(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027619
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】運搬具
(51)【国際特許分類】
A45F 3/10 20060101AFI20240222BHJP
A45F 3/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A45F3/10
A45F3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130552
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】391054187
【氏名又は名称】株式会社三洋
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】控井 勇貴
【テーマコード(参考)】
2E181
【Fターム(参考)】
2E181BD01
(57)【要約】
【課題】運搬時の負担を軽減できる運搬具を提供する。
【解決手段】
運搬具1は、運搬者の両肩に掛ける左右一対の肩ベルト2と、肩ベルト2が装着されるとともに、前面が運搬者の背中に当接する略板状の背当て板部3と、その下端部の近傍から略後方へ延びるように配置され、運搬物Cを下方から支持する略板状の底板部5aと、その左右両端部の近傍から立設し、運搬物Cを左右両側方から押さえる略板状の左右一対の側板部5bと、背当て板部3の下部と底板部5aの前部を連結する第1連結手段8と、底板部5aと左右一対の側板部5bの下部を連結する第2連結手段9と、背当て板部3に取付けられ、左右一対の側板部5bに係合しつつ、底板部5aによって支持された運搬物Cの左右側方を通って後ろ側に巻き掛け可能に構成された第1ベルト部材6を備え、背当て板部3、底板部5a、左右一対の側板部5bは樹脂素材で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物を運ぶための運搬具であって、
運搬者の両肩に掛ける左右一対の肩ベルトと、
前記左右一対の肩ベルトが装着されるとともに、前面が運搬者の背中に当接する略板状の背当て板部と、
前記背当て板部の下端部の近傍から略後方へ延びるように配置され、運搬物を下方から支持する略板状の底板部と、
前記底板部の左右両端部の近傍から立設し、運搬物を左右両側方から押さえる略板状の左右一対の側板部と、
前記背当て板部の下部と前記底板部の前部とを連結する第1連結手段と、
前記底板部と前記左右一対の側板部の下部とを連結する第2連結手段と、
前記背当て板部に取付けられ、前記左右一対の側板部に係合しつつ、前記底板部によって支持された運搬物の左右側方を通って後ろ側に巻き掛け可能に構成された第1ベルト部材とを備え、
前記背当て板部、前記底板部、及び前記左右一対の側板部は各々樹脂素材で形成されていることを特徴とする運搬具。
【請求項2】
前記左右一対の側板部には、各々、前記第1ベルト部材を略前後方向に挿通して係止可能な挿通部が形成されており、
前記挿通部は、上下方向の位置が異なる第1挿通部と第2挿通部を備えて、前記第1ベルト部材を、前記左右一対の側板部に、2回に亘って挿通して係止可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の運搬具。
【請求項3】
前記第2連結手段は、前記底板部と前記左右一対の側板部との間隔を調節可能な間隔調節機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬具。
【請求項4】
前記第1連結手段は、前記底板部と前記背当て板部との間隔を調節する間隔調節機構を備え、
前記第1ベルト部材は、その長さを調節する第1長さ調節機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬具。
【請求項5】
前記底板部によって支持された運搬物の上方及び後方を通り、前記背当て板部の上部と前記底板部の後部とを連結可能に構成された第2ベルト部材を備え、
前記第2ベルト部材は、その長さを調節する第2長さ調節機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬具。
【請求項6】
前記左右一対の側板部は、後部の上縁が、後方へ向かって下り傾斜を有するように形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種多様な運搬物を背負って運ぶことを可能にする運搬具に関するものであり、より詳細には、いわゆる背負子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1ないし3には、運搬物(運搬すべき対象物、例えば、救急医療用具など)を安全且つ安定的に運ぶことが可能な運搬具が開示されている。これらの運搬具は、運搬者の肩に掛ける一対の肩ベルトと、一対の肩ベルトが装着されるとともに運搬者の背中に当接する背当て部と、運搬物を下方から支持する支持部を備えている。運搬者は、運搬物をこれらの運搬具の支持部に載置してベルト等で固定した上で、一対の肩ベルトを両肩に掛けて背負うことで、運搬物を安定的に運搬できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平06-070624号公報
【特許文献2】特開2001-104377号公報
【特許文献3】特開2021-178084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの運搬具は、上記の背当て部と支持部とを一体的に形成するため、側面視で略L字状に曲げられたフレームを備えている。一般に、このL字状のフレームは運搬物を支持するため、剛性の高い金属により構成される。したがって、従来の運搬具は、金属の重量により、運搬時の負担を増加させるものとなっていた。このため、特に、運搬物を長時間にわたり運搬する場合などに、運搬者が疲労し易いという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、運搬時の負担を軽減できる運搬具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のかかる目的は、
運搬物を運ぶための運搬具であって、
運搬者の両肩に掛ける左右一対の肩ベルトと、
前記左右一対の肩ベルトが装着されるとともに、前面が運搬者の背中に当接する略板状の背当て板部と、
前記背当て板部の下端部の近傍から略後方へ延びるように配置され、運搬物を下方から支持する略板状の底板部と、
前記底板部の左右両端部の近傍から立設し、運搬物を左右両側方から押さえる略板状の左右一対の側板部と、
前記背当て板部の下部と前記底板部の前部とを連結する第1連結手段と、
前記底板部と前記左右一対の側板部の下部とを連結する第2連結手段と、
前記背当て板部に取付けられ、前記左右一対の側板部に係合しつつ、前記底板部によって支持された運搬物の左右側方を通って後ろ側に巻き掛け可能に構成された第1ベルト部材とを備え、
前記背当て板部、前記底板部、及び前記左右一対の側板部は各々樹脂素材で形成されていることを特徴とする運搬具によって達成される。
【0006】
本発明によれば、運搬者の背中に当接する背当て板部、運搬物を下方から支持する底板部、及び運搬物を左右両側方から押さえる左右一対の側板部が、各々樹脂素材で形成されているから、金属により形成した場合に比して、運搬具を大幅に軽量化でき、運搬時の負担を軽減できる。その結果、運搬者の疲労も軽減できる。
【0007】
さらに、本発明によれば、背当て板部に取付けられた第1ベルト部材が、左右の側板部に係合しつつ、前記底板部によって支持された運搬物の左右側方を通って後ろ側に巻き掛け可能に構成されている。
【0008】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記左右一対の側板部には、各々、前記第1ベルト部材を略前後方向に挿通して係止可能な挿通部が形成されており、
前記挿通部は、上下方向の位置が異なる第1挿通部と第2挿通部を備えて、前記第1ベルト部材を、前記左右一対の側板部に、2回に亘って挿通して係止可能に構成されている。
【0009】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、左右の各側板部に、第1ベルト部材が2回にわたって挿通される挿通部が形成されており、各挿通部において、1回目の挿通箇所(第1挿通部)と2回目の挿通箇所(第2挿通部)とが上下に位置を異にしているから、左右の各側板部を立設姿勢(=直立姿勢、起立姿勢)に堅固に保持でき、したがって、左右の側板部が運搬物に押されて側方に倒れてしまうことを効果的に防止できる。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記第2連結手段は、前記底板部と前記左右一対の側板部との間隔を調節可能な間隔調節機構を備えている。
【0011】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、底板部と左右一対の側板部との間隔を調節できるから、運搬者によって、各側板部の左右方向の位置が変更されることで、様々な左右寸法の運搬物に対応できる。
【0012】
加えて、運搬者によって底板部と左右一対の側板部との間隔が広げられることで、背当て板部、底板部、及び左右一対の側板部を重ねるようにコンパクトに折り畳むことができる。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記第1連結手段は、前記底板部と前記背当て板部との間隔を調節する間隔調節機構を備え、
前記第1ベルト部材は、その長さを調節する第1長さ調節機構を備えている。
【0014】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、底板部と背当て板部との間隔を調節できるとともに、第1ベルト部材が、左右の各側板部に形成された挿通部に略前後方向に挿通可能に構成されているから、運搬者によって、運搬物の前後方向における重心位置に合わせて底板部の前後位置が変更されるとともに、左右一対の側板部が第1ベルト部材に沿って前後にスライドされ、さらに第1ベルト部材の長さが調節されることで、様々な前後寸法(=奥行き寸法)の運搬物に対応できる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記底板部によって支持された運搬物の上方及び後方を通り、前記背当て板部の上部と前記底板部の後部とを連結可能に構成された第2ベルト部材を備え、
前記第2ベルト部材は、その長さを調節する第2長さ調節機構を備えている。
【0016】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、運搬物の上方及び後方を通り、背当て板部の上部と底板部の後部とを連結する第2ベルト部材が第2長さ調節機構を備えているから、運搬者によって、運搬物が底板部に載置された後に、第2ベルト部材が縮められる(=絞られる)ことで、運搬物が後ろ下がりに傾いてしまうことを防止できる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記左右一対の側板部は、後部の上縁が、後方へ向かって下り傾斜を有するように形成されている。
【0018】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、左右一対の側板部の後部の上縁が、後方へ向かって下り傾斜を有するように形成されているから、一般的な保冷容器(保冷ボックス)のように上部に蓋を備えた運搬物を運搬する場合に、当該蓋が開閉されるとき、左右一対の側板部の後部上縁が当該蓋に干渉(=接触)しにくい。したがって、運搬物の蓋をスムーズに開閉できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運搬時の負担を軽減できる運搬具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる運搬具の略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された運搬具により運搬物が支持された状態を示す略斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された支持部のみを示す模式的背面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された運搬具の模式的左側面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示された運搬具が折り畳まれた状態を示す略平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態にかかる運搬具の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる運搬具1の略斜視図であり、
図2は、
図1に示された運搬具1により運搬物Cが支持された状態を示す略斜視図である。また、
図3は、
図1に示された運搬具1の展開図である。
図3においては、後に詳述する背当て板部3の前面と、一対の側板部5bの外側面と、底板部5aの下面が示されている。
【0023】
運搬具1は、前面が運搬者の背中に当接する板状の背当て板部3と、背当て板部3に装着された一対の肩ベルト2と、背当て板部3に連結され、運搬物Cを支持する支持部5と、運搬物Cを、支持部5により支持された状態で固定する第1ベルト部材6と、運搬物Cの後ろ下がりの傾きを防止する第2ベルト部材7を備えている。以下において、背当て板部3を基準にしたときの運搬者の背中側を「前」といい、運搬物C側を「後」という。また、前方を向いた状態での左側を「左」といい、その反対側を「右」という。なお、
図1及び
図2には、運搬具1を右後上方から見た状態が示されており、
図1においては、支持部5や第1ベルト部材6等の状態を明確に示すため、第2ベルト部材7が二点鎖線で描かれるとともに、第2ベルト部材7の図面奥側に位置する部材も隠さずに描かれている。
【0024】
運搬者は、一般的なリュックサックと同様に、左右一対の肩ベルト2を両肩に掛け、運搬具1を背負って歩行することにより、運搬物Cを運搬することができる。運搬物Cの種類としては、保冷容器や段ボール、発泡スチロール箱、ラック等、多様な運搬物を運搬することができるが、以下においては運搬物Cとして保冷容器を運搬する前提で説明を進める。
【0025】
背当て板部3は、可撓性を備えた樹脂製(より詳細にはポリエチレン製)の板で形成され、その縁部はナイロン素材による縁取りが施されている。加えて、背当て板部3の上部についてもナイロン素材による覆いが施されている。なお、背当て板部3の素材としてはポリエチレンの他、ポリプロピレン等の他の樹脂を用いることも可能である。運搬者の背中に当接する背当て板部3の前面には、弾性及び可撓性を有するクッション素材で形成されたパッド部材が設けられており、角張った形状の運搬物Cを運搬する場合でも、背中が痛くなりにくい。
【0026】
支持部5は、運搬物Cを下方から支持する略板状の底板部5aと、底板部5aに連結され、運搬物Cを左右両側方から押さえる略板状の左右一対の側板部5bを備えている。支持部5は左右対称に構成されている(
図4参照)。底板部5a及び左右一対の側板部5bは、各々、樹脂製(より詳細にはポリエチレン製)の板で形成され、縁部はナイロン素材による縁取りが施されている。底板部5a及び左右一対の側板部5bの素材としては、樹脂素材により形成されたものであればよく、ポリエチレンの他、ポリプロピレン等の樹脂を用いることも可能である。このように、運搬物Cを支持する支持部5及び背当て板部3を、樹脂素材で形成することで、上述の特許文献1~3に記載された従来の運搬具のように金属等により形成した場合に比して、運搬具1を大幅に軽量化できる。
【0027】
底板部5aは、後に詳述する面ファスナー8a,8b(
図3、
図5参照)により背当て板部3の下端部に連結されており、背当て板部3の下端部付近から略後方へ延びるように配置されている。
【0028】
左右一対の側板部5bは、各々、底板部5aの左右両端部の近傍(より詳細には左右端部の側方)から立設(=起立、直立)するように配置されている。各側板部5bは、運搬物Cを側方から押さえる主側板5b1と、主側板5b1の外側面(=左右方向における外側の側面)に縫合された副側板5b2を備えている。副側板5b2の上部と下部は、
図1に破線5b5で示されるミシン目の位置で主側板5b1に縫合されており、副側板5b2の上下方向における略中央部は主側板5b1に縫合されていない。このため、副側板5b2の上下方向における略中央部と、その側方に位置する主側板5b1の部分との間に、隙間からなる挿通部5b3が形成されており、左右の挿通部5b3に、第1ベルト部材6が略前後方向に挿通されることで、側板部5bが前後方向にスライド可能に係止(係合)されている。すなわち、挿通部5b3は、第1ベルト部材6を挿通可能に構成されている。これにより、左右一対の側板部5bが第1ベルト部材6(より詳細には後述する支持ベルト6a)により支持されるため、左右一対の側板部5bが運搬中に運搬物Cに押されて左右方向における側方へ倒れてしまうことを防止できる。
【0029】
左右の各側板部5bの主側板5b1の下部には、底板部5aと連結するための連結ベルト9aの一端部が固定されている。この連結ベルト9aの他端部である自由端が、底板部5aの下面に左右2つずつ設けられたD管9b(9b1~9b4、
図3・
図4参照)に通されることで、左右一対の側板部5bと底板部5aとが連結されている。なお、
図3には、連結ベルト9aがD管9bから取り外された状態が示されている。
【0030】
第1ベルト部材6は、
図3に示されるように、左右一対の側板部5bを直立姿勢に支持する左右一対の支持ベルト6aと、左側の支持ベルト6aに連結された左側ベルト6bと、右側の支持ベルト6aに連結された右側ベルト6cを備えている。左側ベルト6b及び右側ベルト6cの一端部は、各々、ベルト通し6d(いわゆる1本コキ)を介して支持ベルト6aの長手方向略中央部に連結されている。
【0031】
左側ベルト6bは、サイドリリースバックルにより構成されたメス側のバックル6b1を他端部に備え、右側ベルト6cは、メス側のバックル6b1と連結可能なオス側のバックル6c1を他端部に備えている。オス側のバックル6c1は、右側ベルト6cの長さを調節するアジャスター機構(「第1長さ調節機構」に相当)を備えている。
【0032】
このため、運搬物Cが底板部5a上に載置された状態で、左側の支持ベルト6a及び左側ベルト6bが、運搬物Cの左側方を通じて後ろ側に巻き掛けられ、右側の支持ベルト6a及び右側ベルト6cが、運搬物Cの右側方を通じて後ろ側に巻き掛けられて、バックル6b1,6c1同士が運搬物Cの後ろ側で連結された後に、オス側のバックル6c1を用いて右側ベルト6cの長さが絞られる(=短く調節される)ことで、運搬物Cを支持部5にしっかりと固定できる。したがって、運搬具1の軽量化を図りながらも、運搬物Cを安定的に運搬することができる。なお、本実施形態においては、このようにして第1ベルト部材6が運搬物Cに巻き掛けられたときに、バックル6b1,6c1が運搬物Cの後方に位置するように構成されているが、バックル6b1,6c1は、より背当て板部3に近い位置で連結されるよう構成してもよい。
【0033】
一方、左右の支持ベルト6aは、互いに同様に構成されており、それぞれ、左右の側板部5bの挿通部5b3を2回にわたり挿通している。より詳細には、一端部が背当て板部3の左上部に取付けられた左側の支持ベルト6aの他端部は、左側の側板部5bの挿通部5b3を前側へ通された後に、左側のベルト通し6dを通されて後側に折り返されている。その後に、再び同一の挿通部5b3を後側へ通された上で、背当て板部3の左下部に取付けられている。同様に、一端部が背当て板部3の右上部に取付けられた右側の支持ベルト6aの他端部は、右側の側板部5bの挿通部5b3を前側へ通された後に、右側のベルト通し6dを通されて後側に折り返されている。その後に、再び同一の挿通部5b3を後側へ通された上で、背当て板部3の右下部に取付けられている。
【0034】
ここで、左右の各支持ベルト6aは、ベルト通し6dで折り返される際に、側面視で折返しの前後で重ならないよう、角度を付けて折り返されている(
図1・
図5等参照)。このため、左右の各支持ベルト6aの挿通部5b3への1回目(=折返し前)の挿通箇所I1(「第1挿通部」に相当)は、2回目(=折返し後)の挿通箇所I2(「第2挿通部」に相当)の上方に位置している。すなわち、左右の各挿通部5b3において、支持ベルト6aの1回目の挿通箇所I1と、2回目の挿通箇所I2とが上下に位置を異にしている。これにより、左右の側板部5bを略直立姿勢に堅固に保持でき、運搬物Cにより押されて左右の側板部5bが左右方向における外側へ倒れてしまうことを効果的に防止できる。
【0035】
第2ベルト部材7は、背当て板部3の上部に一端部が取付けられた上側ベルト7aと、底板部5aの前部に一端部が取付けられた下側ベルト7bを備えている。そして、上側ベルト7aは、サイドリリースバックルにより構成されたオス側のバックル7a1を他端部に備え、下側ベルト7bは、オス側のバックル7a1と連結可能なメス側のバックル7b1を他端部に備えている。オス側のバックル7a1とメス側のバックル7b1とが連結されることで、背当て板部3の上部と底板部5aの後部とが第2ベルト部材7により連結される。加えて、オス側のバックル7a1は、上側ベルト7aの長さを調節するアジャスター機構(「第2長さ調節機構」に相当)を備えている。このため、運搬者によって、運搬物Cの上方を通された上側ベルト7aのオス側のバックル7a1に、運搬物Cの後方を通された下側ベルト7bのメス側のバックル7b1が連結され、さらにオス側のバックル7a1を用いて上側ベルト7aが絞られる(=短く調節される)ことで、運搬物Cが後ろ下がりに傾いてしまうことを防止でき、略水平に保持することができる。なお、運搬物Cが後ろ下がりに傾いたときには、背当て板部3の上部背面と運搬物Cとの間に隙間が生じることとなる。
【0036】
図4は、
図1に示された支持部5のみを示す模式的背面図であり、
図4(a)は、底板部5aと左右一対の側板部5bとの間隔が比較的狭められた状態を示す模式的背面図であり、
図4(b)は、底板部5aと左右一対の側板部5bとの間隔が比較的広げられた状態を示す模式的背面図である。なお、
図4において、下側ベルト7bは説明の便宜上省略されている。
【0037】
図3及び
図4に示されるように、底板部5aの下面の左部に2つのD管9b1、9b2が、右部に2つのD管9b3、9b4が各々設けられている。そして、左側の側板部5bに一端部が固定された連結ベルト9aの他端部が、
図4に示されるように左側の2つのD管9b1、9b2に通されている。これにより、左側の側板部5bと底板部5aとの間の左右方向の間隔G1を任意の長さに調節できる。同様に、右側の側板部5bに一端部が固定された連結ベルト9aの他端部が、
図4に示されるように右側の2つのD管9b3、9b4に通されている。これにより、右側の側板部5bと底板部5aとの間の左右方向の間隔G2を任意の長さに調節できる。このように、左右一対の側板部5bと、底板部5aとの間の(左右方向の)間隔G1,G2を調節できるから、様々な左右寸法の運搬物Cに対応することができる。左右の各連結ベルト9aと、4つのD管9b(9b1~9b4)は、本発明の「第2連結手段」の一例であり、これらは左右一対の側板部5bと底板部5aとの間隔を調節する間隔調節機構を備えている。
【0038】
図5は、
図1に示された運搬具1の模式的左側面図であり、
図5(a)は、背当て板部3と底板部5aとの間隔が比較的狭められた状態を示す運搬具1の模式的左側面図であり、
図5(b)は、背当て板部3と底板部5aとの間隔が比較的広げられた状態を示す運搬具1の模式的左側面図である。なお、底板部5aは、右側の側板部5bの左方(図面奥側)に位置しており、本来であれば右側の側板部5bによって隠れるはずであるが、
図5においては、説明の便宜上、右側の側板部5bをやや上方へずらし、底板部5aを露出させた状態が示されている。
【0039】
図3及び
図5に示されるように、底板部5aの前部の下面には、面ファスナー8bが設けられている。面ファスナー8bが、背当て板部3の下端部に一部が固定された面ファスナー8aの他の部分と貼り合わせられることで、底板部5aの前部と背当て板部3の下部とが連結されている。そして、面ファスナー8a,8b同士の前後方向の相対位置(より詳細には、面ファスナー8aに対する面ファスナー8bの前後位置)を変更することで、背当て板部3と底板部5aとの間の前後方向の間隔G3を調節することができる。面ファスナー8a,8bは本発明の「第1連結手段」の一例である。
【0040】
また、上述のように、第1ベルト部材6の左右の支持ベルト6aは、左右の側板部5bの挿通部5b3を挿通している。このため、左側の側板部5bは左側の支持ベルト6aに沿うように、右側の側板部5bは右側の支持ベルト6aに沿うように、各々、(底板部5aの前後方向における位置に合わせて)略前後方向にスライド可能となっている。加えて、第1ベルト部材6の右側ベルト6cは、アジャスター機構を備えたオス側のバックル6c1を備えている。
【0041】
したがって、運搬物Cの重心位置に合わせて底板部5a及び左右の側板部5bの前後方向における位置を変更し、さらに右側ベルト6cの長さ(ひいては第1ベルト部材6の長さ)を調節することで、前後寸法(=奥行き寸法)の異なる様々な運搬物に対応できる。なお、運搬物Cの高さは、
図2等に示される背当て板部3よりも大幅に高いものでも問題なく対応できる。
【0042】
一方、
図1及び
図5に示されるように、各側板部5bは、後部の上縁5b4が、後方へ向かって下り傾斜を有するように形成されている。このような形状に構成することで、一般的な保冷容器のように、上部に蓋C1を備えた運搬物Cを運搬する場合に、運搬物Cの前側(背当て板部3側)に配置された回動支点を中心に蓋C1が
図2に矢印付きの一点鎖線で示されるように回動されて開閉される際に、左右一対の側板部5bの後部上縁5b4が蓋C1に干渉(=接触)しにくい。したがって、運搬物Cを支持部5に支持させた状態で、運搬物Cの蓋C1をスムーズに開閉できる。
【0043】
図6は、
図1に示された運搬具1が折り畳まれた状態を示す略平面図である。
図6においては、各ベルト部材(2、6,7、9a等)は説明の便宜上、省略されている。
【0044】
本実施形態にかかる運搬具1においては、バックル6b1,6b2並びに7a1,7b1が各々外され、さらに、連結ベルト9aが長く調節される(底板部5aと左右一対の側板部5bとの間隔が大きく広げられる)ことで、背当て板部3、底板部5a、左右一対の側板部5bの順に上から重ねるようにコンパクトに折り畳むことができる。また、背当て板部3と底板部5aとの間に、左右一対の側板部5bを挟むように重ねて折り畳むことも可能である。この場合には、左右一対の側板部5bの長手方向が、背当て板部3の短手方向と平行となるように、背当て板部3の上に左右一対の側板部5bを横向きに載せることが好ましい。いずれの折り畳み方の場合にも、面ファスナー8a,8bは互いに貼り付けられたままで折り畳むことが可能である。
【0045】
一方、左右一対の肩ベルト2は、各々、
図5に示されるように、一端部が背当て板部3の前面に装着された外側ベルト2aと、外側ベルト2aの内側に設けられた内側ベルト2bと、外側ベルト2aを外側から押圧する押さえベルト2cを備えている。外側ベルト2aと内側ベルト2bとの間には間隙2dが形成されており、この間隙2dの存在により、運搬者の肩に掛かる負荷を軽減することができる。ここで、押さえベルト2cは、その長さを調節するアジャスター2c1を備えており、このアジャスター2c1を用いて、運搬者により押さえベルト2cの長さが調節されることで、外側ベルト2aが内側(内側ベルト2b側)に押圧される力が調節され、間隙2dの大きさが変更される。
<第1実施形態の技術的意義>
【0046】
図1ないし
図6に示された第1実施形態によれば、前面が運搬者の背中に当接する背当て板部3、運搬物Cを下方から支持する底板部5a、及び運搬物Cを左右両側方から押さえる左右一対の側板部5bが、各々樹脂素材で形成されているから、金属により形成された場合に比して、運搬具1を大幅に軽量に形成でき、したがって、運搬者が、運搬物Cを支持する運搬具1を長時間にわたって背負って運ぶことが容易となる。
【0047】
さらに、第1実施形態によれば、背当て板部3に取付けられた第1ベルト部材6が、左右の側板部5bに係合(より詳細には左右の側板部5bの挿通部5b3を挿通)しつつ、運搬物Cの左右側方を通って後ろ側に巻き掛けられるから、運搬物Cに押されて左右の側板部5bが左右方向における外側に倒れて運搬物Cが左右へ落下してしまうのを防止できるとともに、運搬物Cの重みで底板部5aが撓むのに伴い、運搬物Cが後方へ落下してしまうことを防止できる。したがって、軽量でありながらも、運搬物Cを安定的に運搬できる。
【0048】
加えて、第1実施形態によれば、左右の各側板部5bに、第1ベルト部材6が2回にわたって挿通される挿通部5b3が形成されており、各挿通部5b3において、1回目の挿通箇所I1と2回目の挿通箇所I2とが上下に位置を異にしているから、左右の各側板部5bを立設姿勢(=直立姿勢、起立姿勢)に堅固に保持でき、したがって、左右の側板部5bが運搬物Cに押されて側方に倒れてしまうことを効果的に防止できる。
【0049】
また、第1実施形態によれば、
図4に示されるように、底板部5aと左右一対の側板部5bとの間隔G1,G2を、連結ベルト9aとD管9bとを用いて調節できるから、運搬者によって、各側板部5bの左右方向の位置が変更されることで、様々な左右寸法の運搬物Cに対応できる。
【0050】
さらに、第1実施形態によれば、連結ベルト9aとD管9bとを用いて底板部5aと左右一対の側板部5bとの間隔が広げられることで、
図6に示されるように、背当て板部3、底板部5a、及び左右一対の側板部5bを順に重ねるようにコンパクトに折り畳むことができる。
【0051】
加えて、第1実施形態によれば、
図5に示されるように、面ファスナー8a,8b同士の前後方向における相対位置を変更することで背当て板部3と底板部5aとの間隔G3を調節できるとともに、第1ベルト部材6が、左右の各側板部5bに形成された挿通部5b3に略前後方向に挿通されているから、運搬者によって、運搬物Cの前後方向における重心位置に合わせて底板部5aの前後位置が変更されるとともに、左右一対の側板部5bが第1ベルト部材6に沿って前後にスライドされ、さらにアジャスター機構を備えたバックル6c1を用いて第1ベルト部材6の長さが調節されることで、様々な前後寸法(=奥行き寸法)の運搬物に対応できる。
【0052】
さらに、第1実施形態によれば、運搬物Cの上方及び後方を通り、背当て板部3の上部と底板部5aの後部とを連結可能に構成された第2ベルト部材7の上側ベルト7aが、その長さを調節するアジャスター機構を備えたオス側のバックル7a1を有しているから、運搬者によって、運搬物Cが底板部5aに載置された後に、バックル7a1・7b1が連結され、上側ベルト7aが絞られる(=短く調節される)ことで、運搬物Cが後ろ下がりに傾いてしまうことを防止できる。
【0053】
また、第1実施形態によれば、左右一対の側板部5bは、後部の上縁5b4が、後方へ向かって下り傾斜を有するように形成されているから、一般的な保冷容器(保冷ボックス)のように、上部に蓋C1を備えた運搬物Cを運搬する場合に、蓋C1が開閉される際に左右一対の側板部5bの後部上縁5b4が蓋C1に干渉(=接触)しにくい。したがって、スムーズに蓋C1を開閉できる。
図7は、本発明の第2実施形態にかかる運搬具1の展開図である。
本実施形態にかかる運搬具1は、以下に述べる点を除き、前記第1実施形態と同様に構成されており、したがって、同様の効果を得ることができる。
【0054】
本実施形態においては、底板部5aの下面にD管9bが設けられておらず、左右一対の側板部5bに連結ベルト9aが設けられていない代わりに、底板部5aの下面の左部及び右部に面ファスナー9cが、各側板部5bに面ファスナー9dが、各々設けられている。各面ファスナー9cは全面的に底板部5aの下面に固定(縫合)されており、左右の面ファスナー9dは、各々、その一部(上部)のみが側板部5bに固定(縫合)されている。そして、左右の面ファスナー9dの固定されていない他の部分が底板部5aの下面に固定された左右の面ファスナー9cに下から貼り付けられることで、底板部5aと左右一対の側板部5bとが連結される。なお、左右の面ファスナー9dにおける面ファスナー9cと貼り付けられる面は、
図7において隠れている側の面(裏面)である。
【0055】
このように、面ファスナー9c,9dを用いることで、運搬者が、面ファスナー9cに対する面ファスナー9dの相対位置を変更し、底板部5aと一対の側板部5bとの間の(左右の)間隔を自在に調節でき、様々な左右寸法の運搬物に対応することができる。
【0056】
加えて、運搬具1を折り畳む際には、面ファスナー9c,9dを剥し、底板部5aと一対の側板部5bとを離すことで、第1実施形態と同様に、背当て板部3、底板部5a、左右一対の側板部5bの順に重ねるように折り畳むことができる。
【0057】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0058】
例えば、第1及び第2実施形態においては、背当て板部3と底板部5aとを連結する第1連結手段として面ファスナー8a,8bを用いているが、第1連結手段として面ファスナー8a,8bを用いることは必ずしも必要でなく、ベルト等の他の連結手段を用いてもよい。
【0059】
同様に、底板部5aと左右一対の側板部5bとを連結する第2連結手段として、第1実施形態においては左右の連結ベルト9a及び4つのD管9b(9b1~9b4)を、第2実施形態においては面ファスナー9c,9dを用いているが、第2連結手段はこれらに限定されるものではない。また、第1実施形態においては、左右の側板部5bと底板部5aの連結用に、左右の側板部5bにそれぞれ、単一の連結ベルト9aが設けられているが、複数の連結ベルトを用いてもよい。例えば、左右の側板部5bの前部と後部にそれぞれ連結ベルトを設けることで、左右の側板部5bの姿勢をより一層安定させることができる。
【0060】
加えて、第1及び第2実施形態においては、運搬物Cの上方を略前後方向に延びるように第2ベルト部材7が設けられているが、さらに、左右一方の側板部5bの上部に、オス側のバックルを備えたベルトを取付け、左右他方の側板部5bの上部に、当該オス側のバックルと連結可能なメス側のバックルを備えたベルトを取付け、これらのベルトのバックル同士を運搬物Cの上方で連結できるように構成してもよい。このように、第2ベルト部材7に直交するように運搬物Cの上方を左右に延びるベルトを設けることで、運搬物Cをより堅固に支持部5に固定できるとともに、内容物の飛び出しを効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0061】
1 運搬具
2 肩ベルト
3 背当て板部
5 支持部
6 第1ベルト部材
7 第2ベルト部材
8 第1連結手段(面ファスナー8a,8b)
9 第2連結手段(連結ベルト9a、D管9b並びに面ファスナー9c,9d)