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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027632
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240222BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240222BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240222BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240222BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240222BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/013
C08L101/00
C08L7/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130578
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆太郎
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BB11
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC33
4J002AA013
4J002AC012
4J002AC032
4J002AC062
4J002AC081
4J002AF023
4J002BA013
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD023
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性、ドライ性能、ウェット性能および雪上性能を両立するようにしたゴム組成物を提供する。
【解決手段】 SBRと任意に他のジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部、白色充填剤20~150質量部、熱可塑性樹脂と可塑剤を合計で20~100質量部含み、前記合計に対し熱可塑性樹脂が65質量%以上、含有量が最多のジエン系ゴムのTgと熱可塑性樹脂のTgの差が100℃以上、ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線の半値幅をσbf、tanδのピーク温度より90℃高い温度のtanδをtanδbf、ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥した処理後ゴム組成物のtanδの半値幅をσaf、tanδのピーク温度より90℃高い温度のtanδをtanδafとするとき、|σbf-σaf|≧4および|tanδbf-tanδaf|≦0.02を満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムと任意に他のジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部に、白色充填剤を20~150質量部、熱可塑性樹脂と任意に可塑剤を合計で20質量部以上100質量部以下含むゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂と可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%以上であり、前記ゴム成分の中で含有量が最多の、スチレンブタジエンゴムまたは他のジエン系ゴムのガラス転移温度Tgp(℃)と前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgr(℃)の差Tgr-Tgpが100℃以上であり、前記ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσbf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとし、前記ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσaf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとするとき、以下の関係式(1)および(2)を満たすことを特徴とするゴム組成物。
|σbf-σaf|≧4 (1)
|tanδbf-tanδaf|≦0.02 (2)
【請求項2】
前記他のジエン系ゴムが、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴムから選ばれ、前記ゴム成分100質量%中、前記イソプレン系ゴムが0~15質量%、前記ブタジエンゴムが5~45質量%、前記スチレンブタジエンゴムが40~95質量%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記スチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの末端が官能基で変性されていることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記Tgrが40~120℃であり、前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を両立するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冬用タイヤには、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を高いレベルで兼備することが求められる。特許文献1は、耐摩耗性、低転がり抵抗性およびウェット性能を改良するタイヤトレッド用ゴム組成物として、ゴム組成物に芳香族変性テルペン樹脂およびオイルを配合することを提案している。
【0003】
しかし、近年の冬用タイヤには、耐摩耗性、低転がり抵抗性およびウェット性能のバランスを、特許文献1に記載されたレベルより高いレベルで両立し、かつ雪上性能を優れたものにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-166864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を従来レベル以上に、より高いレベルで両立するようにしたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムと任意に他のジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部に、白色充填剤を20~150質量部、熱可塑性樹脂と任意に可塑剤を合計で20質量部以上100質量部以下含むゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂と可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%以上であり、前記ゴム成分の中で含有量が最多の、スチレンブタジエンゴムまたは他のジエン系ゴムのガラス転移温度Tgp(℃)と前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgr(℃)の差Tgr-Tgpが100℃以上であり、前記ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσbf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとし、前記ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσaf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとするとき、以下の関係式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
|σbf-σaf|≧4 (1)
|tanδbf-tanδaf|≦0.02 (2)
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム、他のジエン系ゴムおよび白色充填剤に、熱可塑性樹脂および可塑剤を特定の配合割合で含み、その含有量が最多の、ジエン系ゴムと熱可塑性樹脂のガラス転移温度間の差が100℃以上、ゴム組成物とそれをトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物との間で、tanδの温度依存性曲線の半値幅σ、およびtanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度でのtanδが特定の関係を満たすようにしたので、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を従来レベル以上に、高いレベルで両立することができる。
【0008】
前記他のジエン系ゴムは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴムから選ばれ、前記ゴム成分100質量%中、前記イソプレン系ゴムが0~15質量%、前記ブタジエンゴムが5~45質量%、前記スチレンブタジエンゴムが40~95質量%であることが好ましい。また、前記スチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの末端が官能基で変性されているとよい。
【0009】
前記熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度Tgrが40℃~120℃で、さらに前記熱可塑性樹脂は、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであるとよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、スチレンブタジエンゴムと任意に他のジエン系ゴムを含む。スチレンブタジエンゴムは1種類を単独で含有しても、2種類以上のブレンドとして含有してもよい。スチレンブタジエンゴムを含むことにより、引張破断強度を大きくし耐摩耗性を高くすると共に、シリカの分散性を良化することにより、0℃のtanδを大きくしウェット性能を優れたものにすることができる。
【0011】
スチレンブタジエンゴムは、ガラス転移温度(以下、「Tg」と記載することがある。)が好ましくは-55℃以下、より好ましくは-80℃~-58℃、さらに好ましくは-75℃~-60℃であるとよい。スチレンブタジエンゴムのTgを-55℃以下にすることにより、耐摩耗性を向上することができ好ましい。スチレンブタジエンゴムのTgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により得られたサーモグラムから転移域の中点の温度として測定することができる。また、スチレンブタジエンゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるTgとする。
【0012】
スチレンブタジエンゴムは、スチレン含量が、特に限定されるものではないが、好ましくは5~45質量%、より好ましくは8~42質量%であるとよい。スチレン含量をこのような範囲内にすることにより、耐摩耗性が良好になり好ましい。
【0013】
また、スチレンブタジエンゴムのビニル含量は、特に限定されるものではないが、好ましくは5~60%、より好ましくは10~55%であるとよい。ビニル含量をこのような範囲内にすることにより、ドライグリップ性能を優れたものにすることができ、好ましい。スチレンブタジエンゴム中のスチレン含量およびビニル含量は、H-NMRにより測定することができる。
【0014】
スチレンブタジエンゴムは、その少なくとも1つの末端が官能基で変性されているとよく、シリカの分散性を良好にし、タイヤの転がり抵抗をより小さくすることができる。官能基として、例えばエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基等が挙げられ、なかでもポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有するものが好ましく挙げられる。ポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有する官能基を有することにより、シリカの分散性を良好にし、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を優れたものにすることができる。
【0015】
スチレンブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは40~100質量%、さらに好ましくは40~95質量%、特に好ましくは60~90質量%であるとよい。スチレンブタジエンゴムの含有量は、1種類が単独で含有されるときはそのスチレンブタジエンゴムの含有量、2種類以上のブレンドとして含有されるときはそれらのスチレンブタジエンゴムの合計量である。スチレンブタジエンゴムを55質量%以上含有することにより、シリカの分散性を良好にして、耐摩耗性、ウェット性能および雪上性能を向上することができる。
【0016】
ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを任意に含むことができる。他のジエン系ゴムとして、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、およびこれらゴムに官能基を付した変性ゴム等を例示することができる。これら他のジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0017】
ゴム組成物は、天然ゴム、イソプレンゴムなどのイソプレン系ゴムを配合することにより、耐摩耗性が良好になり好ましい。イソプレン系ゴムは、ゴム成分100質量%中、好ましくは0~15質量%、より好ましくは5~10質量%であるとよい。イソプレン系ゴムとして、ゴム組成物に通常使用される天然ゴムなどを用いるとよい。
【0018】
ゴム組成物は、ブタジエンゴムを配合することにより、耐摩耗性および雪上性能が良好になり好ましい。ブタジエンゴムは、ゴム成分100質量%中、好ましくは5~45質量%、より好ましくは10~30質量%であるとよい。ブタジエンゴムとして、ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよい。
【0019】
ゴム組成物は、ゴム成分に白色充填剤を配合することにより、ウェット性能を向上させることができる。白色充填剤として、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを挙げることができる。これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。なかでもシリカが好ましく、ウェット性能および低発熱性をより優れたものにすることができる。白色充填剤は、ゴム成分100質量部に、20~150質量部、好ましくは40~150質量部、より好ましくは60~140質量部配合するとよい。白色充填剤を20質量部以上配合することにより、ウェット性能および耐摩耗性をより優れたものにすることができる。また、150質量部以下配合することにより、耐摩耗性および低転がり抵抗性を優れたものにすることができる。
【0020】
シリカとして、ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤又はポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
【0021】
また、シリカとともに、シランカップリング剤を配合することによりシリカの分散性を向上し、ウェット性能および低発熱性がさらに改善されるので好ましい。シランカップリング剤の種類は、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びエボニック社製のVP Si363等、特開2006-249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物等、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0022】
シランカップリング剤は、シリカの質量に対し好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%配合するとよい。シランカップリング剤がシリカ質量の3質量%以上にすると、シリカの分散性を向上するには有利である。また、シランカップリング剤を20質量%以下にすると、ゴム成分がゲル化するのを抑制して所望の効果を得ることができる。
【0023】
ゴム組成物は、白色充填剤以外の他の充填剤を配合することにより、ゴム組成物の強度を高くし、タイヤ耐久性を確保することができる。他の充填剤として、例えばカーボンブラック、マイカ、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
【0024】
なかでもカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を優れたものにすることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
【0025】
ゴム組成物は、特定の熱可塑性樹脂と任意に可塑剤を配合することにより、その動的粘弾性の温度依存性を調節することができる。熱可塑性樹脂および可塑剤の合計は、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上100質量部以下である。すなわち、可塑剤を含有せずに熱可塑性樹脂を20質量部以上100質量部以下配合してもよく、可塑剤を含有し熱可塑性樹脂および可塑剤を合計で20質量部以上100質量部以下配合してもよい。熱可塑性樹脂および可塑剤をこのような範囲内で配合することにより、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を両立することができる。熱可塑性樹脂および可塑剤の合計は、好ましくは25質量部以上80質量部以下、より好ましくは30質量部以上60質量部以下であるとよい。
【0026】
ゴム組成物は、熱可塑性樹脂と可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%以上である。熱可塑性樹脂を65質量%以上にすることにより、耐摩耗性を向上することができる。熱可塑性樹脂と可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合は、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下であるとよい。
【0027】
熱可塑性樹脂は、ゴム組成物へ通常配合する樹脂であり、ゴム組成物に粘着性を付与する作用を有する。熱可塑性樹脂として、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであるとよい。例えば、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂などの天然樹脂、C5成分、C9成分からなる石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、それら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂でもよい。
【0028】
テルペン系樹脂として、例えばα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、並びにロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0029】
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5C9共重合石油樹脂などが例示される。
【0030】
熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度Tgr(℃)が好ましくは40℃~120℃、好ましくは45℃~115℃、より好ましくは50℃~110℃であるとよい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgrを40℃以上にすることにより、ドライグリップ性能が向上し好ましい。また。120℃以下にすることにより、耐摩耗性が向上し好ましい。
【0031】
本明細書において、スチレンブタジエンゴム、またはスチレンブタジエンゴムおよび他のジエン系ゴムからなるゴム成分の中で、含有量が最多のジエン系ゴム(すなわち、スチレンブタジエンゴム、または他のジエン系ゴム)のガラス転移温度をTgp(℃)とする。熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgr(℃)は、上述した最も多く含有されるジエン系ゴムのガラス転移温度Tgp(℃)との差Tgr-Tgpが100℃以上である。差Tgr-Tgpを100℃以上にすることにより、耐摩耗性を優れたものにすることができる。ガラス転移温度の差Tgr-Tgpは、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上であるとよい。本明細書において、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度として測定するものとする。
【0032】
本明細書において、可塑剤は、ゴム組成物中に含まれるオイル成分および液状ゴムをいう。オイル成分は、ゴム組成物の調製時に配合されるオイルおよびジエン系ゴムに油展成分として含まれるオイルの合計をいう。オイル成分は、天然オイル、合成オイルのいずれでもよい。
【0033】
液状ゴムは、23℃で液体のゴムをいう。したがって、23℃で固体である上述したジエン系ゴムとは区別される。液状ゴムとして、例えば液状ポリブタジエン、液状ポリスチレンブタジエン、液状ポリイソプレン等が挙げられる。液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上50,000未満、より好ましくは5,000~40,000、さらに好ましくは10,000~30,000であるとよい。
【0034】
本発明のゴム組成物は、それをトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物との間で、それぞれのtanδ(正接損失)の温度依存性曲線において、特定の関係を有する。すなわち、ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσbf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとし、ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσaf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとするとき、以下の関係式(1)および(2)を満たす。
|σbf-σaf|≧4 (1)
|tanδbf-tanδaf|≦0.02 (2)
【0035】
ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線は、その所定形状の硬化物の動的粘弾性を、粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-80℃~100℃の条件にて測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にした粘弾性カーブとして求めることができる。得られたtanδの温度依存性曲線から、tanδの最太値(ピーク値)およびそのときの温度(ピーク温度)を求める。tanδの半値幅σbfは、tanδがピーク値の半分になるときの高温側の温度と低温側の温度の差として求められる。さらに、ピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとして求める。
【0036】
ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物は、ゴム組成物の硬化物をトルエンに浸漬・乾燥させることにより調製される。すなわち、ゴム組成物を160℃、25分加硫して得られた厚さ2mmのシート(約30g)を200mlのトルエンに浸漬し、室温(23℃)で48時間、静置することにより、熱可塑性樹脂および可塑剤を溶解除去した。次に、取り出したシートを、200mlのアセトンに浸漬し、室温(23℃)で48時間、静置することにより、トルエンをアセトンに置換した。その後、取り出したシートを、室温(23℃)で48時間、乾燥することにより、アセトンを除去し、トルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物を得ることができる。
【0037】
処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線は、上記で得られた所定形状の硬化物の動的粘弾性を、粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-80℃~100℃の条件にて測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にした粘弾性カーブとして求めることができる。得られた処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線から、tanδの最太値(ピーク値)およびそのときの温度(ピーク温度)を求める。tanδの半値幅σafは、tanδがピーク値の半分になるときの高温側の温度と低温側の温度の差として求められる。さらに、ピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとして求める。
【0038】
ゴム組成物のtanδの半値幅σbfおよび処理後ゴム組成物のtanδの半値幅σafは、これらの差|σbf-σaf|が4℃以上、好ましくは6℃~20℃、より好ましくは6℃~15℃である。差|σbf-σaf|をこのような範囲内にすることにより、ウェット性能を低下させることなく、耐摩耗性を向上することができる。差|σbf-σaf|が4℃以上を満たすゴム組成物は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度との差が大きく、ガラス転移温度が低いスチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴムに対し、熱可塑性樹脂および任意に可塑剤を特定の質量比を満たすように配合することにより調製することができる。
【0039】
ゴム組成物のtanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値tanδbfおよび処理後ゴム組成物のtanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値tanδafは、これらの差|tanδbf-tanδaf|が0.02以下、好ましくは0.015以下である。差|tanδbf-tanδaf|をこのような範囲内にすることにより、低転がり抵抗性を悪化させることなく、耐摩耗性を向上することができる。差|tanδbf-tanδaf|が0.02以下を満たすゴム組成物は、互いの親和性が良好なジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂を含有させることにより調製することができる。例えばジエン系ゴムとの相溶性が低い熱可塑性樹脂を配合したゴム組成物ではtanδbfが大きくなり、差|tanδbf-tanδaf|が0.02を超えてしまう。その結果、転がり抵抗の指標となる60℃のtanδが大きくなる。
【0040】
ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0041】
ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部を形成するのに好適であり、とりわけタイヤのトレッド部を形成するのに好適である。これにより得られたタイヤは、耐摩耗性、低転がり抵抗性、ウェット性能および雪上性能を従来レベル以上に、より高いレベルで両立することができる。
【0042】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0043】
表3に示す共通の添加剤処方を有し、表1~2に示す配合からなる16種類のゴム組成物(標準例,実施例1~9、比較例1~6)を調製するに当たり、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチをミキサー外に放出し室温冷却した。このマスターバッチを同バンバリーミキサーに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、ゴム組成物を得た。なお、表3の添加剤処方は、表1~2に記載したゴム成分100質量部に対する質量部で記載している。
【0044】
また、表1~2において、熱可塑性樹脂、可塑剤(オイルおよび液状ゴム)の合計量を算出し「樹脂+可塑剤」の欄に記載すると共に、熱可塑性樹脂および可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の質量割合を算出し「樹脂質量割合」の欄に記載した。さらに、上述した実施例および比較例のゴム組成物について、ゴム成分中含有量が最多のジエン系ゴムのガラス転移温度Tgp(℃)と熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgr(℃)との差Tgr-Tgpを算出し、表1~2の「差Tgr-Tgp」の欄に記載した。
【0045】
ゴム組成物のtanδ温度依存曲線および半値幅σbf、tanδbfの測定
上記で得られたゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫し、動的粘弾性(損失正接tanδ)の評価用試料を作製した。得られた評価用試料を使用し、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-80℃~100℃の条件でtanδを測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にし、-80℃~100℃のtanδ温度依存曲線を作成した。得られたtanδの温度依存性曲線から、tanδの最太値(ピーク値)およびそのときの温度(ピーク温度)を求めた。tanδの半値幅σbfは、tanδがピーク値の半分になるときの高温側の温度と低温側の温度の差として求めた。また、tanδがピーク値を示すピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとして求めた。
【0046】
トルエン処理後ゴム組成物のtanδ温度依存曲線および半値幅σaf、tanδafの測定
表1,2に記載のゴム組成物を、160℃、25分加硫して得られた厚さ2mmのシート(約30g)を200mlのトルエンに浸漬し、室温(23℃)で48時間、静置することにより、熱可塑性樹脂および可塑剤を溶解除去した。次に、取り出したシートを、200mlのアセトンに浸漬し、室温(23℃)で48時間、静置することにより、トルエンをアセトンに置換した。その後、取り出したシートを、室温(23℃)で48時間、乾燥することにより、アセトンを除去し、トルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物の動的粘弾性(損失正接tanδ)の評価用試料を作製した。
【0047】
上記で得られた処理後ゴム組成物の評価用試料を使用し、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-80℃~100℃の条件でtanδを測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にし、-80℃~100℃のtanδ温度依存曲線を作成した。得られたtanδの温度依存性曲線から、tanδの最太値(ピーク値)およびそのときの温度(ピーク温度)を求めた。処理後ゴム組成物のtanδの半値幅σafは、tanδがピーク値の半分になるときの高温側の温度と低温側の温度の差として求めた。また、処理後ゴム組成物のtanδがピーク値を示すピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとして求めた。
【0048】
上記で得られたゴム組成物のtanδの半値幅σbfおよび処理後ゴム組成物のtanδの半値幅σafから|σbf-σaf|を算出し、表1~2の「差|σbf-σaf|」の欄に記載した。また、ゴム組成物のtanδのピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値tanδbfおよび処理後ゴム組成物のtanδのピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値tanδafから|tanδbf-tanδaf|を算出し、表1~2の「差|tanδbf-tanδaf|」の欄に記載した。
【0049】
上記で得られたゴム組成物をタイヤトレッドに使用してサイズ205/55R16の空気入りタイヤを加硫成型し、耐摩耗性、ウェット性能、転がり抵抗性および雪上性能を以下の方法で測定した。
【0050】
耐摩耗性
得られたタイヤを標準リムサイズのホイールに組み付けて、半径854mmのドラムを備えた転がり抵抗試験機に装着し、空気圧210kPa、荷重100N、速度80km/h、ドラムの表面温度20℃の条件にて、30分間の予備走行の後、速度100km/hで、2万kmの走行試験を行った後、トレッド陸部の摩耗量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を算出し、標準例を100とする指数とし、表1~2の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、摩耗量が少なく耐摩耗性に優れていることを意味する。
【0051】
ウェット性能
得られたタイヤを標準リムに取付け、排気量2000ccのABSを搭載した試験車両に装着し、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧を220kPaにした。試験車両を水深2.0~3.0mmに散水したアスファルト路面上を走行させ、速度100km/hからの制動停止距離を測定した。得られた結果は、それぞれの逆数を算出し、標準例の値を100とする指数とし、表1~2の「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほど制動停止距離が短くウェット性能が優れることを意味する。
【0052】
転がり抵抗
得られたタイヤを標準リムサイズのホイールに組み付けて、半径854mmのドラムを備えた転がり抵抗試験機に装着し、空気圧210kPa、荷重100N、速度80km/h、ドラムの表面温度20℃の条件にて、30分間の予備走行を行った後、同条件にて転がり抵抗を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、標準例を100とする指数とし、表1~2の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が小さく優れることを意味する。
【0053】
雪上性能
得られたタイヤを標準リムに取付け、排気量2000ccの試験車両に装着し、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧を220kPaにした。積雪状態にした1周2.6kmのテストコースを実車走行させ、そのときの操縦安定性を専門パネラー3名による感応評価により、点数付け評価した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数とし、表1~2の「雪上性能」の欄に示した。この指数が大きいほど雪上走行時の操縦安定性の評価点が高く、雪上性能が優れることを意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1~2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20、ガラス転移温度が-65℃
・SBR-1:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性のスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS612、ガラス転移温度が-61℃、スチレン含量が15質量%、ビニル含量が31%、非油展品
・SBR-2:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性のスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS616、ガラス転移温度が-23℃、スチレン含量が22質量%、ビニル含量が67%、非油展品
・SBR-3:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性のスチレンブタジエンゴム、横浜ゴム株式会社試作SBR、ガラス転移温度が-80℃、スチレン含量が6質量%、ビニル含量が15%、非油展品
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、ガラス転移温度が-105℃
・カーボンブラック:東海カーボン社製 シースト7HM
・シリカ:Solvey社製 Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積が159m/g
・カップリング剤:シランカップリング剤、Evonik Degussa社製 Si69
・樹脂-1:C9系石油樹脂、ENEOS社製ネオポリマーS100、ガラス転移温度が58℃
・樹脂-2:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO-105、ガラス転移温度が57℃
・樹脂-3:インデン系樹脂、三井化学社製 FMR0150、ガラス転移温度が89℃
・樹脂-4:フェノール変性テルペン樹脂、荒川化学工業社製 タマノル803L、ガラス転移温度が95℃
・液状ゴム:Evonik社製、POLYVEST(R) ST―E60
・オイル:シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S
【0057】
【表3】
【0058】
表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・老化防止剤:LANXESS社製VULANOX 4020
・ワックス:NIPPON SEIRO社製 OZOACE-0015A
・硫黄:鶴見化学工業社製サルファックス5
・加硫促進剤:大内振興化学工業社製ノクセラーCZ-G
【0059】
表1~2から明らかなように、実施例1~9のゴム組成物は、耐摩耗性、ウェット性能、低転がり抵抗性および雪上性能が優れることが確認された。
【0060】
表1から明らかなように、比較例1のゴム組成物は、熱可塑性樹脂および可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%未満、差|σbf-σaf|が4℃未満なので、低転がり抵抗性を標準例以上に改良することができず、ウェット性能が低下する。
比較例2のゴム組成物は、熱可塑性樹脂および可塑剤の合計が20質量部未満、差|σbf-σaf|が4℃未満なので、低転がり抵抗性を標準例以上に改良することができず、ウェット性能が低下する。
比較例3のゴム組成物は、差|tanδbf-tanδaf|が0.02を超えるので、ウェット性能、転がり抵抗および雪上性能が悪化する。
比較例4のゴム組成物は、差|tanδbf-tanδaf|が0.02を超えるので、転がり抵抗が悪化する。
比較例5のゴム組成物は、含有量が最多のジエン系ゴムのガラス転移温度Tgpと熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgrの差Tgr-Tgpが100℃未満なので、耐摩耗性、転がり抵抗および雪上性能が悪化する。
比較例6のゴム組成物は、熱可塑性樹脂および可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%未満なので、ウェット性能が悪化する。
【0061】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] スチレンブタジエンゴムと任意に他のジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部に、白色充填剤を20~150質量部、熱可塑性樹脂と任意に可塑剤を合計で20質量部以上100質量部以下含むゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂と可塑剤の合計に対する熱可塑性樹脂の割合が65質量%以上であり、前記ゴム成分の中で含有量が最多の、スチレンブタジエンゴムまたは他のジエン系ゴムのガラス転移温度Tgp(℃)と前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgr(℃)の差Tgr-Tgpが100℃以上であり、前記ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσbf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδbfとし、前記ゴム組成物をトルエンに浸漬・乾燥させた処理後ゴム組成物のtanδの温度依存性曲線における半値幅をσaf(℃)、tanδが最大になるピーク温度より90℃高い温度におけるtanδの値をtanδafとするとき、以下の関係式(1)および(2)を満たすことを特徴とするゴム組成物。
|σbf-σaf|≧4 (1)
|tanδbf-tanδaf|≦0.02 (2)
発明[2] 前記他のジエン系ゴムが、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴムから選ばれ、前記ゴム成分100質量%中、前記イソプレン系ゴムが0~15質量%、前記ブタジエンゴムが5~45質量%、前記スチレンブタジエンゴムが40~95質量%であることを特徴とする発明[1]に記載のゴム組成物。
発明[3] 前記スチレンブタジエンゴムの少なくとも1つの末端が官能基で変性されていることを特徴とする発明[1]または[2]に記載のゴム組成物。
発明[4] 前記Tgrが40~120℃であり、前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。