(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027558
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】記録装置、及び、記録装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240222BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/21
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130446
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智行
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB37
2C056EB47
2C056EB59
2C056EC77
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB03
2C056HA37
(57)【要約】
【課題】テストパターンの変更により、処理時間が掛かる上消耗品も多く必要となるおそれがある。
【解決手段】記録装置は、液体を媒体に吐出する記録ヘッドと、媒体の表面形状情報を取得可能な第1センサーと、媒体の色情報を取得可能な第2センサーと、記録ヘッドを制御し、媒体に液体を吐出させる制御部と、を備え、記録ヘッドによって記録したテストパターンに基づいて媒体への記録を補正可能な記録装置であって、第1センサーは、テストパターンを記録した箇所を含む媒体の表面形状情報を取得し、第2センサーは、テストパターンを記録した箇所を含む媒体の色情報を取得し、制御部は、テストパターン、表面形状情報及び色情報に基づいて、補正値を取得する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を媒体に吐出する記録ヘッドと、
前記媒体の表面形状情報を取得可能な第1センサーと、
前記媒体の色情報を取得可能な第2センサーと、
前記記録ヘッドを制御し、前記媒体に前記液体を吐出させる制御部と、を備え、前記記録ヘッドによって記録したテストパターンに基づいて前記媒体への記録を補正可能な記録装置であって、
前記第1センサーは、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記表面形状情報を取得し、
前記第2センサーは、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記色情報を取得し、
前記制御部は、前記テストパターン、前記表面形状情報及び前記色情報に基づいて、補正値を取得することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1センサーの検出範囲は、ラスターライン方向において前記媒体の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1センサーは、前記記録ヘッドと共にラスターライン方向において移動可能なセンサーであり、前記表面形状情報を取得する時に前記ラスターライン方向への移動を停止することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記補正値は、前記液体が前記媒体の着弾位置を補正するための値であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
液体を媒体に吐出する記録ヘッドと、前記媒体の表面形状情報を取得可能な第1センサーと、前記媒体の色情報を取得可能な第2センサーと、を備える記録装置の制御方法であって、
前記記録ヘッドにより、前記媒体にテストパターンを記録し、
前記第1センサーにより、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記表面形状情報を取得し、
前記第2センサーにより、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記色情報を取得し、
前記テストパターン、前記表面形状情報及び前記色情報に基づいて補正値を取得し、前記媒体への記録を補正することを特徴とする記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、及び、記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、テストパターンが記録される前の媒体むらを取得し、媒体むらに応じてテストパターンを決定する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、テストパターンを変更することが必要となり、テストパターンによっては、処理時間が掛かる上、消耗品も多く必要となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
記録装置は、液体を媒体に吐出する記録ヘッドと、前記媒体の表面形状情報を取得可能な第1センサーと、前記媒体の色情報を取得可能な第2センサーと、前記記録ヘッドを制御し、前記媒体に前記液体を吐出させる制御部と、を備え、前記記録ヘッドによって記録したテストパターンに基づいて前記媒体への記録を補正可能な記録装置であって、前記第1センサーは、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記表面形状情報を取得し、前記第2センサーは、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記色情報を取得し、前記制御部は、前記テストパターン、前記表面形状情報及び前記色情報に基づいて、補正値を取得することを特徴とする。
【0006】
液体を媒体に吐出する記録ヘッドと、前記媒体の表面形状情報を取得可能な第1センサーと、前記媒体の色情報を取得可能な第2センサーと、を備える記録装置の制御方法であって、前記記録ヘッドにより、前記媒体にテストパターンを記録し、前記第1センサーにより、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記表面形状情報を取得し、前記第2センサーにより、前記テストパターンを記録した箇所を含む前記媒体の前記色情報を取得し、前記テストパターン、前記表面形状情報及び前記色情報に基づいて補正値を取得し、前記媒体への記録を補正することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】キャリッジに搭載された検出部の移動を示す模式図。
【
図5】検出部が媒体に記録されたテストパターンを検出する際の模式図。
【
図6A】検出部が検出光により媒体の繊維を検出する際の模式図。
【
図6B】検出部が検出光により媒体の隙間を検出する際の模式図。
【
図7】検出部により検出した表面形状情報、撮像部により取得した色情報、及び、媒体に記録されたテストパターンの関係を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態の記録装置1について、図面を参照して説明する。なお、図中における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し負方向を下方向又は単に下と称し、Y軸の正方向を前方向又は単に前と称し負方向を後方向又は単に後と称し、X軸の正方向を右方向又は単に右と称し負方向を左方向又は単に左と称して説明する。
【0009】
1.記録装置の構成
図1に示すように、記録装置1は、制御部2、記憶部3、第1センサーである検出部4、第2センサーである撮像部5、記録ヘッド6、キャリッジ7、搬送部8を含んで構成されている。それぞれについて、
図2及び
図3も参照しながら具体的に説明していく。
【0010】
図1に示す制御部2は、記録装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを含んで構成されている。CPUは単にプロセッサーともいう。
記憶部3は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。
制御部2のCPUは、記憶部3の不揮発性メモリーに記憶されたファームウェアなどのプログラムを読み出し、記憶部3のRAMを作業領域として用いて実行する。
【0011】
図2に示す媒体Mは、例として、天然繊維や合成繊維で構成された長尺状の布帛である。媒体Mは、ロール体M1として巻かれている。長尺状の媒体Mは原反ともいう。記録装置1は、媒体Mに対して記録を行う。媒体Mへの記録を捺染ともいい、媒体Mは被捺染材ともいう。後述のように、布帛の織り方であるテクスチャー(texture)により、媒体Mの表面形状が異なる。
【0012】
図2に示すように、搬送部8は、無端形状の搬送ベルト8c、駆動ローラー8a及び従動ローラー8bを含んで構成されている。搬送部8は、不図示の搬送モーターにより、駆動ローラー8aを反時計回りに回転させ、従動ローラー8bも追従して反時計回りに回転する。
駆動ローラー8a及び従動ローラー8bに架け渡されている搬送ベルト8cも、周回方向である反時計回りに周回する。
【0013】
ロール体M1から引き出された媒体Mは、搬送部8の搬送ベルト8cに載置され、搬送方向であり副走査方向である、矢印で示す前方向へ搬送される。
なお、駆動ローラー8aと従動ローラー8bとは、駆動及び従動の関係が逆であってもよい。また、搬送部8は、搬送モーターを逆回転することができ、搬送ベルト8cに載置された媒体Mを、後方向とは逆の前方向へ搬送することもできる。
【0014】
キャリッジ7は、記録ヘッド6及び検出部4を搭載している。
図3に示すように、キャリッジ7は、不図示のキャリッジモーターにより、キャリッジ軸7aに沿って、主走査方向である左右方向へ移動可能である。主走査方向をラスターライン方向ともいう。
【0015】
記録ヘッド6は、インクジェット方式のノズルを有している。記録ヘッド6のノズルから吐出される液体であるインクは、例えばCMYK(Cyan, Magenta, Yellow, Black)などの顔料を含んでいる。
記録ヘッド6は、キャリッジ7の移動に伴って移動しながら、媒体Mへインクを吐出して記録を行う。
【0016】
図2に示すように、検出部4は、発光部4a及び受光部4bを有する。発光部4aは、検出光Sを対象物へ照射する。受光部4bは、検出光Sが対象物に当たって反射した反射光Rを受光する。
検出部4は、例えば、使用する検出光Sがレーザー光であるレーザー方式でもよい。又は、検出部4は、例えば、使用する検出光Sが赤外線である赤外線方式でもよい。
【0017】
検出部4は、発光部4aが検出光Sを照射してから受光部4bが反射光Rを受光するまでの時間に基づき、対象物までの距離を検出することができる。又は、検出部4は、受光部4bが受光する反射光Rの角度や強度に基づき、対象物までの距離を検出することができる。
後述のように、検出部4は、媒体Mにおける繊維Fの有無の状態に係る、媒体Mの表面形状情報を取得可能である。
【0018】
検出部4は、記録ヘッド6と共にラスターライン方向において移動可能なセンサーである。
図3に示すように、検出部4は、キャリッジ7の移動に伴って移動しながら、対象物である、搬送ベルト8cに載置された媒体Mを検出可能である。
媒体Mの媒体幅MWより、キャリッジ7の移動幅CWの方が広い。すなわち、検出部4の検出範囲は、ラスターライン方向において、媒体Mの長さよりも大きい。このため、検出部4は、媒体Mの媒体幅MWを全幅に亘って検出することができる。
【0019】
図2及び
図3に示すように、撮像部5は、記録ヘッド6及び検出部4に対して、搬送方向の下流に配置されている。撮像部5は、搬送ベルト8cに載置された媒体Mに向かうような姿勢で、記録装置1のケースに固定されている。
撮像部5は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどの固体撮像素子を有するカメラを含んで構成されている。また、撮像部5は、照明装置を備えることが好ましい。
【0020】
撮像部5の画角は、少なくとも媒体Mの媒体幅MWが含まれる範囲となっている。撮像部5は、少なくとも媒体Mの媒体幅MWを含む範囲を撮像可能である。
撮像部5は、媒体Mを撮像し、色情報である、RGB(Red, Green, Blue)の色空間で表現されるビットマップデータとして検出することができる。具体的には、ビットマップデータは、RGBの各濃度階調値である8ビットで示される、0ないし255の256階調の値で表現される。
【0021】
2.記録装置の制御方法
図4を中心に参照し、
図5ないし
図7も参照しながら、記録装置1の制御方法を具体的に説明していく。
図5に示すように、制御部2は、テストパターンである搬送方向へ延びる3本の線を、目標とする位置情報に基づき、記録ヘッド6により媒体Mにインクを吐出して記録する(S101)。以下では、目標とする位置情報を、目標位置情報と称する。
目標位置情報は、制御部2が、媒体Mへインクを着弾させようとする目標とする位置の情報である。実際には、記録ヘッド6のノズルの特性や、記録装置1内の空気の流れなどの影響により、媒体Mへインクが着弾する位置は、目標位置情報の位置からずれることがある。
【0022】
3本の線の記録情報、及び、目標位置情報は、記憶部3に記憶されている。3本の線は、基準点Bを基準として、右方向へ順に、位置L1,L2,L3において、媒体Mに記録されている。基準点Bは、X方向において、検出部4が検出を開始する位置とすることができる。なお、基準点Bの位置情報も、記憶部3に記憶されている。
以降、媒体Mへ記録した3本の線を、テストパターンと称する。テストパターンは、後述のように、制御部2が、媒体Mへインクが着弾する位置を補正する際に用い、媒体Mへの記録を補正可能である。なお、テストパターンは、例として黒色で記録される。以下では、記録ヘッド6により媒体Mに形成されたX方向におけるテストパターンの3本の線の位置であるL1,L2,L3を、単に位置L1,L2,L3と称する。
【0023】
テストパターンを記録する際、制御部2は、キャリッジ7を右へ移動させながら、キャリッジ7に搭載されている記録ヘッド6から、搬送ベルト8cの上に載置された媒体Mに対し、目標位置情報に基づき、インクを吐出する。記録ヘッド6によるインク吐出後、制御部2は、搬送部8により媒体Mを搬送方向へ所定長さを搬送する。
【0024】
制御部2は、目標位置情報に基づく記録ヘッド6によるインクの吐出と、搬送部8による媒体Mの搬送方向を所定の回数繰り返し、テストパターンを記録する。
なお、制御部2は、キャリッジ7を左へ移動させる際にも、記録ヘッド6により媒体Mにインクを吐出してもよい。
【0025】
ところで、
図5に示すように、媒体Mは、繊維Fにより、左右方向、及び、前後方向に織り込まれている。繊維Fと繊維Fとの間には隙間Gが空いている。布帛のテクスチャーにより、繊維Fの間隔、及び、隙間Gの大きさが異なり、媒体Mの表面形状が異なる。
【0026】
撮像部5が、上から媒体Mを撮像したとき、隙間Gの位置には、繊維Fがないため搬送ベルト8cが現れることとなる。また、隙間Gは、周囲の繊維Fに囲まれて、凹んだ状態となっている。隙間Gは、周囲の繊維Fにより外光が遮蔽され易く、影になり易い。
このため、撮像部5が、上から媒体Mを撮像したとき、影となり易い隙間Gは、色情報が濃い値を示す、小さい値となる傾向にある。また、テストパターンも色情報が濃い値を示す、小さい値となる。
布帛のテクスチャーによっては、いずれも色情報が小さい値を示す隙間Gとテストパターンとが、区別し難くなることがある。後述のように、制御部2は、検出部4による媒体Mの表面形状情報を用いて、テストパターンの位置を特定することができる。
【0027】
テストパターンを記録した後、制御部2は、搬送部8により、搬送方向とは逆方向へ所定長さ媒体Mを搬送する。媒体Mは、検出部4及び撮像部5により、テストパターンを含む媒体Mの箇所を検出及び撮像可能な位置となる。
制御部2の制御の下、テストパターンを含む媒体Mの箇所に対し、検出部4が検出し、撮像部5が撮像する(S102)。
この結果、検出部4は、テストパターンを記録した箇所を含む媒体Mの表面形状情報を取得することができる。また、撮像部5は、テストパターンを記録した箇所を含む媒体Mの色情報を取得することができる。
【0028】
まず、検出部4の検出について、具体的に説明する。上述のように、検出部4は、発光部4aと受光部4bとを有し、検出光Sが対象物により反射した反射光Rにより、対象物までの距離を検出可能である。
図6A及び
図6Bに示すように、テストパターンを記録した箇所を含む媒体Mが、搬送ベルト8cの上に載置される。制御部2は、キャリッジ7を右方向へ移動しながら、検出部4により媒体Mの表面を検出する。すなわち、制御部2は、キャリッジ7によりラスターライン方向へ検出部4を移動させながら、検出部4により媒体Mの表面形状情報を取得することができる。
【0029】
なお、制御部2は、検出部4により媒体Mの表面を検出する際、キャリッジ7を停止するようにしてもよい。すなわち、制御部2は、検出部4により媒体Mの表面形状情報を取得する際、ラスターライン方向への検出部4の移動を停止させるようにしてもよい。検出部4は、停止した状態で、より正確に媒体Mの表面を検出することができる。
【0030】
検出部4は、レーザー光などを用いるため、対象物の色に影響されず、媒体Mの表面形状情報を取得することができる。
図6Aに示すように、検出部4は、媒体Mに記録されたテストパターンに影響されず、繊維Fがあるとき、発光部4aの検出光S1は繊維Fに反射し、受光部4bは反射光R1を受光し、繊維Fまでの距離D1を検出することができる。
【0031】
さらに、制御部2がキャリッジ7を右方向へ移動すると、
図6Bに示すように、検出部4は、繊維Fがない隙間Gの位置となる。繊維Fがない隙間Gの位置では、発光部4aの検出光S2は搬送ベルト8cに反射し、受光部4bは反射光R2を受光し、搬送ベルト8cまでの距離D2を検出することができる。
このように、検出部4は、媒体Mに記録されたテストパターンに影響されず、媒体Mにおける繊維Fの有無による距離の情報であって、媒体Mにおける高低の情報である、媒体Mの表面形状情報を取得することができる。
【0032】
制御部2は、検出部4が取得した媒体Mの表面形状情報に基づき、検出部4から搬送ベルト8cまでの距離D2から、検出部4が検出した距離D1又は距離D2を引算する。なお、検出部4から搬送ベルト8cまでの距離D2は記憶部3に記憶されている。
制御部2は、繊維Fがある位置では、繊維Fの高さであって太さでもある「H1」を算出することができる。また、制御部2は、繊維Fがない隙間Gの位置では、高さ「0」を算出することができる。
なお、これらの算出は、制御部2の論理回路に含まれる、OPアンプやコンパレーターなどにより、回路側で行うこともできる。
【0033】
図7に示す波形W1の横軸は、基準点Bを基準とし、検出部4の移動方向であるX方向を示し、ラスターライン方向の媒体Mの位置を示している。以下、波形W2、波形W3、波形W4の横軸も同様である。
波形W1の縦軸は、媒体Mの位置に対応して、制御部2が算出した、繊維Fの高さ「H1」、及び、繊維Fがない隙間Gの高さ「0」を示している。波形W1は、媒体Mに対するラスターライン方向の高さ分布の情報でもある。
【0034】
次に、
図7に示す波形W2は、制御部2の論理回路に含まれる微分回路により、波形W1を微分した値の波形を示している。制御部2は、所定範囲を超えた波形W2のポイントが示す媒体Mの位置を、媒体位置P(n)として抽出する。媒体位置P(n)はn番目のポイントの媒体Mの位置を示す。
媒体位置P(n)は、繊維Fの直径の端に対応する位置であり、媒体Mにおける繊維Fの位置である。制御部2は、媒体位置P(n)を抽出することにより、媒体Mにおける繊維Fの位置を特定する(S103)。媒体位置P(n)は、上述のように、撮像部5が媒体Mを撮像したとき、媒体Mの繊維Fの影となり易い位置であり、色情報が濃くなる傾向にあり、テストパターンと区別し難くなる位置である。
なお、制御部2の論理回路により、波形W1の立ち上り、及び、立ち下りの位置に基づき、媒体位置P(n)を抽出するようにしてもよい。
【0035】
次に、撮像部5について、具体的に説明する。撮像部5は、テストパターンを記録した箇所を含む媒体Mを撮像し、色情報を取得する。
図7に示す波形W3の縦軸は、媒体Mの位置に対応して、撮像部5が取得した色情報を示している。波形W3は、媒体Mに対するラスターライン方向の色情報分布でもある。
【0036】
波形W3に示すように、制御部2は、取得した色情報から、媒体Mにおける媒体位置P(n)に対応する位置の色情報を抽出することができる。なお、色情報は、色が濃いほど小さい値を示す。色情報は、例えば、撮像部5により撮像して得られた輝度値を示すビットマップデータである。
媒体Mの繊維Fにテストパターンが記録されている。制御部2は、波形W3では、媒体Mの繊維Fの影となり易い位置では色情報が小さい値となるため、同じく色情報が小さい値となるテストパターンが記録されている繊維Fの位置とは、区別し難い。
【0037】
制御部2は、繊維位置でもある媒体位置P(n)の位置を中心とし、色情報をラスターライン方向へ空間フィルタリングによる平滑化処理を行う(S104)。使用する空間フィルターの値は、例えば、(-1/4, -1/4, 0, -1/4, -1/4)である。
図7に示す波形W4は、制御部2による色情報の平滑化処理の結果であるビットマップデータである。波形W4では、媒体Mの繊維Fの影とテストパターンとを区別し易くなっている。
制御部2は、波形W4において、所定の値より小さい極小値を求めることができる。制御部2は、波形W4の極小値を、テストパターンである3本の線であると判定することができる。
【0038】
制御部2は、波形W4の極小値に対応する位置に基づき、テストパターンである3本の線の位置を特定することができる(S105)。
具体的には、
図7に示すように、制御部2は、3本の線の位置を、基準点Bを基準として、右方向へ順に、位置L1,L2,L3として特定することができる。制御部2は位置L1,L2,L3を、それぞれ媒体位置P(n)に対応する位置として特定することもできる。
このように、制御部2は、波形W4により、媒体Mの繊維Fの影の影響を抑制することができ、テストパターンを抽出し易くなる。
【0039】
ところで、上述のように、制御部2は、媒体Mへインクを着弾させようとする目標とする位置の情報である、目標位置情報に基づき、テストパターンである3本の線を媒体Mに記録した。制御部2は、記録ヘッド6によって記録したテストパターンに基づいて媒体Mへの記録を補正可能である。
制御部2は、目標位置情報と、特定したテストパターンである3本の線の位置L1,L2,L3との間に、ずれが有るかを判定する(S106)。
制御部2は、目標位置情報が、特定したテストパターンである3本の線の位置L1,L2,L3と同じであり、位置L1,L2,L3との間にずれが無いと判定した場合(S106:NO)、処理を終了する。
【0040】
一方、制御部2は、目標位置情報が、特定したテストパターンである3本の線の位置L1,L2,L3と同じではなかった場合、位置L1,L2,L3との間にずれが有ると判定する(S106:YES)。
そして、制御部2は、目標位置情報を補正することにより、媒体Mへインクを着弾させる着弾位置を補正する(S107)。制御部2は、処理を終了する。
【0041】
例えば、目標位置情報が目標位置X1,X2,X3であったとする。制御部2は、目標位置X1に対し、位置L1が右方向に(Δ1)ずれていた場合、(Δ1)を補正値として取得する。制御部2は、目標位置X1を左方向へ補正するようにし、目標位置情報を(X1-Δ1)と補正する。
【0042】
同様に、制御部2は、目標位置X2に対し、位置L2が左方向に(Δ2)ずれていた場合、(Δ2)を補正値として取得する。制御部2は、目標位置X2を右方向へ補正するようにし、目標位置情報を(X2+Δ2)と補正する。同様に、制御部2は、位置L3が(Δ3)ずれていた場合、(Δ3)を補正値として取得する。制御部2は、目標位置X3も(Δ3)分、補正する。
補正値は、記録ヘッド6により吐出したインクが媒体Mに着弾する位置を補正するための値である。
このように、制御部2は、テストパターン、検出部4により検出した表面形状情報、及び、撮像部5により取得した色情報に基づいて補正値を取得し、補正することができる。
【0043】
制御部2は、特定したテストパターンである3本の線の位置L1,L2,L3に基づき、補正値を取得し、目標位置情報を補正して、記憶部3に記憶する。制御部2は、記録ヘッド6によりインクを吐出して媒体Mに記録する際、補正した目標位置情報を記憶部3から読み出して用いるようにする。
この結果、制御部2は、記録ヘッド6により媒体Mへインクを着弾させる着弾位置を補正でき、目標とする位置からずれることなく、媒体Mへインクを着弾させることができる。このように、制御部2は、記録ヘッド6によって記録したテストパターンに基づいて媒体Mへの記録を補正可能である。
【0044】
以上説明したように、検出部4は、記録ヘッド6によりテストパターンを記録した箇所を含む媒体Mの表面形状情報を取得する。また、撮像部5は、記録ヘッド6によりテストパターンを記録した箇所を含む媒体Mの色情報を取得する。制御部2は、テストパターン、表面形状情報及び色情報に基づいて、記録ヘッド6が吐出するインクが媒体Mの着弾位置を補正するための補正値を取得することができる。
このように、制御部2は、記録ヘッド6によって記録したテストパターンに基づいて媒体Mへの記録を補正可能である。
記録装置1は、テストパターンを変えることがなく、処理時間が掛かること、及び、消耗品の消費を抑制することができる。
【0045】
以上、これらの実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
例えば、上述では、検出部4は、キャリッジ7に搭載されて、左右方向に移動した。しかし、検出部4は、キャリッジ7に搭載されず、記録装置1のケースに固定するようにしてもよい。この場合、検出部4は、検出部4が上から媒体Mを検出できるように、媒体Mに向かって左右方向に回転するプリズムを備えるようにしてもよい。検出部4は、プリズムの回転に伴って検出光Sや反射光Rが走査するようにし、媒体Mを左右方向に亘って検出することができる。又は、検出部4自身が左右方向へ回転するようにしてもよい。
【0046】
例えば、撮像部5は、記録ヘッド6及び検出部4に対して搬送方向の上流に配置されていてもよい。
例えば、記録ヘッド6は、いわゆるライン型ヘッドとして構成され、キャリッジ7に搭載されず、記録装置1のケースに固定されるようにしてもよい。
例えば、記録ヘッド6が吐出するインクの色は、CMYKの淡色や濃色を含んでいてもよく、CMYK以外の色を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…記録装置、2…制御部、3…記憶部、4…検出部、5…撮像部、6…記録ヘッド、7…キャリッジ、8…搬送部、M…媒体。