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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027571
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】熱対策機器選定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130459
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃大
(72)【発明者】
【氏名】安部 雄太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】ユーザーの利用負担を抑制しつつ、より適切にユーザーの利用環境にあわせた熱対策機器の選定をできるようにすること。
【解決手段】電気電子機器収納用箱を設置する設置エリアを入力可能な設置エリア入力手段12aと、複数のエリアに分けて電気電子機器収納用箱の外部の環境情報が記憶された環境情報記憶部11cと、設置エリア入力手段を用いて設置エリアが入力された場合に、環境情報記憶部より設置エリアの環境情報を取得する環境情報特定手段12bと、環境情報特定手段で特定した設置エリアの環境情報と、入力された電気電子機器収納用箱の情報を用いて、電気機器又は電子機器を搭載する電気電子機器収納用箱に取り付けられる熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な演算手段12と、を備えた電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システムとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気電子機器収納用箱を設置する設置エリアを入力可能な設置エリア入力手段と、
複数のエリアに分けて電気電子機器収納用箱の外部の環境情報が記憶された環境情報記憶部と、
設置エリア入力手段を用いて設置エリアが入力された場合に、環境情報記憶部より設置エリアの環境情報を取得する環境情報特定手段と、
環境情報特定手段で特定した設置エリアの環境情報と、入力された電気電子機器収納用箱の情報を用いて、電気機器又は電子機器を搭載する電気電子機器収納用箱に取り付けられる熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な演算手段と、を備えた電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項2】
環境情報記憶部に記憶された環境情報に、エリアにおける外気の最高温度である外気最高温度データ、エリアにおける外気の最低温度である外気最低温度データ、エリアにおける太陽光からの放射エネルギー量である日射量データの何れかを含み、
演算手段は、設置エリアの外気最高温度データ、外気最低温度データ、又は日射量データを用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な請求項1に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項3】
利用者により指定した電気電子機器収納用箱の向きとは異なる向きにした場合の熱対策機器の必要能力の演算、または、熱対策機器の選定を可能とする他条件選定手段を備えた請求項2に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項4】
利用者が指定した熱対策機器とは異なる熱対策機器を提案可能とする他条件選定手段を備えた請求項2に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項5】
熱対策機器又は電気電子機器収納用箱の使用日時を入力手段で指定可能であり、
指定された使用日時に対応する環境情報を利用可能な請求項2に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項6】
設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を取得可能であり、
演算手段は
設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な請求項1から請求項5のいずれかに記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項7】
設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最高温度データと日射量データの何れか又は必要能力の緩和条件となる風速のデータを取得可能であり、
演算手段は、
外気最高温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の冷却必要能力の演算、または、冷却必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な請求項6に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【請求項8】
設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最低温度データと風速のデータの何れか又は、必要能力の緩和条件となる日射量のデータを取得可能であり、
演算手段は、
外気最低温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の加熱必要能力の演算、または、加熱必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な請求項6に記載の電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤、ラック、制御盤、配電盤など、電気機器、電子機器を搭載した電気電子機器収納用箱の筐体内外に取り付けられる熱対策機器の選定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤などの電気電子機器収納用箱には、様々な種類の熱対策機器が用意されている。また、外気の温度や機器の発熱によって、電気電子機器収納用箱の筐体が熱せられると、内部に搭載した電気機器・電子機器の寿命の低下・故障の原因になる。そのため、特許文献1では、選定者が想定最高外気温などを入力できるようにして熱対策機器を選定できるようにしている。特許文献1の開示の技術では、電気電子機器収納用箱のボックスのサイズや、内部機器の発熱量、地域の想定される最高外気温度、盤内温度をどの温度にしたいかを示す盤内許容温度、などを入力することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-93002号公報
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術では、最高外気温度など基本的な外部影響による情報は利用者が想定するものを入力することになる。また、日射量の計算のベースとなるデータは、設置される地域に関わらず同じデータを利用していたため、利用地域によっては適切な計算ができず、オーバースペックとなったり、容量が足りなかったりする虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、ユーザーの利用負担を抑制しつつ、より適切にユーザーの利用環境にあわせた熱対策機器の選定をできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電気電子機器収納用箱を設置する設置エリアを入力可能な設置エリア入力手段と、複数のエリアに分けて電気電子機器収納用箱の外部の環境情報が記憶された環境情報記憶部と、設置エリア入力手段を用いて設置エリアが入力された場合に、環境情報記憶部より設置エリアの環境情報を取得する環境情報特定手段と、環境情報特定手段で特定した設置エリアの環境情報と、入力された電気電子機器収納用箱の情報を用いて、電気機器又は電子機器を搭載する電気電子機器収納用箱に取り付けられる熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な演算手段と、を備えた電気電子機器収納用箱の熱対策機器選定システムとする。
【0007】
また、環境情報記憶部に記憶された環境情報に、エリアにおける外気の最高温度である外気最高温度データ、エリアにおける外気の最低温度である外気最低温度データ、エリアにおける太陽光からの放射エネルギー量である日射量データの何れかを含み、演算手段は、設置エリアの外気最高温度データ、外気最低温度データ、又は日射量データを用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とすることが好ましい。
【0008】
また、利用者により指定した電気電子機器収納用箱の向きとは異なる向きにした場合の熱対策機器の必要能力の演算、または、熱対策機器の選定を可能とする他条件選定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、利用者が指定した熱対策機器とは異なる熱対策機器を提案可能とする他条件選定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、熱対策機器又は電気電子機器収納用箱の使用日時を入力手段で指定可能であり、指定された使用日時に対応する環境情報を利用可能な構成とすることが好ましい。
【0011】
また、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を取得可能であり、演算手段は設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0012】
また、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最高温度データと日射量データの何れか又は必要能力の緩和条件となる風速のデータを取得可能であり、演算手段は、外気最高温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の冷却必要能力の演算、または、冷却必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0013】
また、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最低温度データと風速のデータの何れか又は、必要能力の緩和条件となる日射量のデータを取得可能であり、演算手段は、外気最低温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の加熱必要能力の演算、または、加熱必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ユーザーの利用負担を抑制しつつ、より適切にユーザーの利用環境にあわせた熱対策機器の選定をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における熱対策機器選定システムの概念図である。
図2】キャビネットデータベースの例を示す図である。
図3】熱対策機器データベースの例を示す図である。
図4】環境データベースの例を示す図である。
図5】環境データベースの例を示す図である。
図6】環境データベースの例を示す図である。
図7】入力画面での入力から演算結果を得るまでの流れの例を示す図である。
図8】入力画面1の例を示す図である。
図9】入力内容をプルダウンを用いて選択できるようにした例を示す図である。
図10】入力内容を図で表した例を示す図である。
図11】塗装色と太陽吸収率の例を示す図である。
図12】物質と熱伝導率の例を示す図である。
図13】入力画面2の例を示す図である。
図14】演算結果を示す画面の例を示す図である。ただしペルチェ式クーラの使用台数は1台としている。
図15】演算結果を示す画面の例を示す図である。ただしペルチェ式クーラの使用台数は2台としている。
図16】熱対策機器選定システムで発注などをするために用いる画面の例を示した図である。
図17】熱対策機器選定システムでキャビネットの取付有効範囲の情報を利用できることを示す図である。ただし、六面図のうち着色されていない部分が取付有効範囲である。
図18】熱対策機器選定システムで熱対策機器の取付形状の情報を利用できることを示す図である。
図19】電気電子機器収納用箱の向きの提案をした例を示す図である。
図20】異なる種類の熱対策機器の提案をした例を示す図である。
図21】異なるキャビネットのサイズの提案をした例を示す図である。
図22】負荷使用最大時間帯を入力できるようにした例を示す図である。
図23】負荷使用最大時間帯と負荷使用最大月を入力できるようにした例を示す図である。
図24】負荷使用最大時間帯と使用終了時間を入力できるようにした例を示す図である。
図25】電気電子機器収納用箱に雪が積もった状態を示す図である。
図26】工場のエリア毎に温度が異なる例を示す図である。
図27】データベースの環境情報に最大エネルギー量を備えた例を示す図である。
図28】各設置エリアにおける時間毎の温度やエネルギーがデータベース化されている例を示す図である。
図29】各地から環境情報を収集しているイメージを表す図である。
図30】環境情報が記録された建物のエリアと、その建物の存在する地域とが特定された記録例を示す図である。
図31】入力画面での入力から演算結果を得るまでの流れの例を示す図である。
図32】キャビネットの仕様の入力から発注までの流れの例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムは、電気電子機器収納用箱81を設置する設置エリアを入力可能な設置エリア入力手段12aと、複数のエリアに分けて電気電子機器収納用箱81の外部の環境情報が記憶された環境情報記憶部11cと、設置エリア入力手段12aを用いて設置エリアが入力された場合に、環境情報記憶部11cより設置エリアの環境情報を取得する環境情報特定手段12bと、環境情報特定手段12bで特定した設置エリアの環境情報と、入力された電気電子機器収納用箱81の情報を用いて、電気機器又は電子機器を搭載する電気電子機器収納用箱81に取り付けられる熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な演算手段と、を備えている。このため、ユーザーの利用負担を抑制しつつ、より適切にユーザーの利用環境にあわせた熱対策機器の選定をすることが可能となる。
【0017】
ここで、熱対策機器選定システムを使用するには、メーカー側で用意したサーバ1、サーバ1とネットワークを介して接続する顧客側のPCやタブレットなどの端末が利用される。端末にはモニターなどの表示手段と、キーボードなどの入力手段と、マウスやキーボードの矢印キーに代表される移動手段が接続されるのが通常であるが、これらは周知の機器を用いることができる。
【0018】
図1に示す例では、メーカー側のサーバ1は、データベースが記憶された記憶手段11と、演算手段12と、演算結果を端末のモニター出力及び表示する出力手段13を備えている。演算手段12は入力された情報をもとに各種データベースにアクセスすることができる。また、出力手段13はプロセッサを備え、利用者側の表示手段の表示を変えるようにすることができる。
【0019】
データベースとしては、キャビネットデータベース、熱対策機器データベース、環境データベースなどが記憶されている。図1に示す例では、キャビネット情報記憶部11aにキャビネットデータベースが記憶され、熱対策機器情報記憶部11bに熱対策機器データベースが記憶され、環境情報記憶部11cに環境データベースが記憶されている。また、これらのデータベースは、外部のサーバ1やPCといった外部機器91と接続したりすることで、書き換えることができるようにしている。なお、データベースを外部機器91に記憶させておき、サーバ1を通じて当該機器にアクセスできるようにしてもよい。また、サーバ1の記憶手段11には、各データベースや、利用者が作成した図面など利用者の入力情報などを保管することができる。
【0020】
実施形態の各データベースのうち、先ず、キャビネットデータベースについて説明をする。実施形態のキャビネットデータベースは、キャビネットのデータベースであり、品番(型番)で情報を検索することができるデータベースとなっている。また、キャビネットの筐体などに関する情報として、キャビネットのサイズや、製品重量、価格、図面、板厚の情報などが確認可能にまとめられている(図2参照)。また、キャビネットの熱対策に関連する情報として、塗装色、材質、遮光板の有無、板厚などが確認可能にまとめられている。なお、実施形態では、材質や塗装色など熱対策に関連する情報として、後述するキャビネットの太陽光反射率、熱通過率、熱伝導率などがキャビネットデータベースに記憶されているが、これらは記憶手段11のいずれかに記憶されていればよい。
【0021】
次に熱対策機器データベースについて説明をする。熱対策機器データベースは、熱対策機器のデータベースであり、熱対策機器の種類ごとの情報が確認可能にまとめられている(図3参照)。例えば、熱対策機器の筐体などに関するデータ(サイズ、重量、定格電圧、電流、騒音、取り付けに必要な面積や形状など)、冷却または、加熱に関する情報(定格能力、最大風量、換気面積、冷却能力、発熱量など)、が確認可能にまとめられている。
【0022】
次に環境データベースについて説明をする。実施形態の環境データベースは、複数の地域の最高温度や最低温度、最大日射量などの環境情報が確認可能にまとめられている。例えば、設置エリア入力手段12aを用いた設置地域の入力で、環境データベースに記録された環境情報の中から適合する環境情報を取得し、その環境情報を基に演算する。図4に示す例では、特定の時間における都道府県ごとの環境情報が月ごとにまとめられている。例えば、7月の12:00における気象データ(最高温度、最低温度、風速、日射量情報、湿度など)が確認可能にまとめられている。なお、図4に示す例では、最大日射量、最高温度、最低温度などとしているが、それぞれ平均の値などにしてもよい。
【0023】
もちろん環境データベースは、図4に示す例のようにまとめる必要はない。例えば、図5に示すことから理解されるように、各月の時刻ごとの気象データ(最高温度や最大日射量など)がまとめられているものであってもよい。また、図6に示すことから理解されるように、設定エリアを更に細分化して記憶させるものであってもよい。
【0024】
また、最高温度や最大日射量は、熱対策機器への影響が比較的大きいため、環境情報記憶部11cに記憶された環境情報に、エリアにおける外気の最高温度である外気最高温度データ、エリアにおける外気の最低温度である外気最低温度データ、エリアにおける太陽光からの放射エネルギー量である日射量データの何れかを含み、演算手段12は、設置エリアの外気最高温度データ、外気最低温度データ、又は日射量データを用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、冷却必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0025】
また、環境情報記憶部11cに記憶された環境情報に、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最低温度データと風速のデータの何れか又は、必要能力の緩和条件となる日射量のデータの何れかを含み、演算手段12は、外気最低温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の加熱必要能力の演算、または、加熱必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0026】
ここで、熱対策機器選定システムの利用例について説明をする。実施形態の熱対策機器選定システムを利用する場合、端末などに表示された内容に沿って、電気電子機器収納用箱81のキャビネットの条件など、複数項目について入力を行い、それらの条件を基に適切な熱対策機器を選定可能なように演算を行う(図7参照)。
【0027】
より具体的には、表示された入力画面に、キャビネット(筐体)自体に関する情報として、キャビネットの外形寸法や、キャビネットの塗装色、キャビネットの材質、遮光板の有無(例えば、キャビネットの側面や天井板における遮光板の有無)などを入力するための表示がなされるため(図8参照)、それらについて入力手段を用いて入力する。また、キャビネットの設置条件(例えば、扉正面がどちらを向いているか、日陰位置など)、設置状態(例えば、自立、壁掛けなど)、設置地域(設置エリア)などを入力するための表示がなされるため、それらについて入力手段を用いて入力する。なお、本実施形態の熱対策機器選定システムは屋外で使用する電気電子機器収納用箱81に採用される熱対策機器を選定するものであるが、設置条件として日陰位置を選択しておけば屋内の設置条件として選定することもできる。
【0028】
全ての項目又は一部の項目はあらかじめ記憶されている内容から、選択できるようにしてもよい。例えば、プルダウン機能を用いて選択項目を表示可能にしてもよい(図9参照)。また、キャビネットの品番を入力することにより、キャビネットデータベースから外形寸法、塗装色、遮光板などが入力されるものであってもよい。
【0029】
また、選択肢を挙げる場合、直感的に理解しやすいように、文字で記載している選択肢が意味する内容についての図面を表示するようにしてもよい(図10参照)。この場合、図面を参照しながらも、選択は文字で行うようにしてもよいし、複数の図面から一つの図面を選択すれば文字で記載している選択肢のうちの一つが選択されたとして処理するようにしてもよい。選択肢における文字の表記は必ずしも必須ではないが、どのような条件を選択したのかを後の段階で文字表記した場合に把握しやすいため、選択肢を文字表記していることが好ましい。
【0030】
図8に示すような情報を入力することによって、演算手段12は、演算に用いられる値を特定するための処理を行う。例えば、演算手段12は、入力された設置地域(設置エリア)に関する最高温度、最低温度、風速、湿度、日射量などのデータを環境データベースより取得する。また、例えば、演算手段12は、入力されたキャビネットに関する情報から、各面の表面積の演算、放熱面積・日射に影響する面積(有効放熱面積)を決定するように演算を行う。また、例えば、キャビネットの材質や塗装色から、熱伝導率、太陽光反射率の値を取得する(図11図12参照)。なお、熱通過率などの値は固定の値としてキャビネット情報記憶部11aに記憶された値を取得するようにしてもよいが、設置地域に関する情報とキャビネットに関する情報から演算できる数値であるため、都度、演算するものであることが好ましい。熱通過率などの値を都度演算する構成とすることによって、より正確に熱対策機器を選定することができる。
【0031】
実施形態では、遮光板や設置状態などを選択すると、キャビネットの放熱面積、日射に影響のある面積(有効放熱面積)が設定される。例えば、遮光板は筐体の外面の外側に空間を設けて、配置されるものであり、遮光板により太陽からの日射を遮ることができる。このため、例えば、日射の影響がないと設定して演算するようにしてもよい。また、遮光板を設けていても筐体の熱を外部に放出することができる。例えば、遮光板と側面(天井面)の間の空間内に対流が生じうるからである。このため、筐体の遮光板が設置される面は日射に影響がないが、放熱面として作用すると設定して演算するようにしてもよい。
【0032】
また、設置状態に関して、取り付け面で密着して固定していると入力した場合には、取り付け面に関しては日射の影響がない面として作用すると設定して演算するようにしてもよい。また、この面は放熱面として作用しないとして設定して演算するようにしてもよい。ただし、それぞれの設置面の材料などによって、取り付け面は伝熱量が放熱量より多いのか、伝熱量が放熱量より少ないのかは異なり得る。このため、取り付け面を放熱面(吸熱面)として作用するように設定して演算するようにしてもよい。
【0033】
実施形態では、図8に示すような情報を入力後、演算手段12によって特定された数値が表示される(図13参照)。また、実施形態では、この表示がなされた画面上に最高外気温度「T1」、盤内許容温度「T2」、盤内発熱量「P」を入力することができる。これらの中で、入力画面1が表示された状態で入力された情報を基に演算手段12によって導き出された数値が表示されている場合は、その数値の入力を省略してもよい。図13に示す例では、設置地域を入力していたため、その地域の最高外気温度T1が環境データベースより選択され、入力されている。この場合、利用者は、熱対策機器の動作により、希望する盤内温度「盤内許容温度T2」の入力と、盤内に搭載される電気機器や電子機器の「盤内発熱量P」を入力すればよい。なお、この例では、入力された情報を基に演算手段12によって導き出された最高外気温度T1の数値を上書きできるようにしているが、上書きできないようにしてもよい。
【0034】
上記した例では、キャビネットの仕様を入力可能な表示がなされる画面(入力画面1)と、「盤内許容温度T2」と、「盤内発熱量P」の入力が可能な画面(入力画面2)とを異なるようにしている。このようにすることで、キャビネットの仕様はそのままで、「盤内許容温度T2」などのみを変更することによる熱対策機器の変化などを確認しながら熱対策機器を選定することが可能となる。ただし、同一画面にしても良いが、入力内容が変更されると演算手段12によって特定された数値を都度計算できるようにすることが好ましい。
【0035】
実施形態では、入力画面1や入力画面2で入力した内容(値など)から、キャビネットへの日射侵入熱量、盤内発熱量、キャビネットからの放熱量などを演算により算出し、必要冷却能力を算出する。その後、熱対策機器の一覧とその冷却能力、熱対策機器を利用した場合の推定盤内温度が表示される(図14参照)。熱対策機器の一覧に関しては、冷却能力に達していない熱対策機器を表示するようにしてもよいし、冷却能力に達していない熱対策機器を表示しないようにしてもよい。熱対策機器の一覧に冷却能力に達していない熱対策機器を表示する場合、図14に示すように、必要冷却能力に達しないものを選択できないようにして、適切な熱対策機器を選択させるようにしてもよい。
【0036】
なお、使用台数変更手段12fを備えるようにし、提示された熱対策機器の使用台数を利用者によって変更できるようにすることが好ましい。また、この場合、変更した使用台数にした場合の条件を用いて、推定盤内温度の演算を再度行い、その結果を表示できるようにするのが好ましい。例えば、冷却能力に達していない熱対策機器を用いる場合であっても、使用台数を変更すれば、所望の性能を満たす場合があるからである(図14及び図15参照)。
【0037】
実施形態の熱対策機器選定システムでは、熱対策機器を選定した後、選定した熱対策機器の発注などをそのシステム上で行うことができる(図16参照)。また、入力されたキャビネットの品番や入力されたサイズに合ったキャビネットをキャビネットデータベースから抽出し、一緒に注文することができる。また、熱対策機器の取付イメージや熱対策機器を取り付けるためにキャビネットに設けることが必要な取付穴の形状、熱対策機器の図面などもダウンロードすることができる。また、熱対策機器をキャビネットに取り付けるために必要な取付穴の加工の依頼も行うことができる。
【0038】
ここで、熱の演算方法の例について、簡単に説明をする。例えば、盤用熱対策機器工業会(TECTA)が公開している資料などを基に計算を行えばよい。なお、熱対策機器の種類により、計算式はさまざまなものとなってしまうが、演算の流れは熱対策機器の種類に関わらず、同様なものとすることが可能であるため、ここでは、熱対策機器を採用する場合の演算の流れの例について説明をする。
【0039】
まず、入力手段などを利用して利用者が条件を入力する。この入力内容から必要な値が演算により導き出されたり、データベースから数値が取得されたりする。例えば、キャビネットの有効放熱面積を演算により導き出す。この際、天面、正面、東面、西面、背面、底面などと分けて演算をすればよい。例えば、電気電子機器収納用箱81を壁に沿うように自立させる場合、底面と背面は放熱されないものとして扱い、この部分に関する有効放熱面積は0とすればよい。また、風速等の影響がないとした場合、熱通過率や表面伝達率は、キャビネットの材質などから特定できるため、データベースから取得した数値をそのまま用いればよい。太陽光吸収率は塗装色ごとに設定されているため、選択された色にあわせてデータベースから数値を取得すればよい。最大となる日射量や、最高温度は設置地域(設置エリア)が入力されれば、環境データベースより数値を取得すればよい。
【0040】
必要な数値が得られたら、例えば、冷却対策がなされていない場合のキャビネット内の推定温度を求める。この際、各面の外気温度上昇値を算出し、キャビネットの各面の日射侵入熱量、それらを合算した総日射侵入熱量を算出する。そして、キャビネット内の推定温度を算出する。
【0041】
その後、必要な冷却能力を算出する。この際、盤と周囲との間で移動する熱量(放熱量、吸熱量)を算出する。また、盤内許容温度にするためのクーラの冷却能力を算出する。その後、所定の熱対策機器を使用した場合の温度上昇値を算出する。
【0042】
なお、演算に必要なデータを環境データベース、キャビネットデータベースなどのデータベースから取得することにより、熱対策機器の演算に用いられる数値の間違いを防止し、適切な条件を入力することができる。また、最高気温、日射量だけでなく、風速などその他の気象データや、キャビネットデータベースに含まれる板厚の情報などを用いることによって、熱伝達率(熱通過率)の値を正確なものにし、熱対策機器の選定の精度を高めることもできる。
【0043】
これらの記載から理解されるように、電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムは、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最高温度データと日射量データの何れか又は必要能力の緩和条件となる風速のデータを取得可能であり、演算手段12は、外気最高温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の冷却必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0044】
また、電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムは、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる外気最低温度データと風速のデータの何れか又は、必要能力の緩和条件となる日射量のデータを取得可能であり、演算手段12は、外気最低温度データと日射量データと風速のデータの何れかを用いて熱対策機器の加熱必要能力の演算、または、加熱必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0045】
ところで、実施形態の熱対策機器選定システムは、取付判定手段12gを備えているため、必要冷却能力を満たす熱対策機器を選定するとともに、選定した熱対策機器をキャビネットに取り付けられるかどうかを演算することもできる。実施形態では、キャビネットの取付有効範囲の情報(図17参照)を有するキャビネットデータベースと熱対策機器の取付形状の情報(図18参照)を有する熱対策機器データベースを備えているため、キャビネットサイズと熱対策機器のサイズを比較するだけなく、キャビネットの取付有効範囲と熱対策機器の取付孔形状を比較することで、取付判定を行うことができる。したがって、搭載できない熱対策機器であった場合は、必要冷却能力を満たす場合でも選定から除外することができる。
【0046】
また、実施形態の熱対策機器選定システムは、基本的には、利用者が指定したキャビネットの向きで計算を行うものであるが、総日射侵入熱量が最も小さくなる向きや、異なる向きにした場合の必要冷却能力の算出(バックグラウンドでの計算、または、並列計算)を行い、それぞれの向きにおける演算を行うことで得られた結果を基に、利用者が指定していない条件を提案するようにしてもよい(図19参照)。
【0047】
このようなことを可能とするために、利用者により指定した電気電子機器収納用箱81の向きとは異なる向きにした場合の熱対策機器の必要能力の演算、または、熱対策機器の選定を可能とする他条件選定手段12kを備えた構成とするのが好ましい。
【0048】
また、キャビネットの向きだけでなく、利用者が選択したものとは異なる熱対策機器を用いた場合の演算を行い、利用者が指定したものとは異なる熱対策機器の提案を行うことができるようにしてもよい(図20参照)。例えば、他の熱対策機器で同じような盤内推定温度となる熱対策機器を提示することもでき、小型の熱対策機器が採用できたり、費用が安価になる熱対策機器を採用できたりするなど、利用者が想定していないメリットが提示できる場合がある。このように、利用者が指定したものとは異なる条件を採用した場合の結果を提示することによって、利用者が熱対策機器の比較を行いやすいようにすることができる。
【0049】
このようなことを可能とするため、利用者が指定した熱対策機器とは異なる熱対策機器を提案可能とする他条件選定手段12kを備えた構成とするのが好ましい。
【0050】
また、提案はキャビネットの向きの変更や熱対策機器の種類の変更に限る必要はない。例えば、キャビネットのサイズを提案するようにしてもよい(図21参照)。同じキャビネットの向きで、同じ収納容量で、総日射侵入熱量が最も小さくなる形状のキャビネットサイズの提案なども行いうる。異なるキャビネットサイズの提案をする場合、採用できる熱対策機器に違いが生じる場合は、その違いなども表示させるようにするのが好ましい。
【0051】
また、熱対策機器選定システムは、最も負荷の利用率が高くなる(発熱量が高くなる)時間帯(負荷使用最大時間帯)を利用者が入力できるようにしてもよい(図22参照)。この場合、その時間帯の設置地域での日射量、最高温度を環境データベースから取得し、それにより必要冷却能力の算出を行うことができるように構成されているのが好ましい。このようにすれば、利用者の使用状況と地域性などを考慮した熱対策機器の選定が可能になる。また、負荷使用最大時間帯だけではなく、最も負荷の利用率が高くなる月(負荷使用最大月)を利用者が入力できるようにしてもよい(図23参照)。このような入力を可能とし、その月の日射量、最高温度なども取得することができるようにすれば、利用者の使用状況と地域性などを考慮した熱対策機器の選定が可能になる。
【0052】
また、使用終了時間を入力可能としておくようにすることも好ましい。負荷使用最大時間帯とともに、使用終了時間を入力可能としておくようにすることも好ましい。また、環境データベースから、負荷使用最大時間帯や使用終了時間の温度や日射量を取得するとともに、湿度情報を取得することもできるようにするのが好ましい。また、これらの内容から、熱対策機器とは異なる機器を提案できる構成とすることが好ましい(図24参照)。
【0053】
例えば、16時などに負荷の利用率が高くなり、20時で使用をやめる場合、負荷の使用が終わる時間には周囲温度が低くなっている場合がある。この場合、負荷の使用をやめると、キャビネット内部の空気が冷やされて結露が発生する場合もあり得る。このようなことが生じ難いようにするため、必要冷却能力を満たす熱対策機器を提示するとともに、湿度対策として除湿器などを提案できるようにするのが好ましい。
【0054】
これらの記載から理解されるように、電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムは、熱対策機器又は電気電子機器収納用箱81の使用日時を入力手段で指定可能であり、指定された使用日時に対応する環境情報を利用可能な構成とするのが好ましい。
【0055】
ここまでの実施形態としては、熱対策機器として、キャビネットの内部を冷却するものを説明したが、熱対策機器は冷却するために利用するものに限らない。冬季のような場合では、キャビネットの内部温度が低下すると搭載する電気機器や電子機器が動作しない場合が生じる。このような場合には、熱対策機器で、キャビネットの内部を温めることができるようにするのが好ましい(図25参照)。例えば、設置地域の最低温度や日射量、積雪量、風速などを環境データベースから取得して必要なヒータ83の能力などの演算を行うことができる熱対策機器選定システムとすることが好ましい。
【0056】
この場合、例えば、日射量や最低温度は必要加熱能力の算出に利用すればよい。また、積雪は、直接的にキャビネットから熱を奪うだけではなく、キャビネットに日射が届かなくすることもあり得るため、積雪量は、キャビネットの太陽光反射率や各面の熱伝達率の数値の算出などで利用するようにしてもよい。風速が変わればキャビネットを冷やす条件の変更になるので、風速は、キャビネットの各面の熱伝達率の数値の算出などで利用するようにしてもよい。
【0057】
また、海の近くなど塩害などの影響がある地域も存在する。このため、設置地域が塩害の影響が色濃い地域とそうでない地域として分けることができる場合、塩量なども環境情報として環境データベースに含めておくことが好ましい。また、これらの情報を基に、指定されている内容とは異なる機器などを提案できるように構成するのが好ましい。
【0058】
例えば、利用者が、設置地域で所定の塩量を含む地域を指定しているにもかかわらず、熱対策機器として金属製ルーバで塗装色なしのものを選定していた場合に、フード付きルーバの種類に変更させる提案を行うことができるようにするのが好ましい。また、ルーバを樹脂製に変更させる提案を行うことができるようにしてもよいし、金属キャビネットから樹脂キャビネットへの提案などを行うことができるようにしてもよい。
【0059】
なお、熱対策機器が冷却のためのものである場合、気象データのうち、必要冷却能力の強化条件となるものの代表例は、日射量や最高温度である。また、必要冷却能力の緩和条件となるものの代表例は風速である。また、その他熱対策機器や変更など追加条件となるものの代表例は湿度や塩量である。
【0060】
一方、熱対策機器が加熱のためのものである場合、気象データのうち、必要加熱能力の強化条件となるものの代表例は、最低温度や積雪量や風速である。また、必要加熱能力の緩和条件となるものの代表例は、日射量データである。また、その他熱対策機器や変更など追加条件となるものの代表例は塩量である。
【0061】
これらの記載から理解されるように、熱対策機器が冷却目的の機器であるのか加熱目的の機器であるのかにより、環境情報の使用の仕方が異なるものであるが、それぞれ、必要能力を強化する環境情報、必要能力を緩和する環境情報などが存在する。
【0062】
電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムは、設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を取得可能であり、演算手段12は設置エリアの熱対策機器の必要能力の強化条件となる環境情報又は必要能力の緩和条件となる環境情報を用いて、熱対策機器の必要能力の演算、または、必要能力を満たす熱対策機器の選定が可能な構成とするのが好ましい。
【0063】
なお、ここまでは熱対策機器選定システムは、主に屋外で使用する電気電子機器収納用箱81に採用される熱対策機器を選定するために利用するものとして説明している。しかし、熱対策機器選定システムは、屋内で使用する電気電子機器収納用箱81に採用される熱対策機器を選定するために利用するものとしても構わない。
【0064】
たとえば、屋内でも工場では、熱源により放射エネルギーを発生し高温となる場所や温度が低い場所など、温度などはエリアごとに異なる。この設置エリアごとの環境情報を環境データベースとして管理し、利用者が屋内の設置エリアを指定することで、その設置エリアの周囲温度、または/および、熱源からのエネルギー量の筐体外部の環境情報を取得し、適切な必要能力、または、熱対策機器を選定することができるようにすることもできる。また、開放された工場では立地などによる気候の違いなどもあるため、室内であっても温度などに違いが生じ得る。このような違いを反映させるようにしてもよい。
【0065】
ここで、設置エリアごとに温度などの環境の違いが生じる例について説明をする。例えば、塗装エリアでなされる塗装が粉体塗装であり、塗料中に有機溶剤や水などの溶媒を用いず、塗膜形成成分のみ配合されている粉末状塗料を用いる場合、静電効果を利用しながら金属等に塗料を帯電塗着させ、180から220℃で加熱するため、塗装エリアの温度が高くなる。また、アークを用いて溶接を行う溶接エリアでは、アークの温度は5000から20000℃に達する。そのアークの熱の影響で、溶接エリアの温度が高くなる。クリーンルームエリアは例えば、温度が22~25℃±1℃、湿度が45~55%±5%rh.の状態が年間をとおして維持されるように管理されている部屋となる。また、機械動作エリアや製品組立エリアは、熱源などは存在しないが、空調管理が乏しく、外気と同程度の温度となる場合がある。また、倉庫は、トラックなど外部の出入りが多く、外気と同様の温度となる場合がある。このような状況が考えられるため、工場内であっても、エリアごとに温度条件が異なるものとなる(図26参照)。
【0066】
なお、図4から図6に示す例では、環境情報として気象データのみをリスト化しているが、その他のデータをリスト化したデータベースとしてもよい。例えば、図27に示す例のように、設置エリアごとの最高温度、最大エネルギー量、などが使用月、時間ごとにリスト化されるようにしてもよい。また、図28に示す例のように、各設置エリアにおける時間毎の温度やエネルギーがデータベース化されてもよい。
【0067】
また、このような環境情報のデータベースを生成するために、工場のそれぞれのエリアに環境情報を計測するIoTセンサなどを設置してもよい。例えば、設置エリア情報と日時情報と環境情報をIoTセンサなどからメーカーのサーバ1に送信し、この情報をもとにサーバ1などで環境情報のデータベースを生成するようにしてもよい。なお、1つの工場の情報だけでなく全国各地の工場の情報を収集するようにするのが好ましい(図29参照)。
【0068】
環境情報のデータベースを生成する際には、例えば、環境情報収集手段12hを用いて複数の情報を収集した上で、収集した情報の平均値または中央値を用いるようにすればよい。ただし、このような方法に限る必要はない。なお、設置エリアの環境情報をさらに地域ごとに分けることによって、より正確なデータとして演算処理をできる(図30参照)。
【0069】
ところで、設置エリア入力手段12aにより、地域及び設置エリアを入力できるようにすることが好ましい(図31参照)。また、演算値特定手段12cにより、最高周囲温度や、熱源からの輻射熱や放射熱などの熱量(エネルギー量)を抽出し、必要能力選定手段12dにより、適切な必要能力、または、熱対策機器を選定させることができるようにするのが好ましい。このようにすることで、屋内、屋外に関わらず、環境情報を用いて、適切な必要能力を算出させることができる。
【0070】
ここで、電気電子機器収納用箱81の熱対策機器選定システムの利用例について説明をする。図32に示すことから理解されるように、まず、利用者が入力手段を用いてキャビネットの仕様や設置条件などを入力する(S001)。その入力内容を基に演算値測定手段がキャビネットの演算値の特定をおこなう(S002)。また、利用者が入力手段を用いてキャビネットの設置エリアを入力する(S003)。その入力内容を基に演算値測定手段が設置エリアに応じた環境情報の特定をおこなう(S004)。
【0071】
その後、利用者が入力手段を用いて熱対策機器の種別の入力をおこなう(S005)。また、利用者が入力手段を用いてキャビネット内の盤内発熱量、許容盤内温度の入力をおこなう(S006)。その後、必要能力選定手段12dが熱対策機器の必要能力の算出をおこなう(S007)。また、熱対策機器選定手段12eが熱対策機器の選定をおこなう。それらの結果を基に、熱対策機器の必要能力の表示や熱対策機器の表示をおこなう(S008)。
【0072】
また、他条件選定手段12kで電気電子機器収納用箱81の異なる設置向きにした場合の演算をおこない、その演算結果を基に電気電子機器収納用箱81を指示とは異なる設置向きにすることの提案やその条件での熱対策機器の提案をするように表示する(S009)。また、条件によっては、電気電子機器収納用箱81を指示通りにした場合と別の熱対策機器の提案をするように表示する(S010)。そして、利用者が熱対策機器の選択をおこなう(S011)。その後、発注作業をおこなう(S012)。
【0073】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、選定される熱対策機器はペルチェ式クーラやヒータである必要はない。選定される熱対策機器は、水冷熱交換器、ペルチェ式クーラ、コンプレッサ式クーラなどの筐体内部を冷却する熱対策機器や、ヒートシンクなどの熱交換を行う熱交換器や、筐体内部の自然換気を行うルーバや、強制換気を行う換気扇により筐体内部を冷却する換気装置や、熱源となるヒータにより筐体内部を加熱するための盤用ヒータ装置や、ヒータや除湿器などの筐体内部の結露対策をするための結露・湿度対策装置であってもよい。また、上記装置の異常温度を検出、動作温度を設定するための付属装置などを選定することも例示できる。
【符号の説明】
【0074】
11c 環境情報記憶部
12 演算手段
12a 設置エリア入力手段
12b 環境情報特定手段
12k 他条件選定手段
81 電気電子機器収納用箱
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