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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027570
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】着座用アイソレータ
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20240222BHJP
   A61G 1/04 20060101ALI20240222BHJP
   B62B 9/14 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
A61G5/10
A61G1/04
B62B9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130458
(22)【出願日】2022-08-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月27日から令和4年7月29日にレジャー&アウトドアジャパン2022にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】516092337
【氏名又は名称】エアーストレッチャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一敏
【テーマコード(参考)】
3D051
【Fターム(参考)】
3D051CC07
3D051CC13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車椅子等に速やかにセッティングして利用者の十分な遮蔽性を確保できる着座用アイソレータを提供する。
【解決手段】線材によりループ状に構成した左,右,中間のフレームメンバを有し、各線材を被覆部により被覆し、かつ各被覆部を順次連結することにより全体が縦長の直方体状となるフレーム部を構成するとともに、下面部4dを開放し、かつ残りの面部4p…を柔軟な透明のシート材Sm…により閉塞してシートカバー部4を構成するアイソレータ本体部Umと、左面部4pのシート材Sm及び右面部4qのシート材Smの所定位置に開口部5p,5qを設け、かつ当該開口部5p,5qを第二シート材Ss…により遮蔽するとともに、この第二シート材Ss…に設けた出入口6pの大きさを変更可能な口径変更部8pからなるアイソレータ窓部Up,Uqとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した利用者を遮蔽する着座用アイソレータであって、弾性素材を用いた線材によりループ状に構成した、少なくとも左フレームメンバ,右フレームメンバ,及び前又は後に位置する中間フレームメンバを有し、各線材を、塑性素材を用いた被覆部により被覆し、かつ前記各フレームメンバにおける前記被覆部を順次連結して全体が縦長の直方体状となるフレーム部を構成するとともに、下面部を開放し、かつ残りの面部を柔軟な透明のシート材により閉塞してシートカバー部を構成するアイソレータ本体部と、前記左フレームメンバに囲まれた左面部のシート材及び/又は前記右フレームメンバに囲まれた右面部のシート材の所定位置に設けた開口部,この開口部を覆うとともに、出入口を設けた第二シート材により形成した遮蔽部,及び前記出入口の大きさを変更可能な口径変更部を有するアイソレータ窓部とを備えることを特徴とする着座用アイソレータ。
【請求項2】
前記線材は、断面が長方形の高弾性ステンレススチール素材を用いることを特徴とする請求項1記載の着座用アイソレータ。
【請求項3】
前記アイソレータ本体部は、前記シートカバー部の下面部に、第三シート材により筒状に形成し、かつ所定の長さに垂下げるサブカバー部を備えることを特徴とする請求項1記載の着座用アイソレータ。
【請求項4】
前記サブカバー部は、下部の少なくとも一部に、周方向に沿って設けた弾性伸縮部を有することを特徴とする請求項3記載の着座用アイソレータ。
【請求項5】
前記アイソレータ本体部は、前記左フレームメンバの前記被覆部と前記右フレームメンバの前記被覆部にそれぞれ取付けた左右一対のポール装着部と、各ポール装着部間に着脱して前記左フレームメンバと前記右フレームメンバ間の間隔を規制するポール部とを有する規制機能部を備えることを特徴とする請求項1記載の着座用アイソレータ。
【請求項6】
前記アイソレータ本体部は、前記中間フレームメンバに対向する面部(後面部又は前面部)におけるシートカバー部及び前記サブカバー部に、左右に開閉可能なファスナ部を備えることを特徴とする請求項1記載の着座用アイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子等に着座した利用者を遮蔽することによりウィルス感染等を防止するための着座用アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストレッチャー等に取付けることにより当該ストレッチャー等に横たわった被搬送者を遮蔽するカバー(アイソレータ)としては、特許文献1に開示される隔離用カバー、特許文献2に開示される担架の遮蔽カバー、特許文献3に開示されるストレッチャーカバーが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された隔離用カバーは、人体の身長や身幅に応じて縦横寸法を自由に変えることができ、保管に場所を取らず、緊急時の対応に支障がない隔離用カバーの提供を目的としたものであり、具体的には、横長の第1開口及び第2開口を有して人体の前面を被覆する前身頃と、人体の後面を被覆する後身頃と、第1開口を塞ぐ可撓性の透明なプレートと、第2開口を塞ぐ繊維不織布と、プレートを弾性変形させる第1及び第2ベルトとから構成され、それらベルトの自由部をプレートの側部に止着することで、プレートがカバーの厚み方向上方へ凸となるように湾曲するとともに、前後身頃とプレートとに囲繞された頭部収容スペースがカバーに形成されるように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2に記載された担架の遮蔽カバーは、担架に人を乗せて搬送する場合に、簡易に、確実に搬送される人を周囲から見えないように保護する担架の遮蔽カバーの提供を目的としたものであり、具体的には、担架に装着する担架カバーであって、担架で搬送される傷病者等を、前記傷病者等から所定の空間を隔てて、外部から見えないように覆う遮蔽部を設けて構成したものである。
【0005】
さらに、特許文献3に記載されたストレッチャーカバーは、搬送中の傷病人に対する周囲からのプライバシー保護と、雨天等の天候からの保護を実現しつつ、傷病人に圧迫感や息苦しさ、閉所の恐怖心を与えることなく、装脱容易性並びに収納性にも優れたストレッチャーカバーの提供を目的としたものであり、具体的には、非透明素材から成るシート材により寝台に傷病人を載置した状態で該傷病人の上方域から寝台下方周縁域までの全体を被覆し得るのに充分な面積を有して形成され、傷病人の少なくとも頭部に対応する箇所には空間を創出すべく所定間隔を空けて上下に二本のアーチを形成する骨格が備えられると共に、その二本のアーチの間に傷病人の表情を外部から視認可能な窓部を設けて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-205069号公報
【特許文献2】特開2020-73114号公報
【特許文献3】実用新案登録第3226603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のカバー(ストレッチャー用アイソレータ)は、主に、被搬送者に対するプライバシー保護等の観点から使用されるため、ウィルス等に対する感染対策としては、必ずしも有効に機能しない難点があった。
【0008】
一方、病院や高齢者施設等において、患者や高齢者を搬送する際に、ストレッチャー上で横たわった被搬送者(利用者)の場合には、従来のアイソレータを使用することが可能であるが、車椅子で移動する被搬送者の場合には物理的に使用することが困難になる課題が存在した。この問題は、足が不自由など、車椅子を利用する一般の人、さらには、通常のイス等に着座した一般の人であっても同様の課題が存在する。このため、従来より、このような着座した人が利用できる適切なアイソレータの実用化が望まれていた。
【0009】
なお、横たわった状態の利用者の場合、アイソレータも横長となるため、片側を少し持ち上げるのみで内部と外部を連通させる開口を容易に作ることができるが、着座した利用者の場合、このような連通空間を設けることが容易でないとともに、車椅子の場合、自身で車輪を操作する場合もある。加えて、何処へでも持ち運べる携帯性も重要な要素になるなど、着座した利用者に対する適切なアイソレータが何ら提案されていないのが実情である。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した着座用アイソレータの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するため、着座した利用者Hを遮蔽する着座用アイソレータ1であって、弾性素材を用いた線材Wによりループ状に構成した、少なくとも左フレームメンバ2p,右フレームメンバ2q,及び前又は後に位置する中間フレームメンバ2mを有し、各線材W…を、塑性素材を用いた被覆部3…により被覆し、かつ各フレームメンバ2p,2q,2mにおける被覆部3…を順次連結して全体が縦長の直方体状となるフレーム部Fを構成するとともに、下面部4dを開放し、かつ残りの面部4p,4q,4m,4r,4uを柔軟な透明のシート材Sm…により閉塞してシートカバー部4を構成するアイソレータ本体部Umと、左フレームメンバ2pに囲まれた左面部4pのシート材Sm…及び/又は右フレームメンバ2qに囲まれた右面部4qのシート材Smの所定位置に設けた開口部5p,5q,この開口部5p,5qを覆うとともに、出入口6p,6qを設けた第二シート材Ss…により形成した遮蔽部7p,7q,及び出入口6p,6qの大きさを変更可能な口径変更部8p,8qを有するアイソレータ窓部Up,Uqとを備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、線材Wには、断面が長方形の高弾性ステンレススチール素材を用いることができる。また、アイソレータ本体部Umは、シートカバー部4の下面部4dに、第三シート材Stにより筒状に形成し、かつ所定の長さに垂下げるサブカバー部11を設けることができるとともに、このサブカバー部11における下部11dの少なくとも一部には、周方向Dfに沿った弾性伸縮部12を設けることができる。一方、アイソレータ本体部Umには、左フレームメンバ2pの被覆部3と右フレームメンバ2qの被覆部3にそれぞれ取付けた左右一対のポール装着部13p,13qと、各ポール装着部13pと13q間に着脱して左フレームメンバ2pと右フレームメンバ2q間の間隔を規制するポール部13sとを有する規制機能部13を設けることができる。さらに、アイソレータ本体部Umの中間フレームメンバ2m(前面部4m)に対向する面部(後面部4r)におけるシートカバー部4及びサブカバー部11には、左右に開閉可能なファスナ部15を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る着座用アイソレータ1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 車椅子で移動する利用者Hなど、着座した状態であっても、利用者Hに対して必要となる上半身のほぼ全体を遮蔽し、かつ圧迫感の少ない内部空間を得ることができる。これにより、十分な遮蔽性能を確保できるなど、着座状態の利用者Hにとって最適なアイソレータとして提供することができる。しかも、使用しないときはコンパクトかつ偏平な状態に折畳むことができるなど、携帯性及び保管性に優れるとともに、使用する際は、バッグ等から取り出せば、ポップアップ方式により自動で使用形態に展開するため、車椅子等にも速やかにセッティングできるなど、取扱性に優れる。
【0015】
(2) アイソレータ窓部Up,Uqにより、内部と外部を連通する連通空間を設けることができるため、タオルや体温計等の物品の出入を容易に行うことができるとともに、この際に発生する内外の空気移動を最小限にできるなど、十分な遮蔽性を確保しつつ、内部と外部間における必要なやり取りなどを容易かつ迅速に行うことができる。しかも、車椅子の利用者Hであってもアイソレータ窓部Up,Uqにより自身で車輪を操作可能になるなど多機能性及び利便性を高めることができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、線材Wとして、断面が長方形の高弾性ステンレススチール素材を用いれば、本発明の目的である、ポップアップ方式により自動で使用形態に展開させ、速やかにセッティングするとともに、コンパクトかつ偏平な状態に折り畳む観点から、最適な線材Wとして使用することができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、アイソレータ本体部Umを構成するに際し、シートカバー部4の下面部4dに、第三シート材Stにより筒状に形成し、かつ所定の長さに垂下げるサブカバー部11を設ければ、開放された下面部4dに対して外部に対する開放口を、より下方に位置させることができるため、全体の遮蔽性をより高めることができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、サブカバー部11における下部11dの少なくとも一部には、周方向Dfに沿った弾性伸縮部12を設ければ、利用者Hに対して、サブカバー部11の下部11dをより密着させることができるため、遮蔽性を高めることができる。しかも、アイソレータ1の装着時における装着安定性をより高めることができるとともに、風等による容易な離脱を防止することができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、アイソレータ本体部Umに、左フレームメンバ2pの被覆部3と右フレームメンバ2qの被覆部3にそれぞれ取付けた左右一対のポール装着部13p,13qと、各ポール装着部13pと13q間に着脱して左フレームメンバ2pと右フレームメンバ2q間の間隔を規制するポール部13sとを有する規制機能部13を設ければ、ポール部13sによる位置規制機能及び補強機能を付加できるため、アイソレータ本体部Umの強度(剛性)及び形状安定性をより高めることができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、アイソレータ本体部Umの中間フレームメンバ2m(前面部4m)に対向する面部(後面部4r)におけるシートカバー部4及びサブカバー部11に、左右に開閉可能なファスナ部15を設ければ、利用者Hに対するアイソレータ1の装着時又は離脱時には、アイソレータ1の下側を広げることができるため、装着操作又は離脱操作をより容易かつ迅速に行うことができるとともに、装着時又は離脱時にアイソレータ1が利用者Hに当たってしまうなどの不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る着座用アイソレータの全体斜視図、
図2】同アイソレータの全体背面図、
図3】同アイソレータの全体平面図、
図4】同アイソレータにおけるアイソレータ窓部の閉じた状態の正面断面図、
図5】同アイソレータ窓部の開いた状態の正面断面図、
図6】同アイソレータのフレーム部の構成を示す斜視図、
図7】同アイソレータを収容するバッグの一例を示す斜視図、
図8】同アイソレータの展開方法及び折畳方法の説明図、
図9】同アイソレータの使用状態説明図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る着座用アイソレータ1の構成について、図1図6を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1に示すように、アイソレータ1は、基本的な構成として、アイソレータ本体部Umとこのアイソレータ本体部Umに設けたアイソレータ窓部Up,Uqを備える。
【0025】
アイソレータ本体部Umは、図6に示すように、弾性素材を用いた線材Wによりループ状に構成した左フレームメンバ2p,右フレームメンバ2q,及び前側に位置する中間フレームメンバ2mを備える。
【0026】
線材Wには、断面が長方形(例示は、5〔mm〕×1.5〔mm〕)の高弾性ステンレススチール素材を用いることができる。このように、線材Wとして、高弾性ステンレススチール素材を用いれば、本発明の目的である、ポップアップ方式により自動で使用形態に展開させ、速やかにセッティングするとともに、コンパクトかつ偏平な状態に折り畳む観点から、最適な線材Wとして使用することができる。各フレームメンバ2p,2q,2mはいずれも同一形状に形成する。したがって、同一のフレームメンバ2p…を三つ用意すればよい。
【0027】
また、各線材Wは、塑性素材を用いた被覆部3…により被覆する。塑性素材としては、強度に優れ、撥水性を有する合成繊維製のシート部材が望ましい。例示は、各フレームメンバ2p,2q…における線材W…の全部を被覆部3により被覆したが、適所に孔を設けるなど、線材W…の一部のみを被覆してもよい。被覆方法は、一枚のシート部材を線材Wに巻付け、両端辺を縫製すればよい。さらに、各フレームメンバ2p,2q,2mにおける被覆部3…は、縫製により順次連結することにより全体が縦長の直方体状となるフレーム部Fを構成する。
【0028】
この場合、各フレームメンバ2p,2q,2mは、図6に示すように、上下の短辺部2ps…,2qs…,2ms…を円弧状にし、短辺部2ps…,2qs…,2ms…間における長辺部2pl…,2ql…,2ml…を直線状になるように被覆部3…により覆うとともに、連結する被覆部3…同士の間隔は近接させて結合する。例示のフレームメンバ2p…の大きさは長手方向(縦方向)の長さは、100-110〔cm〕程度に選定するとともに、短手方向(横方向)の長さは、45〔cm〕程度に選定した。
【0029】
そして、直方体状となるフレーム部Fにおける左面部4p,右面部4q,前面部4m,後面部4r,及び上面部4uは、柔軟な透明のシート材Sm…により閉塞する。このシート材Sm…によりシートカバー部4が構成される。また、下面部4dは開放する。例示の場合、シート材Smには、0.2mm厚の熱可塑性ポリウレタン(TPU)素材を用いた。このように、シートカバー部4の全部(又は一部)を、透明のシート材Smにより形成すれば、シートカバー部4の内側に居る利用者Hの状態を外部から容易かつ確実に視認することができるため、例えば、利用者の容体が急変したような場合であっても速やかに対応することができる。
【0030】
なお、シートカバー部4の取付けに際しては、各面部4p,4q,4m,4r,4uの形状に対応するシート材Sm…を予め用意し、各被覆部3…を縫製する際に、一緒に縫製することにより結合することができる。
【0031】
一方、図1に示すように、左フレームメンバ2pに囲まれた左面部4p及び右フレームメンバ2qに囲まれた右面部4qにおけるシート材Smの所定位置、具体的には、中央付近には、各フレームメンバ2p,2qの長手方向全長に対して、1/3程度の長さの径を有する円状或いは楕円状のアイソレータ窓部Up,Uqを設ける。
【0032】
右側のアイソレータ窓部Uqは、図4に示すように、右フレームメンバ2qに囲まれた右面部4qのシート材Smに設けた開口部5q,この開口部5qを覆うとともに、出入口6qを設けた第二シート材Ss…により形成した遮蔽部7q,及び出入口6qの大きさを変更可能な口径変更部8qを備える。この場合、開口部5qの内径と同じ大きさの内径を有するプラスチックシート等で形成したリング形の窓枠部21を用意し、この窓枠部21と第二シート材Ssにより形成した筒状の遮蔽部7qの一端開口側を、開口部5qの縁部に対して一緒に縫製して固定することができる。また、遮蔽部7qの他端開口側は出入口6qとして形成し、この他端開口側に口径変更部8qを設ける。口径変更部8qは、遮蔽部7qの他端開口側の縁部を、周縁に沿って開閉紐23を通すことができるトンネル状の袋部24に形成し、この袋部24に、開閉紐23を通すとともに、開閉紐23の両端側を、図4に示すように、袋部24の両端開口から外部に引き出すことにより構成することができる。なお、25は開閉紐23に装着した紐ストッパを示す。
【0033】
これにより、紐ストッパ25の固定ロックを解除し、図4に実線で示すように、袋部24に対して開閉紐23を引出して出入口6pを窄めた後、紐ストッパ25を再固定ロックすれば、出入口6pを小径化して閉モードにすることができるとともに、紐ストッパ25の固定ロックを解除すれば、図4に仮想線で示すように、出入口6pを拡げて大径化する開モードにすることができる。このように、口径変更部8pを操作することにより、出入口6pの大きさを容易に変更することができる。
【0034】
以上、右側のアイソレータ窓部Uqについて説明したが、左側のアイソレータ窓部Upも、右側のアイソレータ窓部Uqと同様に構成できるとともに、全体の形状が非対称形の場合には、右側のアイソレータ窓部Uqと左側アイソレータ窓部Upを、左右対称形に構成すればよい。
【0035】
他方、アイソレータ本体部Umにおけるシートカバー部4の下面部4dには、サブカバー部11を設ける。この場合、図1に示すように、第三シート材Stにより筒状に形成し、かつ所定の長さに垂下げるサブカバー部11の上端縁を、開放された下面部4dに連通するように結合することができる。この第三シート材Stには、前述した第二シート材Ssと同じ素材を用いることができる。このようなサブカバー部11を設ければ、開放された下面部4dに対して外部に対する開放口を、より下方に位置させることができるため、全体の遮蔽性をより高めることができる。
【0036】
また、サブカバー部11における下部11dには、周方向Dfに沿った弾性伸縮部12を設ける。この弾性伸縮部12は、弾性伸縮可能なゴム素材により形成できる。例示は、全周に沿って設けた場合を示したが一部の範囲であってもよい。このような弾性伸縮部12を設ければ、利用者Hに対して、サブカバー部11の下部11dをより密着させることができるため、遮蔽性を高めることができる。しかも、アイソレータ1の装着時における装着安定性をより高めることができるとともに、風等による容易な離脱を防止することができる。
【0037】
さらに、図2及び図3に示すように、アイソレータ本体部Umの上端(又はその近傍)には規制機能部13を設ける。この規制機能部13は、アイソレータ本体部Umの上部Umuにおける左右の被覆部3…に一対のポール装着部13p,13qを設けるとともに、このポール装着部13p,13q間に着脱可能なポール部13sを備えて構成する。このポール部13sは、中間フレームメンバ2mの横幅にほぼ一致する長さに選定した一本のポールを用いてもよいし、長さ調整可能な伸縮式のポールを用いてもよい。これにより、図2及び図3に示すように、ポール装着部13p,13q間にポール部13sを装着した際には、左フレームメンバ2pと右フレームメンバ2q間の間隔をポール部13sにより規制することができる。このような規制機能部13を設ければ、ポール部13sによる位置規制機能及び補強機能を付加できるため、アイソレータ本体部Umの強度(剛性)及び形状安定性をより高めることができる。
【0038】
一方、図2及び図3に示すように、アイソレータ本体部Umの中間フレームメンバ2mにおける前面部4mに対向する面部となる後面部4rのシートカバー部4及びサブカバー部11には、左右に開閉可能なファスナ部15を設ける。即ち、後面部4rの左右方向の中央位置に、サブカバー部11の下端縁から後面部4r及び上面部4uの前端位置に至るファスナ部15、このファスナ部15には上下から開閉可能なダブルファスナを使用することが望ましい。このようなファスナ部15を設ければ、利用者Hに対するアイソレータ1の装着時又は離脱時には、アイソレータ1の下側を広げることができるため、装着操作又は離脱操作をより容易かつ迅速に行うことができるとともに、装着時又は離脱時にアイソレータ1が利用者Hに当たってしまうなどの不具合を回避することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る着座用アイソレータ1の使用方法について、図1図9を参照して説明する。
【0040】
図7は、アイソレータ1を収容するバッグBの一例を示す。このバッグBは、横幅Ldが40cm、厚みは9cm程度である。したがって、非使用時におけるアイソレータ1は、折畳むことにより、このバッグBに収容することができる。なお、BfはバッグBのバッグ口を示し、このバッグ口Bfはファスナにより開閉することができる。
【0041】
図8は、アイソレータ1の折畳時と展開時における各態様を示している。図8(c)は、中間フレームメンバ2mに対して、左フレームメンバ2p及び右フレームメンバ2qをそれぞれ180〔゜〕折り重ねた状態を示す。即ち、図8(c)は、下端に中間フレームメンバ2mが位置し、この中間フレームメンバ2mの上に右フレームメンバ2q、さらに、この右フレームメンバ2qの上に左フレームメンバ2pが順次重なり、上面に左フレームメンバ2pが現れた状態を示している。
【0042】
そして、折畳む際は、図8(c)に示す長手方向における二カ所K1とK2(長手方向にほぼ三分割位置)を、図8(b)示すように180゜にわたって捻れば、図8(b)のように、三つの円形状ができるため、捻りながら重ねることにより、図8(a)に示す三つの円形状が重なる偏平な状態に折畳むことができる。このように折畳んだアイソレータ1は、そのまま前述したバッグBに収容することができる。
【0043】
次に、この収容状態のアイソレータ1を使用する際の手順について説明する。まず、バッグBからアイソレータ1を取出す。この状態は図8(a)に示す状態となる。そして、取出したアイソレータ1は床面等の上にそのまま放置すれば、アイソレータ1の各フレームメンバ2p,2q,2mは、弾性素材を用いた線材Wによりループ状に構成され、かつ各線材Wは、塑性素材を用いた被覆部3…により被覆されているため、各フレームメンバ2p,2q,2mの弾性復帰作用により、図8(b)に示すように、自動でポップアップ展開するとともに、最終的に、図8(c)に示す三つのフレームメンバ2p,2q,2mが重なった状態になる。
【0044】
この状態から、上端の左フレームメンバ2pを左側直角方向に広げるとともに、この後、右フレームメンバ2qを右側直角方向に広げる。これにより、図6の状態にすることができる。そして、図3に示すように、ポール部13sを用意し、このポール部13sの一端を、一方のポール装着部13pに挿入するとともに、他端を、他方のポール装着部13pに挿入する。図2及び図3は、ポール部13sを装着した状態を示す。
【0045】
以上により、アイソレータ1を使用できる状態になるため、ファスナ部15を開き、サブカバー部11から後面部4rにかけて必要な範囲にわたって広げる。図2及び図3に仮想線で示す11s…,4rs…が広げたサブカバー部11及び後面部4rを示している。そして、この状態のアイソレータ1を、図9に示すように、車椅子Rの座面Rsに着座した利用者(被搬送者)Hに対して、そのまま上から被せるように装着すればよい。装着により、アイソレータ1の下端が利用者Hの股Hsの上に載る状態になったら装着は終了するため、この状態でファスナ部15を閉めればよい。図9は、車椅子Rに着座した利用者(被搬送者)Hにアイソレータ1を装着し、例えば、介護者Huが車椅子Rを操作している状態を示している。このように、着座した利用者Hに対するアイソレータ1の装着は、極めて容易かつ迅速に行うことができる。
【0046】
一方、この状態で、介護者Huから利用者Hに対してタオルや体温計等の物品を渡したり、利用者Hからこれらを介護者Huに対して戻すような場合には、アイソレータ窓部Up(アイソレータ窓部Uq側も同じ)を通して行うことができる。この場合、紐ストッパ25の固定ロックを解除し、図4に示すように、実線で示す小径化した出入口6pを、仮想線で示すように拡げて大径化できるため、図6に示すように、大径化した出入口6pから手Hhを入れて渡すことができるとともに、必要により、開閉紐23を引張り、出入口6pを絞ることにより、大径化により生じた隙間を無くすことができる。この状態であっても遮蔽部7pの存在により出入口6pの位置はある程度自由に動かすことができる。
【0047】
よって、このような本実施形態に係る着座用アイソレータ1によれば、基本的な構成として、弾性素材を用いた線材Wによりループ状に構成した、少なくとも左フレームメンバ2p,右フレームメンバ2q,及び前又は後に位置する中間フレームメンバ2mを有し、各線材W…を、塑性素材を用いた被覆部3…により被覆し、かつ各フレームメンバ2p,2q,2mにおける被覆部3…を順次連結して全体が縦長の直方体状となるフレーム部Fを構成するとともに、下面部4dを開放し、かつ残りの面部4p,4q,4m,4r,4uを柔軟な透明のシート材Sm…により閉塞してシートカバー部4を構成するアイソレータ本体部Umと、左フレームメンバ2pに囲まれた左面部4pのシート材Sm…及び/又は右フレームメンバ2qに囲まれた右面部4qのシート材Smの所定位置に設けた開口部5p,5q,この開口部5p,5qを覆うとともに、出入口6p,6qを設けた第二シート材Ss…により形成した遮蔽部7p,7q,及び出入口6p,6qの大きさを変更可能な口径変更部8p,8qを有するアイソレータ窓部Up,Uqとを備えるため、車椅子で移動する利用者Hなど、着座した状態であっても、利用者Hに対して必要となる上半身のほぼ全体を遮蔽し、かつ圧迫感の少ない内部空間を得ることができる。これにより、十分な遮蔽性能を確保できるなど、着座状態の利用者Hにとって最適なアイソレータとして提供することができる。しかも、使用しないときはコンパクトかつ偏平な状態に折畳むことができるなど、携帯性及び保管性に優れるとともに、使用する際は、バッグ等から取り出せば、ポップアップ方式により自動で使用形態に展開するため、車椅子等にも速やかにセッティングできるなど、取扱性に優れる。
【0048】
また、アイソレータ窓部Up,Uqにより、内部と外部を連通する連通空間を設けることができるため、タオルや体温計等の物品の出入を容易に行うことができるとともに、この際に発生する内外の空気移動を最小限にできるなど、十分な遮蔽性を確保しつつ、内部と外部間における必要なやり取りなどを容易かつ迅速に行うことができる。しかも、車椅子の利用者Hであってもアイソレータ窓部Up,Uqにより自身で車輪を操作可能になるなど多機能性及び利便性を高めることができる。
【0049】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0050】
例えば、線材Wには、高弾性ステンレススチール素材を用いることが望ましいが、同様の機能を有する他の弾性素材により置換可能である。また、線材Wの断面は、長方形に形成することが望ましいが、例えば、断面を円形等の他の形状に選定する場合を排除するものではない。さらに、シート材Smとしては、0.2mm厚の熱可塑性ポリウレタン素材が望ましいが、同様の機能を有する他の素材により置換可能である。一方、ポール部13sを有する規制機能部13を設けた場合を示したが、同様の機能を有する他の構成により置換可能である。また、サブカバー部11は、必ずしも設けることを要しないとともに、弾性伸縮部12も必須の構成要素ではなく、弾性伸縮部12の無いサブカバー部11を単に垂らすようにしてもよい。
【0051】
他方、アイソレータ窓部Up,Uqは、一例として、左面部4pと右面部4qにそれぞれ一カ所設けた場合を示したが、必要に応じて二か所以上設けてもよい。特に、例示のアイソレータ窓部Up,Uqは、左面部4p,右面部4qのそれぞれ中央付近に設けたが、各アイソレータ窓部Up,Uqと各フレームメンバ2p,2qの下端間における左面部4pと右面部4qに、位置を変更したアイソレータ窓部Up,Uq,又は追加のアイソレータ窓部を設け、利用者Hがこのアイソレータ窓部から手を外に出すことにより、自力で車輪を操作できるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る着座用アイソレータは、患者や高齢者をはじめ様々な人が使用する車椅子に利用できるとともに、感染防止が必要となるイベント会場等の一般的な椅子、さらには畳等の上に座った状態の人など、着座する場合における各種用途のアイソレータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:着座用アイソレータ,2p:左フレームメンバ,2q:右フレームメンバ,2m:中間フレームメンバ,3…:被覆部,4:シートカバー部,4d:下面部,4p:左面部,4q:右面部,4m:前面部(中間面部),4r:後面部,4u:上面部,5p:開口部,5q:開口部,6p:出入口,6q:出入口,7p,遮蔽部,7q:遮蔽部,8p:口径変更部,8q:口径変更部,11:サブカバー部,11d:サブカバー部の下部,12:弾性伸縮部,13:規制機能部,13p:ポール装着部,13q:ポール装着部,13s:ポール部,15:ファスナ部,Sm…:シート材,Ss…:第二シート材,St:第三シート材,H:利用者,W:線材,F:フレーム部,Um:アイソレータ本体部,Up:アイソレータ窓部,Uq:アイソレータ窓部,Df:周方向
図1
図2
図3
図4
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図8
図9