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特開2024-27568経路設定方法、経路設定システム、及び経路設定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027568
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】経路設定方法、経路設定システム、及び経路設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240222BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240222BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130456
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】清澤 悠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 葵
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB14
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA04
2B043EA32
2B043EA37
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC15
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
5H301AA03
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG08
5H301LL01
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】ユーザーの要望に応じた旋回経路を設定することが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供する。
【解決手段】設定処理部213は、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させる圃場Fに含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定し、前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、圃場Fに応じて設定される作業経路とを含む目標経路Rを設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定することと、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定することと、
を実行する経路設定方法。
【請求項2】
前記複数の旋回経路の中から所定の旋回経路を選択する第1ユーザー操作を受け付け、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して、前記第1ユーザー操作により選択される旋回経路を設定する、
請求項1に記載の経路設定方法。
【請求項3】
前記作業領域を構成する複数の外周辺のそれぞれに対して前記第1ユーザー操作を受け付ける、
請求項2に記載の経路設定方法。
【請求項4】
前記複数の外周辺のそれぞれに対して異なる旋回方法の前記旋回経路が設定された場合に、操作画面において、前記複数の外周辺のそれぞれを異なる表示態様で表示させる、
請求項3に記載の経路設定方法。
【請求項5】
前記作業領域は、前記作業車両を往復走行させる内側領域と、前記作業車両を前記作業領域の外周に沿って周回走行させる外側領域とを含み、
前記外側領域における周回走行の周回数を選択する第2ユーザー操作を受け付ける、
請求項2に記載の経路設定方法。
【請求項6】
前記第2ユーザー操作において前記周回数として所定回数が選択された場合に、前記第1ユーザー操作を受付可能とする、
請求項5に記載の経路設定方法。
【請求項7】
前記所定回数は、前記所定回数分の合計作業幅が、前記内側領域の第1作業経路から第2作業経路に後進走行せずに旋回可能な幅未満となる回数である、
請求項6に記載の経路設定方法。
【請求項8】
前記作業領域は、前記作業車両を往復走行させる内側領域と、前記作業車両を前記作業領域の外周に沿って周回走行させる外側領域とを含み、
前記複数の旋回経路は、第1所定幅の前記外側領域において前記作業車両を旋回させる第1旋回経路と、前記第1所定幅よりも狭い第2所定幅の前記外側領域において前記作業車両を旋回させる第2旋回経路とを含み、
前記第1ユーザー操作において、前記第1旋回経路に対応する第1旋回モードと、前記第2旋回経路に対応する第2旋回モードとのいずれかを選択可能に表示する、
請求項2~7のいずれかに記載の経路設定方法。
【請求項9】
前記第1旋回経路は、旋回経路の開始点が第1位置に設定され、前記第2旋回経路は、旋回経路の開始点が前記第1位置よりも外周側の第2位置に設定される、
請求項8に記載の経路設定方法。
【請求項10】
前記第2旋回モードが選択された場合の前記作業車両の安全機能を、前記第1旋回モードが選択された場合の前記作業車両の安全機能よりも低下させる、
請求項8に記載の経路設定方法。
【請求項11】
前記作業車両の自動走行が開始された後において、前記第1ユーザー操作の受け付けを許可する、
請求項2に記載の経路設定方法。
【請求項12】
作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定し、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定する設定処理部を備える、
経路設定システム。
【請求項13】
作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定することと、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための経路設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる経路を設定する経路設定方法、経路設定システム、及び経路設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において作業車両を直進経路及び旋回経路のそれぞれにおいて自動走行させることが可能なシステムが知られている。前記旋回経路の旋回方法には、例えば後進走行を含まない旋回方法と、後進走行を含む旋回方法とがある。従来、ユーザーの選択操作に応じて旋回経路の旋回方法を設定する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-168812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、圃場に対して一律に旋回方法が設定されるため、圃場内の位置に応じて旋回方法を設定することができない。このため、圃場の状態、作業効率などの考慮したユーザーの要望に応じた旋回経路を設定することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、ユーザーの要望に応じた旋回経路を設定することが可能な経路設定方法、経路設定システム、及び経路設定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る経路設定方法は、作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定することと、前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定することと、を実行する経路設定方法である。
【0007】
本発明に係る経路設定システムは、作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定し、前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定する設定処理部を備える。
【0008】
本発明に係る経路設定プログラムは、作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定することと、前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための経路設定プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーの要望に応じた旋回経路を設定することが可能な経路設定方法、経路設定システム、及び経路設定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
図2A図2Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す側面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す上面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る圃場及び目標経路の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る圃場及び目標経路の他の例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される枕地設定画面の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回方法の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回方法の他の例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回方法の他の例を示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される圃場辺選択画面の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される優先モード選択画面の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される優先モード選択画面の一例を示す図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される優先モード選択画面の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される経路設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される走行画面の一例を示す図である。
図16A図16Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回方法の他の例を示す図である。
図16B図16Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の旋回方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10が田植機である場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、トラクタ、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、予め登録された圃場内を自動走行(自律走行)可能な構成を備える自動走行車両である。例えば、オペレータ(ユーザー)は作業対象の圃場を登録し、当該圃場に対して作業車両10を自動走行させる走行経路(目標経路)を設定する。作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場に対して予め設定された目標経路に従って自動走行する。また、作業車両10は、圃場内において自動走行しながら所定の作業(例えば植付作業)を行うことが可能である。
【0014】
例えば、作業車両10は、図3に示す圃場Fにおいて、目標経路Rに従って自動走行する。図3に示す圃場Fは、内側領域Faと枕地領域Fb(外側領域)とを含み、圃場Fの外側には周囲を囲うように畦A1(土手など)が形成されている。圃場Fには、複数の作業経路を含む目標経路Rが予め設定される。例えば、内側領域Faには作業開始位置Sから平行に往復走行する作業経路Raが設定され、枕地領域Fbには作業終了位置Gに向けて外周を渦巻状に走行(周回走行)する作業経路Rbが設定される。
【0015】
作業車両10は、作業開始位置Sから自動走行を開始し、内側領域Faにおいて作業経路Raに従って往復走行しながら作業を行う。また、作業車両10は、枕地領域Fbにおいて、作業経路Rbに従って作業終了位置Gまで周回走行しながら作業を行う。
【0016】
ここで、枕地領域Fbの作業経路Rbは、作業行程数に基づいて設定される。図3は、作業行程数が2行程の場合の作業経路Rbを示し、図4は、作業行程数が1行程の場合の作業経路Rbを示している。図3に示す作業経路Rbでは、作業車両10は、枕地領域Fbを2周だけ周回走行しながら作業を行う。図4に示す作業経路Rbでは、作業車両10は、枕地領域Fbを1周だけ周回走行しながら作業を行う。枕地領域Fbの幅は、作業行程数に応じた幅に設定される。このため、作業行程数が2行程(図3参照)の場合、枕地領域Fbの幅は作業車両10の作業幅の略2倍となり、作業行程数が1行程(図4参照)の場合、枕地領域Fbの幅は作業車両10の作業幅と略同一となる。
【0017】
同様に、内側領域Faの幅は、前記作業行程数に応じた幅に設定される。このため、作業行程数が2行程(図3参照)の場合、内側領域Faの幅は圃場Fの幅から作業車両10の作業幅を略4倍した長さを減算した幅となり、作業行程数が1行程(図4参照)の場合、内側領域Faの幅は圃場Fの幅から作業車両10の作業幅を略2倍した長さを減算した幅となる。図4に示す目標経路Rの場合、図3に示す目標経路Rと比較して、作業車両10は、隣接する作業経路Raを移動する際に圃場Fの外周辺(畦A1)に接近して旋回することになる。
【0018】
目標経路Rは、図3及び図4に示す経路に限定されず、圃場Fの形状、作業内容などに応じて適宜設定される。例えば、枕地領域Fbの作業行程数又は枕地領域Fbの幅に応じて、適宜目標経路Rが設定される。
【0019】
ところで、従来の技術では、圃場に対して一律に旋回方法が設定されるため、圃場内の位置に応じて旋回方法を設定することができない。このため、圃場の状態、作業効率などの考慮したオペレータの要望に応じた旋回経路を設定することが困難である。これに対して、本実施形態に係る自動走行システム1は、以下に示すように、圃場の位置に応じて旋回方法を異ならせるなど、オペレータの要望に応じた旋回経路を設定することが可能である。
【0020】
[作業車両10]
図1及び図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、車体部13、作業機14、通信部15、測位装置16、障害物検知部17などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、車体部13、作業機14、測位装置16、障害物検知部17などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0021】
初めに、作業車両10の一例である田植機について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは作業車両10(田植機)の側面図であり、図2Bは作業車両10の平面図である。作業車両10は、車体部13、左右一対の前輪132、左右一対の後輪133、作業機14(植付部)などを備える。
【0022】
車体部13の前部に配置されたボンネット134の内部には、エンジン(駆動部)131が配置されている。エンジン131が発生させた動力はミッションケース135を介して前輪132及び後輪133に伝達される。ミッションケース135を介して伝達された動力は、車体部13の後部に配置されたPTO軸37を介して作業機14にも伝達される。なお、PTO軸37には、植付クラッチ(作業クラッチ)(不図示)を介して動力が伝達されるように構成されている。車体部13の前後方向で前輪132と後輪133の間の位置には、オペレータが搭乗する運転座席138が設けられている。
【0023】
運転座席138の前方には、操舵ハンドル137、主変速レバー(不図示)、植付クラッチレバー(不図示)等の操作具が配置されている。操舵ハンドル137は、作業車両10の舵角を変更するための操作具である。主変速レバーは、「前進」、「後進」、「苗継」のポジションを少なくとも選択可能に構成されている。主変速レバーが「前進」の位置に操作されると、作業車両10を前進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が伝達される。主変速レバーが「後進」の位置に操作されると、作業車両10を後進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が駆動される。主変速レバーが「苗継」の位置に操作されると、前輪132、後輪133及びPTO軸37に対する動力の伝達が遮断される。また、植付クラッチレバーが操作されることで、植付クラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達する伝達状態と、植付クラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達しない遮断状態と、を切り替えることができる。
【0024】
作業機14は、車体部13の後方に昇降リンク機構31を介して連結されている。昇降リンク機構31は、トップリンク39及びロワーリンク38等を含む平行リンク構造により構成されている。ロワーリンク38には昇降シリンダ(昇降装置)32が連結されている。昇降シリンダ32を伸縮させることにより、作業機14全体を上下に昇降させることができる。これにより、作業機14を下降させて植付作業を行う下降位置と、作業機14を上昇させて植付作業を行わない上昇位置との間で作業機14の高さを変更させることができる。なお、昇降シリンダ32は油圧シリンダであるが、電動シリンダを用いてもよい。また、シリンダ以外のアクチュエータにより作業機14を昇降させる構成であってもよい。
【0025】
作業機14(植付部)は、植付入力ケース33、複数の植付ユニット34、苗載台35、複数のフロート36などを備えている。
【0026】
各植付ユニット34は、植付伝動ケース41及び回転ケース42を備えている。植付伝動ケース41には、PTO軸37及び植付入力ケース33を介して動力が伝達される。各植付伝動ケース41には、車幅方向の両側に回転ケース42が取り付けられている。各回転ケース42には、作業車両10の進行方向に並べて2つの植付爪43が取り付けられている。これら2つの植付爪43により1条分の植付が行われる。
【0027】
図2Aに示すように、苗載台35は、植付ユニット34の前方上方に配置されており、苗マットを載置可能に構成されている。苗載台35は、往復で横送り移動可能(横方向にスライド可能)に構成されている。また、苗載台35は、苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。この構成により、苗載台35は、苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給できるようになっている。こうして、作業車両10では、各植付ユニット34に対して苗を順次供給し、連続的に苗の植付けを行うことができる。
【0028】
図2Aに示すフロート36は、作業機14の下部に設けられ、その下面が地面に接触することができるように配置されている。フロート36が地面に接触することにより、苗を植え付ける前の田面が整地される。また、フロート36には、フロート36の揺動角を検出するフロートセンサ(不図示)が設けられている。フロート36の揺動角は、田面と作業機14との距離に対応している。作業車両10は、フロート36の揺動角に基づいて昇降シリンダ32を動作させて作業機14を上下に昇降させることにより、作業機14の対地高さを一定に保つことができる。
【0029】
予備苗台19は、ボンネット134の車幅方向外側に配置されており、予備のマット苗を収容した苗箱を搭載可能である。左右一対の予備苗台19の上部同士は、上下方向及び車幅方向に延びる連結フレーム18によって互いに連結されている。連結フレーム18の車幅方向の中央には、測位装置16が配置されている。測位装置16の内部には、測位制御部161、記憶部162、通信部163、測位用アンテナ164(図1参照)が配置されている。測位用アンテナ164は、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星からの電波を受信することができる。この電波に基づいて公知の測位計算が行われることにより、作業車両10の位置を取得することができる。
【0030】
車体部13の前方には障害物検知部17が設けられている。障害物検知部17は、例えば赤外線、超音波などを利用して所定の検知エリアの障害物を検出するセンサーで構成される。例えば、障害物検知部17は、レーザを用いて測定対象物(障害物)までの距離を3次元で測定可能なライダーセンサー(距離センサー)であってもよいし、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーセンサーであってもよい。前記障害物は、例えば畦A1、取水口、電柱、圃場F内に仮置きされた資材、人物などである。障害物検知部17は、前記障害物を検知すると、検知結果(測定情報)を車両制御装置11に送信する。車両制御装置11は、障害物検知部17が検知エリア内の障害物を検知した場合に、作業車両10を減速させたり停止させたりする。なお、障害物検知部17は、前方、後方、左側方、及び右側方のそれぞれに設けられてもよい。この場合、車両制御装置11は、各障害物検知部17の検知結果に基づいて作業車両10の走行を制御する。
【0031】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に自動走行処理を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rの経路データが記憶されてもよい。
【0032】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0033】
車両制御装置11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて作業車両10の動作を制御する。また、車両制御装置11は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定される目標経路Rとに基づいて、当該作業車両10の自動走行処理を実行する。
【0034】
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111、検出処理部112などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0035】
走行処理部111は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、操作端末20から走行開始指示を取得すると作業車両10の自動走行を開始させる。例えば、作業車両10の現在位置が走行開始条件を満たす位置にある場合において、操作端末20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は走行開始指示を作業車両10に出力する。走行処理部111は、操作端末20から前記走行開始指示を取得すると、目標経路Rに従って自動走行を開始させる。
【0036】
また、走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータが一時停止ボタンを押下すると、操作端末20は走行停止指示を作業車両10に出力する。
【0037】
また、走行処理部111は、障害物検知部17による検知結果に基づいて作業車両10の走行を制御する。
【0038】
検出処理部112は、障害物検知部17から検知結果(測定情報)を取得する。また、検出処理部112は、作業車両10が圃場Fの外周領域(枕地領域Fb)の目標経路Rを走行中に圃場Fの外周に位置する障害物を検出する。具体的には、検出処理部112は、障害物検知部17から検知エリアの測定情報を取得する。例えば、前記検知エリアに障害物が進入した場合に、検出処理部112は、障害物検知部17により測定される測定距離(障害物検知部17から障害物までの距離)を取得する。また、検出処理部112は、前記測定情報に基づいて障害物の位置及び形状を特定する。検出処理部112は、車両制御装置11とは異なる装置(検出装置)に含まれてもよい。前記検出装置は、障害物検知部17及び検出処理部112を含んで構成されてもよい。また、検出処理部112は、作業車両10に搭載されるセンサー(不図示)の検出結果に基づいて、車体の傾斜、位置ずれなどを検出してもよい。
【0039】
走行処理部111は、検出処理部112の検知結果に基づいて作業車両10の自動走行を制御する。具体的には、検出処理部112が前記障害物を検出したり、傾斜、位置ずれを検出したりした場合に、走行処理部111は、作業車両10を減速又は停止させる。また、走行処理部111は、作業車両10に前記障害物を回避する回避走行を実行させてもよい。
【0040】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0041】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0042】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。例えば、オペレータは、前記操作部において、作業対象の圃場Fを登録する操作を行う。
【0043】
また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する走行開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場Fを目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0044】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に後述の経路設定処理(図14参照)を実行させるための経路設定プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記経路設定プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記経路設定プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0045】
また、記憶部22には、作業車両10を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両10に関する各種情報の設定処理、作業車両10の目標経路Rの生成処理、作業車両10に対する自動走行指示などを行う。
【0046】
また、記憶部22には、作業車両10に関する情報である作業車両情報、目標経路Rに関する情報である目標経路情報などのデータが記憶される。前記作業車両情報には、作業車両10ごとに、車両番号、型式などの情報が含まれる。前記車両番号は、作業車両10の識別情報である。前記型式は、作業車両10の型式である。
【0047】
また、記憶部22には、1台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよいし、複数台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが複数台の作業車両10を所有する場合、各作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶部22に記憶される。
【0048】
前記目標経路情報には、目標経路Rごとに、経路名、圃場名、住所、圃場面積、作業時間などの情報が含まれる。前記経路名は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路名である。前記圃場名は、目標経路Rが設定された作業対象の圃場Fの名称である。前記住所は、圃場Fの住所であり、前記圃場面積は、圃場Fの面積である。前記作業時間は、作業車両10により圃場Fの作業に要する時間である。
【0049】
また、記憶部22には、一つの目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよいし、複数の目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが、自身が所有する一又は複数の圃場Fに対して複数の目標経路Rを生成した場合、各目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶部22に記憶される。なお、一つの圃場Fに対して、一つの目標経路Rが設定されてもよいし、複数の目標経路Rが設定されてもよい。
【0050】
なお、他の実施形態として、前記作業車両情報、前記目標経路情報などの情報の一部又は全部が、操作端末20からアクセス可能なサーバーに記憶されてもよい。オペレータは、前記サーバー(例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバーなど)において前記作業車両情報及び前記目標経路情報を登録する操作を行ってもよい。
【0051】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリとして使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0052】
図1に示すように、操作制御部21は、表示処理部211、受付処理部212、設定処理部213、出力処理部214などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0053】
表示処理部211は、操作表示部23に各種操作画面を表示させる。例えば、表示処理部211は、メニュー画面D1(図5参照)、枕地設定画面D2(図6参照)、圃場辺選択画面D3(図10参照)、優先モード選択画面D4(図11図13参照)、走行画面D5(図15参照)などの各種操作画面を操作表示部23に表示させる。
【0054】
受付処理部212は、前記各操作画面においてオペレータの操作(ユーザー操作)を受け付ける。例えば、受付処理部212は、メニュー画面D1(図5参照)において、圃場を登録する際に選択される「圃場登録」ボタン、作業機を登録する際に選択される「作業機登録」ボタン、作業領域を登録する際に選択される「作業領域登録」ボタン、目標経路を生成する際に選択される「経路作成」ボタンを押下する操作を受け付ける。
【0055】
設定処理部213は、オペレータにより選択される項目(「圃場登録」、「作業機登録」、「作業領域登録」、「経路作成」)について、オペレータの設定操作に基づいて各設定情報を登録する。例えば、設定処理部213は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)などを設定する。
【0056】
具体的には、設定処理部213は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の走行速度及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の走行速度及びエンジン回転数等の情報について、オペレータの登録操作に応じて当該情報を設定する。
【0057】
また、設定処理部213は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G、作業方向等の情報について、オペレータの登録操作に応じて当該情報を設定する。
【0058】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周辺に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0059】
また、設定処理部213は、作業情報として、作業車両10(無人トラクタ)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
【0060】
例えば、設定処理部213は、登録された圃場Fにおいて実際に作業を行うための作業領域を設定する。例えば、オペレータがメニュー画面D1(図5参照)の「作業領域登録」を選択し、作業領域として登録する圃場Fを選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、設定処理部213は、作業開始位置S及び作業終了位置Gを登録する登録画面(地図画面)を表示させる。オペレータは前記登録画面において、圃場F内の任意の位置に作業開始位置S及び作業終了位置Gを登録する。
【0061】
また、設定処理部213は、作業領域の設定において、枕地及び旋回経路に関する設定を行う。以下、具体例を説明する。
【0062】
例えば、表示処理部211は、作業領域の設定において、図6に示す枕地設定画面D2を表示させる。表示処理部211は、枕地設定画面D2において、枕地領域Fbの作業行程数(周回数)を選択可能に表示させる。例えば、表示処理部211は、枕地領域Fbの作業行程数を「1行程」(図4参照)に設定する設定ボタンK1と、枕地領域Fbの作業行程数を「2行程」(図3参照)に設定する設定ボタンK2とを選択可能に表示させる。
【0063】
オペレータは、枕地設定画面D2において、枕地領域Fbにおける作業行程について、「1行程」又は「2行程」のいずれかを選択することができる。受付処理部212は、オペレータから枕地領域Fbにおける作業行程数(周回数)を選択する操作(本発明の第2ユーザー操作に対応)を受け付ける。なお、枕地領域Fbの作業行程数が「2行程」に設定された場合、例えば図7に示すように、枕地領域Fbの幅は、2行程に応じた幅、すなわち作業幅の略2倍の長さになる。この場合、枕地領域Fbは、作業車両10が作業経路Ra1から次の作業経路Ra2に移動する際の十分な旋回幅を確保することができる。このため、作業車両10は、作業経路Ra1を作業した後に後進走行することなく、そのまま前進走行して旋回することが可能となる。
【0064】
これに対して、枕地領域Fbの作業行程数が「1行程」に設定された場合、例えば図8に示すように、枕地領域Fbの幅は、1行程に応じた幅、すなわち作業幅と略同一の長さになる。この場合、枕地領域Fbは、作業車両10が作業経路Ra1から次の作業経路Ra2に移動する際の十分な旋回幅を確保することが難しくなる。このため、作業車両10は、作業経路Ra1を作業した後に所定距離だけ後進走行し、その後に前進走行して旋回する必要がある。
【0065】
但し、例えば図8に示すように、内側領域Faに未作業領域(作業残り)が生じないように作業車両10を内側領域Faの端部まで作業させると、後進走行後の旋回開始位置が内側領域Faの端部付近になるため、作業車両10が旋回時に圃場F外に飛び出して畦A1に乗り上げてしまう恐れがある。なお、図8の符号E1は、作業経路Raにおける作業済領域を示している。これに対して、例えば図9に示すように、作業車両10が直進走行時及び旋回走行時に圃場F外に飛び出さないように作業経路Ra1の直進距離(図9の距離L1)を短縮する、すなわち作業車両10を内側領域Faの端部の手前で作業を終了させると、後進走行後の旋回開始位置が内側領域Faの端部よりも手前になるため、内側領域Faに未作業領域E2が生じてしまう。
【0066】
このように、枕地領域Fbの作業行程数が「1行程」に設定された場合には、枕地領域Fbに旋回走行に必要な十分な幅(旋回領域)を確保し難くなるため、作業効率を優先する旋回方法(図8参照)によれば旋回時の安全性が低下し、旋回時の安全性を優先する旋回方法(図9参照)によれば未作業領域が生じてしまう。
【0067】
そこで、本実施形態では、オペレータが作業行程ごとに所望の旋回方法を設定することが可能な構成を備える。例えば、オペレータが作業車両10による作業の効率を優先することを希望する場合には、図8に示す旋回方法により作業車両10を旋回走行させる。これに対して、オペレータが作業車両10を安全に旋回走行させることを希望する場合、すなわち作業車両10の旋回走行の安全性を優先する場合には、図9に示す旋回方法により作業車両10を旋回走行させる。
【0068】
なお、図9に示す安全性を優先する旋回方法の旋回経路は、枕地領域Fbの幅(枕地幅)が作業幅にならない可能性があるものの、内側領域Faにおける作業経路の経路長を調整(例えば短縮)することにより作業車両10を安全に旋回させることが可能な経路(本発明の第1旋回経路に相当)であり、図8に示す作業効率を優先する旋回方法の旋回経路は、畦などに乗り上げる可能性があるものの、内側領域Faにおける作業経路の経路長を維持したまま、枕地幅が作業幅と略一致する経路(本発明の第2旋回経路に相当)である。また例えば、安全性を優先する旋回方法の旋回経路は、第1所定幅(例えば作業幅よりも広い幅)の枕地領域Fbにおいて作業車両10を旋回させる経路であり、作業効率を優先する旋回方法の旋回経路は、前記第1所定幅よりも狭い第2所定幅(例えば作業幅と同じ幅)の枕地領域Fbにおいて作業車両10を旋回させる経路である。また、例えば、安全性を優先する旋回方法の旋回経路は、旋回経路の開始点が内周側にある経路であり、作業効率を優先する旋回方法の旋回経路は、旋回経路の開始点が外周側にある経路である。
【0069】
具体的には、枕地領域Fbの作業行程数が「1行程」に設定された場合、表示処理部211は、図10に示す圃場辺選択画面D3を表示させる。表示処理部211は、圃場辺選択画面D3において、旋回方法を設定する対象となる圃場Fの外周辺(圃場辺)を選択可能に表示させる。例えば、表示処理部211は、圃場Fの全ての外周辺を同じ旋回方法に設定する設定ボタンK3と、圃場Fの外周辺ごとに旋回方法を設定する設定ボタンK4とを選択可能に表示させる。
【0070】
オペレータは、圃場辺選択画面D3において、全ての外周辺をまとめて設定するか、又は、外周辺ごとに個別に設定するかを選択することができる。オペレータが設定ボタンK3を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、表示処理部211は、図11に示す優先モード選択画面D4を表示させる。表示処理部211は、優先モード選択画面D4において、旋回時の安全性を優先させる旋回方法(図9参照)を設定するための安全性優先モード(本発明の第1旋回モードに相当)に対応する設定ボタンK5と、旋回時の作業効率を優先させる旋回方法(図8参照)を設定するための作業効率優先モード(本発明の第2旋回モードに相当)に対応する設定ボタンK6とを選択可能に表示させる。
【0071】
例えば、オペレータが安全性優先モード(設定ボタンK5)を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、設定処理部213は、全ての外周辺に対して図9に示す旋回経路を設定する。これにより、作業車両10は、圃場F内を作業する際に図9に示す旋回経路に従って旋回走行する。
【0072】
また例えば、オペレータが作業効率優先モード(設定ボタンK6)を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、設定処理部213は、全ての外周辺に対して図8に示す旋回経路を設定する。これにより、作業車両10は、圃場F内を作業する際に図8に示す旋回経路に従って旋回走行する。
【0073】
また、図10に示す圃場辺選択画面D3においてオペレータが設定ボタンK4を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、表示処理部211は、図12に示す優先モード選択画面D4を表示させる。表示処理部211は、優先モード選択画面D4において、設定ボタンK5及び設定ボタンK6を選択可能に表示させるとともに、圃場Fの外周辺を個別に選択可能に表示させる。例えば図12に示す例では、オペレータは、優先モード選択画面D4において、圃場Fの四辺(上辺、下辺、左辺、右辺)のそれぞれを個別に選択することが可能である。
【0074】
例えば図12に示すように、オペレータが圃場Fの左辺を選択して安全性優先モード(設定ボタンK5)を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、設定処理部213は、圃場Fの左辺に対して図9に示す旋回経路を設定する。また例えば図13に示すように、オペレータが圃場Fの上辺を選択して作業効率優先モード(設定ボタンK6)を選択すると、受付処理部212は当該選択操作を受け付けて、設定処理部213は、圃場Fの上辺に対して図8に示す旋回経路を設定する。
【0075】
なお、表示処理部211は、図12及び図13に示すように、優先モード選択画面D4において、選択中の外周辺を、選択されていない外周辺とは異なる表示態様で表示させる。また、表示処理部211は、図13に示すように、旋回経路を設定済みの外周辺(左辺)を識別可能に表示させる。図13に示す例では、表示処理部211は、選択中の上辺を太実線で表示させ、旋回経路が設定済みの左辺を太点線で表示させ、未選択及び未設定の下辺及び右辺を細点線で表示させる。これにより、オペレータは、各外周辺の設定状態を容易に把握することができる。
【0076】
また、表示処理部211は、複数の外周辺のそれぞれに対して異なる旋回方法の旋回経路が設定された場合に、優先モード選択画面D4において、複数の外周辺のそれぞれを異なる表示態様で表示させてもよい。例えば、圃場Fの左辺に対して安全性優先モードが設定され(図12参照)、圃場Fの上辺に対して作業効率優先モードが設定された場合に(図13参照)、表示処理部211は、優先モード選択画面D4において、上辺と左辺とを異なる表示態様で表示させてもよい。
【0077】
以上のように、設定処理部213は、オペレータの設定操作に応じて、圃場Fを構成する複数の外周辺のそれぞれについて同一又は異なる旋回経路を設定する。なお、受付処理部212は、オペレータから前記作業行程数として所定回数(例えば「1行程」)が選択された場合に、旋回経路(優先モード)の選択操作の受け付けを許可してもよい。ここで、前記所定回数は、前記所定回数分の合計作業幅が、内側領域Faの作業経路Ra1から作業経路Ra2に後進走行せずに旋回可能な幅未満となる回数である。例えば、作業車両10が作業経路Ra1から作業経路Ra2に移動する際に作業車両10の作業幅分以上の領域が必要な場合、前記所定回数は1回に設定され、作業車両10が作業経路Ra1から作業経路Ra2に移動する際に作業車両10の作業幅の2倍の幅以上の領域が必要な場合、前記所定回数は2回に設定される。
【0078】
他の実施形態として、設定処理部213は、圃場Fの状態(形状など)に応じて前記複数の外周辺のそれぞれについて同一又は異なる旋回経路を設定してもよい。すなわち、設定処理部213は、オペレータの操作に依らず、圃場Fの外周辺のそれぞれに対して自動的に旋回経路を設定してよい。
【0079】
また、外周辺のそれぞれは、作業車両10の作業行程に対応する。例えば、圃場Fの上辺は、作業車両10が上辺方向に向かって直進する作業経路Raにおける作業行程に対応し、圃場Fの下辺は、作業車両10が下辺方向に向かって直進する作業経路Raにおける作業行程に対応する。また、圃場Fの左辺は、作業車両10が左辺に沿って直進する作業経路Raにおける作業行程に対応し、圃場Fの右辺は、作業車両10が右辺に沿ってに直進する作業経路Raにおける作業行程に対応する。
【0080】
また、圃場Fの上辺は、作業車両10が上辺に沿って直進する作業経路Rbにおける作業行程に対応し、圃場Fの下辺は、作業車両10が下辺に沿って直進する作業経路Rbにおける作業行程に対応する。また、圃場Fの左辺は、作業車両10が左辺に沿って直進する作業経路Rbにおける作業行程に対応し、圃場Fの右辺は、作業車両10が右辺に沿ってに直進する作業経路Rbにおける作業行程に対応する。
【0081】
すなわち、本実施形態において、設定処理部213は、作業車両10を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定する。
【0082】
また、受付処理部212は、オペレータから、複数の旋回経路(例えば図8及び図9)の中から所定の旋回経路を選択する操作(本発明の第1ユーザー操作に対応)を受け付け、設定処理部213は、複数の作業行程のそれぞれに対して、オペレータの操作により選択される旋回経路を設定する。また、設定処理部213は、圃場Fを構成する複数の外周辺のそれぞれに対してオペレータの前記操作を受け付ける。
【0083】
また、設定処理部213は、複数の作業行程のそれぞれに対して設定される旋回経路と、圃場Fに応じて設定される作業経路Ra、Rbとを含む目標経路Rを設定する。すなわち、設定処理部213は、前記各設定情報に基づいて、圃場Fにおいて作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成する。例えば、オペレータがメニュー画面D1(図5参照)の「経路作成」を選択すると、設定処理部213は、経路を生成するための登録画面(不図示)を表示させる。前記登録画面において、オペレータは、圃場F、作業機14、車速、エンジン回転などの各情報を登録した後、経路生成指示を行う。設定処理部213は、前記経路生成指示を取得すると、作業開始位置S、作業終了位置G、及び前記各情報に基づいて目標経路Rを生成する。
【0084】
例えば図3図4に示すように、設定処理部213は、作業開始位置S、作業終了位置G、作業経路Ra、Rbを含む目標経路Rを生成する。設定処理部213は、生成した目標経路Rを圃場Fに関連付けて登録する。
【0085】
出力処理部214は、目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。例えば、オペレータが作業対象の圃場F及び作業経路(目標経路R)を選択して作業開始操作を行うと、圃場Fに対応する目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。
【0086】
作業車両10は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路データを受信すると記憶部12に記憶する。また、作業車両10は、前記走行開始条件を満たす場合に、オペレータによる走行開始指示に応じて自動走行を開始する。オペレータは、作業車両10が自動走行している間、操作端末20において、圃場F内における走行状態を把握することが可能である。
【0087】
なお、操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0088】
[経路設定処理]
以下、図14を参照しつつ、自動走行システム1が実行する前記経路設定処理の一例について説明する。
【0089】
なお、本発明は、前記経路設定処理に含まれる一又は複数のステップを実行する経路設定方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記経路設定処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記経路設定処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは操作端末20の操作制御部21が前記経路設定処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該経路設定処理における各ステップを分散して実行する経路設定方法も他の実施形態として考えられる。
【0090】
先ずステップS1において、操作制御部21は、操作端末20の操作表示部23に枕地設定画面D2(図6参照)を表示させる。例えば、オペレータがメニュー画面D1(図5参照)の「経路作成」ボタンを押下すると、操作制御部21は、枕地設定画面D2を表示させる。
【0091】
次にステップS2において、操作制御部21は、枕地設定画面D2(図6参照)においてオペレータが枕地領域Fbの作業行程数として「1行程」を選択したか否かを判定する。操作制御部21は、オペレータが「1行程」(設定ボタンK1)を選択した場合(S2:Yes)、処理をステップS3に移行させる。一方、操作制御部21は、オペレータが「2行程」(設定ボタンK2)を選択した場合(S2:No)、処理をステップS8に移行させる。
【0092】
ステップS3において、操作制御部21は、操作表示部23に圃場辺選択画面D3(図10参照)を表示させる。操作制御部21は、圃場辺選択画面D3に、圃場Fの全ての外周辺を同じ旋回方法に設定する設定ボタンK3と、圃場Fの外周辺ごとに旋回方法を設定する設定ボタンK4とを選択可能に表示させる。
【0093】
次にステップS4において、操作制御部21は、圃場辺選択画面D3(図10参照)においてオペレータから外周辺の選択操作を受け付けたか否かを判定する。具体的には、操作制御部21は、オペレータから設定ボタンK3又は設定ボタンK4の選択操作を受け付けたか否かを判定する。操作制御部21は、前記選択操作を受け付けると(S4:Yes)、処理をステップS5に移行させる。操作制御部21は、前記選択操作を受け付けるまで待機する(S4:No)。
【0094】
ステップS5において、操作制御部21は、操作表示部23に優先モード選択画面D4(図11図12参照)を表示させる。操作制御部21は、優先モード選択画面D4において、旋回時の安全性を優先させる旋回方法(図9参照)を設定するための安全性優先モードに対応する設定ボタンK5と、旋回時の作業効率を優先させる旋回方法(図8参照)を設定するための作業効率優先モードに対応する設定ボタンK6とを選択可能に表示させる。なお、操作制御部21は、ステップS4において、オペレータから設定ボタンK3の選択操作を受け付けた場合、図11に示す優先モード選択画面D4を表示させ、オペレータから設定ボタンK4の選択操作を受け付けた場合、図12に示す優先モード選択画面D4を表示させる。
【0095】
次にステップS6において、操作制御部21は、優先モード選択画面D4(図11図12参照)においてオペレータから優先モードの選択操作を受け付けたか否かを判定する。具体的には、操作制御部21は、オペレータから設定ボタンK5又は設定ボタンK6の選択操作を受け付けたか否かを判定する。操作制御部21は、前記選択操作を受け付けると(S6:Yes)、処理をステップS7に移行させる。操作制御部21は、前記選択操作を受け付けるまで待機する(S6:No)。なお、図12に示す優先モード選択画面D4では、操作制御部21は、外周辺ごとにオペレータから優先モードの選択操作を受け付ける。
【0096】
ステップS7において、操作制御部21は、旋回経路を設定する。例えば、オペレータが圃場辺選択画面D3(図10参照)において「全ての辺を同じ設定にする」(設定ボタンK3)を選択して、優先モード選択画面D4(図11参照)において「安全性優先」(設定ボタンK5)を押下すると、操作制御部21は、圃場Fの全ての外周辺に対して図9に示す旋回経路(例えば、作業経路Ra1の経路長を短縮した旋回経路、又は、旋回経路の開始点が内周側にある旋回経路(第1旋回経路))を設定する。
【0097】
また例えば、オペレータが圃場辺選択画面D3において「全ての辺を同じ設定にする」(設定ボタンK3)を選択して、優先モード選択画面D4において「作業効率優先」(設定ボタンK6)を押下すると、操作制御部21は、圃場Fの全ての外周辺に対して図8に示す旋回経路(例えば、作業経路Ra1の経路長を維持した旋回経路、又は、旋回経路の開始点が外周側にある旋回経路(第2旋回経路))を設定する。
【0098】
また例えば、オペレータが圃場辺選択画面D3において「辺ごと設定にする」(設定ボタンK4)を選択して、優先モード選択画面D4において外周辺を選択して「安全性優先」(設定ボタンK5)を押下すると(図12参照)、操作制御部21は、当該外周辺に対して図9に示す旋回経路(第1旋回経路)を設定する。
【0099】
また例えば、オペレータが圃場辺選択画面D3において「辺ごと設定にする」(設定ボタンK4)を選択して、優先モード選択画面D4において外周辺を選択して「作業効率優先」(設定ボタンK6)を押下すると(図13参照)、操作制御部21は、当該外周辺に対して図8に示す旋回経路(第2旋回経路)を設定する。
【0100】
なお、操作制御部21は、外周辺ごとに旋回経路を設定する場合に、優先モード選択画面D4において、選択中の外周辺と、選択されていない外周辺と、設定済みの外周辺とをそれぞれ異なる表示態様で表示させる(図13参照)。また、操作制御部21は、複数の外周辺のそれぞれに対して異なる旋回方法の旋回経路が設定された場合に、設定された旋回経路ごとに前記複数の外周辺のそれぞれを異なる表示態様で表示させてもよい。
【0101】
次にステップS8において、操作制御部21は、圃場Fにおける旋回経路の設定処理が終了したか否かを判定する。操作制御部21は、圃場Fにおける旋回経路が登録された場合に旋回経路の設定処理が終了したと判断して(S8:Yes)、前記経路設定処理を終了する。操作制御部21は、圃場Fにおける旋回経路が登録されていない場合に旋回経路の設定処理が終了していないと判断して(S8:No)、処理をステップS1に戻す。
【0102】
操作制御部21は、上述の圃場Fにおける旋回経路の設定処理を終了すると、当該旋回経路と圃場Fに対して設定された作業経路Ra、Rbとを含む目標経路Rを設定する。また、操作制御部21は、設定した目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。これにより、作業車両10は、目標経路Rに従って自動走行処理を実行する。
【0103】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させる圃場F(作業領域)に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定し、前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、圃場Fに応じて設定される作業経路Ra、Rbとを含む目標経路Rを設定する。
【0104】
上記構成によれば、例えば圃場Fの外周辺に応じて異なる旋回経路を設定したり、内側領域Faを走行する際の旋回経路と枕地領域Fbを走行する際の旋回経路とを異ならせて設定したりすることができる。また、内側領域Faの作業経路ごとに異なる旋回経路を設定したり、枕地領域Fbの作業経路(周回経路)ごとに異なる旋回経路を設定したりすることもできる。このように、圃場Fの状態、作業経路の状態に応じて作業車両10の旋回方法を設定することができるため、オペレータの要望に応じた旋回経路を設定することが可能となる。例えば、オペレータは、旋回時の安全性を優先した旋回経路、作業効率を優先した旋回経路を設定することができる。例えば、圃場Fの上辺側には傾斜のある畦A1が存在し、下辺側に平坦な畦A1が存在する場合に、オペレータは上辺に対して安全性を優先した旋回経路(図9参照)を設定し、下辺に対して作業効率を優先した旋回経路(図8参照)を設定することができる。
【0105】
本発明の実施形態は、上述の実施形態に限定されず、以下に示す実施形態であってもよい。
【0106】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10の自動走行が開始された後においても、旋回経路を設定する操作の受け付けを許可してもよい。図15には、走行画面D5の一例を示している。操作制御部21は、作業車両10が自動走行を開始すると走行画面D5を表示させる。オペレータは、走行画面D5において作業状況などを把握することができる。操作制御部21は、走行画面D5において、圃場Fの外周辺の選択操作、「安全性優先」又は「作業効率優先」の選択操作を受け付ける。これにより、オペレータは、作業車両10の自動走行が開始された後に旋回経路を変更することができる。なお、操作制御部21は、作業車両10の走行の安全性を考慮して、作業車両10が自動走行を停止したこと又は減速したことを条件として、旋回経路を設定する操作の受け付けを許可してもよい。
【0107】
また、操作制御部21は、作業車両10の自動走行が開始された後においては、旋回経路を設定する操作を制限してもよい。例えば、操作制御部21は、内側領域Faにおける作業経路のみに対して旋回経路を変更する操作の受け付けを許可したり、枕地領域Fbにおける周回経路のみに対して旋回経路を変更する操作の受け付けを許可したりしてもよい。さらに、操作制御部21は、作業車両10の自動走行が開始された後では、作業効率優先の旋回経路から安全性優先の旋回経路への変更を許可し、安全性優先の旋回経路から作業効率優先の旋回経路への変更を禁止してもよい。
【0108】
ところで、図16A及び図16Bに示すように、圃場Fの外周辺が作業経路Raに対して傾斜している場合がある。この場合、図16Aに示すように、作業車両10は、図8に示す圃場Fと比較して、畦A1に乗り上げ易くなる。そこで、優先モードが安全性優先モードに設定された場合、操作制御部21は、図16Bに示すように、作業経路Raを直進した後の後進経路r1の距離を、外周辺の傾斜角度に応じた長さに設定する。具体的には、操作制御部21は、作業方向と外周辺のなす角θ(図16B参照)が小さいほど、後進経路r1の距離を長く設定する。これにより、作業車両10が旋回できる領域を確保することができるため、作業車両10を圃場Fからはみ出ることなる安全に旋回させることができる。
【0109】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、作業効率優先モードが設定された場合に、作業車両10の安全機能を、安全性優先モードが選択された場合の作業車両10の安全機能よりも低下させてもよい。例えば、操作制御部21は、作業効率優先モードが設定された場合の障害物検知部17の検知エリアが、安全性優先モードが設定された場合の障害物検知部17の検知エリアよりも狭くなるように制御指示を作業車両10に出力してもよい。これにより、作業効率優先モードが設定された場合に必要以上に作業車両10の安全機能が作動して作業効率が低下することを防ぐことができる。なお、換言すると、操作制御部21は、安全性優先モードが設定された場合に、作業車両10の安全機能を、作業効率優先モードが選択された場合の作業車両10の安全機能よりも高めてもよい。
【0110】
本実施形態に係る操作制御部21の各機能は、作業車両10の車両制御装置11に含まれてもよい。すなわち、上述の実施形態では、操作制御部21が本発明に係る経路設定システムに相当するが、本発明に係る経路設定システムは、作業車両10単体で構成されてもよい。また、本発明に係る経路設定システムは、作業車両10及び操作端末20を含んで構成されてもよい。また、操作制御部21の各機能が、操作端末20と通信可能なサーバーに含まれてもよい。
【0111】
[発明の付記]
以下、実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0112】
<付記1>
作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業領域に含まれる複数の作業行程のそれぞれに対して、旋回方法が異なる複数の旋回経路のうち所定の旋回経路を設定することと、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して設定される前記旋回経路と、前記作業領域に応じて設定される作業経路とを含む前記目標経路を設定することと、
を実行する経路設定方法。
【0113】
<付記2>
前記複数の旋回経路の中から所定の旋回経路を選択する第1ユーザー操作を受け付け、
前記複数の作業行程のそれぞれに対して、前記第1ユーザー操作により選択される旋回経路を設定する、
付記1に記載の経路設定方法。
【0114】
<付記3>
前記作業領域を構成する複数の外周辺のそれぞれに対して前記第1ユーザー操作を受け付ける、
付記2に記載の経路設定方法。
【0115】
<付記4>
前記複数の外周辺のそれぞれに対して異なる旋回方法の前記旋回経路が設定された場合に、操作画面において、前記複数の外周辺のそれぞれを異なる表示態様で表示させる、
付記2又は3に記載の経路設定方法。
【0116】
<付記5>
前記作業領域は、前記作業車両を往復走行させる内側領域と、前記作業車両を前記作業領域の外周に沿って周回走行させる外側領域とを含み、
前記外側領域における周回走行の周回数を選択する第2ユーザー操作を受け付ける、
付記2~4のいずれかに記載の経路設定方法。
【0117】
<付記6>
前記第2ユーザー操作において前記周回数として所定回数が選択された場合に、前記第1ユーザー操作を受付可能とする、
付記5に記載の経路設定方法。
【0118】
<付記7>
前記所定回数は、前記所定回数分の合計作業幅が、前記内側領域の第1作業経路から第2作業経路に後進走行せずに旋回可能な幅未満となる回数である、
付記6に記載の経路設定方法。
【0119】
<付記8>
前記作業領域は、前記作業車両を往復走行させる内側領域と、前記作業車両を前記作業領域の外周に沿って周回走行させる外側領域とを含み、
前記複数の旋回経路は、第1所定幅の前記外側領域において前記作業車両を旋回させる第1旋回経路と、前記第1所定幅よりも狭い第2所定幅の前記外側領域において前記作業車両を旋回させる第2旋回経路とを含み、
前記第1ユーザー操作において、前記第1旋回経路に対応する第1旋回モードと、前記第2旋回経路に対応する第2旋回モードとのいずれかを選択可能に表示する、
付記2~7のいずれかに記載の経路設定方法。
【0120】
<付記9>
前記第1旋回経路は、旋回経路の開始点が第1位置に設定され、前記第2旋回経路は、旋回経路の開始点が前記第1位置よりも外周側の第2位置に設定される、
付記8に記載の経路設定方法。
【0121】
<付記10>
前記第2旋回モードが選択された場合の前記作業車両の安全機能を、前記第1旋回モードが選択された場合の前記作業車両の安全機能よりも低下させる、
付記8に記載の経路設定方法。
【0122】
<付記11>
前記作業車両の自動走行が開始された後に前記第1ユーザー操作の受け付けを許可する、
付記2~10のいずれかに記載の経路設定方法。
【符号の説明】
【0123】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :車体部
14 :作業機
15 :通信部
16 :測位装置
17 :障害物検知部
20 :操作端末
21 :操作制御部
111 :走行処理部
112 :検出処理部
211 :表示処理部
212 :受付処理部
213 :設定処理部
214 :出力処理部
A1 :畦
F :圃場(作業領域)
Fa :内側領域
Fb :枕地領域(外側領域)
R :目標経路
Ra :作業経路
Rb :作業経路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B