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特開2024-27614ロボットハンド装置、把持装置、及びロボットハンド装置における関節動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027614
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ロボットハンド装置、把持装置、及びロボットハンド装置における関節動作方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B25J15/08 J
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130543
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES06
3C707ES07
3C707ET03
3C707EU11
3C707EW04
3C707EW07
(57)【要約】
【課題】この発明は、指節の回転方向を規制することにより、対象物に適した指節の把持動作を実行することが可能なロボットハンド装置、把持装置、およびロボットハンド装置における関節動作方法を提供する。
【解決手段】関節機構20の指節A~Cを屈曲させる屈曲駆動手段21と、指節A~Cの回転箇所に設けられて屈曲駆動手段21による指節A~Cのそれぞれの回転を調整する回転調整機構22とを具備し、回転調整機構22は、電圧印加により指節A~Cの回転を所定の方向へ規制する規制部材23を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に連結された複数の指節を有し、かつこれら複数の指節により各指パーツを構成するとともに、該指パーツがハンド本体部に対して回転自在に連結された関節機構と、
前記関節機構の指節を屈曲させる屈曲駆動手段と、前記指節の回転箇所に設けられて前記屈曲駆動手段による前記指節のそれぞれの回転を調整する回転調整機構と、を具備し、
前記回転調整機構は、前記指パーツの回転を所定の方向へ規制する規制部材を有する、
ことを特徴とするロボットハンド装置。
【請求項2】
前記回転調整機構は、複数の前記指節のうち互いに連結された一方と連動して回転する中心ローラと、該中心ローラの周囲を前記指節の他方と連動して回転する衛星ローラと、
該衛星ローラの前記中心ローラの周囲での回転を許容する大径部と回転を規制する小径部とを有する支持穴と、
該支持穴内における前記衛星ローラの位置を操作する操作部材と、
を有する請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項3】
前記屈曲駆動手段は、前記関節機構の指節を、基準位置からプラス方向となる側に掌屈させるとともに、該基準位置からマイナス方向となる甲側に背屈させることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項4】
前記屈曲駆動手段は前記関節機構の指節を引っ張る/緩めるワイヤからなることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド装置。
【請求項5】
前記ワイヤは指パーツの第1指節に接続されることを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のロボットハンド装置を一対備え、これらのロボットハンド装置は、掌屈方向と背屈方向とを互いに反対方向に向けて配置された、
把持装置。
【請求項7】
前記ロボットハンド装置は、前記回転を規制する向きが互いに反対方向へ向けられた、
請求項6に記載の把持装置。
【請求項8】
回転自在に連結された複数の指節を有しかつこれら複数の指節により各指パーツを構成するとともに、これら指パーツがハンド本体部に対しても回転自在に連結された関節機構を具備するロボットハンド装置において、前記関節機構の指節を屈曲させる屈曲駆動段階と、前記屈曲駆動段階による前記指節のそれぞれの回転を所定の方向へ規制する回転方向規制段階と、を有することを特徴とするロボットハンド装置における関節動作方法。
【請求項9】
前記ロボットハンド装置を互いに向かい合わせに配置し、互いに回転範囲の規制方向を反対の向きにして前記指節を屈曲させる、請求項8に記載のロボットハンド装置における関節動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の指に近似した動作を行う指節を対象物の形状、状態に応じて段階的に屈曲させることができるロボットハンド装置、把持装置、及びロボットハンド装置における関節動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な5指ロボットハンドでは、人間と同じ動作が実行できるよう、多関節型のロボットアームへ取り付けて一体化した環境で動作させることが多い。
そして、このようなロボットハンドでは、把持しようとする対象物の形状(平面、曲面、角形、丸形等)、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に応じて、指節を適切に屈曲させる必要がある。
【0003】
この種のロボットに関連する技術として、特許文献1及び2に記載の技術が開示されている。
特許文献1に示されるロボットハンドは、指節部が複数のループ状の弾性を有する線材を所定間隔で配列してなる線材群によりその外形が形成される指部と、関節部を駆動するためのモータ(例えば、サーボモータやステッピングモータ、モータと歯車の組合せ等)と、線材群の先端周辺に設置されて対象物に接した際の負荷を検出する変位センサと、を有する。
そして、このロボットハンドの制御部では、変位センサで検出された線材群の先端周辺の負荷に応じて、モータによる当該指節の屈曲動作を行わせる。
【0004】
特許文献2に示されるロボットハンドでは、指把持対象物を把持した際に把持力が作用する指体部分に設けられた弾性部と、関節毎に設けられて該関節が屈曲した際の反力を受けるのを感知する触覚センサとが具備される。
そして、このロボットハンドでは、指体における関節毎の複数のモータを指根本側から順番に通電することにより、該指体の関節を順番に屈曲させる。
その際、このロボットハンドでは、指体を根本側の関節から順番に屈曲させて、把持対象物を包み込むように把持するため、当該動作によって当該把持対象物に局部的な強い刺激が加わることを防止するとともに、ソフトで確実な把持動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-160022号公報
【特許文献2】特開2018-001359号公報
【特許文献3】特開2005-046980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に示されるロボットハンドでは、モータの駆動制御により指節/関節の屈曲を行わせるようにしているが、指節/関節の可動順序、屈曲程度など細かい制御が難しく、さまざまな形状の対象物に最適な方向から指を向けて把持することが難しいという問題がある。
また特許文献3には、動力伝達系にトルクリミッタを設ける構成が開示されているが、トルクリミッタの使用は、単に過剰なトルクの伝達を防止して対象物の損傷を防止するに留まり、前述のような、対象物の形状(平面、曲面、角形、丸形等)、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に応じて、指節を適切に屈曲させる目的の達成に十分な機構たり得るものではない。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、対象物に適した指節の把持動作を実行することが可能なロボットハンド装置及びロボットハンド動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1態様に示すロボットハンド装置では、回転自在に連結された複数の指節を有し、かつこれら複数の指節により各指パーツを構成するとともに、該指パーツがハンド本体部に対して回転自在に連結された関節機構と、前記関節機構の指節を屈曲させる屈曲駆動手段と、前記指節の回転箇所に設けられて前記屈曲駆動手段による前記指節のそれぞれの回転を調整する回転調整機構と、を具備し、前記回転調整機構は、前記指パーツの回転を所定の方向へ規制する規制部材を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様に示す関節動作方法では、回転自在に連結された複数の指節を有しかつこれら複数の指節により各指パーツを構成するとともに、これら指パーツがハンド本体部に対しても回転自在に連結された関節機構を具備するロボットハンド装置において、前記関節機構の指節を屈曲させる屈曲駆動段階と、前記屈曲駆動段階による前記指節の回転を所定の方向へ規制する回転方向規制段階と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、指節の回転箇所においてその回転方向を規制することにより、対象物の形状、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に適した指節の細かい把持動作を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るロボットハンド装置の最小構成を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロボットハンド装置の全体の外観を示す斜視図である。
図3】一実施形態に係るロボットハンド装置の一の指の構成を示す側面図である。 実施形態に係るロボットハンド装置の指パーツを示す概略構成図である。
図4図3に示す一の指の動作説明図であって、(a)は伸長状態、(b)は曲げ始め状態、(c)は曲げ終わり状態を示すものである。
図5図3に示す一の指の動作説明図であって、(a)(b)(c)(d)は、直線状に伸長した状態から、最も曲げた状態までを段階的に示すものである。
図6図3に示すロボットハンド装置によって上下から物体を掴む動作お説明図であって、(a)は伸長して配置した状態、(b)は、掴み始め状態、(c)は掴み終わり状態を示すものである。
図7】一実施形態に係るロボットハンド装置の縦断面図である。
図8】一実施形態に係るロボットハンド装置の回転調整機構の軸を含む断面図であって、(a)は操作部材が引っ込んだ回転規制状態、(b)は通電により操作部材が突出した回転可能状態を示すものである。
図9】一実施形態におけるロボットハンド装置の軸と直交する断面を示し、(a)は回転状態、(b)は回転規制状態、(c)は規制解除状態を示すものである。
図10図9に示す操作部材による衛星ローラの操作を説明する拡大図であって、(a)は操作部材が衛星ローラを押してロックを解除した状態、(b)は操作部材が引っ込んで衛星ローラが支持穴と接触してロックした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るロボットハンド装置100の最小構成例について、図1を参照して説明する。
ロボットハンド装置100は、回転自在に連結された複数の指節A、B、Cを有し、かつこれら複数の指節A、B、Cにより、人の手のいずれかの指に相当する指パーツ10を構成するとともに、該指パーツ10がハンド本体部に対して回転自在に連結された関節機構20と、前記関節機構20の指節A、B,Cを屈曲させる屈曲駆動手段21と、前記指節の回転箇所に設けられて前記屈曲駆動手段21による前記指節A、B、Cのそれぞれの回転を調整する回転調整機構22とを具備し、前記回転調整機構22は、前記指パーツ10の回転を所定の方向へ規制する規制部材23を有することを特徴とする。
【0013】
上記のように構成されたロボットハンド装置によれば、前記屈曲駆動手段21によって指節A,B,Cを駆動するに際し、前記回転調整機構22によって前記指節A、B,Cのいずれかの回転を一方向に規制することにより、指節A、B、Cの相互の回転を規制することができる。この回転の規制により、これらの相対角度を所定の規制の下に制限し、指節A、B、Cの相互角度を対象物の形状、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に適した状態に調整しながら把持することができる。
【0014】
また本発明の最小構成例にかかる関節動作方法は、回転自在に連結された複数の指節A、B、Cを有しかつこれら複数の指節A、B、Cにより各指パーツ10を構成するとともに、これら指パーツ10がハンド本体部に対しても回転自在に連結された関節機構20を具備するロボットハンド装置100において、前記関節機構20の指節A、B、Cを屈曲させる屈曲駆動段階と、前記屈曲駆動段階による前記指節A、B、Cの回転を所定の方向へ規制する回転方向規制段階とを有することを特徴とする。
【0015】
上記のように構成された関節動作方法によれば、屈曲駆動段階において前記指節A、B、Cを駆動するに際し、前記回転方向規制段階によって前記指節A、B、Cの相互の回転を規制することができる。この回転の規制により、これらの相対角度を制限することにより、指節A、B、Cの相互角度を対象物の形状、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に適した状態に調整しながら把持することができる。
【0016】
(実施形態)
本発明の一実施形態に係るロボットハンド装置100について図2図10を参照して説明する。
まず、ロボットハンド装置の全体構成について、図2を参照して説明する。
このロボットハンド装置100は、関節機構50、屈曲駆動手段51及び回転調整機構52を主な構成要素とする。
関節機構50は、指節回転軸(m1,m2及びm3)を介して回転自在に連結された複数の指節(第1節~第3節)a~c及び指節d,e(第1節および第2節)を有し、かつこれら複数の指節a~c及び指節d,eにより複数本の各指パーツ11~15(図面では5本であるが、ロボットハンドの機能に応じて適宜本数や指節の数を変更しても良い)を構成する。
また、この関節機構50では、これら5本の指パーツ11~15がハンド本体部61に対して回転支持軸(n1及びn2、n3)を介して回転自在に連結された構成とされる。
屈曲駆動手段51は、関節機構50の指節a~eを、基準位置から屈曲させるためのものであって、例えばモータと、該モータにより回転するプーリに巻き掛けられて引っ張り力を伝達するワイヤなどにより構成されている。
【0017】
図2に概要を示した前記関節機構50の指パーツ11~15の一つ(例えば指パーツ11)を例として、図3を参照してその内部構造を説明する。
指パーツ11は、複数の指節(図2の符号a、b、cに対応し、基端側の第3節62から、順に、第2節63、第1節64と符号を付す)を指節回転軸(基端側の第3関節65から、順に、第2関節66、第1関節67の符号を付す)を介して回転自在に連結した構成を有する。
なお、指パーツ11において、指節回転軸m1は「第1関節」、指節回転軸m2は「第2関節」、及び回転支持軸n1は「第3関節」に相当する。
具体的には、前記指パーツ11~15における関節機構50では、3つの指節62~64の指節回転軸m1、m2及び回転支持軸n1が、互いに平行又はほぼ平行な位置関係に配置されている。
【0018】
回転調整機構52は、指節62、63、64の回転箇所である第1、第2、第3関節65~67に設けられ、屈曲駆動手段51による第1節~第3節62~64のそれぞれの回転を調整するものであって、一実施形態では、後述する操作部を通電あるいは非通電とすることにより、第1節~第3節62~64の回転を一方向へ規制する。
【0019】
前記屈曲駆動手段51は、関節機構50の指節(第1節~第3節)62~64を、基準位置からプラス方向(矢印X方向)となる平側に掌屈駆動させ、又は該基準位置からマイナス方向(矢印X方向)となる甲側にも背屈駆動させるためのものであって、例えば、電動モータ等のアクチュエータ69により駆動される屈曲駆動手段としてのワイヤ51により構成されている。また、各指パーツ11のワイヤ51は、手や手首や腕を構成する構造体の任意の部位に設置された前記アクチュエータ69により牽引又は引出される。
このワイヤ51は、指パーツ11毎に設置され、かつ各指パーツ11の先端に位置する第1節64に2本ずつ連結されて、いずれか一方を引き他方を追従させる操作により、該指パーツ11を矢印X方向またはY方向へ回転させる。
また、各指パーツ11のワイヤ51は、各指パーツ11に曲げ力(関節廻りのモーメント)を作用させるために、指節回転軸(m1、m2)及び回転支持軸(n1)の回転中心からやや平側/甲側にずれた位置に設置されている。
【0020】
前記指節62~64の回転方向を調整する回転調整機構52の構成の詳細について、図7図10を参照して説明する。なお以下の説明にあっては、指節A、B、C、の内、代表例として第1関節67の構造を主体に説明する。
前記第1関節67は、これと一体に回転する中心ローラ72を備え、該中心ローラ72の周囲には、衛星ローラ73が相互に円周方向へ180度の間隔を置いて、保持ローラ74により自転および公転を自在に支持されて配置されている。同様に、第2関節66は、これと一体に回転する中心ローラ71を備えるが、第1関節67と同一構成なので詳細な説明を省略する。
【0021】
前記保持ローラ74は、図10に示すように、衛星ローラ73を回転可能に収容する支持穴75を有する。この支持穴75は、前記衛星ローラ73の外径より僅かに大きな内径を有して衛星ローラ73の回転を許容する大径部と、前記衛星ローラ73の外径より僅かに小さな内径を有して衛星ローラ73の回転を規制する小径部とを有するタマゴ形の断面形状を有する。また支持穴75は、前記小径部を時計回りの前方側へ向けて、かつ、回転方向へ180度(半回転に相当する角度)の間隔をおいて二個所に形成されている。また前記支持穴75の小径部には、図10(a)に示す突出状態、あるいは、図10(b)に示す引っ込み状態となるように、該支持穴75内に出没することによって衛星ローラ73を移動させる操作部材76が設けられる。
該操作部材76は、例えば電磁力によってプランジャを往復動させるソレノイド等のアクチュエータであって、図8に示すように、スイッチSWを介して電源DCに接続されている。この操作部材76は、スイッチSWを開閉することにより、図8(a)に示す非通電状態から図8(b)に示す通電状態に切り替え操作され、前記操作部材76を前記支持穴75内に突出させることによって、前記衛星ローラ73を前記支持穴75内で小径部から大径部へ向かって移動させるよう構成されている。
【0022】
上記構成の一実施形態にかかるロボットハンド装置の作用をその動作とともに説明する。
まず、一実施形態の動作を可能とする回転調整機構(トルクリミッタ)52の動作について、図9、10を参照して説明する。
ここで、操作部材76は、通電状態では、図10(a)に示すように突出することで、衛星ローラ73を支持穴75の小径側から大径側へ移動させることにより回転が可能となるよう操作することができ、また、非通電状態では、図10(b)に示すように支持穴75から引っ込むことで、支持穴75内の大径側にあった衛星ローラ73が小径側へ移動することを許容して回転を規制するよう操作することができる。
図9(a)に示すように、中心ローラ72が反時計回り(矢印X方向)、保持ローラ74が時計回り(矢印Y方向)へ回転しようとすると、衛星ローラ73が支持穴75の大径部分へ移動するため、時計回りに自転しながら、中心ローラ72の回りを相対的に公転することができる。ここで、操作部材76は非通電状態であって、支持穴75から退いた位置に配置されている。
【0023】
これに対して、図9(b)に示すように、中心ローラ72が時計回り(矢印Y方向)、保持ローラ74が反時計回り(矢印X方向)に回転しようとすると、衛星ローラ73が支持穴75の小径部分へ移動して支持穴75の内面との接触により自転が規制され、中心ローラ72の回りの相対的な公転も規制される。なお衛星ローラ73の自転は規制されるが、転がる場合に比して非常に大きなトルクがかかった場合に中心ローラ72の表面を滑ることが可能であるから、反時計回りの公転が完全に規制される訳ではない。
【0024】
また、図9(c)に示すように、操作部材76を構成するソレノイド等のアクチュエータを通電して操作部材76を支持穴75内に突出させると、衛星ローラ73が支持穴75の大径側へ押されることから、衛星ローラ73の自転が可能となり、図9(c)に示すように、中心ローラ72の反時計回り(矢印X方向)、保持ローラ74の時計回り(矢印Y方向)への相対回転が可能な状態となる。
図9(c)に示す状態から、図9(a)に示すように、操作部材75を引っ込んだ状態に戻すと、衛星ローラ73が小径側へ移動することが可能となり、図9(b)に示すように、中心ローラ72の時計回り(図中Y方向)への回転と保持ローラ74の反時計回り(図中X方向)への回転との規制が可能な状態となる。
【0025】
前記回転調整機構52の作用に基づくロボットハンド装置100の動作を説明する。
図4(a)は、対象物70を挟んで一対のロボットハンド装置100を配置した場合の指パーツ11、11’を側面視した状態を示し、上下の指パーツ11、11’は、いずれも第1節~第3節62~64が直線状をなして、対象物70を挟む準備状態となっている。
上下の指パーツ11、11’の屈曲駆動手段51を図4(b)の矢印方向へ引っ張るように作動させると、指パーツ11、11’が手の平側への掌屈方向へ屈曲し、第1節64の先端が対象物70を挟み込む。
対象物70を保持する力をより大きくすべく、上側の指パーツ11の屈曲駆動手段51をより引っ張ると、上側の指パーツ11の第1節64がより屈曲する。この上側の指パーツ11の力を受ける下側の指パーツ11’は、第1~第3関節65~67が備える回転調整機構52の作用により、手の甲側への背屈方向への回転が規制されるため、図4(b)に示す屈曲角度(図示例の場合、30度)で維持される。
【0026】
これに対して、回転調整機構52による回転規制を行わない場合は、図4(c)に示すような屈曲状態となる。
すなわち、上側の指パーツ11の屈曲駆動手段51を図4(b)の状態からさらに引っ張ると、上側の指パーツ11の第1節64がより屈曲する(45度に達する)にもかかわらず、第2節63が背屈により直線に近い角度へ伸展(15度まで延びる)するため、第1節64の先端から対象物70へ伝わる力を大きくすることができず、屈曲駆動手段51の動作にもかかわらず、指パーツ11,11’の間の対象物70へ作用する把持力を大きくすることができない。
【0027】
一実施形態にあっては、回転調整機構52によって指パーツ11、11’が背屈方向へ戻る動きを規制することにより、指パーツ11の先端の第1節64から対象物70へ十分な把持力を作用させて指パーツ11、11’の間に対象物70を確実に保持することができる。
なお図4(a)(b)(c)にあっては、指パーツ11の動作を例として説明したが、他の指パーツ12、13、14、15については、対象物70の形状や、アプローチする方向に応じて、指パーツ11に近似した動作、あるいは、当該指パーツの位置に応じて指パーツ11とは異なる動作が行われる。
【0028】
一実施形態にかかるロボットハンド装置100により、対象物70を包み込むように握る場合の動作について、図5を参照して説明する。
図5(a)に示すように、第3関節65が対象物70の上方となる位置に指パーツ11を配置する。屈曲駆動手段51により第1節64の先端を掌屈方向へ引っ張ると、図5(b)(c)に示すように、回転調整機構52による掌屈方向への回転は自在であるため、第2節63、第3節62が図5(b)(c)に示すように、順次曲がり、最終的に、図5(d)に示すように、対象物70を包み込む状態(人の手指により掴んだ状態に近似した把持状態)で対象物70を把持することができる。
【0029】
なお、回転調整機構52によって背屈方向への回転が規制されていることから、図5(d)に示す把持状態が維持されるが、図9、10に示す操作部材76を通電して衛星ローラ73を支持穴75の大径部分へ押し出すことにより、回転調整機構52による背屈方向への回転の規制が解除されるので、指パーツ11による把持を解除することが可能になる。この解除に伴い、屈曲駆動手段51により第1節64を反対方向へ引っ張ることにより、対象物70を把持状態から解放することができる。
【0030】
一実施形態にかかるロボットハンド装置100により、対象物70を上下から挟んで保持する場合の動作について、図6を参照して説明する。
図6(a)示すように、上下の指パーツ11、11’は、いずれも第1節~第3節62~64が直線状をなして、対象物70を挟む準備状態、すなわち、対象物70に対して十分な間隔をおいて上下に配置されている。
上下の指パーツ11、11’の屈曲駆動手段51を図6(b)の矢印方向へ引っ張るように作動させると、指パーツ11、11’が手の平側への掌屈方向へ屈曲し、上下の指パーツ11、11’の第1節64の先端が対象物70に接近し、これを挟み込む。
対象物70を保持する力をより大きくすべく、上側の指パーツ11の屈曲駆動手段51をより引っ張ると、上側の指パーツ11の第1節64がより屈曲する。この上側の指パーツ11の力を受ける下側の指パーツ11’は、第1~第3関節65~67が備える回転調整機構52の作用により、手の甲側への背屈方向への回転が規制されるため、図6(b)に示す屈曲角度で維持される。
【0031】
上側の指パーツ11の屈曲駆動手段51を図6(b)の状態からさらに引っ張ると、図6(c)に示すように、上側の指パーツ11の第1節64がさらに屈曲する(図示例では45度)にもかかわらず、下側の指パーツ11’の背屈方向への回転が規制されて、その角度が維持され、したがって、対象物70を上下方向へ圧縮しながら、上下の指パーツ11、11‘の間に保持することができる。
【0032】
以上説明した本実施形態に係るロボットハンド装置100によれば、関節機構20の指節A~Cを屈曲させる屈曲駆動手段51とは別に、指節A~Cの回転箇所に、回転方向を個々に一方向に制限するよう調整して、当該指節A~Cのそれぞれの回転を調整する回転調整機構52を設けるようにした。
すなわち、本実施形態のロボットハンド装置100では、指節A~Cの回転箇所の回転摺動抵抗を個々に調整する専用の回転調整機構52を設けることで、対象物の形状、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に適した指節A~Cの細かい把持動作を実行することが可能となる。
【0033】
なお、前記一実施形態では、回転調整機構によって指節の相対回転を一方向へ規制する構成としたが、対象物の形状に応じて、一の指パーツを構成する複数の指節の一部のみの回転を規制し、あるいは、複数本の指パーツの一部のみの回転を規制するよう、回転調整機構の操作部材の通電、遮断を設定しても良い。
また、屈曲駆動手段から指節に到る動力伝達系の一部に、所定以上の駆動力が伝わろうとするとスリップするいわゆる滑りクラッチ等の機構を採用して、指パーツ、あるいはこれを構成する指節の破損を防止するようにしても良い。
【0034】
なお、本発明は、屈伸動作を行う装置について、全般へ適用・応用が可能である。
また、本発明は「手」に着目したが、屈伸動作を考えた際、肘や膝、足などへ置き換えることができ、さらに人間の体の構造を模範としている機械へも適用可能である。
また、医療器具として義手や義足は、人間の各部位の動作を再現する装置であり第二の手足の役割をする。この分野にも本発明の技術が適用可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、5指を構成している指節を対象物の形状(平面、曲面、角形、丸形等)、状態(硬い、柔らかい、脆い、指先で摘まむ等)に応じて段階的に屈曲させることができる人型のロボットハンド装置及びロボットハンド動作方法に関する。
【符号の説明】
【0037】
10、11、11’、12、13、1 4、15 指パーツ
20 関節機構
21 屈曲駆動手段
22 回転調整機構
23 規制部材
50 関節機構
51 屈曲駆動手段
52 回転調整機構
61 ハンド本体部
62 第3節(指節)
63 第2節(指節)
64 第1節(指節)
65 第3関節
66 第2関節
67 第1関節
69 アクチュエータ
70 対象物
71、72 中心ローラ
73 衛星ローラ
74 保持ローラ
75 支持穴
76 操作部材
100 ロボットハンド装置
A、B、C 指節
SW スイッチ
DC 電源
a 指節
b 指節
c 指節
d 指節
e 指節
A 指節
B 指節
C 指節
m1 指節回転軸
m2 指節回転軸
m3 指節回転軸
n1 回転支持軸
n2 回転支持軸
n3 回転支持軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10