(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027593
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】階段
(51)【国際特許分類】
E04F 11/025 20060101AFI20240222BHJP
E04F 11/02 20060101ALI20240222BHJP
E04F 11/116 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E04F11/025
E04F11/02 100
E04F11/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130504
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕造
(72)【発明者】
【氏名】坪井 健一
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 智史
(72)【発明者】
【氏名】藤森 英樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 健太郎
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC33
2E301CD04
2E301DD13
2E301DD15
2E301DD16
2E301DD72
2E301DD91
(57)【要約】
【課題】左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工される階段において、左右のササラ桁に最下段の蹴込板が取付けられた階段、あるいは、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工された階段において、土間に最下段の蹴込板が取付けられた階段を提供する。
【解決手段】本発明に係る階段1は、上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁(ササラ桁2,2)の下端が基礎3に固定されて当該左右の桁間に踏板5及び蹴込板6が設けられて基礎3の上に土間4が施工される階段であって、最下段の蹴込板6Eが取付手段7を介して左右の桁に取付けられたこと、あるいは、前記土間4が施工された階段であって、最下段の蹴込板6Eが取付手段7を介して土間4に取付けられたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁の下端が基礎に固定されて当該左右の桁間に踏板及び蹴込板が設けられて前記基礎の上に土間が施工される階段であって、
最下段の蹴込板が取付手段を介して前記左右の桁に取付けられたことを特徴とする階段。
【請求項2】
取付手段は、前記左右の桁間に亘って連続するように設けられて、一端が前記左の桁の内面に取付けられるとともに、他端が前記右の桁の内面に取付けられた桁補強部材であることを特徴とする請求項1に記載の階段。
【請求項3】
取付手段は、前記左の桁の内面に取付けられた左側の取付手段、及び、前記右の桁の内面に取付けられた右側の取付手段であることを特徴とする請求項1に記載の階段。
【請求項4】
上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁の下端が基礎に固定されて当該左右の桁間に踏板及び蹴込板が設けられて前記基礎の上に土間が施工された階段であって、
最下段の蹴込板が取付手段を介して前記土間に取付けられたことを特徴とする階段。
【請求項5】
前記踏板は、矩形板状に形成された成形セメント板と、補強材と、水分侵入防止材とを備えて構成され、
前記成形セメント板には、左右の端面に亘って連続する中空部が当該成形セメント板の前後方向に沿って所定の間隔を隔てて複数設けられており、
前記補強材は、前記成形セメント板に形成された前記中空部の長さよりも短い長さに形成されて、1つ以上の前記中空部に設置され、
前記水分侵入防止材は、前記中空部に設置された前記補強材の端部外周面と前記中空部の端部内周面との間に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の最下段の蹴込板の設置及び取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁(以下、「ササラ桁」という)と、左右のササラ桁間に上下傾斜方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた踏板と、下段の踏板の後端側と上段の踏板の前端側との間に設けられた蹴込板とを備えて構成された階段が知られている(特許文献1参照)。
上述した階段では、左右のササラ桁の下端が基礎に固定され、左右のササラ桁間に踏板及び蹴込板が設けられて、階段本体の施工が終了した後に、基礎の上に土間が施工される場合がある。
このように、左右のササラ桁の下端が基礎に固定されて左右のササラ桁間に踏板及び蹴込板が設けられた後、基礎の上に土間が施工される階段においては、従来、最下段の蹴込板を設けないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蹴込板は、踏板に過大な荷重が加わった場合に荷重を分散させ、踏板の損傷などを防ぐ役割をするものであるため、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間コンクリートが施工される階段であっても、最下段の蹴込板を設けることが望ましいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工される階段において、左右のササラ桁に最下段の蹴込板が取付けられた階段、あるいは、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工された階段において、土間に最下段の蹴込板が取付けられた階段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る階段は、上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁の下端が基礎に固定されて当該左右の桁間に踏板及び蹴込板が設けられて前記基礎の上に土間が施工される階段であって、最下段の蹴込板が取付手段を介して前記左右の桁に取付けられたことを特徴とする。
また、取付手段は、前記左右の桁間に亘って連続するように設けられて、一端が前記左の桁の内面に取付けられるとともに、他端が前記右の桁の内面に取付けられた桁補強部材であることを特徴とする。
また、取付手段は、前記左の桁の内面に取付けられた左側の取付手段、及び、前記右の桁の内面に取付けられた右側の取付手段であることを特徴とする。
本発明によれば、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工される階段において、左右のササラ桁に最下段の蹴込板が取付けられた階段を得ることができるようになった。
また、本発明に係る階段は、上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右の桁の下端が基礎に固定されて当該左右の桁間に踏板及び蹴込板が設けられて前記基礎の上に土間が施工された階段であって、最下段の蹴込板が取付手段を介して前記土間に取付けられたことを特徴とするので、左右のササラ桁の下端が基礎に固定された後、基礎の上に土間が施工された階段において、土間に最下段の蹴込板が取付けられた階段を得ることができるようになった。
また、前記踏板は、矩形板状に形成された成形セメント板と、補強材と、水分侵入防止材とを備えて構成され、前記成形セメント板には、左右の端面に亘って連続する中空部が当該成形セメント板の前後方向に沿って所定の間隔を隔てて複数設けられており、前記補強材は、前記成形セメント板に形成された前記中空部の長さよりも短い長さに形成されて、1つ以上の前記中空部に設置され、前記水分侵入防止材は、前記中空部に設置された前記補強材の端部外周面と前記中空部の端部内周面との間に設けられたことを特徴とするので、補強材の腐食発生を防止でき、強度不足を防止できる踏板を備えた階段を得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】階段の下端側の構成を示す分解斜視図(実施形態1)。
【
図2】階段の下端側の踏板及び蹴込板の断面図(実施形態1)。
【
図3】(a)は階段の下端側の踏板及び蹴込板の断面図、(b)は取付手段の斜視図(実施形態2)。
【
図4】(a)は最下段の蹴込板と取付手段との関係を示す斜視図、(b),(c)は取付手段の正面図(実施形態4)。
【
図5】(a)は階段の最下段部を示す斜視図、(b)は取付手段の取付方法を示す説明図(実施形態5)。
【
図6】(a)は踏板の分解斜視図、(b)は踏板の斜視図、(c)は踏板の端部構造を示す断面図、(d)は踏板の断面図(実施形態6)。
【
図7】(a)は踏板の分解斜視図、(b)は踏板の斜視図、(c)は踏板の端部構造を示す断面図、(d)は踏板の断面図(実施形態6)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
図1,
図2に示すように、実施形態1に係る階段1は、上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右のササラ桁2,2の下端2E,2Eが基礎3に固定され、左右のササラ桁2,2間に複数の踏板5及び蹴込板6が上下斜め方向に連続するように設けられて基礎3の上に土間4が施工される階段であって、最下段の蹴込板6Eが取付手段7を介してササラ桁2,2に取付けられた構成とした。
当該階段1は、例えば屋外用の階段である。
尚、本明細書においては、上、下、左、右、前、後は、
図1,
図2に示した方向と定義して説明する。
また、
図2の断面図において、ハッチングは省略した。
【0009】
実施形態1に係る階段1の施工は、例えば以下の手順で行う。
(1)先に施工されている図外の踊り場や廊下等の桁に左右のササラ桁2,2の上端側を取付ける。
(2)左右のササラ桁2,2間に亘って連続するササラ桁補強材7Aを所定の位置に設置するとともに、ササラ桁補強材7Bを所定の位置に必要な数だけ設置する。即ち、最下段側のササラ桁補強材として機能するとともに、最下段の蹴込板6Eを取付けるための取付手段7としても機能するササラ桁補強材7Aを取付け、さらに、必要な本数だけ、所定の位置に、ササラ桁補強材7Bを取付ける。
(3)ササラ桁2の下端2Eに設けられたベースプレート21の下にササラ桁レベル調整プレート22を設ける。ササラ桁レベル調整プレート22に設けられたレベル調整用のボルト23をベースプレート21に形成された貫通孔に通す。尚、当該貫通孔の上側及び下側に位置されるように調整用ナット24,24をボルト23に螺着しておく。
(4)調整用ナット24,24を用いてベースプレート21のレベルを調整することにより、左右のササラ桁2,2のレベルを調整した後に、ササラ桁レベル調整プレート22を図外のアンカーボルト等を用いて基礎コンクリート3に固定する。
(5)左右のササラ桁2,2の内面2u,2uに、各段の踏板5を取付けるための踏板取付材50,50…を取付ける。
(6)踏板5及び蹴込板6,6Eの取付作業を行う。例えば、まず、最下段の踏板5を左右の踏板取付材50,50に取付ける。その後、上方に向けて、上段の蹴込板6を設置するとともに上段の踏板5を設置して当該上段の踏板5を上段の踏板取付材50,50に取付けるという作業を、順次繰り返す。つまり、各踏板5,5…は、左右の両端側が踏板取付材50,50を介して左右のササラ桁2,2に取付けられる。即ち、左右のササラ桁2,2の内面2u,2uにおける各踏板5,5…の取付位置に対応して、それぞれ踏板取付材50,50…が取り付けられ、当該踏板取付材50に踏板5が取付けられる。
また、最下段の蹴込板6Eを取付ける。
(7)基礎3の上に土間コンクリートを打設し、土間4の表面の左官仕上げ作業を行って土間4を完成させる。
【0010】
ササラ桁2は、例えば、基礎3から垂直方向に立ち上がった後に上方向に傾斜して延長するように形成された側面板2aと、側面板2aの前端縁から横方向に延長するように設けられた前面板2bと、側面板2aの後端縁から横方向に延長するように設けられた後面板2cとを備えて構成される。左のササラ桁2は、前面板2b及び後面板2cが左方向に延長するように形成されており、右のササラ桁2は、前面板2b及び後面板2cが右方向に延長するように形成されている。
【0011】
各段の踏板5,5…は、例えば、矩形板状に形成された成形セメント板51と補強材52とにより構成されたものを用いることが好ましい。
成形セメント板51は、例えば、左右の端面に亘って連続する断面円形の中空部53を、当該成形セメント板51の前後方向に沿って所定の間隔を隔てて複数備えた構成である。
補強材52は、例えば、断面円形状の鋼管等の金属パイプである。
そして、踏板5は、成形セメント板51に形成された1つ以上の中空部53に補強材52が設置されて構成されている。
即ち、成形セメント板51は、衝撃荷重に弱く、使用方法によっては、損傷する虞があったため、成形セメント板51の内部に補強材52を設置して補強したことにより、耐衝撃荷重を向上させて、成形セメント板51が損傷しても成形セメント板51が脱落しないように構成された踏板5を用いるようにしたものである。
【0012】
踏板取付材50は、左右のササラ桁2,2の側面板2a,2aにおいて互いに対向する面であるササラ桁2の内面2u,2uにボルト及びナット等の固定手段F1により固定される。
踏板取付材50は、ササラ桁2の内面2uにおいて前後方向に延長する設置される部材であって、例えば、固定手段F1によりササラ桁2の内面2uに固定される垂直板部50aと、踏板5が載置されて固定される水平板部50bとを備えた断面L字状の所謂アングル材により構成される。
【0013】
踏板5は、固定手段F2により踏板取付材50の水平板部50bに固定される。
固定手段F2は、例えば、成形セメント板51に形成された中空部53の1つ以上に設置された板ナット54と、踏板取付材50の水平板部50b及び当該水平板部50bの上面に敷設されたパッキンP等の緩衝板に形成されたボルト通し孔、及び、セメント板51の下面と中空部53とに到達するように形成されたボルト通し孔を貫通して、板ナット54に螺着されたボルト55とで構成される。
つまり、ササラ桁2の内面2uに取付けられた踏板取付材50の水平板部50bの下側からボルト通し孔に挿通されたボルト55が板ナット54に螺着されることで、踏板5が踏板取付材50に固定される。
【0014】
ササラ桁補強材7A,7B…は、例えば、左右のササラ桁2,2間に亘って連続するように設けられて、一端が左のササラ桁2の内面2uにボルト及びナット等の固定手段F3によって固定され、かつ、他端が右のササラ桁2の内面2uにボルト及びナット等の固定手段F3によって固定される。
ササラ桁補強材7A,7B…は、左右のササラ桁2,2間に亘って連続する長さに形成された水平板7aと水平板7aの前端縁より下方に延長する垂直板7bとで構成された断面L字状の長尺材である所謂アングル材と、当該アングル材の左右の両端に設けられて左右のササラ桁2,2の内面2u,2uと対向する面を備えた取付板7c,7cとを備えた構成である。つまり、ササラ桁補強材7A,7B…は、
図3(b)に示した後述のササラ桁補強材7AXの溝部7dを備えない構成の部材である。
即ち、実施形態1では、左右のササラ桁2,2間に亘って連続するように設けられて、一端が左のササラ桁2の内面2uに取付けられるとともに、他端が右のササラ桁2の内面2uに取付けられたササラ桁補強部材7Aを、取付手段7として用いるようにした。
【0015】
従来、最下段のササラ桁補強材7Bは、
図2の点線で示す位置に設けられていたが、実施形態1の構成においては、最下段のササラ桁補強材7Aは、
図2の点線で示すササラ桁補強材7Bの位置よりも前方かつ土間仕上げ予定面4fよりも上方に位置されるように移動させて設けるようにしたことで、最下段の蹴込板6Eの下端6e側を取付けるための取付手段7としても機能させるようにした。
即ち、最下段のササラ桁補強材7Aの下端と土間コンクリート4の仕上げ予定面4fとの間に隙間を設けるように設定した。
【0016】
最下段以外の蹴込板6は、下段の踏板5の上面と上段の踏板5の下面と左右のササラ桁2,2の内面2u,2uとで囲まれた矩形開口空間に対応する大きさに形成された矩形の鋼板等の板材により構成される。
最下段以外の蹴込板6の取付作業は、例えば、以下のように行う。
踏板取付材50,50に取付けられた下段の踏板5の上面後端側において踏板5の左右端面間に亘って延長するように形成された下端部嵌合溝56に蹴込板6の下端6e側を嵌合させた後、上段の踏板5の下面前端側において踏板5の左右端面間に亘って延長するように形成された上端部嵌合溝57に蹴込板6の上端6t側を嵌合させる。その後、当該上段の踏板5を踏板取付材50,50に取付けることにより、下段の踏板5の上面後端側と上段の踏板5の下面前端側との間に蹴込板6が取付けられることになる。
【0017】
最下段の蹴込板6Eは、最下段の踏板5の下面と左右のササラ桁2,2の内面2u,2uと土間コンクリートの仕上げ面4fとで囲まれる矩形開口空間に対応する大きさに形成された矩形の鋼板等の板材により構成される。
最下段の蹴込板6Eの取付作業は、例えば、以下のように行う。
最下段の踏板5の下面前端側において踏板5の左右端面間に亘って延長するように形成された上端部嵌合溝57に最下段の蹴込板6Eの上端6t側を嵌合させる。その後、最下段の蹴込板6Eの下端6e側の板面を、左右のササラ桁2,2の内面2u,2uに固定された取付部材7としてのササラ桁補強材7Aの垂直板7bの板面(前面)に当接させる。そして、ねじ等の固定手段F4を用いて、最下段の蹴込板6Eの下端6e側をササラ桁補強材7Aの垂直板7bに固定する。
以上により、最下段の踏板5と土間4の仕上げ予定面4fとの間に最下段の蹴込板6Eが設けられた階段1が構成される。
【0018】
実施形態1に係る階段1によれば、上下方向に傾斜して延長するように設けられた左右のササラ桁2,2の下端2E,2Eが基礎3に固定されて当該左右のササラ桁2,2間に踏板5及び蹴込板6が設けられて基礎3の上に土間4が施工される階段において、最下段の踏板5と土間4の仕上げ予定面4fとの間に最下段の蹴込板6Eが設けられて、当該最下段の蹴込板6Eが取付手段7としてのササラ桁補強材7Aを介して左右のササラ桁2,2に取付けられた構成としたので、最下段の蹴込板6Eを備えた階段1を提供できるようになった。即ち、最下段の踏板5に過大な荷重が加わった場合に荷重を分散させることができ、当該最下段の踏板5の損傷などを防ぐことができる屋外用階段などの階段1を得ることができるようになった。
また、土間4が仕上がっていなくても最下段の蹴込板6Eの取付作業を行えるので、階段本体の施工後に、基礎3の上に土間4が施工される階段であっても、最下段の蹴込板6Eを取付手段7としてのササラ桁補強材7Aを介して左右のササラ桁2,2に取付けることによって、最下段の蹴込板6Eを備えた階段1を施工できるようになった。
また、取付手段7としてのササラ桁補強材7Aの下端を土間4の仕上げ予定面4fよりも上方に位置させたので、
図2の点線で示す従来のササラ桁補強材7Bのように土間4の仕上げ予定面4fより下方に位置されるササラ桁補強材7Bが存在しなくなるため、土間工事における左官作業がしやすくなるといった効果も得られる。
また、既存のササラ桁補強材7Bの設置位置を変えて使用するササラ桁補強材7Aを取付手段7として使用できるので、取付手段7としての部品を新たに設計及び製造する必要がなくなるため、コストパフォーマンスを向上できる。
また、
図2に示すように、土間4の仕上げ予定面4fを、ササラ桁補強材7A(取付手段7)に固定された最下段の蹴込板6Eの下端6eよりも下方に設定しておいて、最下段の蹴込板6Eの下端6e側を土間4に埋め込まないように土間4を施工するようにすれば、蹴込板6Eが損傷する等して蹴込板6Eの交換が必要になった場合に、当該蹴込板6Eの交換作業を容易に行えるようなる。
尚、土間4の仕上げ予定面4fを、ササラ桁補強材7A(取付手段7)に固定された最下段の蹴込板6Eの下端6eよりも若干上方に設定しておいて、最下段の蹴込板6Eの下端6e側を土間4に埋め込むように土間4を施工しても構わない。
【0019】
実施形態2
実施形態1ではササラ桁補強材7Aを取付手段7として利用した構成を例示したが、
図3に示すように、ササラ桁補強材7Aの垂直板7bの下端側に断面凹状の溝部7dを備えた構成のササラ桁補強材7AXを取付手段7として使用するようにしてもよい。
ササラ桁補強材7AXとしては、垂直板7bと溝部7dとが一体に形成されたものを用いてもよいし、あるいは、垂直板7bとは別体で形成された溝部7dを垂直板7bの下端側に溶接等で結合したものを用いてもよい。
尚、
図3(a)の断面図において、ハッチングは省略した。
【0020】
取付手段7としてササラ桁補強材7AXを用いた場合、最下段の蹴込板6Eの下端6e側をササラ桁補強材7AXの溝部7dに嵌合させた後に、最下段の踏板5を設置して、当該踏板5の上端部嵌合溝57に蹴込板6Eの上端6t側を嵌合させる。その後、当該上段の踏板5を踏板取付材50,50に取付けることにより、最下段の蹴込板6Eがササラ桁補強材7AXを介して左右のササラ桁2,2に取付けられることになる。
尚、最下段の蹴込板6Eの下端6e側をササラ桁補強材7AXの溝部7dに嵌合させるだけでも構わないが、ねじ等の固定手段を用いて、最下段の蹴込板6Eの下端6e側を溝部7dに嵌合させた後に当該下端6e側をササラ桁補強材7AXの垂直板7bに固定するようにしてもよい。
【0021】
実施形態2によれば、実施形態1と同じ効果が得られるとともに、ササラ桁補強材7AXが溝部7dを備えたので、作業時に最下段の蹴込板6Eが落下することがなくなり、蹴込板6Eの取付作業が容易となる。つまり、取付手段7として、溝部7dを備えたササラ桁補強材7AXを用いたので、蹴込板6Eの取付作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
実施形態3
実施形態1及び実施形態2では、左右のササラ桁2,2間に亘って連続するように設けられたササラ桁補強材7Aやササラ桁補強材7AXを取付手段7として使用した例を示したが、水平板と垂直板とで構成された断面L字状の短尺アングル材と当該短尺アングル材の一端に設けられた取付板とを備えて構成された部材を、それぞれ個別に、左右のササラ桁2,2の内面2u,2uに取付けた構成の取付手段7としてもよい。
【0023】
実施形態4
図4に示すように、垂直方向に連続する断面コ字状の溝を備えた溝部材を、左右のササラ桁2,2の内面2u,2uにそれぞれ取付けることで、取付手段7を構成してもよい。
取付手段7として機能する溝部材としては、例えば、
図4(a)に示す溝部材7X1、あるいは、
図4(b)に示す溝部材7X2、あるいは、
図4(c)に示す溝部材7X3を用いればよい。
【0024】
図4(a)に示す溝部材7X1は、ササラ桁2の内面2uに対する取付板となる溝底板7uと当該溝底板7uの前縁及び後縁から同方向に延長して互いに平行な前後の垂直溝壁板7v,7vとを備えたものである。前後の垂直溝壁板7v,7v間の間隔は、上方から最下段の蹴込板6Eを嵌合状態に挿入可能な間隔に設定される。
溝部材7X1は、図外のねじ又は溶接などの固定手段により溝底板7uがササラ桁2の内面2uの所定位置に固定される。そして、前後の垂直溝壁板7v,7v間の縦溝に最下段の蹴込板6Eの側部6sが嵌合状態に挿入され、最下段の蹴込板6Eの下端側と前の垂直溝壁板7vあるいは後の垂直溝壁板7vとが図外のタッピングスクリュー等の固定手段により固定される。その後、上段の踏板5の上端部嵌合溝57に最下段の蹴込板6Eの上端6t側を嵌合させた後、当該上段の踏板5を踏板取付材50,50に取付けることにより、最下段の踏板5と土間4の仕上げ予定面4fとの間に最下段の蹴込板6Eが設けられることになる。
【0025】
図4(b)に示す溝部材7X2は、溝部材7X1の下端に底板7eを備えたものである。
この溝部材7X2を用いた場合、前後の垂直溝壁板7v,7v間の縦溝に側部6sが嵌合状態に挿入された最下段の蹴込板6Eの下端が底板7eで受け止められる。
溝部材7X2を取付手段7として用いる場合、最下段の蹴込板6Eの下端6eが溝部材7X2の底板7eで受け止められるので、最下段の蹴込板6Eの下端6e側と前の垂直溝壁板7vあるいは後の垂直溝壁板7vとを図外のタッピングスクリュー等の固定手段により固定してもよいし、固定しなくてもよい。
【0026】
図4(c)に示す溝部材7X3は、取付板となる溝底板7uと当該溝底板7uの前縁及び後縁から同方向に延長して互いに対向する前後の溝壁板7w,7wとを備え、前後の溝壁板7w,7w間の間隔が上端から下端に近づくに従って漸次小さくなるように構成されたものである。
前後の溝壁板7w,7w間の上端の間隔H1は、最下段の蹴込板6Eの板厚寸法よりも大きい寸法に設定されるとともに、前後の溝壁板7w,7w間の下端の間隔H2は、最下段の蹴込板6Eの板厚寸法よりも小さい寸法に設定される。
当該溝部材7X3を用いた場合、前後の溝壁板7w,7w間に挿入された最下段の蹴込板6Eの下端6eが前後の溝壁板7w,7wの下端側で受け止められる。
当該溝部材7X3を取付手段7として用いる場合、最下段の蹴込板6Eの下端6eが受け止められるので、最下段の蹴込板6Eの下端側と前の溝壁板7wあるいは後の溝壁板7vとをタッピングスクリュー等の固定手段により固定しなくてもよい。
【0027】
即ち、上述した実施形態3,4によれば、取付手段7として、左のササラ桁2の内面2uに取付けられた左側の取付手段7と、右のササラ桁2の内面2uに取付けられた右側の取付手段7とを用いた構成としたので、実施形態1と同じ効果が得られるととともに、取付手段7を小型化できる。
【0028】
実施形態5
実施形態1乃至実施形態4では、土間4の施工が完了する前に、ササラ桁2,2に取付けられた取付手段7を介して最下段の蹴込板6Eを取付ける構成を例示したが、土間4の施工が完了した後、土間4に取付けられた取付手段7を介して最下段の蹴込板6Eを土間4に取付けるようにしてもよい。
【0029】
実施形態5に用いる取付手段7としては、例えば
図5に示すように、左右方向に延長する凹状の溝7mを備えたレール部材7Yを用いる。
即ち、レール部材7Yは、土間4に対する取付板となる水平板7hと当該水平板7hの前縁側及び後縁側から上方向に延長して互いに平行な前後の垂直板7i,7iと備えて、水平板7hと前後の垂直板7i,7iとで囲まれた断面凹状の溝7mが形成された構成のものである。
当該レール部材7Yは、左右のササラ桁2,2間に亘って連続する長さのレール部材を用いてもよいし、左右のササラ桁2,2間に、間欠的に設けられる複数のレール部材を用いるようにしてもよい。間欠的に設けられる複数のレール部材を用いるようにすれば、階段幅寸法の変更に対応できるようになる。
【0030】
例えばレール部材7Yは、コンクリートビスなどの固定手段F6により水平板7hが土間4の所定位置に固定されることで、土間4に取付けられる。その後、最下段の踏板5の固定手段F2のボルト55を緩めて、最下段の踏板5の前端側を持ち上げて上端部嵌合溝57に最下段の蹴込板6Eの上端6t側を嵌合させた後、最下段の蹴込板6Eの下端6e側をレール部材7Yの溝7mに挿入して、当該最下段の踏板5を踏板取付材50,50に取付け直すことにより、最下段の踏板5と土間4との間に最下段の蹴込板6Eが設けられることになる。
【0031】
実施形態5によれば、左右のササラ桁2,2の下端2E,2Eが基礎3に固定されて左右のササラ桁2,2間に踏板5及び蹴込板6が設けられて基礎3の上に土間4が施工された階段において、最下段の蹴込板6Eが取付手段7としてのレール部材7Yを介して土間4に取付けられた構成としたので、土間4が施工された後に、最下段の蹴込板6Eを備えた階段1を得ることができる。
【0032】
実施形態6
上述したように、補強材52としての金属パイプを成形セメント板51の中空部53に挿入して踏板5を構成した場合、外部環境や使用状態により成形セメント板51の中空部53内に水分が侵入して、補強材52の腐食が発生し、踏板5の強度が不足してしまう可能性が高くなる。
そこで、実施形態6においては、
図6,
図7に示すように、成形セメント板51の中空部53内への水分の侵入を防止するための水分侵入防止手段を設けた構成の踏板を用いるようにした。
【0033】
即ち、
図6に示した踏板5A、又は、
図7に示した踏板5Bの場合、補強材52として、中空部53の長さよりも短い長さの金属パイプを用い、中空部53に設置された補強材52の端部における外周面52sと中空部53の端部における内周面53uとの間に、水分侵入防止材を設けることにより、補強材52の外周面52sと中空部53の内周面53uとの間への水分の侵入を防止する構成とした。
【0034】
図6に示した踏板5Aでは、水分侵入防止手段として、例えば、発泡ポリエチレンにより形成されたバックアップ材81,82と、変性シリコン系のシーリング剤83とを用いる。
バックアップ材81としては、補強材52の端部における外周面52sを覆うように取付けられた環状のバックアップ材を用いた。
また、バックアップ材82としては、補強材52の端部における開口を閉じるように設けられた円柱状又は円板状の閉塞用のバックアップ材を用いた。
例えば、補強材52の両方の端部における開口を閉塞用のバックアップ材82,82で塞ぐとともに、補強材52の両方の端部における外周面52sを覆うように環状のバックアップ材81を取付けて構成されたバックアップ材装着済みの補強材52を作成する。その後、当該バックアップ材装着済みの補強材52をセメント板51の特定の中空部(例えば、最も前端側に位置される中空部)53に挿入して設置した後、当該バックアップ材装着済みの補強材52が設置された中空部53の両方の端部開口とバックアップ材81,82との間にシーリング剤83を充填したことにより、踏板5Aが構成される。
尚、
図6(c),
図6(d)の断面図において、バックアップ材81,82、シーリング剤83以外のハッチングは省略した。
【0035】
図7に示した踏板5Bは、例えば準防火仕様の踏板であり、当該踏板5Bでは、水分侵入防止手段として、エポキシ系の接着剤84を用いた。
即ち、補強材52の両方の端部における外周面52sと中空部53の両方の端部における内周面53uとの間に接着剤84が充填された構成の踏板5Bを構成した。
また、当該準防火仕様の踏板5Bは、
図7(d)に示すように、踏板5Bの前側及び後側の2か所において、固定手段F2により踏板取付材50に取付けられた構成とした。
図7(c),
図7(d)の断面図において、接着剤84以外のハッチングは省略した。
【0036】
即ち、実施形態6に係る踏板5A,5Bは、矩形板状に形成された成形セメント板51と、補強材52と、水分侵入防止材とを備えて構成される。
そして、成形セメント板51には、左右の端面に亘って連続する例えば断面円形の中空部53が当該成形セメント板51の前後方向に沿って所定の間隔を隔てて複数設けられていて、補強材52が、成形セメント板51に形成された中空部53の長さよりも短い長さに形成されて、1つ以上の中空部53に設置されており、さらには、水分侵入防止材が、中空部53に設置された補強材52の端部外周面52sと中空部53の端部内周面53との間に設けられた構成としたものである。
当該実施形態6によれば、補強材52の腐食発生を防止でき、強度不足を防止できる踏板5A,5Bを備えた階段1を得ることができるようになった。
【符号の説明】
【0037】
1 階段
2 ササラ桁(桁)
2E ササラ桁の下端
2u ササラ桁の内面
3 基礎
4 土間
5 踏板
6 蹴込板
6E 最下段の蹴込板
7 取付手段
7A,7AX ササラ桁補強材(取付手段)
7X1,7X2,7X3 溝部材(取付手段)
7Y レール部材(取付手段)
51 成形セメント板
52 補強材
52s 補強材の端部外周面
53 中空部
53u 中空部の端部内周面
81,82 バックアップ材(水分侵入防止材)
83 シーリング剤(水分侵入防止材)
84 接着剤(水分侵入防止材)