下で透明と不透明とを両立させやすい観点から、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、調光層23における液晶組成物23Lの保持型式は、高分子分散型の他に、高分子ネットワーク型でもよいし、カプセル型でもよい。高分子ネットワーク型は、三次元網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークの空隙に液晶組成物23Lを保持する。カプセル型は、高分子ネットワークのなかのカプセルに液晶組成物23Lを保持する。
【0032】
[プライマー層31,32]
図4が示すように、第1熱可塑性樹脂層11Bは、第1封止基材フィルム11Aと調光シート20との間に配置されている。第1プライマー層31は、第1熱可塑性樹脂層11Bと調光シート20との間に配置されている。第1封止基材フィルム11Aは、第1熱可塑性樹脂層11Bと第1プライマー層31とを介して調光シート20に接合されている。
【0033】
第2熱可塑性樹脂層12Bは、第2封止基材フィルム12Aと調光シート20との間に配置されている。第2プライマー層32は、第2熱可塑性樹脂層12Bと調光シート20との間に配置されている。第2封止基材フィルム12Aは、第2熱可塑性樹脂層12Bと第2プライマー層32とを介して調光シート20に接合されている。
【0034】
各熱可塑性樹脂層11B,12Bの構成材料の一例は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、シリコーン系樹脂、およびエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である。第1熱可塑性樹脂層11Bの構成材料は、第2熱可塑性樹脂層12Bの構成材料と同一であってもよいし、第2熱可塑性樹脂層12Bと融着可能であって第2熱可塑性樹脂層12Bの構成材料とは異なってもよい。各熱可塑性樹脂層11B,12Bの厚さは、熱融着性と封止性とを向上する観点から、1μm以上であることが好ましい。各熱可塑性樹脂層11B,12Bの厚さは、調光積層体の透明性を向上する観点から100μm以下である。
【0035】
第1プライマー層31は、第1電極基材フィルム21Aと第1熱可塑性樹脂層11Bとに対して接着性を有する。第1プライマー層31は、第1電極基材フィルム21Aに塗工される前処理剤から構成されてもよいし、第1熱可塑性樹脂層11Bに塗工される前処理剤から構成されてもよい。
【0036】
第2プライマー層32は、第2電極基材フィルム22Aと第2熱可塑性樹脂層12Bとに対して接着性を有する。第2プライマー層32は、第2電極基材フィルム22Aに塗工される前処理剤から構成されてもよいし、第2熱可塑性樹脂層12Bに塗工される前処理剤から構成されてもよい。
【0037】
各プライマー層31,32の構成材料の一例は、不飽和カルボン酸によって変性した酸変性ポリオレフィン系プライマーである。各プライマー層31,32の構成材料の他の例は、アクリルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン系プライマー、ポリエチレンイミン系プライマー、ポリエステル系プライマー、ポリアクリレート系プライマーである。
【0038】
各封止基材フィルム11A,12Aの屈折率は、1.4以上1.7以下である。調光積層体の屈折率は、1.4以上1.7以下である。各封止基材フィルム11A,12Aの屈折率は、調光シート20の屈折率、および各熱可塑性樹脂層11B,12Bとは異なる。第1プライマー層31の屈折率は、第1封止基材フィルム11Aの屈折率と、透明時の調光積層体の屈折率との差を0以上0.3以下にする。第2プライマー層32の屈折率は、第2封止基材フィルム12Aの屈折率と、透明時の調光積層体の屈折率との差を0以上0.3以下にする。各プライマー層31,32の屈折率は、それぞれの構成材料を変更したり、構成材料の引っ張り弾性率を変更したりすることによって調整される。これにより、調光積層体の内部における層間の界面で入射光の分散に起因して虹色斑が生じることを抑制できる。
【0039】
第1プライマー層31の屈折率は、第1封止基材フィルム11Aの屈折率と透明時の調光シート20の屈折率との間でもよい。第1プライマー層31の屈折率は、第1封止基材フィルム11Aの屈折率と第1熱可塑性樹脂層11Bとの間でもよい。第2プライマー層32の屈折率は、第2封止基材フィルム12Aの屈折率と透明時の調光シート20の屈折率との間である。第2プライマー層32の屈折率は、第2封止基材フィルム12Aの屈折率と第2熱可塑性樹脂層12Bとの間である。これにより、各プライマー層31,32と他の層との界面で入射光の分散に起因して虹色斑が生じることを抑制できる。
【0040】
第1封止基材フィルム11Aの屈折率が透明時の調光シート20の屈折率や第1熱可塑性樹脂層11Bの屈折率よりも低い場合、第1プライマー層31の屈折率は、透明時の調光シート20の屈折率や第1熱可塑性樹脂層11Bの屈折率よりも低い。第2封止基材フィルム12Aの屈折率が透明時の調光シート20の屈折率や第2熱可塑性樹脂層12Bの屈折率よりも低い場合、第1プライマー層31の屈折率は、透明時の調光シート20の屈折率や第1熱可塑性樹脂層11Bの屈折率よりも低い。各プライマー層31,32の厚さは、調光積層体の光透過性を維持でき、かつ層間接着性を高める観点から、2μm以下でもよい。
【0041】
[調光積層体の製造方法]
調光積層体の製造方法は、第1封止シート11と第2封止シート12との間に調光シート20が配置されるように、第1封止シート11と第2封止シート12と調光シート20とをラミネートする。ラミネートする方法は、各熱可塑性樹脂層11B,12Bを加熱、および加圧して硬化させるドライラミネート法である。
【0042】
まず、未硬化の各熱可塑性樹脂層11B,12Bが塗工と乾燥とを経て各封止基材フィルム11A,12Aに積層された後に、未硬化の各プライマー層31,32が各熱可塑性樹脂層11B,12Bに塗工と乾燥とを経て積層される。なお、各プライマー層31,32は、各熱可塑性樹脂層11B,12Bの周縁が各プライマー層31,32からはみ出すように配置される。
【0043】
次に、調光シート20が調光シート20を構成する各層を備えた大判のシートから切り出される。信号伝送部51が調光シート20の各透明電極層21B,22Bに接合される。続いて、第1熱可塑性樹脂層11Bの周縁が調光シート20の周縁を覆うように、未硬化の第1プライマー層31に第1電極基材フィルム21Aを接触させる。第2熱可塑性樹脂層12Bの周縁が調光シート20の周縁を覆うように、未硬化の第2プライマー層32に第2電極基材フィルム22Aを接触させる。そして、第1熱可塑性樹脂層11Bの周縁が第2熱可塑性樹脂層12Bの周縁に接合される。これによって、各熱可塑性樹脂層11B,12Bの硬化、および各プライマー層31,32の硬化を経て、調光積層体が製造される。
【0044】
[効果]
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)各封止基材フィルム11A,12Aの屈折率と調光積層体の屈折率との差が0以上0.3以下となる厚さを各プライマー層31,32が有する。このため、調光積層体を構成する各封止基材フィルム11A,12Aと他の層との間の屈折率差に起因した入射光の波長分散が抑制される。結果として、調光積層体を通した物体の視認性が高まる。
【0045】
(2)各プライマー層31,32の厚さが2μm以下であれば、各プライマー層31,32の厚さが調光積層体の光透過性を維持できる程度であると共に、各プライマー層31,32に要求される層間接着性を確保することも可能である。
【0046】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
図5が示すように、第1プライマー層31は、第1封止基材フィルム11Aと第1熱可塑性樹脂層11Bとの間に配置されてもよい。第2プライマー層32は、第2封止基材フィルム12Aと第2熱可塑性樹脂層12Bとの間に配置されてもよい。この構成によっても、上記(1)(2)に準じた効果を得ることは可能である。
【0047】
図6が示すように、第1プライマー層31に加えて、第3プライマー層33が第1封止基材フィルム11Aと第1熱可塑性樹脂層11Bとの間に配置されてもよい。第2プライマー層32に加えて、第4プライマー層34が第2封止基材フィルム12Aと第2熱可塑性樹脂層12Bとの間に配置されてもよい。この構成によれば、プライマー層31,32,33,34の層数が増えるため、各封止基材フィルム11A,12Aの屈折率と調光積層体の屈折率との差が各プライマー層31,32,33,34によって調整されやすい。
【0048】
・調光積層体の端面10Eは、調光シート20の端面を備えてもよい。この際、調光積層体の端面10Eは、調光シート20の端面を封止する封止材によって覆われてもよい。
・調光積層体は、第1封止シート11、第2封止シート12、調光シート20以外の機能層を、第1熱可塑性樹脂層11Bに対する第1封止シート11の側に備えてもよい。また、調光積層体は、第1封止シート11、第2封止シート12、調光シート20以外の機能層を、第2熱可塑性樹脂層12Bに対する第2封止シート12の側に備えてもよい。機能層の一例は、調光層23や各透明電極層21B,22Bを保護するための保護層である。保護層の一例は、ガスバリア層、紫外線バリア層、およびハードコート層からなる群から選択される少なくとも1つである。機能層の他の例は、光透過性の制御に寄与する偏光層である。
【符号の説明】
【0049】
11…第1封止シート
11A…第1封止基材フィルム
11B…第1熱可塑性樹脂層
12…第2封止シート
12A…第2封止基材フィルム
12B…第2熱可塑性樹脂層
20…調光シート
21…第1透明電極フィルム
21A…第1電極基材フィルム
21B…第1透明電極層
22…第2透明電極フィルム
22A…第2電極基材フィルム
22B…第2透明電極層
23…調光層
23L…液晶組成物
23P…透明樹脂層
31…第1プライマー層
32…第2プライマー層
33…第3プライマー層
34…第4プライマー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6