(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027592
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】被覆粒子及びそれを含む導電性材料
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20240222BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20240222BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01B5/00 M
H01B5/00 C
H01B1/00 M
H01B1/00 C
H01B1/22 D
H01B1/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130500
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大畑 圭代
(72)【発明者】
【氏名】久持 昭紘
【テーマコード(参考)】
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
5G301DA05
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA29
5G301DA45
5G301DA51
5G301DA53
5G301DA55
5G301DA57
5G301DA59
5G301DA60
5G301DD03
5G301DD08
5G307AA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、絶縁性粒子と導電性粒子との密着性及び導通信頼性に優れた被覆粒子及びそれを含む導電性材料を提供すること。
【解決手段】芯材粒子の表面に金属皮膜が形成された導電性粒子の表面を絶縁性粒子で被覆した被覆粒子であって、前記絶縁性粒子は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)し、更にその被覆(1)の表面が脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されていることを特徴とする被覆粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子の表面に金属皮膜が形成された導電性粒子の表面を絶縁性粒子で被覆した被覆粒子であって、前記絶縁性粒子は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)し、更にその被覆(1)の表面が脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されていることを特徴とする被覆粒子。
【請求項2】
前記芯材粒子が、樹脂、又は有機物と無機物との複合材料であることを特徴とする請求項1記載の被覆粒子。
【請求項3】
前記金属皮膜が、ニッケル、パラジウム、金、ニッケル合金、パラジウム合金、金合金から選ばれる少なくとも1種の皮膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項4】
前記導電性粒子は、金属皮膜上に複数の突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項5】
前記金属(M)が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項6】
前記脂肪酸又はその誘導体が、炭素数7以上の脂肪酸又はその誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項7】
前記導電性粒子は、疎水化剤で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項8】
前記疎水化剤が、高級脂肪酸又はその誘導体であることを特徴とする請求項7に記載の被覆粒子。
【請求項9】
請求項1に記載の被覆粒子と絶縁性樹脂とを含む導電性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が絶縁層で被覆された被覆粒子及びそれを含む導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子の表面にニッケルや金などの金属を形成させた導電性粒子は、導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤等の導電性材料として使用されている。
近年、電子機器類の一層の小型化に伴い、電子回路の回路幅やピッチはますます小さくなっている。それに伴い、上述の導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤等に用いられる導電性粒子として、その粒径が小さいものが求められている。このような小さい粒径の導電性粒子を使用した場合、その接続性を高めるためには導電性粒子の配合量を増加させなければならない。しかしながら、導電性粒子の配合量を増加させると、意図しない方向への導通、すなわち対向電極間とは異なる方向への導通により短絡が生じてしまい、該方向における絶縁性が得難いことが問題となっている。この問題を解決するために、導電性粒子の表面を絶縁性の物質で被覆して、導電性粒子の金属層同士の接触を防止した絶縁被覆導電性粒子が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、導電性の金属からなる表面を有する粒子を核とし、その表面を、該金属に対して結合性を有する官能基を含有する有機化合物からなる有機粒子により部分的に修飾してなる被覆粒子が記載されており、前記有機化合物は正又は負の電荷を有していることが記載されている。
【0004】
また特許文献2では、特許文献1と同様の被覆粒子が記載されている。同文献には、該被覆粒子が、絶縁微粒子が金属に対して結合性を有する官能基を介して導電性の金属からなる表面を有する粒子に化学結合することにより、単層の被覆層を形成していると記載されている。同文献には、このような構成の被覆粒子は、該被覆粒子を電極間で熱圧着することで絶縁微粒子が溶融、変形又は剥離することにより金属被覆粒子の金属表面が露出することで電極間での導通を可能とし接続性が得られる旨が記載されている。特許文献1及び2では、前記の官能基としてアンモニウム基やスルホニウム基が例示されている。
【0005】
また特許文献3には、金属との結合力を有するヘテロ元素又は官能基を表面に含む絶縁性樹脂微粒子を金属被覆粒子の表面に塗布した後、これを加熱することにより、金属被覆粒子の表面に粒子形状を有しない絶縁層を有する異方性絶縁導電性粒子が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2002/035555号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/025955号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/109448号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁性粒子に被覆された導電性粒子では、絶縁性粒子と導電性粒子との密着性の向上が課題であった。絶縁性粒子と導電性粒子との密着性は、対向電極とは異なる方向での絶縁性を得ながら対向電極間で導通を図る(以下、単に接続信頼性ともいう)上で重要であるため、更に絶縁性粒子と導電性粒子との密着性に優れた被覆粒子の開発が要望されている。
【0008】
従って、本発明の目的は、絶縁性粒子と導電性粒子との密着性及び導通信頼性に優れた被覆粒子及びそれを含む導電性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、シリカ粒子を直接、脂肪酸やその誘導体で被覆処理したものを絶縁性粒子として用いた場合には、ちょっとした外力の負荷により容易に脂肪酸やその誘導体の被覆層が剥がれやすいこと。これに対してシリカ粒子を前処理としてアルミニウム等の金属の酸化物又は/及び水酸化物で被覆処理したものに対して、その表面を脂肪酸やその誘導体で被覆処理したものを絶縁性粒子として用いた場合には、ちょっとした外力の負荷があっても導電性粒子の粒子表面から脂肪酸やその誘導体の被覆層の剥がれが抑制されること。従来、絶縁性粒子と導電性粒子の密着性に優れた被覆粒子を得るには、湿式法により溶媒を用いて被覆処理が行われている。これに対して、本発明で使用する絶縁性粒子を用いた場合には、該絶縁性粒子の導電性粒子への被覆処理を乾式で行っても絶縁性粒子と導電性粒子との密着性に優れたものが得られること。また、該被覆粒子は更に導通信頼性にも優れたものになることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明が提供しようとする第1の発明は、芯材粒子の表面に金属皮膜が形成された導電性粒子の表面を絶縁性粒子で被覆した被覆粒子であって、前記絶縁性粒子は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)し、更にその被覆(1)の表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されていることを特徴とする被覆粒子である。
【0011】
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、前記第1の発明の被覆粒子と絶縁性樹脂とを含む導電性材料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁性粒子の導電性粒子への被覆処理を乾式で行うことができ、絶縁性粒子と導電性粒子との密着性に優れ、また導通信頼性にも優れた被覆粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
本実施形態の被覆粒子は、芯材粒子の表面に金属皮膜が形成された導電性粒子の表面を、絶縁性粒子で被覆した被覆粒子であって、前記絶縁性粒子は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)し、更にその被覆(1)の表面が脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されていることを特徴とするものである。
【0014】
(導電性粒子)
導電性粒子としては、導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤に従来用いられている公知のものを用いることができる。
【0015】
導電性粒子における芯材粒子としては、無機物であっても有機物であっても特に制限なく用いることができる。無機物の芯材粒子としては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ハンダ等の金属粒子、合金、ガラス、セラミック、シリカ、金属又は非金属の酸化物(含水物も含む)、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素等が挙げられる。一方、有機物の芯材粒子としては、例えば、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブテン、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルニトリル、ポリアセタール、アイオノマー、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、有機物と無機物との複合材料を用いることもできる。例としてはスチレンシリカ複合樹脂、アクリルシリカ複合樹脂、架橋したアルコキシリルポリマー-アクリル樹脂、ポリオルガノシロキサン-シリカ、スチレンーアクリレートーシリカ複合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、金属からなる芯材粒子に比べて比重が小さくて沈降し難く、分散安定性に優れ、樹脂の弾性により電気接続を維持し易いという点で、樹脂或いは有機物と無機物との複合材料からなる芯材粒子が好ましい。また、有機物と無機物との複合材料は、コア・シェル構造を有するものであってもよい。
【0016】
芯材粒子として有機物を用いる場合、ガラス転移温度を有しないか、或いは、そのガラス転移温度は100℃超であることが、異方導電接続工程において芯材粒子の形状が維持されやすいことや金属皮膜を形成する工程において芯材粒子の形状を維持しやすい点から好ましい。また芯材粒子がガラス転移温度を有する場合、ガラス転移温度は、200℃以下であることが、異方導電接続において導電性粒子が軟化しやすく接触面積が大きくなることで導通が取りやすくなる点から好ましい。この観点から、芯材粒子がガラス転移温度を有する場合、ガラス転移温度は、100℃超180℃以下であることがより好ましく、100℃超160℃以下であることが特に好ましい。
【0017】
芯材粒子として有機物を用いる場合において、その有機物が高度に架橋した樹脂であるときは、ガラス転移温度は下記実施例に記載の方法にて200℃まで測定を試みても、ほとんど観測されない。本明細書中ではこのような粒子をガラス転移点を有しない粒子ともいい、本発明においては、このような芯材粒子を用いてもよい。前記のこのようなガラス転移温度を有しない芯材粒子材料の具体例としては、前記で例示した有機物を構成する単量体に架橋性の単量体を併用して共重合させて得ることができる。架橋性の単量体としては、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンオキシド(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメテロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アク
リレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の多官能ビニル系単量体、ビニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン含有系単量体、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル等の単量体が挙げられる。特にCOG(Chip on Glass)分野ではこのような硬質な有機材料による芯材粒子が多く使用される。
【0018】
芯材粒子の形状に特に制限はない。一般に、芯材粒子は球状である。しかし、芯材粒子は球状以外の形状、例えば、繊維状、中空状、板状又は針状であってもよく、その表面に多数の突起を有するもの又は不定形のものであってもよい。本発明においては、充填性に優れ、金属を被覆しやすいといった点で、球状の芯材粒子が好ましい。
【0019】
芯材粒子からなる粉体の前述の方法によって測定された粒度分布には幅がある。一般に、粉体の粒度分布の幅は、下記式(1)で示される変動係数により表される。
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100 (1)
この変動係数が大きいことは分布に幅があることを示し、一方、変動係数が小さいことは粒度分布がシャープであることを示す。本発明では、芯材粒子として、この変動係数が30%以下、特に20%以下、とりわけ10%以下のものを使用することが好ましい。この理由は、本発明の導電性粒子を異方性導電フィルム中の導電粒子として用いた場合に、接続に有効な寄与割合が高くなるという利点があるからである。
【0020】
また、芯材粒子のその他の物性は、特に制限されるものではないが、芯材粒子が樹脂粒子である場合は、下記式(2)で定義されるKの値が、20℃において100N/mm2~100000N/mm2の範囲であり、かつ10%圧縮変形後の回復率が20℃において1%~100%の範囲であることが好ましい。これらの物性値を満足することで、電極どうしを圧着するときに電極を傷つけることなく、電極と十分に接触させることができるからである。
K値(N/mm2 )=(3/√2)×F×S-3/2×R-1/2・・・(2)
〔ここに、計算式(2)で示されるF、Sは、微小圧縮試験機MCTM-500島津製作所製)で測定したときの、それぞれ該微球体の10%圧縮変形における荷重値(N)、圧縮変位(mm)であり、Rは該微球体の半径(mm)である〕
【0021】
導電性粒子の形状は、芯材粒子の形状にもよるが、特に制限はない。例えば、繊維状、中空状、板状又は針状であってもよいが、充填性、接続性に優れるという点で、球状のもの好ましい。
【0022】
また、導電性粒子は、その表面が平滑であってもよい。あるいは導電性粒子は、その表面から突出する複数の突起を有していてもよい。この突起は、金属皮膜と同一材料から構成された連続体であると、導電性が更に一層向上するので好ましい。更に詳細には、金属皮膜が、平坦部と、該平坦部から突出し、かつ該平坦部からの連続体になっている複数の突起部とを有し、該平坦部と該突起部とが同一の材料から構成されていることが好ましい。「連続体」とは、金属皮膜の突起部と平坦部とが単一の工程によって形成され、かつ金属皮膜の平坦部と突起部との間に、継ぎ目等の一体感を損なうような部位が存在しないことを意味する。ただし突起部に関しては、該突起部が、金属皮膜を構成する材料からなる粒子が列状に複数個連結してなる粒子連結体から構成され、該粒子間に粒界が観察されることは許容される。したがって、例えば芯材粒子の表面に突起形成用のコア粒子、例えば金属、金属酸化物、黒鉛等の非金属無機物、導電性ポリマー等を付着させ、該コア粒子を成長の起点として形成された突起は、平坦部と突起とが単一の工程によって形成されたものではないので、本発明にいう連続体に含まれない。尤も、かかるコア粒子を芯材粒子に付着させ、該コア粒子を成長の起点として形成された突起を有する導電性粒子も、本発明の範囲内であることに留意すべきである。
【0023】
導電性粒子が上述した構成の突起を有すると、電極の導通をとる場合、電極表面に形成されている酸化皮膜を該突起が突き破ることができ、接続抵抗の低減を図ることができる。
【0024】
突起はその高さHが、平均して20nm以上、特に50nm以上であることが好ましい。突起の数は、導電性粒子の粒径にもよるが、1つの粒子当たり、1~20000個、特に5~5000個であることが、導電性粒子の導電性の一層の向上の点から好ましい。突起のアスペクト比は、好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上である。突起のアスペクト比が大きいと、上述した酸化皮膜を容易に突き破ることができるので有利である。
また、導電性粒子を用いて異方性導電フィルムを形成した場合には、突起のアスペクト比が大きいと、樹脂排除性が高くなるので、導電性が高くなると考えられる。アスペクト比とは、突起の高さHと突起の基部の長さDとの比、すなわちH/Dで定義される値である。
【0025】
突起のアスペクト比は上述のとおりであるところ、導電性粒子の突起の基部の長さD自体は5~500nm、特に10~400nmであることが好ましく、突起の高さHについては5~500nm、特に10~400nmであることが好ましい。
【0026】
導電性粒子における金属皮膜は、導電性を有するものであり、その構成金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、コバルト、インジウム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、アルミニウム、クロム、パラジウム、タングステン、モリブデン等の金属又はこれらの合金のほか、ITO、ハンダ等の金属化合物等が挙げられる。中でも金、銀、銅、ニッケル、パラジウム又はハンダが抵抗が少ないため好ましく、とりわけ、ニッケル、パラジウム、金、ニッケル合金、パラジウム合金又は金合金が、絶縁性粒子との結合性が高いために好適に用いられる。導電性粒子における金属は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ニッケル合金はニッケルーリン、ニッケルーホウ素、ニッケル―ホウ素―リンも含み、パラジウム合金は、パラジウム―リン、パラジウム―ホウ素も含む。
【0027】
金属皮膜は、単層構造であっても、複数層からなる積層構造であってもよい。複数層からなる積層構造である場合には、特に無電解めっき法により金属皮膜を形成したときに、下地層をニッケル又はニッケル合金とし、最表層が、ニッケル、パラジウム、金、ニッケル合金、パラジウム合金又は金合金であることが、接続抵抗の低減を図る観点から好ましい。
【0028】
また、芯材粒子の表面の金属皮膜の厚さは0.001μm~2μm、特に0.005~1μmであることが好ましい。
【0029】
芯材粒子の表面に金属皮膜を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション法等を利用する乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等を利用する湿式法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせて芯材粒子の表面に金属皮膜を形成してもよいが、芯材粒子の表面を無電解めっきにより金属皮膜を形成した導電性粒子が、粒子表面を均一かつ濃密に被覆できる点で好ましい。
【0030】
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上50μm以下、より好ましくは1μm以上30μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が上記範囲内であることで、得られる被覆粒子が対向電極間とは異なる方向での短絡を発生させることなく、対向電極間での導通を確保しやすい。なお、本発明において、導電性粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて測定した粒子径の平均値である。なお走査型電子顕微鏡画像において導電性粒子が球状である場合は、SEMを用いて測定する粒子径とは、円形の導電性粒子像の径である。絶縁性粒子が球状でない場合、SEMを用いて測定する粒子径は、導電性粒子の像を横断する線分のうち最も大きい長さ(最大長さ)をいう。
【0031】
具体的には、導電性粒子の平均粒子径は実施例に記載の方法にて測定される。
【0032】
また、導電性粒子は、溶出するアルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、有機酸イオン等の不純物イオンが少ないものが、電極等の腐食を抑制する観点から好ましい。
【0033】
(絶縁性粒子)
本発明で用いる絶縁性粒子は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)し、更にその被覆(1)の表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されているものである。
【0034】
用いることができるシリカ粒子としては、例えば、ケイ酸ソーダ又は活性ケイ酸溶液から粒子成長を行って製造されたものや、有機珪素化合物を原料として製造されたものや、気相法シリカ、沈降性シリカ等を用いることができる。
【0035】
シリカ粒子の好ましい物性は、動的光散乱法による求めた平均粒子径が5~500nm、好ましくは10~300nmである。シリカ粒子の平均粒子径が上記範囲にあることにより、絶縁性粒子が導電性粒子の粒子表面に均一に分散した状態で吸着しやすくなる。
【0036】
被覆(1)は、金属(M)の酸化物又は水酸化物である。金属(M)としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉄及び銅等の1種又は2種以上が挙げられ、これらの中、金属(M)はアルミニウムがシリカ粒子と脂肪酸及びその誘導体との親和性が良く、脂肪酸及びその誘導体の被覆(2)を一層強固にその被覆(1)の表面に付着させることができる観点から好ましい。
【0037】
金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物のシリカ粒子への被覆量は、脂肪酸及びその誘導体の被覆層の剥離を抑制する観点から、シリカ粒子に対して金属(M)の酸化物換算で1~40質量%、好ましくは5~25質量%である。この理由は、金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物のシリカ粒子への被覆量が1質量%未満では、シリカ粒子を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で十分に被覆することが出来ない傾向があり、また、40質量%より大きくなっても、金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆する効果が飽和し、また、過剰な金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物は本発明の被覆粒子にとって不純物となるため好ましくない。
【0038】
金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)したシリカ粒子表面を、更に被覆する脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖のモノ又はポリカルボン酸であることが好ましく、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖のモノカルボン酸であることが更に好ましく、飽和又は不飽和の直鎖モノカルボン酸であることが一層好ましい。脂肪酸は、その炭素数が好ましくは7以上である。また、誘導体とは、前記脂肪酸の塩又はアミドを指す。
【0039】
本発明に用いられる脂肪酸又はその誘導体は、脂肪酸の炭素数が好ましくは7~23であり、更に好ましくは10~20である。このような脂肪酸又はその誘導体としては、例えばカプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リレノン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸、又はこれらの金属塩若しくはアミド等が挙がられる。脂肪酸の金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag等の遷移金属、及びAl、Zn等の遷移金属以外の他の金属の塩が挙げられ、好ましくはAl、Zn、W、V等の多価金属塩である。脂肪酸金属塩は、金属の価数に応じて、モノ体、ジ体、トリ体、テトラ体等であり得る。脂肪酸金属塩は、これらの任意の組み合わせであってもよい。
【0040】
脂肪酸又はその誘導体の被覆量は、シリカ粒子に対して、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%、更に好ましくは0.2質量%~5.0質量%である。被覆量がこのような範囲であることによって、絶縁性粒子の導電性粒子への密着性を高めることができる。
【0041】
本発明に係る絶縁性粒子は、例えば、下記の第1~2工程を行うことにより容易に製造することができる。
第1工程:シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)する工程。
第2工程:第1工程で得られた表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)したシリカ粒子に対して、更にその粒子表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)する工程。
【0042】
第1工程は、シリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)する工程である。
例えば、第1工程はシリカ粒子を水溶媒に分散させたシリカ分散液に水溶性の金属(M)含有化合物を加え、次いでアルカリ剤(1)を加えて水溶性の金属(M)含有化合物を加水分解することによりシリカ粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)することができる。
【0043】
第1工程に係る水溶性の金属(M)含有化合物としては、例えば、金属(M)のハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
第1工程に係るアルカリ剤(1)としては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、KHCO3、Ca(OH)2等の無機アルカリ剤またはエタノールアミン等の有機アルカリ剤から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
水溶性の金属(M)含有化合物の加水分解反応は、反応液のpHを5.0以上、好ましくは5.5~9に調製し、温度15~95℃、好ましくは50~90℃で反応および熟成を行って微細な該金属(M)の水酸化物をシリカ粒子の表面に沈着させる。
水溶性の金属(M)含有化合物の加水分解反応終了後、必要により洗浄、乾燥等を行うことにより、粒子の表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)したシリカ粒子を得ることができる。
【0045】
第2工程は、第1工程で得られた表面を金属(M)の酸化物又は/及び水酸化物で被覆(1)したシリカ粒子(以下、「被覆(1)を有するシリカ粒子」と言うことがある)に対して、更にその粒子表面を脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)する工程である。
【0046】
第2工程に係る脂肪酸又はその誘導体の被覆処理は、湿式法又は乾式法で行うことができる。
【0047】
脂肪酸又はその誘導体の被覆処理を湿式法によって行う場合、例えば(a)前記脂肪酸又はその誘導体を所望の濃度で含む分散液に被覆(1)を有するシリカ粒子を添加してスラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥するか、又は該スラリーを固液分離して、得られた固形分を乾燥する方法、(b)被覆(1)を有するシリカ粒子が分散した分散液に、脂肪酸又はその誘導体の塩を添加し、次いでアルカリ剤(2)を加えて脂肪酸又はその誘導体の塩を加水分解することにより被覆(1)を有するシリカ粒子の表面を、更に脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)することができる。
【0048】
前記(b)の被覆方法にかかる脂肪酸又はその誘導体の塩としては、前記した脂肪酸又はその誘導体のナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
前記(b)の被覆方法にかかるアルカリ剤(2)としては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、KHCO3、Ca(OH)2等の無機アルカリ剤またはエタノールアミン等の有機アルカリ剤から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
脂肪酸又はその誘導体の加水分解反応は、反応液のpHを5.0以上、好ましくは5.5~9に調製し、温度15~95℃、好ましくは50~90℃で反応および熟成を行って、被覆(1)を有するシリカ粒子の表面に脂肪酸を表面に沈着させることができる。
【0050】
脂肪酸又はその誘導体の被覆処理を乾式法によって行う場合、例えば被覆(1)を有するシリカ粒子と、固体の前記脂肪酸又はその誘導体とを、ボールミル、ビーズミル、ヘンシェルミキサー、気流式粉砕機等の混合装置を用いて混合するか、又は、被覆(1)を有するシリカ粒子と、前記脂肪酸又はその誘導体を溶剤で希釈した希釈液とを混合し、その後、必要に応じて加熱処理することによって、更に表面が脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されたシリカ粒子を得ることができる。
【0051】
また、本発明で使用する被覆(1)を有するシリカ粒子の表面が、更に脂肪酸又はその誘導体で被覆(2)されている絶縁性粒子は、前記第二工程後に加熱処理を行うことができる。加熱処理の温度は、好ましくは70~230℃、更に好ましくは100~210℃であり、加熱処理する時間は、好ましくは10分以上、更に好ましくは20分~10時間である。また、加熱処理における雰囲気は、真空、不活性ガス雰囲気或いは大気雰囲気のいずれであってもよい。加熱処理を施すことにより、被覆成分の脂肪酸又はその誘導体が緻密な構造となり、被覆のムラを無くし、均一な脂肪酸又はその誘導体の被覆層とすることができる。加熱処理を行う場合、加熱処理の温度は、前記脂肪酸又はその誘導体の融点以上であり、且つ前記脂肪酸又はその誘導体の分解点より低い温度であることが、均一な脂肪酸又はその誘導体の被覆層とする観点から好ましい。
【0052】
(被覆粒子)
前記導電性粒子の粒子表面に前記絶縁性粒子を被覆する方法としては、湿式又は乾式で行うことができるが、操作が簡素化できる観点から乾式で行うことが好ましい。
【0053】
乾式法としては、強力な剪断力が作用する機械的手段にて調製される。乾式法で使用する装置としては、ハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイブリダイゼイションシステム、ナウターミキサー、リボンブレンダー、ジェットミル、コスモマイザー、ビーズミル、ボールミル、気流式粉砕機等の装置を用いることができる。
【0054】
また、本発明の被覆粒子は、上記した第2工程を行う方法以外に、後述する(A)の方法で記したように、被覆(1)を有したシリカ粒子、導電性粒子及び固体の前記脂肪酸又はその誘導体とを前記乾式法で用いる装置に一緒に投入して混合処理を行うことによっても製造することができる。
【0055】
また、本発明では、上記で得られる被覆粒子に対して、更に加熱処理することにより、絶縁性粒子を導電性粒子の表面に強固に付着させることができる。
加熱処理の温度は、好ましくは70~230℃、更に好ましくは100~210℃であり、加熱処理する時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間~10時間である。また、加熱処理における雰囲気は、真空又は不活性ガス雰囲気のいずれであってもよい。加熱処理を施すことにより、被覆成分の脂肪酸又はその誘導体が一層緻密な構造となると同時に該脂肪酸又はその誘導体自体がバインダー機能を一層高め、これにより絶縁性粒子を導電性粒子の表面に強固に付着させることができる。
【0056】
本発明に係る被覆粒子は、絶縁性粒子の被覆率が30%以上、好ましくは30~100%、特に30~80%であることが、該被覆粒子を用いて上下の電極間を電気的に接続したときに、電気信頼性が優れたものになる観点から好ましい。
【0057】
なお、被覆率とは、SEMにて導電性粒子に付着した絶縁性粒子の個数nを数え、以下の式から被覆率を算出した。評価に用いた被覆率は、被覆粒子20個の平均値である。
被覆率(%)=(n/N)×100
N:導電性粒子の表面に、絶縁粒子が最密充填で配列したときの絶縁性粒子の個数
N=4π(R+r)2/2√3r2
(R:導電性粒子の半径(nm)、r:絶縁性粒子の半径(nm))
【0058】
また、本発明に係る被覆粒子は、前記導電性粒子として、該導電性粒子を疎水化剤で表面処理したものを用いることができる。導電性粒子の表面に疎水化剤を存在させると、絶縁性粒子との親和性に優れ、絶縁性粒子の被覆率をいっそう高めることができる。
前記疎水化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チタネート系カップリング剤、高級脂肪酸その誘導体(2)、リン酸エステル及び亜リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0059】
なお、この場合、記絶縁性粒子は、1)該導電性粒子の粒子表面に存在する疎水化剤を介して導電性粒子の粒子表面に付着していていもよく、2)疎水化剤を介さないで、該導電性粒子の粒子表面に直接付着してもよく、前記1)と2)が混在して付着しても良い。
【0060】
ベンゾトリアゾール系化合物は、下記一般式(4)で表されるものが好ましい。
【化1】
(式中、A
1、A
2は同一の又は異なるアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を示し、p1、q1は同一の又は異なる0~2の整数を示す。)
前記一般式(4)の式中のA
1及びA
2は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を示す。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数が1~5のものが好ましい。該アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が好ましい。該ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。前記一般式(4)中のp1及びq1は、同一の又は異なる0~2の整数を示す。また、A
1とA
2は同一の基でも異なる基であってもよい。
【0061】
前記一般式(4)で表わされるベンゾトリアゾール系化合物の好ましい具体的な化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4,5-ジメチルベンゾトリアゾール、4,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール、4,5-ジエチルベンゾトリアゾール、4,6-ジエチルベンゾトリアゾール、5,6-ジエチルベンゾトリアゾール、4-フェニルベンゾトリアゾール、5-フェニルベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、4,5-ジカルボキシベンゾトリアゾール、4,6-ジカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0062】
チタネート系カップリング剤の例としては、以下の式(i)又は式(ii)で表されるものが挙げられる。
(B1O)Ti(OB2)(OB3)(OB4) (i)
(式中、B1はアルキル基であり、B2~B4はそれぞれアルキル基、アルキル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基、アルケニル基、アルケニル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基、アルカノイル基、ジアルキルパイロホスフェート基及びアルキルベンゼンスルホニル基から選ばれる基である。ただし、B2~B4のいずれか1以上が、アルカノイル基、ジアルキルパイロホスフェート基又はアルキルベンゼンスルホニル基である。B1とB2が一緒になって環を形成してもよい。)
【0063】
(B5O)Ti(OB6)(OB7)(OB8)・[P(OB9)2OH]2 (ii)
(式中、B5~B8はそれぞれアルキル基、アルキル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基、アルケニル基、又はアルケニル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基である。B9はアルキル基である。)
上記で挙げた式(i)においてB1~B4のうち2又は3つの基が同一であってもよく、B1~B4が全て異なっていてもよい。式(ii)で表される化合物においてB5~B8のうち2又は3つの基が同一であってもよく、B5~B8が全て異なっていてもよい。2つ存在するB9は同一であってもよく異なっていてもよい。式(i)で表される化合物において、アルカノイル基、ジアルキルパイロホスフェート基又はアルキルベンゼンスルホニル基の好ましい数は1~3、更に好ましくは2~3、特に好ましくは3である。
【0064】
上記で挙げたアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ラウリル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基(ステアリル基を含む)、ノナデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基およびテトラコンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基の炭素-炭素一重結合の一つ又は二つ以上を炭素-炭素二重結合に変更した基が挙げられる。
【0065】
アルキル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基とは、アルコキシ基ではなく、アルキル基中のメチレン基同士の間を酸素原子で中断された基が挙げられる。アルケニル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基についても同様の基が挙げられる。
【0066】
B1~B4、B5~B8で表されるアルキル基、アルキル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基、アルケニル基、及び、アルケニル基中の末端以外のメチレン基が酸素原子で置換された基の炭素原子数としては3~40が好ましく、3~32がより好ましい。B2~B4で表されるアルカノイル基としては炭素原子数2~40のものが好ましい。B2~B4で表されるジアルキルパイロホスフェート基のアルキル基としては炭素原子数3~40のものが好ましい。B2~B4で表されるアルキルベンゼンスルホニル基のアルキル基としては炭素原子数3~40のものが好ましい。B9で表されるアルキル基としては、炭素原子数3~40のものが好ましい。
【0067】
B1とB2が一緒になって形成する環としては-CH2-CH2-又は-CH2-COO-等が式(i)における酸素原子及びチタン原子と構成する環が挙げられる。
【0068】
上記式(i)又は式(ii)で表される各基は、置換基で置換されていてもよい。その場合の置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリル基、イソシアネート基、メルカプト基が挙げられる。
【0069】
本発明に用いられるチタネート系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピル(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。
なお、これらのチタネート系カップリング剤は、例えば、味の素ファインテクノ株式会社から市販されている。
【0070】
高級脂肪酸又はその誘導体(2)としては、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のモノ又はポリカルボン酸であることが好ましく、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のモノカルボン酸であることが更に好ましく、飽和又は不飽和の直鎖モノカルボン酸であることが一層好ましい。高級脂肪酸は、その炭素数が好ましくは7以上である。また、誘導体とは、前記高級脂肪酸の塩又はアミドを指す。
【0071】
本発明に用いられる高級脂肪酸又はその誘導体(2)は、高級脂肪酸の炭素数が好ましくは7~23であり、更に好ましくは10~20である。このような高級脂肪酸又はその誘導体としては、例えばカプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸、又はこれらの金属塩若しくはアミド等が挙げられる。高級脂肪酸の金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag等の遷移金属、及びAl、Zn等の遷移金属以外の他の金属の塩が挙げられ、好ましくはAl、Zn、W、V等の多価金属塩である。高級脂肪酸金属塩は、金属の価数に応じて、モノ体、ジ体、トリ体、テトラ体等であり得る。高級脂肪酸金属塩は、これらの任意の組み合わせであってもよい。
【0072】
リン酸エステル及び亜リン酸エステルとしては、炭素数6~22のアルキル基を有するものが、好ましく用いられる。
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸ヘキシルエステル、リン酸ヘプチルエステル、リン酸モノオクチルエステル、リン酸モノノニルエステル、リン酸モノデシルエステル、リン酸モノウンデシルエステル、リン酸モノドデシルエステル、リン酸モノトリデシルエステル、リン酸モノテトラデシルエステル、リン酸モノペンタデシルエステル等が挙げられる。
亜リン酸エステルとしては、例えば、亜リン酸ヘキシルエステル、亜リン酸ヘプチルエステル、亜リン酸モノオクチルエステル、亜リン酸モノノニルエステル、亜リン酸モノデシルエステル、亜リン酸モノウンデシルエステル、亜リン酸モノドデシルエステル、亜リン酸モノトリデシルエステル、亜リン酸モノテトラデシルエステル、亜リン酸モノペンタデシルエステル等が挙げられる。
【0073】
本発明において、疎水化剤は、絶縁性粒子との親和性に優れ、また、絶縁性粒子の被覆率を高める効果が高い点で、高級脂肪酸又はその誘導体(2)が特に好ましい。
【0074】
本発明において、疎水化剤は、導電性粒子の表面に存在していればよく、その場合、導電性粒子の表面全体に存在していてもよく、表面の一部にのみ存在していてもよい。また、疎水化剤は、導電性粒子の表面の一部又は全体を被覆する層を形成していてもよい。
【0075】
該導電性粒子を疎水化剤で表面処理する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。その一例を示せば、導電性粒子と疎水化剤を溶媒中で混合する方法が挙げられる。
【0076】
前記溶媒としては、水や有機溶媒が挙げられ、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒に導電性粒子と疎水化剤とを投入した分散液において、疎水化剤の濃度としては、0.01~20質量%である。また、この分散液における導電性粒子の濃度としては1~50質量%である。
【0077】
処理後の分散液をろ過し、必要により乾燥することで表面に疎水化剤を有する導電性粒子を得ることができる。
【0078】
また、疎水化剤で表面処理した導電性粒子の粒子表面に前記絶縁性粒子を被覆する方法としては、前述した導電性粒子の粒子表面に前記絶縁性粒子を被覆する方法と同様な乾式方法を用いることができる。
【0079】
また、本発明において、疎水化剤として高級脂肪酸又はその誘導体(2)を用いる場合は、下記の2つの方法で、本発明の被覆粒子を製造してもよい。
(A)の方法は、被覆(1)を有するシリカ粒子、導電性粒子及び固体の前記高級脂肪酸又はその誘導体(2)とを前記第2工程の乾式法で用いる装置に一緒に投入して混合処理を行う方法。
(B)の方法は、前記導電性粒子の粒子表面に前記絶縁性粒子を乾式混合して被覆する際に、乾式混合を行う装置に、導電性粒子及び絶縁性粒子に加えて、更に高級脂肪酸又はその誘導体(2)も投入し、そのまま一緒に混合処理を行う方法。
【0080】
(A)の方法によれば、被覆(1)を有するシリカ粒子と導電性粒子とを、高級脂肪酸又はその誘導体(2)により一気に被覆することができ、また、(B)の方法によれば、導電性粒子の粒子表面を前記高級脂肪酸又はその誘導体(2)で被覆しながら、一気に導電性粒子及び/又は高級脂肪酸又はその誘導体(2)で被覆した導電性粒子の表面に絶縁性粒子も付着させることができる。
【0081】
本発明の被覆粒子は、被覆粒子間の絶縁性及び対向電極間での接続性を活かして、例えば異方性導電フィルム(ACF)やヒートシールコネクタ(HSC)、液晶ディスプレーパネルの電極を駆動用LSIチップの回路基板へ接続するための導電材料などとして好適に使用される。特に、導電性接着剤の導電性フィラーとして好適に用いられる。
【0082】
前記の導電性接着剤は、導電性基材が形成された2枚の基板間に配置され、加熱加圧によって前記導電性基材を接着して導通する異方導電性接着剤として好ましく用いられる。この異方導電性接着剤は、本発明の導電性粒子と接着剤樹脂とを含む。接着剤樹脂としては、絶縁性で、かつ接着剤樹脂として用いられているものであれば、特に制限なく使用できる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性のいずれであってもよく、加熱によって接着性能が発現するものが好ましい。そのような接着剤樹脂には、例えば熱可塑性タイプ、熱硬化性タイプ、紫外線硬化タイプ等がある。また、熱可塑性タイプと熱硬化性タイプとの中間的な性質を示す、いわゆる半熱硬化性タイプ、熱硬化性タイプと紫外線硬化タイプとの複合タイプ等がある。これらの接着剤樹脂は被着対象である回路基板等の表面特性や使用形態に合わせて適宜選択できる。特に、熱硬化性樹脂を含んで構成される接着剤樹脂が、接着後の材料的強度に優れる点から好ましい。
【0083】
接着剤樹脂としては、具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-イソブチルアクリレート共重合体、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、SBSブロック共重合体、カルボキシル変性SBS共重合体、SIS共重合体、SEBS共重合体、マレイン酸変性SEBS共重合体、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、カルボキシル変性クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、NBRと表す。)、カルボキシル変性NBR、アミン変性NBR、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂又はシリコーン樹脂などから選ばれる1種又は2種以上の組合せにより得られるものを主剤として調製されたものが挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂としては、スチレン-ブタジエンゴムやSEBSなどがリワーク性に優れるので好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。これらのうち接着力が高く、耐熱性、電気絶縁性に優れ、しかも溶融粘度が低く、低圧力で接続が可能であるという利点から、エポキシ樹脂が最も好ましい。
【0084】
前記のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂であれば、一般に用いられているエポキシ樹脂が使用可能である。具体的なものとしては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシ化合物等とエピクロルヒドリン又は2-メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂が例示される。また、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族及び脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0085】
なお、上述した各種の接着樹脂としては、不純物イオン(NaやCl等)や加水分解性塩素などが低減された高純度品を用いることが、イオンマイグレーションの防止の観点から好ましい。
【0086】
異方導電性接着剤における導電性粒子の使用量は、接着剤樹脂成分100質量部に対し通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~25質量部、より好ましくは1~20質量部である。導電性粒子の使用量がこの範囲内にあることにより、接続抵抗や溶融粘度が高くなることが抑制され、接続信頼性を向上させ、接続の異方性を十分に確保することができる。
【0087】
前記の異方導電性接着剤には、上述した導電性粒子及び接着剤樹脂の他に、当該技術分野において、公知の添加剤を配合することができる。その配合量も当該技術分野において公知の範囲内とすることができる。他の添加剤としては、例えば粘着付与剤、反応性助剤、エポキシ樹脂硬化剤、金属酸化物、光開始剤、増感剤、硬化剤、加硫剤、劣化防止剤、耐熱添加剤、熱伝導向上剤、軟化剤、着色剤、各種カップリング剤又は金属不活性剤などを例示することができる。
【0088】
粘着付与剤としては、例えばロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン-インデン樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。反応性助剤すなわち架橋剤としては、例えばポリオール、イソシアネート類、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウトロピン類、アミン類、酸無水物、過酸化物などが挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては、1分中に2個以上の活性水素を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的なものとしては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン等のポリアミノ化合物;無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の有機酸無水物;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、必要に応じて潜在性硬化剤を用いてもよい。使用できる潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等及びこれらの変性物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上の混合体として使用できる。
【0089】
前記の異方導電性接着剤は、当該技術分野において通常使用されている製造装置を用いて製造される。例えば、導電性粒子及び接着剤樹脂並びに必要に応じ硬化剤や各種添加剤を配合し、接着剤樹脂が熱硬化性樹脂の場合は有機溶媒中で混合することにより、熱可塑性樹脂の場合は接着剤樹脂の軟化点以上の温度で、具体的には好ましくは約50~150℃程度で溶融混練することにより製造される。このようにして得られた異方導電性接着剤は、塗布してもよいし、フィルム状にして適用してもよい。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例により、詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<絶縁性粒子試料の調製>
(絶縁性粒子1)
反応容器に、水性シリカゾル(SiO2:22.7質量%、水:77.3質量%)100gを85℃に加温した。
次に、シリカ粒子に対してAl2O3換算で10質量%となるように塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5に調整した後、30分間攪拌しながら塩化アルミニウムを加水分解し、表面に水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を含むスラリーを得た。
次いで、このスラリーをろ過してろ過ケーキを得、このろ過ケーキを再度2Lの純水に分散させ、この操作を3回繰り返し洗浄を行った。次いで洗浄したケーキを乾燥して、表面に水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を得た。
なお、水性シリカゾルは、市販の動的光散乱法による求めた粒子径が219nmのものを使用した。
上記で調製した水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子50質量部とステアリン酸(融点62℃~72℃)0.25質量部とを気流式粉砕機(セイシン企業製、A―Oジェットミル)で粉砕混合して、該混合物を100℃で30分加熱処理して、表面に水酸化アルミニウムを被覆し、更にその表面をステアリン酸で被覆したシリカ粒子を得た。これを絶縁性粒子試料とした。
なお、気流式粉砕機の条件は、粉体供給速度:3g/分、プッシャー圧:0.6MPa、ジェット圧:0.6MPaとした。
(絶縁性粒子2)
シリカ粒子に対してAl2O3換算で20質量%となるように塩化アルミニウム水溶液を添加した以外は、絶縁性粒子1と同様にして絶縁性粒子試料を調製した。
(絶縁性粒子3)
反応容器に、水性シリカゾル(SiO2:22.7質量%、水:77.3質量%)100gを85℃に加温した。
次に、シリカ粒子に対してAl2O3換算で10質量%となるように塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5に調整した後、30分間攪拌しながら塩化アルミニウムを加水分解し、表面に水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を含むスラリーを得た。
次いで、このスラリーをろ過してろ過ケーキを得、このろ過ケーキを再度2Lの純水に分散させ、この操作を3回繰り返し洗浄を行った。次いで洗浄したケーキを乾燥して、表面を水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を得た。
なお、水性シリカゾルは、市販の動的光散乱法による求めた粒子径が219nmのものを使用した。
上記で調製した水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子50質量部とステアリン酸亜鉛(融点128℃~140℃))0.25質量部とを気流式粉砕機(セイシン企業製、A―Oジェットミル)で粉砕混合して、該混合物を200℃で30分加熱処理して、表面に水酸化アルミニウムを被覆し、更にその表面をステアリン酸亜鉛で被覆したシリカ粒子を得た。これを絶縁性粒子試料とした。
なお、気流式粉砕機の条件は、粉体供給速度:3g/分、プッシャー圧:0.6MPa、ジェット圧:0.6MPaとした。
(絶縁性粒子4)
シリカ粒子に対してAl2O3換算で20質量%となるように塩化アルミニウム水溶液を添加した以外は、絶縁性粒子3と同様にして絶縁性粒子試料を調製した。
(絶縁性粒子5)
反応容器に、水性シリカゾル(SiO2:22.7質量%、水:77.3質量%)100gを仕込み、 攪拌しながら沸騰状態を維持する温度に加熱して水を除去し、シリカ粒子を得た。
水性シリカゾルは、市販の動的光散乱法による求めた粒子径が219nmのものを使用した。
上記で調製したシリカ粒子50質量部とステアリン酸(融点62℃~72℃))0.25質量部とを気流式粉砕機(セイシン企業製、A―Oジェットミル)で粉砕混合して、該混合物を100℃で30分加熱処理して、表面をステアリン酸で被覆したシリカ粒子を得た。これを絶縁性粒子試料とした。
なお、気流式粉砕機の条件は、粉体供給速度:3g/分、プッシャー圧:0.6MPa、ジェット圧:0.6MPaとした。
(絶縁性粒子6)
反応容器に、水性シリカゾル(SiO2:22.7質量%、水:77.3質量%)100gを仕込み、 攪拌しながら沸騰状態を維持する温度に加熱して水を除去し、シリカ粒子を得た。
水性シリカゾルは、市販の動的光散乱法による求めた粒子径が219nmのものを使用した。
上記で調製したシリカ粒子50質量部とステアリン酸亜鉛(融点128℃~140℃))0.25質量部とを気流式粉砕機(セイシン企業製、A―Oジェットミル)で粉砕混合して、該混合物を100℃で30分加熱処理して、表面をステアリン酸亜鉛で被覆したシリカ粒子を得た。これを絶縁性粒子試料とした。
なお、気流式粉砕機の条件は、粉体供給速度:3g/分、プッシャー圧:0.6MPa、ジェット圧:0.6MPaとした。
(絶縁性粒子7)
反応容器に、水性シリカゾル(SiO2:22.7質量%、水:77.3質量%)100gを85℃に加温した。
次に、シリカ粒子に対してAl2O3換算で10質量%となるように塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5に調整した後、30分間攪拌しながら塩化アルミニウムを加水分解し、表面を水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を含むスラリーを得た。
次いで、このスラリーをろ過してろ過ケーキを得、このろ過ケーキを再度2Lの純水に分散させ、この操作を3回繰り返し洗浄を行った。次いで洗浄したケーキを乾燥して、表面を水酸化アルミニウムを被覆したシリカ粒子を得た。これを絶縁性粒子試料とした。
【0092】
【表1】
注)1)水酸化アルミニウムの被覆量はシリカ粒子に対するAl
2O
3換算の被覆量を示す。2)脂肪酸の被覆量はシリカ粒子に対する脂肪酸の被覆量を示す。
【0093】
<導電性粒子試料の調製>
導電性粒子は、下記の市販の導電性粒子を使用した。
なお、導電性粒子の平均粒子径は走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率100,000倍)から任意に200個の粒子を抽出して、それらの粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0094】
(導電性粒子1)
球状の樹脂粒子の表面に厚さが0.125μmのニッケル皮膜を有する、平均粒子径が3μmのNiめっき粒子(日本化学工業株式会社製)を用意した。樹脂粒子は架橋性のアクリル樹脂からなり、ガラス転移温度が120℃であった。
なお、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率、100,000倍)から、任意に抽出して、それらの粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0095】
(導電性粒子2)
球状の樹脂粒子の表面に、平均高さが0.1μm、平均の基部の長さが0.197μm、アスペクト比0.5である、1,030個の突起を有し且つ厚さが0.125μmのニッケル皮膜を有する、平均粒子径が3μmのNiめっき粒子(日本化学工業株式会社製)を用意した。樹脂粒子は架橋性のアクリル樹脂からなり、ガラス転移温度が120℃であった。なお、平均粒子径は、前記導電性粒子1と同様な方法で測定した。
【0096】
{実施例1~8及び比較例1~4}
表2に示す絶縁性粒子10重量部と導電性粒子100重量部、更に見かけ体積0.3Lのジルコニアボール(粒径;1mm)を内容量0.7L、内径0.09mの円筒状容器(ポットミル)に入れ密封し、100rpmで回転させた。このときの回転数は下記式(t)において、aは0.71として求めた。絶縁性粒子が、導電性粒子に均一に付着するように、60分間処理した後、ジルコニアボールと、得られた被覆粒子とを分別した。得られた被覆粒子を被覆粒子試料とした。
N=a×42.3/√D・・・・(t)
N:回転数(rpm)
D:ボールミル容器の内径(m)
a:定数
【0097】
(被覆率の評価)
実施例及び比較例で得られた被覆粒子から、絶縁性粒子を導電性粒子に被覆したときの被覆率の差を評価した。その結果を表2に示す。なお、被覆率は次の方法により求めた。
【0098】
<被覆率の測定方法>
導電性粒子の表面に、絶縁性粒子が最密充填で配列したときの絶縁粒子の個数Nを以下の計算式で算出した。
N=4π(R+r)2/2√3r2
(R:導電性粒子の半径(nm)、r:絶縁性粒子の半径(nm))
SEMにて導電性粒子に付着した絶縁性粒子の個数nを数え、以下の式から被覆率を算出した。その結果を表1に示す。
被覆率(%)=(n/N)×100
評価に用いた被覆率は、導電性粒子20個の平均値とした。
【0099】
(密着度の評価)
実施例及び比較例で得られた被覆粒子1gを純水100mLに加え、超音波装置(VELVO-CLEAR社製、VS-D100)にて発振周波数24kHzの条件で超音波処理を2分間行って得られた被覆粒子を、前記被覆率の評価と同じ方法で被覆率を算出し、下記式により密着度を算出して密着性の評価とし、その結果を表2に示す。密着度の数値が高いほど超音波処理による絶縁性粒子の脱落が少ないので、導電性粒子と絶縁性粒子との密着性が高いことを意味する。
密着度(%)=(超音波処理後の被覆率/超音波処理前の被覆率)×100
【0100】
【0101】
{実施例9~10及び比較例5~6}
実施例5、7及び比較例3で得られた被覆粒子について、表3に示す条件で加熱処理を行い、これを被覆粒子試料とし、実施例1~8と同様にして被覆率及び密着度を評価した。
【0102】
【0103】
{実施例11~12}
表4に示す絶縁性粒子4重量部と導電性粒子100重量部及び脂肪酸0.05質量部とを円筒状容器(ポットミル)に入れ、実施例1~8と同様にして被覆粒子を調製し、これを被覆粒子試料とした。また、実施例1~8と同様にして被覆率及び密着度を評価した。
【0104】
【0105】
{実施例13~14}
実施例11及び12で得られた被覆粒子について、表5に示す条件で加熱処理を行い、これを被覆粒子試料とし、実施例1~8と同様にして被覆率及び密着度を評価した。
【0106】
【0107】
<導電性の評価>
エポキシ樹脂100質量部、硬化剤150質量部及びトルエン70質量部を混合した絶縁性接着剤と、実施例で得られた被覆粒子試料15質量部とを混合して、絶縁性ペーストを得た。このペーストをシリコーン処理ポリエステルフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、その後、ペーストを乾燥して、フィルム上に薄膜を形成した。得られた薄膜形成フィルムを、全面がアルミニウムを蒸着させたガラス基板と、銅パターンが50μmピッチに形成されたポリイミドフィルム基板との間に配して、加熱圧着(160℃、200N、30秒)して電気接続を行った。この基板間の導通抵抗を測定することで、被覆粒子の導通性を室温下(25℃、50%RH)で評価した。抵抗値が低いほど被覆粒子の導通性が高いものであると評価できる。被覆粒子の導通性評価は、抵抗値が2Ω未満であるものを「非常に良好」(表6中で、「〇」で示す)とし、抵抗値が2Ω以上5Ω未満であるものを「良好」(表6中で、「△」で示す)とし、抵抗値が5Ω以上であるものを「不良」(表6中で、「×」で示す)として評価した。その結果を表6に示す。
【0108】