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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027509
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】溶接データの収集方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20240222BHJP
   G06N 20/10 20190101ALI20240222BHJP
【FI】
B23K31/00 M
B23K31/00 Z
G06N20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130374
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 将之
(72)【発明者】
【氏名】錦 尚志
(72)【発明者】
【氏名】永尾 剣一
(72)【発明者】
【氏名】中島 佳之
(72)【発明者】
【氏名】松原 敬信
(72)【発明者】
【氏名】山科 勇輔
(57)【要約】
【課題】シンプルかつ安価な構成で溶接状態の機械学習または評価に用いる溶接データを収集することができる溶接データの収集方法を提供する。
【解決手段】溶接データの収集方法は、溶接状態に影響を与える複数のパラメータからなり、少なくとも溶接対象の下地形状を表すパラメータを含む溶接データを収集する収集方法であって、前記溶接対象の溶接位置よりも溶接方向の上流側の温度を計測するステップと、前記下地形状を表すパラメータとして計測した前記温度に基づく値を入力した前記溶接データを取得するステップと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接状態に影響を与える複数のパラメータからなり、少なくとも溶接対象の下地形状を表すパラメータを含む溶接データを収集する収集方法であって、
前記下地形状を表すパラメータの一つとして、前記溶接対象の溶接位置よりも溶接方向の上流側の温度を計測するステップと、
前記下地形状を表すパラメータとして計測した前記温度に基づく値を入力した前記溶接データを取得するステップと、
を有する収集方法。
【請求項2】
前記溶接対象の前記温度は放射温度計により計測する、
請求項1に記載の収集方法。
【請求項3】
前記溶接データは、前記溶接状態を評価する学習モデルの学習用データである、
請求項1または2に記載の収集方法。
【請求項4】
前記学習モデルは、溶接状態が正常である期間に収集された学習用データを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データの異常度を評価する評価モデルである、
請求項3に記載の収集方法。
【請求項5】
前記学習モデルは、前記学習用データと、検査により検出した溶接欠陥の種類とを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データを説明変数とし、溶接欠陥の種類を目的変数とする欠陥推定モデルである、
請求項3に記載の収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接データの収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接品質を向上するための技術として、例えば、特許文献1には、撮像データを処理して得た溶接ビードの外観、ビードの余盛り高さ、ビード幅などのアーク溶接に関する物理量と、溶接速度や突き出し長などのアーク溶接条件とを機械学習して、撮像データから得られる物理量に基づいて、アーク溶接条件を調整して自動溶接を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6126174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、溶接対象(母材)および溶接ビードの形状を精密に計測する手段として、レーザ変位計が用いられる場合がある。しかしながら、レーザ変位計は高価であるため、溶接対象や溶接ビードなどの形状の計測に用いる溶接データを収集するためのコストが増大する。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、シンプルかつ安価な構成で溶接状態の機械学習または評価に用いる溶接データを収集することができる溶接データの収集方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、溶接データの収集方法は、溶接状態に影響を与える複数のパラメータからなり、少なくとも溶接対象の下地形状を表すパラメータを含む溶接データを収集する収集方法であって、前記下地形状を表すパラメータとして前記溶接対象の温度を計測するステップと、前記下地形状を表すパラメータとして計測した前記温度に基づく値を入力した前記溶接データを取得するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る溶接データの収集方法によれば、シンプルかつ安価な構成で溶接状態の機械学習または評価に用いる溶接データを収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る溶接データの収集システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る温度計測値の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る溶接データの収集方法の一例を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る溶接データの一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る学習用データを用いて構築された機械学習モデルの一例を示す第1の図である。
図6】本開示の一実施形態に係る学習用データを用いて構築された機械学習モデルの一例を示す第2の図である。
図7】本開示の一実施形態に係る溶接支援装置の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係る溶接データの収集方法について、図1図7を参照しながら説明する。
【0010】
(溶接データの収集システムの全体構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る溶接データの収集システムの全体構成を示す概略図である。
本実施形態に係る収集システム1は、図1に示すように、学習装置10と、溶接装置20と、データロガー30と、溶接支援装置90とを備える。
【0011】
溶接装置20は、溶接状態に影響を与える各種パラメータを調整するためのスイッチ、レバーなどの機器や、計器類が設けられた操作パネルを備える。溶接士は、溶接装置の操作パネルで各パラメータを調整しながら、電極210を有する溶接棒21を用いて溶接対象50の溶接を行う。これらパラメータは、例えば、溶接電流、溶接電圧、電極210の突き出し長などである。溶接状態は、溶接欠陥の有無や予兆を表す異常度などである。
【0012】
データロガー30は、溶接装置20および溶接部位付近などの各部に設けられたセンサが計測した複数のパラメータからなる溶接データを学習用データおよび評価用データとして収集する。データロガー30は、例えば、溶接装置20が備える電流計および電圧計により計測された溶接電流および溶接電圧や、放射温度計40が計測した温度などのパラメータからなる学習用データを収集する。また、データロガー30は、溶接状態の評価時に、評価対象となる溶接データ(評価用データ)を収集する。
【0013】
放射温度計40は、溶接位置R1(電極210の位置)よりも溶接方向の上流側に所定距離W離れた位置である、計測位置R2に配置される。放射温度計40は、計測位置R2における溶接対象50および溶接ビード51の温度を計測する。
【0014】
学習装置10は、データロガー30が収集した学習用データに基づいて機械学習を行い、溶接状態を評価する学習モデルを構築する。学習装置10は、例えば、溶接データに基づいて、溶接状態の異常度を評価する評価モデルや、溶接欠陥の位置および種類を推定する欠陥推定モデルなどを構築する。
【0015】
溶接支援装置90は、データロガー30が取得した溶接データ(評価用データ)に基づいて溶接状態を監視し、現在の溶接状態を表示装置91に表示して、溶接士の溶接作業を支援する。
【0016】
(下地形状のトレンドについて)
溶接欠陥の発生には、下地形状の凸凹が影響している可能性が高いとの知見がある。このため、従来の技術では、レーザ変位計を用いて下地形状を計測し、この計測データを機械学習に用いる学習用データに含めていた。しかしながら、上述のように、レーザ変位計は高価であり、学習用データの収集コストを増加させる要因となっていた。
【0017】
図2は、本開示の一実施形態に係る温度計測値の一例を示す図である。
図2は、溶接欠陥の発生パスにおける余熱温度の推移を表すグラフである。図2の横軸は溶接対象50の溶接位置R1を表し、縦軸は計測位置R2の予熱温度を表す。なお、例えば、配管のような円環形状の構造物を回転させながら溶接する場合、溶接位置は構造物の回転角度で表してもよい。また、位置Rnは溶接欠陥の発生位置を表す。溶接欠陥は、溶接後の非破壊検査などにより検出されたものである。
【0018】
図2に示すように、溶接欠陥の発生位置Rnの手前で予熱温度に乱れが生じている。放射温度計40は、計測位置の表面が凸凹していると計測した温度にばらつきが生じる場合がある。したがって、予熱温度の乱れは、前回パスで形成した溶接ビード51の表面、すなわち下地形状に凸凹に影響されたものであると推測される。
【0019】
また、機械学習に必要な情報は絶対値ではなくトレンドである。つまり、高価なレーザ変位計を用いた精密な計測データではなく、安価な放射温度計40から得られる予熱温度のトレンドデータから下地形状の凸凹の有無を学習することが可能である。
【0020】
このような知見に基づき、本実施形態に係るデータロガー30は、放射温度計40の計測値を、計測位置R2における余熱温度を表すパラメータ、および計測位置R2における下地形状を表すパラメータのそれぞれの値として入力した学習用データを取得する。下地形状を表すパラメータは、下地形状の凸凹の有無を検出可能な特徴量であり、例えば予熱温度の計測値、または、予熱温度のばらつきの大きさである。
【0021】
なお、下地形状を表すパラメータに基づいて、直接的に下地形状の不良の有無を評価することも可能である。このため、データロガー30は、溶接状態の学習用データではなく、評価用データとして下地形状を表すパラメータを含む溶接データを取得してもよい。溶接支援装置90は、この評価用データに基づいて、下地形状の不良(凸凹)の有無を評価する。
【0022】
また、予熱温度の計測位置R2は溶接位置R1よりも上流側であるので、予熱温度の乱れ(下地形状の凸凹)は、実際に溶接欠陥が発生するよりも前に検出される。つまり、この予熱温度の乱れを含む学習用データを学習することにより、下地形状の凸凹のある位置を溶接する前に、溶接欠陥の予兆があることを検出可能な学習モデルを構築することができる。この学習モデルを用いることにより、溶接欠陥が実際に発生する前に、溶接作業を停止するなどの対応を行うことができる。なお、溶接位置R1と計測位置R2との間の距離Wは、このような溶接欠陥の予兆が検出された場合に、溶接士が溶接作業を停止するなどの対応を十分に行える距離に設定されることが望ましい。
【0023】
(溶接データの収集方法について)
図3は、本開示の一実施形態に係る溶接データの収集方法の一例を示すフローチャートである。
図4は、本開示の一実施形態に係る溶接データの一例を示す図である。
ここでは、図3図4を参照しながら、データロガー30が放射温度計40から取得した計測値を、予熱温度および下地形状のトレンドの2つのパラメータの値として入力した溶接データ(学習用データまたは評価用データ)を収集する処理の流れについて説明する。
【0024】
まず、放射温度計40は、計測位置R2における溶接対象50および溶接ビード51の温度を計測する(ステップS10)。
【0025】
次に、データロガー30は、図4に示すように、放射温度計40から取得した計測値を、溶接データTの「予熱温度」パラメータに入力する(ステップS11)。また、データロガー30は、放射温度計40から取得した計測値に基づく特徴量を、溶接データTの「下地形状のトレンド」パラメータに入力する(ステップS12)。
【0026】
また、データロガー30は、溶接データTの他のパラメータ(溶接電流、溶接電圧など)それぞれに溶接装置20の不図示のセンサ(電流計、電圧計など)が計測した計測値や特徴量をさらに入力した溶接データTを取得して記録する(ステップS13)。
【0027】
データロガー30は、溶接作業の開始から終了までの期間、図3の一連の処理を繰り返し実行して、溶接データTを収集する。
【0028】
(学習用データの利用について)
また、データロガー30が収集した溶接データT(以下、学習用データTとも記載する。)は、学習装置10が機械学習モデルを学習する際に利用される。
【0029】
図5は、本開示の一実施形態に係る学習用データを用いて構築された機械学習モデルの一例を示す第1の図である。
例えば、学習装置10は、図5に示すように、溶接状態が正常である期間に収集された学習用データT(正常データP)を学習したモデルであって、評価時に取得した溶接データXの異常度を評価する評価モデルM1を構築する。
【0030】
評価時には、評価モデルM1に含まれる正常データPのうち、溶接データXからk1番目(例えば、10番目)に近い正常データPk1を選択し、このk1番目の正常データPk1と溶接データXとの距離Dを、溶接データXの異常度として算出する。距離D(異常度)が所定の閾値を超えた場合、溶接欠陥が発生する可能性があると予測される。
【0031】
上述の学習用データによって学習された評価モデルM1を使用することにより、予熱温度のばらつきが大きい場合、すなわち、下地形状に凸凹がある場合には異常度が高くなり、溶接欠陥の発生を予測することができる。
【0032】
図6は、本開示の一実施形態に係る学習用データを用いて構築された機械学習モデルの一例を示す第2の図である。
また、学習装置10は、図6に示すように、学習用データと、検査により検出した溶接欠陥の位置および種類とに基づいて教師あり学習を行い、溶接欠陥の位置および種類を推定する欠陥推定モデルM2を構築してもよい。欠陥推定モデルM2は、評価時に取得した溶接データを説明変数として入力すると、溶接欠陥の位置および種類を目的変数として出力する。
【0033】
評価時には、欠陥推定モデルM2の推定結果に基づいて、図6に示すように溶接欠陥の位置および種類を表すヒートマップを生成してもよい。溶接欠陥1,2,3,4,…はそれぞれ異なる種類の溶接欠陥(例えば、面状欠陥、体積欠陥、ポロシティ、スラグ巻き込みなど)を表す。ヒートマップの縦軸は溶接の層およびパスを表し、横軸は溶接方向における位置を表す。例えば、配管のような円環形状の構造物を回転させながら溶接する場合、溶接方向における位置を構造物の角度で表してもよい。
【0034】
上述の学習用データによって学習した欠陥推定モデルM2を使用することにより、予熱温度のトレンドから、下地形状の凸凹に起因する溶接欠陥の発生を予測することができる。
【0035】
(評価用データの利用について)
また、データロガー30は、上記したように、溶接データTを学習用データとしてではなく、評価用データとして収集してもよい。データロガー30が収集した評価用データは、例えば溶接支援装置90が溶接状態を評価するために用いられる。
【0036】
図7は、本開示の一実施形態に係る溶接支援装置の機能構成を示す図である。
図7に示すように、溶接支援装置90は、取得部901と、判定部902と、出力部903とを備える。
【0037】
取得部901は、データロガー30から溶接データT(以下、評価用データTとも記載する。)を取得する。
【0038】
判定部902は、溶接データに基づいて、溶接対象50の溶接状態を評価する。具体的には、判定部902は、評価用データTに含まれる「下地形状のトレンド(予熱温度のトレンド)」パラメータに基づいて、下地形状の不良の有無を評価する。上記したように、下地形状に凸凹があると、予熱温度がばらつく傾向がある。このため、判定部902は、例えば、予熱温度のばらつきの大きさが所定の閾値を超える場合に、下地形状に不良(凸凹)があると判定する。
【0039】
出力部903は、判定部902の判定結果を表示装置91に出力(表示)して、溶接士に提示する。溶接士は、下地形状の不良を示す判定結果を参照して、溶接を一時停止する、下地形状の不良を解消する作業を実施するなどの対応を行う。
【0040】
なお、他の実施形態では、判定部902は、データロガー30から取得した評価用データTと、学習装置10が学習した学習モデルとを使って溶接状態を評価してもよい。例えば、判定部902は、評価用データTと溶接状態の異常度を評価する評価モデルM1とを使って、溶接状態の異常度を評価する。また、判定部902は、評価用データTと欠陥推定モデルM2とを使って溶接欠陥の種類および位置を推定する。
【0041】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る学習用データの収集方法は、溶接対象50の溶接位置R1よりも上流側の温度を計測するステップと、下地形状を表すパラメータとして計測した温度に基づく値を入力した溶接データTを取得するステップと、を有する。
【0042】
このようにすることで、温度の計測データを、下地形状を表すパラメータの値として入力した溶接データTを得ることができる。これにより、高価なレーザ変位計を省略したシンプルかつ安価な構成で、下地形状を表すパラメータを含む溶接データTを収集することができる。これにより、溶接データTの収集コストを低減することができる。
【0043】
また、溶接対象の温度は放射温度計40により計測する。
【0044】
このようにすることで、非接触で溶接対象の温度を計測することができる。
【0045】
また、放射温度計40は、溶接位置R1よりも溶接方向の上流側の計測位置R2に配置される。
【0046】
このようにすることで、溶接欠陥の発生前に下地形状の凸凹があることを検出可能なパラメータを含む溶接データTを収集することができる。このような溶接データTに基づいて学習した学習モデルを使用することにより、下地形状の凸凹のある箇所の溶接を実施する前に、この下地形状の凸凹に起因する異常や溶接欠陥を予測することが可能となる。また、溶接データTを評価用データとして使用することにより、下地形状の凸凹のある箇所の溶接を実施する前に、下地形状の不良を検出することが可能となる。
【0047】
また、溶接データTは、溶接状態を評価する学習モデルの学習用データTである。
【0048】
このようにすることで、シンプルかつ安価な構成で、下地形状を含む溶接状態を学習するための学習用データTを収集することができる。
【0049】
また、学習モデルは、溶接状態が正常である期間に収集された学習用データTを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データの異常度を評価する評価モデルM1である。
【0050】
このように、シンプルかつ安価な構成で収集した学習用データTに基づいて学習を行うことにより、評価モデルM1を構築するためのコストを低減することができる。また、学習用データTで学習した評価モデルM1を使用することにより、予熱温度のトレンドから、下地形状の凸凹の有無を異常度に反映させて評価することができる。
【0051】
また、学習モデルは、学習用データと、検査により検出した溶接欠陥の位置および種類とを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データを説明変数とし、溶接欠陥の位置および種類を目的変数とする欠陥推定モデルである。
【0052】
このように、シンプルかつ安価な構成で収集した学習用データTに基づいて学習を行うことにより、欠陥推定モデルM2を構築するためのコストを低減することができる。また、学習用データTで学習した欠陥推定モデルM2を使用することにより、予熱温度のトレンドから、下地形状の凸凹に起因する溶接欠陥の位置および種類を推定することができる。
【0053】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0054】
<付記>
上述の実施形態に記載の溶接データの収集方法は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)本開示の第1の態様によれば、溶接データの収集方法は、溶接状態に影響を与える複数のパラメータからなり、少なくとも溶接対象50の下地形状を表すパラメータを含む溶接データTを収集する収集方法であって、下地形状を表すパラメータの一つとして、溶接対象50の溶接位置よりも溶接方向の上流側の温度を計測するステップと、下地形状を表すパラメータとして計測した温度に基づく値を入力した溶接データTを取得するステップと、を有する。
【0056】
このようにすることで、放射温度計40の計測データに基づく値を、予熱温度と下地形状の2つの異なるパラメータの値として入力した学習用データTを得ることができる。これにより、高価なレーザ変位計を省略したシンプルかつ安価な構成で、学習用データTを収集することができる。これにより、学習用データTの収集コストを低減することができる。また、溶接位置よりも上流側の温度を計測することにより、溶接欠陥の発生前に下地形状の凸凹があることを検出可能なパラメータを含む溶接データTを収集することができる。
【0057】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る収集方法において、溶接対象の温度は放射温度計により計測する。
【0058】
このようにすることで、非接触で溶接対象の温度を計測することができる。
【0059】
(3)本開示の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る収集方法において、溶接データTは、溶接状態を評価する学習モデルの学習用データTである。
【0060】
このようにすることで、シンプルかつ安価な構成で、下地形状を含む溶接状態を学習するための学習用データTを収集することができる。
【0061】
(4)本開示の第4の態様によれば、第3の態様に係る収集方法において、学習モデルは、溶接状態が正常である期間に収集された学習用データTを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データの異常度を評価する評価モデルM1である。
【0062】
このように、シンプルかつ安価な構成で収集した学習用データTに基づいて学習を行うことにより、評価モデルM1を構築するためのコストを低減することができる。また、学習用データTで学習した評価モデルM1を使用することにより、予熱温度のトレンドから、下地形状の凸凹の有無を異常度に反映させて評価することができる。
【0063】
(5)本開示の第5の態様によれば、第3の態様に係る収集方法において、学習モデルは、学習用データTと、検査により検出した溶接欠陥の種類とを学習して構築されたモデルであって、評価時に取得した溶接データを説明変数とし、溶接欠陥の種類を目的変数とする欠陥推定モデルM2である。
【0064】
このように、シンプルかつ安価な構成で収集した学習用データTに基づいて学習を行うことにより、欠陥推定モデルM2を構築するためのコストを低減することができる。また、学習用データTで学習した欠陥推定モデルM2を使用することにより、予熱温度のトレンドから、下地形状の凸凹に起因する溶接欠陥の位置および種類を推定することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 溶接データの収集システム
10 学習装置
20 溶接装置
21 溶接棒
210 電極
30 データロガー
40 放射温度計
90 溶接支援装置
91 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7