(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027653
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20240222BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60C11/01 B
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130616
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC34
3D131BC51
3D131EB18Y
3D131EB22Y
3D131EB26X
3D131EC04X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】犠牲リブによるショルダー陸の摩耗抑制効果を確保しつつ、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、複数の陸のうち最もタイヤ軸方向外側にある陸32の接地面33からタイヤ径方向に沿って内側に延びる細溝80を備えている。前記陸は、前記細溝によって、陸本体34と、前記陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置する犠牲リブ35と、に区画されている。前記犠牲リブは、タイヤ側壁面7からタイヤ径方向に沿って延びる第1環状溝90と、前記タイヤ側壁面からタイヤ軸方向に沿って延びる第2環状溝91と、を備えている。前記第1環状溝は、割り位置MSよりもタイヤ径方向外側に設けられている。前記第2環状溝は、前記割り位置よりもタイヤ径方向内側に設けられている。タイヤ径方向に対する前記第1環状溝の中心線の傾斜角度θ1は、30度以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を形成する複数の陸と、
サイドウォールの外表面であるタイヤ側壁面と、
前記複数の陸のうち最もタイヤ軸方向外側にある陸の前記接地面からタイヤ径方向に沿って内側に延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる細溝と、を備え、
前記複数の陸のうち最もタイヤ軸方向外側にある陸は、前記細溝によって、陸本体と、前記陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置し前記接地面の端を含む犠牲リブと、に区画され、
前記犠牲リブは、前記タイヤ側壁面からタイヤ径方向に沿って延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる第1環状溝と、前記タイヤ側壁面からタイヤ軸方向に沿って延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる第2環状溝と、を備え、
前記第1環状溝は、トレッドを形成するトレッドモールドと前記サイドウォールを形成するサイドモールドとの割り位置よりもタイヤ径方向外側に設けられ、
前記第2環状溝は、前記割り位置よりもタイヤ径方向内側に設けられ、
タイヤ径方向に対する前記第1環状溝の中心線の傾斜角度は、30度以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ軸方向に対する前記第2環状溝の中心線の傾斜角度は、-30度以上で且つ30度以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドに埋設される複数のベルトプライを備え、
前記第2環状溝は、前記複数のベルトプライのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側にあるベルト端よりもタイヤ径方向外側に設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2環状溝は、前記細溝のタイヤ軸方向内側の側壁面よりもタイヤ軸方向内側へ延びている、請求項1~3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスに用いられる空気入りタイヤは、接地面を形成する陸の端部に走行時の応力が集中しやすく、陸が摩耗しやすいことが知られている。
【0003】
特許文献1には、ショルダー陸に接地面からタイヤ径方向内側に延びる溝を設けることによって、ショルダー陸のタイヤ軸方向外側に犠牲リブを形成した空気入りタイヤが開示されている。当該犠牲リブを設けることによって走行時の応力の集中を分散して、犠牲リブを除くショルダー陸の摩耗を抑制している。
【0004】
当該犠牲リブには、タイヤ軸方向外側の表面からタイヤ軸方向の内側に延びる環状溝が設けられている。当該環状溝を設けることによって、犠牲リブに加えられる力を分散している。
【0005】
ところで、当該環状溝は、トレッドを形成するトレッドモールドとサイドウォールを形成するサイドモールドとの割り位置よりもタイヤ径方向外側に設けられており、トレッドモールドの釜抜け性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、犠牲リブによるショルダー陸の摩耗抑制効果を確保しつつ、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることが可能な空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、接地面を形成する複数の陸と、サイドウォールの外表面であるタイヤ側壁面と、前記複数の陸のうち最もタイヤ軸方向外側にある陸の前記接地面からタイヤ径方向に沿って内側に延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる細溝と、を備え、前記複数の陸のうち最もタイヤ軸方向外側にある陸は、前記細溝によって、陸本体と、前記陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置し前記接地面の端を含む犠牲リブと、に区画され、前記犠牲リブは、前記タイヤ側壁面からタイヤ径方向に沿って延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる第1環状溝と、前記タイヤ側壁面からタイヤ軸方向に沿って延び且つタイヤ周方向に沿って連続的に延びる第2環状溝と、を備え、前記第1環状溝は、トレッドを形成するトレッドモールドと前記サイドウォールを形成するサイドモールドとの割り位置よりもタイヤ径方向外側に設けられ、前記第2環状溝は、前記割り位置よりもタイヤ径方向内側に設けられ、タイヤ径方向に対する前記第1環状溝の中心線の傾斜角度は、30度以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の空気入りタイヤ1について、図面を参照して説明する。図において、「CD」はタイヤ周方向を意味し、「AD」はタイヤ軸方向を意味し、「RD」はタイヤ径方向を意味する。各図は、タイヤ新品時の形状を示す。
【0011】
図1及び
図2に示すように、空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」という)は、一対のビード(不図示)と、各々のビードからタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール2と、サイドウォール2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド3とを備える。ビードには、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア(不図示)と、硬質ゴムからなるビードフィラー(不図示)とが設けられている。ビードは、リム(不図示)のビードシートに装着され、空気圧が所定圧(例えばJATMAで決められた空気圧)であれば、タイヤ内圧によりリムフランジに適切にフィッティングし、タイヤ1がリムに嵌合される。
【0012】
タイヤ1は、トレッド3からサイドウォール2を経てビードに至るトロイド状のカーカス4を備える。カーカス4は、一対のビード同士の間に設けられ、その端部がビードコアを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が設けられている。
【0013】
カーカス4のタイヤ径方向外側RD1には、カーカス4を補強するための複数枚(本実施形態では4枚)のベルトプライ6a,6b,6c,6dと、トレッドゴム30と、がタイヤ径方向RDの内側から外側に向けて順に設けられている。複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dは、カーカス4とトレッドゴム30との間に設けられている。トレッドゴム30が形成する接地面33とカーカス4との間に複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dが設けられている。トレッド3の外表面には、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝31と、主溝31により区画されタイヤ周方向CDに連続する陸32とが形成されている。本実施形態に係るタイヤ1は、リブタイヤであるので、陸32がタイヤ周方向CDに分断されていない(ブロックが形成されていない)。本実施形態において、タイヤ1は、タイヤ1の片側に2本の主溝31が形成され、全体で4本の主溝31を有する。なお、タイヤ1は、上記に限られず、例えば、全体で2本または3本の主溝を有していてよく、5本以上の主溝を有していてもよい。
【0014】
複数の陸32は、主溝31によって区画されている。本実施形態において、複数の陸32は、ショルダー陸32aとクオーター陸32bとセンター陸32cとであるが、これに限られない。陸32の数は、適宜変更可能である。センター陸32cは、タイヤ赤道面CLに最も近い陸である。ショルダー陸32aは、複数の主溝31のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある主溝31よりもタイヤ軸方向外側AD1に形成される陸である。即ち、ショルダー陸32aは、複数の陸32のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある陸である。クオーター陸32bは、ショルダー陸32aとセンター陸32cとの間に設けられる陸である。主溝31の数によってクオーター陸32bが省略される場合もある。
【0015】
4枚のベルトプライ6a、6b、6c、6dは、それぞれ簾状に平行配列した複数本のスチールコードを含み、それらをゴム被覆して形成されている。4枚のベルトプライ6a、6b、6c、6dのうち、カーカス4からタイヤ径方向外側RD1に向けて第2及び第3番目となるベルトプライ6b、6cのコードは、タイヤ軸方向ADに対して互いに逆方向に傾斜して交差している。第2及び第3のベルトプライ6b、6cは、いわゆるメインベルトであり、ベルトプライ6bとベルトプライ6cとの間にトレッドゴム30が入り込んでいる。
【0016】
トレッド3の陸32は、接地面33を形成している。接地面33におけるタイヤ軸方向外側AD1の接地端LEよりも更にタイヤ軸方向外側AD1には、サイドウォールゴムで形成されるタイヤ側壁面7がある。タイヤ側壁面7は、サイドウォール2の外表面であり、接地端LEからタイヤ最大幅部位(不図示)までの領域を含んでいる。本実施形態のように、接地端LEは、重荷重用タイヤにおいては接地面33とタイヤ側壁面7との稜線が該当する。接地端LEは、接地面33のタイヤ軸方向ADの最も外側の端である。
【0017】
接地面33は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面を意味する。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤごとに定めるリムである。JATMAであれば標準リム、TRA、又はETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0018】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている空気圧である。JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0019】
正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている荷重である。JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0020】
図3は、
図1の領域IIIの拡大図である。
図1及び
図3に示すように、タイヤ1は、陸32(ショルダー陸32a)の接地面33からタイヤ径方向RDに沿ってタイヤ径方向内側RD2に延びる細溝80を有する。細溝80は、タイヤ周方向CDに沿って連続的に延びている。細溝80(その溝底80aを含む)は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ軸方向外側AD1に設けられている。
【0021】
細溝80は、ショルダー陸32aを、陸本体34と犠牲リブ35とに区画している。即ち、複数の陸32のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある陸(ショルダー陸32a)は、細溝80によって、陸本体34と、陸本体34よりもタイヤ軸方向外側AD1に位置し接地面33の端(接地端LE)を含む犠牲リブ35と、に区画される。犠牲リブ35を設けることによって、陸本体34よりも先に犠牲リブ35を摩耗させ、陸本体34の摩耗を抑制できる。
【0022】
細溝80のタイヤ軸方向ADの幅E3は、2mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35がしなった際に、犠牲リブ35と陸本体34とが接触することを抑制できる。その結果、犠牲リブ35と陸本体34とが一体的に挙動することを抑制でき、陸本体34に対する摩耗抑制効果を確保することができる。細溝80のタイヤ軸方向ADの幅は、5mm以下であることが好ましい。これにより、陸本体34のタイヤ軸方向ADの陸幅が小さくなることを抑制できる。
【0023】
細溝80の溝深さは、例えば、15mm以下である。細溝80の溝深さは、例えば、主溝31の深さの80%以上で且つ100%以下である。
【0024】
図3に示すように、細溝80のタイヤ軸方向外側AD1の側壁面80bは、接地端LEから2mm以内の位置に設けられていることが好ましい。即ち、接地面33における犠牲リブ35のタイヤ軸方向ADの幅D1は、2mm以下であることが好ましい。これにより、陸本体34のタイヤ軸方向ADの陸幅が小さくなることを抑制できる。幅D1は、1.2mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保することができ、犠牲リブ35が折れ(曲が)ることを抑制できる。細溝80の側壁面80bは、例えば、接地端LEからタイヤ軸方向内側AD2に向けて、ショルダー陸32aのタイヤ軸方向ADの陸幅の20%の位置よりもタイヤ軸方向外側AD1に設けられていることが好ましい。
【0025】
犠牲リブ35は、陸本体34よりもタイヤ軸方向外側AD1に設けられている。犠牲リブ35は、接地面33の端(接地端LE)を含み、接地面33からタイヤ径方向RDに沿ってタイヤ径方向内側RD2に延びている。本実施形態において、細溝80は、タイヤ径方向RDと実質的に平行に延びているが、これに限られない。
【0026】
犠牲リブ35は、少なくとも1つの第1環状溝90を有する。第1環状溝90を設けることによって犠牲リブ35をしならせることが可能になり、第1環状溝90の溝底も応力を負担するので、細溝80の溝底80aに作用する応力を分散でき、細溝80の溝底80aのクラックを抑制できる。また、接地端LEにかかる接地圧力を小さくすることができ、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制することができる。
【0027】
第1環状溝90は、細溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向外側RD1に設けられている。第1環状溝90が複数設けられている場合には、全ての第1環状溝90が細溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向外側RD1に設けられる。
【0028】
第1環状溝90は、タイヤ側壁面7に開口し且つ犠牲リブ35内で終端している。第1環状溝90は、タイヤ周方向CDに沿って連続的に延びている。第1環状溝90は、円環状に形成されている(
図2参照)。第1環状溝90は、タイヤ径方向RDに沿って延びている。本実施形態において、第1環状溝90は、タイヤ径方向RDに沿って直線状に延びているが、これに限られない。
【0029】
第1環状溝90は、細溝80の溝深さの中央C1と実質的に一致する位置に設けられているが、これに限られない。第1環状溝90は、例えば、細溝80の溝深さの中央C1よりもタイヤ径方向内側RD2に設けられていてもよい。これにより、路面に接触する接地面33から第1環状溝90を遠ざけることができるので、第1環状溝90を起点とするクラックの発生を抑制可能となる。第1環状溝90が複数ある場合には、最もタイヤ径方向外側RD1にある第1環状溝90が、細溝80の溝深さの中央C1と実質的に一致する位置、または、細溝80の溝深さの中央C1よりもタイヤ径方向内側RD2に設けられていることが好ましい。中央C1は、細溝80の溝深さの半分の位置である。
【0030】
本実施形態において、第1環状溝90は、細溝80の溝深さの中央C1をタイヤ径方向内側RD2に超えて延びているが、これに限られない。
【0031】
第1環状溝90の幅E1は、2mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35にかかる応力を分散させることができる。第1環状溝90の幅E1は、5mm以下であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保し、外傷に対する耐久性を確保することができる。第1環状溝90が複数設けられる場合には、第1環状溝90の合計幅が5mm以下であることが好ましい。
【0032】
第1環状溝90は、トレッド3を形成するトレッドモールド(不図示)とサイドウォール2を形成するサイドモールド(不図示)との割り位置MSよりもタイヤ径方向外側RD1に設けられている。タイヤ1の割り位置MSは、トレッドモールドとサイドモールドとの嵌合隙間に生じるゴムバリの除去跡などで確認可能である。脱型の際、トレッドモールドは、タイヤ径方向RDに沿ってタイヤ径方向外側RD1に移動し、サイドモールドは、タイヤ軸方向ADに沿ってタイヤ軸方向外側AD1に移動する。
【0033】
第1環状溝90は、犠牲リブ35のタイヤ軸方向ADの中央線C4よりもタイヤ軸方向外側AD1に設けられていることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保することができる。
【0034】
タイヤ径方向RDに対する第1環状溝90の中心線C2の傾斜角度θ1は、0度以上である。これにより、サイドウォール2の一部が薄肉となることを抑制できる。傾斜角度θ1は、30度以下である。これにより、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることができる。その結果、トレッドモールドにおいて第1環状溝90を形成する突起が折れ(曲が)ることを抑制できる。傾斜角度θ1は、10度以上であることがより好ましく、25度以下であることがより好ましい。傾斜角度θ1は、タイヤ径方向内側RD2に向かってタイヤ軸方向内側AD2に傾斜する角度である。本開示の寸法や角度などは、タイヤ1を正規リムに装着し、正規内圧を適用した無負荷状態において定められる。
【0035】
犠牲リブ35は、少なくとも1つの第2環状溝91を有する。第2環状溝91を設けることによって犠牲リブ35をしならせることが可能になり、第2環状溝91の溝底91aも応力を負担するので、細溝80の溝底80aに作用する応力を分散でき、細溝80の溝底80aのクラックを抑制できる。また、接地端LEにかかる接地圧力を小さくすることができ、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制することができる。
【0036】
第2環状溝91は、細溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向内側RD2に設けられている。第2環状溝91が複数設けられている場合には、全ての第2環状溝91が細溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向内側RD2に設けられる。
【0037】
第2環状溝91は、タイヤ側壁面7に開口している。第2環状溝91は、タイヤ周方向CDに沿って連続的に延びている。第2環状溝91は、円環状に形成されている(
図2参照)。第2環状溝91は、タイヤ軸方向ADに沿って延びている。本実施形態において、第2環状溝91は、タイヤ軸方向ADに沿って直線状に延びているが、これに限られない。第2環状溝91は、割り位置MSよりもタイヤ径方向内側RD2に設けられている。
【0038】
第2環状溝91とベルト端60との最短距離D3は3mm以上あることが好ましい。これにより、万一、第2環状溝91にクラックが発生した場合でも、そのクラックがベルトプライ6bに到達することを抑制できる。
【0039】
第2環状溝91とカーカス4との最短距離D5は、3mm以上あることが好ましい。これにより、万一、第2環状溝91にクラックが発生した場合でも、そのクラックがカーカス4に到達することを抑制できる。
【0040】
第2環状溝91と細溝80との最短距離D6は、10mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の付け根部分の剛性を確保することができ、犠牲リブ35が折れ(曲が)ることを抑制できる。
【0041】
第2環状溝91の幅E2は、5mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35にかかる応力を分散させることができる。第2環状溝91の幅E2は、7mm以下であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保し、外傷に対する耐久性を確保することができる。第2環状溝91が複数設けられる場合には、第2環状溝91の合計幅が7mm以下であることが好ましい。
【0042】
第2環状溝91の幅E2は、第1環状溝90の幅E1よりも大きいことが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保しつつ、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制することができる。
【0043】
タイヤ軸方向ADに対する第2環状溝91の中心線C3の傾斜角度θ2は、-30度以上で且つ30度以下であることが好ましい。これにより、サイドモールドの釜抜け性を向上させることができる。その結果、サイドモールドにおいて第2環状溝91を形成する突起が折れ(曲が)ることを抑制できる。傾斜角度θ2は、-20度以上で且つ20度以下であることがより好ましく、-10度以上で且つ10度以下であることがさらに好ましい。なお、傾斜角度θ2は、上記に限られず、例えば、-30度未満であってもよく、30度を超えていてもよい。傾斜角度θ2において、マイナスはタイヤ軸方向内側AD2に向かってタイヤ径方向内側RD2に傾斜していることを意味する。
【0044】
傾斜角度θ2は、0度以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35を、ベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に離れたゴムで形成することができる。その結果、犠牲リブ35がしなりやすくなり、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制できる。
【0045】
第2環状溝91(の溝底91a)は、複数のベルトプライ6a、6b、6c、6d(
図1参照)のベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に設けられていることが好ましい。これにより、犠牲リブ35を、ベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に離れたゴムで形成することができる。その結果、犠牲リブ35がしなりやすくなり、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制できる。なお、第2環状溝91は、上記に限られず、例えば、ベルト端60よりもタイヤ径方向内側RD2に設けられていてもよい。
【0046】
第2環状溝91は、細溝80のタイヤ軸方向内側AD2の側壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ延びていることが好ましい。即ち、第2環状溝91の溝底91aは、側壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2に設けられていることが好ましい。これにより、犠牲リブ35が摩耗して消失した後であっても陸本体34の接地面33の端の接地圧力を下げることができ、陸本体34の摩耗を抑制することができる。なお、第2環状溝91の溝底91aは、上記に限られず、側壁面80cよりもタイヤ軸方向外側AD1に設けられていてもよい。
【0047】
本実施形態において、第1環状溝90の溝底は、直線状に形成され、第2環状溝91の溝底91aは、直線状に形成されているが、これに限られない。第1環状溝90の溝底は、例えば、湾曲した形状に形成されていてもよい。第2環状溝91の溝底91aも同様である。
【0048】
図1に示すように、第1環状溝90と第2環状溝91との最短距離D4は、10mm以上であることが好ましい。これにより、犠牲リブ35の剛性を確保することができる。
【0049】
[1]
以上、本開示の空気入りタイヤ1は、接地面33を形成する複数の陸32と、サイドウォール2の外表面であるタイヤ側壁面7と、複数の陸32のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある陸32aの接地面33からタイヤ径方向RDに沿って内側(タイヤ径方向内側RD2)に延び且つタイヤ周方向CDに沿って連続的に延びる細溝80と、を備え、複数の陸32のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある陸(ショルダー陸32a)は、細溝80によって、陸本体34と、陸本体34よりもタイヤ軸方向外側AD1に位置し接地面33の端(接地端LE)を含む犠牲リブ35と、に区画され、犠牲リブ35は、タイヤ側壁面7からタイヤ径方向RDに沿って延び且つタイヤ周方向CDに沿って連続的に延びる第1環状溝90と、タイヤ側壁面7からタイヤ軸方向ADに沿って延び且つタイヤ周方向CDに沿って連続的に延びる第2環状溝91と、を備え、第1環状溝90は、トレッド3を形成するトレッドモールドとサイドウォール2を形成するサイドモールドとの割り位置MSよりもタイヤ径方向外側RD1に設けられ、第2環状溝91は、割り位置MSよりもタイヤ径方向内側RD2に設けられ、タイヤ径方向RDに対する第1環状溝90の中心線C2の傾斜角度θ1は、30度以下である。
【0050】
斯かる構成によれば、犠牲リブ35を設けることによって、陸本体34よりも先に犠牲リブ35を摩耗させ、陸本体34の摩耗を抑制できる。第1環状溝90及び第2環状溝91を設けることによって、犠牲リブ35をしならせることが可能になり、接地端LEにかかる接地圧力を小さくすることができ、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制することができる。傾斜角度θ1を30度以下とすることにより、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることができる。また、タイヤ軸方向ADに沿って延びる第2環状溝91を割り位置MSよりもタイヤ径方向内側RD2に設けることにより、第2環状溝91をサイドモールドで形成することができ、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることができる。これらにより、犠牲リブ35によるショルダー陸32aの摩耗抑制効果を確保しつつ、トレッドモールドの釜抜け性を向上させることができる。
【0051】
[2]
上記実施形態[1]に係る空気入りタイヤ1において、タイヤ軸方向ADに対する第2環状溝91の中心線C3の傾斜角度θ2は、-30度以上で且つ30度以下である、ことが好ましい。
【0052】
斯かる構成によれば、サイドモールドの釜抜け性を向上させることができる。その結果、サイドモールドにおいて第2環状溝91を形成する突起が折れ(曲が)ることを抑制できる。
【0053】
[3]
上記実施形態[1]又は[2]に係る空気入りタイヤ1は、トレッド3に埋設される複数のベルトプライ6a、6b、6c、6dを備え、第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a、6b、6c、6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に設けられている、ことが好ましい。
【0054】
斯かる構成によれば、犠牲リブ35を、ベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に離れたゴムで形成することができる。これにより、犠牲リブ35がしなりやすくなり、犠牲リブ35の早期摩耗を抑制できる。
【0055】
[4]
上記実施形態[1]~[3]の何れか1つに係る空気入りタイヤ1において、第2環状溝91は、細溝80のタイヤ軸方向内側AD2の側壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ延びている、ことが好ましい。
【0056】
斯かる構成によれば、犠牲リブ35が摩耗して消失した後であっても陸本体34の接地面33の端の接地圧力を下げることができ、陸本体34の摩耗を抑制することができる。
【0057】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0058】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…タイヤ、2…サイドウォール、3…トレッド、30…トレッドゴム、31…主溝、32…陸、32a…ショルダー陸、32b…クオーター陸、32c…センター陸、33…接地面、34…陸本体、35…犠牲リブ、4…カーカス、5…インナーライナーゴム、6a、6b、6c、6d…ベルトプライ、60…ベルト端、7…タイヤ側壁面、80…細溝、80b、80c…側壁面、90…第1環状溝、91…第2環状溝、LE…接地端、MS…割り位置