IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙クレシア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ウェットティシュー 図1
  • 特開-ウェットティシュー 図2
  • 特開-ウェットティシュー 図3
  • 特開-ウェットティシュー 図4
  • 特開-ウェットティシュー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027621
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ウェットティシュー
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/12 20060101AFI20240222BHJP
   A47L 13/17 20060101ALI20240222BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
D21H19/12
A47L13/17 A
A47K7/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130556
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3B074
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA04
3B074AB01
3B074CC03
4L055AA01
4L055AF09
4L055BE10
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューを提供する。
【解決手段】少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させた、ウェットティシューであって、シートの、湿潤時における縦方向及び横方向の引張強度が、いずれも2.2N/25mm以上であり、シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際のシートの厚みTmが160μm以上440μm以下であることを特徴とする、ウェットティシューを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させた、ウェットティシューであって、
前記シートの、湿潤時における縦方向及び横方向の引張強度が、いずれも2.2N/25mm以上であり、
前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みTmが160μm以上440μm以下であることを特徴とする、ウェットティシュー。
【請求項2】
前記シートに、前記KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みをT0としたときに、(T0-Tm)/T0が0.40以上であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【請求項3】
前記シートの絶乾状態における坪量が20g/m2以上50g/m2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【請求項4】
前記シートに、前記KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、400μm以上800μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【請求項5】
前記シートへの前記薬液の含浸倍率が、2倍以上4倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製のシートに薬液を含浸させたウェットティシューに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティシュー製品は、一般的に不織布からなるシートに薬液を含浸させ、製造される。
【0003】
シートとして広く用いられるスパンレース不織布は、レーヨンなどの木質由来の繊維の他に、ポリエステルやポリオレフィン等の石油由来の化学繊維を多く含むため、生分解性を有さないものがほとんどである。
【0004】
しかし、最近は環境対応のために、基材に紙を用いたウェットティシューや、トイレクリーナーシートのような、紙に付与した薬品と薬液中の成分との相互作用により強度を発現させる水解紙のウェットティシューも市場に出回っている。
【0005】
基材に紙を用いるウェットティシューの文献として、例えば特許文献1には、坪量10~30g/m2の湿式パルプシートを複数枚積層した積層物100重量部に対してポリオール類を5~40重量部含有し、エンボス加工した積層シートからなる清拭シートが開示されている。
また、水解紙のウェットティシューの文献として、特許文献2には、セルロース系繊維を80質量%以上含む坪量20~120g/m2の基材シートに液体洗浄性組成物を含浸させてなり、該液体洗浄性組成物が、有機酸0.01~0.50質量%、界面活性剤0.1~1.0質量%及び2価以上の金属イオン化合物0.5~5.0質量%を含有する除菌性清掃物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-332777号公報
【特許文献2】特開2017-110323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のウェットティシューに用いる不織布としては、コットンやセルロース等の木質素材のみで構成されるスパンレース不織布や、レーヨンと組みあわせる化学繊維にポリ乳酸等を用い、生分解性を付与した不織布もある。しかし、これらは経済性に劣り、汎用的に使われるウェットティシュー用の不織布としては高価である。このように従来製品において環境対応と経済性の両立は困難であった。
【0008】
ここで、紙は木質素材であるパルプからでき、経済性に優れた生分性解の素材である。しかしながら特許文献1のように、ウェットティシューの基材に紙を用いる場合、薬液を含浸させた際に嵩が下がって風合いが劣ること、強度が低下してシートが破れるなどの課題があった。薬液の含浸量を少なくすると嵩の低下を抑制することができるが、十分な湿潤性を付与できず、十分に清拭ができなかったり、保管の際に乾燥したりしてしまう問題がある。
また、シートにエンボスを付与することで嵩高さを得る方法もあるが、専用の設備が必要となり製造工程も増えるため経済性に劣る。
【0009】
さらに、特許文献2のような、紙に付与した薬品と薬液中の成分との相互作用により強度を発現させる水解紙のウェットティシューの場合、使用する薬液が限定され、使用用途が限られる。また、十分な強度を得るためには水解紙の坪量も高くする必要があり、経済性にも劣る。
【0010】
このように、経済性に優れ、環境負荷の小さい紙をウェットティシューのシートに用いる場合、薬液処方や製造設備を制限せずに風合いや強度を両立することは困難であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は鋭意検討を行い、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させた、ウェットティシューにおいて、シートの湿潤時における縦方向及び横方向の引張強度、及びシートに所定の荷重をかけた際のシートの厚みの、それぞれの数値範囲を所定の範囲内とすることで、薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1)本発明の第1の態様は、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させた、ウェットティシューであって、前記シートの、湿潤時における縦方向及び横方向の引張強度が、いずれも2.2N/25mm以上であり、前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みTmが160μm以上440μm以下であることを特徴とする、ウェットティシューである。
【0014】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートに、前記KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みをT0としたときに、(T0-Tm)/T0が0.40以上であることを特徴とするものである。
【0015】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートの絶乾状態における坪量が20g/m2以上50g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートに、前記KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、400μm以上800μm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートへの前記薬液の含浸倍率が、2倍以上4倍以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】シートのマイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。
図2図1(b)の線分S1-S2における凹凸の高さ(測定断面曲線S)プロファイルの画像である。
図3図2の(測定)断面曲線Sを処理した粗さ曲線Wの画像である。
図4図3からのシートの抄紙機由来の凹凸の高さの求め方を示す図である。
図5】シートの抄紙工程において、抄紙機由来の凹凸を付与する箇所の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0021】
<ウェットティシュー>
本実施形態に係るウェットティシューは、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させた、ウェットティシューである。
シートが紙製であることにより、合成繊維を含まないことから、生分解性に優れており、かつ、経済的なウェットティシューとすることができる。なお、シートは1プライであり、複数のシートを積層しないことが好ましい。
【0022】
シートに用いるパルプ繊維は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができる。その中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
【0023】
また、シートに含浸させる薬液は、通常ウェットティシューに用いられるアルコール、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤等を配合すればよい。
このとき、シートへの薬液の含浸倍率が、2倍以上4倍以下であることが好ましく、2.3倍以上3.5倍以下であることがより好ましく、2.5倍以上3.2倍以下であることが更に好ましい。含浸倍率が2倍未満であると薬液が十分でないためウェットティシューの拭き取り性が劣り、4倍を超えるとウェットティシューがべた付いて風合いが劣る。 含浸倍率の測定方法は、まずウェットティシューの面積及び重量を測定し、その後、ウェットティシューをアルコール溶液で洗浄し、絶乾させる。絶乾後、23℃、50%RH環境下で調湿し、シートの重量を測定する。そして、紙1gに対して含浸された薬液の重量を含浸倍率とする。
【0024】
なお、後述するシートの湿潤時の引張強度を適正化しやすくするために、シートは水解性を有さないことが好ましい。また、製造時においてエンボスロールのような設備に限定されず、かつ、エンボスによるシート強度の低下がなく、シートの湿潤時の引張強度を適正化しやすいため、シートはエンボス加工による凹凸を表面及び裏面に有さないことが好ましい。
【0025】
(シートの物性)
シートの絶乾状態における坪量は20g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、25g/m2以上45g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上40g/m2以下であることが更に好ましい。坪量が20g/m2未満であるとシートが破れやすくなり、50g/m2を超えるとシートがごわついて拭き取りにくい。坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0026】
また、本実施形態に係るウェットティシュー(シート)の湿潤時の縦方向及び横方向の引張強度は、いずれも2.2N/25mm以上であり、2.4N/25mm以上であることが好ましく、2.6N/25mm以上であることがより好ましい。
【0027】
より具体的には、本実施形態に係るウェットティシューの湿潤時の縦方向の引張強度は、2.9N/25mm以上6.9N/25mm以下であることが好ましい。また、ウェットティシューの湿潤時の横方向の引張強度は2.2N/25mm以上3.7N/25mm以下であることが好ましい。縦方向の引張強度が2.9N/25mm未満であるか、横方向の引張強度が2.2N/25mm未満であると、ウェットティシュー(シート)が破れやすい。縦方向の引張強度が6.9N/25mmを超えるか、横方向の引張強度が3.7N/25mmを超えると、ウェットティシュー(シート)が風合いに劣る。
なお、ウェットティシューの湿潤時の縦方向の引張強度は、3.4N/25mm以上6.4N/25mm以下であることがより好ましく、3.9N/25mm以上5.9N/25mm以下であることが更に好ましい。また、ウェットティシューの湿潤時の横方向の引張強度は、2.4N/25mm以上3.5N/25mm以下であることがより好ましく、2.6N/25mm以上3.2N/25mm以下であることが更に好ましい。
【0028】
湿潤時の各々の方向の引張強度は、ウェットティシューを1枚取り出し、幅25mmに裁断後、引張試験機によって、つかみ幅:100mm、伸張速度:300±5mm/minで測定し、10回の平均値とする。
なお、シートの湿潤時の各々の方向の引張強度は、抄紙工程における湿潤紙力剤の添加といった一般的な方法で調整することができる。また、シートにおける縦方向及び横方向の調整も同様に、繊維配向により調整することができる。
【0029】
また、シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cm2の荷重をかけた際のシートの厚みTmが160μm以上440μm以下であり、200μm以上400μm以下であることが好ましく、250μm以上350μm以下であることがより好ましい。Tmが160μm未満であると、シートを手に持った際の風合いに劣り、440μmを超えると、シートがごわついて拭き取りにくくなる。
【0030】
さらに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際のシートの厚みをT0としたときに、(T0-Tm)/T0が0.40以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましい。数値が0.40未満であると、シートを手に持った際の風合いに劣る。
【0031】
なお、上記のT0は400μm以上800μm以下であることが好ましく、500μm以上780μm以下であることがより好ましく、600μm以上750μm以下であることが更に好ましい。T0が400μm未満であると、シートを手に持った際の風合いに劣り、800μmを超えると、シートがごわついて拭き取りにくくなる。
【0032】
そして、上記の厚みに関連して、KES圧縮試験機のWC(圧縮仕事量)が0.15gf・cm/cm2以上0.65gf・cm/cm2以下であることが好ましい。WCが0.15gf・cm/cm2未満であるとシートの風合いが劣り、0.65gf・cm/cm2を超えると拭き取り時にシートを介した対象物への力が伝わりにくく、拭き取りにくい。
なお、WC(圧縮仕事量)は、0.25gf・cm/cm2以上0.55gf・cm/cm2以下であることがより好ましく、0.35gf・cm/cm2以上0.50gf・cm/cm2以下であることが更に好ましい。
【0033】
厚み及びWCは、KES-G5自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。
2cm2の加圧板と受圧板の間に、薬液を含浸させたシート(ウェットティシュー)を140mm×200mmの大きさにカットしたサンプルを設置し、0.020cm/secの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力と、その時のサンプルの厚みを測定する。
0は圧力が0.5gf/cm2におけるサンプルの厚み(μm)であり、Tmは圧力が50gf/cm2におけるサンプルの厚み(μm)である。T0及びTmの値は、10回の測定を行った平均値として算出した値である。また、WCは圧縮仕事量であり、同様に10回の平均値を算出する。
【0034】
なお、シートの表面にはエンボスとは異なる、抄紙機由来の凹凸のパターンを有することが好ましく、また、凸部と凹部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であることが好ましい。
有する凹凸のパターンの高さが上記の数値範囲内であることにより、上述したTmやT0といった厚みやWCを適正化しやすい。なお、凹凸のパターンの高さは、130μm以上270μm以下であることがより好ましく、150μm以上250μm以下であることが更に好ましい。また、抄紙機由来の凹凸は、クレープ率やウェットクレープなど一般的な方法で調整することができる。
【0035】
シートの抄紙機由来の凹凸の高さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。又、測定条件は、測定倍率12倍、視野面積24mm×18mmで測定する。測定倍率と視野面積は、求める凹凸の大きさによって、適宜変更してもよい。なお、3次元測定機や輪郭形状測定機は、点や線で測定されるが、ワンショット3D測定の場合、面全体を測定するため、全体の形状やうねりがわかりやすい。
【0036】
図1から図4を参照して、抄紙機由来の凹凸の高さの具体的な測定方法について説明する。なお、測定は薬液を含浸させたシート(ウェットティシュー)に対して行う。
図1(a)は、マイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。図1の上下方向がシートの横方向、左右方向がシートの縦方向となる。そして、図1(b)に示すように、高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像の縦方向に任意の位置で、縦方向に平行な線分S1-S2を引くと、図2に示す凹凸の高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。なお、個々の凹凸は縦方向に沿って延びており、線分S1-S2はこれら複数の凹凸を横断するので、X-Y平面画像の縦方向のどの位置で線分S1-S2を引いても、凹凸の高さプロファイルはほとんど変わらない。
【0037】
ここで、高さプロファイルは、実際のシート表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(シート表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高さの算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、図2の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした図3の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。
【0038】
得られた粗さ曲線Wについて、図4に示すように、凸部と隣接する凹部の縦軸の差を10箇所(H1~H10)測定し、平均を凹凸の高さ(Rc)とする。また、高さプロファイル1画像につき線分S1-S2を3本設定し、図3の粗さ曲線Wを3つ得る。そして、これら3つの粗さ曲線WそれぞれにつきRcを求める。試料の画像を3枚用意し、合計9個のデータ(Rc)を平均して求めた、凹凸の高さを採用する。
【0039】
(ウェットティシューの製造方法)
本実施形態に係るウェットティシュー(シート)の製造方法としては、通常のウェットティシュー製品等と同様の工程で製造することができる。具体的には、(1)抄紙及びクレーピング、(2)裁断、(3)折り畳み、積層及び薬液含浸、といった工程によって、ウェットティシュー(シート)の積層体を得ることができる。なお、積層体ではなくボトルに詰めるロール状の製品である場合は、裁断せずにそのまま巻き取りの工程を経る。また、薬液含浸のタイミングは積層の前後どちらでもよく、積層と含浸を同時に行ってもよい。
【0040】
抄紙工程では、上述したように抄紙工程由来の凹凸のパターンがシートに施されることが好ましい。この凹凸のパターンを有することにより、シートのTm、T0といった厚みやWCを適正化しやすい。なお、抄紙工程由来とは、シートの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤー12の入口までの間に付与されることを意味する。具体的には、図5に示す抄紙工程の一部において、脱水ロール11とヤンキードライヤー12の間に配置される、ベルトプレス部10にて凹凸を付与することができる。ベルトプレス部10では、湿紙14と凹凸ベルト13(凹凸ベルト13は、ベルトプレス部10とヤンキードライヤー12をループしている)を一緒にプレスすることで、湿紙14に凹凸のパターンを付与することができる。
【0041】
(加工方式、包装形態)
その後、ウェットティシュー(シート)の積層体(又は巻き取ったもの)をウェットティシューとして包装する。なお、積層や包装の形態は、四つ折り、六つ折り、ポップアップ形式、ボトル形式等の通常ウェットティシューに用いられる積層や包装の形態を特に制限なく適用することができる。
上記の製造方法により製造されるシートの一辺の寸法は80mm以上300mm以下であることが好ましく、120mm以上220mm以下であることがより好ましい。なお、上記の抄紙工程では広幅(例えば1000mm)のまま抄紙し、加工機において10丁取り(例えば幅100mm)にカットすることもある。
【0042】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューを提供することができる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
表1~表3に示す各条件において、実施例1~17及び比較例1~10のそれぞれのウェットティシューを作製し、以下の評価を行った。なお、表3における比較例9のウェットティシューは紙(パルプ)ではなく、不織布(レーヨン/PET)から作製し、比較例10のウェットティシューは、不織布(レーヨン100%)から作製した。また、下記の評価以外の各パラメータは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
なお、表1~3における「湿潤強度」は、各実施例及び各比較例のシートの縦方向及び横方向のそれぞれの湿潤時の引張強度を測定し、低い方の値(繊維配向により、実質的には横方向の値となる)を採用したものである。
【0045】
1.風合い
モニター30名により、ウェットティシュー(シート)の風合いを4段階で評価した。評価は、風合いに優れるものを◎、ある程度風合いがあるものを○、風合いにやや劣るものを△、風合いに劣るものを×とした。
【0046】
2.拭き取り性
モニター30名により、ウェットティシュー(シート)で汚れを拭き取ったときのウェットティシューの拭き取り性を4段階で評価した。評価は、汚れを良く拭き取れるものを◎、ある程度拭き取れるものを○、あまり拭き取れないものを△、ほとんど拭き取れないものを×とした。
【0047】
3.破れにくさ
モニター30名により、ウェットティシューの使用時におけるウェットティシュー(シート)の強度の高さを4段階で評価した。評価は、使用上において強度(破れにくさ)が問題ないものを◎、実用上問題ないものを○、やや破れが生じるものを△、実用に耐えないものを×とした。
【0048】
4.生分解性
ウェットティシューのシートの生分解性を2段階で評価した。評価は、ウェットティシューのシート(原反)において、パルプ等の木質繊維のみを使用しているものを◎、生分解性でない合成繊維を含むものを×とした。
【0049】
5.経済性
一般的な紙(坪量38g/m2)を基準として、ウェットティシューの経済性(コストパフォーマンス)を4段階で相対評価した。評価は、拭き取り等の使用において紙と比較して非常に経済的なものを◎、経済的なものを○、少し経済的でないものを△、非常に経済的でないものを×とした。
【0050】
表1及び2に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表3に、各比較例の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
以上より、本実施例によれば薬液を含浸するシートに、生分解性及び経済性に優れる紙を用いても、風合いが良く、拭き取り性に優れ、かつ破れにくいウェットティシューが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
10 ベルトプレス部
11 脱水ロール
12 ヤンキードライヤー
13 凹凸ベルト
14 湿紙
図1
図2
図3
図4
図5