IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチユ三菱フォークリフト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-無人荷役車両 図1
  • 特開-無人荷役車両 図2
  • 特開-無人荷役車両 図3
  • 特開-無人荷役車両 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027635
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】無人荷役車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B66F9/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130583
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門地 正史
(72)【発明者】
【氏名】中山 健次
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥大
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333DB07
3F333FA05
3F333FA11
3F333FE04
3F333FE05
3F333FE08
(57)【要約】
【課題】低温環境で電子機器を正常に動作させることができ、かつ、省エネ性に優れた無人荷役車両を提供する。
【解決手段】電子機器であるレーザーセンサ32Dを備えた無人荷役車両としての無人フォークリフト3は、冷凍庫の内外を走行する車両本体と、レーザーセンサ32Dを温めるために発熱するヒーター33と、車両本体の位置情報を取得する位置情報取得装置34と、位置情報取得装置34で取得した車両本体の位置情報に基づいて、ヒーター33の発熱態様を制御する制御装置35とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を備えた無人荷役車両において、
前記冷凍庫の内外を走行する車両本体と、
前記電子機器を温めるために発熱するヒーターと、
前記車両本体の位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記位置情報取得装置で取得した前記位置情報に基づいて、前記ヒーターの発熱態様を制御する制御装置と、を備える
ことを特徴とする無人荷役車両。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記電子機器を温めるために発熱する第1モードと、前記第1モードで動作するときに比べて低温となる第2モードとに切り替え可能に構成され、
前記制御装置は、
前記位置情報に基づいて前記車両本体が所定範囲内に位置すると判定したとき、前記ヒーターを前記第1モードで動作させ、
前記位置情報に基づいて前記車両本体が所定範囲外に位置すると判定したとき、前記ヒーターを前記第2モードで動作させる
ことを特徴とする請求項1に記載の無人荷役車両。
【請求項3】
前記車両本体は、前記冷凍庫および当該冷凍庫の出入り口に通じる前室を走行するように構成され、
前記所定範囲は、前記冷凍庫のエリアと前記出入り口付近である前記前室の一部のエリアとを含むように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の無人荷役車両。
【請求項4】
前記ヒーターに電力を供給するバッテリと、
所定時間当たりに前記ヒーターに電力が供給される時間である通電時間を変更可能なスイッチング回路と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記通電時間が所定の第1通電時間となるように前記スイッチング回路を制御することで、前記ヒーターを前記第1モードで動作させ、
前記通電時間が前記第1通電時間よりも短い所定の第2通電時間となるように前記スイッチング回路を制御することで、前記ヒーターを前記第2モードで動作させる
ことを特徴とする請求項2に記載の無人荷役車両
【請求項5】
前記第2モードで動作している前記ヒーターは、当該ヒーターに電力が供給されていないときに比べて高温となる
ことを特徴とする請求項2に記載の無人荷役車両。
【請求項6】
前記電子機器は、レーザー光を投光および受光するレーザーセンサである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の無人荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍庫の内外で荷役作業を行う無人荷役車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温環境における作業者の負担を軽減するために、冷凍庫の内外で荷物の積み降ろしや搬送等の荷役作業を行う無人荷役車両が開発されている(例えば特許文献1参照)。一般に、無人荷役車両は、センサや電子回路を含んだ電子機器を備えている。
【0003】
ところで、冷凍庫内の低温環境が電子機器の動作条件を満たしていない場合や、無人荷役車両が冷凍庫の内外に移動することで電子機器に結露が発生した場合は、電子機器が正常に動作しないという不都合があった。この不都合を解消するための方法として、電子機器近傍の温度に応じて発熱するように構成されたヒーターを用いて、電子機器を温めることが考えられる。
【0004】
しかしながら、電子機器近傍の温度が冷凍庫内の設定温度に達したときにヒーターが発熱を開始するように構成しても、電子機器を速やかに温めることができず、電子機器が正常に動作しないという問題があった。また、例えば、電子機器近傍の温度が冷凍庫内の設定温度よりも高い所定温度に達したときにヒーターが発熱を開始するように構成すると、無人荷役車両が冷凍庫内に進入しない不必要なタイミングでヒーターが発熱する場合があり、省エネ性が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-268895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、低温環境で電子機器を正常に動作させることができ、かつ、省エネ性に優れた無人荷役車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の無人荷役車両は、電子機器を備えた無人荷役車両において、前記冷凍庫の内外を走行する車両本体と、前記電子機器を温めるために発熱するヒーターと、前記車両本体の位置情報を取得する位置情報取得装置と、前記位置情報取得装置で取得した前記位置情報に基づいて、前記ヒーターの発熱態様を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記ヒーターは、前記電子機器を温めるために発熱する第1モードと、前記第1モードで動作するときに比べて低温となる第2モードとに切り替え可能に構成され、前記制御装置は、前記位置情報に基づいて前記車両本体が所定範囲内に位置すると判定したとき、前記ヒーターを前記第1モードで動作させ、前記位置情報に基づいて前記車両本体が所定範囲外に位置すると判定したとき、前記ヒーターを前記第2モードで動作させることが好ましい。
【0009】
また、前記車両本体は、前記冷凍庫および当該冷凍庫の出入り口に通じる前室を走行するように構成され、前記所定範囲は、前記冷凍庫のエリアと前記出入り口付近である前記前室の一部のエリアとを含むように設定されていることが好ましい。
【0010】
また、前記ヒーターに電力を供給するバッテリと、所定時間当たりに前記ヒーターに電力が供給される時間である通電時間を変更可能なスイッチング回路と、をさらに備え、前記制御装置は、前記通電時間が所定の第1通電時間となるように前記スイッチング回路を制御することで、前記ヒーターを前記第1モードで動作させ、前記通電時間が前記第1通電時間よりも短い所定の第2通電時間となるように前記スイッチング回路を制御することで、前記ヒーターを前記第2モードで動作させることが好ましい。
【0011】
また、前記第2モードで動作している前記ヒーターは、当該ヒーターに電力が供給されていないときに比べて高温となることが好ましい。
【0012】
また、前記電子機器は、レーザー光を投光および受光するレーザーセンサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温環境で電子機器を正常に動作させることができ、かつ、省エネ性に優れた無人荷役車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る無人荷役車両を含む冷凍倉庫用荷役システムの概要図である。
図2】同実施形態に係る無人荷役車両の概略構成図である。
図3】同実施形態に係る無人荷役車両の概略構成を示すブロック図である。
図4】同実施形態に係る冷凍倉庫の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る冷凍倉庫用荷役システムSを説明する。
図1に示すように、冷凍倉庫用荷役システムSは、冷凍庫1Aおよび前室1Bを含む冷凍倉庫1と、管理コンピュータ2と、無人荷役車両としての無人フォークリフト3とを備えている。
【0016】
冷凍倉庫1は、例えば生鮮食品や冷凍食品等の保管対象物Nを冷凍して保管するための倉庫である。冷凍庫1Aは、保管対象物Nの保管スペースを有する部屋であり、前室1Bに通じる出入り口11を有している。前室1Bは、冷凍庫1Aに出入りするための部屋である。冷凍倉庫1は、冷凍庫1A内および前室1B内の温度を所定の設定温度(例えば冷凍庫1A内はマイナス26℃、前室1B内は2℃)に保つための冷凍空調設備(図示略)を備えている。
【0017】
また、冷凍倉庫1は、冷凍庫1Aの出入り口11に設けられた防熱扉12およびエアカーテン13を備えている。防熱扉12は、冷凍庫1Aから前室1Bへの冷気の流出を防ぐために出入り口11を閉鎖し、無人フォークリフト3が冷凍庫1Aの内外に移動する際は、冷凍庫1Aおよび前室1Bが連通するように出入り口11を開放する。エアカーテン13は、出入り口11が開放されている状態で冷凍庫1Aから前室1Bへの冷気の流出を防ぐために、出入り口11を覆う気流を生成するように空気を吹き出す。
【0018】
管理コンピュータ2は、無人フォークリフト3と通信可能な電子機器であって、種々の情報を送受信することで無人フォークリフト3を管理する。具体的には、管理コンピュータ2は、無人フォークリフト3の動作情報、および、無人フォークリフト3の位置情報等を、無人フォークリフト3から受信する。また、管理コンピュータ2は、無人フォークリフト3の荷取り作業を指定するための荷取り作業情報、無人フォークリフト3の走行区間を指定する走行区間情報、および、無人フォークリフト3の荷置き作業を指定するための荷置き作業情報等を、無人フォークリフト3に送信する。
【0019】
無人フォークリフト3は、冷凍庫1Aの内外で荷役作業を行うフォークリフトである。無人フォークリフト3は、管理コンピュータ2から荷取り作業情報、走行区間情報、および、荷置き作業情報を受信し、それらの情報に基づいて、保管対象物Nの荷取り、冷凍倉庫1内での走行による保管対象物Nの搬送、および、保管対象物Nの荷置きを行う。
【0020】
図2に示すように、無人フォークリフト3は、冷凍庫1Aの内外を走行する車両本体3Aと、保管対象物Nを取り扱う荷役装置3Bとを備えている。荷役装置3Bは、保管対象物Nを支持するフォーク31Aと、フォーク31Aを昇降させるリフト装置31Bとにより構成されている。
【0021】
車両本体3Aは、図2中の矢印D1で示す車体方向D1および矢印D2で示すフォーク方向D2に向かって直進可能に構成されている。車両本体3Aは、少なくとも出入り口11を通過する区間では、車体方向D1に走行する。
【0022】
また、無人フォークリフト3は、車両本体3Aおよび荷役装置3Bの周辺情報を取得する電子機器であるセンサを備えている。具体的には、無人フォークリフト3は、レーザーセンサ32A,32B,32C,32D、および、超音波センサ32E等を備えている。
【0023】
レーザーセンサ32Aは、LiDAR(Light Detection and Ranging)によりSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)用のデータを取得するセンサである。レーザーセンサ32Aは、リフト装置31Bの上部に設けられており、無人フォークリフト3の全方位に向けてレーザー光を投光する。そして、レーザーセンサ32Aは、冷凍倉庫1内に設置された複数の反射板(図示略)や他の物体で反射したレーザー光を受光する。こうして、レーザーセンサ32Aは、レーザー光を反射した物体を検出し、無人フォークリフト3と周囲の物体との位置関係に係るデータを取得する。
【0024】
レーザーセンサ32Bは、車両本体3Aの車体方向D1への走行を妨げる障害物をLiDARにより検出するセンサである。レーザーセンサ32Bは、車両本体3Aの車体方向D1側端部に設けられている。レーザーセンサ32Bは、車体方向D1側の所定領域に向けてレーザー光を投光し、その領域に存在する障害物で反射したレーザー光を受光することで、その障害物を検出する。
【0025】
レーザーセンサ32Cは、車両本体3Aのフォーク方向D2への走行を妨げる障害物をLiDARにより検出するセンサである。レーザーセンサ32Cは、車両本体3Aのフォーク方向D2側端部(具体的に、ストラドルレッグの先端部)に設けられている。レーザーセンサ32Cは、フォーク方向D2側の所定領域に向けてレーザー光を投光し、その領域に存在する障害物で反射したレーザー光を受光することで、その障害物を検出する。
【0026】
レーザーセンサ32Dは、フォーク31Aの先端近傍に位置する物体(例えば、保管対象物N、または保管対象物Nを支持するパレットもしくは棚)をレーザー光の投受光により検出するセンサである。レーザーセンサ32Dは、フォーク31Aの先端からフォーク方向D2に向けてレーザー光を投光し、フォーク31Aの先端近傍に存在する物体で反射したレーザー光を受光することで、その物体を検出する。本実施形態では、図2(A)に示すように、2つのフォーク31Aの各々に1つのレーザーセンサ32Dが設けられている。
【0027】
超音波センサ32Eは、車両本体3Aの車体方向D1への走行を妨げる障害物を超音波の送受信により検出するセンサである。超音波センサ32Eは、車両本体3Aの車体方向D1側端部に設けられており、本実施形態では、図2(A)に示すように、障害物の検出範囲を広げることを目的として、2つの超音波センサ32Eが、車両本体3Aの幅方向において間隔をあけて設けられている。超音波センサ32Eは、レーザーセンサ32Bが障害物を検出できない区間(具体的には、霧が発生する出入り口11付近の特定区間)を車両本体3Aが走行するとき、車体方向D1側の所定領域に向けて超音波を送信し、その領域に存在する障害物で反射した超音波を受信することで、その障害物を検出する。
【0028】
また、無人フォークリフト3は、車両本体3Aおよび荷役装置3Bの動作情報を取得する電子機器であるセンサを備えている。具体的には、無人フォークリフト3は、モーションセンサ32F(図3参照)を備えている。
【0029】
モーションセンサ32Fは、無人フォークリフト3の動作を検出することによりオドメトリ用のデータを取得するセンサである。具体的には、モーションセンサ32Fは、例えば、車速を検出する車速センサ、車輪の舵角を検出する舵角センサ、もしくは加速度を検出する加速度センサ、またはこれら複数のセンサの組み合わせにより構成される。
【0030】
冷凍庫1A内の低温環境は、上記センサ32A~32Fのうちレーザーセンサ32Dのみが動作条件を満たしていない。そのため、本実施形態に係るレーザーセンサ32Dは、ヒーター33(図3参照)により温められるように構成されている。なお、冷凍庫1A内の低温環境は、他のセンサ32A~32C,32E,32Fの動作条件を満たしているため、これらのセンサ32A~32C,32E,32Fを温めるヒーターは設けられていない。
【0031】
図3に示すように、無人フォークリフト3は、レーザーセンサ32Dを温めるための構成要素として、ヒーター33と、位置情報取得装置34と、制御装置35と、バッテリ36と、パルス発生回路37と、スイッチング回路38とを備えている。
【0032】
ヒーター33は、レーザーセンサ32Dに密着させて設けられたラバーヒーターであって、レーザーセンサ32Dを温めるために発熱する。ヒーター33は、レーザーセンサ32Dを温めるために発熱する第1モードと、第1モードで動作するときの温度に比べて低温となる第2モードとに切り替え可能に構成されている。なお、本実施形態では、第2モードで動作しているヒーター33は、第1モードで動作するときに比べて低温となり、かつ、ヒーター33に電力が供給されていないときに比べて高温となる。
【0033】
位置情報取得装置34は、車両本体3Aの位置情報(すなわち自車である無人フォークリフト3の位置情報)を取得する。本実施形態では位置情報取得装置34は、レーザーセンサ32Aと、モーションセンサ32Fと、環境地図作成装置34Aと、自車位置推定装置34Bとにより構成されている。
【0034】
環境地図作成装置34Aは、レーザーセンサ32Aにより取得したデータに基づいて、冷凍倉庫1内の環境地図を作成する。環境地図は、無人フォークリフト3の周辺環境の情報を含み、無人フォークリフト3の自車位置の推定に用いられる。
【0035】
自車位置推定装置34Bは、レーザーセンサ32Aおよびモーションセンサ32Fにより取得したデータに基づいて、車両本体3Aの位置(すなわち無人フォークリフト3の自車位置)を推定する。具体的には、自車位置推定装置34Bは、車両本体3Aが出入り口11付近の特定区間以外の区間を走行している場合は、レーザーセンサ32Aにより取得したデータと、環境地図作成装置34Aにより作成された環境地図とに基づいて、車両本体3Aの位置を推定する。また、自車位置推定装置34Bは、車両本体3Aが出入り口11付近の特定区間を走行している場合は、モーションセンサ32Fにより取得したデータに基づいて、車両本体3Aの移動量を推定し、推定した移動量に基づいて、車両本体3Aの位置を推定する。
【0036】
制御装置35は、位置情報取得装置34で取得した車両本体3Aの位置情報に基づいて、ヒーター33の発熱態様を制御する。本実施形態では、制御装置35は、自車位置推定装置34Bによる車両本体3Aの位置の推定結果に基づいて、ヒーター33の発熱態様を制御する。
【0037】
具体的には、制御装置35は、車両本体3Aが所定範囲A内に位置するか否かを判定し、車両本体3Aが所定範囲A内に位置すると判定したとき、ヒーター33を第1モードで動作させるための制御信号を送信する。また、制御装置35は、車両本体3Aが所定範囲A外に位置すると判定したとき(すなわち車両本体3Aが所定範囲A内に位置すると判定しなかったとき)、ヒーター33を第2モードで動作させるための制御信号を送信する。
【0038】
所定範囲Aは、図4に示すように予め設定されているエリアである。所定範囲Aは、冷凍庫1Aのエリアを含むとともに、冷凍庫1Aの出入り口11付近である前室1Bの一部のエリアを含むように設定されている。所定範囲Aは、対頂点A1,A2の座標を指定することで容易に設定することができる。
【0039】
制御装置35が送信する制御信号は、ヒーター33に電力が供給されるオン時間と電力が供給されないオフ時間とを指定する信号であり、制御装置35は、制御信号に基づいて動作するパルス発生回路37を介してスイッチング回路38を制御することで、ヒーター33の第1モードと第2モードとを切り替える。こうして、制御装置35は、所定時間当たりにヒーター33に電力が供給される通電時間(以下、「通電時間T」という)を変化させる。
【0040】
具体的には、制御装置35は、車両本体3Aが所定範囲A内に位置すると判定したとき、ヒーター33に電力が供給されるオン時間を第1オン時間T1onとし、ヒーター33に電力が供給されないオフ時間を第1オフ時間T1offとする制御信号を送信する。こうして、制御装置35は、通電時間Tが所定の第1通電時間T1(=T1on/(T1on+T1off)となるようにスイッチング回路38を制御することで、ヒーター33を第1モードで動作させる。
【0041】
一方、制御装置35は、車両本体3Aが所定範囲A外に位置すると判定したときヒーター33に電力が供給されるオン時間を第1オン時間T1onよりも短い第2オン時間T2onとし、ヒーター33に電力が供給されないオフ時間を第1オフ時間T1offよりも長い第2オフ時間T2offとする制御信号を送信する。こうして、制御装置35は、通電時間Tが第1通電時間T1よりも短い所定の第2通電時間T2(=T2on/(T2on+T2off)となるようにスイッチング回路38を制御することで、ヒーター33を第2モードで動作させる。
【0042】
第1オン時間T1on、第1オフ時間T1off、第2オン時間T2on、および第2オフ時間T2offは、例えば、以下の表に示すように設定することができる。以下の表のように第1オン時間T1onおよび第1オフ時間T1offが設定されている場合、ヒーター33が第1モードで動作しているときの通電時間T(第1通電時間T1)は、10秒当たり8.8秒である。また、以下の表のように第2オン時間T2onおよび第2オフ時間T2offが設定されている場合、ヒーター33が第2モードで動作しているときの通電時間T(第2通電時間T2)は、10秒当たり3秒である。
【表1】
【0043】
バッテリ36は、充電可能な電池により構成されており、例えば48Vの直流の電圧を供給する直流電源として機能する。バッテリ36は、ヒーター33を含む無人フォークリフト3の各部に電力を供給する。
【0044】
パルス発生回路37は、制御装置35から受信した制御信号に基づいて、交互に現れるオン信号およびオフ信号を含んだパルス信号を発生させ、そのパルス信号をスイッチング回路38に出力する。オン信号が継続して出力される時間は、ヒーター33のオン時間に対応し、オフ信号が継続して出力される時間は、ヒーター33のオフ時間に対応する。
【0045】
スイッチング回路38は、ヒーター33とバッテリ36との間に接続されたリレーにより構成されており、パルス発生回路37から入力されるオン信号およびオフ信号に基づいて、所定時間当たりにヒーター33に電力が供給される通電時間Tを変更可能に構成されている。具体的には、スイッチング回路38は、パルス発生回路37からオン信号が入力されているときは、バッテリ36からヒーター33へ供給される電力を中継し、パルス発生回路37からオフ信号が入力されているときは、電力の中継を停止する。こうして、スイッチング回路38は、オン信号およびオフ信号の入力時間の変化に応じて、ヒーター33のオン時間およびオフ時間を変更し、通電時間Tを変更する。
【0046】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)車両本体3Aの位置情報に基づいて、ヒーター33の発熱態様が制御される。この構成によれば、レーザーセンサ32D近傍の温度が低下する前にヒーター33が昇温するように制御することができるため、冷凍庫1Aへの進入に伴うレーザーセンサ32D近傍の温度の低下を抑制でき、低温環境の冷凍庫1A内でレーザーセンサ32Dを正常に動作させることができる。また、車両本体3Aに位置に関係なくヒーター33が制御される構成に比べて、車両本体3Aが冷凍庫1A内へ進入する蓋然性が高い位置でヒーター33が昇温するように制御することができ、優れた省エネ性が得られる。したがって、無人フォークリフト3は、低温環境でレーザーセンサ32Dを正常に動作させることができ、かつ、優れた省エネ性を有する。
【0047】
(2)車両本体3Aが所定範囲A内に位置すると判定されたとき、ヒーター33が第1モードで動作し、車両本体3Aが所定範囲A外に位置すると判定されたとき、ヒーター33が第2モードで動作する。この構成によれば、所定範囲Aを設定しておくことで、ヒーター33の第1モードおよび第2モードを切り替えることができる。
【0048】
(3)車両本体3Aは、冷凍庫1Aおよび冷凍庫1Aの出入り口11に通じる前室1Bを走行するように構成され、所定範囲Aは、冷凍庫1Aのエリアと出入り口11付近である前室1Bの一部のエリアとを含むように設定されている。この構成によれば、車両本体3Aが冷凍庫1A内に進入するとき、車両本体3Aの位置が前室1B内であって出入り口11付近であることに基づいて、車両本体3Aが冷凍庫1A内へ進入する前からヒーター33が昇温するように制御することができる。よって、車両本体3Aが冷凍庫1A内に進入した後にヒーター33が昇温する構成に比べて、レーザーセンサ32Dの保温性を向上でき、レーザーセンサ32Dを正常に動作させることができる。
【0049】
また、車両本体3Aが冷凍庫1A外に退出するとき、車両本体3Aの位置が前室1B内であって出入り口11から離れたことに基づいて、車両本体3Aが冷凍庫1A外へ退出した後にヒーター33が降温するように制御することができる。よって、車両本体3Aが冷凍庫1A外へ退出すると同時にヒーター33が降温する構成に比べて、レーザーセンサ32Dの保温性を向上でき、レーザーセンサ32Dに結露が生じることを抑制できる。
【0050】
(4)通電時間Tが所定の第1通電時間T1となるようにスイッチング回路38が制御されることで、ヒーター33が第1モードで動作し、通電時間Tが所定の第2通電時間T2となるようにスイッチング回路38が制御されることで、ヒーター33が第2モードで動作する。この構成によれば、スイッチング回路38により通電時間Tを変化させることにより、ヒーター33の第1モードおよび第2モードを切り替えることができる。
【0051】
(5)第2モードで動作しているヒーター33は、ヒーター33に電力が供給されていないときに比べて高温となる。この構成によれば、所定範囲A外でヒーター33に電力が供給されなくなる構成に比べて、レーザーセンサ32Dの保温性を向上できる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0053】
・ヒーター33のオン時間およびオフ時間の一方のみを変更することで、所定時間当たりにヒーター33に電力が供給される通電時間Tを変更するように構成してもよい。すなわち、第1モードと第2モードとで、所定時間当たりにヒーター33に電力が供給される通電時間Tが変更されるのであれば、ヒーター33のオン時間およびオフ時間の一方が変化しなくてもよい。
【0054】
・レーザーセンサ32Dを正常に動作させることができるのであれば、冷凍庫1A内外の温度に基づいて、ヒーター33のオン時間およびオフ時間を適宜変更してもよい。例えば、第2モードでヒーター33に電力が供給されるオン時間(第2オン時間T2on)を0ミリ秒に設定し、第2モードでヒーター33に電力が供給されないように構成してもよい。
【0055】
また、例えば、第1モードでヒーター33に電力が供給されないオフ時間(第1オフ時間T1off)を0ミリ秒に設定し、第1モードでヒーター33に電力が常時供給されるように構成してもよい。
【0056】
・ヒーター33の発熱態様を制御することができるのであれば、ヒーター33の制御方法、および制御装置35の構成等を適宜変更してもよい。また、ヒーター33が、第1モードおよび第2モード以外の他のモードに切り替え可能に構成されていてもよい。
【0057】
・無人フォークリフト3は、レーザーセンサ32D以外のセンサを温めるヒーター、またはその他の電子機器を温めるヒーターを備えていてもよい。すなわち、ヒーターによって温められる電子機器は、レーザーセンサ32Dに限定されない。
【0058】
・無人フォークリフト3以外の他の無人荷役車両に本発明を適用してもよい。すなわち、無人荷役車両は、フォーク31Aを備えていない無人搬送車両や、無人フォークリフト3の派生機種であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 冷凍倉庫
1A 冷凍庫
1B 前室
2 管理コンピュータ
3 無人フォークリフト(無人荷役車両)
3A 車両本体
3B 荷役装置
32D レーザーセンサ(電子機器)
33 ヒーター
34 位置情報取得装置
35 制御装置
36 バッテリ
38 スイッチング回路
A 所定範囲
S 冷凍倉庫用荷役システム
図1
図2
図3
図4