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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027620
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240222BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240222BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240222BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240222BHJP
   B60R 1/27 20220101ALI20240222BHJP
   B60R 1/25 20220101ALI20240222BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20240222BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
H04N7/18 J
B60R1/24
B60R1/27
B60R1/25
B60R1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130553
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 司
(72)【発明者】
【氏名】洪水 太成
【テーマコード(参考)】
2D015
5C054
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015HA03
5C054CA04
5C054CC02
5C054FD03
5C054FE18
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】作業状況に合わせて前方カメラを適切な位置に保持可能なホイールローダを提供する。
【解決手段】ホイールローダは、車体と、車体の前端に支持されて上下方向に動作する作業装置と、作業装置より後方で車体に支持されたキャブと、車体の前方下側を撮影する前方カメラと、キャブの天面に取り付けられて、前方カメラを保持するカメラブラケットとを備える。カメラブラケットは、キャブの天面に固定されたベースプレートと、前端にカメラ支持部を有し、後端が車体の幅方向に延びる軸周りに回動可能にベースプレートに支持された支持フレームと、ベースプレートに対して傾斜した姿勢の支持フレームを支持するステーと、カメラ支持部に設けられ、支持フレームが姿勢変化しても前方カメラの光軸が同一の目標位置を向くように回動可能に前方カメラを保持するカメラホルダとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
前記車体の前端に支持されて上下方向に動作する作業装置と、
前記作業装置より後方で前記車体に支持されたキャブと、
前記車体の前方下側を撮影する前方カメラと、
前記キャブの天面に取り付けられて、前記前方カメラを保持するカメラブラケットとを備えるホイールローダにおいて、
前記カメラブラケットは、
前記キャブの天面に固定されたベースプレートと、
前端にカメラ支持部を有し、後端が前記車体の幅方向に延びる軸周りに回動可能に前記ベースプレートに支持された支持フレームと、
前記ベースプレートに対して傾斜した姿勢の前記支持フレームを支持するステーと、
前記カメラ支持部に設けられ、前記支持フレームが姿勢変化しても前記前方カメラの光軸が同一の目標位置を向くように回動可能に前記前方カメラを保持するカメラホルダとを備えることを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記ステーは、前端が前記支持フレームに回動可能に取り付けられ、後端が前記ベースプレートに回動可能に支持されており、
前記支持フレームは、前記ステーの後端が前記ベースプレート上を移動することにより姿勢変化することを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記支持フレームは、前端及び後端の間に前記ステーが取り付けられるステーブラケットを有し、
前記ステーは、一端が前記ベースプレートに回動可能に支持されており、
前記支持フレームは、前記ステーブラケットに取り付けられる前記ステーの位置が変化することにより姿勢変化することを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記カメラブラケットを側面視したときに、前記支持フレームが時計回り及び反時計回りの一方に回動するのに連動して、前記カメラホルダを前記支持フレームの回動方向とは反対方向に回動させるリンク機構を備えることを特徴とするホイールローダ。
【請求項5】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記カメラブラケットは、前記前方カメラの周囲を覆うように前記カメラホルダに固定されて、前記カメラホルダと共に回動するカバーを備えることを特徴とするホイールローダ。
【請求項6】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記支持フレームは、前記ベースプレートに沿う姿勢のときに、前記ベースプレートに固定される被固定部を有することを特徴とするホイールローダ。
【請求項7】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記カメラブラケットは、前記支持フレームとの接続位置から後方且つ幅方向に反対向きに延設されて、前記ベースプレートに接続される一対の前記ステーを備えることを特徴とするホイールローダ。
【請求項8】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記車体には、
前記車体の後方下側を撮影する後方カメラと、
前記車体の左方下側を撮影する左方カメラと、
前記車体の右方下側を撮影する右方カメラとが設けられ、
前記前方カメラ、前記後方カメラ、前記左方カメラ、及び前記右方カメラそれぞれで撮影された映像を合成して、俯瞰映像を生成するコントローラを更に備えることを特徴とするホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前方を撮影するカメラを備えるホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自走可能な車体と、車体の前端に支持されて上下方向に動作する作業装置と、作業装置より後方で車体に支持されたキャブとを備えるホイールローダが知られている。また、作業装置の先端には、土砂を掘削及び運搬するためのバケットが取り付けられている。
【0003】
上記構成のホイールローダは、バケットを上下動させることによって、キャブに搭乗するオペレータの前方に死角が生じやすい。そこで、特許文献1には、前方を撮影するカメラをキャブの天面に固定したホイールローダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-057516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のホイールローダでは、カメラの位置が固定されているので、バケットを大型のものに換装した場合などに、バケットがカメラの撮影範囲に入って死角が生じる可能性がある。一方、換装後にカメラの撮影範囲にバケットが入るのを防ぐためにカメラを高い位置に固定すると、ホイールローダの上方に障害物がある場合に、カメラが障害物と干渉して破損するおそれがあり、ホイールローダの上方に障害物が存在する作業現場での作業が困難になるという新たな課題が生じる。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業状況に合わせて前方カメラを適切な位置に保持可能なホイールローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、自走可能な車体と、前記車体の前端に支持されて上下方向に動作する作業装置と、前記作業装置より後方で前記車体に支持されたキャブと、前記車体の前方下側を撮影する前方カメラと、前記キャブの天面に取り付けられて、前記前方カメラを保持するカメラブラケットとを備えるホイールローダにおいて、前記カメラブラケットは、前記キャブの天面に固定されたベースプレートと、前端にカメラ支持部を有し、後端が前記車体の幅方向に延びる軸周りに回動可能に前記ベースプレートに支持された支持フレームと、前記ベースプレートに対して傾斜した姿勢の前記支持フレームを支持するステーと、前記カメラ支持部に設けられ、前記支持フレームが姿勢変化しても前記前方カメラの光軸が同一の目標位置を向くように回動可能に前記前方カメラを保持するカメラホルダとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業状況に合わせて前方カメラを適切な位置に保持することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るホイールローダの側面図である。
図2】支持フレームが第1姿勢のときのカメラブラケットの斜視図及び側面図である。
図3】支持フレームが第2姿勢のときのカメラブラケットの斜視図及び側面図である。
図4】支持フレームが第3姿勢のときのカメラブラケットの斜視図及び側面図である。
図5】カメラホルダ、カバー、及びカメラ支持部の分解斜視図である。
図6】カメラ支持部にカメラホルダ及びカバーを取り付けた状態の側面図である。
図7】ホイールローダのハードウェア構成図である。
図8】支持フレームが第1姿勢のときのリンク機構の状態を示す図である。
図9】支持フレームが第2姿勢のときのリンク機構の状態を示す図である。
図10】支持フレームが第3姿勢のときのリンク機構の状態を示す図である。
図11】変形例2に係るカメラブラケットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る作業車両の一例であるホイールローダ10について説明する。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ホイールローダ10に搭乗して操作する作業者の視点を基準としている。
【0011】
図1は、本実施形態に係るホイールローダ10の側面図である。図1に示すように、ホイールローダ10は、前フレーム11と後フレーム12とで構成される。前フレーム11と後フレーム12とは、センタピン13によって、左右方向に回転可能に連結されている。また、前フレーム11と後フレーム12とは、左右一対のステアリングシリンダ(図示省略)によって接続されている。一対のステアリングシリンダは、油圧ポンプ(図示省略)から作動油の供給を受けて伸縮する。
【0012】
一対のステアリングシリンダのうち一方を伸長、他方を縮退させることにより、センタピン13を中心として前フレーム11が後フレーム12に対して左右方向に屈曲する。これにより、前フレーム11と後フレーム12との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。すなわち、このホイールローダ10は、センタピン13を中心に前フレーム11と後フレーム12とが屈曲されるアーティキュレート式である。
【0013】
前フレーム11は、左右一対の前タイヤ15L、15Rと、フロント作業機16とを支持している。フロント作業機16は、リフトアーム17と、バケット18と、ロッド19と、リフトアームシリンダ20Lと、バケットシリンダ20Bと、ベルクランク21とを有する。
【0014】
リフトアーム17は、前後方向に延設されている。より詳細には、リフトアーム17は、前端がバケット18に回動可能に連結され、後端が前フレーム11に回動可能に連結されている。そして、リフトアーム17は、リフトアームシリンダ20Lの伸縮によって上下方向に回動(俯仰動)する。
【0015】
バケット18は、荷物(土砂など)を収容可能な凹形状の空間を有する。また、バケット18は、リフトアーム17の前端において、回動(チルトまたはダンプ)可能に支持されている。より詳細には、バケット18は、バケットシリンダ20Bの伸縮に伴ってベルクランク21が回動することによって、上下方向に回動する。
【0016】
後フレーム12は、左右一対の後タイヤ22L、22Rと、キャブ23(運転室)とを支持している。キャブ23には、ホイールローダ10を操作する作業者が搭乗する内部空間が形成されている。キャブ23の内部には、作業者が着席するシート(図示省略)と、シートに着席した作業者が操作する操作装置(図示省略)とが配置されている。キャブ23に搭乗した作業者が操作装置を操作することによって、ホイールローダ10が走行し、フロント作業機16が動作する。
【0017】
前フレーム11、後フレーム12、前タイヤ15L、15R、後タイヤ22L、22R、は、車体の一例である。また、フロント作業機16は、車体の前端に支持されて上下方向に動作する作業装置の一例である。さらに、キャブ23は、フロント作業機16より後方において、車体に支持されている。
【0018】
ホイールローダ10は、前方カメラ24と、後方カメラ25(図7参照)と、左方カメラ26(図7参照)と、右方カメラ27(図7参照)とを備える。図1に示すように、前方カメラ24は、カメラブラケット30によってキャブ23の天面(上面)に取り付けられて、ホイールローダ10の前方下側を撮影する。また、図1では図示を省略するが、後方カメラ25、左方カメラ26、及び右方カメラ27は、車体に支持されて、ホイールローダ10の後方下側、左方下側、及び右方下側を撮影する。
【0019】
図2は、支持フレーム32が第1姿勢のときのカメラブラケット30の斜視図及び側面図である。図3は、支持フレーム32が第2姿勢のときのカメラブラケット30の斜視図及び側面図である。図4は、支持フレーム32が第3姿勢のときのカメラブラケット30の斜視図及び側面図である。図2図4に示すように、カメラブラケット30は、ベースプレート31と、支持フレーム32と、一対のステー33L、33Rと、カメラホルダ34(図5参照)と、カバー35とを主に備える。
【0020】
ベースプレート31は、キャブ23の上面に取り付けられている。また、ベースプレート31は、支持フレーム32及び一対のステー33L、33Rを支持する。ベースプレート31は、前プレート36と、後プレート37と、左プレート38と、右プレート39とで構成されている。前プレート36、後プレート37、左プレート38、及び右プレート39は、各々が長尺板状の部材である。
【0021】
前プレート36及び後プレート37は、前後方向に離間した位置において、各々が左右方向(車体の幅方向)に延設されている。左プレート38及び右プレート39は、左右方向に離間した位置において、各々が前後方向に延設されている。すなわち、ベースプレート31は、前プレート36、後プレート37、左プレート38、及び右プレート39を枠型に組み合わせて構成されている。
【0022】
支持フレーム32は、長尺棒状の部材である。支持フレーム32の後端は、後プレート37の左右方向の中央において、左右方向の延びるピン40(軸)周りに回動可能に支持されている。そして、支持フレーム32は、前端を上下方向に移動させるように、ピン40周りに回動する。
【0023】
また、支持フレーム32はカメラ支持部41(図5参照)と、ステーブラケット42aと、被固定ブラケット42bとを有する。カメラ支持部41は支持フレーム32の前端に配置される。ステーブラケット42aはカメラ支持部41より後方で且つ支持フレーム32の後端より前方(すなわち、前端及び後端の間)に配置される。被固定ブラケット42bはステーブラケット42aより後方で且つ支持フレーム32の後端より前方に配置される。カメラ支持部41、ステーブラケット42a、及び被固定ブラケット42bは、例えば、溶接などによって支持フレーム32に固定される。
【0024】
カメラ支持部41は、図5及び図6を参照して後述するように、カメラホルダ34を回動可能に支持する。ステーブラケット42a(固定位置)は、一対のステー33L、33Rの前端に左右方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられる。被固定ブラケット42bは、支持フレーム32が後述する第3姿勢(図4参照)のときに、前プレート36に設けられたボルト穴36aに、ボルト(図示省略)によって着脱可能に固定(締結)される被固定部の一例である。
【0025】
一対のステー33L、33Rは、長尺棒状の部材である。一対のステー33L、33Rの前端は、ボールジョイント43L、43Rを介して回動可能にステーブラケット42aに取り付けられている。また、ステー33Lの後端は、ボールジョイント44Lを介して、左プレート38に取り付けられたL字アングル45Lに回動可能に取り付けられている。さらに、ステー33Rの後端は、ボールジョイント44Rを介して、右プレート39に取り付けられたL字アングル45Rに回動可能に取り付けられている。
【0026】
すなわち、一対のステー33L、33Rは、ステーブラケット42a(支持フレーム32との接続位置)に接続された前端から、ベースプレート31に接続された後端に向かって、後方で且つ左右方向の反対向きに延設されている。より詳細には、ステー33Lは、前端から後端に向かって後左方に延設されている。また、ステー33Rは、前端から後端に向かって後右方に延設されている。
【0027】
一対のステー33L、33Rは、ベースプレート31に対して傾斜した姿勢の支持フレーム32を支持する。そして、一対のステー33L、33Rは、左プレート38及び右プレート39に対するL字アングル45L、45R(すなわち、一対のステー33L、33Rの後端)の取付位置を前後方向にずらす(すなわち、一対のステー33L、33Rの後端がベースプレート31上を移動する)ことによって、支持フレーム32の姿勢を変化させる。より詳細には、一対のステー33L、33Rは、支持フレーム32を、後述する第1姿勢(図2参照)と、後述する第2姿勢(図3参照)と、第3姿勢とに姿勢変化可能に支持している。
【0028】
左プレート38及び右プレート39には、左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた一対のボルト穴38a、39a(第1位置)と、ボルト穴38a、39aより後方において左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた一対のボルト穴38b、39b(第2位置)と、ボルト穴38b、39bより後方において前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた一対のボルト穴38c、39c(第3位置)とが形成されている。
【0029】
また、L字アングル45L、45Rのベースプレート31に対面する面には、左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた一対の貫通穴46L、46Rと、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた一対の貫通穴47L、47Rとが形成されている。本実施形態において、一対の貫通穴46L、46Rは丸穴であり、一対の貫通穴47L、47Rは前後方向に長い長穴である。
【0030】
そして、図2に示すように、L字アングル45L、45Rの一対の貫通穴46L、46Rに挿通したボルトを、左プレート38及び右プレート39それぞれの一対のボルト穴38a、39aに螺合することによって、支持フレーム32が第1姿勢となる。第1姿勢は、ホイールローダ10の載置面S(図1参照)に対する支持フレーム32のなす角度が最も大きい第1角度(例えば、30°)となる支持フレーム32の姿勢である。換言すれば、第1姿勢は、支持フレーム32の前端(すなわち、前方カメラ24)の位置が最も高くなる支持フレーム32の姿勢である。
【0031】
また、図3に示すように、L字アングル45L、45Rの一対の貫通穴46L、46Rに挿通したボルトを、左プレート38及び右プレート39それぞれの一対のボルト穴38b、39bに螺合することによって、支持フレーム32が第2姿勢となる。第2姿勢は、ホイールローダ10の載置面Sに対する支持フレーム32のなす角度が第1角度より小さい第2角度(例えば、15°)となる支持フレーム32の姿勢である。換言すれば、第2姿勢は、支持フレーム32の前端の位置が第1姿勢より低くなる支持フレーム32の姿勢である。
【0032】
さらに、図4に示すように、L字アングル45L、45Rの一対の貫通穴47L、47Rに挿通したボルトを、左プレート38及び右プレート39それぞれの一対のボルト穴38c、39cに螺合することによって、支持フレーム32が第3姿勢となる。第3姿勢は、ホイールローダ10の載置面Sに対する支持フレーム32のなす角度が第2角度よりさらに小さい第3角度(例えば、0°)となる支持フレーム32の姿勢である。換言すれば、第3姿勢は、支持フレーム32の前端の位置が第2姿勢より低くなる支持フレーム32の姿勢である。
【0033】
さらに換言すれば、第3姿勢は、支持フレーム32の延設方向が載置面Sと平行な支持フレーム32の姿勢(すなわち、支持フレーム32がベースプレート31に沿う姿勢)である。そして、第3姿勢の支持フレーム32は、被固定ブラケット42bに挿通したボルトを、前プレート36のボルト穴36aに螺合することによって、ベースプレート31に固定される。また、貫通穴47L、47Rを長穴にすることによって、カメラブラケット30の寸法公差を吸収して、貫通穴47L、47Rに挿通したボルトをボルト穴38c、39cに螺合することができる。但し、第3姿勢の支持フレーム32の延設方向は、載置面Sに平行であることに限定されない。
【0034】
図5は、カメラホルダ34、カバー35、及びカメラ支持部41の分解斜視図である。図6は、カメラ支持部41にカメラホルダ34及びカバー35を取り付けた状態の側面図である。
【0035】
図5に示すように、前方カメラ24は、ボルトなどによってカメラホルダ34に固定される。また、カメラホルダ34は、支持フレーム32の前端に取り付けられたカメラ支持部41に回動可能に支持されている。さらに、カバー35は、カメラホルダ34に固定されて、カメラホルダ34と共に回動する。カバー35は、前方カメラ24の周囲(上方、左方、及び右方)を覆い、前方カメラ24の撮影方向である前方下側を開放する。
【0036】
カメラホルダ34、カバー35、及びカメラ支持部41の左右両側それぞれには、ホイールローダ10の幅方向から側面視したときに互いに異なる位置に、共通穴34a、35a、41aと、第1穴34b、35b、41bと、第2穴34c、35c、41cと、第3穴34d、35d、41dとが形成されている。
【0037】
そして、図6(A)に示すように、支持フレーム32が第1姿勢のとき、カメラホルダ34、カバー35、及びカメラ支持部41は、共通穴34a、35a、41aに挿通されたボルト48L、48Rと、第1穴34b、35b、41bに挿通されたボルト49L、49Rとによって相互に締結される。
【0038】
また、図6(B)に示すように、支持フレーム32が第2姿勢のとき、カメラホルダ34、カバー35、及びカメラ支持部41は、共通穴34a、35a、41aに挿通されたボルト48L、48Rと、第2穴34c、35c、41cに挿通されたボルト49L、49Rとによって相互に締結される。
【0039】
さらに、図6(C)に示すように、支持フレーム32が第3姿勢のとき、カメラホルダ34、カバー35、及びカメラ支持部41は、共通穴34a、35a、41aに挿通されたボルト48L、48Rと、第3穴34d、35d、41dに挿通されたボルト49L、49Rとによって相互に締結される。
【0040】
このように、カメラホルダ34は、支持フレーム32の姿勢に合わせて、共通穴34a、35a、41aと、第1穴34b、35b、41b、第2穴34c、35c、41c、及び第3穴34d、35d、41dのうちの1つとを組み合わせて、カメラ支持部41に対して回動可能に支持される。その結果、図1に示すように、カメラホルダ34は、支持フレーム32の姿勢が変化しても、前方カメラ24の光軸L1、L2、L3(画角を中央に向けて延びる仮想線)が同一の目標位置Pを向くように、カメラ支持部41に支持され且つ前方カメラ24を保持する。
【0041】
目標位置Pは、例えば、ホイールローダ10の載置面S上において、前タイヤ15L、15Rより前方で、最も下方(換言すれば、前方)に配置したバケット18より後方の位置である。すなわち、支持フレーム32が第1姿勢のときの光軸L1、支持フレーム32が第2姿勢のときの光軸L2、支持フレーム32が第3姿勢のときの光軸L3は、異なる経路を通って目標位置Pに到達する。但し、目標位置Pは、図1の例に限定されず、前方カメラ24の撮影範囲内の任意の位置に設定可能である。
【0042】
支持フレーム32を第1姿勢すると、光軸L1が最も鉛直方向に近づく。これにより、大型のバケット18でも前方カメラ24の撮影範囲に入りにくい。一方、前方カメラ24が高い位置に保持されるので、上方に障害物がある作業環境(例えば、天井の低い屋内)でホイールローダ10を使用するのには適さない。
【0043】
また、支持フレーム32を第3姿勢にすると、光軸L3が最も水平方向に近づく。これにより、バケット18が前方カメラ24の撮影範囲に入りやすくなるものの、上方の障害物には干渉しにくい。そのため、上方に障害物がある作業環境でホイールローダ10を使用する場合、またはホイールローダ10を輸送する場合に適している。
【0044】
さらに、支持フレーム32の第2姿勢は、第1姿勢のときより上方の障害物に干渉しにくく、第3姿勢のときよりバケット18が前方カメラ24の撮影範囲に入りにくい。すなわち、第2姿勢は、第1姿勢及び第3姿勢のメリット及びデメリットをバランスさせた姿勢である。また、第2姿勢は、後述する俯瞰映像を生成するためのキャリブレーションの際に、前方カメラ24を保持する姿勢としても使用される。
【0045】
図7は、ホイールローダ10のハードウェア構成図である。ホイールローダ10は、ホイールローダ10のディスプレイを制御するコントローラ50を備える。図7に示すように、コントローラ50は、CPU51(Central Processing Unit)と、メモリ52とを有する。メモリ52は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。
【0046】
但し、コントローラ50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0047】
コントローラ50は、例えば、前方カメラ24、後方カメラ25、左方カメラ26、及び右方カメラ27それぞれで撮影した映像を合成して俯瞰映像を生成し、生成した俯瞰映像をキャブ23内に設置されたディスプレイ53に表示させる。俯瞰映像を生成する具体的な方法は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0048】
また、コントローラ50は、俯瞰映像を生成するためのキャリブレーションを実行する。キャリブレーションとは、適切な俯瞰映像を生成するために、第2姿勢の支持フレーム32に保持された前方カメラ24、後方カメラ25、左方カメラ26、及び右方カメラ27の撮影範囲が重複したり、一部が傾いたりするのを修正する作業である。キャリブレーションの具体的な方法は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0049】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0050】
上記の実施形態によれば、ホイールローダ10の作業状況(例えば、バケット18の大きさ、上方の障害物までの距離)に合わせて、支持フレーム32を姿勢変化させると共に、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34を回動させる。これにより、前方カメラ24の撮影範囲に死角が生じたり、上方の障害物と干渉するのを防止して、前方カメラ24を適切な位置に保持することができる。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、支持フレーム32の姿勢に拘わらず、前方カメラ24の光軸L1、L2、L3が同一の目標位置Pを向くので、支持フレーム32を第2姿勢にしてキャリブレーションを行えば、その後に支持フレーム32を第1姿勢または第3姿勢に姿勢変化させても、適切な俯瞰映像を生成することができる。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、一対のステー33L、33Rの後端を、キャブ23の天面(すなわち、ベースプレート31)に沿って前後方向に移動させるだけで、支持フレーム32を姿勢変化させることができる。その結果、キャブ23の天面よりさらに上方での高所作業を必要とせずに、支持フレーム32を姿勢変化させることができる。
【0053】
また、上記の実施形態によれば、共通穴34a、35a、41aと、第1穴34b、35b、41b、第2穴34c、35c、41c、及び第3穴34d、35d、41dのうちの1つとの組み合わせによって、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34(換言すれば、前方カメラ24)を回動させることができるので、シンプルな構成で前方カメラ24の光軸L1、L2、L3を同一の目標位置Pに向けることができる。
【0054】
また、上記の実施形態によれば、前方カメラ24の周囲をカバー35で覆うことによって、雨や塵埃などから前方カメラ24を保護することができる。さらに、上記の実施形態によれば、左右一対のステー33L、33Rで支持フレーム32を支持することによって、前方カメラ24を安定して保持することができる。
【0055】
[変形例1]
図8図10を参照して、変形例1に係るカメラブラケット30Aを説明する。図8は、支持フレーム32が第1姿勢のときのリンク機構60の状態を示す図である。図9は、支持フレーム32が第2姿勢のときのリンク機構60の状態を示す図である。図10は、支持フレーム32が第3姿勢のときのリンク機構60の状態を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0056】
変形例1に係るカメラブラケット30Aにおいて、カメラホルダ34及びカバー35は、共通穴34a、35a、41aに挿通されて左右方向に延びるピン54を介して、カメラ支持部41に回動可能に支持されている。一方、変形例1では、第1穴34b、35b、41b、第2穴34c、35c、41c、及び第3穴34d、35d、41dは省略されている。
【0057】
また、変形例1に係るカメラブラケット30Aは、支持フレーム32の姿勢変化に連動して、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34を回動させるリンク機構60を備える。より詳細には、リンク機構60は支持フレーム32が上または下方向に回動(言い換えると、カメラブラケット30Aを側面視したときに、支持フレーム32が時計回り及び反時計回りの一方に回動)するのに連動して、カメラホルダ34を時計回り及び反時計回りの他方(すなわち、支持フレーム32の回動方向とは反対方向)に回動させる。リンク機構60は、例えば、長尺棒状のリンク棒61、62、63と、ピン64、65、66、67とを主に備える。
【0058】
リンク棒61は、支持フレーム32の下方において、前後方向に延設されている。また、リンク棒61の後端は、ピン40の下方において左右方向に延びるピン64によって、ベースプレート31に回動可能に支持されている。さらに、リンク棒61の前端は、左右方向に延びるピン65によって、リンク棒62の下端及びリンク棒63の後端に回動可能に連結されている。
【0059】
リンク棒62は、ベースプレート31及び支持フレーム32の間において、上下方向に延設されている。また、リンク棒62の下端は、左右方向に延びるピン65によって、リンク棒61の前端及びリンク棒63の後端に回動可能に連結されている。さらに、支持フレーム32の中間位置において左右方向に延びるピン66によって、リンク棒62の上端は支持フレーム32に回動可能に支持されている。
【0060】
リンク棒63は、支持フレーム32の下方において、前後方向に延設されている。また、左右方向に延びるピン65によって、リンク棒63の後端はリンク棒61の前端及びリンク棒62の下端に回動可能に連結されている。さらに、ピン54の下方において左右方向に延びるピン67によって、リンク棒63の前端はカメラホルダ34に回動可能に支持されている。
【0061】
図8図10に示すように、支持フレーム32の姿勢に拘わらず、ピン40、64は上下方向に延びる仮想線L4上に位置し、ピン65、66は上下方向に延びる仮想線L5上に位置し、ピン40、66は支持フレーム32と平行な仮想線L6上に位置し、ピン64、65は支持フレーム32と平行な仮想線L7上に位置する。すなわち、支持フレーム32の姿勢に拘わらず、仮想線L4、L5は常に平行であり、仮想線L6、L7は常に平行である。また、ピン40、64間の距離Aと、ピン65、66間の距離Bとは同一に設定され、ピン40、66間の距離Cと、ピン64、65間の距離Dとは同一に設定されている。すなわち、ピン40、64、65、66の間には、平行リンクが形成されている。
【0062】
一方、図8図10に示すように、ピン65、66間の距離Bは、ピン54、67間の距離Eより長く設定されている。さらに、ピン54、66間の距離Fは、ピン65、67間の距離Gより長く設定されている。すなわち、ピン54、65、66、67の間には、非平行リンクが形成されている。
【0063】
これにより、支持フレーム32が第1姿勢から第2姿勢を経て第3姿勢に姿勢変化(すなわち、図8図10で反時計回りに回動)すると、リンク棒63がカメラホルダ34を前方に押して、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34を、ピン54周りに時計回りに回動させる。
【0064】
一方、支持フレーム32が第3姿勢から第2姿勢を経て第1姿勢に姿勢変化(すなわち、図8図10で時計回りに回動)すると、リンク棒63がカメラホルダ34を後方に引っ張って、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34を、ピン54周りに反時計回りに回動させる。
【0065】
変形例1によれば、前方カメラ24の光軸L1、L2、L3が同一の目標位置Pを向く非平行リンクを設定することで、支持フレーム32を姿勢変化させるだけで、カメラ支持部41に対してカメラホルダ34を回動させることができる。これにより、ホイールローダ10の作業状況に合わせて、前方カメラ24を適切な位置に移動させる作業が簡素化される。すなわち、前方カメラ24の光軸L1、L2、L3が同一の目標位置Pに向ける具体的な構成は、上記の実施形態の例に限定されない。
【0066】
[変形例2]
図11を参照して、変形例2に係るカメラブラケット30Bを説明する。図11は、変形例2に係るカメラブラケット30Bの側面図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例2に係るカメラブラケット30Bは、支持フレーム32と一対のステー70L、70Rとの接続関係が上記の実施形態と相違する。なお、ステー70L、70Rは、左右対称に延設されている以外は構成が共通するので、以下、ステー70Lについて説明する。
【0067】
図11に示すように、変形例2に係るステー70Lの一端は、ベースプレート31の前端の固定位置において、左右方向に延びるピン71によって回動可能に支持されている。また、ステー70Lはその中間部(換言すれば、前上方に延設されるステー70Lの上端より低い位置)に中間取付部72Lを有する。図11(A)に示すように、支持フレーム32が第1姿勢のときには、ステー70Lの他端がステーブラケット42aに回動可能に取り付けられる。また、図11(B)に示すように、支持フレーム32が第2姿勢のときには、中間取付部72Lがステーブラケット42aに回動可能に取り付けられる。すなわち、支持フレーム32は、ステーブラケット42aに取り付けられるステー70Lの位置(他端、中間取付部72L)が変化することにより姿勢変化する。
【0068】
さらに、図11(C)に示すように、支持フレーム32が第3姿勢のときには、ステーブラケット42aとステー70Lとの接続が解除される。そして、載置面Sと平行に延設された支持フレーム32の被固定ブラケット42bがベースプレート31に固定される。また、ステー70Lの他端がベースプレート31に設けられた固定部73に固定される。
【0069】
変形例2によっても支持フレーム32を姿勢変化させることができる。すなわち、支持フレーム32を姿勢変化させる具体的な構成は、上記の実施形態の例に限定されない。
【0070】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 ホイールローダ
11 前フレーム
12 後フレーム
13 センタピン
15L,15R 前タイヤ
16 フロント作業機(作業装置)
17 リフトアーム
18 バケット
19 ロッド
20B バケットシリンダ
20L リフトアームシリンダ
21 ベルクランク
22L,22R 後タイヤ
23 キャブ
24 前方カメラ
25 後方カメラ
26 左方カメラ
27 右方カメラ
30,30A,30B カメラブラケット
31 ベースプレート
32 支持フレーム
33L,33R,70L,70R ステー
34 カメラホルダ
34a,35a,41a 共通穴
34b,35b,41b 第1穴
34c,35c,41c 第2穴
34d,35d,41d 第3穴
35 カバー
41 カメラ支持部
42a ステーブラケット
42b 被固定ブラケット(被固定部)
50 コントローラ
51 CPU
52 メモリ
53 ディスプレイ
60 リンク機構
61,62,63 リンク棒
72L 中間取付部
73 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11