(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002762
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】光照射医療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61N5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102161
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】518055877
【氏名又は名称】ラクテン・メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】大角 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 弘規
(72)【発明者】
【氏名】金箱 秀樹
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PC03
4C082PE10
4C082PG13
(57)【要約】
【課題】光吸収による発熱を抑制することができる光照射医療装置を提供する。
【解決手段】長手軸方向に遠位端101と近位端102を有し、上記長手軸方向に延在している内腔100を有するシャフト10と、シャフト10の内腔100に上記長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材20と、を備え、シャフト10は導光材20から射出される射出光が通過可能な第1領域11と、該第1領域11よりも近位側に該第1領域11の光透過率よりも低い光透過率の第2領域12を有しており、第2領域12におけるXYZ表色系の色度が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する光照射医療装置1。ただし、基準波長の範囲は、360nm以上800nm以下とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有し、前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの前記内腔に前記長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材と、を備え、
前記シャフトは前記導光材から射出される射出光が通過可能な第1領域と、該第1領域よりも近位側に該第1領域の光透過率よりも低い光透過率の第2領域を有しており、
前記第2領域におけるXYZ表色系の色度が、前記射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する光照射医療装置。
ただし、前記基準波長の範囲は、360nm以上800nm以下とする。
【請求項2】
前記シャフトの外表面における前記第2領域の前記長手軸方向の長さは、前記シャフトの外表面における前記第1領域の前記長手軸方向の長さよりも長い請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項3】
前記導光材が射出する前記射出光の波長は600nm以上700nm以下である請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項4】
前記シャフトのうち前記第1領域の近位端から前記第1領域の近位端より10cm近位側までの第1区間は、下記光透過率測定法によって求められる光透過率が90%以上である請求項1に記載の光照射医療装置。
[光透過率測定法]
(1)光源装置(Modulight社 ML6600)に接続されている光ファイバディフューザーの遠位端から前記光ファイバディフューザーの遠位端より10cm近位側までを積分球(Labsphere社 CSTM Flux 6)の中に挿入する。
(2)前記光ファイバディフューザーから前記基準波長の範囲内の光を射出し、前記積分球に接続されている光量測定装置(Ocean Photonics社 FLAME-S)によって放射束Irを測定する。
(3)前記第1区間の遠位端と前記光ファイバディフューザーの遠位端が一致するように前記光ファイバディフューザーを前記シャフトの内腔に配置し、前記シャフトのうち前記第1区間以外の部分全てを銀ホイルで被覆する。
(4)(3)の工程を経た前記シャフトの前記第1区間の遠位端から前記第1区間の近位端までを積分球の中に挿入する。
(5)(3)および(4)の工程を経た前記光ファイバディフューザーから前記基準波長の範囲内の光を射出し、前記積分球に接続されている前記光量測定装置によって放射束Isを測定する。
(6)Is/Irの式で求められる値を前記第1区間の光透過率と定義する。
【請求項5】
前記シャフトの遠位部に、前記シャフトの径方向に拡張する拡張部がさらに設けられている請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項6】
前記拡張部はバルーンであり、
前記シャフトのうち前記バルーンの内腔に配置されている部分に前記第2領域が存在している請求項5に記載の光照射医療装置。
【請求項7】
前記長手軸方向に延在している内腔を有するアウターシャフトをさらに備え、
前記シャフトが前記アウターシャフトの前記内腔に配置されている請求項5に記載の光照射医療装置。
【請求項8】
前記光照射医療装置は、前記拡張部の近位端部と前記アウターシャフトとが固定されている近位側固定部を有し、
前記第2領域は前記シャフトのうち、前記近位側固定部が存在する位置よりも遠位側に存在している請求項7に記載の光照射医療装置。
【請求項9】
前記アウターシャフトは、XYZ表色系の色度が前記基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する領域を有している請求項7に記載の光照射医療装置。
【請求項10】
前記拡張部は、バルーン、バスケット、または、自己拡張型ステントである請求項5、7~9のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や消化管等の体内管腔において、疾患のある組織、例えば、がん細胞等が存在する組織に光を照射するための光照射医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)では、光増感剤を静脈注射や腹腔内投与で体内に投与し、がん細胞等の対象組織に光増感剤を集積させ、特定の波長の光を照射することにより光増感剤を励起させる。励起された光増感剤が基底状態に戻るときにエネルギー転換が生じ、活性酸素種を発生させる。活性酸素種が対象組織を攻撃することにより、対象組織を除去することができる。また、レーザー光を用いたアブレーション(組織焼灼)では、対象組織にレーザー光を照射し、焼灼することが行われている。
【0003】
PDTや光免疫療法といった光アブレーションで使用する光照射医療装置では、対象組織に光を照射するためにカテーテル管内に導光材が配置される。
【0004】
特許文献1には、規定された領域に照射を供給する、規定された処置ウィンドウを有するバルーンカテーテルを含む装置が記載されている。この装置は、光ファイバプローブが挿入され得る透明な中央チャネルと、上記バルーンを膨張させるために用いる、近位端と遠位端とを有する外部スリーブを有する。外部スリーブは上記遠位端近傍に膨張可能バルーンをさらに含んでおり、上記バルーンが両端部において上記処置ウィンドウを規定するために反射材料でコーティングされている。
【0005】
特許文献2には、屈曲性を有する外筒と、周方向へ回転し得るように外筒に挿通された光ファイバと、基端面が光ファイバの先端面に対峙するように外筒の先端側に配置され且つ先端部分に光ファイバから入射するレーザ光を側方特定方向へ向って全反射させ得る反射面が形成された光チップと、該光チップを光ファイバの先端部分に拘束し且つ外筒の先端部に内装されたスリーブと、該スリーブに設けた目印と、該目印の位置を検知する手段とを備えてなることを特徴とするレーザ側方照射器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-46640号公報
【特許文献2】特開平10-26709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1、2に記載されている装置においては、治療に用いられる光をカテーテルが吸収することによる発熱を抑制するための機能面において、未だ改善の余地があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光吸収による発熱を抑制することができる光照射医療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決できた本発明の光照射医療装置の一実施態様は下記の通りである。
[1]長手軸方向に遠位端と近位端を有し、上記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、シャフトの内腔に上記長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材と、を備え、シャフトは導光材から射出される射出光が通過可能な第1領域と、該第1領域よりも近位側に該第1領域の光透過率よりも低い光透過率の第2領域を有しており、第2領域におけるXYZ表色系の色度が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する光照射医療装置。ただし、基準波長の範囲は、360nm以上800nm以下とする。
上記構成とすることで、光照射医療装置を光治療に用いた際に、第2領域における治療光の吸収量を低減させることができるため、第2領域の発熱を抑制することができる。これによって、対象組織である処置部のやけどや第2領域の溶融を防ぐことができる。さらに、処置部に届く光の量の減少を抑制することができるため、効果的に処置部への光照射を行うことができる。
[2]シャフトの外表面における第2領域の上記長手軸方向の長さは、シャフトの外表面における第1領域の上記長手軸方向の長さよりも長い[1]に記載の光照射医療装置。
[3]導光材が射出する射出光の波長は600nm以上700nm以下である[1]または[2]に記載の光照射医療装置。
[4]シャフトのうち第1領域の近位端から第1領域の近位端より10cm近位側までの第1区間は、下記光透過率測定法によって求められる光透過率が90%以上である[1]~[3]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[光透過率測定法]
(1)光源装置(Modulight社 ML6600)に接続されている光ファイバディフューザーの遠位端から光ファイバディフューザーの遠位端より10cm近位側までを積分球(Labsphere社 CSTM Flux 6)の中に挿入する。
(2)光ファイバディフューザーから基準波長の範囲内の光を射出し、積分球に接続されている光量測定装置(Ocean Photonics社 FLAME-S)によって放射束Irを測定する。
(3)第1区間の遠位端と光ファイバディフューザーの遠位端が一致するように光ファイバディフューザーをシャフトの内腔に配置し、シャフトのうち第1区間以外の部分全てを銀ホイルで被覆する。
(4)(3)の工程を経たシャフトの第1区間の遠位端から第1区間の近位端までを積分球の中に挿入する。
(5)(3)および(4)の工程を経た光ファイバディフューザーから基準波長の範囲内の光を射出し、積分球に接続されている光量測定装置によって放射束Isを測定する。
(6)Is/Irの式で求められる値を第1区間の光透過率と定義する。
[5]シャフトの遠位部に、シャフトの径方向に拡張する拡張部がさらに設けられている[1]~[4]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[6]拡張部はバルーンであり、シャフトのうちバルーンの内腔に配置されている部分に第2領域が存在している[5]に記載の光照射医療装置。
[7]上記長手軸方向に延在している内腔を有するアウターシャフトをさらに備え、シャフトがアウターシャフトの内腔に配置されている[5]に記載の光照射医療装置。
[8]光照射医療装置は、拡張部の近位端部とアウターシャフトとが固定されている近位側固定部を有し、第2領域はシャフトのうち、近位側固定部が存在する位置よりも遠位側に存在している[7]に記載の光照射医療装置。
[9]アウターシャフトは、XYZ表色系の色度が基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する領域を有している[7]または[8]に記載の光照射医療装置。
[10]拡張部は、バルーン、バスケット、または、自己拡張型ステントである[5]、[7]~[9]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光照射医療装置は、光治療に用いられた際に、第2領域における治療光の吸収量を低減させることができるため、第2領域の発熱を抑制することができる。これによって、対象組織である処置部のやけどや第2領域の溶融を防ぐことができる。さらに、処置部に届く光の量の減少を抑制することができるため、効果的に処置部への光照射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)を表す。
【
図2】本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)を表す。
【
図3】本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の他の変形例を示す断面図(一部側面図)を表す。
【
図4】CIE測色標準観察者等色関数をグラフ化したものを表す。
【
図5】
図1に示した光照射医療装置のV-V線における切断部端面図を表す。
【
図6】
図2に示した光照射医療装置のVI-VI線における切断部端面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
本発明の光照射医療装置の一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有し、上記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、シャフトの内腔に上記長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材と、を備え、シャフトは導光材から射出される射出光が通過可能な第1領域と、該第1領域よりも近位側に該第1領域の光透過率よりも低い光透過率の第2領域を有しており、第2領域におけるXYZ表色系の色度が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する点に要旨を有する。ただし、基準波長の範囲は、360nm以上800nm以下とする。
【0014】
光照射医療装置は、PDTや光アブレーションにおいて血管や消化管等の体内管腔で、がん細胞等の対象組織である処置部に対して特定の波長の光を照射するために用いられる。光照射医療装置は、単独で処置部まで送達されるものであってもよく、送達用のカテーテルや内視鏡と共に用いられてもよい。内視鏡を用いた治療では、内視鏡の鉗子チャンネルを通じて光照射医療装置が体内に配置され、処置部まで送達される。
【0015】
図1~
図6を参照しながら、光照射医療装置の基本構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)を表す。
図2は、本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)を表す。
図3は、本発明の実施の形態に係る光照射医療装置の他の変形例を示す断面図(一部側面図)を表す。
図4は、CIE測色標準観察者等色関数をグラフ化したものを表す。
図5は、
図1に示した光照射医療装置のV-V線における切断部端面図を表す。
図6は、
図2に示した光照射医療装置のVI-VI線における切断部端面図を表す。
図1~
図3に示す光照射医療装置はシャフト10と導光材20を有する。なお、各図面において紙面左側がシャフト10の遠位側に相当し、紙面右側がシャフト10の近位側に相当する。
【0016】
本明細書内において、近位側とはシャフトの延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。シャフトの遠位部とはシャフトのうちの遠位側半分を指し、シャフトの近位部とはシャフトのうちの近位側半分を指す。また、シャフトの延在方向を長手軸方向と称する。径方向とはシャフトの半径方向を指し、本明細書内において内方とはシャフトの軸中心側に向かう径方向を指し、外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。
【0017】
光照射医療装置1を構成する各部材の材料は生体適合性を有することが好ましい。
【0018】
光照射医療装置1はシャフト10を備える。シャフト10は、長手軸方向に遠位端101と近位端102を有し、上記長手軸方向に延在している内腔100を有する部材である。シャフト10は複数の内腔100を有していてもよいが、内腔100を1つのみ有していることが好ましい。シャフト10の形状は、内腔100が存在していれば特に限定されないが、例えば、中空円柱状、中空多角柱状などの形状にすることができる。内腔100に後述する導光材20を配置するために、管状構造であることが好ましい。以下では、シャフト10の内腔100の長手軸方向に垂直な断面を内腔断面と称する。
【0019】
シャフト10の内腔断面の形状は特に限定されないが、例えば、円形状、長円形状、多角形状、星形状、またはこれらを組み合わせた形状などにすることができる。なお、長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明で長円形状と記載する場合も同様である。
【0020】
シャフト10は、可撓性を有していることが好ましい。これにより生体内の管の形状に沿ってシャフト10を変形させることができる。また、形状保持のため、シャフト10は弾性を有していることが好ましい。
【0021】
シャフト10としては、一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。
【0022】
シャフト10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
シャフト10は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。シャフト10が複層構造である場合、例えば、シャフト10を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。
【0024】
シャフト10は、光透過性の材料を含んでいることが好ましい。これにより、導光材20をシャフト10内に配置したときに、対象組織に対して効率よく光を照射することができる。光透過性の材料としては、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート樹脂(例えば、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PC))、ポリスチレン系樹脂(例えば、メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂(MS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(SAN))、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0025】
シャフト10は、光拡散性の材料を含んでいることが好ましい。これにより、導光材20から射出された光がシャフト10の通過時に適度に拡散されるため、対象組織に対して光をムラなく照射することができる。光拡散性の材料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機系粒子、架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系粒子等の有機系粒子が挙げられる。
【0026】
光照射医療装置1は、シャフト10の内腔100にシャフト10の長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材20を備えている。
【0027】
導光材20は、入射した光を運ぶ光の伝送路としての機能を有するものを指す。導光材20としては、光ファイバーを使用することができる。光ファイバーは、コアと、コアの径方向外方を被覆するクラッド22とを有し、かつ、コアの遠位部の一部にクラッドの非存在部21を有していることが好ましい。コアおよびクラッド22を構成する材料は特に限定されず、プラスチック、石英ガラス、ふっ化物ガラス等のガラスを用いることができる。
【0028】
クラッドの非存在部21は、コアの周方向の少なくとも一部でクラッド22が存在していない部分を指し、光ファイバー20の発光エリアとなる。このようなクラッドの非存在部21を設けることによって、側面照射型の光照射医療装置1を構成することができる。
【0029】
シャフト10の長手軸方向においてクラッドの非存在部21が設けられる位置はコアの遠位部の一部であれば特に制限されないが、コアの遠位端を含む部分に設けられていることが好ましい。これによりクラッドの非存在部21を形成しやすくなり、導光材20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0030】
クラッドの非存在部21の遠位端の位置は、コアの遠位端の位置と一致していることが好ましい。これにより、光ファイバーの遠位端を含む部分のクラッド22を残しながらクラッドの非存在部21を形成するという難しい工程が不要になるため、光ファイバーの発光エリアの形成工程を容易にすることができる。
【0031】
クラッドの非存在部21は、例えばエッチングや研磨によってクラッド22を剥離させることで形成することができる。やすり掛けなどの方法によりクラッドの非存在部21の外側表面を荒らすことがより好ましい。これにより、光拡散性を向上させることができる。
【0032】
シャフト10は導光材20から射出される射出光が通過可能な第1領域11を有している。シャフト10のうち第1領域11以外の部分よりも第1領域11のほうが導光材20から射出される射出光の光透過率が高いことが好ましい。第1領域11は透明であることが好ましく、第1領域11として、例えば、透明部材が配置されている構成とすることができる。
【0033】
第1領域11はシャフト10の周方向の一部にのみ設けられていてもよい。第1領域11はシャフト10の周方向の全体に設けられていてもよい。
【0034】
第1領域11をシャフト10の周方向の一部にのみ設ける場合は、シャフト10の径方向から第1領域11を見たときの第1領域11の形状は、例えば、円形状、長円形状、多角径状、またはこれらを組み合わせた形にすることができる。
【0035】
第1領域11をシャフト10の周方向の全体に設ける場合は、中空円柱状、中空多角柱状などの形状にすることができる。内腔に導光材20を配置するために、第1領域11は管状構造であることが好ましい。当該構成とすることで、第1領域11の内腔に配置された導光材20から射出された光を、シャフト10の外方全体に向けて照射することができる。
【0036】
第1領域11を構成する材料としては、シャフト10を構成する樹脂のほか、例えば、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート樹脂(例えば、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PC))、ポリスチレン系樹脂(例えば、メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂(MS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(SAN))、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
第1領域11はシャフト10に対して1箇所または複数箇所設けることができるが、導光材20から射出される射出光の照射位置を調節しやすくするために、1つのシャフト10に対して第1領域11は1箇所のみ設けられていることが好ましい。
【0038】
第1領域11はシャフト10の遠位部に存在していることが好ましい。なお、第1領域11はシャフト10の近位部に存在していても構わない。第1領域11はシャフト10の遠位部にのみ存在していてもよい。
【0039】
シャフト10の外表面における周方向の第1領域11の長さよりも、シャフト10の外表面における長手軸方向の第1領域11の長さの方が長いことが好ましい。これにより、生体管壁の長手軸方向に沿って延在している病変等の処置部に対して治療光を照射しやすくすることができる。ここで、上記長さを比較する際は、シャフト10の外表面における周方向の第1領域11の長さのうち最も短い長さと、シャフト10の外表面における長手軸方向の第1領域11の長さのうち最も短い長さを比較するものとする。
【0040】
シャフト10は、第1領域11よりも近位側に該第1領域11の光透過率よりも低い光透過率の第2領域12を有している。
【0041】
第2領域12は、導光材20から射出される射出光の光透過率が第1領域11よりも低いことが好ましい。
【0042】
上記光照射医療装置1は、第2領域12におけるXYZ表色系の色度が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する。ただし、基準波長の範囲は、360nm以上800nm以下とする。
【0043】
下記表1~表3は、国際照明委員会(CIE)によって示されている標準観測者の等色関数である。
図4は、表1~表3のCIE測色標準観察者等色関数をグラフで表したものである。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
XYZ表色系はYxy表色系とも言われ、CIEで標準表色系として承認された色の表し方であり、三原刺激X、Y、Zの混合量で表される数値を三刺激値という。Xは赤みの刺激の感度、Yは緑みの刺激と明るさの感度、Zは青みの刺激の感度を表す。なお、三原刺激X、Y、Zの混合比をx、y、zと記載する。混合比であるから、x+y+z=1(100%)である。混合比のうち、xとyだけを利用して色度座標上に表したものがxy色度図と呼ばれるものである。そして、xy色度図で色を表す場合であって、原刺激Yの混合量を組み合わせた三要素で表されるものがYxy表色系と呼ばれるものである。本明細書内で色度と記載している場合、このxyで表される色度の情報のことを指す。
【0048】
上記光照射医療装置1は、第2領域におけるXYZ表色系の色度、すなわちxy色度図におけるxおよびyの値が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度、すなわちxおよびyの値と一致する。
【0049】
XYZ表色系に変換する光は、基準波長内にある波長の光であればよい。
【0050】
基準波長は、射出光の波長±150nm以内の波長のことを言うが、基準波長の範囲は、射出光の波長±125nm以内であることが好ましく、射出光の波長±100nm以内であることがより好ましい。上記構成とすることで、光照射医療装置1を光治療に用いた際に、第2領域12における治療光の吸収量を低減させやすくすることができる。
【0051】
基準波長の光をXYZ三刺激値に変換する際、下記(1)~(3)の式で変換することができる。なお、λは光の波長(単位はnm)を表し、∫はλ=360からλ=780までの定積分を表し、S(λ)は光の放射量の相対分光分布を表し、x(λ)、y(λ)、z(λ)はXYZ表色系における等色関数を表し、kはY値が測光量に一致するように定める比例定数を表す。自発光光源に対するkは、683(lm/W)である。
X=k∫S(λ)x(λ)dλ・・・(1)
Y=k∫S(λ)y(λ)dλ・・・(2)
Z=k∫S(λ)x(λ)dλ・・・(3)
上記(1)~(3)式で算出されたXYZ三刺激値から、X、Y、Zの混合比x、y、zが求められる。これにより、xyで表される色度を求めることができる。
【0052】
光照射医療装置1の第2領域12におけるYxyの値は、測色計により測定することができる。
【0053】
第2領域12におけるXYZ表色系の色度は、導光材20が射出する射出光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致することが好ましい。当該構成とすることで、第2領域12における治療光の吸収量を低減させやすくすることができる。
【0054】
上記のように光照射医療装置1について、長手軸方向に遠位端101と近位端102を有し、上記長手軸方向に延在している内腔100を有するシャフト10と、シャフト10の内腔100に上記長手軸方向に移動可能に配置され、光を射出する導光材20と、を備え、シャフト20は導光材20から射出される射出光が通過可能な第1領域11と、該第1領域11よりも近位側に該第1領域11の光透過率よりも低い光透過率の第2領域12を有しており、第2領域12におけるXYZ表色系の色度が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する構成とすることで、光照射医療装置1を光治療に用いた際に、第2領域12における治療光の吸収量を低減させることができるため、第2領域12の発熱を抑制することができる。これによって、対象組織である処置部のやけどや第2領域12の溶融を防ぐことができる。さらに、処置部に届く光の量の減少を抑制することができるため、効果的に処置部への光照射を行うことができる。
【0055】
図2に示すように、シャフト10の遠位端部は閉塞していることが好ましい。シャフト10の遠位端部が閉塞していることにより、シャフト10の内腔に消化管粘液や血液等の体液が入り込み、後述する導光材20が劣化するのを防ぐことができる。
図2に示すようにシャフト10の遠位端101には先端チップ60が取り付けられていてもよい。シャフト10の遠位端部による生体組織の損傷を回避することができる。先端チップ60の形状としては、例えば円柱形状、長円柱形状、半球形状、長円球形状、角錐台形状、円錐台形状、長円錐台形状、角丸錐台形状、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0056】
第2領域12はシャフト10に対して1箇所のみ設けられていてもよく、複数箇所設けられていてもよい。
【0057】
第2領域12は、シャフト10の周方向の一部にのみ設けられていてもよい。第2領域12は、シャフト10の周方向の全体に設けられていてもよい。
【0058】
第2領域12をシャフト10の周方向の一部にのみ設ける場合は、シャフト10の径方向から第2領域12を見たときの第2領域12の形状は、例えば、円形状、長円形状、多角径状、またはこれらを組み合わせた形にすることができる。
【0059】
第2領域12をシャフト10の周方向の全体に設ける場合は、中空円柱状、中空多角柱状などの形状にすることができる。内腔に導光材20を配置するために、第2領域12は管状構造であることが好ましい。
【0060】
第2領域12は、シャフト10の遠位部に存在していることが好ましく、第2領域12はシャフト10の遠位部にのみ存在していてもよい。また、第2領域12はシャフト10の近位部に存在していてもよい。
【0061】
シャフト10は、第1領域11と第2領域12のみによって構成されていても構わない。シャフト10は、第1領域11および第2領域12に加えて、第1領域11および第2領域12とは異なる性質の領域をさらに有していても構わないが、シャフト10のうち第1領域11と接する部分は白色や黒色の部分を有していないことが好ましく、シャフト10の遠位部は白色や黒色の部分を有していないことがより好ましい。また、シャフト10全体が白色や黒色の部分を有していない構成とすることもできる。
【0062】
第1領域11と第2領域12が隣り合って存在していることが好ましい。当該構成とすることで、第1領域11と第2領域12の境目を視認しやすくなる。これにより、第1領域11を処置部に配置しやすくすることができる。また、第1領域11と第2領域12の境目の視認性の向上により、シャフト10の内腔に導光材20を挿入する際、第1領域11の位置と導光材20の位置とを調整しやすくすることもできる。これにより、処置に要する時間を短くすることができる。
【0063】
シャフト10の外表面における第2領域12のシャフト10の長手軸方向の長さは、シャフト10の外表面における第1領域11のシャフト10の長手軸方向の長さよりも長いことが好ましい。ここで、上記長さを比較する際は、シャフト10の外表面における第2領域12のシャフト10の長手軸方向の長さのうち最も短い長さと、シャフト10の外表面における第1領域11のシャフト10の長手軸方向の長さのうち最も短い長さを比較するものとする。
【0064】
シャフト10の長手軸方向におけるクラッドの非存在部21の長さは、シャフト10の外表面における長手軸方向の第1領域11の長さよりも短い構成とすることができる。ここで、上記長さを比較する際は、シャフト10の長手軸方向におけるクラッドの非存在部21の長さのうち最も短い長さと、シャフト10の外表面における長手軸方向の第1領域11の長さのうち最も短い長さを比較するものとする。
【0065】
光照射医療装置1を使用する際には、
図1~
図3、
図5、
図6に示すように、シャフト10の内腔100に導光材20を挿入し、第1領域11が存在する位置まで導光材20をシャフト10の長手軸方向に移動させることが好ましい。
【0066】
シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間と、シャフト10の長手軸方向におけるクラッドの非存在部21の存在する区間と、が重なっていることが好ましい。このとき、シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間と、シャフト10の長手軸方向におけるクラッドの非存在部21の存在する区間とは、少なくとも一部が重なっていればよいが、全体が重なっていることがより好ましい。シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間の一部と、シャフト10の長手軸方向におけるクラッドの非存在部21の存在する区間の全体が重なっていてもよい。当該構成とすることで、導光材20から射出される光が第1領域11を通過しやすくすることができ、効率的に処置部に照射させやすくすることができる。
【0067】
導光材20が射出する射出光の波長は、治療対象となる処置部の場所や疾患に応じて適宜設定することができる。
【0068】
上記光照射医療装置1を、例えば、がん治療に用いる際には、導光材20が射出する射出光の波長は600nm以上700nm以下であることが好ましい。これは、射出光に600nm以上700nm以下の波長の光が含まれていると好ましいことを意味するものである。例えば、一時的に600nm未満の波長の光を射出しても構わない。また、一時的に700nm超の波長の光を射出しても構わない。がん治療の効果を上げる観点から600nm以上700nm以下の波長の光のみであることがより好ましい。
【0069】
シャフト10の遠位部に、シャフト10の径方向に拡張する拡張部30がさらに設けられていることが好ましい。上記拡張部30は、
図2、
図3に示すように、シャフト10の遠位部に、シャフト10の径方向の外方に向かって拡張することが好ましい。拡張部30を拡張させることによって体内、例えば生体管壁に光照射医療装置1を固定しやすくすることができるため、体内での光照射医療装置1の位置ずれを防ぐことができる。
【0070】
図3に示すように、光照射医療装置1は、シャフト10の長手軸方向に延在している内腔400を有するアウターシャフト40をさらに備えていることが好ましい。アウターシャフト40は、シャフト10の長手軸方向に遠位端と近位端を有するように配置されていることが好ましい。アウターシャフト40は複数の内腔400を有していてもよいが、内腔400を1つのみ有していることが好ましい。アウターシャフト40の形状は、内腔400が存在していれば特に限定されないが、例えば、中空円柱状、中空多角柱状などの形状にすることができる。内腔400にシャフト10を配置するために、管状構造であることが好ましい。以下では、アウターシャフト40の内腔400の長手軸方向に垂直な断面を内腔断面と称する。
【0071】
アウターシャフト40の内腔断面の形状は特に限定されないが、例えば、円形状、長円形状、多角形状、星形状、またはこれらを組み合わせた形状などにすることができる。
【0072】
アウターシャフト40は、可撓性を有していることが好ましい。これにより生体内の管の形状に沿ってアウターシャフト40を変形させることができる。また、形状保持のため、アウターシャフト40は弾性を有していることが好ましい。
【0073】
アウターシャフト40としては、一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。
【0074】
アウターシャフト40は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
アウターシャフト40は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。アウターシャフト40が複層構造である場合、例えば、アウターシャフト40を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。
【0076】
上記シャフト10がアウターシャフト40の内腔400に配置されていることが好ましい。アウターシャフト40の内腔400において、シャフト10がシャフト10の長手軸方向および周方向の少なくともいずれか一方に移動可能に配置されていることが好ましい。
【0077】
図3に示すように、アウターシャフト40の近位部には、術者が光照射医療装置1を把持するためのハンドル50が接続されていることがより好ましい。ハンドル50は例えば内腔を有する筒形状を有していてもよく、ハンドル50の内腔にアウターシャフト40、シャフト10、導光材20が挿通されていてもよい。
【0078】
ハンドル50の構成材料は特に限定されないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0079】
アウターシャフト40は、XYZ表色系の色度が基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度と一致する領域を有していることが好ましい。アウターシャフト40におけるXYZ表色系の色度、すなわちxy色度図におけるxおよびyの値が、射出光の波長±150nm以内の波長である基準波長の光をXYZ表色系に変換したときの色度、すなわちxおよびyの値と一致することが好ましい。上記構成とすることで、光照射医療装置1を光治療に用いた際に、アウターシャフト40における治療光の吸収量をも低減させやすくすることができる。基準波長の光をXYZ三刺激値に変換する方法は上述の通りである。
【0080】
シャフト10の色度と、アウターシャフト40の色度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
図3に示すように、光照射医療装置1は、拡張部30の近位端部とアウターシャフト40とが固定されている近位側固定部31を有し、第2領域12はシャフト10のうち、近位側固定部31が存在する位置よりも遠位側に存在していることが好ましい。第2領域12は、シャフト10のうち、近位側固定部31が存在する位置よりも近位側にも存在していてもよい。なお、図示しないが、第2領域は、シャフトのうち、近位側固定部が存在する位置よりも遠位側にのみ存在していてもよい。
【0082】
拡張部30は、バルーン、バスケット、または、自己拡張型ステントであることが好ましい。
【0083】
バルーンは
図3に示すように近位側から順に、アウターシャフト40に固定されている近位側固定部31と、シャフト10に固定されていない膨張部32と、シャフト10に固定されている遠位側固定部33とを有していてもよい。シャフト10がバルーンをシャフト10の長手軸方向に貫通していることが好ましい。これにより、シャフト10にバルーンが接合される。
【0084】
拡張部30がバルーンである場合、シャフト10およびアウターシャフト40の少なくともいずれか一方の近位部には流体供給器(図示せず)が接続されていることが好ましい。バルーンは、シャフト10およびアウターシャフト40の少なくともいずれか一方を通じて流体供給器からバルーンの内部に圧力流体が供給されるように構成される。バルーンの内部に圧力流体を供給するとバルーンが拡張し、圧力流体を引き抜くとバルーンが収縮する。バルーンを拡張させるとバルーンの外面が血管や消化管等の生体管壁と接触するため、シャフト10を体内に固定することができる。
【0085】
拡張部30がバルーンである場合、シャフト10は複数の内腔(図示せず)を有していてもよい。例えば、シャフト10は、導光材20の挿通路である第1の内腔と、圧力流体の流路として機能する第2の内腔を有している構成とすることができる。
【0086】
バルーンの膨張部32は、直管部30aと、直管部30aよりも遠位側および近位側に各々形成されているテーパー部30bとを有していてもよい。この場合、直管部30aの外面を生体管壁に接触させることで、シャフト10を体内に固定することができる。
【0087】
バルーンは樹脂から構成されていることが好ましい。バルーンを構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。バルーンの薄膜化や柔軟性の点からはエラストマー樹脂を用いることができる。
【0088】
バルーン内に供給される流体の種類は特に限定されないが、例えば、生理食塩水、造影剤、またはこれらの混合液等の液体や、空気、窒素、炭酸ガス等の気体を用いることができる。なかでも、射出光を透過しやすくする観点から、バルーン内に気体が供給されることが好ましい。
【0089】
バルーンは、射出光を透過しやすくする観点から、光透過性を有していることが好ましい。バルーンは、第1領域11と同じ光透過率であるか、もしくは、第1領域11よりも高い光透過率を有していることが好ましい。
【0090】
バスケットは、複数の弾性ワイヤが第1結束部と、該第1結束部よりも近位側の第2結束部において結束されて形成されているものである。バスケットでは、第1結束部と第2結束部の間で弾性ワイヤが折り曲げられたり、らせん状にねじり合わされたりしてもよい。バスケットは一般には結石などの異物の捕捉に用いられるが、光照射医療装置1では体内での光照射医療装置1の位置固定のために使用される。
【0091】
弾性ワイヤは、弾性を有する線材であり、形状記憶合金または形状記憶樹脂から構成されることが好ましい。弾性ワイヤは例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等から構成されている単線または撚線の金属線材であってもよい。
【0092】
弾性ワイヤの本数は特に限定されず、生体管壁の内径等に応じて選択することができる。
【0093】
第1結束部および第2結束部では、弾性ワイヤがシャフト10に固定されていることが好ましい。複数の弾性ワイヤの遠位端部または近位端部をシャフト10の周方向に離して配置し、弾性ワイヤの遠位端部または近位端部をシャフト10にロウ付けまたは接着する、あるいは弾性ワイヤの遠位端部または近位端部の上から筒状の接続具を被せて、接続具をかしめる等の方法で、弾性ワイヤをシャフト10に固定することができる。
【0094】
ステントは、例えばメッシュなどの網目構造で構成されている拡径可能な構造体であり、複数の支柱を含んでいる。ステントは、例えば周方向および軸方向に伸縮する、相互に連結している構造要素のパターンから形成することができる。ステントは、1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザーなどで切り抜き加工したタイプ、線状の部位を溶接し組み立てたタイプ、複数の線状金属を織って作ったタイプ等が挙げられる。
【0095】
ステントは、拡張機構の観点からバルーン拡張型と自己拡張型に分類することができる。バルーン拡張型では、バルーン外面上にステントを装着して病変等の処置部まで搬送し、バルーンを用いて処置部でステントを拡張させる。自己拡張型では、拡張を抑制する部材を有するカテーテルでステントを病変部に搬送し、処置部で拡張を抑制する部材を取り外すことによりステントが自ら拡張する。ステントは、自己拡張型ステントであることが好ましい。自己拡張型では内部にバルーンを設けなくてもよいことから、バルーン拡張型に比べて縮径状態の径を小さくすることができる。
【0096】
ステントの構成材料としては、バスケットの弾性ワイヤの構成材料の説明を参照することができる。
【0097】
拡張部が自己拡張型ステントである場合、自己拡張型ステントの近位端部がシャフトの遠位端部に固定されていることが好ましい。ステントが光の射出を阻害しない状態で光照射医療装置を体内に固定することができる。
【0098】
拡張部30が自己拡張型ステントであり、遠位端部が近位端部よりも拡張可能である場合、遠位端部がシャフト10の遠位端部に固定されていないことが好ましい。ステントの遠位端部を生体管壁に接触させることで、シャフト10を体内に固定することができる。
【0099】
ステントのシャフト10への固定は、バスケットの弾性ワイヤのシャフト10への固定と同様の方法で行うことができる。ステントの近位端部において、複数の支柱をシャフト10の周方向に離隔するように配置し、シャフト10にロウ付けまたは接着する、あるいは支柱の近位端部の上から筒状の接続具を被せて、接続具をかしめる等の方法を採用することができる。
【0100】
拡張部30がバスケットまたはステントである場合、拡張部30がシャフト10に固定されていることが好ましく、
図2に示すように、拡張部30の遠位端部と近位端部がシャフト10に固定されていることがより好ましい。また、図示していないが、光照射医療装置は、内腔に拡張部を収容可能なアウターシャフトをさらに有することが好ましい。これにより、光照射医療装置が、内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って病変等の処置部の近くに搬送されるまでの間に、バスケットまたはステントが拡張することで内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、異物以外の体内組織等を傷付けることを防止することができる。
【0101】
シャフト10の長手軸方向における拡張部30の存在する区間と、シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間と、が重なっていることが好ましい。このとき、シャフト10の長手軸方向における拡張部30の存在する区間と、シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間とは、少なくとも一部が重なっていればよいが、全体が重なっていることがより好ましい。シャフト10の長手軸方向における拡張部30の存在する区間の一部と、シャフト10の長手軸方向における第1領域11の存在する区間の全体が重なっていてもよい。当該構成とすることで、導光材20から射出される光が透過しやすい第1領域11を処置部に固定しやすくすることができるため、治療光を処置部に照射させやすくすることができる。
【0102】
図3に示すように、拡張部30はバルーンであり、シャフト10のうちバルーンの内腔に配置されている部分に第2領域12が存在していることが好ましい。第2領域12は、その一部がシャフト10のうちバルーンの内腔に配置されている部分に存在していてもよいし、その全体がシャフト10のうちバルーンの内腔に配置されている部分に存在していてもよい。
【0103】
図3に示すように、光照射医療装置1は、拡張部30の近位端部とアウターシャフト40とが固定されている近位側固定部31と、拡張部30の遠位端部とシャフト10とが固定されている遠位側固定部33とを有し、シャフト10の長手軸方向において近位側固定部31と遠位側固定部33との間に第1領域11が存在していることが好ましい。第1領域11は、その全体が近位側固定部31と遠位側固定部33との間に存在していてもよいし、その一部のみが近位側固定部31と遠位側固定部33との間に存在していてもよい。体内における位置の固定を行いつつ、処置部に光照射をしやすくすることができることから、第1領域11全体が近位側固定部31と遠位側固定部33との間に存在していることがより好ましい。
【0104】
光照射医療装置1は、
図1に示すシャフト10のうち第1領域11の近位端から第1領域11の近位端より10cm近位側までの第1区間110は、下記光透過率測定法によって求められる光透過率が90%以上であることが好ましい。
[光透過率測定法]
(1)光源装置(Modulight社 ML6600)に接続されている光ファイバディフューザーの遠位端から光ファイバディフューザーの遠位端より10cm近位側までを積分球(Labsphere社 CSTM Flux 6)の中に挿入する。
(2)光ファイバディフューザーから基準波長の範囲内の光を射出し、積分球に接続されている光量測定装置(Ocean Photonics社 FLAME-S)によって放射束Irを測定する。
(3)第1区間110の遠位端と光ファイバディフューザーの遠位端が一致するように光ファイバディフューザーをシャフト10の内腔100に配置し、シャフト10のうち第1区間110以外の部分全てを銀ホイルで被覆する。
(4)(3)の工程を経たシャフト10の第1区間110の遠位端から第1区間110の近位端までを積分球の中に挿入する。
(5)(3)および(4)の工程を経た光ファイバディフューザーから基準波長の範囲内の光を射出し、積分球に接続されている光量測定装置によって放射束Isを測定する。
(6)Is/Irの式で求められる値を第1区間110の光透過率と定義する。
【0105】
上記光透過率測定法で測定される光透過率を、以下では特定光透過率と記載する。
【0106】
上記(2)で光ファイバディフューザーから射出される光の波長と、上記(5)で光ファイバディフューザーから射出される光の波長は同じであることを要する。
【0107】
上記光透過率測定法において特定光透過率を測定する際には、一般に販売されている任意の光ファイバディフューザーを用いることができる。
【0108】
特定光透過率について、上記のようにすることで、光照射医療装置1の第1領域11に接する第1区間110において吸収する治療光の量を低減させることができる。これにより、光照射医療装置1の第1区間110の発熱を抑制することや、処置部に届く光の量の減少を抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
1:光照射医療装置
10:シャフト
11:第1領域
12:第2領域
20:導光材
21:クラッドの非存在部
22:クラッド
30:拡張部
30a:直管部
30b:テーパー部
31:近位側固定部
32:膨張部
33:遠位側固定部
40:アウターシャフト
50:ハンドル
60:先端チップ
100:シャフトの内腔
110:第1区間