(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027674
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】光復号装置及び光復号方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/60 20130101AFI20240222BHJP
【FI】
H04B10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130660
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】相川 洋平
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AA17
5K102AH27
5K102PH50
5K102RB01
(57)【要約】
【課題】低電力化と微細化に寄与する光復号装置及び光復号方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、光復号装置が提供される。この光復号装置は、複素信号生成部と、シフト部とを備える。複素信号生成部は、入力信号に基づいた複素信号を生成する。入力信号は、二位相偏移変調された信号である。シフト部は、複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成する。出力信号は、入力信号が表現可能な値の数が生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光復号装置であって、
複素信号生成部と、シフト部とを備え、
前記複素信号生成部は、入力信号に基づいた複素信号を生成し、
前記入力信号は、二位相偏移変調された信号であり、
前記シフト部は、前記複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成し、
前記出力信号は、前記入力信号が表現可能な値の数が生成される
光復号装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光復号装置において、
前記複素信号生成部は、入力信号が表現可能な値の数の複素信号を生成し、
前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向又は負方向にシフトした出力信号を生成する
光復号装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光復号装置において、
前記入力信号は、第1の入力信号と第2の入力信号とで構成され、
前記複素信号生成部は、尤度を反映した複素信号を生成する
光復号装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光復号装置において、
前記複素信号は、
前記第1の入力信号の位相を反転した信号と、前記第2の入力信号とを合波した信号と、
前記第1の入力信号と、前記第2の入力信号とを合波した信号と、
前記第1の入力信号と、前記第2の入力信号の位相を反転した信号とを合波した信号と、
前記第1の入力信号の位相を反転した信号と、前記第2の入力信号の位相を反転した信号とを合波した信号と、
を含む
光復号装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光復号装置において、
前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、該複素信号の振幅の値をシフト量としてシフトした出力信号を生成する
光復号装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光復号装置において、
前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向にシフトした出力信号を生成する
光復号装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光復号装置において、
変換部を備え、
前記変換部は、前記出力信号を前記入力信号が表現可能な値の数に応じたビット数の電気信号に変換する
光復号装置。
【請求項8】
光復号方法であって、
二位相偏移変調された入力信号に基づいて、該入力信号に応じた複素信号を生成し、
前記複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成し、
前記出力信号は、前記入力信号が表現可能な値の数が生成される
光復号方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光復号装置及び光復号方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光による情報処理を行う技術が向上し、光符号化装置や光複合装置等が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光技術は、プロセッサ等への導入が検討されている。このため、光技術を利用した装置の低電力化及び微細化が重要となっている。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、低電力化と微細化に寄与する光復号装置及び光復号方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、光復号装置が提供される。この光復号装置は、複素信号生成部と、シフト部とを備える。複素信号生成部は、入力信号に基づいた複素信号を生成する。入力信号は、二位相偏移変調された信号である。シフト部は、複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成する。出力信号は、入力信号が表現可能な値の数が生成される。
【0007】
本発明の一態様によれば、光信号を復号する際の低電力化と微細化に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る光復号装置1を含む情報処理系の構成例を示した図である。
【
図4】シフト部による複素信号のシフトの例を示した図である。
【
図6】光復号装置1の入出力の対応を示した図である。
【
図7】シフト部による複素信号のシフトの例を示した図である。
【
図8】入力信号が3ビットの場合の光復号装置の複素信号生成部の構成例を示した図である。
【
図9】変形例3における光復号装置の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流・光等で表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
1.全体構成
図1は、本発明の実施形態に係る光復号装置1を含む情報処理系の構成例を示した図である。同図に示すように、光復号装置1は、光処理系2と電気処理系3の間に配設され、光処理系2から入力された信号を復号して電気処理系3に出力する。また、電気処理系3からは、図示しない光符号化装置等を経て、光処理系2に信号が伝達される。
【0013】
2.装置構成
図2は、光復号装置1の構成例を示した図である。同図に示すように、光復号装置1は、複素信号生成部と、シフト部とを備える。具体的には、光復号装置1は、複素信号生成部11-10と、複素信号生成部11-00と、複素信号生成部11-01と、複素信号生成部11-11と、シフト部15-10と、シフト部15-00と、シフト部15-01と、シフト部15-11とを備える。
【0014】
複素信号生成部11-10、複素信号生成部11-00、複素信号生成部11-01、複素信号生成部11-11には、それぞれ、入力信号が入力される。入力信号は、第1の入力信号である信号Aと、第2の入力信号である信号Bとで構成される、2ビットの信号である。また、入力信号は、二位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)された信号である。したがって、複素信号生成部11-10、複素信号生成部11-00、複素信号生成部11-01、複素信号生成部11-11を含む複素信号生成部は、入力信号に基づいた複素信号を生成する。具体的には、複素信号生成部は、入力信号が表現可能な値の数である4つの複素信号を生成する。
【0015】
シフト部15-10、シフト部15-00、シフト部15-01、シフト部15-11は、それぞれ、複素信号生成部11-10が生成した複素信号、複素信号生成部11-00が生成した複素信号、複素信号生成部11-01が生成した複素信号、複素信号生成部11-11が生成した複素信号が入力されるとともに、プローブ光が入力され、各シフト部は、複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成する。例えば、各シフト部は、複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向又は負方向にシフトした出力信号を生成する。
【0016】
3.複素信号の生成
次に、複素信号生成部による複素信号の生成について説明する。
図3は、複素信号生成部の詳細を示した図である。同図に示すように、複素信号生成部11-10は、位相シフト部12-10と、位相シフト部13-10と、合波部14-10とを備える。同様に、複素信号生成部11-00は、位相シフト部12-00と、位相シフト部13-00と、合波部14-00とを備え、複素信号生成部11-01は、位相シフト部12-01と、位相シフト部13-01と、合波部14-01とを備え、複素信号生成部11-11は、位相シフト部12-11と、位相シフト部13-11と、合波部14-11とを備える。
【0017】
位相シフト部12-10、位相シフト部12-11、位相シフト部13-01、位相シフト部13-11は、入力された信号の位相をπだけシフト、つまり、位相を反転させる。位相シフト部12-00、位相シフト部12-01、位相シフト部13-10、位相シフト部13-00は、入力された信号の位相シフトは行わない。なお、位相シフト部12-00、位相シフト部12-01、位相シフト部13-10、位相シフト部13-00は、位相シフトを行わないため、省略することが可能である。
【0018】
合波部14-10は、位相シフト部12-10が出力した信号と、位相シフト部13-10が出力した信号とを合波する。同様に、合波部14-00は、位相シフト部12-00が出力した信号と、位相シフト部13-00が出力した信号とを合波し、合波部14-01は、位相シフト部12-01が出力した信号と、位相シフト部13-01が出力した信号とを合波し、合波部14-11は、位相シフト部12-11が出力した信号と、位相シフト部13-11が出力した信号とを合波する。
【0019】
このような構成により、複素信号生成部は、第1の入力信号である信号Aの位相を反転した信号と、第2の入力信号である信号Bとを合波した信号と、第1の入力信号である信号Aと、第2の入力信号である信号Bとを合波した信号と、第1の入力信号である信号Aと、第2の入力信号である信号Bの位相を反転した信号とを合波した信号と、第1の入力信号である信号Aの位相を反転した信号と、第2の入力信号である信号Bの位相を反転した信号とを合波した信号と、を含む複素信号を生成する。
【0020】
例えば、
図3に示すように、信号Aが複素平面の実軸の負側に存在する「1」を示す信号であり、信号Bが複素平面の実軸の正側に存在する「0」を示す信号である場合、複素信号生成部11-10は、位相シフト部12-10で信号Aの位相を反転した信号A-10を生成し、位相シフト部13-10で信号Bと同位相の信号B-10を生成する。そして、合波部14-10が信号A-10と信号B-10を合波した信号C-10を生成する。信号C-10は、複素平面の実軸の正側に存在する位相で、振幅が入力信号A及び入力信号Bの2倍の信号となる。このとき、動作の前提条件である信号Aおよび信号Bの組み合わせを対象符号と呼ぶ。すなわち、複素信号生成部11-10における対象符号は「10」となる。
【0021】
このとき、複素信号生成部11-00は、対象符号が「00」である場合において、複素信号生成部11-10と同様に稼働する。すなわち、信号Aと同位相の信号A-00と信号Bと同位相の信号B-00とを合波した信号C-00を生成する。同様に、複素信号生成部11-01は、信号Aと同位相の信号A-01と信号Bの位相を反転した信号B-01とを合波した信号C-01を生成し、複素信号生成部11-11は、信号Aの位相を反転した信号信号A-11と信号Bの位相を反転した信号信号B-11とを合波した信号C-11を生成する。信号C-00と信号C-11は、振幅が0の信号となり、信号C-01は、複素平面の実軸の負側に存在する位相で、振幅が入力信号A及び入力信号Bの2倍の信号となる。これらの信号C-10、信号C-00、信号C-01、信号C-11は、信号Aおよび信号Bの組み合わせに対して各々の対象符号とのビット差分を反映したものとなる。つまり、複素信号生成部は、尤度を反映した複素信号を生成する。
【0022】
4.複素信号のシフト
次に、シフト部15-10、シフト部15-00、シフト部15-01、シフト部15-11による複素信号のシフトについて説明する。これらのシフト部は、複素信号のそれぞれを、例えば、その複素信号の振幅の値をシフト量としてシフトした出力信号を生成する。このとき、シフト部は、複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向にシフトした出力信号を生成する。
【0023】
図4は、シフト部による複素信号のシフトの例を示した図である。同図に示すように、信号C-10が、位相0、振幅2の信号であるとすれば、シフト部15-10が、この信号C-10をシフトして、位相0、振幅3の信号D-10を生成する。同様に、シフト部15-00は、振幅0の信号C-00をシフトして、位相0、振幅1の信号D-00を生成し、シフト部15-01は、位相π、振幅2の信号C-01をシフトして、位相π、振幅1の信号D-01を生成する。また、シフト部15-11は、振幅0の信号C-11をシフトして、位相0、振幅1の信号D-11を生成する。
【0024】
このように、信号Aが「1」、信号Bが「0」を示す信号である場合、シフト部15-10、シフト部15-00、シフト部15-01、シフト部15-11のそれぞれが生成した信号D-10、信号D-00、信号D-01、信号D-11が出力されることになる。ここで、信号D-10、信号D-00、信号D-01、信号D-11の強度について説明する。
図5は、信号の強度を示した図である。信号の強度は、振幅の2乗に比例するため、
図5に示すように、信号D-10の強度は「9」となり、信号D-00、信号D-01、信号D-11の強度は、いずれも、強度は「1」となる。したがって、光電変換等を行う際のしきい値として用いることのできる消光比は、9:1となる。
【0025】
5.入出力の対応
続いて、光復号装置1の入出力の対応について説明する。
図6は、光復号装置1の入出力の対応を示した図である。前述したように、信号Aが「1」で信号Bが「0」の場合、シフト部15-10から出力される信号の強度が「9」となり、他のシフト部から出力される信号の強度は「1」となる。同様に、信号Aが「0」で信号Bが「0」の場合、シフト部15-00から出力される信号の強度が「9」となり、他のシフト部から出力される信号の強度は「1」となる。また、信号Aが「0」で信号Bが「1」の場合、シフト部15-01から出力される信号の強度が「9」となり、他のシフト部から出力される信号の強度は「1」となり、信号Aが「1」で信号Bが「1」の場合、シフト部15-11から出力される信号の強度が「9」となり、他のシフト部から出力される信号の強度は「1」となる。このように、光復号装置1は、入力信号に応じて、出力される信号のいずれかの強度が大きくなるため、この特性を用いて、入力信号を復号することが可能となる。
【0026】
6.変形例1
前述の説明では、シフト部は、複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向にシフトするものとして説明したが、複素平面の実軸の負方向にシフトすることも可能である。変形例1では、複素信号を複素平面の実軸の負方向にシフトする場合を説明する。
【0027】
図7は、シフト部による複素信号のシフトの例を示した図である。同図に示すように、信号C-10が、位相0、振幅2の信号であるとすれば、この信号C-10を負方向にシフトすることで、位相0、振幅1の信号E-10が生成される。同様に、振幅0の信号C-00を負方向にシフトすることで、位相π、振幅1の信号E-00が生成され、位相π、振幅2の信号C-01を負方向にシフトすることで、位相π、振幅3の信号E-01が生成される。また、振幅0の信号C-11を負方向にシフトすることで、位相π、振幅1の信号E-11が生成される。そして、信号E-10の強度「1」、信号E-00の強度は「1」、信号E-01の強度は「9」、信号E-11の強度は「1」となる。これは、対象符号の論理否定に対して尤度を反映したものとなる。そのため、複素信号を複素平面の実軸の負方向にシフトした場合も、複素信号を複素平面の実軸の正方向にシフト場合と同様に、入力信号を復号することが可能となる。
【0028】
7.変形例2
前述の説明では、光復号装置1に入力される入力信号が2ビットである場合を説明したが、光復号装置1は、3ビット以上の入力信号にも対応するように構成することが可能であることを説明する。
図8は、入力信号が3ビットの場合の光復号装置の複素信号生成部の構成例を示した図である。同図に示す光復号装置は、複素信号生成部16-100、複素信号生成部16-010、複素信号生成部16-110、複素信号生成部16-001、複素信号生成部16-101、複素信号生成部16-011、複素信号生成部16-111、複素信号生成部16-000を備える。また、光復号装置は、これら複素信号生成部と同数の図示しないシフト部を備える。
【0029】
複素信号生成部16-100は、位相シフト部17-100と、位相シフト部18-100と、位相シフト部19-100と、合波部20-100とを備える。また、
図8では省略するが、複素信号生成部16-010、複素信号生成部16-110、複素信号生成部16-001、複素信号生成部16-101、複素信号生成部16-011、複素信号生成部16-111、複素信号生成部16-000も、同様に、位相シフト部と合波部とを備える。
【0030】
このような構成において、入力信号として、信号F(「1」)、信号G(「0」)、信号H(「0」)が入力されると、複素信号生成部16-100、複素信号生成部16-010、複素信号生成部16-110、複素信号生成部16-001、複素信号生成部16-101、複素信号生成部16-011、複素信号生成部16-111、複素信号生成部16-000からは、それぞれ、位相0で振幅3の信号I-100、位相πで振幅1の信号I-010、位相0で振幅1の信号I-110、位相πで振幅1の信号I-001、位相0で振幅1の信号I-101、位相πで振幅3の信号I-011、位相πで振幅1の信号I-111、位相0で振幅1の信号I-000が出力される。
【0031】
そして、信号I-100、信号I-010、信号I-110、信号I-001、信号I-101、信号I-011、信号I-111、信号I-000を、複素平面の実軸の正方向にシフトした際の信号強度は、それぞれ、「16」、「0」、「4」、「0」、「4」、「4」、「0」、「4」となる。
【0032】
8.変形例3
前述の説明では、シフト部は、複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向又は負方向にシフトするものとして説明したが、複素平面の他の方向にシフトすることも可能である。変形例3では、複素信号を複素平面の所定の偏角の方向にシフトする場合を説明する。
【0033】
図9は、変形例3における光復号装置の構成例を示した図である。同図に示す光復号装置は、複素信号生成部21を備え、この複素信号生成部21は、位相シフト部22と、位相シフト部23と、合波部24とを備える。位相シフト部22は、入力された信号の位相を0だけシフトする、つまり、入力された信号の位相シフトは行わない。位相シフト部23は、入力された信号の位相をπ/2だけシフトする。合波部24は、位相シフト部22が出力した信号と、位相シフト部23が出力した信号とを合波する。
【0034】
また、この光復号装置は、シフト部25-00と、シフト部25-10と、シフト部25-11と、シフト部25-01とを備える。シフト部25-00は、合波部24が合波した複素信号を、複素平面の偏角π/4の方向にシフトし、シフト部25-10は、合波部24が合波した複素信号を、複素平面の偏角-π/4の方向にシフトする。また、シフト部25-10は、合波部24が合波した複素信号を、複素平面の偏角3π/4の方向にシフトし、シフト部25-01は、合波部24が合波した複素信号を、複素平面の偏角-3π/4の方向にシフトする。
【0035】
図10は、複素信号の生成例を示した図である。位相シフト部22に入力された信号J-0、信号J-1は、位相がシフトされずに、それぞれ、信号L-0、信号L-1として出力される。一方、位相シフト部23に入力された信号K-0、信号K-1は、位相がπ/2シフトされ、それぞれ、信号M-0、信号M-1として出力される。そして、合波部24で信号L-0と信号M-0が合波されると、信号N-00が生成される。同様に、合波部24で信号L-1と信号M-0が合波されると、信号N-10が生成され、合波部24で信号L-1と信号M-1が合波されると、信号N-11が生成され、合波部24で信号L-0と信号M-1が合波されると、信号N-01が生成される。
【0036】
図11は、複素信号のシフト例を示した図である。複素信号生成部21で生成された複素信号は、シフト部25-00と、シフト部25-01と、シフト部25-11と、シフト部25-10のそれぞれで、偏角π/4の方向、偏角-π/4の方向、偏角3π/4の方向、偏角-3π/4の方向にシフトされる。例えば、信号N-00は、偏角π/4の方向にシフトされた場合に、信号O-00となり、その強度が最も大きくなる。つまり、シフト部25-00と、シフト部25-01と、シフト部25-11と、シフト部25-10のそれぞれに複素信号が入力されると、そのいずれかのみの信号強度が大きくなる。具体的には、信号N-01は、偏角-π/4の方向にシフトされて信号O-01と、信号強度が大きくなり、信号N-11は、偏角3π/4の方向にシフトされて信号O-11と、信号強度が大きくなり、信号N-10は、偏角-3π/4の方向にシフトされて信号O-10と、信号強度が大きくなる。これにより、出力される信号のいずれかの強度が大きくなるため、この特性を用いて、入力信号を復号することが可能となる。
【0037】
9.その他
ところで、光復号装置は、図示しない変換部を備えるようにすることもできる。この変換部は、出力信号を光電変換する。このとき、出力信号の強度に応じて電気信号が「0」又は「1」となるようにしきい値を設定し、その結果を論理回路によって、各ビットの値を表すように出力する。つまり、変換部は、出力信号を入力信号が表現可能な値の数に応じたビット数の電気信号に変換する。
【0038】
以上説明したように、光復号装置による光復号方法は、二位相偏移変調された入力信号に基づいて、該入力信号に応じた複素信号を生成し、生成した複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を入力信号が表現可能な値の数だけ生成するものとなる。なお、複素信号の生成は、光学素子により行うため、光復号装置で消費する電力は、複素信号を生成する際に用いるプローブ光の発光に要するだけであるため、消費電力を低減することができる。また、光学的な論理回路を用いて電子回路と同様の処理で復号を行う場合と比較して、使用する光学素子の数が少なくなるため、省スペース化も実現することができる。
【0039】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0040】
(1)光復号装置であって、複素信号生成部と、シフト部とを備え、前記複素信号生成部は、入力信号に基づいた複素信号を生成し、前記入力信号は、二位相偏移変調された信号であり、前記シフト部は、前記複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成し、前記出力信号は、前記入力信号が表現可能な値の数が生成される光復号装置。
【0041】
(2)上記(1)に記載の光復号装置において、前記複素信号生成部は、入力信号が表現可能な値の数の複素信号を生成し、前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向又は負方向にシフトした出力信号を生成する光復号装置。
【0042】
(3)上記(2)に記載の光復号装置において、前記入力信号は、第1の入力信号と第2の入力信号とで構成され、前記複素信号生成部は、尤度を反映した複素信号を生成する光復号装置。
【0043】
(4)上記(3)に記載の光復号装置において、前記複素信号は、前記第1の入力信号の位相を反転した信号と、前記第2の信号とを合波した信号と、前記第1の入力信号と、前記第2の信号とを合波した信号と、前記第1の入力信号と、前記第2の信号の位相を反転した信号とを合波した信号と、前記第1の入力信号の位相を反転した信号と、前記第2の信号の位相を反転した信号とを合波した信号と、を含む光復号装置。
【0044】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の光復号装置において、前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、該複素信号の振幅の値をシフト量としてシフトした出力信号を生成する光復号装置。
【0045】
(6)上記(5)に記載の光復号装置において、前記シフト部は、前記複素信号のそれぞれを、複素平面の実軸の正方向にシフトした出力信号を生成する光復号装置。
【0046】
(7)上記(1)に記載の光復号装置において、変換部を備え、前記変換部は、前記出力信号を前記入力信号が表現可能な値の数に応じたビット数の電気信号に変換する光復号装置。
【0047】
(8)光復号方法であって、二位相偏移変調された入力信号に基づいて、該入力信号に応じた複素信号を生成し、前記複素信号を複素平面の所定の方向にシフトした出力信号を生成し、前記出力信号は、前記入力信号が表現可能な値の数が生成される光復号方法。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0048】
1 :光復号装置
2 :光処理系
3 :電気処理系
11-00 :複素信号生成部
11-01 :複素信号生成部
11-10 :複素信号生成部
11-11 :複素信号生成部
12-00 :位相シフト部
12-01 :位相シフト部
12-10 :位相シフト部
12-11 :位相シフト部
13-00 :位相シフト部
13-01 :位相シフト部
13-10 :位相シフト部
13-11 :位相シフト部
14-00 :合波部
14-01 :合波部
14-10 :合波部
14-11 :合波部
15-00 :シフト部
15-01 :シフト部
15-10 :シフト部
15-11 :シフト部
16-000 :複素信号生成部
16-001 :複素信号生成部
16-010 :複素信号生成部
16-011 :複素信号生成部
16-100 :複素信号生成部
16-101 :複素信号生成部
16-110 :複素信号生成部
16-111 :複素信号生成部
17-100 :位相シフト部
18-100 :位相シフト部
19-100 :位相シフト部
20-100 :合波部
21 :複素信号生成部
22 :位相シフト部
23 :位相シフト部
24 :合波部
25-00 :シフト部
25-01 :シフト部
25-10 :シフト部
25-11 :シフト部
A :入力信号
A-00 :信号
A-01 :信号
A-10 :信号
A-11 :信号信号
B :入力信号
B-00 :信号
B-01 :信号
B-10 :信号
B-11 :信号信号
C-00 :信号
C-01 :信号
C-10 :信号
C-11 :信号
D-00 :信号
D-01 :信号
D-10 :信号
D-11 :信号
E-00 :信号
E-01 :信号
E-10 :信号
E-11 :信号
F :信号
G :信号
H :信号
I-000 :信号
I-001 :信号
I-010 :信号
I-011 :信号
I-100 :信号
I-101 :信号
I-110 :信号
I-111 :信号
J-0 :信号
J-1 :信号
K-0 :信号
K-1 :信号
L-0 :信号
L-1 :信号
M-0 :信号
M-1 :信号
N-00 :信号
N-01 :信号
N-10 :信号
N-11 :信号
O-00 :信号
O-01 :信号
O-10 :信号
O-11 :信号