(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027496
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240222BHJP
A61M 25/02 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
A61M25/09 540
A61M25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130341
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267AA33
4C267BB31
4C267BB40
(57)【要約】
【課題】長尺デバイスの機能の低下を抑えつつ、長尺デバイスを堅固に保持可能な保持具を提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用の長尺デバイスを保持する保持具10であって、底壁22と、該底壁22から立ち上がる支持壁24と、を有する本体部20と、支持壁24に回転可能に支持される第1回転体40と第2回転体50とを含む保持部30と、を備え、第1回転体40の第1回転軸41と第2回転体50の第2回転軸51は、平行でかつ離隔しており、第1回転体40と第2回転体50は、保持される長尺デバイスの長軸方向に沿って異なる位置に配置され、保持される長尺デバイスの長軸方向に対する垂直断面視における第1回転体40の表面と第2回転体50の表面との距離が、長尺デバイスの最大外径より小さい保持具10である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスを保持する保持具であって、
底壁と、該底壁から立ち上がる支持壁と、を有する本体部と、
前記支持壁に回転可能に支持される第1回転体と第2回転体とを含む保持部と、を備え、
前記第1回転体の第1回転軸と前記第2回転体の第2回転軸は、平行でかつ離隔しており、
前記第1回転体と前記第2回転体は、保持される前記長尺デバイスの長軸方向に沿って異なる位置に配置され、保持される前記長尺デバイスの長軸方向に対する垂直断面視における前記第1回転体の表面と前記第2回転体の表面との距離が、前記長尺デバイスの最大外径より小さい保持具。
【請求項2】
前記第1回転体は、前記長尺デバイスを保持する平面状の第1保持面を有し、
前記第2回転体は、前記長尺デバイスを保持する平面状の第2保持面を有し、
保持される前記長尺デバイスの長軸方向に対する垂直断面視における前記第1保持面と前記第2保持面との距離が、前記長尺デバイスの最大外径より小さい請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記第1回転体は、前記第1保持面と周方向反対側が円弧状であり、
前記第2回転体は、前記第2保持面と周方向反対側が円弧状である請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記第1回転体と前記第2回転体は、それぞれ円筒状である請求項1に記載の保持具。
【請求項5】
前記支持壁は、前記第1回転軸と前記第2回転軸のそれぞれ両端に配置され、前記第1回転軸と前記第2回転軸の間に前記長尺デバイスを位置させる切欠き部を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の保持具。
【請求項6】
前記第1回転体と前記第2回転体は、いずれか一方が1つ以上、他方が2つ以上設けられる請求項1~4のいずれか1項に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスを保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどの様々な医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤの基端部は、剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、線材の長軸方向と垂直な方向に線材を挿入できるように構成された固定器が開示されている。この固定器は、線材の軸を挟んで一方に形成される第1停止部と、他方に形成される第2停止部とを備えた把持部によって、線材を固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような固定器は、長尺デバイスを保持するために、把持部の第1停止部と第2停止部との距離が、長尺デバイスの外径より小さい必要がある。したがって、把持部の第1停止部と第2停止部との間に長尺デバイスを挿入する際、長尺デバイスを固定器の上方から下方に向けて押し込むと、長尺デバイスは、その表面が把持部の表面に擦れながら移動する。このため、長尺デバイスの外周面に施された親水性コーティングが剥離する可能性がある。親水性コーティングの剥離は、長尺デバイスの表面潤滑性を低下させるため、長尺デバイスの血管内への挿入性や血管内での操作性などの機能を低下させる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、長尺デバイスの機能の低下を抑えつつ、長尺デバイスを堅固に保持可能な保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る(1)保持具は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスを保持する保持具であって、底壁と、該底壁から立ち上がる支持壁と、を有する本体部と、前記支持壁に回転可能に支持される第1回転体と第2回転体とを含む保持部と、を備え、前記第1回転体の第1回転軸と前記第2回転体の第2回転軸は、平行でかつ離隔しており、前記第1回転体と前記第2回転体は、保持される前記長尺デバイスの長軸方向に沿って異なる位置に配置され、保持される前記長尺デバイスの長軸方向に対する垂直断面視における前記第1回転体の表面と前記第2回転体の表面との距離が、前記長尺デバイスの最大外径より小さい。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した保持具は、第1回転体と第2回転体とで長尺デバイスを挟んで保持できる。第1回転体と第2回転体との間に長尺デバイスを挿入する際、第1回転体と第2回転体は、長尺デバイスが底壁側に移動するのに伴ってそれぞれ回転する。このため、長尺デバイスは、表面が各回転体の表面と擦れることなく第1回転体と第2回転体によって保持される。したがって、保持具は、当該保持具との接触に起因する長尺デバイスの親水性コーティングの剥離が生じにくくなり、長尺デバイスの機能の低下を抑えつつ、長尺デバイスを堅固に保持できる。
【0010】
(2)上記(1)の保持具において、前記第1回転体は、前記長尺デバイスを保持する平面状の第1保持面を有し、前記第2回転体は、前記長尺デバイスを保持する平面状の第2保持面を有し、保持される前記長尺デバイスの長軸方向に対する垂直断面視における前記第1保持面と前記第2保持面との距離が、前記長尺デバイスの最大外径より小さくてもよい。これにより、保持具は、長尺デバイスを平面状の第1保持面と第2保持面とで安定的に保持できる。
【0011】
(3)上記(2)の保持具において、前記第1回転体は、前記第1保持面と周方向反対側が円弧状であり、前記第2回転体は、前記第2保持面と周方向反対側が円弧状であってもよい。これにより、保持具は、第1回転体と第2回転体の本体部に向く面の最大回転半径を小さくできるので、本体部を小型化できる。
【0012】
(4)上記(1)の保持具において、前記第1回転体と前記第2回転体は、それぞれ円筒状であってもよい。これにより、保持具は、保持部がガイドワイヤを保持する前の状態において、第1回転体と第2回転体を特定の方向に向けることなく、長尺デバイスを保持できる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの保持具において、前記支持壁は、前記第1回転軸と前記第2回転軸のそれぞれ両端に配置され、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間に前記長尺デバイスを位置させる切欠き部を有してもよい。これにより、保持具は、第1回転軸と第2回転軸を両側から支持壁により支持できるので、第1回転体と第2回転体を安定的に回転させることができる。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの保持具において、前記第1回転体と前記第2回転体は、いずれか一方が1つ以上、他方が2つ以上設けられてもよい。これにより、保持具は、ガイドワイヤの長軸方向に沿って少なくとも3箇所を保持するので、ガイドワイヤを安定的に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】ガイドワイヤを保持する前の状態における保持具の断面図である。
【
図4】ガイドワイヤを
図3の状態から保持具内に挿入する途中の状態における保持具の断面図である。
【
図5】ガイドワイヤを保持した保持具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
本発明の実施形態に係る保持具10は、ガイドワイヤ60などの医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するものである。ただし、保持具10に保持されるガイドワイヤ60は、コイル状に巻かれた状態でなくてもよい。また、保持具10は、ガイドワイヤ60を1本のみ保持してもよいし、複数本のガイドワイヤ60をまとめて保持してもよい。なお、本明細書では、ガイドワイヤ60の血管に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0018】
図1に示すように、保持具10は、内側に空間が形成された本体部20と、本体部20の内部に配置される保持部30とを有している。ガイドワイヤ60は、本体部20の中央部において保持部30によって挟まれ、保持される。
【0019】
図1、
図2に示すように、本体部20は、底壁22と、底壁22から立ち上がり対向配置された一対の支持壁24と、底壁22から立ち上がり支持壁24に対し垂直な2つの側壁26と、を有している。底壁22と支持壁24および側壁26に囲まれた内部空間は、一方に向かって開口する。本明細書では、底壁22と垂直な2方向は、底壁22と支持壁24および側壁26に囲まれた内部空間を基準として、当該内部空間が開口する側を上側、底壁22側を下側とする。支持壁24は、中央部にガイドワイヤ60を位置させる切欠き部24aを有している。
【0020】
支持壁24の切欠き部24aを挟んで一方側と他方側は、それぞれ対向する支持壁24間に延在する第1回転軸41と第2回転軸51とを支持している。第1回転軸41と第2回転軸51は、それぞれ支持壁24に固定されている。第1回転体40の第1回転軸41と第2回転体50の第2回転軸51は、平行でかつ離隔して配置されている。
【0021】
本体部20は、金属または樹脂で形成することができる。本体部20の大きさは、縦横それぞれ3cm以上10cm以下の範囲に形成される。ただし、本体部20は、この寸法範囲を超える寸法を有していてもよい。
【0022】
保持部30は、第1回転体40と第2回転体50とを含んでいる。第1回転体40は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に沿って2つが離隔して設けられる。各第1回転体40は、第1回転軸41に対して回転可能に支持されている。第2回転体50は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に沿って2つが離隔して設けられる。第2回転体50は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に沿ってそれぞれ第1回転体40と異なる位置に配置される。また、第1回転体40と第2回転体50は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に沿って互い違いに配置される。第2回転体50は、第2回転軸51に対して回転可能に支持されている。
【0023】
第1回転体40は、ガイドワイヤ60を保持する平面状の第1保持面42と、第1保持面42と周方向反対側に円弧状の円弧部43と、を有している。第1回転体40は、第1保持面42と円弧部43との間に、それぞれ平面状の側壁当接部44と底壁当接部45とを有している。
図2に示すように、底壁当接部45は、保持部30がガイドワイヤ60を保持した状態において、底壁22の内面に当接する。
図3に示すように、側壁当接部44は、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、側壁26の内面に当接する。第1回転体40は、側壁当接部44が側壁26の内面に当接する角度から、底壁当接部45が底壁22の内面に当接する角度までに、回転可能な角度が制限される。
【0024】
第2回転体50は、ガイドワイヤ60を保持する平面状の第2保持面52と、第2保持面52と周方向反対側に円弧状の円弧部53と、を有している。第2回転体50は、第2保持面52と円弧部53との間に、それぞれ平面状の側壁当接部54と底壁当接部55とを有している。
図2に示すように、底壁当接部55は、保持部30がガイドワイヤ60を保持した状態において、底壁22の内面に当接する。
図3に示すように、側壁当接部54は、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、側壁26の内面に当接する。第2回転体50は、側壁当接部54が側壁26の内面に当接する角度から、底壁当接部55が底壁22の内面に当接する角度までに、回転可能な角度が制限される。
【0025】
図2に示すように、保持部30がガイドワイヤ60を保持した状態で、第1回転体40の第1保持面42と第2回転体50の第2保持面52とは、互いに反対方向を向く。保持部30がガイドワイヤ60を保持した状態において、第1保持面42と第2保持面52との距離は、ガイドワイヤ60の最大外径より小さい。すなわち、ガイドワイヤ60の長軸方向に対する垂直断面視において、ガイドワイヤ60を保持した状態における第1回転体40と第2回転体50との距離は、ガイドワイヤ60の最大外径より小さい。第1回転体40と第2回転体50との距離は、好ましくは0mm以上1mm以下である。ただし、第1回転体40と第2回転体50との距離は、ガイドワイヤ60の最大外径より小さければこの範囲外であってもよい。
【0026】
図3に示すように、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態で、第1回転体40の底壁当接部45と第2回転体40の底壁当接部55とは、互いに反対方向を向く。保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、第1回転体40の底壁当接部45と第2回転体40の底壁当接部55との距離は、ガイドワイヤ60の最大外径より小さい。このため、術者がガイドワイヤ60を底壁22側に押し込むことで、第1回転体40と第2回転体50を回転させることができる。
【0027】
第1回転体40と第2回転体50は、金属または樹脂で形成することができる。第1回転体40と第2回転体50は、少なくともガイドワイヤ60に接触する表面が、可撓性を有する樹脂で形成されることが好ましい。このような樹脂として、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴムなどの各種ゴム材料、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ただし、第1回転体40と第2回転体50の表面は、これら以外の材料で形成されてもよい。保持具10は、第1回転体40と第2回転体50の表面が可撓性を有する材料で形成されることにより、ガイドワイヤ60を保持した際に第1回転体40と第2回転体50の表面部分が弾性的に変形するので、ガイドワイヤ60の保持力が向上する。
【0028】
第1回転体40と第2回転体50の表面は、ガイドワイヤ60の表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。このような表面形状は、例えば、凹凸形状、縦縞形状、横縞形状などの模様を設ける、あるいは、粗面化処理を施すなどによって、形成できる。
【0029】
保持具10の使用方法について説明する。保持具10を使用する前に、術者は、予めガイドワイヤ60をコイル状に巻き、複数のループを形成する。次に、術者は、第1回転体40と第2回転体50を
図3に示す状態に回転させる。保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、第1回転体40は、側壁当接部44が側壁26の内面に当接し、第1保持面42が上側を向くように配置される。また、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、第2回転体50は、側壁当接部54が側壁26の内面に当接し、第2保持面52が上側を向くように配置される。
【0030】
次に、術者は、第1回転体40と第2回転体50との間にガイドワイヤ60を配置し、ガイドワイヤ60を下側に向かって押し込む。これにより、
図4に示すように、第1回転体40と第2回転体50が、ガイドワイヤ60に押圧されて互いに反対方向に回転する。このとき、第1回転体40の第1保持面42は、ガイドワイヤ60が位置する本体部20の中央側に向かって傾倒していく。また、第2回転体40の第2保持面52は、ガイドワイヤ60が位置する本体部20の中央側に向かって傾倒していく。
【0031】
術者がさらにガイドワイヤ60を押し込むと、
図2に示すように、第1回転体40は底壁当接部45が底壁22の内面に当接して停止し、第2回転体50は底壁当接部55が底壁22の内面に当接して停止する。このとき、第1回転体40の第1保持面42と第2回転体50の第2保持面52が互いに反対方向を向き、かつ、ガイドワイヤ60の長軸方向に対する垂直断面視において、第1回転体40の第1保持面42と第2回転体50の第2保持面52との距離がガイドワイヤ60の最大外径より小さいので、ガイドワイヤ60は、第1回転体40と第2回転体50によって保持される。これにより、
図5に示すように、保持具10は、コイル状に巻いたガイドワイヤ60を保持できる。
【0032】
ガイドワイヤ60を保持具10から取り外す際には、術者は、
図2に示す状態から第1回転体40と第2回転体50を互いに反対方向に回転させる。このとき、術者は、第1保持面42と第2保持面52とがそれぞれ上側に向かうように、第1回転体40と第2回転体50を回転させる。これにより、第1回転体40と第2回転体50は、
図4に示す状態となる。術者が第1回転体40と第2回転体50をさらに回転させると、第1回転体40は側壁当接部44が側壁26の内面に当接して停止し、第2回転体50は側壁当接部54が側壁26の内面に当接して停止する。これにより、
図3に示すように、ガイドワイヤ60が第1回転体40と第2回転体50から離れ、術者は、ガイドワイヤ60を保持具10から取り外すことができる。なお、ガイドワイヤ60を保持具10から取り外す際、術者は、第1回転体40と第2回転体50によって保持されているガイドワイヤ60を上側に向かって引き上げることによって、第1回転体40と第2回転体50を互いに反対方向に回転させてもよい。
【0033】
なお、保持具10が保持するガイドワイヤ60は、コイル状に巻かれていなくてもよい。この場合、術者は、1本のガイドワイヤ60を第1回転体40と第2回転体50に押し付けて、第1回転体40と第2回転体50を回転させることにより、ガイドワイヤ60を保持具10に保持させることができる。また、術者は、コイル状に巻かれていない複数本のガイドワイヤ60をまとめて第1回転体40と第2回転体50に押し付けて、保持具10に保持させることもできる。
【0034】
保持具の変形例について説明する。
図6に示すように、変形例に係る保持具70は、底壁72と支持壁73を有する本体部71と、第1回転体75と第2回転体77とを含む保持部74とを有する。第1回転軸76と第2回転軸78は、それぞれ支持壁73に支持されている。術者が、ガイドワイヤ60を第1回転体75と第2回転体77との間に押し込むことにより、ガイドワイヤ60は、第1回転体75と第2回転体77によって保持される。
【0035】
第1回転体75と第2回転体77は、いずれも円筒状に形成されている。このため、保持具70は、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、第1回転体75と第2回転体77を特定の方向に向ける必要がない。本体部71の底壁72は、第1回転体75と第2回転体77の下側の部分を納める凹部72aを有している。このため、第1回転体75と第2回転体77の回転中心を底壁72寄りに配置できる。また、底壁22は、第1回転体75の中心位置からの距離と第2回転体77の中心位置からの距離が等しい中央部に、山型に隆起した凸部79を有している。凸部79は、対向配置された一対の支持壁73間の全長にわたる底壁22に設けられている。すなわち、凸部79は、保持部30がガイドワイヤ60を保持した状態におけるガイドワイヤ60の長軸方向に沿って、底壁22に設けられている。底壁72の凹部72aと凸部79は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に対する垂直断面視において、第1回転体75と第2回転体77との間に形成される空間を小さくすることができる。これにより、保持部70は、第1回転体75と第2回転体77との間に形成される空間にガイドワイヤ60が進入することを抑制できる。
【0036】
保持具10は、保持具10を外部の対象物に固定するための固定機構を有していてもよい。
図7に示すように、保持具10に設けられる固定機構80は、本体部20に設けられる保持具固定部82と、外部の対象物に接着固定される接着面83aを有する外部固定部83と、保持具固定部82と外部固定部83との間を連結するワイヤ状の連結部81とを有している。外部固定部83が固定される外部の対象物は、ガイドワイヤ60を保管するための液体を満たした容器や、手術用のドレープ、手術台などである。外部固定部83は、接着面83aを有するものに限られず、外部の対象物を挟むことができるクリップなどであってもよい。固定機構80を有する保持具10は、ガイドワイヤ60を保持した保持具10が容器や手術台から落下することを防止できる。また、保持具固定部82と外部固定部83とは、連結部81を介さずに、直接嵌合可能に形成されてもよい。
【0037】
また、保持具10の固定機構は、底壁22の外面に、他の対象物に貼付可能な接着面を有するものであってもよい。また、保持具10の固定機構は、保持具10の下部および他の対象物のそれぞれが互いに嵌合可能な部分を有するものであってもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る(1)保持具10は、可撓性を有する医療用のガイドワイヤ60を保持する保持具10であって、底壁22と、該底壁22から立ち上がる支持壁24と、を有する本体部20と、支持壁24に回転可能に支持される第1回転体40と第2回転体50とを含む保持部30と、を備え、第1回転体40の第1回転軸41と第2回転体50の第2回転軸51は、平行でかつ離隔しており、第1回転体40と第2回転体50は、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に沿って異なる位置に配置され、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に対する垂直断面視における第1回転体40の表面と第2回転体50の表面との距離が、ガイドワイヤ60の最大外径より小さい。このように構成した(1)保持具10は、第1回転体40と第2回転体50とでガイドワイヤ60を挟んで保持できる。第1回転体40と第2回転体50との間にガイドワイヤ60を押し込む際、第1回転体40と第2回転体50は、ガイドワイヤ60が底壁22側に移動するのに伴ってそれぞれ回転する。このため、ガイドワイヤ60は、表面が各回転体の表面と擦れることなく第1回転体40と第2回転体50によって保持される。したがって、保持具10は、当該保持具10との接触に起因するガイドワイヤ60の親水性コーティングの剥離が生じにくくなり、ガイドワイヤ60の機能の低下を抑えつつ、ガイドワイヤ60を堅固に保持できる。
【0039】
(2)上記(1)の保持具10において、第1回転体40は、ガイドワイヤ60を保持する平面状の第1保持面42を有し、第2回転体50は、ガイドワイヤ60を保持する平面状の第2保持面52を有し、保持されるガイドワイヤ60の長軸方向に対する垂直断面視における第1保持面42と第2保持面52との距離が、ガイドワイヤ60の最大外径より小さくてもよい。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60を平面状の第1保持面42と第2保持面52とで安定的に保持できる。
【0040】
(3)上記(2)の保持具10において、第1回転体40は、第1保持面42と周方向反対側が円弧状であり、第2回転体50は、第2保持面52と周方向反対側が円弧状であってもよい。これにより、保持具10は、第1回転体40と第2回転体50の本体部20に向く面の最大回転半径を小さくできるので、本体部20を小型化できる。
【0041】
(4)上記(1)の保持具において、第1回転体75と第2回転体77は、それぞれ円筒状であってもよい。これにより、保持具70は、保持部30がガイドワイヤ60を保持する前の状態において、第1回転体75と第2回転体77を特定の方向に向けることなく、ガイドワイヤ60を保持できる。
【0042】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの保持具10において、支持壁24は、第1回転軸41と第2回転軸51のそれぞれ両端に配置され、第1回転軸41と第2回転軸51との間にガイドワイヤ60を位置させる切欠き部24aを有してもよい。これにより、保持具10は、第1回転軸41と第2回転軸51を両側から支持壁24により支持できるので、第1回転体40と第2回転体50を安定的に回転させることができる。
【0043】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの保持具10において、第1回転体40と第2回転体50は、いずれか一方が1つ以上、他方が2つ以上設けられてもよい。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60の長軸方向に沿って少なくとも3箇所を保持するので、ガイドワイヤ60を安定的に保持できる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態において医療用の長尺デバイスはガイドワイヤ60であるが、カテーテルなど他の長尺デバイスであってもよい。
【0045】
また、上述の実施形態において、第1回転軸41と第2回転軸51は、支持壁24に固定されているが、支持壁24に対し回転可能であってもよい。この場合、第1回転体40は、第1回転軸41に固定され、第1回転軸41と共に回転できる。また、第2回転体50は、第2回転軸51に固定され、第2回転軸51と共に回転できる。
【0046】
上述の実施形態において、第1回転体40と第2回転体50は、それぞれ2つずつ設けられているが、第1回転体40と第2回転体50はそれぞれ1つずつでもよい。また、第1回転体40と第2回転体50は、いずれか一方が2つで、他方が1つでもよい。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60を長軸方向に沿って3箇所で保持するので、ガイドワイヤ60を安定的に保持できる。また、第1回転体40と第2回転体50は、それぞれ2つ以上の任意の個数であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 保持具
20 本体部
22 底壁
24 支持壁
24a 切欠き部
26 側壁
30 保持部
40 第1回転体
41 第1回転軸
42 第1保持面
43 円弧部
44 側壁当接部
45 底壁当接部
50 第2回転体
51 第2回転軸
52 第2保持面
53 円弧部
54 側壁当接部
55 底壁当接部
60 ガイドワイヤ