(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027499
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】計量方式による作物への給水方法及びその給水装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/02 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A01G25/02 602A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130350
(22)【出願日】2022-08-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000251026
【氏名又は名称】林 平八
(72)【発明者】
【氏名】林 平八
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少量の水または少量の養液を多数回繰り返し作物に与える方法があるが、ノズルが詰まる場合がある。
【解決手段】下り勾配の管路を設置し、この管路の長さ方向に間隔をあけて底部に水又は養液を落下させる落下孔を多数設け、落下孔の下部に貯水部を設け、貯水部の下部に水を流出する微細な流出口を設け、管路の上流側から水を注入すると、上流側の貯水部より順次微細な孔から流出する量を上回る量の水を注入すると次第に順次満タンになり、最後の貯水部が満タンになる時同一の水圧で一斉に流出するが、最後の貯水部より上流側の貯水部は既に流出した分があり、この分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなる。これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管を短くし体積及び微細な孔に作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管を長くして体積及び水圧を多くすることにより、各部の合計の流出量を均一化することによる給水装置とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/100~1/5の下り勾配の管路を設置し、この管路の長さ方向に間隔をあけて底部に、水又は養液(以下単に水とする)を落下させる為の落下孔を多数設け
落下孔の下に貯水部を設け貯水部の下部に水を流出する微細な流出口を設け
管路の上流側から水を注入し上流側の貯水部より順次微細な孔から流出する量を上回る量の水を注入すると次第に順次満タンになり最後の貯水部が満タンになる時
同一の水圧で一斉に流出するが、最後の貯水部より上流側の貯水部は既に流出した分があり、この分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなり、
これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管を短くし体積及び微細な孔に作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管を長くして体積及び水圧を多くすることにより各部の合計の流出量を均一化し、また計量方式のため、ある部分の貯水部の短管の長さを増減することにより体積及び水圧をを増減して、その部分の流出量すなわち給水量の増減が1つの給水装置で実施できる計量方式による作物への給水方法。
【請求項2】
1/100~1/5の下り勾配の管路を設置し、この管路の長さ方向に間隔をあけて底部に、水又は養液(以下単に水とする)を落下させる為の落下孔を多数設け
落下孔の下に貯水部を設け貯水部の下部に水を流出する微細な流出口を設け
管路の上流側から水を注入し上流側の貯水部より順次微細な孔から流出する量を上回る量の水を注入すると次第に順次満タンになり最後の貯水部が満タンになる時
同一の水圧で一斉に流出するが、最後の貯水部より上流側の貯水部は既に流出した分があり、この分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなり、
これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管を短くし体積及び微細な孔に作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管を長くして体積及び水圧を多くすることにより各部の合計の流出量を均一化し、また計量方式のため、ある部分の貯水部の短管の長さを増減することにより体積及び水圧をを増減して、その部分の流出量すなわち給水量の増減が1つの給水装置で実施できる計量方式による作物への給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトマト、ナス、キュウリ等の野菜及び柿、林檎、ぶどう等の果樹(以下、作物)を栽培する場合の、給水方法及びその給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高度な農業技術を駆使し高品質の農業生産物を得ようとするとき、少量の水及び少量の適正な濃度の養液を多数回繰り返し作物に与える方法がある。なお本願では少量の水及び少量の適正な濃度の養液を単に少量の水と称する。また水及び適正な濃度の養液を単に水と称する。このような作物を栽培する場合、給水方法及びその給水装置が重要な課題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-107827号公報
【特許文献2】特許第6488443号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】現代農業 一般社団法人 農山漁村文化協会 1998年8月号 P、286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この少量の水を多数回繰り返し作物に与える作業は人が直接行うのではなく水槽、電源、ポンプ、タイマー、チューブ、ノズル等によるのが一般的である。しかし、このノズルが詰まる場合がある。このことは特許文献1の段落(0004)及び非特許文献1のP、286に かん水は2系統で、の項に示されている。
【0006】
前記の課題を解決するための手段の1つがが特許文献1に公開されている。その段落(0020)に不織布を用いた具体例が示されている。不織布は養液の養分により藻、が発生するが、洗浄すれば繰り返し使える。また安価のため新規のものに取り替えても費用はあまり増加しない。また同一サイズの不織布でも滴下量に、ばらつきがあるが、前もって試験をして極端に多いもの少ないものを取り除けば問題は減少する。これらの課題は比較的小さいとは云え面積が広くなると煩わしい課題になる。
特許文献2ではこれらの課題を解決するための提案をしている。その詳細は特許文献2の段落(0007)~段落(0023)の記載にある。この特許文献2のものには更に次の課題がある。
特許文献2の
図7の表1の3行目に示すように余水が1130mlであり合計の2500mlに対する割合が多いことである。この余水は容器に貯めてポンプで送り返して再利用するか、場外に搬出して処分する必要があり、その経費が必要になる。また資源の無駄づかいでもある。本願はこの課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図1に示すように1/100(100cmにつき1cm)~1/5(100cmにつき20cm)望ましくは1/10程度(100cmにつき10cm)の、ゆるい下り勾配の管路1を設置し、この管路1の長さ方向に適切な間隔をあけて底部に、水又は養液(以下単に水とする)を落下させる為の落下孔2を、多数設ける。管路1は例えば硬質塩化ビニール管3(以下、塩ビ管3)を使用し、落下孔2には、その付属品のT型のチーズ4を凸部を下向きに使用し、落下孔2とする。塩ビ管3及びチーズ4を
図2の図面代用写真に示す。
図1の管路1の上下方向の縮尺は拡大して表示している。
【0008】
管路1の上端にエルボ5を設置し、ここに水を注入する。エルボ5及びソケット8を
図3の図面代用写真に示す。管路1の末端に容器6を設置し余った水を貯めてポンプとホースで元の水槽に送り再利用する。または場外に搬出して処分する。この余る水の量は本願のものは特許文献2のものに比べて非常に少ない。
T型のチーズ4の下端に硬質塩化ビニール管よりなる短管7及びそのふた9を用いる。ふた9の先端に微細な孔TTを設け流出口とする。流出口の径は1.0mm~2.0mmとする。0.2mm~0.4mmの散水孔を設ける散水チューブや特殊な構造の点滴チューブは、いずれも高圧により流出させるものであるが本願は加圧をしないもので目づまりの点で非常に有利である。加圧をすると孔の径より少し大きいものが孔に挟まり、くさびのようになる。流出のようす及び微細な孔TTを
図2の図面代用写真に符号10及び符号TTで示す。
チーズ4の凸部の上端Aから下端Bまでの水の体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた水の体積をV1とする。
短管7の水の体積をV2とする。
ふた9の水の体積からふた9に挿入される短管7の部分の体積を除いた水の体積をV3とする。V1、V2、V3の合計をV4とする。V4よりなる貯水部CHを
図2のように設ける。
【0009】
流末の最後のものについてチーズ4の凸部の上端Aから下端Bまでの体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた体積をVN1とする。
短管7の体積をVN2とする。
短管7に付けるふた9水の体積からふた9に挿入される短管7の部分の体積を除いた水の体積をVN3とする。
VN1、VN2、VN3の合計をVN4とする。
VN4よりなる貯水部CHNを
図4のように設ける。
ソケット8の上端より水を注入する。チーズ4の交差部で水は殆どは下に落下し一部は流れの勢いで次の部分に流れる。チーズ4の上端Aより注入された水はV4よりなる貯水部CHに注入され一部は微細な孔TTより流出するが次第に満タンになる。最初の上流側の貯水部CHが満タンになると次の下流側の貯水部CHに注水される。最後の貯水部CHの上端Aが満水になると、すべての貯水部CHが満タンになる。
すべての貯水部CHの合計と、各の既に流出し分との合計に管の径の誤差、水もれの誤差、作業上の誤差を加えた量に更に最後の貯水部のチーズ4の交差部から水の流れの勢いで容器6に流れる部分との総合計の量の水を上流のソケット8より注入する。最後の貯水部CHNが満タンになる時すべての貯水部CHは満タンになり、この時から同じ水圧で一斉に流出するが、既に流出した部分がある。
この既に流出した部分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなる。これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管7を次第に短くして体積及び微細な孔TTに作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管7を次第に長くして体積及び水圧を多くすることにより各部の合計の流出量を均一化する。また本願は計量方式のため、ある部分の貯水部の短管7の長さを増減することにより体積及び水圧をを増減して、その部分の流出量すなわち給水量の増減が1つの給水装置で実施でき、特性の異なる作物の栽培や、種まきができる。
【0010】
流出量を調整する方法として短管7の長さを変える方法とは別に微細な孔TTの孔の径を変える方法がある。この場合は特許文献2の段落(0019)の方法に準じる。
【発明の効果】
【0011】
農業の栽培の為の灌水装置を設置する場合、電源、ポンプ、タイマー、チューブ、ノズル等を使用したものは、ノズルが詰まる場合がある。今回ノズルを使用しない方法とした。これにより作物を安心かつ格安に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】塩ビ管及びチーズ等の各部詳細を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
硬質塩化ビニール管3及び付属品のチーズ4、エルボ5、ふた9及び硬質塩化ビニール管よりなる短管7を用いて
図1、
図2及び
図4のように管路1及び落下口2を作る。
今回の硬質塩化ビニール管は内径20mmのものを用いる。チーズ4の凸部、短管7及びふた9により貯水部CHを12個作る。これを15cm間隔に設置する。管路1は1/10程度の下り勾配とする。ソケット8の上端より水を注入する。その量は約1400mlとし注入する時間は約30秒とする。上流側の貯水部CHより順次満水になる。ふた9の先端に1.5mmの孔を設け水が少量ずつ流出する。チーズ4の交差部で水は殆どは落下し一部は水の勢いで次の部分に流れる。最後の12番目の貯水部CHNが満タンになる時すべての貯水部CHは満タンになる。この時から同じ水圧で一斉に流出するが、既に流出した部分がある。最初の計量では短管7の長さをすべて10cmとし、この時の流出量を計量したものが
図5の表1の欄2の値である。なお欄1は短管7の長さである。この場合の計量値は100ml前後であるが上流側のNO1~NO3のものが、落下時間が長いため10~30ml多くなっている。また下流側のNO10~NO12のものが、90mlで10ml程少ない。
これを補正する為に短管7の長さを欄3のように変更した。上流側のNO1を3cm、NO2を2cm、NO3を1cm短くし、それぞれ7cm、8cm、9cmとした。また下流側のNO10を1cm、NO11を2cm、NO12を3cm長くしそれぞれ11cm、12cm、13cmとした。この短管7の長さを変更したあとの計量値を欄4に示す。これにより流出量が均一化している。
【符号の説明】
【0014】
1 管路
2 落下孔
3 硬質塩化ビニール管
4 チーズ
5 エルボ
6 容器
7 短管
8 ソケット
9 ふた
10 落下のようす
TT 微細な孔
V1 チーズ4の凸部の上端A(
図2参照)から下端Bまでの体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた水の体積
V2 短管7の水の体積
V3 ふた9の体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた水の体積
V4 V1、V2、V3の合計の体積
CH V4よりなる貯水部
VN1 最後のN番目のチーズ4の凸部の上端Aから下端Bまでの体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた水の体積
VN2 最後のN番目の短管7の水の体積
VN3 最後のN番目のふた9の体積から短管7が挿入される部分の体積を除いた水の体積
VN4 VN1、VN2、VN3の合計の体積
CHN VN4よりなる貯水部
A チーズ4の凸部の上端
B チーズ4の凸部の下端
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/100~1/5の下り勾配の管路を設置し、この管路の長さ方向に間隔をあけて底部に、水又は養液(以下単に水とする)を落下させる為の落下孔を多数設け
落下孔の下に貯水部を設け貯水部の下部に水を流出する微細な流出口を設け
管路の上流側から水を注入し上流側の貯水部より順次微細な孔から流出する量を上回る量の水を注入すると次第に順次満タンになり最後の貯水部が満タンになる時
同一の水圧で一斉に流出するが、最後の貯水部より上流側の貯水部は既に流出した分があり、この分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなり、
これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管を短くし体積及び微細な孔に作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管を長くして体積及び水圧を多くすることにより各部の合計の流出量を均一化し、また計量方式のため、ある部分の貯水部の短管の長さを増減することにより体積及び水圧をを増減して、その部分の流出量すなわち給水量の増減が1つの給水装置で実施できる計量方式による作物への給水方法
であって
計量方式により、各々の貯水部の下部の微細な流出口から流出する水の量を計量し、この流出量を詳しく勘案して次の段階の各々の貯水部の体積を増加叉は減少して各々の流出量を均一化する方法であり、この方法による、計量方式による作物への給水方法。
【請求項2】
1/100~1/5の下り勾配の管路を設置し、この管路の長さ方向に間隔をあけて底部に、水又は養液(以下単に水とする)を落下させる為の落下孔を多数設け
落下孔の下に貯水部を設け貯水部の下部に水を流出する微細な流出口を設け
管路の上流側から水を注入し上流側の貯水部より順次微細な孔から流出する量を上回る量の水を注入すると次第に順次満タンになり最後の貯水部が満タンになる時
同一の水圧で一斉に流出するが、最後の貯水部より上流側の貯水部は既に流出した分があり、この分を合計した流出量は上流側ほど次第に多くなり、
これを補正して均一化する為に、上流側の貯水部の短管を短くし体積及び微細な孔に作用する水圧を少なくし、下流側の貯水部の短管を長くして体積及び水圧を多くすることにより各部の合計の流出量を均一化し、また計量方式のため、ある部分の貯水部の短管の長さを増減することにより体積及び水圧をを増減して、その部分の流出量すなわち給水量の増減が1つの給水装置で実施できる計量方式による作物への給水装置
であって
計量方式により、各々の貯水部の下部の微細な流出口から流出する水の量を計量し、この流出量を詳しく勘案して次の段階の各々の貯水部の体積を増加叉は減少して各々の流出量を均一化する装置であり、この装置による、計量方式による作物への給水装置。