IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オンラインの特許一覧

<>
  • 特開-裾上げ機能付きパンツ 図1
  • 特開-裾上げ機能付きパンツ 図2
  • 特開-裾上げ機能付きパンツ 図3
  • 特開-裾上げ機能付きパンツ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027600
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】裾上げ機能付きパンツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/06 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A41D1/06 M
A41D1/06 501Z
A41D1/06 502G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130514
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】504079254
【氏名又は名称】株式会社オンライン
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 栄治
(57)【要約】
【課題】
帯状フラップに面ファスナーを固定することで、パンツの脚筒部表面に縫合跡などが現れることを無くし、美感に優れた裾上げ機能付きパンツを提供することを可能にする。。
【解決手段】
本発明の裾上げ機能付きパンツは、左右の脚筒部を有するパンツであって、前記脚筒部の裏面において、前身頃と後身頃の縫合線に沿って帯状フラップを形成し、前記帯状フラップの表面に長尺の雄または雌の第1面ファスナーを固定するとともに、前記脚筒部の裏面において前記第1面ファスナーの下方に雌または雄の第2面ファスナーを固定し、前記パンツの脚筒部の裾口を裏面側に折り返すことにより、前記第2面ファスナーが前記第1面ファスナーの一部に系合可能としたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の脚筒部を有するパンツであって、前記脚筒部の裏面において、前身頃と後身頃の縫合線に沿って帯状フラップを形成し、
前記帯状フラップの表面に長尺の雄または雌の第1面ファスナーを固定するとともに、前記脚筒部の裏面において前記第1面ファスナーの下方に雌または雄の第2面ファスナーを固定し、前記パンツの脚筒部の裾口を裏面側に折り返すことにより、前記第2面ファスナーが前記第1面ファスナーの一部に系合可能としたことを特徴とする裾上げ機能付きパンツ。
【請求項2】
請求項1記載の裾上げ機能付きパンツであって、
前記帯状フラップは、前記縫合線における前身頃または前記後身頃の縁部を幅広に形成してなることを特徴とする裾上げを可能とするパンツ。
【請求項3】
請求項1記載の裾上げを可能とするパンツであって、
前記帯状フラップは、前記前身頃または前記後身頃の縁部に別部材を固定して形成されていることを特徴とする裾上げを可能とするパンツ。
【請求項4】
請求項1または2記載の裾上げを可能とするパンツであって、
前記帯状フラップは前記縫合線を支点に移動可能であり、前記第1面ファスナーを固定した面を前記脚筒部の裏面側に倒すことで、前記第1面ファスナーを前記帯状フラップと前記脚筒部の裏面との間に隠すことが可能なことを特徴とする裾上げを可能とするパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裾上げ機能を有するパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業やサービス業において各企業は制服を制定して従業者が共通の制服を着用することが多いが、上衣だけではなくパンツについても制服を制定することが多くなっている。近年、アルバイトなど短期や臨時の雇用形態が多くなり、同じ制服を多様な体形の人員が着用するために、制服のサイズが合わない場合が発生する。
【0003】
特に、作業パンツに関しては、裾が装着者の体系に合っていないと、裾がかかと下まで下がってしまい姿勢を崩してしまうなど安全性の問題があったり、また、食品を扱う現場の作業ズボンであれば、床の汚れが制服の一部に付着することとなって衛生的にも望ましいことではなかった。
【0004】
一方、裾上げ機能付きのパンツとして、以下に示すように、多様なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3233079号公報 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-3233079/9C6EEADC30677A3DE389E12D8EF6AC999940203D7BE4209408B5624825A172F7/25/ja
【特許文献2】特許公開公報2017-53062号公報 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2017-053062/3D48EC1683414CAD46DD148F109F32293BA7E97CF1D79922F0079AF428C0CFD9/11/ja
【0006】
特許文献1には、スリット状の複数のボタン穴10を開口した裏地布9をズボン(パンツ)1の 筒状部(脚筒部)2の内側側面に縫い付け、折り返した裾口2aにおいて、やはり筒状部2の内側にボタン8を取り付けている。
【0007】
そして、袖口2aを筒状部2の内側に折り返し、このボタン8を嵌めるボタン穴10を複数の中から選択することにより、所定の位置に折り返してズボン1の筒状部(脚筒部)2の裾上げ距離を調整することができる構造が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、複数の面ファスナー1aを間欠状に配置した、長尺の基布10を、面ファスナー1aがズボン(パンツ)2の裏面に向くように、前身頃と後身頃の縫合線の間に固定している。
【0009】
ここで、面ファスナー1aは、フック状素子(雄)とループ状素子(雌)を混在させた面ファスナーで形成し、どの面ファスナー1a,1a同士でも係合することができる構造となっている。そのため、基布10をズボン2の内側に段階的に織り込み、位置で互いに係合する面ファスナー1a,1aを選択することで、裾上げ距離を調整する構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1においては、筒状部2内で見えない状態で、ボタン8を裏地布9のボタン穴10に嵌めることは難しく、また、裏地布9は筒状部2の裏面において、前身頃と後身頃を跨ぐように直接縫い付けているので、裏地布9の縫合跡はズボンの表面に現れてしまい美感を損ねることになる。
【0011】
また、特許文献2においても、雄雌素子を混在させた面ファスナー1a,1aを係合部、被係合部兼用とする必要があるため係合力が弱くなり、また、面ファスナー1a,1aを取り付けた基布10を前身頃と後身頃の間に挟み込むように縫い付けているため、特許文献1と同様に、その縫合線がズボン表面に現れてしまい、美感を損ねるという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、パンツの脚筒部の裏面に面ファスナーを固定しても、その縫合などの固定跡が、パンツの表面に現れず、美感を損なうことのないパンツを提供し、特に、面ファスナーを長尺状とすることで、無段階(ミリ単位)できめ細かい裾上げを行うことができる裾上げ機能付きパンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本件発明の代表的な裾上げ機能付きパンツは、左右の脚筒部を有するパンツであって、前記脚筒部の裏面において、前身頃と後身頃の縫合線に沿って帯状フラップを形成し、前記帯状フラップの表面に長尺の雄または雌の第1面ファスナーを固定するとともに、前記脚筒部の裏面において前記第1面ファスナーの下方に雌または雄の第2面ファスナーを固定し、前記パンツの脚筒部の裾口を裏面側に折り返すことにより、前記第2面ファスナーが前記第1面ファスナーの一部に系合可能としたことを特徴とする。
【0014】
また、前記帯状フラップは、前記縫合線における前身頃または前記後身頃の縁部を幅広に形成することで構成しても良い。
【0015】
また、前記帯状フラップは、前記前身頃または前記後身頃の縁部に別部材を固定して形成する構造としてもよい。
【0016】
さらに、前記帯状フラップは前記縫合線を支点に移動可能であり、前記第1面ファスナーを固定した面を前記脚筒部の裏面側に倒すことで、前記第1面ファスナーを前記帯状フラップと前記脚筒部の裏面との間に隠すことが可能な構造としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、帯状フラップに第1面ファスナーを固定することで、パンツの脚筒部表面に縫合跡などが現れることを無くし、美感に優れた裾上げ機能付きパンツを提供することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態にかかる裾上げ機能付きパンツの構造を説明したものであり、(a)は同パンツの側面図であり、(b)は左脚筒部を折り曲げた状態の同パンツの側面図である。
図2】同実施形態のパンツの裾部裏面の構造を説明したものであり、(a)は第1面ファスナーと第2面ファスナーを係合させていない状態での説明図であり、(b)は第1面ファスナーと第2面ファスナーとを係合させた状態の説明図である。
図3】同実施形態のパンツの裾上げ距離を説明するものであって、(a)乃至(d)はそれぞれ第1面ファスナーと第2面ファスナーの係合位置を変更した状態のパンツの側面図である。
図4】本発明の第2実施形態にかかる裾上げ機能付きパンツの構造を説明したものであって、(a)は移動可能な帯状フラップを開いて第1面ファスナーを露出させた状態の説明図であり、(b)は同帯状フラップを閉じて第1面ファスナーを隠した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1乃至図3を用いて、本発明の第1実施形態に関するパンツを具体的に説明する。
【0020】
図1(a)(b)に示すように、第1実施形態における作業用のパンツ1は、右脚筒部1R及び左脚筒部1Lを有し、それぞれ裾部2,2を有する。そして、パンツ1は、前身頃1A及び後身頃1Bからなり、脚筒部1R,1Lそれぞれの内外側面に縫合線4,4が形成されている。
【0021】
脚筒部1R,1Lのそれぞれの側面には、その裏面(内面)において、上下方向に縦長の長尺片である第1面ファスナー5,5が取り付けられており、また、第1面ファスナー5,5の下方、裾部2,2近傍の裏面(内面)には、第2面ファスナー7が取り付けられている(それぞれの固定構造については後述する)。
【0022】
すなわち、第1面ファスナー5、第2面ファスナー7とも、脚筒部1R、1Lの内外それぞれの裏面に固定されているので、パンツ1あたりそれぞれ4対の面スリーブ5,7が固定されていることになる。また、第1面ファスナー5と第2面ファスナー7の雄(フック素子)、雌(ループ素子)の選択は特定されるものではなく、それぞれの対で一方が雄、他方が雌の面ファスナーとなればよい。
【0023】
図2(a)(b)に、裾部2の内側の構造を示す。前身頃1Aと後身頃1Bが縫合される部分では、それぞれ所定幅の縁部1Ax,1Bxを脚筒部1R,1Lの内側に残して縫合される。すなわち、縫合線4を中心として、その両側に所定の縫合代を持って前身頃1Aの縁部1Axと、同じく所定幅の後身頃1Bの縁部1Bxが折り返されている。
【0024】
この状態にあって、前身頃1Aの縁部1Axに形成される縫合代3は、通常の幅の縫合代3aに比べて、裾部2の裾口2a近傍において広い幅を有する縫合代3bとなっており、この部分が大きくパンツ1(脚筒部1R,1L)内に張り出して帯状フラップ6となっている。なお、帯状フラップ6は、後身頃1Bの縁部1Bx側を幅広として形成してもよい。
【0025】
この帯状フラップ6は、縫合代3の縁部3cがステッチで補強されて、堅牢な領域が確保された帯状フラップ6の表面6Aに、上述した第1面ファスナー5が縫製されて、固定されている。
【0026】
第1面ファスナー5の、帯状フラップ6の表面6Aへの固定は、もちろん接着剤などで行うことも考えられるが、第2面ファスナー7の着脱の際に大きな力で引っ張られるので、縫製によって固定することが望ましい。この際、帯状フラップ6の裏面に縫製跡が現れるが、パンツ1の側面を構成する前身頃1A,後身頃1Bのメイン部分に直接縫製しないので、パンツ1の美感を損なうことはない。
【0027】
また、第1面ファスナー5の下方に位置する裾部2の裾口2aは、所定幅2bを裏面に折り返して二重となるように縁部ステッチ2cにより縫製されている。そして、補強された裾口代2xに第2面ファスナー7を縫製して固定している。
【0028】
なお、裾口代2xは、帯状フラップ6を、その下端部において後身頃1Bの間に固定してるため、帯状フラップ6は動くことはなく、常に第1面ファスナー5が露出する状態となっている。
【0029】
そして、裾部2の裾口2aを脚筒部1R,1Lの内側(裏面側)に折り返して、第2面ファスナー7を第1面ファスナー5に係合することでパンツ1の裾上げを行う。第1面ファスナー5は上下方向に長尺であるため、第2面ファスナー7を固定する位置を自由に選択することができる。
【0030】
図3(a)乃至(d)に示すように、裏面側に折り返し幅Dを全く0のD0から例えば10cm程度のD3までミリ単位で、すなわち無段階で変更でき、裾上げ長さLを裾上げなしのL0から10cmの裾上げL3まで自由に調整することができる。
【0031】
このとき、それぞれの脚筒部1R,1Lの裾上げは、内側及び外側の2対の第1面ファスナー5,5、第2面ファスナー7,7で行うために、裾上げした状態で裾部2を確実に固定することができるため、作業中に裾口2aが下がって、装着者の行動に支障を与えることはない。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図4(a)(b)を用いて説明する。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態のパンツ1は、第1実施形態のパンツ1と基本構造はあるが、帯状フラップ6を前身頃1A若しくは後身頃1Bの一部とせず、別部材の長尺片13を取り付けて構成したものである。
【0034】
本実施形態において、前身頃1Aの縁部1Axと後身頃1Bの縁部1Bxは同じ幅を有して縫合されており、縫合線4が形成されている。いずれの縁部1Ax,1Bxもステッチでほつれないように補強されている。
【0035】
次に、周囲が同様にステッチで補強された布製の長尺片13を準備し、この表面13A側に第1面ファスナー5を縫合して固定している。そして、この別部材の長尺片13を前身頃1Aの縫合代に、さらに縫合して固定することにより、前身頃1Aの縁部1Axに帯状フラップ6を形成している。
【0036】
本実施形態においても、第1面ファスナー5の縫合跡が裏面に現れるとしても、長尺片13の裏面13Bに現れるだけで、前身頃1A或いは後身頃1Bに直接固定していないので、同様にパンツ1の美感を損ねることはない。
【0037】
なお、前身頃1Aの縁部1Axと後身頃1Bの縁部1Bxの下端は、第1実施形態と同様に、折り返した裾口2aの裾部補強面2xに織り込まれるが、縁部ステッチ2cのラインに合わせて切断線1Ay,1Byを有しており、長尺片13は縫合線4を支点として回動できる構造となっている。
【0038】
このため、図4(b)に示すように、長尺片13よりなる帯状フラップ6は、長尺片13の表面13Aを前身頃1A側に倒して、その裏面13Bを表側にすることができる。すなわち、第1面ファスナー5は、前身頃1Aの裏面と長尺片13に挟まれて露出しない状態とすることができる。
【0039】
従って、パンツ1の裾上げ機能を使用しないときには、第1面ファスナー5を隠すことができ、例え第1面ファスナー5を触感がザラザラする雄(フック素子)としても、装着者の足に当たることが無く、不快感を低減することができる。
【0040】
[他のバリエーション]
本発明の裾上げ機能付きパンツは、第1実施形態及び第2実施形態のような作業用のパンツ1に限られることはなく、普段着のパンツや、ツナギなどのパンツ部を有する衣服にも応用することができる。
【0041】
また、裾口が細く、脚筒部の内側への折り返し作業を行いにくい場合は、脚筒部の背面にジッパーを設けたスリットを形成し、裾口を大きく開いた状態で裾上げ作業を行うことができる構造としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…作業パンツ(パンツ)
1R,1L …脚筒部
1A …表身頃
1Ax …縁部
1B …後身頃
1Bx …縁部
2 …裾部
2a …裾口
2b …裾折り返し
2c …縁部ステッチ
2x …裾口代
3,3a,3b …縫合代
3c…縁部
4 …縫合線
5 …第1面ファスナー
6 …帯状フラップ
7 …第2面ファスナー
D …折り返し幅
L …裾上げ長さ
図1
図2
図3
図4