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特開2024-27503繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法。
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  • 特開-繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027503
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法。
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20240222BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20240222BHJP
   F27D 1/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F27D1/00 G
F27D1/16 Z
F27D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130358
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】591077645
【氏名又は名称】有限会社林製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】林 隆文
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AB03
4K051BC04
4K051EA01
(57)【要約】
【課題】工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることのできる繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法を提供する。
【解決手段】繊維質断熱材ブロック1は、繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成され、一対の被覆材20で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成された梱包体10と、梱包体10を緊締保持する結束部材60と、を備えている。被覆材20は板状体30と、板状体30を挿着する袋体40と、からなり、板状体30が袋体40を介して、加圧面に当接し、袋体40は、施工側面側が閉塞され、袋体40の長さは板状体30の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上である。工業炉のライニング施工方法は、炉殻内面に複数の繊維質断熱材ブロック1を固着する第1工程と、結束部材60の緊締を解除する第2工程と、被覆材20を引き抜く第3工程と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成し、一対の被覆材で被覆されたブランケット積層体を、積層方向に加圧して形成された梱包体と、該梱包体を緊締保持する結束部材と、を備えた、工業炉のライニング施工用の繊維質断熱材ブロックにおいて、
前記ブランケット積層体は、前記工業炉の炉殻内面に施工する施工側面と、該施工側面と対向する加熱面と、前記積層側の一対の加圧面と、からなり、
前記被覆材は板状体と、該板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、該板状体が該袋体又は二つ折りシートを介して、前記加圧面に当接し、
前記袋体は、前記施工側面側が閉塞され、該袋体の長さは前記板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であり、
前記二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、該二つ折りシートの長さは前記板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であることを特徴とする繊維質断熱材ブロック。
【請求項2】
繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成し、一対の被覆材で被覆されたブランケット積層体を、積層方向に加圧して形成された梱包体と、該梱包体を緊締保持する結束部材と、を備えた、工業炉のライニング施工用の繊維質断熱材ブロックにおいて、
前記ブランケット積層体は、前記工業炉の炉殻内面に施工する施工側面と、該施工側面と対向する加熱面と、前記積層側の一対の加圧面と、からなり、
前記被覆材は、折曲自在な板状体と、該板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、該板状体が少なくとも加圧面を被覆する該袋体又は二つ折りシートを介して、前記加熱面及び前記加圧面に当接し、
前記袋体は、前記施工側面側が閉塞され、該袋体の長さは前記板状体の挿着方向の前記加圧面の長さと略同一又はそれ以上であり、
前記二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、該二つ折りシートの長さは前記板状体の挿着方向の前記加圧面の長さと略同一又はそれ以上であることを特徴とする繊維質断熱材ブロック。
【請求項3】
前記板状体の材質は、合板、木質系板、金属製板、合成樹脂製板、紙製板、紙製段ボール板、及びプラスチック製段ボール板のうちのいずれかである請求項1又は2に記載の繊維質断熱材ブロック。
【請求項4】
前記袋体又は二つ折りシートの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、及びポリエチレンテレフタレートのうちのいずれかである請求項1又は2に記載の繊維質断熱材ブロック。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の繊維質断熱材ブロックを用いた、工業炉のライニング施工方法であって、
前記工業炉の炉殻内面に複数の繊維質断熱材ブロックを固着する第1工程と、
前記結束部材の緊締を解除する第2工程と、
前記被覆材を引き抜く第3工程と、を備えたことを特徴とする工業炉のライニング施工方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記袋体又は二つ折りシートを引っ張ることにより、前記被覆材を引き抜く請求項5に記載の工業炉のライニング施工方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記板状体を引き抜き、次いで前記袋体又は二つ折りシートを引き抜く請求項5に記載の工業炉のライニング施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法に関する。更に詳しくは、本発明は、工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることのできる繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業炉の炉殻は高温に晒されることから、その内面には断熱材によるライニング施工がされている。工業炉のライニング施工をするには、例えば次の方法により行う。
断熱材ブランケットを折り畳み形成した複数の積層体を工業炉の炉殻内面に敷き詰めて固着する。その際、配置した積層体間に隙間が生ずるのを避けるため、積層体間は互いに押圧されるように圧縮して配置形成されることが好ましい。
例えば、断熱材ブランケットを積層し対向する両面を一対の被覆材で被覆加圧して形成された梱包体を作成し、更にこの梱包体を結束バンドで緊締して断熱材ブロックとする。そして、この梱包体を前記炉殻内面に敷き詰めて固着し、結束バンドの緊締を解除することにより、積層体間は互いに押圧されるようになる。その後、被覆材を引き抜くことにより、積層体間が隙間なく押圧されて配置形成される。
しかし、積層体によって押圧された被覆材を引き抜くには、かなり強い力を要することになる。
【0003】
ここで、ブランケット積層体の被覆材を引き抜く手段が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の被覆材は、積層体の加圧面当接部と繋がる加熱面保護部を備えており、結束部材を除去することにより、当該被覆材を構成する材料の弾性によって加熱面保護部が、断熱材ブロックの加熱面から離隔する。こうすることで、加熱面保護部が加圧面当接部と同一平面上に配置することができる。そして、
加熱面保護部に設けられた穴形状の手掛り部に引き抜き治具のフック部を引っ掛けて引き抜くことができる。
この方法であれば、引き抜き治具の巻取り機を駆動して被覆材を引き抜けばよい。この引抜き冶具を用いることにより、被覆材の抜取り作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5660954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法によると、被覆材に手掛り部を設ける必要があることに加え、引き抜き治具を用いて作業する必要がある。
本発明は、上記課題を解決するものであり、工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることのできる繊維質断熱材ブロック及びこれを用いた工業炉のライニング施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成し、一対の被覆材で被覆されたブランケット積層体を、積層方向に加圧して形成された梱包体と、該梱包体を緊締保持する結束部材と、を備えた、工業炉のライニング施工用の繊維質断熱材ブロックにおいて、
前記ブランケット積層体は、前記工業炉の炉殻内面に施工する施工側面と、該施工側面と対向する加熱面と、前記積層側の一対の加圧面と、からなり、
前記被覆材は板状体と、該板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、該板状体が該袋体又は二つ折りシートを介して、前記加圧面に当接し、
前記袋体は、前記施工側面側が閉塞され、該袋体の長さは前記板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であり、
前記二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、該二つ折りシートの長さは前記板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であることを特徴とする繊維質断熱材ブロック。
2.繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成し、一対の被覆材で被覆されたブランケット積層体を、積層方向に加圧して形成された梱包体と、該梱包体を緊締保持する結束部材と、を備えた、工業炉のライニング施工用の繊維質断熱材ブロックにおいて、
前記ブランケット積層体は、前記工業炉の炉殻内面に施工する施工側面と、該施工側面と対向する加熱面と、前記積層側の一対の加圧面と、からなり、
前記被覆材は、折曲自在な板状体と、該板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、該板状体が少なくとも加圧面を被覆する該袋体又は二つ折りシートを介して、前記加熱面及び前記加圧面に当接し、
前記袋体は、前記施工側面側が閉塞され、該袋体の長さは該板状体の挿着方向の前記加圧面の長さと略同一又はそれ以上であり、
前記二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、該二つ折りシートの長さは前記板状体の挿着方向の前記加圧面の長さと略同一又はそれ以上であることを特徴とする繊維質断熱材ブロック。
3.前記板状体の材質は、合板、木質系板、金属製板、合成樹脂製板、紙製板、紙製段ボール板、及びプラスチック製段ボール板のうちのいずれかである前記1.又は2.に記載の繊維質断熱材ブロック。
4.前記袋体又は二つ折りシートの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、及びポリエチレンテレフタレートのうちのいずれかである前記1.又は2.に記載の繊維質断熱材ブロック。
5.前記1.又は2.に記載の繊維質断熱材ブロックを用いた、工業炉のライニング施工方法であって、
前記工業炉の炉殻内面に複数の繊維質断熱材ブロックを固着する第1工程と、
前記結束部材の緊締を解除する第2工程と、
前記被覆材を引き抜く第3工程と、を備えたことを特徴とする工業炉のライニング施工方法。
6.前記第3工程は、前記袋体又は二つ折りシートを引っ張ることにより、前記被覆材を引き抜く前記5.に記載の工業炉のライニング施工方法。
7.前記第3工程は、前記板状体を引き抜き、次いで前記袋体又は二つ折りシートを引き抜く前記5.に記載の工業炉のライニング施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維質断熱材ブロックによれば、一対の被覆材が、板状体と、板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、板状体が該袋体又は二つ折りシートを介して、加圧面に当接し、袋体は、前記施工側面側が閉塞され、袋体の長さは板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であり、二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、二つ折りシートの長さは板状体の挿着方向の長さと略同一又はそれ以上であるため、工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることができる。
【0008】
本他の発明の繊維質断熱材ブロックによれば、一対の被覆材が、折曲自在な板状体と、板状体を挿着する袋体、又は二つ折りシートと、からなり、板状体が少なくとも加圧面を被覆する袋体又は二つ折りシートを介して、加熱面及び加圧面に当接し、袋体は、前記施工側面側が閉塞され、袋体の長さは板状体の挿着方向の加圧面の長さと略同一又はそれ以上であり、二つ折りシートは、前記施工側面側が折り曲げ形成され、二つ折りシートの長さは板状体の挿着方向の加圧面の長さと略同一又はそれ以上であるため、工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることができる。
【0009】
更に、本他の発明の工業炉のライニング施工方法によれば、工業炉の炉殻内面に本発明、又は本他の発明の複数の繊維質断熱材ブロックを固着する第1工程と、結束部材の緊締を解除する第2工程と、被覆材を引き抜く第3工程と、を備えているため、工業炉のライニング施工を簡易な構成で作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、実施形態の繊維質断熱材ブロックの施工面側から見た模式的な斜視図である。(b)は、実施形態の繊維質断熱材ブロックの加熱面側から見た模式的な斜視図である。
図2】(a)は、実施形態の被覆材に係り、板状体が袋体に挿着された状態を示す模式的な斜視図である。(b)は、他の実施形態の被覆材に係り、板状体が二つ折りシートに挿着された状態を示す模式的な斜視図である。
図3図1(a)の模式的な平面図である。
図4】(a)は、実施形態の工業炉のライニング施工方法の第1工程に係り、炉殻内面に複数の繊維質断熱材ブロックを固着する前の状態を示す模式的な平面図である。(b)は、第2工程に係り、炉殻内面に固着した複数の繊維質断熱材ブロックの結束部材を切断して、緊締を解除した状態を示す模式的な平面図である。
図5】(a)は、図4(b)に続く第3工程に係り、被覆材を引き抜く様子を示す模式的な平面図である。(b)は、(a)の模式的な説明図である。
図6】他の実施形態の繊維質断熱材ブロックの模式的な平面図である。。
図7】(a)は、図6における被覆材の板状体を挟持具で挟持した状態を示す模式的な平面図である。(b)は、(a)の状態から板状体を挟持具で引き抜く状態を示す模式的な平面図である。
図8】(a)は、更に他の実施形態の繊維質断熱材ブロックの模式的な斜視図である。(b)は、(a)の繊維質断熱材ブロックを炉殻内面に固着した状態から、袋体を引っ張ることにより被覆材を引き抜く様子を示す平面図である。
図9】(a)は、更に他の実施形態の繊維質断熱材ブロックの模式的な斜視図である。(b)は、(a)の繊維質断熱材ブロックを炉殻内面に固着した状態から、板状体を引っ張ることにより、被覆材を引き抜く様子を示す平面図である。
図10】(a)は、実施例の試験装置に係り、繊維質断熱材ブロックを配置、固着するための容器体の模式的な斜視図である。(b)は、容器体にソルジャー配置に固着する繊維質断熱材ブロックの加熱面側から見た側面図である。(c)は、容器体に市松配置に固着する繊維質断熱材ブロックの加熱面側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態により説明する。
[実施形態1]
[1―1]繊維質断熱材ブロック1
実施形態1に係る繊維質断熱材ブロック1は、図1に示すように、一対の被覆材20で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成された梱包体10と、梱包体10を緊締保持する結束部材60と、を備えている。
繊維質断熱材ブロック1は、工業炉のライニング施工に用いられる部材である。ここで、「工業炉」は、材料を溶解、加熱、熱処理等を行うための装置であれば特に限定されず、耐火炉、加熱炉、溶融炉、均熱炉、熱処理炉、焼結炉、焼成炉、乾燥炉、電気炉などが例示される。
【0012】
「ブランケット積層体50」は、繊維質断熱材からなるブランケットを積層して形成したものであり、図1に示すように、長尺状のブランケットを折り畳み形成したものの他、短冊状のブランケットを複数枚重ね合わせて形成したものであってもよい。また、繊維質断熱材は、繊維質からなる断熱材であれば特に限定されず、例えば、アルミナ質繊維、ムライト質繊維、ジルコニア質繊維、生体溶解性質繊維などからなる断熱材が例示される。
ブランケット積層体50は、図3に示すように、工業炉の炉殻内面に施工する施工側面50aと、施工側面50aと対向する加熱面50bと、積層側の一対の加圧面50cと、からなる。
図1に示すように、施工側面50aには、炉殻内面に固着させるための金属製の取付部材80が取着されている。また、ライニング施工に際して必要な紙管85がブランケット積層体50の中央部を貫通して挿着されている。
【0013】
「被覆材20」は、ブランケット積層体50の加圧面50cに当接してブランケット積層体50を被覆する部材である。
被覆材20は、図2(a)に示すように、一対の板状体30と、板状体30を挿着する袋体40と、からなる。
「板状体30」は、加圧面50cに重ね合わされる大きさよりは少し内方向に小さめの大きさであることが好ましい。少し内方向に小さめとすることで、施工に際しての板状体30の端部同士の干渉を避けることができる。
板状体30の板厚は特に限定はないが、板状体30の材質が合板の場合であって、後述のブランケット積層体の積層方向の圧縮率が67.5%ぐらいの場合には、ブランケット加圧面50cの一辺が略300mmの略正方形状であれば、板厚が3~12mmであることが好ましく、5~9mmであることが更に好ましい。板厚が3mm未満では、ブランケット積層体50の押圧によって板状体の変形がおこり、板厚が12mmを超えてもよいが板厚が12mmあれば十分である。
また、板状体30は、2枚の板材を重ねて構成してもよい。例えば、板厚3mmの板材と板厚5mmの板材を重ね合わせて8mmの板状体30を形成してもよい。
板状体30の材質は特に限定されないが、合板、木質系板、金属製板、合成樹脂製板、紙製板、紙製段ボール板、及びプラスチック製段ボール板のうちのいずれかを用いることができる。
【0014】
「袋体40」は、板状体30を挿着する部材である。袋体40は、施工側面側が閉塞されており、加熱面側は開口している。袋体40の長さは、板状体30の挿着方向の長さよりも長い。こうすることで、後述のライニング施工において、袋体40のみを引っ張ることで、被覆材20を引き抜くことができる。また、袋体40によりブランケット積層体の角部を保護することができる。
更に、図3に示すように、袋体40がブランケット積層体50の加熱面50b全体を覆うことにより、加熱面50bからのブランケット繊維の粉塵を防ぐと共に、工業炉内の汚れを防ぐことができる。
袋体40の材質は、特に限定されないが、摩擦係数の小さな滑りやすい材質であることが好ましい。滑りやすい材質であれば、後述の被覆材の引き抜きが、し易くなる。
袋体40の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、及びポリエチレンテレフタレートのうちのいずれかを用いることができる。
袋体40の素材であるシートの厚さは、特に限定されないが、被覆材を引き抜くときに必要な強度があればよく、袋体40の材質がポリエチレンであり、袋体を引っ張って被覆材を引き抜く場合には、100~120μmが好ましい。シートの厚さが100μm未満では、薄くなるに従ってシートの引張強度が小さくなり、120μmを超えてもよいが120μmあれば十分である。
また、袋体40は、複数枚の袋を重ねて構成してもよい。例えば、シート厚30μmの袋を4枚重ねて120μmのシート厚の袋体40を形成してもよい。また、シート厚50μmの袋を2枚重ねて100μmのシート厚の袋体40を形成することもできる。
【0015】
「梱包体10」は、被覆材20で被覆されたブランケット積層体50を積層方向に加圧して形成される。積層方向の圧縮率は、特に限定はないが、65~80%であることが好ましく、通常67.5%である。例えば、圧縮前の積層方向400mmのブランケット積層体であれば、圧縮後は積層方向270mmのブランケット積層体を備えた梱包体10となる。
【0016】
「結束部材60」は、梱包体10を緊締保持する部材である。結束部材は梱包体10を緊締保持することができれば、特に限定はなく、バンド、紐、縄などを用いることができる。これらの中でも、扁平状のバンドであれば、結束しやすく、切断により緊締を解除しやすい。例えば、ポリプロピレン製の結束バンドであれば好適に使用できる。
【0017】
梱包体10を結束部材60で緊締保持することにより、図1に示す繊維質断熱材ブロック1が形成される。
【0018】
[1-2]繊維質断熱材ブロック1を用いた工業炉のライニング施工方法
繊維質断熱材ブロック1を用いた工業炉のライニング施工方法は、工業炉の炉殻内面90aに複数の繊維質断熱材ブロック1を固着する第1工程と、結束部材60の緊締を解除する第2工程と、被覆材20を引き抜く第3工程と、を備えている。
炉殻90は、図4(a)に示すように、鉄皮91と、鉄皮91に被覆形成したブランケット92から構成されている。そして、鉄皮91に接合されたボルト93が炉殻内面90aから突設している。ここで、ブランケット92は鉄皮91に被覆形成しない場合もあるし、ブランケット92の代替品としてキャスタブル等を被覆形成する場合もある。
【0019】
(1)第1工程
図4(a)に示すように、炉殻内面90aのボルト93に繊維質断熱材ブロック1の取り付け部材80に形成されたボルト孔80hを貫通させる。そして、紙管85から所定の工具でナット94を挿入し、図4(b)に示すように、ボルト93に螺合することにより、複数の繊維質断熱材ブロック1を、炉殻内面90aに固着する。
(2)第2工程
図4(b)に示すように、それぞれの繊維質断熱材ブロック1において、梱包体を緊締していた結束部材(結束バンド)60を解除する。例えば、結束部材60を切断することで緊締を解除することができる。このように緊締を解除したそれぞれの繊維質断熱材ブロック1は、圧縮されていた積層体50が解放されて積層方向に拡張する。そうすると、近接した梱包体10の被覆材20同士が押圧固定された状態となる。
ここで、緊締を解除した結束部材60は、引き抜く等して、除去してもよいし、被覆材20に纏わりついたままであってもよい。
(3)第3工程
図5(a)に示すように、板状体30が挿着された被覆材20を袋体40を引っ張ることにより、被覆材20を引き抜く。例えば、図5(b)に示すように、両手で袋体40に開口端部を把持して引っ張ることができる。この際、結束部材60も袋体40に纏わりついたまま同時に引き抜かれる場合もある。あるいは、袋体40を引き抜いた後、残った結束部材60を除去してもよい。
このように、袋体40を引き抜くという簡易な構成で、工業炉の炉殻内面90aに複数の繊維質断熱材ブロック1を施工することができ、作業効率を高めることができる。
【0020】
実施形態1の変形例として、図2(b)に示すように、袋体40に代えて二つ折りシート43を用いることができる。すなわち、変形例に係る被覆材23は、板状体30と、板状体30と板状体30を挿着する二つ折りシート43と、からなる。変形例に係る被覆材23は、被覆材20の袋体40において、両側面が開口されている点のみ相違するため、被覆材23を使用した梱包体、及びこの梱包体から構成される繊維質断熱材ブロックは、実施形態1に係る繊維質断熱材ブロック1と略同様の作用効果を奏することができる。そして、被覆材23を使用した断熱材ブロックを用いた、工業炉のライニング施工方法についても、実施形態1と同様の構成、作用効果を奏することができる。
二つ折りシート43の材質、厚さ、その他の構成及び作用効果については、袋体40と同様である。
【0021】
[実施形態2]
[2―1]繊維質断熱材ブロック2
実施形態2に係る繊維質断熱材ブロック2は、図6に示すように、一対の被覆材21で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成された梱包体11と、梱包体11を緊締保持する結束部材60と、を備えている。
【0022】
「梱包体11」は、被覆材21で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成される。
実施形態1に係る梱包体10との相違は、被覆材20に代えて、被覆材21とした点である。
実施形態1の被覆材20に係る袋体40は、施工側面側が閉塞され、加熱面側は開口しているが、実施形態2に係る被覆材21に係る袋体41は、施工側面側、加熱面側のいずれも閉塞された密閉状態としている。袋体41の長さは板状体30の挿着方向の長さと略同一である。こうすることで、被覆材21の袋体41から板状体30が脱落することがないため、運搬、保管に便利である。
【0023】
梱包体11を結束部材60で緊締保持することにより、図6に示す繊維質断熱材ブロック2が形成される。
その他の構成、及び作用効果は、実施形態1の繊維質断熱材ブロック1と同様である。
【0024】
[2-2]繊維質断熱材ブロック2を用いた工業炉のライニング施工方法
繊維質断熱材ブロック2を用いた工業炉のライニング施工方法において、第1工程及び第2工程は、実施形態1と同様である。
第3工程を図7(a)、(b)に示す。図7(a)は、繊維質断熱材ブロック2から結束部材60が除去されて、梱包体11のみが炉殻内面90aに固着されている状態である。そして、被覆材21の袋体41の加熱面側を引き裂いて板状体30を挟持具95で挟持した様子を示す。
次いで、図7(b)に示すように、挟持具95で板状体30を引き抜くことにより、板状体30を除去することができる。その後、袋体41を引き抜くことにより被覆材21が除去される。
このように、袋体41から板状体30を引き抜くという簡易な方法を採用することで、工業炉の炉殻内面90aに複数の繊維質断熱材ブロック1を施工することができ、作業効率を高めることができる。
その他の構成、及び作用効果は、実施形態1に係る工業炉のライニング施工方法と同様である。
【0025】
実施形態2の変形例として、袋体41の施工面側のみ閉塞され、加熱面側が開口された袋体(不図示)を使用することもできる。そうすると、前記[2-2]工業炉のライニング施工方法において、袋体41の加熱面側を引き裂くことなく、板状体30を引き抜くことができる。
【0026】
[実施形態3]
[3―1]繊維質断熱材ブロック3
実施形態3に係る繊維質断熱材ブロック3は、図8(a)に示すように、被覆材25で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成された梱包体15と、梱包体15を緊締保持する結束部材60と、を備えている。
【0027】
「梱包体15」は、被覆材25で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成される。
【0028】
「被覆材25」は、折曲自在な一対の板状体35と、板状体35を挿着する袋体40と、からなり、板状体35が袋体40を介して、ブランケット積層体50の加熱面50b及び加圧面50cに当接する。
「板状体35」は、加圧面50cに当接する加圧面当接部35aと、加圧面当接部35aと略直角に折り曲げられ、加熱面50bに当接する加熱面当接部35bとからなる。
一対の板状体35は、図8(a)に示すように一対の加熱面当接部35b同士が離れていて、加熱面50bを被覆しない部分があってもよいが、加熱面当接部35b同士が重なり合うように形成してもよい。
【0029】
[3-2]繊維質断熱材ブロック3を用いた工業炉のライニング施工方法。
繊維質断熱材ブロック3を用いた工業炉のライニング施工方法においては、第1工程、第2工程は、第1実施形態と同様である。
第3工程を図8(b)に示す。図8(b)は、繊維質断熱材ブロック3から結束部材60が除去されて、梱包体15のみが炉殻内面90aに固着されている状態である。そして、加熱面50bを被覆していた被覆材25を起立させて、板状体35の加熱面当接部35bが加圧面当接部35aと略同一平面となるようにする。
次いで袋体40を引き抜くことにより被覆材25が除去される。
このように、袋体40を引き抜くという簡易な方法を採用することで、工業炉の炉殻内面90aに複数の繊維質断熱材ブロック3を施工することができ、作業効率を高めることができる。
その他の構成、及び作用効果は、実施形態1に係る工業炉のライニング施工方法と同様である。
【0030】
[実施形態4]
[4―1]繊維質断熱材ブロック4
実施形態4に係る繊維質断熱材ブロック4は、図9(a)に示すように、被覆材27で被覆されたブランケット積層体50を、積層方向に加圧して形成された梱包体17と、梱包体17を緊締保持する結束部材60と、を備えている。
実施形態3に係る梱包体15との相違は、被覆材25に代えて、被覆材27とした点である。
「被覆材27」は、実施形態3に係る板状体35を袋体45に挿着して形成されている。袋体45は、板状体35のうちの加圧面当接部35aのみが挿着される長さであり、加熱面当接部35bは挿着されない。すなわち、板状体35は、ブランケット積層体50の加圧面50cのみを被覆する袋体45を介して、加熱面50b及び加圧面50cに当接する。
板状体35についてのその他の構成及び作用効果は、実施形態3に係る板状体35と同様である。
【0031】
[4-2]繊維質断熱材ブロック4を用いた工業炉のライニング施工方法。
繊維質断熱材ブロック4を用いた工業炉のライニング施工方法においては、第1工程、第2工程は、第1実施形態と同様である。
第3工程を図9(b)に示す。図9(b)は、繊維質断熱材ブロック4から結束部材60が除去されて、梱包体17のみが炉殻内面90aに固着されている状態である。そして、加熱面50bを被覆していた被覆材27を構成する板状体35のうちの加熱面当接部35bを起立させ、板状体35の加熱面当接部35bが加圧面当接部35aと略同一平面となるようにする。
そして、板状体35のうちの加熱面当接部35bを把持して、板状体35を引き抜く。次いで、袋体45を引き抜くことで、被覆材27が除去される。
このように、板状体35を引き抜くという簡易な方法を採用することで、工業炉の炉殻内面90aに複数の繊維質断熱材ブロック4を施工することができ、作業効率を高めることができる。
その他の構成、及び作用効果は、実施形態1に係る工業炉のライニング施工方法と同様である。
【0032】
[その他の実施形態]
実施形態1における変形例として、二つ折りシート43を用いた被覆材23の例(図2参照。)を挙げたが、実施形態2における袋体41、実施形態3における袋体40、実施形態4における袋体45についても、袋体の長さと略同一長さの二つ折りシートに代えた構成であっても、それぞれの実施形態の作用効果を奏することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用することができる。
【実施例0034】
実施品として、本願発明に係る繊維質断熱材ブロック1を作製し、ライニング施工の試験を行った。また、比較品として、被覆材が袋体を有しない板状体のみとした繊維質断熱材ブロックを作製して、ライニング施工の試験を行った。
(1)繊維質断熱材ブロックの作製
実施品としての繊維質断熱材ブロック1は、図1に示すように、アルミナ質繊維断熱材からなるブランケット(マフテック(株)社製、品番MLSブランケット6P)からなる積層体50を、被覆材20で被覆し、積層方向に加圧して梱包体10を形成し、梱包体10を結束部材60で緊締して形成した。具体的には、以下の手順で作製した。
ブランケット積層体50は、厚さ25mm、幅300mm、長さ2600mmのアルミナ繊維からなるブランケット(マフテック(株)社製、品番MLSブランケット6P)をつづら状に折り畳み8層に積層したブランケットを2組重ね合わせ、16層に積層して形成した。2組のブランケットの間には、後述のボルトにナットを取着するために用いる紙筒85を挿着した。更に、施工面側には取付金具80を取着した。
被覆材20は、合板(9mm×290mm×290mm)からなる板状体30を、シート厚100μmのポリエチレン樹脂製の袋体40(幅350mm、長さ465mm)(吉忠化学工業(株)社製、品番ポリ袋0.1×350×465)に挿着し、幅方向の板状体30より長い部分は、挿着された板状体30側に折り返して粘着テープで係止した。長手方向は板状体30を閉塞端まで挿着するようにして、開口端側に板状体30が挿入されていない部分を約175mm残した。
そして、積層体50の積層方向の両側面(加圧面)を一対の被覆材20で袋体40の閉塞部が施工側面側になるようにし、袋体40の板状体30が挿入されていない部分を、加熱面側に折り曲げて被覆し、積層方向に加圧して梱包体10を形成した。加圧方向の積層体50の厚さは、加圧前に比べ、約67.5%まで圧縮された。加圧後の積層体の厚さは約270mmであった。
そして、結束部材60としてのポリプロピレン製の結束バンドで梱包体10の上下2か所を緊締保持して、実施品としての繊維質断熱材ブロック1を作製した。
比較品としての繊維質断熱材ブロックは、被覆材として、袋体40を使用しないで板状体30のみとした。その他の構成は、実施品と同一とした。
【0035】
(2)ライニング施工の試験
図10(a)に示すように、4枚の側板と後方板からなる厚さ3.2mmの鉄板からなる炉殻を模した容器体97(600mm×300mm×300mm)を作製し、不動の基台(不図示)に確実に固定した。
この容器体97の後方板には2本のボルト93が固着してある。
同図(b)に示すように、2個の繊維質断熱材ブロック1を用意して容器体97に搬入し、それぞれ、紙筒85からナット(不図示)を挿入して、取付金具80を介して、ボルト93に螺合することにより、繊維質断熱材ブランケット1を後方板に、ブランケットの折目方向を揃えたソルジャー配列にして固着した。以上が第1工程である。
そして、第2工程として、結束バンド60を切断した。
次いで、第3工程として、それぞれの2個の被覆材の袋体40の端部を両手で把持して、板状体30の挿着されている被覆材4個を引き抜いた。
更に、同図(c)に示す、ブランケットの折目方向を交互にした市松配列の場合についても同様の試験を行った。
そして、比較品についても、実施品と同様に2個用意して、実施品と同様、ソルジャー配列及び市松配列についてライニング施工の試験を行った。但し、板状体30の引き抜きについては狭持具95を使用した。ここで、挟持具95としては、プライヤーを使用した(以下同じ。)。
【0036】
(実施品の試験結果)
ソルジャー配列の4個の被覆材のいずれも、健康な成人男子一人で、40~50%程度の力の発揮で引き抜くことができた。また、市松配列の場合についても、4個の被覆材のいずれも、健康な成人男子一人で、40~50%程度の力の発揮で引き抜くことができた。
【0037】
(比較品の試験結果)
ソルジャー配列の4個の被覆材のいずれも、健康な成人男子一人の力ではプライヤーを使用しても引き抜くことができず、健康な成人男子二人の力を合わせて、なお且つ、各々が80~90%程度の力を発揮して、ようやくプライヤーを使用して引き抜くことができた。また、市松配列の場合についても、4個の被覆材のいずれも、健康な成人男子一人の力ではプライヤーを使用しても引き抜くことができず、健康な成人男子二人の力を合わせて、なお且つ、各々が80~90%程度の力を発揮して、ようやくプライヤーを使用して引き抜くことができた。
【符号の説明】
【0038】
1、2、3、4・・・繊維質断熱材ブロック
10、11、15、17・・・梱包体
20、21、23、25、27・・・被覆材
30、35・・・板状体
40、41、45・・・袋体
43・・・二つ折りシート
50・・・ブランケット積層体
50a・・・施工側面
50b・・・加熱面
50c・・・加圧面
60・・・結束部材
90a・・・炉殻内面
図1
図2
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