(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027638
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】抗菌剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240222BHJP
A61K 36/232 20060101ALI20240222BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240222BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240222BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240222BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240222BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/232
A61P31/04
A61P17/10
A61P17/00
A61P37/08
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130586
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 兵馬
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】赤座 誠文
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
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4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
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4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
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4C083AC432
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4C083AC542
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
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4C083CC04
4C083CC07
4C083CC12
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE10
4C083EE12
4C083EE14
4C083EE41
4C083FF01
4C088AB41
4C088AC11
4C088CA04
4C088CA06
4C088CA08
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA27
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB13
4C088ZB35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる抗菌剤を提供する。
【解決手段】トウキを水からなる前処理剤で抽出し、その抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤で抽出したトウキの抽出物(前記抽出剤が水の場合は前記前処理剤より高い温度である)を含有することを特徴とする抗菌剤である。本願発明の特定のトウキ抽出物は、健康用素材、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウキを水からなる前処理剤で抽出し、その抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤で抽出したトウキの抽出物(前記抽出剤が水の場合は前記前処理剤より高い温度である)を含有することを特徴とする抗菌剤。
【請求項2】
抽出剤が水又はエタノール濃度50%のエタノール水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
アクネ菌及び黄色ブドウ球菌に対して抗菌性を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
マラセチア・レストリクタに対して抗菌性を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするニキビ抑制剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするマラセチア毛包炎抑制剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするアトピー性皮膚炎抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト健常皮膚表面には皮膚常在菌と称される様々な微生物が生息しており、皮膚常在菌叢を形成している。個人差や部位差などがあるが、皮膚常在菌叢は様々な微生物で構成されており、アクネ菌(Cutibacterium acnes:C.acnes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:S.aureus)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis:S.epidermidis)などの細菌や、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta:M.restricta)やマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis:M.sympodialis)といったマラセチア属酵母などの真菌が例として挙げられる。
【0003】
皮膚常在菌は、通常は皮脂膜の一部を構成し、ヒトにとって有益な役割を担っている。例えば、病原菌の排除がある。健康な皮膚は弱酸性であり、皮膚のpHは、皮脂に含まれる遊離脂肪酸や汗に含まれる乳酸など様々な因子によって調節されており、その中には皮膚常在菌も含まれる。例えばアクネ菌は皮脂中の中性脂肪(トリグリセリド)を分解し、生成したグリセリンを資化するが、その時に副産物として遊離脂肪酸が産生される。また代謝産物としてプロピオン酸や酢酸を産生し、これらの働きによって皮膚はpH5.0~5.5程度の弱酸性に保たれている(非特許文献1)。一方、病原菌である黄色ブドウ球菌は増殖至適pHが中性であるため、弱酸性に保たれた皮膚では増殖が抑制される。また、皮膚常在菌が中性脂肪を分解することで生成されるグリセリンは、皮膚の潤いを保つ天然の保湿成分として役立っている。しかし、何らかの原因によって特定の皮膚常在菌が過剰増殖したりすると、様々な皮膚疾患を引き起こす。皮膚常在菌を理解し、制御することは、皮膚の健康維持のために重要といえる。
【0004】
アクネ菌はヒトの皮膚における最優勢菌である(非特許文献2)。アクネ菌はヒトの皮脂腺から分泌される皮脂を栄養源としており、また嫌気的な性質から、脂腺性毛包(皮脂腺が発達した毛包)の奥の方に多く常在すると言われている。アクネ菌はニキビ(尋常性ざ瘡)の原因菌と考えられている。閉塞した毛穴内は嫌気状態になるため、アクネ菌が活発に増殖する。アクネ菌はリパーゼによって皮脂を分解し、発生した遊離脂肪酸によって炎症が引き起こされる。また、アクネ菌に対するヒトの自然免疫反応がニキビの炎症に関与すると考えられている(非特許文献3)。
【0005】
黄色ブドウ球菌は皮膚病原菌として知られている。例えばアトピー性皮膚炎では約90%の皮疹部に黄色ブドウ球菌が定着しているといわれている。増殖至適pHが中性であるため、皮膚のpHが弱酸性に保たれていれば増殖が抑制される。しかし、何らかの理由によって表皮が損傷すると弱アルカリ性の体液が滲出するため、皮膚のpHが上昇する。従って、アトピー性皮膚炎のような状況の皮膚では生育が旺盛になると考えられ、症状を増悪させているともいわれている(非特許文献4)。
【0006】
表皮ブドウ球菌は、アクネ菌と競合する菌であるといえる。表皮ブドウ球菌がアクネ菌の増殖を阻害するという報告は複数ある(非特許文献5、6)。つまり、アクネ菌の過剰増殖を防ぐためには表皮ブドウ球菌を減らさないようにすることが望ましいと考えられる。また、表皮ブドウ球菌は抗菌ペプチドの発現を促進することで病原菌への抵抗力を高めるといわれている。さらに表皮ブドウ球菌が皮脂を分解して、天然の保湿剤であるグリセリンを産生することで皮膚の保湿に貢献しているという報告があり、ヒトにとって有益な菌だと考えられている(非特許文献7)。
【0007】
マラセチア・レストリクタはマラセチア毛包炎や脂漏性皮膚炎の原因菌といわれている(非特許文献8、9)。リパーゼによって皮脂を分解し、発生した遊離脂肪酸によって炎症が引き起こされる。また、マラセチア・レストリクタに対するヒトの自然免疫反応がニキビの炎症に関与すると考えられている。
【0008】
一方、マラセチア・シンポディアリスはヒトの皮膚上に生育しているものの、皮膚疾患の原因となるような報告はない。同じマラセチア属であることから、マラセチア・レストリクタとは生息域や皮脂などの栄養源の面で競合する関係にあると推察され、ヒトにとって有益な菌だといえる。
【0009】
皮膚常在菌は、各菌のバランスが取れているときはヒトと共生し、ヒトの皮膚を守ってくれる有益な存在であるが、特定の菌が過剰増殖したときに皮膚疾患の原因となりうるため、菌のバランスを適切な状態に保つことが重要だといえる。しかし現在、皮膚常在菌に対する抗菌剤としては、細菌に対してはナジフロキサシンや過酸化ベンゾイルが汎用されているが、アクネ菌や黄色ブドウ球菌のみならず、表皮ブドウ球菌に対しても抗菌性を発揮し、選択的な抗菌性を得ることが難しい。真菌に対してはケトコナゾールやルリコナゾールが汎用されているが、マラセチアの菌種ごとに選択的な抗菌性を得ることが難しい。皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる抗菌剤が望まれている。このような状況を踏まえ、これまでにも特定の菌種にのみ抗菌性を発揮する素材や成分の検討がされてきた(特許文献1~4)。しかし、細菌及び真菌のどちらにおいても皮膚にとって有益な菌を残して有害な菌を減らす素材又は成分が十分提供されているとは言い難い。
【0010】
トウキ(学名:Angelica acutiloba)は、セリ科シシウド属に属する多年草である。これまでトウキは、強壮、鎮痛、鎮静及び補血作用を持つとされ、薬用として用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-161043
【特許文献2】特開2014-062059
【特許文献3】特開2018-150266
【特許文献4】特開2013-249293
【非特許文献1】「人体常在菌のはなし」、集英社、85-122項、2004年
【非特許文献2】J Invest Dermatol,Vol.133(9),PP.2152-2160,2013
【非特許文献3】「変貌するざ瘡マネージメント」、中山書店、103-108項、2012年
【非特許文献4】J Dermatol Sci,Vol.79,PP.119-126(2015)
【非特許文献5】Exp Dermatol,Vol.26(9),PP.798-803(2017)
【非特許文献6】Appl Microbiol Biotechnol,Vol.98(1),PP.411-424(2014)
【非特許文献7】Immunity,Vol.42,PP.756-766(2015)
【非特許文献8】「変貌するざ瘡マネージメント」、中山書店、45-48項、2012年
【非特許文献9】「Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎」、日本医真菌学会、46巻、3号、163-167項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
安全性に優れ、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌作用を持つ素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、トウキを水からなる前処理剤で抽出し、その抽出残渣を更に水(前処理剤より高い温度)、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤で抽出して得られたトウキの抽出物が、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる優れた選択的な抗菌性を有することを見出した。具体的には、過剰増殖によってヒトに有害な影響を及ぼすアクネ菌、マラセチア・レストリクタ及び皮膚病原菌である黄色ブドウ球菌の増殖を選択的に抑制する効果を見出した。更に、その抽出物を含有する外用剤が、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌性を持つ健康用素材、化粧品、医薬部外品及び医薬品と成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
【0015】
(1)トウキを水からなる前処理剤で抽出し、その抽出残渣を更に水、低級アルコール及び液状多価アルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出剤で抽出したトウキの抽出物(前記抽出剤が水の場合は前記前処理剤より高い温度である)を含有することを特徴とする抗菌剤。
(2)抽出剤が水又はエタノール濃度50%のエタノール水溶液であることを特徴とする(1)に記載の抗菌剤。
(3)アクネ菌及び黄色ブドウ球菌に対して抗菌性を示すことを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗菌剤。
(4)マラセチア・レストリクタに対して抗菌性を示すことを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗菌剤。
(5)(1)又は(2)に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするニキビ抑制剤。
(6)(1)又は(2)に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするマラセチア毛包炎抑制剤。
(7)(1)又は(2)に記載のトウキの抽出物を含有することを特徴とするアトピー性皮膚炎抑制剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の方法で抽出したトウキの抽出物を有効成分として含有する、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いるトウキ(別名:ニホントウキ、ヤマトトウキ、オオブカトウキ、イワテトウキ、ミヤマトウキ、イブキトウキ)(学名:Angelica acutiloba)やホッカイトウキ(学名:Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)は、セリ科シシウド属に属する日本原産の多年草である。また、カラトウキ(学名:Angelica sinensis)は主に中国で栽培されている。本発明に用いるトウキは、好ましくはトウキ又はホッカイトウキが良く、最も好ましくはトウキが良い。また本発明に用いるトウキは、その花、果実、種子、葉、茎、根等の植物体の一部又は植物体全体(全草)、あるいはそれらの混合物を用いることができるが、特に根が好ましい。また、植物体をそのまま使用しても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。なお、Angelica acutiloba又はAngelica sinensisを基原植物として市販された生薬「当帰(トウキ)」又は「唐当帰(カラトウキ)」を用いることもできる。
【0018】
[前処理剤での抽出]
前処理剤としては、水を用いることが好ましい。また、上記前処理剤に酸やアルカリを添加して、pH調整した前処理剤を使用することもできる。前処理剤の使用量については、特に限定はなく、例えばトウキ(乾燥重量)に対し、5倍以上であれば良い。好ましくは、20倍以上が良く、特に好ましくは60倍以上が良い。前処理剤での抽出温度や抽出時間は抽出時の圧力等によって適宜選択できるが、抽出温度は好ましくは40℃以下である液体の水が良く、より好ましくは2℃以上20℃以下が良く、最も好ましくは5℃以上10℃以下が良い。前処理剤での抽出に用いるトウキは根のままでも良く、粉砕、細切等の処理を行っても良い。粉砕や細切を行う場合には1mm~20mmが良く、2mm~15mmがより好ましく、3mm~10mmが最も好ましい。
【0019】
[抽出剤での抽出]
抽出剤としては、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)及び液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いる。また、上記抽出剤に酸やアルカリを添加して、pH調整した抽出剤を使用することもできる。抽出剤の使用量については、特に限定はなく、例えばトウキ(乾燥重量)に対し、5倍以上、好ましくは10倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる抽出剤の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。但し、水を用いる場合は、前処理剤より高い温度であることが必要である。中でも、前処理剤より60℃以上高いことが好ましく、75℃以上高いことがより好ましく、90℃以上高いことが最も好ましい。
【0020】
なお、前処理剤での抽出残渣は、乾燥してから抽出剤で抽出しても良いし、乾燥せずにそのまま抽出剤で抽出しても良い。抽出剤による抽出方法は特に限定されず、例えば、撹拌抽出又はカラム抽出する方法等により行うことができる。
【0021】
上記抽出剤による抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0022】
また、上記抽出剤による抽出物は、抽出物の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品又は医薬品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤等の成分が含有されていても良い。
【0023】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、軟膏、パップ剤等が挙げられる。
【0024】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。更に、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を超えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0025】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例と処方例に示す%とは重量%を示す。
【実施例0026】
トウキの抽出物の製造例
本発明のトウキの抽出物を製造例1~10の通り製造した。比較製造例1~2においては、前処理を施さない従来のトウキを用いた。抽出材料にはトウキ(学名:Angelica acutiloba)の根部の粉砕品(大きさ1mm~15mm)を用いた。
【0027】
(製造例1)前処理を施したトウキの50%エタノール抽出物1の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の50%エタノール水溶液に20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの50%エタノール抽出物を0.3g得た。
【0028】
(製造例2)前処理を施したトウキの50%エタノール抽出物2の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、20℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の50%エタノール水溶液に20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの50%エタノール抽出物を0.2g得た。
【0029】
(製造例3)前処理を施したトウキの50%エタノール抽出物3の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、40℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の50%エタノール水溶液に20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの50%エタノール抽出物を0.2g得た。
【0030】
(比較製造例1)従来のトウキの50%エタノール抽出物の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し10倍量の50%エタノール水溶液に20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの50%エタノール抽出物を3.3g得た。
【0031】
(製造例4)前処理を施したトウキの熱水抽出物1の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの熱水抽出物を0.2g得た。
【0032】
(製造例5)前処理を施したトウキの熱水抽出物2の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、20℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの熱水抽出物を0.2g得た。
【0033】
(製造例6)前処理を施したトウキの熱水抽出物3の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し60倍量の水を加え、40℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの熱水抽出物を0.1g得た。
【0034】
(比較製造例2)従来のトウキの熱水抽出物の調製
トウキの根部の乾燥物10gに対し10倍量の水を加え、95℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの熱水抽出物を2.8g得た。
【0035】
(製造例7)前処理を施したトウキのエタノール抽出物1の調製
トウキの根部の乾燥物100gに対し60倍量の水を加え、5℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量のエタノールに20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキのエタノール抽出物を0.5g得た。
【0036】
(製造例8)前処理を施したトウキのエタノール抽出物2の調製
トウキの根部の乾燥物100gに対し60倍量の水を加え、20℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量のエタノールに20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキのエタノール抽出物を0.5g得た。
【0037】
(製造例9)前処理を施したトウキのエタノール抽出物3の調製
トウキの根部の乾燥物100gに対し60倍量の水を加え、40℃で24時間抽出した(20時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量のエタノールに20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキのエタノール抽出物を0.5g得た。
【0038】
(製造例10)前処理を施したトウキのエタノール抽出物4の調製
トウキの根部の乾燥物100gに対し60倍量の水を加え、95℃で3時間抽出した(3時間以内で抽出液の固形分濃度上昇が停止し、これ以上抽出されなくなった)。得られた抽出液を濾過した後、その残渣を乾燥し、得られた乾燥残渣に対し10倍量のエタノールに20℃で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキのエタノール抽出物を0.4g得た。