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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027540
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】自動給脂器
(51)【国際特許分類】
   F16N 11/10 20060101AFI20240222BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20240222BHJP
   F16N 29/04 20060101ALI20240222BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16N11/10
F16N29/00 E
F16N29/00 Z
F16N29/00 F
F16N29/04
F16N31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130423
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】312010308
【氏名又は名称】マフレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大徳 一美
(57)【要約】
【課題】本発明は以下の問題を解決するにある。1)長期にわたり常時連続的にかつ自動的にグリース給脂できるようにする。2)天候や気候に応じて適正な給脂量を供給できるようにする。3)自動給脂器のグリース残存量を目視可能にする。4)グリースの手差しによる作業を無くする。
【解決手段】空気中の水蒸気を吸収して膨張する粉体の膨張剤を膨張せしめて、グリースシリンダに充填したグリースを軸受けに給脂する自動給脂器であり、膨張剤の圧力でグリースシリンダが半径方向に膨張しても、ゴム性のシール板がポアソン変形せしめシール性能を維持可能にした。グリースを充填したグリース容器に吐出管を螺合する方法を具現化し、グリース容器内のグリースを膨張剤で加圧して軸受けに押し出す方法を具現化した。膨張剤カップにテーパを設けて膨張剤がグリース側に膨張しやすくした。グリースの残存量を目視可能にした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリースを膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースシリンダは吐出管を備えた天井面と弾性体からなるシール板により、グリース充填室が形成されており、前記膨張剤が膨張して前記シール板が加圧されポアソン比で半径方向に膨張してシール性が維持され、前記グリースが押し出されて軸受けに供給されることを特徴とする自動給脂器。
【請求項2】
グリースを膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはそれぞれフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースは弾性体からなるグリース容器に充填されて前記グリースシリンダに収納されており、前記グリース容器は雄ネジが設けられた排出管を備えており、前記グリースシリンダの天井板に吐出管が挿入されており、前記吐出管は、締め付けナット用雄ネジとプラグ用雌ネジと抜け止めナットと排出管用雌ネジを備えており、前記吐出管の前記排出管用雌ネジには前記グリース容器の前記排出管の前記雄ネジが螺合されており、前記吐出管の前記締め付けナット用雄ネジには締め付けナットと抜け止めナットが螺合され、該締め付けナットと前記抜け止めナットで前記天井板を締め付けることにより前記グリース容器が前記グリースシリンダに固定されていることを特徴とする自動給脂器。
【請求項3】
グリースを固形の膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはそれぞれフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースは弾性体からなるグリース容器に充填されて前記グリースシリンダに収納されており、前記グリース容器は雄ネジが設けられた排出管を備えており、前記グリースシリンダの天井板に吐出管が挿入されており、前記吐出管は、前記グリース容器の前記排出管用雌ネジを備えており、該排出管用雌ネジには前記排出管の前記雄ネジが螺合され、前記吐出管の下部端面と前記グリース容器の上面で前記グリース容器の前記天上板を挟んで前記グリース容器を支持しており、前記吐出管の上部にはプラグ用雌ネジが設けられていることを特徴とする自動給脂器。
【請求項4】
前記膨張剤シリンダの底面には吸気孔が設けられており、前記膨張剤は防水透湿性部材で被覆されており、更に該防水透湿性部材の外側は通気性材料で被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の自動給脂器。
【請求項5】
前記膨張剤は膨張剤カップに充填され前記膨張剤シリンダに収納されており、前記膨張剤カップは側面と底面に複数の吸気孔が設けられており、該膨張剤カップの開孔側外径が底面側外径より拡大するテーパ形状になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の自動給脂器。
【請求項6】
前記膨張剤カップには有底の加圧ピストンが被せられており、前記膨張剤が膨張して前記加圧ピストンにより前記グリースが押し上げられ軸受けに供給されることを特徴とする請求項5記載の自動給脂器。
【請求項7】
前記自動給脂器はグリース残量を示すレベル計を備えており、該レベル計は前記グリースの減少に伴い上昇移動する可動部材にワイヤが取付けられており、前記グリースシリンダの上部には前記ワイヤの通し孔が設けられており、前記ワイヤは前記通し孔を貫通して錘が取付けられており、前記可動部材の上昇に伴い前記錘が下降することにより前記グリースの残量を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の自動給脂器。
【請求項8】
前記レベル計の前記錘は前記グリースシリンダに固定された細長い透明なパイプの中に収納されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項7記載の自動給脂器。
【請求項9】
前記自動給脂器は電池を備えており、該電池には2本の電線を介してランプや発信器が取付けられており、前記ランプや発信器は前記自動給脂器の外側に配置されており、前記配線に互いに対向した接触端子を取付け、該接触端子を前記仕切り板に取付けたストライカーで接触させることにより、ランプや発信器に通電せしめることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の自動給脂器。

フォームの始まり
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張剤の連続的な膨張を利用してシリンダに封入したグリースなどの潤滑油を加圧して、軸受けなどに給脂するための自動給脂器に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の軸受けにグリースなどの潤滑油を供給する方法として、定期的にグリースガンで給脂する方法や電動ポンプによる集中給脂方法がある。グリースガンは軸受けごとに手差し作業となり作業効率が悪いばかりでなく、グリースニップルには塵埃が付着するので給脂の度にコンタミ低下の恐れがあった。電動による自動給脂では作業効率は改善されるが電気制御、配管設備を要し装置全体が高価・複雑になっていた。軸受けのグリースは給脂直後から劣化、漏れ、水分やコンタミの浸入などが始まりトラブル原因が蓄積されるので、常時連続的に給脂する自動給脂器の実現が望まれている。自動給脂器の具体例として以下の方法が紹介されている。
【0003】
特開平10-38193号広報において、潤滑油が弾力性を有する潤滑剤容器に収納され、該潤滑剤容器が膨張剤を収納した膨張剤容器に収納され、該膨張剤容器の吸湿孔を介した湿分が膨張剤に供給されることにより膨張剤を膨張せしめて潤滑油を軸受けに供給する潤滑油自動供給装置が示されている。この方法においては、弾性力を有する潤滑剤容器と収納本体のシールが困難であり潤滑油が収納本体に逆流する問題があった。また仕切り板で潤滑油と膨張剤を仕切る方法が例示されているが、膨張剤の膨張や加圧された潤滑剤により収納本体が半径方向に変形し潤滑油が膨張剤側に洩れ、圧力が上昇しない問題や潤滑剤と膨張剤が混在しコンタミ低下の問題があった。また、グリースの残量を目視できないので適当なタイミングで交換せざるをえずコスト高になっていた。
【0004】
特開平11-325393号広報において、固形膨張剤の膨張力でピストンを押し出してグリースを押し出す方法が示されている。この方法においては、1)膨張剤封入部が円錐形状のため膨張剤深さが浅くなり、油圧と2段ピストンで押し出しストロークを確保しているので構造が複雑で重くなっていた。2)グリース貯蔵部は第2のピストンで押圧され高圧となりフープ応力で半径方向に膨らむので、第2ピストンのOリングの膨張量が足りずグリースが洩れていた。
【0005】
特開2003-83497号広報において、ピストンの面積を押し付け部材の1.1倍以上にした自動給脂器が示されている。この方法においては、1)ピストンの径が大きくなり、ピストンが捏ねてスティッキングしていた、2)潤滑油収納シリンダの内径が大きいのでそれに応じてフープ応力による内径の広がりも大きくなり、ピストンのOリングのシール性が低下しグリース漏れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-38193号広報
【特許文献2】特開平11-325393号広報
【特許文献3】特開2003-83497号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以下の問題を解決するにある。1)シリンダに充填したグリースの漏れを防止し確実な給脂を具現化する。2)膨張剤の膨張力を効率的にグリースに伝え確実に軸受けに供給できるようにする。3)簡単な目視によりグリースの残存量が確認できるようにする。4)天候や気候に応じてグリース供給量を増減し適正な給脂量の供給を可能にする。5)長期にわたり常時連続的に給脂し適正な性状のグリースを保持できるようにする。6)軸受けへの水分、コンタミの浸入を防止する。7)人力による手差し作業を解消する。8)軸受けの点検管理周期を長くする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、グリースを固形の膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースシリンダは吐出管を備えた天井面と弾性体からなるシール板により、グリース充填室が形成されており、前記膨張剤が膨張して前記シール板が加圧されポアソン比で半径方向に膨張してシール性が維持され、前記グリースが押し出されて軸受けに供給されることを特徴とする自動給脂器である。
【0009】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、グリースを固形の膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはそれぞれフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースは弾性体からなるグリース容器に充填されて前記グリースシリンダに収納されており、前記グリース容器は雄ネジが設けられた排出管を備えており、前記グリースシリンダの天井板に吐出管が挿入されており、前記吐出管は、締め付けナット用雄ネジとプラグ用雌ネジと抜け止めフランジと排出管用雌ネジを備えており、前記吐出管の前記排出管用雌ネジには前記グリース容器の前記排出管の前記雄ネジが螺合されており、前記吐出管の前記締め付けナット用雄ネジには締め付けナットが螺合され、該締め付けナットと前記抜け止めフランジで前記天井板を締め付けることにより前記グリース容器が前記グリースシリンダに固定されていることを特徴とする自動給脂器である。
【0010】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、グリースを固形の膨張剤で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器において、前記グリースは片側開口のグリースシリンダに収納され、前記膨張剤は片側開口の膨張剤シリンダにそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダと前記膨張剤シリンダにはそれぞれフランジが設けられボルトで連結されており、前記グリースは弾性体からなるグリース容器に充填されて前記グリースシリンダに収納されており、前記グリース容器は雄ネジが設けられた排出管を備えており、前記グリースシリンダの天井板に吐出管が挿入されており、前記吐出管は、前記グリース容器の前記排出管用雌ネジを備えており、該排出管用雌ネジには前記排出管の前記雄ネジが螺合され、前記吐出管の下部端面と前記グリース容器の上面で前記グリース容器の前記天上板を挟んで前記グリース容器を支持しており、前記吐出管の上部にはプラグ用雌ネジが設けられていることを特徴とする自動給脂器である。
【0011】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記膨張剤シリンダの底面には吸気孔が設けられており、前記膨張剤は防水透湿性部材で被覆されており、更に該防水透湿性部材の外側は通気性材料で被覆されていることを特徴とする自動給脂器である。
【0012】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記膨張剤は膨張剤カップに充填されて前記膨張剤シリンダに収納されており、前記膨張剤カップは側面と底面に複数の吸気孔が設けられており、該膨張剤カップの開孔側外径が底面側外径より拡大するテーパ形状になっていることを特徴とする自動給脂器である。
【0013】
第6の解決手段は特許請求項6に示すように、前記膨張剤カップには有底の加圧ピストンが被せられており、前記膨張剤が膨張して前記加圧ピストンにより前記グリースもしくは前記グリース容器が押し上げられ軸受けに供給されることを特徴とする自動給脂器である。
【0014】
第7の解決手段は特許請求項7に示すように、前記自動給脂器はグリース残量を示すレベル計を備えており、該レベル計は前記グリースの減少に伴い上昇移動する可動部材にワイヤが取付けられており、前記グリースシリンダの上部には前記ワイヤの通し孔が設けられており、前記ワイヤは前記通し孔を貫通して錘が取付けられており、前記可動部材の上昇に伴い前記錘が下降することにより前記グリースの残量が検知されることを特徴とする自動給脂器である。
【0015】
第8の解決手段は特許請求項8に示すように、前記レベル計の前記錘は前記グリースシリンダに固定された細長い透明なパイプの中に収納されていることを特徴とする自動給脂器である。
【0016】
第9の解決手段は特許請求項9に示すように、前記自動給脂器は電池を備えており、該電池には2本の電線を介してランプや発信器が取付けられており、前記ランプや発信器は前記自動給脂器の外側に配置されており、前記配線に互いに対向した接触端子を取付け、該接触端子を前記仕切り板に取付けたストライカーで接触させることにより、ランプや発信器に通電せしめることを特徴とする自動給脂器である。
【発明の効果】
【0017】
第1の解決手段による効果は、1)連続的に膨張する膨張剤が常時加圧ピストン及びシール板を押し上げてグリース充填室を加圧するので、グリースを連続的に軸受けに給脂できる。2)シール板は弾性体からなっており、加圧ピストンとグリースに挟まれ加圧され、グリースシリンダの軸方向に圧縮されるとともにポアッソン比で半径方向に延びてグリースシリンダを押し付けるので、グリースシリンダが加圧力で膨張しても確実にシールすることができる。3)膨張剤の膨張速度は極めて遅いので長期にわたり給脂可能で有り軸受けを適正な状態に維持できる。4)手作業給脂のように毎回汚れた給脂口にグリースガンを接続して給脂することがないので軸受けへの水分、コンタミの浸入を防止できる。5)人力による手差し作業を解消できる。6)軸受けの管理周期を長くできる。
【0018】
第2の解決手段による効果は、1)グリースをあらかじめ弾性体のグリース容器に充填しているのでグリースシリンダへの収納が便利である。2)グリース容器の排出管の雄ネジがグリースシリンダの吐出管の雌ネジに螺合されているので、グリース容器を確実に吐出管とシールして接合できる。3)グリース容器のグリースが加圧されるとグリース容器の排出管の内径が広がり排出管の雄ネジが吐出管の雌ネジに押し付けられて密着しシール性が向上する。4)吐出管の抜け止めフランジと締め付けナットで吐出管を天井板に挟み込んでいるので、グリース容器をグリースシリンダの天井板にしっかり固定できる。5)グリース容器をジャバラ形状にすることにより、グリース容器を圧縮した際に横広がりすることなくジャバラがきれいに縦方向に折り畳められるのでグリースを効率的に押し出せる。
【0019】
第3の解決手段による効果は、1)吐出管の構造を簡単して部品点数を削減できる。にできる。
【0020】
第4の解決手段による効果は、1)通気孔から浸入してくる水滴が直接膨張剤に接触すると膨張剤が急激に膨張するのでグリース吐出量のコントロールができなくなる。このため、水滴だけを遮断し水蒸気は透過できる防水透湿性部材で膨張剤を被覆する。2)膨張剤が防水透湿性部材を膨張剤シリンダに押し付けるので水蒸気が膨張剤シリンダの上方に上昇できなくなるが、防水透湿性部材と膨張剤シリンダの間に通気材を設けて空間を形成することで水蒸気の通気性を確保することができる。
【0021】
第5の解決手段による効果は、1)膨張剤カップがテーパになっているので、膨張剤による膨張剤カップへの半径方向の力を上方向に逃がせるので膨張剤が円滑に上昇して加圧ピストンを押し上げることができる。2)膨張剤で膨張剤カップが膨らんでも膨張剤シリンダと干渉しないので円滑に上昇できる。3)膨張剤シリンダと膨張剤カップの開孔部外径の隙間は小さくできるので、膨張するにつれ膨張剤カップからはみ出した膨張剤はグリースシリンダ拘束保持されながら上昇し型崩れすることなくグリース容器を押し上げることができる。4)膨張剤カップと膨張剤シリンダの間に隙間があるので通気孔が塞がれることがなく水蒸気を吸引できる。
【0022】
第6の解決手段による効果は、1)膨張剤カップがテーパになっているので、膨張剤による膨張剤カップへの半径方向の力を上方向に逃がせるので膨張剤が円滑に上昇して加圧ピストンを押し上げることができる。2)膨張剤で膨張剤カップが膨らんでも加圧ピストンと干渉しないので円滑に上昇できる。3)加圧ピストン内径と膨張剤カップの開孔部外径の隙間は小さくできるので、膨張するにつれ膨張剤カップからはみ出した膨張剤は加圧ピストンに拘束保持されながら上昇し型崩れすることなく加圧ピストンを押し上げることができる。4)膨張剤カップと加圧ピストンの間に隙間があるので通気孔が塞がれることがなく水蒸気を吸引できる。
【0023】
第7の解決手段による効果は、1)グリースの残量を自動給脂器の外側から目視できる。2)グリースシリンダに錘を吊り下げるワイヤを通すための通し孔を穿孔するだけであり加工や取付けが容易である。
【0024】
第8の解決手段による効果は、1)錘がパイプで保護されているので外力の影響を受けず破損しにくい。2)錘に塵埃などが付着しないので円滑な動きを維持できる。3)パイプの摩擦係数が小さいので錘がパイプとこすれても動きが円滑である。4)パイプが汚れても拭き取り清掃が容易である。
【0025】
第9の解決手段による効果は、1)グリースが空になるとストライカーにより端子が接触するのでランプや警報器が作動し目視や聴覚により認識することができる。2)ランプや警報器は自動給脂器の直近に行かなくても認識できるので一度に広い範囲に点在している自動給脂器の状況を把握できる。3)警報器の信号をスマートフォンなどで受信することにより現場に散在する多数の自動給脂器を遠隔で一括管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】は自動給脂器の縦断面図。
図2】は膨張剤の膨張完了後の自動給脂器の縦断面図。
図3】はシール板のポアソン変形の説明図。
図4】はシール板の各実施態様の横断面図。
図5】は樹脂容器に充填したグリースをグリースシリンダに収納した断面図。
図6】は膨張剤を膨張剤カップに充填した自動給脂器の縦断面図。
図7】は膨張剤カップに作用する反力模式図。
図8】は膨張剤カップに作用する反力の分解図。
図9】膨張剤カップに加圧ピストンを被せた断面図。
図10】はレベル計を取付けた自動給脂器の断面図。
図11】はレベル計を取付けた自動給脂器の断面図。
図12】は錘をパイプに収納したレベル計の実施態様図。
図13】は図10(a)の 断面 A-Aの拡大図。
図14】は防水性透湿材の断面図。
図15】は吐出口の実施態様例
図16】はグリース欠状態を知らせるランプと信号の取付け状態図。
図17】はグリース欠状態を知らせるランプと信号の配線模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を請求項1~8及び図1~15に基づいて説明する。
【0028】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、グリース50を固形の膨張剤40で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器10において、前記グリース50は片側開口のグリースシリンダ20に収納され、前記膨張剤40は片側開口の膨張剤シリンダ30にそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダ20と前記膨張剤シリンダ30にはフランジ21、31が設けられボルト22で連結されており、前記グリースシリンダ20は吐出管23を備えた天井面20aと弾性体からなるシール板60により、グリース充填室20bが形成されており、前記膨張剤40が膨張して前記シール板60が加圧されポアソン比で半径方向に膨張してシール性が維持され、前記グリース50が押し出されて軸受けに供給されることを特徴とする自動給脂器10である。
【0029】
図1に示すように、グリースシリンダ20は吐出管23が設けられた天井面20aと仕切り板60と開孔側に設けられたグリース側フランジ21で形成されている。グリースシリンダ20は天井板20aとシール板60によりグリース充填室20bが形成されグリース50が充填されている。
【0030】
グリースシリンダ20と膨張剤シリンダ30はフランジ21とフランジ31をボルト22で接続して固定されている。膨張剤40のストロークとグリース50の押し出しストロークは略同一なのでグリースシリンダ20と膨張剤シリンダ30は同一の形状、寸法で形成できる。このためこれらのシリンダ20、30をプレスで深絞り成形する際は金型を共有できるのでコスト削減できる。
【0031】
シール板60と膨張剤40の間にはスペーサ61を設けるのがよい。膨張剤40を膨張剤シリンダ30に充填する際にスペーサ61を介することにより均一に加圧できる。スペーサ61は金属板や樹脂板が適している。スペーサ61の外形は膨張剤シリンダ30の内径より若干小さめに形成するのがよい。スペーサ61の厚みを変えることによりボルト22を締める際の予圧力を調整することができる。予圧を掛けることにより自動給脂器10を現場に取付けてすぐにグリース50の吐出が開始されるのでタイムラグが生じることなく軸受けへの供給を開始できる。また膨張剤40の力を均等に仕切り板60やグリース容器51に伝えることができる。
【0032】
吐出管23はグリースシリンダ20の天井板20aに設けられた開孔部20cに取付けられている。吐出管23には締め付けナット24用の雄ネジ23aとグリースニップル25などを取付けるための雌ネジ23bが設けられている。締付けナット用雄ネジ23aに螺合された締め付けナット24と締付けフランジ23dで天井板20aを挟みこんで吐出管23を固定している。抜け止めナット23cと天井板20aの間にはパッキン20dなどを嵌挿してグリース50の洩れを防止できる。
【0033】
締付けナット23cは吐出管23と一体的に形成することができる。プラグ用雌ネジ23bはグリースニップル25などの形状や大きさにより変更できる。抜け止めナット23cは吐出管23の抜け防止の役割を持ち吐出管23と一体型に形成することもできる。
【0034】
膨張剤シリンダ30の底面30cには通気孔30aを設けている。通気孔30aの径は10~40mmである。10mmより小さいと目詰まりして水蒸気の通気が低下する。40mmより大きいと水滴が浸入してきて膨張剤40が安定して膨張ができなくなる。また室外や屋内などの設置場所の環境に応じて通気孔30aの径は調整するのがよい。
【0035】
膨張剤40は防水透湿性部材41で被覆するのがよい。通気孔30aから大量の水滴が浸入してくると膨張剤40が急激に膨張するのでグリース吐出量のコントロールができなくなる。水滴の量を制御するために防水透湿性部材41が適している。防水透湿性部材41はスポーツウエアに使用されているが、複数の細孔を設けたビニールやナイロンなどの樹脂製布が使用できる。また、図14に示すように複数の細孔を設けたビニールやナイロンなどの樹脂製容器が使用できる。細孔の径は0.1mm以下がよい。0.1mm以上であると水滴が浸入する。細孔の数は1個/cm2~10個/cm2がよい。細孔の数は自動給脂器10の設置場所や軸受けの仕様によって異なる。防水透湿性部材41の厚みは0.1~1.0mmがよい。0.1mmより薄いと破れる恐れがある。1.0mmより厚いと水蒸気の透過性が低下する。
【0036】
防水透湿性部材41の外側は通気材42で被覆するのがよい。膨張剤40の膨張に伴い、膨張剤40が防水透湿性部材41を膨張剤シリンダ30の内面に押し付けるので水蒸気が膨張剤シリンダ30の上方に上昇できなくなる。そのため、防水透湿性部材41と膨張剤シリンダ30の間に空間を形成し水蒸気の通気性を確保する必要がある。通気材42は例えば樹脂や有機材や金属で形成された網を使用できる。
【0037】
図2は膨張剤40が膨張してシール板60を押し上げ、ほぼ全てのグリース50が排出された後の自動給脂器10の断面図を示している。弾性体で形成されたシール板60がポアソン比で半径方向に膨張することによりグリースシリンダ20の膨張に追随することによりシール性能を維持しつつグリース50を排出できる。
【0038】
シール板60は弾力性のあるゴム板で形成されている。ゴム板には天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロブレンゴム(CR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si)などがある。垂直方向の加圧力により圧縮変形するとともに水平方向に変形して延びる特性を応用している。
【0039】
シール板60の厚みは5~20mmがよい。5mmより薄いとシール性が低下する。20mmより厚いと摺動摩擦が大きくなりグリースシリンダ20が半径方向に変形する。10mm前後が望ましい。
【0040】
図3に膨張剤40の膨張加圧によるシール板60の半径方向膨張量δを示す。シール板60の厚みをt1、加圧後のシール板の厚みt2、シール板60の直径をs1、加圧後のシール板60の直径をs2、シール板60のポアソン比をνとすると、δ=s2-s1={(t1-t2)/t1}/(ν/s1)となる。膨張剤40が膨張するにつれてシール板60は上下方向から加圧され垂直方向に圧縮され、ポアソン比で半径方向に膨張する。薄板で形成されたグリースシリンダ20がフープ応力で半径方向に膨張変形しても変形量に追随して確実にシールすることができる。シール板60に硬質系樹脂や金属を使用した場合は外周部にOリングなどを嵌挿するが、薄板で形成されたグリースシリンダ20の膨張の大きさに追随できずシール不良により漏れが生じていた。
【0041】
上述のように膨張剤40とグリース50により上下から圧縮力を受けたシール板60は縦方向に圧縮されると同時にポアソン比で横方向にも延びることができる。例えばゴムのポアソン比は一般に0.5程度であるので、シール板60が1mm圧縮されると横方向には約0.5mm延びることになる。シール板60がポアソン比で横方向に広がることによりグリースシリンダ20が膨張してもグリース50が洩れることなく適正圧力で軸受けに供給できる。
【0042】
グリースシリンダ20は金属薄板で形成されているので、グリース50から受ける内部圧力によって半径方向に膨張してしまうので、金属や硬質樹脂で形成されている従来のシール板60では、Oリングの弾性復元量だけでは追随できずグリース50が膨張剤側に洩れ、グリースシリンダ20の圧力が上昇せずグリース50の供給が不可能になっていた。またグリースシリンダ20をプレス製作する場合は真円に成形するのは困難であり、円周方向のシール性が均一でないため、硬質の剛性の高いピストンにOリングを組み合わせたシールでは局部的な漏れを防止できなかったり、膨張剤の加圧力で捏ねやすくなったりしてスティッキングを生じていた。弾性体のシール板60は偏荷重を受けても局部的に変形しスティッキングを防止できる。
【0043】
一般に油圧シリンダのように内圧が大きくなシリンダは変形を抑えるために肉厚の大きな円筒を用いる。自動給脂器10は持ち運びを容易にしたり、製作コストを抑えたりするためできるだけ肉圧を薄くし軽量化する必要がある。このためグリースシリンダ20の材質は鉄やステンレスで、厚みは0.5~2.0mmの薄板である。0.1mmより薄いと半径方向の膨張量が大きくなりすぎてシール板60のポアソン比による膨張量では対応できない。2.0mm以上になると重量が重たくなる。又プレス成形が困難となる。望ましくは1.0mmである。鉄板は塗装や亜鉛メッキ処理するのがよい。
【0044】
シール板60の平面形状は円であるが、図4に示すようにシール板60の断面形状は四角形の他にも各種考えられる。例えば図4(a)は外周に2重リングを設けた例である。シールを2重リングで構成しているのでシール性が向上する。図4(b)は台形状の例である。円筒をテーパにしているのでグリースシリンダ20に挿入しやすい。図4(c)は円盤状のシール板60を複数重ねた例である。加圧力の大きさに応じてシール板60の厚みを自由に変更できる。図4(d)は中央部の厚みを厚くした例である。中央部の縦方向歪みを大きくすることができポアソン比による横方向歪みも大きくできるのでシール性が向上する。図4(e)は中央部に空間を設けて半径方向への膨張を大きくした例である。
【0045】
膨張剤40は酸化カルシウム(CaO)を主体とする化合物である。酸化カルシウムが水和反応することにより水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を形成し時間経過ともに長大な異方性の六角板状結晶へと成長することで体積が増大する性質を利用している。膨張剤商品としては例えばブライスター(太平洋セメント(株))、Sマイト(住友大阪セメント(株))、HPロックトーン(河合石灰工業(株))などがある。これらの商品と酸化カルシウムを適宜組み合わせて軸受け環境に適合した膨張剤を調合できる。
【0046】
酸化カルシウムに潮解性のある物質の粉末を1~5重量%混合することにより膨張量や膨張速度を調整できる。1重量%より少ないと効果が無い。5重量%より多いと膨張速度が速すぎて制御が困難である。潮解性のある物質には、クエン酸(C6H8O7)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸カリウム(K2CO3)、塩化マグネシウム(MgCL2)などがある。
【0047】
膨張剤40はプレスして高密度に充填するのがよい。0.1MPa以上でプレスするのが望ましい。又、振動を与えながら充填することにより気孔を形成しないようにするのがよい。膨張剤40の充填高さは膨張剤シリンダ30のフランジ31面と同程度がよい。膨張剤40の膨張には一定の時間が必要であり充填されたグリース50も加圧されていないので、安定してグリースが供給されるまでにタイムラグが生じる。膨張剤の充填密度の低下や気孔の存在は、グリース50が吐出されるまでの時間に遅れを生じさせ、無給脂期間を生じさせてしまう。このため、グリースシリンダ20と膨張剤シリンダ30のフランジ21、31をボルト22で接合する際にスペーサ61などを挿入して膨張剤40とグリース50に初期予圧を付加しておくのがよい。
【0048】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、グリース50を固形の膨張剤40で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器10において、前記グリース50は片側開口のグリースシリンダ20に収納され、前記膨張剤40は片側開口の膨張剤シリンダ30にそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダ20と前記膨張剤シリンダ30にはそれぞれフランジ21、31が設けられボルト22で連結されており、前記グリース50は弾性体からなるグリース容器51に充填されて前記グリースシリンダ20に収納されており、前記グリース容器51は雄ネジ52aが設けられた排出管52を備えており、前記グリースシリンダ20の天井板20aに吐出管23が設けられており、前記吐出管23は、締め付けナット用雄ネジ23aとプラグ用雌ネジ23bと抜け止めナット23cと排出管用雌ネジ23dを備えており、前記吐出管23の前記排出管用雌ネジ23dには前記グリース容器51の前記排出管52の前記雄ネジ52aが螺合されており、前記吐出管23の前記締め付けナット用雄ネジ23aには締め付けナット24が螺合され、該締め付けナット24と前記抜け止めナット23cで前記天井板20aを締め付けることにより前記グリース容器51が前記グリースシリンダ20に固定されていることを特徴とする自動給脂器10である。
【0049】
図5に示すように吐出管23は締付けナット用雄ネジ23aとプラグ用雌ネジ24bと抜け止めナット23cと排出管用雌ネジ23dを備えている。プラグ用雌ネジ23bはグリースニップル25などを取付けるのに使用できる。プラグ用雌ネジ23bと排出管用雌ネジ23dは共用できるようにしてもよい。吐出管23は鉄、ステンレス、チタン、樹脂などで形成できる。
【0050】
グリースシリンダ20の天井板20aには吐出孔20cを設けて吐出管23を挿入している。吐出管23の締付けナット用雄ネジ23aに締め付けナット24が螺合され、締め付けナット24と抜け止めナット23cで天井板20aを締め付けて吐出管23を天井板20aに固定している。
【0051】
図15は吐出管23の実施態様例である。締付けナット24と抜け止めナット23cは天井板20aを挟んでグリース容器51の排出管52を固定できればよいので、吐出管23の厚みtを厚くして且つ、グリース容器51と天井板20aの間にスペーサ53を挿入することにより天井板20aを締め付けることができる。プラグ用雌ネジ24bと排出管用雌ネジ23dを同一寸法にすることにより排出管52の構造を簡単にできる。締付けナット23cを吐出口23と一体化し、抜け止めナット23cをスペーサ53に置き換えた実施例である。
【0052】
グリース容器51は弾力性のある樹脂製であり、膨張剤40で加圧され圧縮されながらグリース50を押し出していく。グリース容器51の排出管52の雄ネジ52aは吐出管23の排出管用雌ネジ23dに螺合されている。グリース容器51の排出管52と吐出管23は排出管用雌ネジ23dと雄ネジ52aで螺合されているのでグリース50がグリースシリンダ20内に逆流することはない。
【0053】
シール板60を設けることにより、グリース容器51が破損してグリース50がグリースシリンダ20内に漏洩しても、グリース50が膨張剤40側に流れ込むのを防止できる。グリース容器50とグリースシリンダ20の間には空間があり、シール板60が上昇するにつれてグリースシリンダ20の空気圧が上昇するが、膨張剤40の膨張速度は極めて遅いので、膨張剤シリンダ30側にゆっくりと抜けていきグリースシリンダ20内の圧力が過度に上昇することはない。
【0054】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、グリース50を固形の膨張剤40で加圧して軸受けなどに供給する自動給脂器10において、前記グリース50は片側開口のグリースシリンダ20に収納され、前記膨張剤40は片側開口の膨張剤シリンダ30にそれぞれ収納されており、前記グリースシリンダ20と前記膨張剤シリンダ30にはそれぞれフランジ21、31が設けられボルト22で連結されており、前記グリース50は弾性体からなるグリース容器51に充填されて前記グリースシリンダ20に収納されており、前記グリース容器51は雄ネジ52aが設けられた排出管52を備えており、前記グリースシリンダ20の天井板20aに吐出管23が挿入されており、前記吐出管23は、前記グリース容器51の前記排出管用雌ネジ23dを備えており、該排出管用雌ネジ23dには前記排出管52の前記雄ネジ52aが螺合され、前記吐出管23の下部端面23eと前記グリース容器51の上面で前記グリース容器の前記天上板を挟んで前記グリース容器を支持しており、前記吐出管の上部51aにはプラグ用雌ネジ23bが設けられていることを特徴とする自動給脂器10である。
【0055】
図15に示すように、吐出管の片側には排出管用雌ネジ23dが設けられ、他方にはプラグ用雌ネジ23bが設けられている。排出管用雌ネジ23dとプラグ用雌ネジ23bは同一の仕様にするのが望ましい。又締付けナット24や抜け止めナット23cを省力でき構造を簡便化し製作コストを抑えることができる。吐出管23の排出管用雌ネジ23dと排出管の雄ネジ52aを螺合させて締め付けるとグリース容器51はグリースシリンダ20の天井板20aに押し付けられ固定される。グリースシリンダ20と天井板20aの間にOリングやパッキンなどをスペーサとして取付けてもよい。ネジ部から洩れるグリースや水滴がグリースシリンダに浸入するのを防止できる。
【0056】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記膨張剤シリンダ30の底面30aには吸気孔30cが設けられており、前記膨張剤40は防水透湿性部材41で被覆されており、更に該防水透湿性部材41の外側は通気性材料42で被覆されていることを特徴とする自動給脂器10である。
【0057】
図1図2図5に示すように膨張剤40は防水性透湿材41で被覆するのがよい。通気孔30aから浸入してくる水滴が直接膨張剤40に接触すると膨張剤40が急激に膨張するのでグリース吐出量のコントロールができなくなる。このため、水滴だけを遮断し水蒸気は透過できる防水透湿性部材41で膨張剤40を被覆する。また、防水透湿性部材41の外側は通気材42で被覆するのがよい。膨張剤40の膨張に伴い、膨張剤40が防水透湿性部材41を膨張剤シリンダ30に押し付けるので水蒸気が膨張剤シリンダ30の上方に上昇できなくなる。そのため、防水透湿性部材41と膨張剤シリンダ30の間に空間を形成し水蒸気の通気性を確保する必要がある。通気材42は樹脂や有機材や金属で形成した網が適している。防水性透湿材41と通気材42は交互に複数重ね合わせてもよい。膨張剤40の膨張速度を適切に調整できる。防水性透湿材41により膨張剤40に均等に水蒸気を付加できるので膨張剤40の全体的な膨張を均一に制御できる。
【0058】
防水性透湿材41を図14に示すような片側開口の円筒形容器41で形成してもよい。円筒形容器41の材質はシリコン、合成ゴム、プラスチックなどの樹脂が適している。円筒形容器41の厚みは0.5~3.0mmがよい。円筒形容器41の底面や側面には水蒸気を取り込むための細孔を設ける。細孔の径は0.1mm以下がよい。0.1mm以上であると水滴が浸入する。細孔の数は1個/cm2~10個/cm2がよい。細孔の数は自動給脂器10の設置場所や軸受けの仕様によって異なる
【0059】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記膨張剤40は膨張剤カップ70に充填され前記膨張剤シリンダ30に収納されており、前記膨張剤カップ70は側面70aと底面70bに複数の吸気孔70cが設けられており、該膨張剤カップ70の開孔側外径d1が底面側外径d2より拡大するテーパ形状になっていることを特徴とする自動給脂器10である。
【0060】
図6は膨張剤40を充填した膨張剤カップ70にテーパを設けた自動給脂器10の断面図を示している。図7は膨張剤カップ70内における膨張剤の反力Fを示している。
【0061】
図8図7a部の拡大図を示す。膨張剤40の圧縮力によって膨張剤40は膨張剤カップ70からの反力Fを受ける。反力Fは膨張剤カップ70の側面70aに垂直な反力F1と平行な反力F2に分解される。反力F2は膨張剤40の反力を上方に向けるので膨張剤40が上方に逃げやすくなり押し上げストロークをアップする効果がある。テーパ角度θは5~10度がよい。5度より小さいと、膨張剤カップ70に平行な力F2が小さくなり膨張剤カップ70に作用する反力を逃がせない。10度より大きいと、膨張剤カップ70の開孔部周辺の押し上げ力が小さくなる。膨張剤カップ70を円錐形状にした場合は、膨張剤カップ70の深さを十分に確保できないので加圧ストロークが不足する問題があった。
【0062】
膨張剤カップ70は鉄やステンレスなどの0.5~2.0mmの薄板である。鉄板は亜鉛メッキ処理や塗装をするのがよい。
【0063】
膨張剤シリンダ30の底面30aには空気中の水蒸気を取り込むための通気孔30cが設けられている。通気孔の直径は5~30mmである。
【0064】
膨張剤カップ70の側面70aと底面70bには通気孔70cが設けられている。通気孔70cの直径は0.5~3.0mmである。0.5mmより小さいと目詰まりする。3.0mmより大きいと水滴が浸入しやすくなる。膨張剤カップ70の底面70bには受け座32を設けるのがよい。膨張剤カップ70を膨張剤シリンダ30の底面30aから浮かすことにより通気孔30cからの水蒸気が取り込み易くなる。また膨張剤カップ70は水滴の浸入を防ぎ水蒸気だけが透過するように防水透湿性部材41で被覆するのがよい。
【0065】
第6の解決手段は特許請求項6に示すように、前記膨張剤カップ70には有底の加圧ピストン71が被せられており、前記膨張剤40が膨張して前記加圧ピストン71により前記グリース50もしくは前記グリース容器51が押し上げられ軸受けに供給されることを特徴とする自動給脂器10である。
【0066】
加圧ピストン71は鉄、ステンレス、チタンなどの板金板やプラスチックなどの樹脂材を使用できる。加圧ピストン71はグリースシリンダ20や膨張剤シリンダ30と同様に金型による絞り加工で形成できる。
【0067】
図9図10に示すように、膨張剤カップ70がテーパになっているので、膨張剤40による膨張剤カップ70への半径方向の力を上方向に逃がせるので膨張剤40が円滑に上昇して加圧ピストン71を押し上げることができる。膨張剤40で膨張剤カップ71が膨らんでも加圧ピストン71と干渉しないので円滑に上昇できる。加圧ピストン71内径と膨張剤カップ70の開孔部外径の隙間は小さくできるので、膨張するにつれ膨張剤カップ71からはみ出した膨張剤40は加圧ピストン71に拘束保持されながら上昇し型崩れすることなく加圧ピストン71を押し上げることができる。膨張剤カップ70と加圧ピストン71の間に隙間があるので通気孔70bが塞がれることがなく水蒸気を吸引できる。
【0068】
第7の解決手段は特許請求項7に示すように、前記自動給脂器10はグリース残量を示すレベル計80を備えており、該レベル計80は前記グリース50の減少に伴い上昇移動する可動部材にワイヤ83が取付けられており、前記グリースシリンダ20の上部には前記ワイヤ83の通し孔20eが設けられており、前記ワイヤ83は前記通し孔20eを貫通して錘82が取付けられており、前記可動部材の上昇に伴い前記錘82が下降することにより前記グリース50の残量が検知されることを特徴とする自動給脂器10である。
【0069】
図9にグリースシリンダ20に取付けたレベル計80を示している。図10にレベル計80の実施態様を示している。可動部材にはシール板60やグリース容器51やスペーサ61や膨張剤40などがある。グリース50の排出量に応じてグリースシリンダ20や膨張剤シリンダ30の内部を移動する物体であれば可動部材として使用することができる。例えばシール板60を可動部材とする場合は、図9に示すようにシール板60にワイヤ83を係止部材81にて固定して、ワイヤ83を通し孔20eに通して錘82を吊り下げて固定する。
【0070】
図11に示すように、膨張剤が膨張してシール板を上昇させるとワイヤの先端に取付けた錘が下降することによりグリースの排出量を目視にて検知できる。
【0071】
ワイヤ83の材質は、鋼線、ステンレス線、釣り糸などの樹脂線、たこ糸などの木綿線等が使用できる。ワイヤ83の径はできるだけ細い方がよい。望ましくは0.5~1.0mmがよい。0.5mmより細いと振動などで断線する恐れがある。1.0mmより太いと通し孔20eから水滴が浸入する恐れがある。
【0072】
錘82の材質は、鉄、鉛、ステンレスなどのように密度の大きな金属材料がよい。錘82に蛍光塗料などを塗布することにより目視を容易にするのがよい。
【0073】
第8の解決手段は特許請求項8に示すように、前記レベル計80の前記錘82は前記グリースシリンダ20に固定された細長い透明なパイプ84の中に収納されていることを特徴とする自動給脂器10である。
【0074】
パイプ84は、ポリカーボネート、アクリル、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン、ガラスなどの透明な細管を使用できる。パイプ84の内径は10~20mmである。10mmより細いと収納する錘82の外形が小さくなり所定の重さを確保できない。20mmより太いと外部の突起物に干渉して破損しやすくなる。パイプ84の厚みは、0.5~1.0mmである。
【0075】
図12はレベル計80の実施態様である。図10(a)はパイプ84の両端に蓋84、85を設けた例を示している。通し孔20eからグリースシリンダ20内に水滴が浸入しないようにしている。また埃やゴミがパイプ84内に浸入するのを防止している。図10(b)はパイプ84の上蓋85と下蓋86を外した例である。錘82をパイプ84内に収納するのが容易である。図10(c)は半割れパイプ84を被せた例である。錘82の収納が容易である。
【0076】
図13は、図12(a)を拡大している。通し孔20eにガイドパイプ87を挿入して、ワイヤ83を通している。ガイドパイプ87でワイヤ83を保護することにより、通し孔20eのエッジでワイヤ83を損傷しないようにしている。また、ワイヤ83の滑りがよくなるので錘82が通し孔20eの抵抗をうけることなく下降することができる。また、ワイヤ83径に対してガイドパイプ87の径を極力小さくすることにより、ガイドパイプ87とワイヤ83の隙間が小さくり雨水や露などの水滴がグリースシリンダ20内に浸透しにくくなる。またガイドパイプ87の先端を下方に曲げることによりさらに水滴が浸入しにくくなる。また、ガイドパイプ87をパイプ84の中に突き出させることにより錘82をパイプ84の中央部に配置できるので、錘82とパイプ84が接触しなくなり錘82の下降が円滑になる。
【0077】
ガイドパイプ87の材質はビニール、ナイロン、樹脂などの軟質パイプが適している。ガイドパイプ87の径はワイヤ径より0.5~1.0mm太くするのが望ましい。0.5mmより細過ぎるとワイヤ83の滑りが悪くなる。1.0mmより太いと通し孔20eから水滴が浸入しやすくなる。
【0078】
第9の解決手段は特許請求項9に示すように、前記自動給脂器10は電池92を備えており、該電池92には2本の電線95、96を介してランプ90や発信器91が取付けられており、前記ランプ90や発信器91は前記自動給脂器10の外側に配置されており、前記配線95、96に互いに対向した接触端子93,94を取付け、該接触端子93、94を前記仕切り板60に取付けたストライカー97で接触させることにより、ランプ90や発信器91に通電せしめることを特徴とする自動給脂器10である。
【0079】
電池92はボタン電92がコンパクトで取付けやすい。ボタン電池92は3ボルト以上の容量が望ましい。3ボルト以下であるとランプ90の光量が少なくなる。望ましくは5ボルトである。ボタン電池92の寿命は2年以上を確保できるので自動給脂器10の経年的な管理に適している。ランプ90はLED90(Light Emitting Diode)が適している。LED90は寿命が長く消費電力が少なく応答が速いなどの特長があり自動給脂器10の警報ランプとして適している。LED回路には電流制限抵抗98を配置している。発信器91はGPS発信器91が適している。GPS発信器91は自動給脂器10の取付け位置と対で紐付けできるので、複数の自動給脂器10を一括管理できるメリットがある。
【0080】
図17では、通常、発信器91は不通状態であるがグリース50が欠状態になると、ストライカー97が接触端子93を押し上げて接触端子94と接触する。この瞬間にランプ90が点灯すると同時に発信器91から信号が発信される。ランプ点灯によりグリース欠状態の自動給脂器10の位置を確実に目視により特定できる。ランプ90と発信器91は別々の独立した回路にすることもできる。ボタン電池92、LED90の寿命は長いので、定期的な現場周回による見回りタイミングでランプ90の点灯を目視できる。又、GPS発信器91の電波範囲に入り込んだ瞬間にスマートフォンで信号をキャッチし、中央管理室にて同時にデータ管理できる。
【符号の説明】
【0081】
10:自動給脂
20:グリースシリンダ
20a:天井板
20b:グリース充填室
20c:吐出孔
20d:パッキン
20e:通し孔
21:グリース側フランジ
22:ボルト
23:吐出管
23a:締め付けナット用雄ネジ
23b:プラグ用雌ネジ
23c:抜け止めナット
23d:排出管用雌ネジ
24:締め付けナット
25:グリースニップル
30:膨張剤シリンダ
30a:底面
30b:側面
30c:通気孔
31:膨張剤側フランジ
32:受け座
33:ビス
40:膨張剤
41:防水透湿性部材
42:通気材
50:グリース
51:グリース容器
52:排出管
53:スペーサ
52a:雄ネジ
60:シール板
61:スペーサ
70:膨張剤カップ
70a:円筒
70b:底面
70c:通気孔
71:加圧ピストン
80:レベル計
81:係止部材
82:錘
83:紐
84:保護ケース
85:上蓋
86:下蓋
87:ガイドパイプ
90:ランプ
91:発信器
92:電池
93:端子(ストライカー側)
94:端子(電池側)
95:入側配線
96:出側配線
97:ストライカー
98:電流制限抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17