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特開2024-27489生体信号取得モジュール、生体信号取得装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027489
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】生体信号取得モジュール、生体信号取得装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20240222BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240222BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240222BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61B7/04 D
A61B5/02 350
A61B5/02 310K
A61B5/113
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130325
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】程 帆
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AA09
4C017AA14
4C017AA20
4C017AB10
4C017AC03
4C017AC35
4C017EE01
4C017FF05
4C038SV05
(57)【要約】
【課題】生体信号取得モジュールにおいて、被測定者の背中と媒質との界面における振動の減衰量を抑制することができ、被測定者の背中からであっても、精度良く生体信号を取得する技術を提供する。
【解決手段】被測定者HMの背中HBに接する物品80に設けられる生体信号取得モジュール60は、生体信号に対応する振動BSを検出するための振動センサ64と、気体とは異なる少なくとも一の媒質であって、振動センサに接する媒質と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者(HM)の背中(HB)に接する物品(80,80b)に設けられる生体信号取得モジュール(60,60b、60b2,60c1,60c2,60c3,60d1,60d2,60e2,60f1,60f2,60f3,60g,60h,60i,60i2)であって、
生体信号に対応する振動(BS)を検出するための振動センサ(64)と、
気体とは異なる少なくとも一の媒質であって、前記振動センサに接する媒質と、を備える、
生体信号取得モジュール。
【請求項2】
前記生体信号は、心音または心弾道である、請求項1に記載の生体信号取得モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記媒質の音響インピーダンスは、4.1・10kg/(m・s)以上5.0・10kg/(m・s)以下である、
生体信号取得モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記媒質の音響インピーダンスは、2.7・10kg/(m・s)以上7.6・10kg/(m・s)以下である、
生体信号取得モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の生体信号取得モジュールであって、
さらに、前記被測定者が前記物品を使用する際に前記被測定者から前記生体信号取得モジュールに付与される圧力を緩和するための圧力緩和部(68c1,68c2)を備える、
生体信号取得モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記圧力緩和部は、前記圧力を付与された前記生体信号取得モジュールが前記圧力の付与に伴う方向に退避可能な空間である、
生体信号取得モジュール。
【請求項7】
請求項5に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記圧力緩和部は、前記生体信号取得モジュールよりも低い弾性または粘弾性を有する材料を備える、
生体信号取得モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載の生体信号取得モジュールであって、
さらに、弾性体を有する加圧機構(67)であって、前記生体信号取得モジュールが前記被測定者の背中を加圧するための加圧機構、を備える、
生体信号取得モジュール。
【請求項9】
請求項1に記載の生体信号取得モジュールであって、
さらに、開口部(66E)を有する収容体(66)を備え、
前記媒質は、前記振動センサに接する第一媒質(61,61d2)と、前記第一媒質とは異なる第二媒質であって、前記第一媒質と接する第二媒質(62,62b2,62d1,62g)と、を備え、
前記収容体は、前記振動センサおよび前記第一媒質を収容し、
前記第二媒質は、前記開口部に配置され、前記収容体に収容された前記第一媒質に接した状態で前記振動センサおよび前記第一媒質を密閉する、
生体信号取得モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記第一媒質は、水、不凍液、およびオイルの少なくともいずれかである、
生体信号取得モジュール。
【請求項11】
請求項9に記載の生体信号取得モジュールであって、
前記第二媒質は、前記振動センサに近い位置の面積(DB)よりも、前記振動センサから離れた位置の面積(DF)の方が大きい、
生体信号取得モジュール。
【請求項12】
生体信号取得装置(100,100b,100b2,100e1,100e2,100e3,100e4,100e5,100j)であって、
被測定者(HM)の背中(HB)に接する表面(80F)、および前記表面とは逆側の背面(80B)を有する物品(80,80b)と、
生体信号に対応する振動(BS)を検出するための振動センサ(64)と、
気体とは異なる媒質であって、前記被測定者の背中および前記振動センサに接し、前記被測定者の背中と前記振動センサとを繋ぐ少なくとも一の媒質と、を備える、
生体信号取得装置。
【請求項13】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記媒質は、前記物品の少なくとも一部を構成する第三媒質(83)である、
生体信号取得装置。
【請求項14】
請求項13に記載の生体信号取得装置であって、
前記振動センサは、前記媒質としての前記物品の内部に配置される、
生体信号取得装置。
【請求項15】
請求項13に記載の生体信号取得装置であって、
前記振動センサは、前記媒質としての前記物品の表面に配置される、
生体信号取得装置。
【請求項16】
請求項13に記載の生体信号取得装置であって、
前記振動センサは、前記媒質としての前記物品の背面に配置される、
生体信号取得装置。
【請求項17】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記媒質は、前記物品の少なくとも一部を構成する第三媒質とは異なる第二媒質(62,62b2,62d1,62g)であり、
前記第二媒質は、前記物品の表面に配置される第二媒質表面(62F)と、前記第二媒質表面とは逆側の第二媒質背面(62B)とを備え、
前記振動センサは、前記第二媒質背面に配置される、
生体信号取得装置。
【請求項18】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記媒質は、前記物品の少なくとも一部を構成する第三媒質(83)、および前記第三媒質とは異なる第二媒質(62,62b2,62d1,62g)を備え、
前記第三媒質は、前記物品の表面としての第三媒質表面(83F)と、前記第三媒質表面とは逆側の第三媒質背面(83B)とを備え、
前記第二媒質は、
前記物品の内部に配置され、
前記第三媒質背面に接する第二媒質表面(62F)と、前記第二媒質表面とは逆側の第二媒質背面(62B)とを備え、
前記振動センサは、前記第二媒質背面に配置される、
生体信号取得装置。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の生体信号取得装置であって、
前記被測定者が前記物品を使用する際に前記被測定者から前記第二媒質および前記振動センサに付与される圧力を緩和するための圧力緩和部(68c1,68c2)を備える、
生体信号取得装置。
【請求項20】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記媒質は、前記物品の少なくとも一部を構成する第三媒質とは異なる第一媒質(61,61d2)と、前記第一媒質および前記第三媒質とは異なる第二媒質(62,62b2,62d1,62g)とを備え、
前記第二媒質は、前記物品の表面に配置される第二媒質表面(62F)と、前記第二媒質表面とは逆側の第二媒質背面(62B)とを備え、
前記第一媒質は、前記第二媒質背面および前記振動センサに接するように配置される、
生体信号取得装置。
【請求項21】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記媒質は、前記物品の少なくとも一部を構成する第三媒質(83)と、前記第三媒質とは異なる第一媒質(61,61d2)と、前記第一媒質および前記第三媒質とは異なる第二媒質(62,62b2,62d1,62g)とを備え、
前記第三媒質は、前記物品の表面としての第三媒質表面(83F)と、前記物品の内部において前記第三媒質表面とは逆側に位置する第三媒質背面(83B)とを備え、
前記第二媒質は、
前記物品の内部に配置され、
前記第三媒質背面に接する第二媒質表面(62F)と、前記第二媒質表面とは逆側の第二媒質背面(62B)とを備え、
前記第一媒質は、前記第二媒質背面および前記振動センサに接する、
生体信号取得装置。
【請求項22】
請求項20または請求項21に記載の生体信号取得装置であって、
前記被測定者が前記物品を使用する際に前記被測定者から前記第一媒質および前記第二媒質に付与される圧力を緩和するための圧力緩和部(68c1,68c2)を備える、
生体信号取得装置。
【請求項23】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記振動センサおよび前記媒質を複数備える、
生体信号取得装置。
【請求項24】
請求項12に記載の生体信号取得装置であって、
前記物品は、椅子、ソファ、寝台、診察台である、
生体信号取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体信号取得モジュール、生体信号取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro-Electro-Mechanical System)を用いた振動センサを備える心音センサが知られている(例えば、非特許文献1)。この心音センサでは、振動センサをカプセル中に充填した流体中に配置することにより、音響インピーダンスを人間の軟組織に近似させて、心音信号の減衰を抑制させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Haixia Li, Yongfeng Ren, Guojun Zhang, et al., "Design of a high SNR electronic heart sound sensor based on a MEMS bionic hydrophone" AIP Advances 9, 015005-1 - 015005-10 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の心音センサを用いた場合であっても、生体信号を精度良く取得することができないことがある。この問題は、被測定者の背中から生体信号を取得しようとする場合には、より顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、被測定者(HM)の背中(HB)に接する物品(80,80b)に設けられる生体信号取得モジュール(60,60b、60b2,60c1,60c2,60c3,60d1,60d2,60e2,60f1,60f2,60f3,60g,60h,60i,60i2)が提供される。この生体信号取得モジュールは、生体信号に対応する振動(BS)を検出するための振動センサ(64)と、気体とは異なる少なくとも一の媒質であって、前記振動センサに接する媒質と、を備える。
【0007】
この形態の生体信号取得モジュールによれば、媒質における振動の減衰量を抑制することができ、被測定者の背中からであっても、精度良く生体信号を取得することができる。
【0008】
本開示の一形態によれば、生体信号取得装置(100,100b,100b2,100e1,100e2,100e3,100e4,100e5,100j)が提供される。この生体信号取得装置は、被測定者(HM)の背中(HB)に接する表面(80F)、および前記表面とは逆側の背面(80B)を有する物品(80,80b)と、生体信号に対応する振動(BS)を検出するための振動センサ(64)と、気体とは異なる媒質であって、前記被測定者の背中および前記振動センサに接し、前記被測定者の背中と前記振動センサとを繋ぐ少なくとも一の媒質と、を備える。
【0009】
この形態の生体信号取得装置によれば、媒質における振動の減衰量を抑制することができ、被測定者の背中からであっても、精度良く生体信号を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図2】生体信号取得装置の内部機能構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図4】被測定者から媒質への減衰量と媒質の音響インピーダンスとの関係を示す第一の説明図。
図5】被測定者から媒質への減衰量と媒質の音響インピーダンスとの関係を示す第二の説明図。
図6】比較例としての電子聴診器による生体信号取得結果を示す説明図。
図7】第1実施形態に係る生体信号取得モジュールによる生体信号取得結果を示す説明図。
図8】第2実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図9】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図10】第3実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図11】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図12】第4実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図13】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図14】第5実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図15】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図16】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図17】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図18】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
図19】第6実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図20】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図21】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図22】第7実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図23】第8実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図24】第8実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す第2の説明図。
図25】第9実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図26】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す説明図。
図27】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す第1の説明図。
図28】他の実施形態に係る生体信号取得モジュールの概略構成を示す第2の説明図。
図29】他の実施形態に係る生体信号取得装置の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
図1に示すように、第1実施形態に係る生体信号取得装置100は、生体信号取得モジュール60と、椅子80と、制御装置90と、を備えている。生体信号取得装置100は、生体信号取得モジュール60を用いて生体信号を取得する。「生体信号」とは、生体現象によって体内から発せられる信号を意味する。生体信号取得装置100は、生体信号のうち、例えば、呼吸、脈拍、心弾道、心音、臓器の動作、胎動、身体の動作(体動)など、生体から発生した振動を示す信号(以下、「生体信号に対応する振動」あるいは、単に「生体信号」とも呼ぶ)を取得し、取得した生体信号を用いて人の身体的状態あるいは心理的状態(疲労や眠気、ストレス、覚醒、自律神経状態)を推定することができる。なお、生体信号取得装置100は、測定時の被測定者HMにおける衣類の着用の有無を問わない。
【0012】
生体信号取得モジュール60は、生体信号に対応する振動を検出する。本実施形態では、生体信号取得モジュール60は、椅子80の背もたれに配置されており、椅子80に腰掛けた状態の被測定者HMの背中HBから、例えば、被測定者HMの心臓HHにおける機械的振動または音響振動を含む心臓HHの心音情報を、生体信号に対応する振動として取得する。心臓内における機械的振動または音響振動は、心臓の弁の開閉によりもたらされる、または心臓内へ流入する、もしくは心臓から流出する血液の移動によりもたらされる。このように構成することにより、椅子80を利用する被測定者HMの心臓HH近くの部位に装着されて使用され、被測定者HMを拘束することなく生体信号を測定可能である。「椅子80の表面80F」とは、椅子80に腰掛ける被測定者HMの背中HBと接する面を意味し、「背面80B」とは、表面80Fの逆側の面を意味する。
【0013】
椅子80は、被測定者HMの背中HBに接する物品としての一例である。「被測定者の背中に接する物品」としては、椅子、座椅子、ソファなど、人が腰掛ける際に用いられる種々の物品と、寝具、寝台、ベッド、布団、シート、診療台、診察台、病床、マット、マットレス、床、敷シーツ、ベッドパッド、ソファベッドなど、人が横になる際に用いられる種々の物品とが含まれる。「被測定者の背中に接する物品」は、家具、医療器具などを含むほか、人が腰掛ける際あるいは人が横になる際に用いられる物品であれば足り、用途を問わない。また、「被測定者の背中に接する物品」は、物品の全体である場合には限らず、たとえば椅子80の背もたれ、背もたれのうちの一部分、マットレスの一部分など、物品の一部分である場合を含む。生体信号取得モジュール60の設置対象として椅子80を用いることにより、例えば検査機関や医療機関による検査に代えて被測定者HMの生活において生体信号を取得することができ、生体信号の検出頻度の向上、生体信号の定期的な検出の実現に寄与し得る。
【0014】
図2に示すように、生体信号取得モジュール60は、振動センサ64を備えている。振動センサ64は、生体信号に対応する振動を検出可能なマイクロフォンである。振動センサ64は、生体信号に対応する振動を精度良く検出する観点から、例えばμV単位の電圧などの微小な信号を検出できる程度に高い感度であることが好ましい。ただし、振動センサ64は、マイクロフォンには限定されず、例えば、加速度計、ダイヤフラム等、振動を検出可能な種々のセンサを採用することができる。生体信号取得モジュール60は、椅子80と一体的に製造されてもよく、既製品としての物品に後付けにより装着されてもよい。本開示において、「後付け」とは、物品の製造時・設置時において、物品に装着もしくは組み込まれておらず、物品の製造・使用とは無関係に物品に装着・配置されることを意味する。
【0015】
生体信号に対応する振動は、振動センサ64により取得され、アナログ電圧信号として図示しないAD変換器などに入力され、デジタル信号へと変換されて、有線通信あるいは無線通信により制御装置90に出力される。無線通信は、たとえば、IEEE802.11規格に準拠した無線ローカルネットワーク(LAN)を通じた無線接続やBluetooth(登録商標)を用いた無線通信などによって実現され得る。
【0016】
図2に示すように、制御装置90は、中央演算処理装置としてのCPU92と、ROM,RAMなどのメモリ94とを備えるコンピュータである。制御装置90は、有線あるいは無線通信により振動センサ64からデータを取得する通信部96と、ディスプレイなどの表示部98とを備えている。メモリ94には、本実施形態において提供される機能を実現するためのプログラムが格納されている。CPU92は、格納されたプログラムをRAM上に展開して実行することにより、心音波形抽出部922、心弾道波形抽出部924、呼吸波形抽出部926、ならびに脈波形抽出部928として機能する。これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0017】
心音波形抽出部922は、取得した生体信号に対応する振動から心音波形、心拍間隔、心拍数などを抽出する。心音は、心臓HHの拍動に伴って発生する音であり、媒質を介して伝播する弾性波である。正常時では、心音は、心室収縮期の初めに左右の房室弁が閉鎖することにより発生する第一心音と、心室収縮期の直後に大動脈弁と肺動脈弁が閉鎖することにより発生する第二心音とからなる周期信号である。一般的には、第一心音は低調で長く、第二心音は高調で短い。第一心音から第二心音までの期間が心臓の収縮期であり、第二心音から次の周期の第一心音までの期間が心臓の拡張期である。第一心音から次の第一心音までの期間又は第二心音から次の第二心音までの期間が心拍間隔(HRI:Heart Rate Interval)に相当し、1分間の第一心音の数又は第二心音の数が心拍数に相当する。
【0018】
心弾道波形抽出部924は、生体信号に対応する振動から心弾道波形を抽出し、併せて心拍タイミングを検出する。心弾道波形とは、心臓HHにより拍出される血液の勢いに起因する振動の波形を意味する。呼吸波形抽出部926は、生体信号に対応する振動を用いて、呼吸情報を示す波形を抽出する。呼吸の周波数は、第一心音の周波数よりさらに低い。
【0019】
脈波形抽出部928は、生体信号に対応する振動から脈波形を抽出し、併せて心拍タイミングを検出する。脈波形は、脈動する血流による血管の容積変化に起因する波形である。なお、各波形の抽出では、例えば、信号の強度を適度に強調処理した後、所定の周波数範囲の通過域を有するフィルタを通過させるなど、ノイズとなる信号を除去する処理が適宜に行われることが好ましい。抽出された各波形およびそれに関連するデータ等は表示部98に表示される。
【0020】
図3には、図1の範囲AR1の断面視が拡大して示されている。図3に示すように、本実施形態の生体信号取得モジュール60は、振動センサ64と、第一媒質61と、第二媒質62と、収容体66とを備えている。生体信号取得モジュール60は、椅子80に設けられた凹部に埋め込まれ、椅子80を構成する材料82との摩擦力などにより固定されている。図3には、技術の理解を容易にするために被測定者HMの心臓HHと背中HB、ならびに心臓HHから発せされる振動BSが模式的に示されている。振動BSは、生体信号に対応する振動の一例である。振動BSには、心臓HH内における機械的振動または音響振動が含まれる。振動BSは、心臓HHの内部の弁の開閉によりもたらされ、あるいは心臓内へ流入もしくは心臓から流出する血液の移動によりもたらされる。
【0021】
心臓HHから発せられる振動BSは、一般的には、例えば電子聴診器や心音センサなどにより、被測定者HMの前面HFから取得される。しかしながら、従来技術の電子聴診器や心音センサでは、被測定者HMの背中HBから振動BSを取得しようとすると、前面HFから取得する場合よりもノイズが大きくなり振動BSを抽出できなくなるか、あるいは前面HFから取得する場合よりも振動BSの減衰が大きいために振動BSを検出できない、といった問題が発生し得る。これは、以下が要因と推定される。
(1)心臓HHから背中HBまでの距離が心臓HHから前面HFまでの距離よりも長いこと。
(2)心臓HHと背中HBとの間に位置する肋骨や脊椎、あるいは肺ならびに肺に含まれる空気などの存在により、振動BSが被測定者HMの背中HBの表面に至るまでの間に、振動BSの減衰、反射、拡散が発生すること。
(3)背中HBから振動センサ64に至る振動BSの経路に、例えば、空気などの気体が存在することにより振動BSが大きく減衰してしまうこと。
発明者らは、被測定者HMの背中HBから振動センサ64までの振動BSの伝播経路を、気体以外の媒質を用いて形成することにより、振動BSを被測定者HMの背中HBから検出できることを新たに知見した。
【0022】
本実施形態では、生体信号取得モジュール60は、第一媒質61および第二媒質62の2つの媒質を備えている。第一媒質61は、液体、固体、ゲルなど気体以外の媒質である。第一媒質61は、背中HBから振動センサ64までの振動BSの伝播経路の一部として機能する。本実施形態では、第一媒質61には水が用いられ、空気などの気体が概ね除去された状態かつ振動センサ64に接した状態で収容体66に収容されている。第一媒質61は、水には限らず、不凍液やオイルなどの液体、あるいはこれらの少なくともいずれかを任意に組み合わせた混合液であってもよい。
【0023】
収容体66は、第一媒質61および振動センサ64を収容する。収容体66は、アクリル樹脂などの合成樹脂を用いて、第一媒質61を収容するための内部空間を規定する凹形状で成形されている。本実施形態では、収容体66は、第二媒質62を配置するための開口部66Eを備えている。開口部66Eは、被測定者HMに近くなるように、椅子80の外部に近い位置に配置される。収容体66は、金属、樹脂、セラミックスなどの種々の材料により任意の形状で形成することができる。なお、収容体66の内部空間において、振動センサ64は、第一媒質61と接していることを前提に、例えば貼付などにより収容体66の内面に設けられてもよく、収容体66の内壁の一部を中央に突出させた突出部分への設置あるいは収容体66の内壁からの吊り下げなどの方法により内部空間の中央に配置されてもよい。
【0024】
第二媒質62は、第一媒質61とともに、背中HBから振動センサ64までの振動BSの伝播経路として機能する。第二媒質62は、液体、固体、ゲルなど気体以外の媒質である。第二媒質62は、収容体66の開口部66Eに固定され、振動センサ64および第一媒質61を収容体66の内部空間に密閉している。
【0025】
第二媒質62は、第二媒質表面62Fと、第二媒質表面62Fとは逆側の第二媒質背面62Bとを備えている。第二媒質62は、第二媒質背面62Bが第一媒質61に接した状態で開口部66Eに固定されており、第一媒質61と第二媒質62との間の気体は除去された状態である。すなわち、第一媒質61と第二媒質62は、気体を介さず互いに接することにより一つの媒質として振動センサ64に接する状態であるということができる。第二媒質62は、第一媒質61を収容体66に密閉する観点から、固体であることが好ましい。本実施形態では、第二媒質62は、後述するように、さらに振動BSの減衰を抑制する観点からシリコンゴムを用いて形成されている。
【0026】
本実施形態では、第二媒質表面62Fは、図3に示すように、椅子80の表面80Fと面一となるように配置されている。第二媒質62が表面80Fと面一とされることにより、生体信号取得モジュール60を椅子80と一体的に構成することができる。したがって、被測定者HMが椅子80を利用するにあたり、背中HBに生体信号取得モジュール60が接触することによる違和感を抑制することができる。
【0027】
生体信号を用いて被測定者HMの身体的、心理的状態を推定するにあたり、測定器の装着や体勢の固定などの被測定者HMの拘束、被測定者HMによる測定器の視認などは、被測定者HMに対してストレスが与えられ得る。この結果、推定精度が低下することとなり得る。したがって、生体信号の検出のためには、被測定者HMにストレスを与えないことが望ましい。例えば、一般的な心電図法による心拍計測では、体表面に直接電極を貼り付けるため、被測定者HMは、ケーブルで拘束され得る。これに対して、本実施形態の生体信号取得装置100は、被測定者HMの背中HBから生体信号を検出することにより、非拘束で生体信号を検出することができる。また、被測定者HMが測定器を視認することを抑制または防止でき、前面HFから生体信号を検出する場合よりも被測定者HMにストレスを与えることを抑制または防止することができる。
【0028】
図3には、椅子80を構成するウレタンなどのシート材やシート表皮など、椅子80の少なくとも一部を構成する材料82が示されている。材料82が振動BSを振動センサ64に伝播するための媒質として機能する場合には、「第三媒質83」とも呼ぶ。なお、本実施形態では、第三媒質83は、生体信号取得モジュール60の構成要素には含まれない。
【0029】
図4および図5を用いて、生体信号取得モジュール60における媒質の選定方法について説明する。図4および図5には、理論値に基づくシミュレーション結果が示されている。図5には、図4に示す一部の領域AGが拡大されて示されている。グラフの縦軸は、人体と媒質との界面における音波の減衰量(単位:dB)を示し、横軸は、媒質の音響インピーダンス「単位:kg/(m・s)」を示している。なお、音響インピーダンスは、密度と音速とを乗じることで得られるパラメータである。人体と媒質との界面における音波の減衰量AAは、以下の式(1)によって求めることができる。
【0030】
減衰量AA=|Z1-Z2|/|Z1+Z2| ・・・式(1)
Z1:人体の音響インピーダンス
Z2:媒質の音響インピーダンス
【0031】
人体の音響インピーダンスZ1には、水の音響インピーダンスである1.44・10kg/(m・s)を用いた。上記式(1)により、図4に示すグラフG1を得ることができる。心臓HHから発せられる振動BSのSN比(SNR:signal to noise ratio)を、予め行った実験による実測値に基づき25dBと設定した。すなわち、減衰量が25dB以上である場合には、ノイズの影響が大きくなり振動BSを検出することが難しくなる。なお、空気の音響インピーダンスは、410kg/(m・s)であるため、人体と、空気との界面では、約64dBの減衰量が発生することになる。
【0032】
図5に示すように、減衰量を25dB以下とするために、音響インピーダンスが4.1・10kg/(m・s)以上5.0・10kg/(m・s)以下の範囲(以下、「第一範囲」とも呼ぶ)に含まれる媒質から選定されることが好ましい。また、予め行った実験によれば、振動BSの検出精度をより高くする観点から、人体と媒質との界面での減衰量が10dB以下(SN比が15dB以上)であることがより好ましい。したがって、より好ましくは、音響インピーダンスが2.7・10kg/(m・s)以上7.6・10kg/(m・s)以下の範囲(以下、「第二範囲」とも呼ぶ)に含まれる媒質から選定されることがより好ましい。なお、本実施形態の第一媒質61および第二媒質62のように、生体信号取得モジュール60が複数の媒質を備える場合には、いずれの媒質も第一範囲あるいは第二範囲の音響インピーダンスを満たすように設定する。音響インピーダンスが第二範囲に含まれる媒質の例としては、水、不凍液、オイルなどの液体、シリコンなどが挙げられる。本実施形態では、第一媒質61および第二媒質62は、音響インピーダンスが第二範囲に含まれる物質から選定されている。
【0033】
図6には、比較例として、一般的に用いられる電子聴診器を平板状のウレタン製シートに埋め込んで作製したモジュールを用いた実験結果が示されている。より具体的には、電子聴診器を埋め込んだウレタンシートを椅子80の表面80Fに配置し、椅子80を利用する被測定者HMの背中HBから振動BSを取得した結果である。図7には、本実施形態の生体信号取得装置100を用いた測定結果が示されている。
【0034】
図6に示すように、電子聴診器を埋め込んだウレタンシートを用いた実験結果では、ノイズが大きいことにより振動BSを抽出することができないという結果が得られた。これは、振動BSが、電子聴診器の内部に存在する空気により振動センサに至る前に大きく減衰してしまうことなどに起因すると推定される。これに対して、図7に示すように、本実施形態の100によれば、比較例よりもノイズが小さく、また、第一心音H1と、第二心音H2とが安定して検出されていることが理解できる。すなわち、振動BSの減衰量が振動センサ64で検出可能な程度まで充分に抑制できていることを示している。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態の生体信号取得モジュール60によれば、被測定者HMの背中HBに接する物品としての椅子80に設けられるとともに、生体信号に対応する振動BSを検出するための振動センサ64と、気体とは異なる第一媒質61および第二媒質62とを備えている。第一媒質61および第二媒質62は互いに接することで一体的な媒質として機能し、振動センサ64に接した状態で設けられている。したがって、媒質における振動BSの減衰量を抑制することができ、生体信号に対応する振動BSの減衰量が大きくなりやすい被測定者HMの背中HBからであっても、精度良く生体信号を取得することができる。
【0036】
本実施形態の生体信号取得モジュール60によれば、生体信号には、心音、心弾道が含まれている。したがって、被測定者HMの背中HBから心音、心弾道を精度良く取得することができる測定器を得ることができる。
【0037】
本実施形態の生体信号取得モジュール60によれば、第一媒質61および第二媒質62の音響インピーダンスは、4.1・10kg/(m・s)以上5.0・10kg/(m・s)以下である。人体と媒質との界面での減衰量を25dB以下とし、振動BSの減衰量を充分に小さくすることができ、生体信号の検出精度を向上させることができる。
【0038】
本実施形態の生体信号取得モジュール60によれば、第一媒質61および第二媒質62の音響インピーダンスは、2.7・10kg/(m・s)以上7.6・10kg/(m・s)以下である。人体と媒質との界面での減衰量を10dB以下とし、振動BSの減衰量をより小さくすることができ、生体信号の検出精度をより向上させることができる。
【0039】
本実施形態の生体信号取得モジュール60は、開口部66Eを有する収容体66と、振動センサ64に接する第一媒質61と、第一媒質61と接する第二媒質62と、を備えている。収容体66は、振動センサ64および第一媒質61を収容している。第二媒質62は、開口部66Eに配置され、収容体66に収容された第一媒質61に接した状態で振動センサ64および第一媒質61を密閉している。収容体66を備えることにより、液体やゲルの第一媒質61を採用しやすくでき、簡易な構成により振動BSの減衰を抑制することができる。
【0040】
本実施形態の生体信号取得モジュール60によれば、第一媒質61は、水、不凍液、およびオイルの少なくともいずれかである。容易に入手可能な材料を適用することにより、生体信号取得モジュール60の生産性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態の生体信号取得装置100によれば、被測定者HMの背中HBに接する表面80F、および表面80Fとは逆側の背面80Bを有する椅子80と、生体信号に対応する振動BSを検出するための振動センサ64と、被測定者HMの背中および振動センサ64に接し、被測定者HMの背中と振動センサ64とを繋ぐ第一媒質61および第二媒質62と、を備えている。第一媒質61および第二媒質62により被測定者HMの背中と振動センサ64との振動BSの伝播経路を形成することにより、媒質における振動BSの減衰量を抑制し、生体信号に対応する振動BSの減衰量が大きくなりやすい被測定者HMの背中HBからであっても、精度良く生体信号を取得することができる。
【0042】
本実施形態の生体信号取得装置100によれば、媒質は、第三媒質83とは異なる第一媒質61および第二媒質62を備えている。第二媒質62は、椅子80の表面80Fに配置される第二媒質表面62Fと、第二媒質表面62Fとは逆側の第二媒質背面62Bとを備えている。第一媒質61は、第二媒質背面62Bおよび振動センサ64に接するように配置される。第一媒質61および第二媒質62が互いに接することにより、媒質における振動BSの減衰量を抑制し、生体信号に対応する振動BSの減衰量が大きくなりやすい被測定者HMの背中HBからであっても、精度良く生体信号を取得することができる。第二媒質62が椅子80の表面80Fに設けられることにより、生体信号取得モジュール60を椅子80と一体的に構成することができる。したがって、被測定者HMが椅子80を利用するにあたり、背中HBに生体信号取得モジュール60が接触することによる違和感を抑制することができる。
【0043】
B.第2実施形態:
図8に示すように、第2実施形態の生体信号取得装置100bは、椅子80に代えて寝台80bを物品として備える点において第1実施形態の生体信号取得装置100とは相違し、それ以外の構成は第1実施形態の生体信号取得装置100と同様である。寝台80bは、人が横になる際に用いられる物品に該当し、被測定者HMの背中HBに接する物品の一例である。生体信号取得モジュール60は、寝台80bを利用する被測定者HMの心臓HH近くとなる部位に装着されて使用され、被測定者HMを拘束することなく生体信号を測定可能である。
【0044】
この形態の生体信号取得装置100bであっても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、生体信号取得モジュール60が寝台80bに備えられることにより、被測定者HMの生活において、例えば就寝時間中などの長時間に亘って生体信号を取得することができ、生体信号の検出数の増加、生体信号の定期的な検出に寄与し得る。
【0045】
B2.他の実施形態:
上記第1実施形態および第2実施形態では、生体信号取得モジュール60が物品内に配置される例を示した。これに対して、図9に示す生体信号取得モジュール60bのように、物品の外部に備えられてもよい。
【0046】
図9には、寝台80bを利用する被測定者HMを頭上から見た場合の生体信号取得装置100b2の構成が示されている。生体信号取得装置100b2は、生体信号取得モジュール60に代え、生体信号取得モジュール60b2を備える点において第2実施形態の生体信号取得装置100bと相違し、それ以外の構成は生体信号取得装置100bと同様である。
【0047】
生体信号取得モジュール60b2の構成は、図3で示した第二媒質62に代えて第二媒質62b2を備える点において相違し、それ以外の構成は生体信号取得モジュール60と同様である。第二媒質62b2は、生体信号取得モジュール60の第二媒質62と同様にシリコンゴムを用いて形成されるが、その形状が異なる。本実施形態では、第二媒質62b2は、例えば、被測定者HMの背面全体を覆うことができる大きさで形成されており、被測定者HMは、寝具と同様に第二媒質62b2の上に横たわることができる。
【0048】
第二媒質表面62Fは、第二媒質62のうち、寝台80b上で寝台80bの外部に露出し、被測定者HMの背中HBと接する面である。第二媒質背面62Bは、寝台80bと接する面である。本実施形態では、生体信号取得モジュール60bの第一媒質61、振動センサ64、収容体66は、第二媒質62の端部における第二媒質表面62F上に配置されている。より具体的には、収容体66に収容された状態の第一媒質61が第二媒質表面62Fに接した状態で固定されている。被測定者HMから発せられた振動BSは、被測定者HMの背中HBを介して第二媒質62b2に伝播し、さらに第二媒質62b2内を伝播して第一媒質61を介して振動センサ64へと到達する。
【0049】
この形態の生体信号取得装置100b2であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第二媒質62b2が被測定者HMの背面全体を覆う範囲に亘って形成されていることにより、第二媒質62b2と被測定者HMとの接触面積を大きくし、振動BSの検出範囲を拡大することができる。また、生体信号取得モジュール60b2が寝台80b内に埋め込まれている場合と比較して、被測定者HMが生体信号取得モジュール60b2に接触する際の違和感を抑制または防止することができる。
【0050】
C.第3実施形態:
図10に示すように、第3実施形態に係る生体信号取得モジュール60c1は、生体信号取得モジュール60と同様の構成に加え、さらに、圧力緩和部68c1を備えている。圧力緩和部68c1は、被測定者HMが物品を使用する際に、被測定者HMから付与される圧力F1による生体信号取得モジュール60c1に対する負荷を緩和する。圧力F1は、例えば、物品が椅子80である場合には、被測定者HMが椅子80に腰掛けて背もたれに接する際に発生する。また、物品が寝台80bである場合には、被測定者HMが寝台80b上に横になる際に発生する圧力などが該当する。
【0051】
本実施形態では、圧力緩和部68c1は、椅子80の表面80Fに設けられた凹部68Wである。具体的には、椅子80内には、生体信号取得モジュール60c1を収容するための空間に加え、生体信号取得モジュール60c1のうち第二媒質62とは逆側に設けられた空間を規定する凹部68Wが備えられている。生体信号取得モジュール60c1は、外部から圧力F1を受けた場合には、圧力緩和部68c1としての凹部68W内に退避することができ、圧力F1による生体信号取得モジュール60c1への負荷や衝撃を軽減することができる。また、被測定者HMが椅子80を利用するにあたり、背中HBに生体信号取得モジュール60c1が接触する違和感を抑制することができる。なお、凹部68に代えて表面80Fから背面80Bまで連通する貫通孔であってもよい。
【0052】
C2.他の実施形態:
上記第3実施形態では、圧力緩和部68c1が椅子80内に設けられた凹部68Wである例を示した。これに対して、図11に示す生体信号取得モジュール60c2のように、低い弾性または粘弾性を有する材料を用いて形成された圧力緩和部68c2を備えてもよい。「低い弾性または粘弾性」とは、例えば、生体信号取得モジュール60c2よりも低い弾性または粘弾性であることを意味し、「生体信号取得モジュール60c2よりも低い弾性または粘弾性である」とは、生体信号取得モジュール60c2を構成する部材のうち最も高い弾性または粘弾性を有する部材よりも低い弾性または粘弾性を有することを意味する。圧力緩和部68c2の例としては、例えば、ゴムなどのエラストマーなどである。
【0053】
圧力緩和部68c2は、収容体66のうち開口部66Eとは逆側、すなわち第二媒質62とは逆側に取り付けられている。これにより、外部からの圧力F1を受けた場合に生体信号取得モジュール60c2から他の部材への圧力F2、およびそれに伴う生体信号取得モジュール60c2への抗力を緩和することができ、生体信号取得モジュール60c2に付与される圧力や衝撃を軽減することができる。また、被測定者HMが椅子80を利用するにあたり、背中HBに生体信号取得モジュール60c2が接触する際の違和感を抑制することができる。
【0054】
D.第4実施形態:
図12に示すように、第4実施形態に係る生体信号取得モジュール60d1は、第二媒質62に代えて第二媒質62d1を備える点において第1実施形態の生体信号取得モジュール60とは相違し、それ以外の構成は同様である。第二媒質62d1は、例えば、ゴムなどの低い弾性または粘弾性を有する部材を用いて形成されており、変形しやすいという特徴を備えている。第二媒質62d1は、生体信号取得モジュール60d1よりも低い弾性または粘弾性を有していてもよく、例えば椅子80の材料82よりも低い弾性または粘弾性を有していてもよい。このように構成することにより、図12に示す圧力F11および圧力F12(圧力F11は、圧力F12よりも大きい)のように、被測定者HMから生体信号取得モジュール60d1に付与される圧力が均一でない場合であっても、第二媒質62d1が変形することができ、第二媒質62d1と背中HBとの間に気体が介在することを抑制または防止することができる。また、被測定者HMが椅子80を利用するにあたり、背中HBに生体信号取得モジュール60d1が接触する際の違和感を抑制することができる。
【0055】
D2.他の実施形態:
上記第4実施形態では、第二媒質62d1が変形しやすい材料を用いて形成される例を示した。これに対して、図13に示す生体信号取得モジュール60d2のように、第一媒質61に代えて、低い弾性または粘弾性を有する材料により変形しやすい材料を用いて形成された第一媒質61d2を備えてもよい。このように構成することにより、図13に示す圧力F13および圧力F14(圧力F13は、圧力F14よりも大きい)のように、被測定者HMから生体信号取得モジュール60d2に付与される圧力が均一でない場合であっても、第一媒質61d2が第二媒質62d1の形状に合わせて変形することができる。したがって、第二媒質62d1と第一媒質61d2との間に気体が介在することを抑制または防止することができる。また、背中HBに生体信号取得モジュール60d2が接触する際の違和感を抑制することができる。
【0056】
E.第5実施形態:
第1実施形態の生体信号取得装置100では、生体信号取得モジュール60の第二媒質62が椅子80の表面80Fと面一である例を示した。これに対して、図14に示すように、第5実施形態の生体信号取得装置100e1は、生体信号取得モジュール60が椅子80の内部に設けられている点において、第1実施形態の生体信号取得装置100とは相違し、それ以外の構成は第1実施形態の生体信号取得装置100と同様である。なお、生体信号取得モジュール60の構成は第1実施形態の生体信号取得モジュール60と同じである。本実施形態の生体信号取得装置100e1では、例えば椅子80を構成する材料82のうち椅子80の表面80Fと第二媒質62との間の部分が第三媒質83として機能する。本実施形態において、媒質は、第一媒質61および第二媒質62に加え、さらに椅子80の少なくとも一部を構成する材料82としての第三媒質83を備えている。
【0057】
第三媒質83は、椅子80の表面80Fとしての第三媒質表面83Fと、椅子80の内部において第三媒質表面83Fとは逆側に位置する第三媒質背面83Bとを備えている。第三媒質背面83Bは、生体信号取得モジュール60を椅子80の内部に収容するための内部空間を規定する椅子80の内壁面の一部である。第二媒質62は、第二媒質表面62Fが第三媒質背面83Bと接した状態で椅子80の内部空間に固定されている。被測定者HMの背中HBから伝播する振動BSは、椅子80の表面80Fとしての第三媒質表面83Fを介して第三媒質83に伝播し、第三媒質背面83Bを介して第二媒質62へと伝播する。
【0058】
本実施形態の生体信号取得装置100e1によれば、媒質として、第一媒質61および第二媒質62に加え、さらに椅子80の少なくとも一部を構成する第三媒質83を備えている。物品の一部を第三媒質83として利用することにより、生体信号取得モジュール60を物品の内部に配置することができる。したがって、被測定者HMに生体信号取得モジュール60を接触させることなく生体信号を取得することができる。また、被測定者HMが生体信号取得モジュール60を視認することを抑制または防止でき、被測定者HMにストレスを与えることを抑制または防止することができる。生体信号取得モジュール60が物品の外部に露出することを回避することにより、生体信号取得モジュール60による物品の意匠性への影響を抑制または防止することができる。
【0059】
E2.他の実施形態1:
上記第5実施形態では、生体信号取得装置100e1が、媒質として、第一媒質61と、第二媒質62と、第三媒質83とを備える例を示した。これに対して、第二媒質62を省略し、第一媒質61および第三媒質83のみを備えることもできる。図15に示すように、生体信号取得装置100e2は、第二媒質62を備えない生体信号取得モジュール60e2を備え、媒質として、第一媒質61および第三媒質83を備えている。
【0060】
図15の例では、収容体66は、開口部66Eを備えず、振動センサ64および第一媒質61を密閉している。この場合には、収容体66は、第一媒質61および第三媒質83とともに媒質として機能する。したがって、収容体66は、第一範囲あるいは第二範囲に含まれる音響インピーダンスを有する部材により形成されることが好ましい。この形態の生体信号取得装置100e2であっても第5実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第一媒質61がシリコンゴムなどの固体で形成されるなど、第一媒質61の支持や固定が不要である場合には、さらに、収容体66を省略することもできる。
【0061】
E3.他の実施形態2:
図16に示すように、振動センサ64が第三媒質83に対して充分に固定され、また第三媒質83と振動センサ64とが接していることを前提に、さらに、第一媒質61および収容体66を省略することも可能である。図16に示す生体信号取得装置100e3は、生体信号取得モジュール60のうち振動センサ64のみが椅子80の内部に備えられている。この場合には、椅子80を構成する材料82である第三媒質83のみが媒質として機能する。この形態の生体信号取得装置100e3によれば、より簡易な構成で第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
E4.他の実施形態3:
図17に示すように、振動センサ64が第三媒質83に対して充分に固定され、また第三媒質83と振動センサ64とが接していることを前提に、さらに第一媒質61および収容体66を省略し、振動センサ64を椅子80の表面80F上に配置することも可能である。図17に示す生体信号取得装置100e4では、第三媒質83のみが媒質として機能する。振動BSは、被測定者HMの背中HBから第三媒質83を介して振動センサ64へと伝播する。この形態の生体信号取得装置100e4によれば、より簡易な構成で第5実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、被測定者HMに振動センサ64が接触する際の違和感を抑制するために、振動センサ64はシート状であることが好ましい。
【0063】
E5.他の実施形態4:
図18に示すように、振動センサ64が第三媒質83に対して充分に固定され、また第三媒質83と振動センサ64とが接していることを前提に、さらに第一媒質61および収容体66を省略し、振動センサ64を椅子80の背面80B上に配置することも可能である。図18に示す生体信号取得装置100e5では、第三媒質83のみが媒質として機能する。振動BSは、被測定者HMの背中HBから第三媒質83を介して振動センサ64へと伝播する。この形態の生体信号取得装置100e5によれば、より簡易な構成で第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
F.第6実施形態:
図19に示すように、第6実施形態の生体信号取得装置100は、生体信号取得モジュール60に代えて生体信号取得モジュール60f1を備える点において第1実施形態の生体信号取得装置100とは相違し、それ以外の構成は、第1実施形態の生体信号取得装置100と同様である。生体信号取得モジュール60f1は、生体信号取得モジュール60と同様の構成に加え、さらに、固定部65f1を備えている。
【0065】
固定部65f1は、生体信号取得モジュール60f1を椅子80に固定する。本実施形態では、固定部65f1は、接着剤である。図19の例では、生体信号取得モジュール60f1は、固定部65f1により椅子80の背面80Bに固定されている。なお、固定部65f1は、接着剤には限らず、椅子80に設けられた雌ねじおよびこれに対応する雄ねじなどであってもよい。固定部65f1が接着剤である場合には、固定部65f1は、第一媒質61、第二媒質62、および第三媒質83とともに媒質として機能する。したがって、固定部65f1は、第一範囲あるいは第二範囲に含まれる音響インピーダンスを有する部材から選定されることが好ましい。この形態の生体信号取得モジュール60f1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、既製品としての椅子80に対する生体信号取得モジュール60f1の後付けが容易となる。また、被測定者HMが測定器を視認することを抑制または防止でき、前面HFから生体信号を検出する場合よりも被測定者HMにストレスを与えることを抑制または防止することができる。
【0066】
F2.他の実施形態1:
上記第6実施形態では、生体信号取得モジュール60f1が椅子80の背面80Bに固定されている例を示した。これに対して、図20に示すように、生体信号取得モジュール60f2を椅子80の内部に備えられた状態で椅子80に固定することも可能である。
【0067】
生体信号取得モジュール60f2は、第6実施形態の固定部65f1に代えて、固定部65f2を備えている。固定部65f2は、接着剤、あるいは椅子80に設けられた雌ねじおよびこれに対応する雄ねじなどである。本実施形態では、生体信号取得モジュール60f2のうち第二媒質62のみが固定部65f2を用いて椅子80に固定されている。この形態の生体信号取得モジュール60f2によれば、生体信号取得モジュール60f2に対する振動BSの伝播経路の入口となる第二媒質62を椅子80により確実に固定することにより、第二媒質62でのノイズの発生を抑制または防止することができ、振動BSの検出精度を高くすることができる。なお、固定部65f2は、第二媒質62に限らず収容体66などの他の部材を固定してもよい。固定部65f2は、上記のほか、例えば、第二媒質62を椅子80に充分に固定できることを前提に、第二媒質62と椅子80との間への大きい摩擦係数を有する部材の配置、表面加工等による第二媒質62または材料82の表面粗さの増大などの方法によって構成することも可能である。
【0068】
F3.他の実施形態2:
上記第6実施形態では、生体信号取得モジュール60f1が椅子80の背面80Bに固定されている例を示した。これに対して、図21に示すように、生体信号取得モジュール60f3を椅子80の表面80Fに固定することも可能である。生体信号取得モジュール60f3は、固定部65f1と同様に構成される固定部65f3により椅子80の表面80Fに固定されている。固定部65f3は、第二媒質62を被測定者HMの背中HBと接する位置に配置させる観点から、生体信号取得モジュール60f3のうち第二媒質62とは逆側に設けられる。この場合において、固定部65f3は媒質として機能しなくてもよく、少なくとも第一媒質61および第二媒質62が媒質として機能すれば足りる。この形態の生体信号取得モジュール60f3によれば、第6実施形態の生体信号取得モジュール60f1と同様の効果を得ることができ、既製品としての椅子80に対する生体信号取得モジュール60f3の後付けが容易となる。
【0069】
G.第7実施形態:
図22に示すように、第7実施形態の生体信号取得モジュール60gは、第二媒質62に代えて第二媒質62gを備える点において、第1実施形態の生体信号取得モジュール60とは相違し、それ以外の構成は第1実施形態の生体信号取得モジュール60と同様である。
【0070】
第二媒質62gは、第1実施形態での第二媒質62とは形状が異なる。具体的には、第二媒質62gは、振動センサ64に近い位置の面積DBよりも、振動センサ64から離れた位置の面積DFの方が大きくなるように構成されている。図22の例では、第二媒質62gは、第二媒質背面62Bの面積DBよりも第二媒質表面62Fの面積DFの方が大きい。このように構成された生体信号取得モジュール60gによれば、第二媒質62gの形状変更という簡易な方法により、被測定者HMの背中HBと第二媒質62gとの接触面積を大きくすることができ、振動BSの検出範囲を拡大させることができる。
【0071】
H.第8実施形態:
図23に示すように、第8実施形態に係る生体信号取得モジュール60hは、第1実施形態の生体信号取得モジュール60と同様の構成に加え、さらに、図10で示した圧力緩和部68c1と、加圧機構67とを備えている。本実施形態では、加圧機構67は、弾性体としての圧縮コイルバネを備えている。圧縮コイルバネは、収容体66と、凹部68Wあるいは椅子80とを接続している。図23では、圧縮コイルバネが無負荷の状態の加圧機構67が示されている。なお、例えば、椅子80の表面80F上に加圧機構67が設けられるなど、圧力緩和部68c1を省略することができる。加圧機構67は、圧縮コイルバネには限らず、任意の形状のバネや弾性体であってもよい。
【0072】
図23に示すように、加圧機構67が無負荷状態である場合には、加圧機構67は、少なくとも第二媒質62を、椅子80の表面80Fよりも外部に突出させる。図24に示すように、被測定者HMが椅子80を使用すると、被測定者HMの背中HBから圧力F4が第二媒質62に加えられ、第二媒質62および収容体66は、圧縮コイルバネを圧縮させる方向M3に向かって押し込まれ、圧力緩和部68c1に収容される。このとき、生体信号取得モジュール60hは、加圧機構67の圧縮コイルバネの弾性力によって被測定者HMの背中HBを加圧した状態となる。
【0073】
本実施形態の生体信号取得モジュール60hによれば、第二媒質62を被測定者HMの背中HBに押し付けた状態で接触させることができるので、被測定者HMの背中HBと媒質との間に気体が進入することを抑制または防止することができ、また、第二媒質62と被測定者HMとの接触面積を向上させることができ、生体信号の検出精度を向上させることができる。なお、図24では、第二媒質62が押し込まれることにより第二媒質表面62Fが表面80Fと略面一となった状態を示したが、面一には限らず、第二媒質表面62Fが表面80Fよりも外部に位置してもよく、表面80Fよりも内部に位置してもよい。
【0074】
I.第9実施形態:
図25に示すように、第9実施形態に係る生体信号取得モジュール60iは、第一媒質61を備えない点と、回路基板69を備える点とにおいて第1実施形態の生体信号取得モジュール60とは相違し、それ以外の構成は同様である。本実施形態では、第二媒質62が媒質として機能する。第二媒質表面62Fは、椅子80の表面80Fと面一となるように配置され、第二媒質表面62Fとは逆側の第二媒質背面62Bには、振動センサ64が取り付けられている。このように構成した場合であっても、振動センサ64と媒質とを接触させ、振動センサ64と媒質との間に気体を介することなく振動BSを検出させることができる。第一媒質61を省略することができ、生体信号取得モジュール60iの部品点数の増加を抑制することができる。
【0075】
回路基板69は、振動センサ64と配線CBによって電気的に接続されている。回路基板69には、例えば、生体信号をデジタル変換するためのAD変換器や、制御装置90の通信部96との無線通信のための通信インターフェースを搭載することができる。なお、回路基板69は、上記の各実施形態の生体信号取得モジュールそれぞれに備えられてもよい。回路基板69は、例えば、振動センサ64とともに収容体66内に配置することができる。
【0076】
本実施形態では、収容体66は、筒状の形状を有しており、第二媒質62を設けるための開口部66Eとともに、開口部66Eとは逆側には、回路基板69を配置するための第二開口部66E2が備えられている。これにより、収容体66の一部を省略し、回路基板69を、振動センサ64を外部から保護するための壁面として機能させることができる。なお、第二開口部66E2を備えることなく、収容体66が回路基板69を収容してもよい。
【0077】
図10で示した上記第3実施形態では、圧力緩和部68c1が椅子80内に設けられた凹部68Wである例を示したが、図25に示すように、圧力緩和部68c1は、表面80Fから背面80Bに至る貫通孔68W2とされてもよい。このように構成することにより、第二媒質62、振動センサ64、ならびに収容体66を椅子80の内部に配置することが容易になる。
【0078】
I2.他の実施形態:
図10で示した上記第3実施形態では、圧力緩和部68c1が椅子80に設けられた凹部68Wであり、上記第9実施形態では、圧力緩和部68c1が椅子80の表面80Fから背面80Bに至る貫通孔68W2である例を示した。これに対して、図26に示す生体信号取得モジュール60i2のように、圧力緩和部68c1を、椅子80の背面80Bに設けられた凹部68W3とすることもできる。
【0079】
図26の例では、第二媒質62とともに、さらに椅子80の少なくとも一部を構成する第三媒質83が媒質として機能する。第三媒質83は、椅子80の表面80Fとしての第三媒質表面83Fと、椅子80の内部において第三媒質表面83Fとは逆側に位置する第三媒質背面83Bとを備えている。第二媒質62は、椅子80の内部に配置されており、第二媒質表面62Fは、第三媒質背面83Bに接している。第二媒質表面62Fとは逆側の第二媒質背面62Bには振動センサ64が設けられている。このように構成することにより、生体信号取得モジュール60i2を物品の内部に固定することが容易になる。
【0080】
I3.他の実施形態2:
図25および図26の例では、第一媒質61を備えない生体信号取得モジュール60i,60i2を用いて説明した。これに対して、図25および図26の構成の圧力緩和部68c1を備えるとともに、上記第1実施形態の生体信号取得モジュール60と同様に第一媒質61を備える生体信号取得モジュールとすることもできる。
【0081】
J.他の実施形態:
(J1)上記第3実施形態では、圧力緩和部68c1が椅子80の表面80Fに設けられた凹部68Wである例を示した。これに対して、図27に示す生体信号取得モジュール60c3のように、凹部68W内に規定される内部空間のうち第二媒質62と表面80Fとの間に規定される空間を圧力緩和部68c1として機能させることもできる。
【0082】
図27の例では、椅子80を使用する被測定者HMによる圧力F3が表面80Fに付与された場合に、椅子80の材料82が圧縮されて表面80Fの位置が変化することを利用している。圧力F3が付与されると、表面80Fの位置は、図28に示すように、第二媒質62に近付く方向M2に向かって変化する。この結果、第二媒質62は、表面80Fと略面一になる。このように構成することにより、第3実施形態と同様の効果が得られるとともに、被測定者HMの使用により物品の形状が変化する場合に、生体信号取得モジュール60c3への負荷の軽減、生体信号取得モジュール60c3が物品内での移動の抑制など、物品の形状変化による生体信号取得モジュール60c3への影響を抑制または防止することができる。
【0083】
(J2)上記各実施形態では、生体信号取得装置が、一つの生体信号取得モジュールを備える例を示したが、図29に示すように、生体信号取得装置100jは、複数の生体信号取得モジュール60を備えてもよい。この場合には、複数の生体信号取得モジュール60は、被測定者HMの心臓HHの近傍となる位置に集中的に配置されることが好ましい。このように構成することにより、生体信号取得装置100jによる生体信号の取得範囲を拡大することができる。したがって、例えば、身体的特徴が異なる複数の被測定者HMに対しても生体信号取得モジュールの配置を変更することなく生体信号を取得することができる。
【0084】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
60,60b、60b2,60c1,60c2,60c3,60d1,60d2,60e2,60f1,60f2,60f3,60g,60h,60i,60i2…生体信号取得モジュール、61…第一媒質、64…振動センサ、80…椅子、80b…寝台、HB…背中、HM…被測定者、BS…振動、100,100b,100b2,100e1,100e2,100e3,100e4,100e5,100j…生体信号取得装置
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