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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027677
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂ブロー成形容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20240222BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240222BHJP
   B65D 25/20 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
B65D1/00 110
B65D65/40 D
B65D25/20 Q
B65D25/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130665
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】金井 繁
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳人
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
3E086
【Fターム(参考)】
3E033BA13
3E033BB08
3E033CA20
3E033FA03
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC01
3E062AC02
3E062AC08
3E062DA02
3E062DA07
3E062DA08
3E086AD04
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB71
3E086BB90
3E086CA11
(57)【要約】
【課題】本発明は、オレフィン系樹脂よりなり、保存や輸送の管理が容易であり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されており、機械的強度が優れオレフィン系樹脂ブロー成形容器を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項2】
オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなる層の内面及び/又は外面にオレフィン系樹脂層が積層されていることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項3】
容器の形状が略円筒状又は角柱状であり、容器壁面の外部から読み取り可能な位置に、容器中身の材料の識別情報を印字・更新可能な識別情報表示部又は容器中身の材料の識別情報が印刷されたシートを貼付・剥離可能である識別情報表示部が設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項4】
識別情報表示部が、平坦面であることを特徴とする請求項3記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項5】
識別情報が、バーコード、二次元コード、QRコード(登録商標)又はRF1Dタグであることを特徴とする請求項3又は4記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存や輸送の管理が容易であり、焼却しても二酸化炭素排出量が少ないオレフィン系樹脂ブロー成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水、ジュース、しょうゆ、食用油などの飲料・食用液体や、灯油、酢酸、塩酸、硝酸などの化学薬品や特殊な工業中間体である薬品を充填するための容器は、一般に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂をブロー成形した容器が使用されている。
【0003】
そして、一般に、このような内容物が充填された容器は保存・輸送され、使用後には空の容器が製造元に送り返され再利用されている。この際、内容物の種類、量、製造日時、製造ロット番号、発送日時等の識別情報が重要になるので、これらの管理を容易にする方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、「読み取りにより識別情報を取得することが可能なマークを印す装置を用いてマークが付与された容器の中身を示す材料情報を含む中身データと、該識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、作業工程に応じて、複数の材料のうち、所定の容器に投入された材料に関する材料情報を含む情報に基づいて、読み取り部により該容器に付されたマークから読み取られた該マークの識別情報と前記記憶部にて対応付けられた前記中身データを更新する更新部と、前記マークが付与された容器における作業工程が終了する終了入力に応じた情報を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記終了入力に応じた情報を判定する判定部とを有し、前記更新部は、前記判定部が、前記受付部が受け付けた前記終了入力に応じた情報が、前記マークが付与された容器内の材料が使用されて空になった旨を示す情報であると判定した場合、該マークの前記識別情報と対応付けられた前記中身データを前記記憶部から削除し、前記判定部が、前記受付部が受け付けた前記終了入力に応じた情報が、前記マークが付与された容器内に材料が投入された旨を示す情報であると判定した場合、該材料が投入された容器に付されたマークの前記識別情報に対応して、該容器内の該材料に関する材料情報を含む中身データに更新する識別情報管理システム。」(例えば、特許文献1参照。)が提案されており、上記識別情報管理システムに従えば、種々の内容物が充填された容器の輸送管理は容易であり、適切に管理される。そして、上記容器としては、一般にオレフィン系樹脂をブロー成形した容器が使用されている。
【0005】
オレフィン系樹脂は、軽量である、耐食性、耐水性、衛生性、ガスバリアー性、透明性等が優れている、機械的強度が大きく且つ製造が容易である等の特徴を有しており、再使用する(リユース)ことが可能であり、広い用途に使用されている。しかしながら、リユースするにしても最終的には廃棄しなければならず、その使用量は大量であり、廃棄の際に多くの問題が発生するようになってきている。特に、焼却して処分する際には大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の原因となっている。
【0006】
焼却際に、二酸化炭素の発生を抑える方法としては、オレフィン系樹脂に、炭酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、水酸化カルシウム、ゼオライト、ココナツ中果皮繊維等を添加することが提案されている(例えば、特許文献2、3又は4参照。)。
【0007】
しかしながら、オレフィン系樹脂にこれらの添加物を添加しても二酸化炭素の発生抑止効果は小さく、発生抑止効果を向上させるために多量に添加すると、オレフィン系樹脂組成物の成形性が低下し、成形された成形体の機械的強度、表面性等が低下するという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6979418号公報
【特許文献2】特開2008―106171号公報
【特許文献3】特開平7―188487号公報
【特許文献4】特開2006-77058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、オレフィン系樹脂よりなり、保存や輸送の管理が容易であり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されているオレフィン系樹脂ブロー成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、
[1]オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器、
[2]オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなる層の内面及び/又は外面にオレフィン系樹脂層が積層されていることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器、
[3]容器の形状が略円筒状又は角柱状であり、容器壁面の外部から読み取り可能な位置に、容器中身の材料の識別情報を印字・更新可能な識別情報表示部又は容器中身の材料の識別情報が印刷されたシートを貼付・剥離可能である識別情報表示部が設置されていることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器、
[4]識別情報表示部が、平坦面であることを特徴とする[3]記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器、及び、
[5]識別情報が、バーコード、二次元コード、QRコード(登録商標)又はRF1Dタグであることを特徴とする上記[3]又は[4]記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器の構成は上述の通りであり、オレフィン系樹脂よりなり、保存や輸送の管理が容易であり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されており、機械的強度が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
即ち、本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0013】
上記オレフィン系樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、目的の物性に応じて、2種類以上のオレフィン系樹脂がブレンドされてもよく、柔軟性に富んだ容器を得る場合には、低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましく、又、機械的強度の高いオレフィン系樹脂ブロー成形容器を得るには高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0014】
上記オレフィン系樹脂は、循環型社会を構築するため、現在一般に使用されている石油由来のオレフィンを含むモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂にバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂が併用されてもよい。又、オレフィン系樹脂が、石油由来のオレフィンを含むモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂5~95重量部とバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂95~5重量部からなる組成物であってもよい。
【0015】
上記バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーを重合してなるオレフィン系樹脂とは、所謂、バイオマス由来のオレフィン系樹脂であって、再生可能な天然原料(例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオク等)から製造されたエタノールを原料とし、化学的に反応精製したエチレン及び/又はプロピレン等のα―オレフィンを(共)重合したポリマーである。
【0016】
又、上記オレフィン系樹脂には、オレフィン系樹脂ブロー成形容器がすべりにくく、積み重ねや取扱いがし易いように無機充填剤が添加されていてもよい。又、遮光性を付与したり、壁面に印刷された文字が読みやすいように着色剤が添加されていてもよい。
【0017】
上記無機充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、珪酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭素繊維、カーボンブラック等従来から一般に使用されている無機充填剤が挙げられる。上記着色剤としては、例えば、上記従来から一般に使用されている無機顔料、有機顔料等が挙げられる。
【0018】
上記無機充填剤の添加量は、特に限定されないが、添加量が多くなると、得られたブロー成形容器の引張強度、引張弾性率、伸び率等の機械的強度が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部に対し無機充填剤5重量部以下が好ましい。
【0019】
又、更に、従来からオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等の添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0020】
上記リポソーム(ナノカプセル状ポリマー充填剤)は、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物からなり超臨界逆相蒸発法により形成される。
【0021】
上記リン脂質は、リポソームにおけるカプセル膜成分であり、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤を内包し得るが、オレフィン系樹脂粉末やペレットと混合し加熱・撹拌すると崩壊して分散剤として働くものであり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、卵黄レシチン、水添卵黄レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。
【0022】
上記二酸化炭素吸収剤は、二酸化炭素を化学的または物理的に吸着する物質であればよく、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、非晶質アルミノシリケート、天然ゼオライト、合成ゼオライト等アルミノケイ酸塩、チタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウム等のチタン酸化合物、リチウムシリケート、シリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0023】
オレフィン系樹脂の結晶核剤は、オレフィン系樹脂に分散されオレフィン系樹脂の結晶の核となる物質、又は、オレフィン系樹脂の結晶化温度又は融点以上で結晶化し、その結晶がオレフィン系樹脂の結晶の核となる物質であり、例えば、ナトリウム 2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウム ヒドロキシビス[2,2-メチレンビス(4,6-ジーt-ブチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム ビス(4-t-ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩系の物質、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系の物質、ヒドロキシージーt-ブチル安息香酸アルミニウム等の安息香酸アルミニウム系の物質等が挙げられる。
【0024】
上記リポソーム(ナノカプセル状ポリマー充填剤)は、リン脂質と、二酸化炭素吸収剤及び該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤組成物からなる。添加剤組成物は二酸化炭素吸収剤と略同重量のオレフィン系樹脂の結晶核剤よりなり、上記リポソームは、超臨界逆相蒸発法により形成されるが、超臨界逆相蒸発法は従来公知の超臨界逆相蒸発法が採用されればよく、例えば、前記二酸化炭素吸収剤と前記結晶核剤とイオン交換水との混合物を、温度が臨界温度30.98℃以上で圧力が臨界圧力7.3773MPa以上の超臨界状態にある二酸化炭素と攪拌混合することにより、カプセル膜成分であるリン脂質内に前記二酸化炭素吸収剤と、前記結晶核剤とを内包させることにより、リポソームを形成する。
【0025】
尚、超臨界逆相蒸発法は、例えば、再表02/032564号公報、特開2003-119120号公報、特開2005-298407号公報、特開2008-063284号公報等に開示されている。
【0026】
二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の添加量は少なくなると分散効果がなくなり、多くなるとリポソームの粒径が大きくなり、分散効果が低下する。又、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の添加量の比率も同一であるのが最も効果が高く、一方の比率が多くなると効果が低下するので、リポソームは、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成される。
【0027】
尚、リポソームの粒径は、オレフィン系樹脂中に均一に分散されるのが好ましいので、小さいほうが好ましいが、超臨界逆相蒸発法により形成するのであるから、一般に、100~300nmである。
【0028】
オレフィン系樹脂中のリポソームの添加量が少なくなると、オレフィン系樹脂ブロー成形容器に含まれるリポソームの含有量が少なくなり、焼却時の二酸化炭素の発生抑止効果が低下し、逆に、多くなりすぎると二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤が製造されたオレフィン系樹脂ブロー成形容器の表面に露出し、平滑性及びクリーン性が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部に対し、リポソームは1~10重量部添加される。
【0029】
本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、上記樹脂組成物をブロー成形することにより成形された容器である。ブロー成形は、従来公知の任意のブロー成形が採用されればよく、例えば、上記樹脂組成物を、溶融押出してパリソンを得た後、金型内でブローするブロー成形法等が挙げられる。
【0030】
又、オレフィン系樹脂100重量部と、リポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、オレフィン系樹脂粒子を製造し、得られたオレフィン系樹脂粒子とオレフィン系樹脂よりなる樹脂組成物を溶融押出してパリソンを成形してもよい。
【0031】
又、オレフィン系樹脂とリポソームからなる樹脂組成物を溶融押出してオレフィン系樹脂粒子を製造する際に、オレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂内においてリポソームが均一に分散し、その後にリポソームのカプセル膜成分であるリン脂質が崩壊して内包されている二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤とが露出分散することにより、相溶性が悪い二酸化炭素吸収剤とポリオレフィン系樹脂の結晶核剤が凝集されずにオレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂内において均一に分散され、更に、このオレフィン系樹脂粒子とオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物を溶融混錬し、パリソンを成形する際にオレフィン系樹脂粒子内に分散された二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤とが、再度、オレフィン系樹脂ブロー成形容器を構成するオレフィン系樹脂内に分散されるので、製造されたオレフィン系樹脂ブロー成形容器においては、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤はブロー成形容器を構成するオレフィン系樹脂内においてより均一に分散されており、焼却際における二酸化炭素の発生が抑制されており、且つ、表面の平滑性及び機械的強度が優れている。
【0032】
従って、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の分散性がより向上するように、オレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を構成するオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)より大きいほうが好ましい。
【0033】
本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器の形体は、特に限定されるものではないが、容量は一般に0.2L~1000Lであり、好ましくは5L~200Lである。又、柔軟な容器の場合は段ボールや金属の内袋として用いる所謂複合型容器であってもよく、自立性のハードタイプの容器であっても良い。
【0034】
本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器の形状は、容器としての形状であれば特に限定されないが、略円筒状又は角柱状が好ましく、容器壁面の外部から読み取り可能な位置に、容器中身の材料の識別情報を印字・更新可能又は容器中身の材料の識別情報が印刷されたシートを貼付・剥離可能である識別情報表示部が設置されているのが好ましい。
【0035】
識別情報表示部は、容器壁面の外部から読み取り可能であり、容器中身の材料の識別情報を印字・更新し易く、容器中身の材料の識別情報が印刷されたシートを貼付・剥離し易いのが好ましいので、平坦部となされているのが好ましく、容器の上側壁又は横側壁に設置されるのが好ましい。
【0036】
オレフィン系樹脂ブロー成形容器の上側壁又は横側壁がそのまま識別情報表示部として使用可能であるが、オレフィン系樹脂ブロー成形容器が透明容器の場合、識別情報を印字・更新しにくく、容器の輸送中に剥離し易くなると共に外部から読み取りにくいことがある。又、識別情報が印刷されたシートを貼付する場合は貼付強度が弱く輸送中に脱落することがあるので、識別情報表示部(平坦部)は、マット加工やコロナ処理が施され、凹凸を有し不透明になされているのが好ましい。
【0037】
識別情報表示部に識別情報を印字したり、更新する方法は従来公知の任意の方法が採用可能であり、手書きでもよいが、レーザー印刷、インクジェット印刷等のコンピュータで管理し得る印刷方法が採用されるのが好ましい。そうすることにより、本発明のオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、前述の特許文献1等に記載の識別情報管理システム等において好適に使用される。
【0038】
又、上記識別情報が印刷されたシートとしては、従来公知の紙やプラスチックシートに一面に粘(接)着剤が積層された粘(接)着ラベル、粘(接)着シート等が好適に使用される。
【0039】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
リポソームの製造
平均粒径10~50nmのアルミノケイ酸ナトリウム粉末0.125重量部、平均粒径10~50nmのナトリウム 2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェイト粉末0.125重量部及びリン脂質であるホスファチジルコリン5重量部をイオン交換水100重量部と共に60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻す超臨界処理を行い、リン脂質にアルミノケイ酸ナトリウム及びソジウム 2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェイトが内包されたリポソームを含有する水分散液を得た。
【0041】
又、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する(ただし、もう片方が臨界条件をこえていないものである)。
【0042】
得られたリポソームを含有する水分散液からイオン交換水を除去してリポソームを得た。得られたリポソームの平均粒径を、粒度分布計(Particle Sizing Systems Co.製NICOMP 380ZLS型)を用いて測定したところ、約200nmであった。
【0043】
(実施例1、比較例1)
高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.03、密度=0.954g/cm)100重量部、無機顔料2.5重量部及び得られたリポソーム2重量部(実施例1)又は0重量部(比較例1)よりなる樹脂組成物をスクリュー径90mmの一軸混錬押出機に供給し、210℃で溶融混錬押出してパリソンを得た。得られたパリソンを金型に供給し、ブロー成形し、200Lの有底略円筒状のオレフィン系樹脂ブロー成形容器を得た。得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、表面に凹凸がなく内表面も外表面も表面にぶつぶつがなく滑らかであった。
【0044】
又、得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器は円筒状の側壁と平坦面である上側壁と底壁で形成されており、上側壁は内容物を充填・排出可能な開口部と識別情報表示部が形成されていた。識別情報表示部は略矩形であり、上側壁の表面にマット加工を施すことにより形成されており、外部から読み取り可能であり、且つ、レーザー印刷により印字及び更新可能であった。
【0045】
(実施例2、比較例2)
内層用樹脂組成物として、高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.05、密度=0.957g/cm)、外層用樹脂組成物として、高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.03、密度=0.954g/cm)100重量部と得られたリポソーム2重量部(実施例2)又は0重量部(比較例2)よりなる樹脂組成物をスクリュー径110mmの一軸混錬押出機に供給し、210℃で溶融混錬し、共押出してパリソンを成形し、次に、パリソンを成形金型でブロー成形することにより、容量200リットルの有底円筒状容器を得た。得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、表面に凹凸がなく内表面も外表面も表面にぶつぶつがなく滑らかであった。
【0046】
又、得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器は円筒状の側壁と平坦面である上側壁と底壁で形成されており、上側壁は内容物を充填・排出可能な開口部と識別情報表示部が形成されていた。識別情報表示部は略矩形であり、上側壁の表面にマット加工を施すことにより形成されており、外部から読み取り可能であり、且つ、レーザー印刷により印字及び更新可能であった。
【0047】
得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器の側壁を切断して試験サンプルを得た。試験サンプルの厚みを測定すると共に焼却時の二酸化炭素排出減量及び機械的強度(最大引張強度、破断伸び)等を測定し、結果を表1に示した。尚、測定は以下の通りである。
【0048】
二酸化炭素排出量削減率の測定
得られた結束材料を1.5cm×5cmの大きさに切断し、JIS K7127(環状炉燃焼方法)に従って,環状炉燃焼測定器(島津製作所社製、CGT7100)に供給し、400℃で燃焼し二酸化炭素排出量を測定した。比較例1及び2における二酸化炭素排出量を100%とし、削減された二酸化炭素排出量を%で示した。
【0049】
機械的強度の測定
得られたオレフィン系樹脂ブロー成形容器の厚みを測定し、JIS K 7124に準拠し、引張試験を行い、最大(破断)引張強度及び破断伸び率を測定した。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明におけるオレフィン系樹脂ブロー成形容器は、保存や輸送の管理が容易であり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されているので環境への負荷が少なく、機械的強度が優れているので、食品(飲料)や工業用品の輸送分野において好適に使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項2】
オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物からなる層の内面及び/又は外面にオレフィン系樹脂層が積層されていることを特徴とするオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項3】
容器の形状が略円筒状又は角柱状であり、容器壁面の外部から読み取り可能な位置に、容器中身の材料の識別情報を印字・更新可能な識別情報表示部又は容器中身の材料の識別情報が印刷されたシートを貼付・剥離可能である識別情報表示部が設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項4】
識別情報表示部が、平坦面であることを特徴とする請求項3記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。
【請求項5】
識別情報が、バーコード、二次元コード、QRコード(登録商標)又はRF1Dタグであることを特徴とする請求項3記載のオレフィン系樹脂ブロー成形容器。