(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027519
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130393
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】三浦 満
(72)【発明者】
【氏名】米倉 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】本橋 叡
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】素体に単一のコイル導体が内蔵された2端子型のコイル部品において接続抵抗を低減する。
【解決手段】コイル部品100は、素体110に埋め込まれたコイル導体と、コイル導体の一端に接続され、実装面S0及び側面S1,S3に露出するバンプ導体131と、実装面S0及び側面S2,S3に露出するバンプ導体132と、実装面S0及び側面S1,S4に露出するダミーバンプ導体141と、実装面S0及び側面S2,S4に露出するダミーバンプ導体142と、バンプ導体131とダミーバンプ導体141を接続する導電性樹脂層121と、バンプ導体132とダミーバンプ導体142を接続する導電性樹脂層122とを備える。バンプ導体131,132の側面部分は、少なくとも一部が導電性樹脂層121,122で覆われておらず、この部分において接続抵抗が低減される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面、前記実装面に対して垂直であり、互いに平行な第1及び第2の側面、並びに、前記実装面及び前記第1の側面に対して垂直であり、互いに平行な第3及び第4の側面を有する素体と、
前記素体に埋め込まれたコイル導体と、
前記コイル導体の一端に接続され、前記実装面、前記第1の側面及び前記第3の側面に露出する第1のバンプ導体と、
前記コイル導体の他端に接続され、前記実装面、前記第2の側面、並びに、前記第3及び第4の側面の一方に露出する第2のバンプ導体と、
前記実装面、前記第1の側面及び前記第4の側面に露出する第1のダミーバンプ導体と、
前記実装面、前記第2の側面、並びに、前記第3及び第4の側面の他方に露出する第2のダミーバンプ導体と、
前記実装面に設けられ、前記第1のバンプ導体と前記第1のダミーバンプ導体を接続する第1の導電性樹脂層と、
前記実装面に設けられ、前記第2のバンプ導体と前記第2のダミーバンプ導体を接続する第2の導電性樹脂層と、を備え、
前記第1のバンプ導体及び前記第1のダミーバンプ導体の前記第1、第3及び第4の側面に露出する第1の側面部分は、少なくとも一部が前記第1の導電性樹脂層で覆われておらず、
前記第2のバンプ導体及び前記第2のダミーバンプ導体の前記第2、第3及び第4の側面に露出する第2の側面部分は、少なくとも一部が前記第2の導電性樹脂層で覆われていない、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の側面部分は、一部が前記第1の導電性樹脂層で覆われており、
前記第2の側面部分は、一部が前記第2の導電性樹脂層で覆われている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の側面部分のうち前記第1の導電性樹脂層で覆われている部分の高さは、前記第1の側面部分のうち前記第1の導電性樹脂層で覆われていない部分の高さよりも小さく、
前記第2の側面部分のうち前記第2の導電性樹脂層で覆われている部分の高さは、前記第2の側面部分のうち前記第2の導電性樹脂層で覆われていない部分の高さよりも小さい、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の導電性樹脂層は、前記第1の側面部分のうち、前記第1の側面に露出する部分を覆うことなく、前記第3及び第4の側面に露出する部分を覆うことによって、前記第1のバンプ導体及び前記第1のダミーバンプ導体上においてそれぞれL字型電極を構成し、
前記第2の導電性樹脂層は、前記第2の側面部分のうち、前記第2の側面に露出する部分を覆うことなく、前記第3及び第4の側面に露出する部分を覆うことによって、前記第2のバンプ導体及び前記第2のダミーバンプ導体上においてそれぞれL字型電極を構成する、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の導電性樹脂層は、前記第1の側面部分のうち、前記第1の側面に露出する部分を覆う厚みよりも、前記第3及び第4の側面に露出する部分を覆う厚みの方が厚く、
前記第2の導電性樹脂層は、前記第2の側面部分のうち、前記第2の側面に露出する部分を覆う厚みよりも、前記第3及び第4の側面に露出する部分を覆う厚みの方が厚い、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の側面部分のうち、前記第1の側面に露出する部分の幅と、前記第3及び第4の側面に露出する部分の幅が等しく、
前記第2の側面部分のうち、前記第2の側面に露出する部分の幅と、前記第3及び第4の側面に露出する部分の幅が等しい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1及び第2の導電性樹脂層、並びに、前記第1及び第2の側面部分を覆う表面処理層をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記表面処理層は、Ni及びSnを含む積層膜からなる、請求項7に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、素体に単一のコイル導体が内蔵された2端子型のコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体に単一のコイル導体が内蔵された2端子型のコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されているように、この種のコイル部品においては、一対の外部端子が素体の5面を覆う、いわゆる5面電極が用いられることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、5面電極は一般的に導電性樹脂などからなることから、ハンダなどを用いて回路基板に実装した場合に、回路基板に対する接続抵抗が高くなるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、素体に単一のコイル導体が内蔵された2端子型のコイル部品において、接続抵抗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、実装面、実装面に対して垂直であり、互いに平行な第1及び第2の側面、並びに、実装面及び第1の側面に対して垂直であり、互いに平行な第3及び第4の側面を有する素体と、素体に埋め込まれたコイル導体と、コイル導体の一端に接続され、実装面、第1の側面及び第3の側面に露出する第1のバンプ導体と、コイル導体の他端に接続され、実装面、第2の側面、並びに、第3及び第4の側面の一方に露出する第2のバンプ導体と、実装面、第1の側面及び第4の側面に露出する第1のダミーバンプ導体と、実装面、第2の側面、並びに、第3及び第4の側面の他方に露出する第2のダミーバンプ導体と、実装面に設けられ、第1のバンプ導体と第1のダミーバンプ導体を接続する第1の導電性樹脂層と、実装面に設けられ、第2のバンプ導体と第2のダミーバンプ導体を接続する第2の導電性樹脂層とを備え、第1のバンプ導体及び第1のダミーバンプ導体の第1、第3及び第4の側面に露出する第1の側面部分は、少なくとも一部が第1の導電性樹脂層で覆われておらず、第2のバンプ導体及び第2のダミーバンプ導体の第2、第3及び第4の側面に露出する第2の側面部分は、少なくとも一部が第2の導電性樹脂層で覆われていない。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2の側面部分の少なくとも一部が第1及び第2の導電性樹脂層で覆われていないことから、この部分において接続抵抗を低減することが可能となる。しかも、第1及び第2のダミーバンプ導体を備えていることから、4端子型のコイル部品と同等の実装特性を得ることが可能となる。
【0008】
本発明において、第1の側面部分は一部が第1の導電性樹脂層で覆われており、第2の側面部分は一部が第2の導電性樹脂層で覆われていても構わない。これよれば、回路基板に実装した後における耐応力緩和特性が高められる。この場合、第1の側面部分のうち第1の導電性樹脂層で覆われている部分の高さは、第1の側面部分のうち第1の導電性樹脂層で覆われていない部分の高さよりも小さく、第2の側面部分のうち第2の導電性樹脂層で覆われている部分の高さは、第2の側面部分のうち第2の導電性樹脂層で覆われていない部分の高さよりも小さくても構わない。これよれば、導電性樹脂層による接続抵抗の増加を抑えることが可能となる。
【0009】
本発明において、第1の導電性樹脂層は、第1の側面部分のうち、第1の側面に露出する部分を覆うことなく、第3及び第4の側面に露出する部分を覆うことによって、第1のバンプ導体及び第1のダミーバンプ導体上においてそれぞれL字型電極を構成し、第2の導電性樹脂層は、第2の側面部分のうち、第2の側面に露出する部分を覆うことなく、第3及び第4の側面に露出する部分を覆うことによって、第2のバンプ導体及び第2のダミーバンプ導体上においてそれぞれL字型電極を構成しても構わない。これよれば、第1及び第2の側面部分のうち、第1又は第2の導電性樹脂層で覆われることなく露出する面積を十分に確保することができる。
【0010】
本発明において、第1の導電性樹脂層は、第1の側面部分のうち、第1の側面に露出する部分を覆う厚みよりも、第3及び第4の側面に露出する部分を覆う厚みの方が厚く、第2の導電性樹脂層は、第2の側面部分のうち、第2の側面に露出する部分を覆う厚みよりも、第3及び第4の側面に露出する部分を覆う厚みの方が厚くても構わない。これによれば、実装位置の回転ずれが生じにくくなる。
【0011】
本発明において、第1の側面部分のうち、第1の側面に露出する部分の幅と、第3及び第4の側面に露出する部分の幅が等しく、第2の側面部分のうち、第2の側面に露出する部分の幅と、第3及び第4の側面に露出する部分の幅が等しくても構わない。これによれば、実装位置の回転ずれが生じにくくなる。
【0012】
本発明によるコイル部品は、第1及び第2の導電性樹脂層、並びに、第1及び第2の側面部分を覆う表面処理層をさらに備えていても構わない。これよれば、ハンダに対する濡れ性を高めることが可能となる。表面処理層は、Ni及びSnを含む積層膜であっても構わない。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、素体に単一のコイル導体が内蔵された2端子型のコイル部品において、接続抵抗を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品100の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、コイル部品100の外観を示す略斜視図である。
【
図3】
図3は、導体層L1のパターン形状を示す略平面図である。
【
図4】
図4は、導体層L2のパターン形状を示す略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層L3のパターン形状を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層L4のパターン形状を示す略平面図である。
【
図7】
図7は、導体層L5のパターン形状を示す略平面図である。
【
図8】
図8は、コイル部品100のYZ断面図である。
【
図9】
図9は、変形例によるコイル部品のYZ断面図である。
【
図10】
図10は、コイル部品100が実装される回路基板200の部分的な略平面図である。
【
図11】
図11は、回路基板200に実装されたコイル部品100の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態によるコイル部品100の外観を示す略斜視図であり、互いに異なる方向から見た状態を示している。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるコイル部品100は、素体110及びその表面を覆う一対の導電性樹脂層121,122を備えている。素体110は、金属磁性体などからなる磁性フィラーと樹脂バインダを含む複合磁性材料からなり、その内部に後述するコイル導体が埋め込まれている。素体110の表面は、XY平面を構成する実装面S0及び上面S5と、YZ面を構成する側面S1,S2と、XZ面を構成する側面S3,S4とを有している。実使用時においては、実装面S0が回路基板の表面と向かい合うよう実装される。このように、側面S1~S4は実装面S0に対して垂直であり、側面S1,S2は互いに平行であり、側面S3,S4は互いに平行である。側面S1,S2と側面S3,S4は互いに垂直である。
【0018】
素体110の表面には、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142が露出している。このうち、バンプ導体131は素体110に埋め込まれたコイル導体の一端に接続され、バンプ導体132は素体110に埋め込まれたコイル導体の他端に接続されている。ダミーバンプ導体141,142は、コイル導体には直接接続されず、それぞれ導電性樹脂層121,122を介してバンプ導体131,132に接続されている。ここで、バンプ導体131は実装面S0及び側面S1,S3からなる3面に露出し、バンプ導体132は実装面S0及び側面S2,S3からなる3面に露出する。また、ダミーバンプ導体141は実装面S0及び側面S1,S4からなる3面に露出し、ダミーバンプ導体142は実装面S0及び側面S2,S4からなる3面に露出する。
【0019】
導電性樹脂層121,122は、銀ペーストのように、金属粉末と樹脂バインダを含む導電性材料からなり、素体110の少なくとも実装面S0に設けられている。このうち、導電性樹脂層121はバンプ導体131とダミーバンプ導体141を接続し、導電性樹脂層122はバンプ導体132とダミーバンプ導体142を接続する。
図1及び
図2に示す例では、導電性樹脂層121,122の一部が素体110の側面S3,S4を覆っているが、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の表面のうち、側面S1~S4に露出する側面部分の少なくとも一部は、導電性樹脂層121,122で覆われることなく露出している。ここで、バンプ導体131の側面部分は側面S1,S3に露出する部分を指し、バンプ導体132の側面部分は側面S2,S3に露出する部分を指し、ダミーバンプ導体141の側面部分は側面S1,S4に露出する部分を指し、ダミーバンプ導体142の側面部分は側面S2,S4に露出する部分を指す。
【0020】
図1及び
図2に示す例では、導電性樹脂層121は、バンプ導体131及びダミーバンプ導体141のうち側面S1に露出する部分を覆っていない。同様に、導電性樹脂層122は、バンプ導体132及びダミーバンプ導体142のうち側面S2に露出する部分を覆っていない。これにより、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の側面部分のうち、導電性樹脂層121,122で覆われることなく露出する面積を十分に確保することができる。この場合、導電性樹脂層121,122は、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142上において、いわゆるL字型電極を構成する。
【0021】
或いは、バンプ導体131及びダミーバンプ導体141のうち側面S1に露出する部分の一部を導電性樹脂層121が覆い、バンプ導体132及びダミーバンプ導体142のうち側面S2に露出する部分の一部を導電性樹脂層122が覆う構造であっても構わない。この場合、導電性樹脂層121の厚みは、側面S1に露出するバンプ導体131及びダミーバンプ導体141を覆う部分の厚みよりも、側面S3,S4に露出するバンプ導体131及びダミーバンプ導体141を覆う部分の厚みの方が厚くても構わない。同様に、導電性樹脂層122の厚みは、側面S2に露出するバンプ導体132及びダミーバンプ導体142を覆う部分の厚みよりも、側面S3,S4に露出するバンプ導体132及びダミーバンプ導体142を覆う部分の厚みの方が厚くても構わない。これよれば、後述する実装位置の回転ずれが生じにくくなる。
【0022】
素体110の内部には、例えば5層の導体層L1~L5が埋め込まれており、これらの導体層によってコイル導体が構成される。導体層L1~L5は、銅(Cu)などからなり、少なくとも導電性樹脂層121,122よりも低抵抗な材料からなる。
図3~
図7は、それぞれ導体層L1~L5のパターン形状を示す略平面図である。
【0023】
図3に示すように、導体層L1は、コイルパターン10と接続パターン11~14を有している。コイルパターン10の外周端は、接続パターン11に接続されている。他の接続パターン12~14は面内でコイルパターン10には接続されておらず、面内で互いに独立している。
【0024】
図4に示すように、導体層L2は、コイルパターン20と接続パターン21~24を有している。コイルパターン20の内周端は、ビアホール65を介して、コイルパターン10の内周端に接続されている。接続パターン21~24は、面内でコイルパターン20には接続されておらず、面内で互いに独立しているとともに、それぞれビアホール61~64を介して接続パターン11~14に接続されている。
【0025】
図5に示すように、導体層L3は、コイルパターン30と接続パターン31~34を有している。コイルパターン30の外周端は、ビアホール75を介して、コイルパターン20の外周端に接続されている。接続パターン31~34は、面内でコイルパターン30には接続されておらず、面内で互いに独立しているとともに、それぞれビアホール71~74を介して接続パターン21~24に接続されている。
【0026】
図6に示すように、導体層L4は、コイルパターン40と接続パターン41~44を有している。コイルパターン40の内周端は、ビアホール85を介して、コイルパターン30の内周端に接続されている。また、コイルパターン40の外周端は、接続パターン42に接続されている。他の接続パターン41,43,44は、面内でコイルパターン40には接続されておらず、面内で互いに独立している。接続パターン41~44は、それぞれビアホール81~84を介して接続パターン31~34に接続されている。
【0027】
図7に示すように、導体層L5は、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142を有している。バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142は、それぞれビアホール91~94を介して接続パターン41~44に接続されている。
【0028】
このような構成により、コイルパターン10,20,30,40からなるコイル導体の一端及び他端がそれぞれバンプ導体131,132に接続されることになる。そして、
図1及び
図2に示したように、導電性樹脂層121を介してバンプ導体131とダミーバンプ導体141が互いに接続され、導電性樹脂層122を介してバンプ導体132とダミーバンプ導体142が互いに接続される。これにより、本実施形態によるコイル部品100は、単一のコイル導体が素体110に内蔵された2端子型のコイル部品であるものの、2つのダミーバンプ導体141,142を備えていることから、4端子型のコイル部品に類似した端子構造となる。
【0029】
図8は、本実施形態によるコイル部品100のYZ断面図である。
【0030】
図8に示すように、素体110から露出する導体層L1~L5の表面、並びに、導電性樹脂層121,122の表面は、表面処理層150で覆われている。表面処理層150は、ハンダに対する濡れ性を高める役割を果たし、例えば、Ni膜151とSn膜152の積層膜からなる。表面処理層150の一部は、導電性樹脂層121,122を介することなく、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の側面部分に直接形成されている。これにより、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の全面が比較的高抵抗な導電性樹脂層121,122で覆われている場合と比べ、表面処理層150とバンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の間の抵抗値が低減する。一方、導電性樹脂層121,122は、柔軟性が高いため、耐応力緩和特性を高める役割を果たす。
【0031】
また、本実施形態においては、導電性樹脂層121,122の一部が素体110の側面S3,S4に回り込んでおり、これによりバンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の側面部分の一部が導電性樹脂層121,122で覆われている。このような構造によれば、耐応力緩和特性がより高められる。この場合であっても、側面部分のうち導電性樹脂層121,122で覆われている部分のZ方向における高さH1は、側面部分のうち導電性樹脂層121,122で覆われていない部分のZ方向における高さH2よりも小さいことが好ましい。これにより、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142と表面処理層150の接触面積が十分に確保される。但し、本発明において、導電性樹脂層121,122の一部が素体110の側面S3,S4に回り込む点は必須でなく、
図9に示すYZ断面図のように、導電性樹脂層121,122が素体110の実装面S0にのみ設けられていても構わない。これよれば、接続抵抗がより低減される。
【0032】
図10は、本実施形態によるコイル部品100が実装される回路基板200の部分的な略平面図である。
【0033】
図10に示す回路基板200は、主面であるXY表面の大部分がソルダーレジスト210で覆われているとともに、ソルダーレジスト210から露出する一対のランドパターン201,202を有している。ランドパターン201,202は、それぞれコイル部品100の導電性樹脂層121,122と向かい合う部分である。
図10には、コイル部品100の実装位置が破線で示されている。
【0034】
このような構造を有する回路基板200に本実施形態によるコイル部品100を実装すると、部分的な断面図である
図11に示すように、ランドパターン201とバンプ導体131がハンダ220を介して接続される。図示しない別の断面においては、ランドパターン202とバンプ導体132がハンダ220を介して接続される。ここで、素体110の実装面S0側においては、導電性樹脂層121を介してハンダ220とバンプ導体131が接続される一方、バンプ導体131の側面部分においては、導電性樹脂層121を介することなく、ハンダ220とバンプ導体131が接続される。これにより、ハンダ220とバンプ導体131の間の接続抵抗が低減される。しかも、素体110の実装面S0側においては、柔軟性の高い導電性樹脂層121が存在していることから、回路基板200側からコイル部品100に応力が加わった場合であっても、導電性樹脂層121によって応力が緩和され、実装信頼性が高められる。
【0035】
また、素体110の側面S1~S4には、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142からなる4つの端子電極が露出することから、
図10において太線で示す4箇所のコーナー部にハンダ220のフィレットが形成される。これにより、4端子型のコイル部品と同等の実装特性が得られることから、実装位置の平面位置ずれや回転ずれなども生じにくい。回転ずれの防止効果は、実装面S0に露出するバンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の平面形状が正方形である場合により効果的となる。これは、実装面S0に露出するバンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の平面形状が正方形であれば、側面S1に露出するバンプ導体131のY方向における幅と側面S3に露出するバンプ導体131のX方向における幅が等しくなり、側面S2に露出するバンプ導体132のY方向における幅と側面S3に露出するバンプ導体132のX方向における幅が等しくなり、側面S1に露出するダミーバンプ導体141のY方向における幅と側面S4に露出するダミーバンプ導体141のX方向における幅が等しくなり、側面S2に露出するダミーバンプ導体142のY方向における幅と側面S4に露出するダミーバンプ導体142のX方向における幅が等しくなるからである。
【0036】
尚、素体110の側面S1~S4には、接続パターン11~14,21~24,31~34,41~44も露出するが、素体110の側面S1~S4上においては層間絶縁膜を介してこれらが分離されていることから、側面S1~S4に露出する接続パターン11~14,21~24,31~34,41~44にはハンダ220のフィレットは形成されにくい。これにより、ハンダ220のフィレットが必要以上に高くなることがないため、高密度実装が妨げられることもない。但し、個片化工程において生じる接続パターンの変形や、素体110の側面S1~S4に露出するビア導体の存在によって、側面S1~S4に露出する接続パターン11~14,21~24,31~34,41~44にもハンダ220のフィレットが形成されることがある。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品100によれば、電気的な接続特性と応力の緩和特性の両方を高めることができるとともに、実装時における実装位置の平面位置ずれや回転ずれを防止することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、バンプ導体131,132がいずれも素体110の側面S3に露出しているが、バンプ導体131,132及びダミーバンプ導体141,142の位置については特に限定されない。したがって、バンプ導体132とダミーバンプ導体142の位置を入れ替えることにより、バンプ導体131,132を互いに対角となる位置に配置しても構わない。
【符号の説明】
【0040】
10,20,30,40 コイルパターン
11~14,21~24,31~34,41~44 接続パターン
61~65,71~75,81~85,91~94 ビアホール
100 コイル部品
110 素体
121,122 導電性樹脂層
131,132 バンプ導体
141,142 ダミーバンプ導体
150 表面処理層
151 Ni膜
152 Sn膜
200 回路基板
201,202 ランドパターン
210 ソルダーレジスト
220 ハンダ
L1~L5 導体層
S0 実装面
S1~S4 側面
S5 上面