特開 2024-27580 カッター機能付き鋏

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024027580

(43)【公開日】2024-03-01

(54)【発明の名称】カッター機能付き鋏

(51)【国際特許分類】

   B26B 13/00 20060101AFI20240222BHJP

   B26B 13/06 20060101ALI20240222BHJP

   B26B 13/12 20060101ALI20240222BHJP

   B26B 11/00 20060101ALI20240222BHJP

【ＦＩ】

B26B13/00 Z

B26B13/00 A

B26B13/06

B26B13/12

B26B11/00 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022130478

(22)【出願日】2022-08-18

(71)【出願人】

【識別番号】000001351

【氏名又は名称】コクヨ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100085338

【弁理士】

【氏名又は名称】赤澤 一博

(72)【発明者】

【氏名】中津 康宏

(72)【発明者】

【氏名】田畑 竜也

(72)【発明者】

【氏名】藤谷 慎吾

【テーマコード（参考）】

3C061

3C065

【Ｆターム（参考）】

3C061AA10

3C061AA41

3C061BA03

3C065AA07

3C065BA03

3C065CA03

(57)【要約】

【課題】カッター機能付き鋏において、ハンドルのサイズや形状に関わらず通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えることを可能にする。
【解決手段】支持体たるカバーＡに第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２を有する鋏本体Ｂを支持させたカッター機能付き鋏Ｓにおいて、鋏本体Ｂが、第一の刃部Ｈ１と第二の刃部Ｈ２とを開閉動作させて当該第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２間に配された被切断物を鋏み切ることができる第一位置と、第一の刃部Ｈ１における刃先部分Ｈ１ａを第二の刃部Ｈ２における刃峰Ｈ２ｘ側に露出させて刃先部分Ｈ１ａをカッター刃として使用可能な第二位置（Ｑ）とを採り得るように、鋏本体ＢをケースＡに対して移動可能に構成する。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

支持体に第一、第二の刃部を有する鋏本体を支持させたカッター機能付き鋏であって、
前記鋏本体が、第一の刃部と第二の刃部とを開閉動作させて当該第一、第二の刃部間に配された被切断物を鋏み切ることができる第一位置と、前記第一の刃部における刃先部分を前記第二の刃部における刃峰側に露出させて前記刃先部分をカッター刃として使用可能な第二位置とを採り得るように前記支持体に対して移動可能に構成されているカッター機能付き鋏。

【請求項2】

前記鋏本体が、前記支持体に対して前後方向にスライド移動可能に支持されたものであり、
前記第二位置が、前記第一位置よりも後に設定されている請求項１記載のカッター機能付き鋏。

【請求項3】

前記鋏本体が、前記第一の刃部を有した静刃体と、この静刃体に対して回転可能に支持され前記第二の刃部を有するとともに当該第二の刃部の後部に動刃操作部を有した動刃体と、前記第一、第二の刃部を開く方向に付勢する付勢部材とを備えたものである請求項２記載のカッター機能付き鋏。

【請求項4】

前記静刃体が、前記動刃体よりも刃幅が大きい請求項３記載のカッター機能付き鋏。

【請求項5】

前記支持体が、その内部に前記鋏本体の少なくとも前記動刃操作部の一部を含む部分を収納可能な構成を有するものであって、
前記支持体の内側面に、前記動刃操作部を前記支持体に対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部が設けられている請求項３記載のカッター機能付き鋏。

【請求項6】

前記案内部が、前記動刃操作部に設けた凸部が係合し得る凹溝状をなしたもの、又は、前記動刃操作部に設けた凹部が係合し得る凸レール状をなしたものである請求項５記載のカッター機能付き鋏。

【請求項7】

前記支持体が、ケースであり、
前記鋏本体が、前記ケースから前記第一、第二の刃部が突出した前記第一、第二位置と、前記ケース内に前記第一、第二の刃部が没入した第三位置とを採り得るように前記支持体に対して移動可能に構成されている請求項１記載のカッター機能付き鋏。

【請求項8】

前記案内部が、前記支持体における左右の内側面に設けられている請求項５記載のカッター機能付き鋏。

【請求項9】

前記案内部が、前記第一位置において前記動刃操作部を前記支持体に対して上下方向に案内し得るものであり、前記第二位置において前記第一の刃部における刃先部分を前記第二の刃部における刃峰側に露出させ得る位置に前記動刃操作部を案内し得るものである請求項５記載のカッター機能付き鋏。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、オフィスや家庭等において好適に用いられるカッター機能付き鋏に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、刃を有した第一の刃部と第二の刃部とを開閉動作させて、両刃間に配された被切断物を鋏み切るようにした鋏、すなわち、両刃の刃線が開いた状態で露出する開き姿勢から両刃の刃線が露出しない閉じ姿勢までの間で両刃間に配された被切断物を鋏み切るようにしている鋏が周知である。

【0003】

その上で、開き姿勢から閉じ姿勢を超えて両刃を動作させて、少なくとも第一の刃部の刃の刃線の少なくとも一部が第二の刃部の刃峰側に露出し、カッターとしても使用できる鋏が提案されている(例えば、特許文献１参照)。

【0004】

ところで、特許文献１記載の鋏は、ハンドルに設けた作動子を利用したモード切替機構を有しており、作動子をスライド操作することにより、通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えるようにしている。

【0005】

ここで、特許文献１記載のもののようなハンドルに指掛けを有する態様の鋏以外においても、通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えることを可能にする要望が存在する。

【0006】

しかしながら、上述したようなモード切替機構を設けるための十分なスペースがハンドル側に存在しないことがあり、そのような鋏においてカッターとして使用するモードを実現するための構成が求められている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】特許第６７７６７１２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明は、以上に着目してなされたもので、ハンドルのサイズや形状に関わらず通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えることを可能にすることを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0009】

請求項１記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、支持体に第一、第二の刃部を有する鋏本体を支持させたカッター機能付き鋏であって、前記鋏本体が、第一の刃部と第二の刃部とを開閉動作させて当該第一、第二の刃部間に配された被切断物を鋏み切ることができる第一位置と、前記第一の刃部における刃先部分を前記第二の刃部における刃峰側に露出させて前記刃先部分をカッター刃として使用可能な第二位置とを採り得るように前記支持体に対して移動可能に構成されているものである。

【0010】

請求項２記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記鋏本体が、前記支持体に対して前後方向にスライド移動可能に支持されたものであり、前記第二位置が、前記第一位置よりも後に設定されている請求項１記載のものである。

【0011】

請求項３記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記鋏本体が、前記第一の刃部を有した静刃体と、この静刃体に対して回転可能に支持され前記第二の刃部を有するとともに当該第二の刃部の後部に動刃操作部を有した動刃体と、前記第一、第二の刃部を開く方向に付勢する付勢部材とを備えたものである請求項２記載のものである。

【0012】

請求項４記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記静刃体が、前記動刃体よりも高さ寸法が大きい請求項３記載のものである。

【0013】

請求項５記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記支持体が、その内部に前記鋏本体の少なくとも前記動刃操作部の一部を含む部分を収納可能な構成を有するものであって、前記支持体の内側面に、前記動刃操作部を前記支持体に対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部が設けられている請求項３記載のものである。

【0014】

請求項６記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記案内部が、前記動刃操作部に設けた凸部が係合し得る凹溝状をなしたもの、又は、前記動刃操作部に設けた凹部が係合し得る凸レール状をなしたものである請求項５記載のものである。

【0015】

請求項７記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記支持体が、ケースであり、前記鋏本体が、前記ケースから前記第一、第二の刃部が突出した前記第一、第二位置と、前記ケース内に前記第一、第二の刃部が没入した第三位置とを採り得るように前記支持体に対して移動可能に構成されている請求項１記載のものである。

【0016】

請求項８記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記案内部が、前記支持体における左右の内側面に設けられている請求項５記載のものである。

【0017】

請求項９記載の発明に係るカッター機能付き鋏は、前記案内部が、前記第一位置において前記動刃操作部を前記支持体に対して上下方向に案内し得るものであり、前記第二位置において前記第一の刃部における刃先部分を前記第二の刃部における刃峰側に露出させ得る位置に前記動刃操作部を案内し得るものである請求項５記載のものである。

【発明の効果】

【0018】

本発明によれば、ハンドルのサイズや形状に関わらず、通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えることを可能にすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の一実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す全体斜視図。

【図2】同実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す右側面図。

【図3】同実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す平面図及び底面図。

【図4】同実施形態に係るカッター機能付き鋏の他の使用態様を示す右側面図。

【図5】同実施形態に係るカッター機能付き鋏の他の使用態様を示す右側面図。

【図6】同実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す分解斜視図。

【図7】同実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す分解斜視図。

【図8】同実施形態に係るカッター機能付き鋏を示す分解斜視図。

【図9】図４におけるＸ－Ｘ線に沿った断面図。

【発明を実施するための形態】

【0020】

本発明の一実施形態を、図１～図９を参照しつつ以下に述べる。

【0021】

本実施形態に係るカッター機能付き鋏Ｓは、支持体たるケースＡに第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２を有する鋏本体Ｂを支持させたものである。

【0022】

このカッター機能付き鋏Ｓは、ケースＡと、ケースＡに支持された鋏本体Ｂとを備えてなる。

【0023】

鋏本体Ｂは、第一の刃部Ｈ１と第二の刃部Ｈ２とを開閉動作させて当該第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２間に配された被切断物を鋏み切ることができる第一位置（Ｐ）と、第一の刃部Ｈ１における刃先部分Ｈ１ａを第二の刃部Ｈ２における刃峰Ｈ２ｘ側に露出させて前記刃先部分Ｈ１ａをカッター刃として使用可能な第二位置（Ｑ）と、ケースＡ内に第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２が没入した第三位置（Ｒ）とを採り得るようにケースＡに対して前後方向にスライド移動可能に構成されている。ここで、第二位置（Ｑ）は、第一位置（Ｐ）よりも後に設定されており、第三位置（Ｒ）は、第二位置（Ｑ）よりもさらに後に設定されている。

【0024】

以下、鋏Ｓの各構成について詳述する。

【0025】

ケースＡは、合成樹脂製のものである。ケースＡは、左右の側壁ａ１と、左右の側壁ａ１の下端部間を繋ぐ下壁ａ２と、左右の側壁ａ１の後端部間を繋ぐ後壁ａ３と、左右の側壁ａ１の上端部間を繋ぐ前上壁ａ４及び後上壁ａ５とを備えている。ケースＡの内部には、鋏本体Ｂの少なくとも後述する動刃操作部４２の一部を含む部分を収容し得る収容空間ｓｐが形成されている。

【0026】

ケースＡの前部には、前向きに開口し収容空間ｓｐと外部空間とを連通させた前開口部ｋ１が形成されている。ケースＡの上部には、上向きに開口し収容空間ｓｐと外部空間とを連通させた上開口部ｋ２が形成されている。前開口部ｋ１は、第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２が通過し得るとともに鋏本体Ｂが第一位置（Ｐ）に位置する場合に、動刃体４が静刃体３に対して交差し得る（第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２が開き得る）大きさに設定されている。上開口部ｋ２は、前後方向に延びており、当該上開口部ｋ２内において動刃操作部４２が前後方向に移動し得るように前端部から後端部まで略同じ左右幅寸法に設定されている。上開口部ｋ２は、動刃操作部４２が前後方向に進退可能な大きさに設定されている。ケースＡの後下端部には、紐等を挿し通すことができるようにするための孔ｋ３が設けられている。

【0027】

ケースＡは、略左右半割構造をなした左ケース部材１及び右ケース部材２を連結させてなるものである。

【0028】

なお、本実施形態の鋏Ｓは、鋏本体Ｂを左ケース部材１又は右ケース部材２の何れか一方の内側面に位置決めした後に、他方のケース部材を一方のケース部材に接合することにより作られている。

【0029】

次に、左ケース部材１について説明する。

【0030】

左ケース部材１の内側面には、鋏本体Ｂの動刃操作部４２をケースＡに対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部たる左の案内部１１が設けられている。左の案内部１１は、動刃操作部４２に設けた左側の凸部ｅ１が係合し得る凹溝状をなしている。左の案内部１１は、前端部において第一位置（Ｐ）にある動刃操作部４２を上下方向に案内し得るように上下方向に延びた上下方向案内部分１１ａと、上下方向案内部分１１ａの下端から下後方に向かって傾斜しつつ略直線状に延びた第一の前後方向案内部分１１ｂと、第一の前後方向案内部分１１ｂの後端から後方に向かって略直線状に延びた第二の前後方向案内部分１１ｃとを備えている。第一の前後方向案内部分１１ｂの後端部１１ｂｅは、第二位置（Ｑ）におけるケースＡに対するロック又はロック解除を円滑に行うため、動刃操作部４２の若干の上下動を許容し得るように他の部分よりも上下幅が広く設定されている。第二の前後方向案内部分１１ｃの後端部１１ｃｅも、第三位置（Ｒ）におけるケースＡに対するロック又はロック解除を円滑に行うため、動刃操作部４２の若干の上下動を許容し得るように他の部分よりも上下幅が広く設定されている。そして、上下方向案内部分１１ａと第一の前後方向案内部分１１ｂとの境界部の下縁には戻り止め１１ｘを上方に突出させて設けており、鋏としての使用中に鋏本体Ｂが第一位置（Ｐ）から第二位置（Ｑ）へ後退することの抑制を図っている。

【0031】

また、左ケース部材１は、内側面における左の案内部１１よりも下の位置に、前後方向に直線状に延出した左ガイド溝１２が設けられている。左ガイド溝１２は、鋏本体Ｂの静刃操作部３２に設けられた左の被ガイド突出部ｇ１が係合し得る部位をなしている。左ガイド溝１２に対して静刃操作部３２に設けた左の被ガイド突出部ｇ１が係合することにより、静刃体３がケースＡに対して安定して前後方向にスライド移動し得るものとなっている。

【0032】

続いて、右ケース部材２について詳述する。

【0033】

右ケース部材２の内側面には、鋏本体Ｂの動刃操作部４２をケースＡに対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部たる右の案内部２１が設けられている。右の案内部２１は、動刃操作部４２に設けた右側の凸部ｅ２が係合し得る凹溝状をなしている。右の案内部２１は、前端部において第一位置（Ｐ）にある動刃操作部４２を上下方向に案内し得るように上下方向に延びた上下方向案内部分２１ａと、上下方向案内部分２１ａの下端から下後方に向かって傾斜しつつ略直線状に延びた第一の前後方向案内部分２１ｂと、第一の前後方向案内部分２１ｂの後端から後方に向かって略直線状に延びた第二の前後方向案内部分２１ｃとを備えている。第一の前後方向案内部分２１ｂの後端部２１ｂｅは、第二位置（Ｑ）におけるケースＡに対するロック又はロック解除を円滑に行うため、動刃操作部４２の若干の上下動を許容し得るように他の部分よりも上下幅が広く設定されている。第二の前後方向案内部分２１ｃの後端部２１ｃｅも、第三位置（Ｒ）におけるケースＡに対するロック又はロック解除を円滑に行うため、動刃操作部４２の若干の上下動を許容し得るように他の部分よりも上下幅が広く設定されている。そして、上下方向案内部分２１ａと第一の前後方向案内部分２１ｂとの境界部の下縁には戻り止め２１ｘを上方に突出させて設けており、鋏としての使用中に鋏本体Ｂが第一位置（Ｐ）から第二位置（Ｑ）へ後退することの抑制を図っている。なお、右の案内部２１と左の案内部１１とは、左右対称な形状を有している。すなわち、これら左、右の案内部１１、２１は、カッター機能付き鋏Ｓを側面視した場合に重なり合うように配置している。

【0034】

また、右ケース部材２は、内側面における右の案内部２１よりも下の位置に、前後方向に直線状に延出した右ガイド溝２２が設けられている。右ガイド溝２２は、鋏本体Ｂの静刃操作部３２に設けられた右の被ガイド突出部ｇ２が係合し得る部位をなしている。右ガイド溝２２に対して静刃操作部３２に設けた右の被ガイド突出部ｇ２が係合することにより、静刃体３がケースＡに対して安定して前後方向にスライド移動し得るものとなっている。

【0035】

右ケース部材２には、後上壁ａ５を構成する部位の前端部分に、動刃操作部４２の後端部にＬ字状に突設された後のロック用突起ｅ３が係合し得る係合突起２３が突設されている。この実施形態では、鋏本体Ｂが、第三位置（Ｒ）において後のロック用突起ｅ３と係合突起２３とが係合し得るものとなっている。後のロック用突起ｅ３と係合突起２３とが係合することにより、第三位置（Ｒ）における鋏本体Ｂの前方移動がロックされ得るものとなっている。

【0036】

また、このケースＡは、カッター機能付き鋏Ｓをカッターとして使用する際、すなわち鋏本体を第二位置（Ｑ）とした際に第一の刃部Ｈ１の進行方向を案内する案内手段Ｇを有する。この案内手段Ｇは、隣接する２つの面にそれぞれ当接させることが可能な第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２を有する。これら第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２は直交している。そして、鋏本体Ｂを第二位置（Ｑ）に位置させた状態で、これら第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２が交わる線Ｌ０の近傍に第一の刃部Ｈ１が配されている。

【0037】

鋏本体Ｂは、第一の刃部Ｈ１を有した静刃体３と、この静刃体３に対して回転可能に支持され第二の刃部Ｈ２を有するとともに第二の刃部Ｈ２の後部に動刃操作部を有した動刃体４と、これら静刃体３及び動刃体４を回動自在に結合する枢支軸５と、第一、第二の刃部を開く方向に付勢する付勢部材たるコイルばね６とを備えたものである。

【0038】

静刃体３は、ケースＡに対して前後方向にスライド移動可能に支持されたものである。静刃体３は、前部に第一の刃部Ｈ１を有してなる金属製の静刃部材３１と、静刃部材３１の後端部にインサート成形により装着された合成樹脂製の静刃操作部３２とを備えている。

【0039】

静刃操作部３２は、第一の刃部Ｈ１よりも後の位置に設けられている。静刃操作部３２における下部の両側部には、ケースＡに設けた左ガイド溝１２及び右ガイド溝２２に係合し得る左右の被ガイド突出部ｇ１、ｇ２が設けられている。

【0040】

動刃体４は、静刃体３に対して枢支部材５を介して相対回転可能に支持されている。動刃体４は、枢支部材５により枢着された静刃体３とともにケースＡに対して前後方向にスライド移動可能に支持されている。動刃体４は、前部に第二の刃部Ｈ２を有してなる金属製の動刃部材４１と、動刃部材４１の後端部にインサート成形により装着された合成樹脂製の動刃操作部４２とを備えている。

【0041】

動刃操作部４２は、第二の刃部Ｈ２よりも後の位置に設けられている。動刃操作部４２は、前後方向に延びたブロック状をなし上面を使用者の指が当接する当接面ｍとした動刃操作部本体４２ａと、動刃操作部本体４２ａにおける前端部の下部に突設されケースＡに設けた左右の案内部１１、２１に係り合う左側の凸部ｅ１及び右側の凸部ｅ２と、動刃操作部本体４２ａにおける後端部から後方に向けてＬ字状に突設されケースＡに設けた係合突起２３に係合し得る後のロック用突起ｅ３とを備えてなる。また、動刃操作部本体４２ａの上面には、手指を掛けるための指掛突起４２ａ１が設けられている。

【0042】

静刃体３と動刃体４とは、第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２の後部において枢支軸５により相対回転可能に連結されている。すなわち、静刃体３における第一の刃部Ｈ１と静刃操作部３２の間部分と、動刃体４における第二の刃部Ｈ２と動刃操作部４２の間の部分同士が、枢支軸５により枢着されている。

【0043】

コイルばね６は、枢支軸５よりも後に位置し、静刃体３と動刃体４との間に配設されている。コイルばね６は、下端部が静刃操作部３２の前上部に（形成したリテーナ３２ｘに）支持されており、上端部が動刃操作部４２の前下部に（形成したリテーナ４２ｘに）支持されている。コイルばね６は、常時、第一の刃部Ｈ１と第二の刃部Ｈ２とが開く方向すなわち互いに離反する方向に回動し得る付勢力を付与している。

【0044】

次いで、このカッター機能付き鋏Ｓの使用の態様及び各部の作用について述べる。

【0045】

このカッター機能付き鋏Ｓを鋏として使用する際には、動刃操作部４２を介して鋏本体Ｂを前端の第一位置（Ｐ）まで移動させる。

【0046】

このとき、動刃操作部４２の凸部ｅ１、ｅ２は左、右の案内部１１、２１の前端にそれぞれ係合している。より具体的には、外部から作用を加えていない状態では、凸部ｅ１、ｅ２は第一の前後方向案内部分１１ｂ、２１ｂの前端かつ上下方向案内部分１１ａ、２１ａの上端に係合している。

【0047】

その上で、動刃操作部４２を静刃操作部３２に接近させると、動刃操作部４２の凸部ｅ１、ｅ２は鋏切断動作案内溝に摺接しつつ下方に移動し、第二の刃部Ｈ２は上方に移動する。

【0048】

そして、第二の刃部Ｈ２が切断対称である紙葉類に衝き当たると、第一の刃部Ｈ１と第二の刃部Ｈ２とにより切断対象の紙葉類が挟まれ、紙葉類が切断される。

【0049】

このカッター機能付き鋏Ｓをカッターとして使用する際には、動刃操作部４２を介して鋏本体Ｂを中間の第二位置（Ｑ）まで移動させる。

【0050】

このとき、動刃操作部４２がコイルばね６に付勢され、左、右の被ガイド突出部ｇ１、ｇ２はそれぞれ左右の案内部１１、２１における第一の前後方向案内部分１１ｂ、２１ｂの後端部１１ｂｅ、２１ｂｅに係合する。この状態で、鋏本体Ｂは前後方向への移動が規制される。

【0051】

また、この状態では、第二の刃部Ｈ２の略全体が第一の刃部Ｈ１の刃幅（静刃体の刃幅ｗ１）内に位置し、第一の刃部Ｈ１における刃先部分Ｈ１ａを第二の刃部Ｈ２における刃峰Ｈ２ｘ側に露出するので、第一の刃部Ｈ１における刃先部分Ｈ１ａをカッター刃として使用可能となる。

【0052】

このカッター機能付き鋏Ｓは、直方体状の箱ＢＸを辺ＢＸｅに沿って切断する際に、その辺ＢＸｅを構成する２つの面ＢＸａ、ＢＸｂに案内手段Ｇの第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２を当接させれば好適に切断できるように構成されている。詳述すれば、第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２をそれぞれ切断すべき辺ＢＸｅに隣接する面ＢＸａ、ＢＸｂに衝き当てた際には、第一及び第二の案内面ｓ１、ｓ２が交わるＬ０線の近傍に第一の刃部Ｈ１が配されているので、第一の刃部Ｈ１の刃線が切断すべき辺ＢＸｅないしその近傍に衝き当たるようになっている。

【0053】

一方、シート状の紙葉類を切断すべくこのカッター機能付き鋏Ｓをカッターとして使用する際には、ケースＡの下壁ａ２と前開口部ｋ１との境界近傍部、及び第一の刃部Ｈ１の刃先部分Ｈ１ａを切断対象である紙葉類に衝き当てるようにする。

【0054】

そして、カッター機能付き鋏Ｓを使用しないときには、動刃操作部４２を介して鋏本体Ｂを後端の第三位置（Ｒ）まで移動させる。

【0055】

このとき、動刃操作部４２がコイルばね６に付勢され、左、右の被ガイド突出部ｇ１、ｇ２はそれぞれ左右の案内部１１、２１における第二の前後方向案内部分１１ｃ、２１ｃの後端部１１ｃｅ、２１ｃｅに係合する。この状態で、鋏本体Ｂは前方への移動が規制され、動刃操作部４２の上部を除く鋏本体Ｂの略全体がケースＡに収納された状態を保つ。

【0056】

なお、鋏本体Ｂを第二位置（Ｑ）から他の位置に移動させる際には、動刃操作部４２をスライドさせる操作に先立ち、動刃操作部４２を下方に押圧し、左、右の被ガイド突出部ｇ１、ｇ２と左右の案内部１１、２１における第一の前後方向案内部分１１ｂ、２１ｂの後端部１１ｂｅ、２１ｂｅとの係合を解除させるようにしている。また、鋏本体Ｂを第三位置（Ｒ）から他の位置に移動させる際には、動刃操作部４２をスライドさせる操作に先立ち、動刃操作部４２を下方に押圧し、左、右の被ガイド突出部ｇ１、ｇ２と左右の案内部１１、２１における第二の前後方向案内部分１１ｃ、２１ｃの後端部１１ｃｅ、２１ｃｅとの係合を解除させるようにしている。

【0057】

ここで、図１は、本実施形態のカッター機能付き鋏Ｓの鋏本体Ｂを第一位置（Ｐ）とし鋏として使用する態様を示す全体斜視図である。図２は、同態様を示す右側面図である。図３の（ａ）は同平面図であり、同図の（ｂ）は同底面図である。図４は、同カッター機能付き鋏Ｓの鋏本体Ｂを第二位置（Ｑ）としカッターとして使用する態様を示す右側面図である。図５は、同カッター機能付き鋏Ｓの鋏本体Ｂを第三位置（Ｒ）と鋏本体ＢをケースＡ内に収納する態様を示す右側面図である。なお、図２、図４及び図５において、鋏本体ＢのうちケースＡに収納されている部分、右ケース部材２の後部及び下部における外周部に形成されたリブ、及び右の案内部２１を破線で示している。図６は、同カッター機能付き鋏Ｓの右上方からの分解斜視図である。図７は、同右下方からの分解斜視図である。図８は、同左上方からの分解斜視図である。なお、図６～図８において、コイルばね６は省略して示している。図９は、図４におけるＸ－Ｘ線に沿った断面図である。

【0058】

以上に述べたように、本実施形態の構成によれば、鋏本体Ｂを第一位置（Ｐ）と第二位置（Ｑ）との間でケースＡに対して移動可能に構成しているので、ハンドルとして使用する動刃操作部４２が小型なものであっても、通常の鋏として使用するモードとカッターとして使用するモードとを切り替えることを可能にできる。

【0059】

また、鋏本体Ｂは、前述した第一位置（Ｐ）と第二位置（Ｑ）との間だけでなく、ケースＡ内に第一、第二の刃部Ｈ１、Ｈ２が没入した第三位置（Ｒ）をも採り得るようにケースＡに対して移動可能に構成されているので、不使用時には刃部Ｈ１、Ｈ２をケースＡ内に収納させておき、安全に持ち運ぶことができるようにすることもできる。

【0060】

また、鋏本体Ｂが、ケースＡに対して前後方向にスライド移動可能に支持されたものであり、第二位置（Ｑ）が第一位置（Ｐ）よりも後に設定されているとともに、第三位置（Ｒ）が第二位置（Ｑ）よりも後に設定されているので、鋏本体Ｂに対するスライド操作により鋏本体ＢをケースＡに収納する態様、カッターとして使用する態様、及び鋏として使用する態様を、容易に切り替えることができる。

【0061】

静刃体３の刃幅ｗ１を動刃体４の刃幅ｗ２よりも大きく、換言すれば動刃体４の刃幅ｗ２を静刃体３の刃幅ｗ１よりも小さくしているので、第一及び第二の刃部Ｈ１、Ｈ２の刃先が重なる位置から第一の刃部Ｈ１における刃先部分Ｈ１ａが第二の刃部Ｈ２における刃峰Ｈ２ｘ側に露出する位置までに必要なストロークを小さくできる。

【0062】

ケースＡの内側面に、動刃操作部４２をケースＡに対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部１１、２１が設けられ、その案内部１１、２１が、動刃操作部４２に設けた凸部ｅ１、ｅ２を係合させ得る凹溝状をなしたものであるので、動刃操作部４２の外面に設けた凸部ｅ１、ｅ２とケースＡの内側面に設けた案内部１１、２１とを摺動可能に係合させることで鋏本体ＢのケースＡに対する移動方向を案内でき、必要なスペースを削減することができる。

【0063】

案内部１１、２１が、ケースＡにおける左右の内側面に設けられているので、鋏本体ＢのケースＡに対する移動方向の案内を安定して行うことができる。

【0064】

なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。

【0065】

例えば、上述した実施形態では、支持体がケースであり、鋏本体をケース内部に収納可能にしているが、支持体は鋏本体の静刃操作部及び動刃操作部のみを保持するものとし、鋏本体は第一位置と第二位置との間でのみ相対移動可能なカッター機能付き鋏に本発明を適用してもよい。

【0066】

また、第一位置と第二位置との位置関係は任意に設定してよい。例えば、第二位置が第一位置よりも前方である、換言すれば、第一位置にある鋏本体を、動刃操作部から刃先に向かう側に移動させることにより第二位置とすることができるカッター機能付き鋏に本発明を適用してもよい。

【0067】

さらに、上述した実施形態では、第一、第二の刃部を開く方向に付勢する付勢部材とを備えているが、このような付勢部材を有しないカッター機能付き鋏に本発明を適用してもよい。

【0068】

加えて、上述した実施形態では、支持体（ケース）の内側面に、動刃操作部を支持体（ケース）に対して前後方向及び上下方向に案内し得る案内部が設けられているが、案内部は、鋏本体の支持体（ケース）に対する第一位置と第二位置との間の相対移動を案内可能かものであれば任意の構成を採用してもよい。例えば、上述した実施形態では、案内部が、動刃操作部に設けた凸部が係合し得る溝状をなしたものであるが、案内部が、動刃操作部に設けた凹部が係合し得る凸レール状をなしたものであるであってもよい。

【0069】

さらに、上述した実施形態では、案内部に案内させつつ鋏本体を第二位置に移動させると、動刃操作部が、第一の刃部の刃先部分を第二の刃部における刃峰側に露出させ得る位置となるが、例えば、案内部に案内させつつ鋏本体を所定の途中位置まで移動可能に構成し、別途設けた押しボタン等の操作部に操作力を加えることによりに第一の刃部の刃先部分が第二の刃部における刃峰側に移動し鋏本体が第二位置を取るような構成を採用してもよい。

【0070】

その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。

【符号の説明】

【0071】

Ｓ…カッター機能付き鋏
Ａ…支持体（ケース）
Ｂ…鋏本体
Ｈ１…第一の刃部
Ｈ１ａ…刃先部分
Ｈ２…第二の刃部
Ｈ２ｘ…刃峰
１１、２１…案内部
３…静刃体
４…動刃体
４２…動刃操作部
６…付勢部材（コイルばね）
ｅ１、ｅ２…凸部
ｗ１…静刃体の刃幅
ｗ２…動刃体の刃幅
（Ｐ）…第一位置
（Ｑ）…第二位置
（Ｒ）…第三位置

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】