(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027662
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】回転電機の軸受構造および回転電機
(51)【国際特許分類】
F16C 25/08 20060101AFI20240222BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20240222BHJP
F16C 35/08 20060101ALI20240222BHJP
F16C 35/06 20060101ALI20240222BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20240222BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16C25/08 Z
H02K5/173 A
F16C35/08
F16C35/06 Z
F16C19/54
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130632
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】七五三掛 貴浩
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
3J701
5H605
【Fターム(参考)】
3J012AB04
3J012BB01
3J012BB03
3J012BB05
3J012CB03
3J012DB09
3J012DB14
3J012FB10
3J117AA01
3J117DA01
3J117DB10
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA81
3J701FA41
3J701GA24
5H605AA05
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC03
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB16
5H605EB39
(57)【要約】
【課題】軸受の予圧抜けを抑制できる回転電機の軸受構造を提供する。
【解決手段】回転電機の軸受構造は、ロータが固定されたシャフトと、シャフトを回転可能に軸支する軸受と、軸受の外輪を内周面で受ける軸受保持部を有し、シャフトが挿通されるハウジングと、軸受保持部内に配置され、シャフトの軸方向一方側に軸受を付勢する皿ばねと、を備える。皿ばねは、軸受よりも軸方向他方側に配置され、軸受保持部の内周面には、周方向に沿って切り欠かれ、軸方向他方側に圧縮された皿ばねの外周を受ける環状の溝が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータが固定されたシャフトと、
前記シャフトを回転可能に軸支する軸受と、
前記軸受の外輪を内周面で受ける軸受保持部を有し、前記シャフトが挿通されるハウジングと、
前記軸受保持部内に配置され、シャフトの軸方向一方側に軸受を付勢する皿ばねと、を備え、
前記皿ばねは、前記軸受よりも軸方向他方側に配置され、
前記軸受保持部の内周面には、周方向に延び、前記軸方向他方側に圧縮された前記皿ばねの外周を受ける環状の溝が形成されている
回転電機の軸受構造。
【請求項2】
前記溝は、前記軸受に予圧を負荷している状態の前記皿ばねの外周の位置よりも軸方向他方側に形成されている
請求項1に記載の回転電機の軸受構造。
【請求項3】
前記溝の前記軸方向一方側の面は、前記軸受保持部の内周面と接続される傾斜面である
請求項1に記載の回転電機の軸受構造。
【請求項4】
前記シャフトの軸方向他方側は、回転電機の負荷側である
請求項1に記載の回転電機の軸受構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転電機の軸受構造と、
ステータと、
を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の軸受構造および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から回転電機において、ロータに挿通されたシャフトを2つの軸受で支持し、一方側の軸受は軸方向位置を固定し、他方側の軸受は軸方向位置を固定せずに自由端とする構成が知られている。この種の回転電機では、騒音や振動を抑制するために、他方側の軸受と当該軸受と対向する筐体の間にばねを配置し、他方側の軸受に予圧を負荷することが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の回転電機では、外部から予圧を超える負荷がかかるとシャフトが軸方向に移動し、軸受に負荷されている予圧が抜けてしまう。このような予圧の抜けが発生すると軸受の内部で遊びが生じ、軸受のがたつきで回転電機の騒音や振動が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、軸受の予圧抜けを抑制できる回転電機の軸受構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る回転電機の軸受構造は、ロータが固定されたシャフトと、シャフトを回転可能に軸支する軸受と、軸受の外輪を内周面で受ける軸受保持部を有し、シャフトが挿通されるハウジングと、軸受保持部内に配置され、シャフトの軸方向一方側に軸受を付勢する皿ばねと、を備える。皿ばねは、軸受よりも軸方向他方側に配置され、軸受保持部の内周面には、周方向に延び、軸方向他方側に圧縮された皿ばねの外周を受ける環状の溝が形成されている。
【0007】
また、溝は、軸受に予圧を負荷している状態の皿ばねの外周の位置よりも軸方向他方側に形成されていてもよい。
また、溝の軸方向一方側の面は、軸受保持部の内周面と接続される傾斜面であってもよい。
また、シャフトの軸方向他方側は、回転電機の負荷側であってもよい。
また、本発明の他の態様の回転電機は、上記の回転電機の軸受構造と、ステータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、軸受の予圧抜けを抑制できる回転電機の軸受構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の回転電機の構成例を示す図である。
【
図3】第2蓋部の軸受保持部を一方側からみた図である。
【
図4】比較例の回転電機における軸受の状態を示す模式図である。
【
図5】第2蓋部の軸受保持部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の回転電機の構成例を示す図である。なお、以下の説明では、回転軸Axの延長方向と平行な方向を軸方向と称し、回転軸Axを中心とする周方向を単に周方向と称し、回転軸Axを中心とする径方向を単に径方向と称する。
【0012】
図1に示す回転電機10は、インナーロータ型モータであり、ロータ11と、ステータ12と、シャフト13と、ハウジング14と、軸受15、16とを備える。
図1において、回転電機10の回転軸Axの延長方向(軸方向)は紙面左右方向である。また、図中左側を軸方向の一方側とも称し、図中右側を軸方向の他方側と称することもある。なお、回転電機10の負荷側は他方側であるものとする。
【0013】
ロータ11は、回転軸Axに沿ってシャフト13が嵌入された円筒状の鉄心を有する。シャフト13は、軸方向の一方側および他方側に配置された軸受15、16により回転自在に支持されている。ロータ11は、例えば、磁石埋込型回転子、表面磁石型回転子、かご型回転子、巻線型回転子などのいずれの構成であってもよい。
【0014】
ステータ12は、僅かなエアギャップを隔ててロータ11の外周に同心状に配置される。ステータ12には、ロータ11の外周に沿ってコイル12aが装着されている。回転電機10においては、コイル12aの電流制御でステータ12の磁界を順番に切り替えることで、ロータ11の磁界との吸引力または反発力をステータ12に生じさせる。これにより、回転軸Axを中心としてロータ11およびシャフト13が回転する。
【0015】
ハウジング14は、本体部14a、第1蓋部14b、第2蓋部14cを有し、ロータ11およびステータ12を内部に収容する。本体部14aは、ロータ11およびステータ12を収容し、一方側および他方側が開口された筒状の内部空間を有している。
【0016】
第1蓋部14bは、本体部14aの一方側に取り付けられ、本体部14aの一方側の開口を塞ぐ。シャフト13の一方側の端部は、第1蓋部14bを貫通してハウジング14の外側に突出している。また、第1蓋部14bの内側面には、シャフト13を受ける穴の周囲に軸受保持部17が形成されている。軸受保持部17は、一方側の軸受15を収容する円筒状の切り欠きであり、他方側が開口されるとともに一方側に環状の抜け止め部を有している。
【0017】
第1蓋部14bの軸受保持部17の他方側にはベアリングプレート19が取り付けられている。これにより、一方側の軸受15の外輪15aは、軸受保持部17の内周面に受けられるとともに、軸受保持部17とベアリングプレート19に挟まれて軸方向に位置決めされている。
【0018】
第2蓋部14cは、本体部14aの他方側に取り付けられ、本体部14aの他方側の開口を塞ぐ。シャフト13の他方側の端部は、第2蓋部14cを貫通してハウジング14の外側に突出している。また、第2蓋部14cの内側面には、シャフト13を受ける穴の周囲に軸受保持部18が形成されている。
【0019】
図2(a)、(b)は、第2蓋部14cの軸受保持部18を示す拡大図である。軸受保持部18は、他方側の軸受16を収容する円筒状の切り欠きであり、一方側が開口されるとともに他方側に環状の抜け止め部18aを有している。また、軸受16の外輪16aは、軸受保持部18の内周面18bに受けられている。
【0020】
第2蓋部14cの軸受保持部18には、他方側の軸受16よりも他方側に予圧ばねとしての皿ばね20が挿入されている。皿ばね20は、軸受保持部18の抜け止め部18aと軸受16の外輪16aに挟まれ、外周側が一方側に向けて傾くように配置されている。
【0021】
皿ばね20は、軸受16の外輪16aを一方側に付勢することで、軸受16を介してシャフト13に一方側への予圧を負荷する機能を担う。また、シャフト13が他方側に引き込まれたときには、シャフト13とともに他方側に動く軸受16によって皿ばね20は他方側に圧縮される。
【0022】
また、
図2、
図3に示すように、第2蓋部14cにおいて軸受保持部18の内周面18bには、周方向に延びる環状の溝18cが形成されている。溝18cの軸方向の位置は、抜け止め部18aからは間隔をあけて形成され、軸受16に予圧を負荷している状態の皿ばね20の外周部の位置よりも圧縮側(他方側)に位置している。
図2(b)に示すように、溝18cは、皿ばね20が他方側に圧縮されたときに皿ばね20の外周部を溝18cで受け、皿ばね20の過剰な圧縮を抑制する。
【0023】
次に、
図4を参照しつつ、シャフト13が引き込まれた時の動作について説明する。
図4(a)は、比較例の回転電機10aにおける通常時の軸受15、16の状態を示す模式図である。
図4(b)は、比較例の回転電機10aにおいて、シャフト13が他方側に引き込まれたときの軸受15、16の状態を示す模式図である。
【0024】
比較例の回転電機10aは、他方側の軸受保持部18に溝18cが形成されていない点で本実施形態の回転電機10と相違する。簡単のため、
図4ではロータ11およびステータ12の図示はいずれも省略している。
【0025】
図4(a)に示すように、比較例の回転電機10aのシャフト13は、皿ばね20によって一方側に予圧が負荷されている。これにより、一方側の軸受15では、外輪15aの一方側と内輪15bの他方側に転動体15cが点接触した状態で、ばね荷重によって転動体15cが押さえつけられる。同様に、他方側の軸受16では、外輪16aの他方側と内輪16bの一方側に転動体16cが点接触した状態で、ばね荷重によって転動体16cが押さえつけられる。したがって、軸受15、16はいずれもがたつきのない状態で回転する。
【0026】
一方、
図4(b)に示すように、予圧を超える圧力でシャフト13が他方側に引き込まれると、シャフト13は、シャフト13に固定された内輪15b、16bとともに
図4(a)の状態から他方側に移動する。すると、他方側の軸受16では、転動体16cを介して外輪16aに他方側への荷重が伝達される。そして、軸受16の外輪16aによって皿ばね20が過剰に圧縮され、シャフト13および軸受15、16に予圧がかからない予圧抜けの状態となる。
【0027】
図4(b)の予圧抜けの状態では、一方側の軸受15の内部で遊びが生じ、転動体15cがかたつくことで騒音や振動が発生してしまう。なお、他方側の軸受16では、軸受16が大きな荷重を受けることで、通常よりも転動体16cが摩耗しやすくなる。
【0028】
これに対し、本実施形態の回転電機10では、軸受保持部18の内周面18bにおいて環状の溝18cが形成されている。
図2(b)に示すように、本実施形態の回転電機10では、皿ばね20が他方側に圧縮されると、皿ばね20の外周部が溝18cに入り込んで引っ掛かる。これにより、皿ばね20が他方側に移動しなくなるとともに、溝18cに引っ掛かった皿ばね20は、軸受16の外輪16aからの荷重に対して一方側への反力を生じさせる。
【0029】
以上のように、本実施形態の回転電機10では、溝18cに引っ掛かった皿ばね20によって、軸受16の外輪16aの他方側の動きが規制される。これにより、シャフト13の予圧抜けが抑制され、軸受15のかたつきによる騒音や振動なども抑制できる。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、上記実施形態では回転電機10がモータである場合について説明したが、回転電機10は発電機であってもよい。
【0031】
また、上記実施形態の軸受保持部18において、
図5に示すように、溝18cの一方側に、軸受保持部18の内周面18bと接続される傾斜面18dが環状に形成されていてもよい。
図5の構成例によれば、皿ばね20に対して引き込み方向の負荷が小さくなったときに、皿ばね20が溝18の傾斜面18dに案内されて通常時の位置に復帰することが容易となる。なお、上記の傾斜面18dは、一方側に向けて溝が浅くなるテーパー状でもよく、溝18cの一方側にアールを付けることで曲面状に形成してもよい。
【0032】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
10…回転電機、11…ロータ、12…ステータ、12a…コイル、13…シャフト、14…ハウジング、14a…本体部、14b…第1蓋部、14c…第2蓋部、15,16…軸受、15a,16a…外輪、15b,16b…内輪、15c,16c…転動体、17,18…軸受保持部、18a…抜け止め部、18b…内周面、18c…溝、18d…傾斜面、19…ベアリングプレート、20…皿ばね