(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027688
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】補助装具の補助力を生成する補助力生成機構、及び補助装具
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20240222BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20240222BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61H3/00 B
B25J11/00 Z
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130687
(22)【出願日】2022-08-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://chat.lincbiz.jp/a006425/default/channels/ca0s0v11ac1t6vb6snb0 掲載日:令和4年5月31日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://chat.lincbiz.jp/a006425/default/channels/ca0s0v11ac1t6vb6snb0 掲載日:令和4年6月1日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://chat.lincbiz.jp/a006425/default/channels/team-talk 掲載日:令和4年6月1日 [刊行物等] ROBOMECH2022 開催日:令和4年6月3日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:http://jsme-proceedings.sakura.ne.jp/bioconf22/34th_bioeng_conf.zip 掲載日:令和4年6月22日 [刊行物等] 日本機械学会 第34回バイオエンジニアリング講演会 開催日:令和4年6月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 功
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 健
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS04
3C707HS27
3C707HT11
3C707KS11
3C707XK06
3C707XK13
3C707XK27
3C707XK42
3C707XK85
4C046AA09
4C046AA25
4C046AA42
4C046AA47
4C046BB08
4C046CC01
4C046DD06
4C046DD39
4C046EE09
4C046FF05
(57)【要約】
【課題】補助装具の補助力を、用途に応じて変更したいという要求がある。
【解決手段】補助力生成機構100は、互いに並ぶように配置された第1の付勢部104及び第2の付勢部108と、第1の付勢部104と第2の付勢部108との間に移動可能に設けられるスライダ110と、スライダ110と係合してスライダ110の移動を禁止する係合位置と、係合を解除してスライダの移動を許可する非係合位置との間で移動可能なロック部112とを備える。補助力生成機構100は、ロック部112が係合位置に配置されているとき、第1の付勢部104の作用によって補助力を生成する一方、ロック部112が非係合位置に配置されているとき、第1の付勢部104及び第2の付勢部108の作用によって補助力を生成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の屈伸運動を補助する補助装具の補助力を生成する補助力生成機構であって、
互いに並ぶように配置された第1の付勢部及び第2の付勢部と、
前記第1の付勢部と前記第2の付勢部との間に移動可能に設けられるスライダと、
前記スライダと係合し、前記第2の付勢部に対する前記スライダの移動を禁止する係合位置と、前記係合を解除して前記スライダの移動を許可する非係合位置と、の間で移動可能なロック部と、を備え、
前記ロック部が前記係合位置に配置されているとき、前記第1の付勢部の作用によって前記補助力を生成する一方、前記ロック部が前記非係合位置に配置されているとき、前記第1の付勢部及び前記第2の付勢部の作用によって前記補助力を生成する、補助力生成機構。
【請求項2】
前記係合位置と前記非係合位置との間で前記ロック部を駆動するアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の補助力生成機構。
【請求項3】
前記ロック部は、前記係合位置と前記非係合位置との間で、前記スライダの移動方向と平行な第1の軸線の周りに回動可能に設けられ、
前記アクチュエータは、
前記第1の軸線と直交する第2の軸線の周りに回動可能に設けられ、前記ロック部と係合する回動部と、
前記回動部を回動させることで、該回動部を介して前記ロック部を前記係合位置と前記非係合位置との間で回動させる動力部と、を有する、請求項2に記載の補助力生成機構。
【請求項4】
前記動力部は、前記回動部に接続され、電流に応じて伸縮することで該回動部を回動させる形状記憶合金を有する、請求項3に記載の補助力生成機構。
【請求項5】
前記スライダは、スライダ本体と、該スライダ本体から外方へ突出する爪部と、を有し、
前記ロック部は、
前記スライダ本体を環囲し、前記係合位置と前記非係合位置との間で回動可能なリング部と、前記スライダの移動方向と平行に延在するように前記リング部に形成された溝部と、を有し、
前記リング部が前記係合位置に配置されているとき、前記爪部が該リング部と係合することで前記スライダの移動を禁止する一方、前記リング部が前記非係合位置に配置されているとき、前記爪部が前記溝部に進入することで前記スライダの移動を許可する、請求項1~4のいずれか1項に記載の補助力生成機構。
【請求項6】
前記第1の付勢部は、第1のばね定数を有するばねを含み、
前記第2の付勢部は、前記第1のばね定数とは異なる第2のばね定数を有するばねを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の補助力生成機構。
【請求項7】
前記第1の付勢部は、前記第2の付勢部よりも大きい付勢力を生成可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の補助力生成機構。
【請求項8】
関節を介して接続された身体の第1の部位及び第2の部位の屈伸運動を補助する補助装具であって、
前記第1の部位に装着される第1のアーム、及び前記第2の部位に装着される第2のアームと、
前記第1のアーム及び前記第2のアームを伸展位置と屈曲位置との間で屈伸可能に接続するリンク部と、
前記リンク部に対して補助力を加えることで、前記第1のアーム及び前記第2のアームを前記屈曲位置から前記伸展位置へ向かって付勢する、請求項1~7のいずれか1項に記載の補助力生成機構と、を備える、補助装具。
【請求項9】
前記係合位置と前記非係合位置との間で前記ロック部を駆動するアクチュエータの動作を制御する制御部をさらに備える、請求項8に記載の補助装具。
【請求項10】
前記身体の姿勢を検出するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサの検出データに基づいて、前記ロック部を前記係合位置と前記非係合位置との間で移動させるように前記アクチュエータを制御する、請求項9に記載の補助装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体の屈伸運動を補助する補助装具の補助力を生成する補助力生成機構、及び補助装具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の屈伸運動を補助する補助装具が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助装具の補助力を、用途に応じて変更したいという要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、身体の屈伸運動を補助する補助装具の補助力を生成する補助力生成機構は、互いに並ぶように配置された第1の付勢部及び第2の付勢部と、第1の付勢部と第2の付勢部との間に移動可能に設けられるスライダと、スライダと係合し、第2の付勢部に対するスライダの移動を禁止する係合位置と、係合を解除してスライダの移動を許可する非係合位置と、の間で移動可能なロック部とを備える。補助力生成機構は、ロック部が係合位置に配置されているとき、第1の付勢部の作用によって補助力を生成する一方、ロック部が非係合位置に配置されているとき、第1の付勢部及び第2の付勢部の作用によって補助力を生成するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係る補助装具を示す図であって、身体が直立姿勢となっている状態を示す。
【
図6】
図5に示す補助力生成機構の斜視図であって、ロック部が非係合位置に配置されている状態を示す。
【
図8】
図5に示す補助力生成機構の斜視図であって、ロック部が係合位置に配置されている状態を示す。
【
図10】
図5に示すアクチュエータの動力部を示す。
【
図11】
図10に示す動力部が回動部を回動させた状態を示す。
【
図12】身体がしゃがみ姿勢となったときの補助装具を示す。
【
図13】ロック部が係合位置に配置されているときに補助力生成機構が補助力を生成している状態を示す。
【
図14】ロック部が非係合位置に配置されているときに補助力生成機構が補助力を生成している状態を示す。
【
図15】他の実施形態に係る補助装具の機構部を示す。
【
図17】
図15に示す補助装具を脚に装着した身体が斜面を歩いている状態を示す。
【
図18】
図15に示す補助装具を脚に装着した身体が斜面を横断している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明においては、図中の直交座標系Cを方向の基準とし、便宜上、座標系Cのx軸プラス方向を前方、座標系Cのy軸プラス方向を左方、z軸プラス方向を上方として言及する。
【0008】
まず、
図1を参照して、一実施形態に係る補助装具10について説明する。補助装具10は、身体Bの大腿部B1と脛部B2の屈伸運動(つまり、膝の屈伸運動)を補助するためのものである。大腿部B1と脛部B2とは、膝関節B3を介して接続されており、身体Bは、大腿部B1と脛部B2とを膝関節B3で屈曲及び伸展することで、膝の屈伸運動を行う。
【0009】
補助装具10は、機構部12、装着バンド14及び16を備える。装着バンド14及び16の各々は、例えば、天然繊維又は化学繊維の布、ゴム、樹脂、又はこれらの組み合わせから構成され、身体Bに適合するように高い可撓性及び伸縮性を有する。本実施形態においては、装着バンド14は、脛部B2に巻かれて装着される一方、装着バンド16は、大腿部B1に巻かれて装着される。
【0010】
機構部12は、装着バンド14及び16の間に配置される。以下、
図1~
図5を参照して、機構部12について説明する。機構部12は、アーム18及び20、リンク部22、並びに、補助力生成機構100を有する。アーム18は、装着バンド14に取り付けられ、該装着バンド14を介して脛部B2に装着される。
【0011】
図2を参照して、アーム18は、例えば、アルミ等の金属からなる一体形状の平板部材であって、本体部26、歯車部28、及び延長部30を有する。本体部26は、上端部32、及び該上端部32とは反対側の下端部34を有し、上端部32から下端部34まで軸線A1に沿って延在している。
【0012】
より具体的には、本体部26は、軸線A1に沿って真直ぐ延在する矩形状の第1の部分36と、第1の部分36の上端から上方へ延出する略扇形状の第2の部分38とを有する。第1の部分36は、下端部34を画定する一方、第2の部分38は、上端部32を画定する。第1の部分36は、装着バンド14(
図1)に取り付けられる。第2の部分38は、第1の部分36の上端から上方へ向かうにつれて拡幅している。
【0013】
上端部32には、シャフト40が設けられている。シャフト40は、例えば円柱状であって、上端部32から右方へ延出するように、該上端部32に一体に形成されている。また、上端部32は、円弧状の外周面42を有する。外周面42は、シャフト40と略同軸に配置されている。
【0014】
歯車部28は、所定の径R1(例えば、ピッチ径)を有し、上端部32に一体に形成されている。より具体的には、歯車部28は、上端部32の外周面42の周方向へ整列する複数の歯部28aを有する。各々の歯部28aは、外周面42から、該外周面42の径方向外方へ突出するように、該外周面42に一体に形成されている。
【0015】
延長部30は、本体部26の上端部32から外方へ延出するように、該上端部32に一体に形成されている。より具体的には、延長部30は、上端部32において歯車部28の前側に隣接して配置され、該上端部32から軸線A2に沿って真直ぐに延出する。軸線A2は、本体部26の軸線A1に対して角度θ1で傾斜する。本実施形態においては、角度θ1は、鋭角である(例えば、θ1=10°~60°)。
【0016】
図3を参照して、アーム20は、例えば、アルミ等の金属からなる一体形状の平板部材であって、本体部44、及び歯車部46を有する。本体部44は、上端部48、及び該上端部48とは反対側の下端部50を有し、上端部48から下端部50まで軸線A3に沿って真直ぐに延在する。
【0017】
下端部50には、シャフト52が設けられている。シャフト52は、例えば円柱状であって、下端部50から右方へ延出するように、該下端部50に一体に形成されている。また、下端部50は、円弧状の外周面54を有する。外周面54は、シャフト52と略同軸に配置されている。
【0018】
歯車部46は、所定の径R2(例えば、ピッチ径)を有し、下端部50に一体に形成されている。より具体的には、歯車部46は、下端部50の外周面54の周方向へ整列する複数の歯部46aを有する。各々の歯部46aは、外周面54から、該外周面54の径方向外方へ突出するように、該外周面54に一体に形成されている。
【0019】
歯部46aは、歯車部28の歯部28a(
図2)と係合する。本実施形態においては、歯車部46の径R2は、歯車部28の径R1と異なっている。より具体的には、歯車部46の径R2は、歯車部28の径R1よりも小さく(R2<R1)、径R2と径R1との比率は、例えば、R2:R1=12:17に設定される。
【0020】
図4を参照して、リンク部22は、アルミ等の金属からなる一体形状の平板部材であって、本体部56、及びレバー部58を有する。本体部56は、軸線A4に沿って真直ぐに延在し、その下端部56aがアーム18に回動可能に連結され、その上端部56bがアーム20に回動可能に連結される。より具体的には、本体部56の下端部56aには、貫通孔60が形成される一方、本体部56の上端部56bには、貫通孔62が形成されている。
【0021】
アーム18のシャフト40(
図1、
図2)は、本体部56の貫通孔60に回動可能に挿通され、該シャフト40には、ボルト等の締結具(図示せず)が締結される。これにより、アーム18の上端部32は、本体部56の下端部56aに対して、シャフト40の中心軸線の周りに相対回動可能となるように、連結される。
【0022】
一方、アーム20のシャフト52(
図1、
図3)は、本体部56の貫通孔62に回動可能に挿通され、該シャフト52には、ボルト等の締結具(図示せず)が締結される。これにより、アーム20の下端部50は、本体部56の上端部56bに対して、シャフト52の中心軸線の周りに相対回動可能となるように、連結される。
【0023】
レバー部58は、本体部56の下端部56aから軸線A5に沿って延出するように、該下端部56aに一体に形成されている。軸線A5は、軸線A4に対して角度θ2で傾斜している。本実施形態においては、角度θ2は、鋭角である(例えば、θ2=30°~80°)。
【0024】
レバー部58は、湾曲状に延在する側面58aを有する。側面58aは、その基端から先端に向かって外側に膨出するように湾曲して延在している。側面58aは、所定の曲率半径を有する円弧面であってもよいし、又は、複数の曲率半径を各々有する複数の円弧面の組み合わせであってもよい。
【0025】
補助力生成機構100は、補助装具10の補助力Faを生成する。本実施形態においては、補助力生成機構100は、
図1に示すように、アーム18の延長部30に設けられている。以下、
図5~
図7を参照して、補助力生成機構100について説明する。補助力生成機構100は、固定シャフト102、第1の付勢部104、ハウジング106、第2の付勢部108(
図7)、スライダ110、ロック部112、及びアクチュエータ114を備える。
【0026】
固定シャフト102は、軸線A6に沿って真直ぐに延びるシャフト部102aと、該シャフト部102aの上端から外方に突出するように設けられ、アーム18の延長部30に固定されるフランジ部102bとを有する。軸線A6は、延長部30の軸線A2(
図1、
図2)と平行となるように配置されてもよい。
【0027】
第1の付勢部104は、スライダ110とフランジ部102bとの間に介挿されている。本実施形態においては、第1の付勢部104は、第1のばね定数k1を有する圧縮コイルばねであって、軸線A6の方向に伸縮する。第1の付勢部104は、その内部にシャフト部102aが挿通されることで、軸線A6の方向に延在するように位置決めされる。第1の付勢部104は、軸線A6の方向に変位量xだけ圧縮されると、その反力として、付勢力F1(=k1・x)を生じさせる。
【0028】
ハウジング106は、中空であって、シャフト部102a及びスライダ110の一部を受容する。具体的には、ハウジング106は、略四角形の底部106aと、該底部106aから延出する筒状の側壁部106bと、該側壁部106bの上端から外方に延出するフランジ部106cとを有する。側壁部106bは、四角形の外形を有し、底部106aとともに、四角柱状の内部空間Sを画定している。
【0029】
図7に示すように、第2の付勢部108は、ハウジング106の内部空間Sに収容され、スライダ110と底部106aとの間に介挿されている。本実施形態においては、第2の付勢部108は、上述の第1のばね定数k1とは異なる第2のばね定数k2(≠k1)を有する圧縮コイルばねであって、軸線A6の方向に伸縮する。第2の付勢部108は、その内部にシャフト部102aが挿通されることで、軸線A6の方向に延在するように位置決めされる。こうして、第1の付勢部104及び第2の付勢部108は、軸線A6の方向に互いに並ぶように配置される。
【0030】
第2の付勢部108は、軸線A6の方向に変位量xだけ圧縮されると、その反力として、付勢力F2(=k2・x)を生じさせる。ここで、本実施形態においては、第2のばね定数k2は、上述の第1のばね定数k1よりも小さい(k2<k1)。したがって、第1の付勢部104及び第2の付勢部108は、軸線A6の方向に変位量xだけ圧縮されたときに、互いに異なる大きさの付勢力F1及びF2を、それぞれ生成する(具体的には、F1>F2)。
【0031】
スライダ110は、軸線A6に沿って移動可能となるように、第1の付勢部104と第2の付勢部108との間に設けられる。具体的には、スライダ110は、スライダ本体110a、及び複数の爪部110bを有する。スライダ本体110aは、略四角形状の外形を有し、その中心部には、軸線A6の方向へスライダ本体110aを貫通する貫通孔110c(
図7)が形成されている。
【0032】
スライダ本体110aは、その一部がハウジング106の内部空間Sに、軸線A6の方向へ移動可能に受容される。ここで、本実施形態においては、スライダ本体110a及び内部空間S(つまり、側壁部106bの内面)は、互いに対応する四角形状の外形を有している。この構成によれば、スライダ本体110aは、ハウジング106に対して軸線A6の周りに回動するのが規制されつつ、側壁部106bによって軸線A6の方向への移動が案内される。
【0033】
シャフト部102aは、貫通孔110cに相対摺動可能に挿通されており、これにより、スライダ110は、シャフト部102a上を軸線A6の方向へ摺動可能となっている。また、スライダ本体110aの上端部には、該上端部から外方に突出するリング状のフランジ部110d(
図6)が一体に形成されている。
【0034】
上述の第1の付勢部104は、その上端が固定シャフト102のフランジ部102bに当接する一方、その下端がスライダ110のフランジ部110dに当接する。また、第2の付勢部108は、その上端がスライダ本体110aの下端面に当接する一方、その下端がハウジング106の底部106aに当接する。
【0035】
爪部110bの各々は、スライダ本体110aのフランジ部110dから外方へ突出するように、該フランジ部110dに一体に形成されている。本実施形態においては、計4個の爪部110bが、フランジ部110dの周方向に略等間隔で並ぶように、配設されている。
【0036】
ロック部112は、軸線A6の周りに回動可能となるように、ハウジング106のフランジ部106cの上側に隣接して配置されている。具体的には、ロック部112は、リング部112a、複数の溝部112b、及び係合部112cを有する。リング部112aは、略円筒状の部材であって、スライダ本体110aを環囲するように、軸線A6周りに回動可能に設けられている。
【0037】
溝部112bの各々は、軸線A6の方向(つまり、スライダ110の移動方向)と平行に延在するように、リング部112aに形成されている。本実施形態においては、計4個の溝部112bが、スライダ110の爪部110bの位置に対応するように、リング部112aの周方向に略等間隔で並ぶように配設されている。各々の溝部112bは、リング部112aの上端で上側に向かって開口し、対応する爪部110bを内部に受容できるように形成されている。係合部112cは、上側から見て略U字状の外形を有し、リング部112aの下端部から外方へ突出するように、該リング部112aに一体に形成されている。
【0038】
ロック部112(すなわち、リング部112a)は、係合位置P1と非係合位置P2との間で、軸線A6周りに回動する。
図6及び
図7は、ロック部112が非係合位置P2に配置されている状態を示している。非係合位置P2に配置されているとき、ロック部112の溝部112bと、対応する爪部110bとは、軸線A6の方向に整列する。
【0039】
一方、
図8及び
図9は、ロック部112が係合位置P1に配置されている状態を示している。非係合位置P2に配置されているとき、ロック部112の溝部112bは、対応する爪部110bから周方向にずれる。これにより、各々の爪部110bは、リング部112aの上端面と対向することになる。
【0040】
アクチュエータ114は、ロック部112を、係合位置P1と非係合位置P2との間で駆動する。具体的には、アクチュエータ114は、アクチュエータハウジング116、回動部118、及び動力部120(
図10)を有する。アクチュエータハウジング116は、中空であって、取付具122を介してハウジング106に固定されている。アクチュエータハウジング116は、その内部に、後述する動力部120を収容する。
【0041】
回動部118は、直線状に延びる棒状部材であって、軸線A6と直交する軸線A7の周りに回動可能となるように、アクチュエータハウジング116に設けられている。回動部118は、その上端部が、ロック部112の係合部112cの内部に挿通され、これにより、該係合部112cと係合する。
【0042】
動力部120は、回動部118を回動させることで、該回動部118を介してロック部112を係合位置P1と非係合位置P2との間で回動させる。より具体的には、
図10示すように、動力部120は、てこ部124、ベース部126、ばね128、並びに、一対の形状記憶合金(SMA)130a及び130bを有する。
【0043】
てこ部124は、回動部118に一体に固設され、該回動部118とともに軸線A7の周りに回動する。ベース部126は、てこ部124に対して接近及び離反するように、該てこ部124に対向配置されている。ばね128は、てこ部124(又は回動部118)とベース部126との間に介挿され、該てこ部124及び該ベース部126の距離を一定に保持するように、該てこ部124及び該ベース部126を付勢する。
【0044】
一対のSMA130a及び130bは、てこ部124及びベース部126の間で張り渡されている。SMA130a及び130bは、その上端が、てこ部124を介して回動部118に接続されている。SMA130a及び130bの各々は、電流を与えると、その長さ方向に収縮する一方、電流を停止すると元の長さまで伸長する。
【0045】
動力部120は、このようなSMA130a及び130bの伸縮性を利用して、回動部118を回動させる動力を発生させる。例えば、
図10に示す状態から、一対のSMA130a及び130bのうち、右側のSMA130bに電流を与える。そうすると、SMA130bが収縮し、てこ部124を介して、回動部118に対し
図10の紙面表側から見て時計回り方向にトルクを加える。
【0046】
その結果、回動部118は、
図10に示す初期位置P3から所定の角度θ3(例えば、θ3≒30°)だけ軸線A7周りに回動し、
図11に示す回動位置P4に配置される。このとき、左側のSMA130aには張力が加えられ、SMA130aは、その長さ方向に引っ張られて僅かに伸長することになる。
【0047】
一方、SMA130bへの電流を停止させると、該SMA130bは、その長さ方向に徐々に伸長する一方、SMA130aは、作用していた張力が解除されて、その復元力によって収縮する。これにより、回動部118は、軸線A7周りに反時計回り方向へ回動し、
図11に示す回動位置P4から、
図10に示す初期位置P3へ復帰する。ばね128は、てこ部124とベース部126との距離を保持することで、このように伸縮するSMA130a及び130bに過負荷が加えられるのを防止する。これにより、SMA130a及び130bが損傷するのを防ぐことができる。
【0048】
動力部120の作用によって回動部118が初期位置P3と回動位置P4との間で回動されるのに従って、ロック部112は、係合位置P1(
図6)と非係合位置P2(
図8)との間で回動される。なお、
図10及び
図11においては、理解の容易のために、回動部118を点線表示している。
【0049】
次に、補助装具10の機能について説明する。
図1は、大腿部B1と脛部B2とが伸展し、大腿部B1及び脛部B2が直立した直立姿勢を示している。この直立姿勢においては、アーム18及び20は、
図1に示す伸展位置に配置される。伸展位置に配置されたとき、アーム18の軸線A1と、アーム20の軸線A3と、リンク部22の本体部56の軸線A4とは、互いに略平行となる。
【0050】
また、レバー部58は、アーム18に対し、第1の相対位置RP1に配置される。このとき、補助力生成機構100の第1の付勢部104及び第2の付勢部108は、伸長状態に維持されており、補助力生成機構100は、補助力Faを生成していない。なお、
図1に示す直立姿勢において、身体Bは前方を向く。
【0051】
一方、
図12は、大腿部B1と脛部B2とが膝関節B3で屈曲したしゃがみ姿勢を示す。なお、
図12においては、理解の容易の観点から、装着バンド14及び16を点線表示している。
図12に示すしゃがみ姿勢においては、アーム18及び20は、屈曲位置に配置される。屈曲位置に配置されたとき、アーム18の軸線A1、アーム20の軸線A3、及び、リンク部22の本体部56の軸線A4は、互いに非平行となり、軸線A1及びA3は、鋭角を形成する。また、レバー部58は、アーム18に対し、第2の相対位置RP2に配置される。
【0052】
身体Bが
図1に示す直立姿勢から
図12に示すしゃがみ姿勢へ移行するにつれて、アーム20はリンク部22に対し、シャフト52の中心軸線の周りに、右側から見て反時計回り方向へ相対回動する一方、アーム18はリンク部22に対し、シャフト40の中心軸線の周りに、右側から見て時計回り方向へ相対回動する。その結果、アーム18及び20は、伸展位置から屈曲位置へ屈曲する。
【0053】
このアーム18及び20の屈曲動作は、アーム18の歯車部28とアーム20の歯車部46との係合と、アーム18及び20を相対回動可能に接続するリンク部22とによって案内される。これにより、アーム18及び20の屈曲動作の間、アーム20の下端部50は、アーム18に配置されたシャフト40の周りを、右側から見て反時計回り方向へ公転するように、案内される。
【0054】
一方、アーム18及び20が伸展位置から屈曲位置へ屈曲するにつれて、レバー部58は、アーム18に対し、第1の相対位置RP1から第2の相対位置RP2へ、シャフト40の中心軸線の周りに、右側から見て反時計回り方向へ相対回動する。このようにレバー部58がアーム18に対して相対回動するにつれて、レバー部58の側面58aは、補助力生成機構100のハウジング106の底部106a上を摺動しつつ、該底部106aを軸線A6(すなわち、軸線A2)の第1の方向D1へ押す。
【0055】
その結果、補助力生成機構100のハウジング106は、第1の方向D1へ変位することになる。仮に、このときにロック部112(リング部112a)が、係合位置P1(
図8、
図9)に配置されているとする。この場合、レバー部58によって第1の方向D1へ押されたハウジング106は、ロック部112とともに第1の方向D1へ変位する。
【0056】
しかしながら、係合位置P1に配置されたリング部112aの上端面が、スライダ110の爪部110bと係合し、これにより、ハウジング106、第2の付勢部108、及びロック部112に対するスライダ110の相対移動が禁止される。したがって、この場合、第2の付勢部108は、第1の方向D1へ実質圧縮されない。
【0057】
この状態でハウジング106がレバー部58によって第1の方向D1へさらに押されると、ハウジング106、第2の付勢部108、ロック部112、及びスライダ110は、一体となって第1の方向D1へ変位し、
図13に示すように、第1の付勢部104を第1の方向D1へ圧縮させる。
【0058】
そうすると、第1の付勢部104は、その反力として、第1方向D1とは反対の第2方向D2へ作用する付勢力F1を、スライダ110、ロック部112及びハウジング106を介して、レバー部58に加える。このように第1の付勢部104の作用によってレバー部58に加えられた付勢力F1は、大腿部B1と脛部B2の屈伸運動を補助する補助装具10の補助力Fa1となる。すなわち、ロック部112が係合位置P1に配置されている場合、補助力Fa1は、第1の付勢部104の作用によって生成された付勢力F1となる。
【0059】
一方、ロック部112(リング部112a)が、非係合位置P2(
図6、
図7)に配置されているとする。この場合、レバー部58によって第1の方向D1へ押されたハウジング106は、ロック部112とともに第1の方向D1へ変位する。このとき、ロック部112は、非係合位置P2に配置されているので、ハウジング106とともに第1の方向D1へ移動するロック部112に形成された溝部112bに、スライダ110の爪部110bが相対的に進入することになる。
【0060】
これにより、ハウジング106、第2の付勢部108、及びロック部112に対するスライダ110の相対移動が許容される。その結果、ハウジング106及びロック部112は、スライダ110に対し第1の方向D1へ相対移動し、これにより、ハウジング106内でスライダ110と底部106aとの間に介挿された第2の付勢部108(
図14)は、第1の方向D1へ圧縮されることになる。
【0061】
この状態でハウジング106がレバー部58によって第1の方向D1へさらに押されると、第2の付勢部108がさらに圧縮されるとともに、ハウジング106、スライダ110、及びロック部112は、第1の方向D1へ変位する。その結果、
図14に示すように、第1の付勢部104も、第1の方向D1へ圧縮される。
【0062】
このように、第1の付勢部104が圧縮されると、該第1の付勢部104は、その変位量xに応じて、第2方向D2へ作用する付勢力F1を、スライダ110、第2の付勢部108、及びハウジング106を介して、レバー部58に加える。また、第2の付勢部108も、その変位量xに応じて、第2方向D2へ作用する付勢力F2を、ハウジング106を介して、レバー部58に加える。
【0063】
このような第1の付勢部104及び第2の付勢部108の作用によってレバー部58に加えられる付勢力F12は、互いに直列接続された第1の付勢部104及び第2の付勢部108の合成ばねSRの作用によって生成される付勢力と等価であって、大腿部B1と脛部B2の屈伸運動を補助する補助装具10の補助力Fa12となる。すなわち、ロック部112が非係合位置P2に配置されている場合、補助力Fa12は、第1の付勢部104及び第2の付勢部108(つまり、合成ばねRS)の作用によって生成された付勢力F12となる。
【0064】
この合成ばねSRのばね定数k12は、k12=k1・k2/(k1+k2)<k1となるので、該合成ばねSRが生成する補助力Fa12は、上述の補助力Fa1よりも小さくなり得る(Fa12>Fa1)。このように、本実施形態においては、アクチュエータ114が、ロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に選択的に配置することで、補助力生成機構100として生成する補助力Faを、補助力Fa1と補助力Fa12との間で切り替えることができる。
【0065】
反対に、身体Bが
図12に示すしゃがみ姿勢から
図1に示す直立姿勢へ移行すると、アーム20はリンク部22に対し、シャフト52の中心軸線の周りに、右側から見て時計回り方向へ相対回動する一方、アーム18はリンク部22に対し、シャフト40の中心軸線の周りに、右側から見て反時計回り方向へ相対回動する。その結果、アーム18及び20は、屈曲位置から伸展位置へ伸展する。
【0066】
このアーム18及び20の伸展動作は、歯車部28及び46の係合とリンク部22とによって案内される。これにより、アーム18及び20の伸展動作の間、アーム20の下端部50は、アーム18に設けられたシャフト40の周りを、右側から見て時計回り方向へ公転するように、案内される。このように、リンク部22は、アーム18及び20を伸展位置と屈曲位置との間で屈伸可能に接続し、歯車部28及び46は、リンク部22とともに、アーム18及び20の屈伸動作を案内する。
【0067】
アーム18及び20が屈曲位置から伸展位置へ伸展するにつれて、レバー部58はアーム18に対し、第2の相対位置RP2から第1の相対位置RP1へ、シャフト40の中心軸線の周りに、右側から見て時計回り方向へ相対回動する。ここで、本実施形態においては、上述したように、補助力生成機構100が、第2の相対位置RP2に配置されたレバー部58に対して補助力Fa(具体的には、補助力Fa1又はFa12)を加えている。
【0068】
これにより、レバー部58は、第2の相対位置RP2から第1の相対位置RP1へ向かって付勢され、その結果、アーム20の下端部50は、リンク部22を通して、シャフト40の中心軸線の周りに右側から見て時計回り方向へ公転するように付勢されることになる。こうして、補助力生成機構100は、レバー部58に補助力Faを加えることで、アーム18及び20を屈曲位置から伸展位置へ向かって付勢する。
【0069】
このように、補助装具10は、補助力生成機構100が生成する補助力Faによって、身体Bがしゃがみ姿勢から直立姿勢へ立ち上がる動作を補助することができる。結果、身体Bは、より簡単に立ち上がることができるようになる。そして、身体Bは、
図1に示す直立姿勢へ移行し、アーム18及び20は、伸展位置に復帰する。
【0070】
以上のように、本実施形態においては、補助力生成機構100は、互いに並ぶように配置された第1の付勢部104及び第2の付勢部108と、第1の付勢部104と第2の付勢部108との間に移動可能に設けられるスライダ110と、スライダ110と係合し、第2の付勢部108に対するスライダ110の移動を禁止する係合位置P1と、該係合を解除してスライダ110の該移動を許可する非係合位置P2との間で移動可能なロック部112とを備える。
【0071】
そして、補助力生成機構100は、ロック部112が係合位置P1に配置されているとき、第1の付勢部104の作用によって補助力Fa
1を生成する(
図13)一方、ロック部112が非係合位置P2に配置されているとき、第1の付勢部104及び第2の付勢部108の作用によって補助力Fa
12を生成する(
図14)。
【0072】
この構成によれば、ロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に選択的に配置することで、補助力生成機構100として生成する補助力Faを、補助力Fa1と補助力Fa12との間で切り替えることができる。これにより、用途に応じて、補助力Faを可変にすることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、補助力生成機構100は、係合位置P1と非係合位置P2との間でロック部112を駆動するアクチュエータ114をさらに備える。この構成によれば、アクチュエータ114の動作によって、ロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に配置し、以って、補助力Faを、補助力Fa1と補助力Fa12との間で切り替えることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、ロック部112は、係合位置P1と非係合位置P2との間で、スライダ110の移動方向と平行な軸線A6の周りに回動可能に設けられている。そして、アクチュエータ114は、軸線A6と直交する軸線A7の周りに回動可能に設けられ、ロック部112(具体的には、係合部112c)と係合する回動部118と、回動部118を回動させることで、該回動部118を介してロック部112を係合位置P1と非係合位置P2との間で回動させる動力部120とを有する。
【0075】
この構成によれば、アクチュエータ114は、動力部120によって回動部118を回動させることで、ロック部112を、係合位置P1又は非係合位置P2に、回動動作によって配置させることができる。これにより、比較的小さい駆動力でロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に移動させることができるとともに、回動部118及びロック部112の構成をコンパクトにできる。
【0076】
また、本実施形態においては、動力部120は、回動部118に接続され、電流に応じて伸縮することで該回動部118を回動させる形状記憶合金130a及び130bを有する。ここで、形状記憶合金130a及び130bは、比較的軽量であるとともに、騒音を生じさせることなく、回動部118を回動させる駆動力を生じさせることができる。したがって、補助力生成機構100の軽量化を実現できるとともに、補助力生成機構100の動作の静粛性を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態においては、スライダ110は、スライダ本体110aと、スライダ本体110aから外方へ突出する爪部110bとを有する。また、ロック部112は、スライダ本体110aを環囲し、係合位置P1と非係合位置P1との間で回動可能なリング部112aと、スライダ110の移動方向(つまり、軸線A6)と平行に延在するようにリング部112aに形成された溝部112bとを有する。
【0078】
そして、ロック部112は、リング部112aが係合位置P1に配置されているとき、爪部110bが該リング部112aと係合することで、第2の付勢部108に対するスライダ110の移動を禁止する一方、リング部112aが非係合位置P2に配置されているとき、爪部110bが溝部112bに進入することで、スライダ110の該移動を許可する。この構成によれば、比較的簡単な構成で、ロック部112によってスライダ110の移動を禁止又は許可することができる。したがって、ロック部112によってスライダ110の構成をコンパクトにできる。
【0079】
また、本実施形態においては、第1の付勢部104は、第1のばね定数k1を有するばねを含み、第2の付勢部は、第1のばね定数k1とは異なる第2のばね定数k2(≠k1)を有するばねを含む。この構成によれば、ばね定数の異なる2つのばねを用いることで、互いに異なる大きさの力を生成可能な第1の付勢部104及び第2の付勢部108を容易に構成できる。したがって、補助力生成機構100の製造コストを削減できる。
【0080】
また、本実施形態においては、第1の付勢部104は、第2の付勢部108よりも大きい付勢力F1(>F2)を生成可能である。より具体的には、第1の付勢部104の第1のばね定数k1を、第2の付勢部108の第2のばね定数k2よりも大きい値に設定することで、第1の付勢部104の付勢力F1(=k1・x)は、第2の付勢部108の付勢力F2(=k2・x)よりも大きくなり得る。この構成によれば、用途に応じて、ロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に選択的に配置することで、補助力Faを、補助力Fa1と、該補助力Fa1よりも顕著に小さい補助力Fa12との間で切り替えることができる。
【0081】
また、本実施形態においては、補助装具10は、身体Bの部位B2(具体的には、脛部)に装着されるアーム18、及び身体Bの部位B1(具体的には、大腿部)に装着されるアーム20と、アーム18及び20を伸展位置と屈曲位置との間で屈伸可能に接続するリンク部22と、リンク部22(具体的には、レバー部58)に対して補助力Faを加えることで、アーム18及び20を屈曲位置から伸展位置へ向かって付勢する補助力生成機構100とを備えている。この構成によれば、上述のように用途に応じて補助力Faを切り替え可能な補助装具10を実現できる。
【0082】
なお、アクチュエータ114は、SMA130bへの電流をON又はOFFにする操作部(例えば、スイッチ、押しボタン、又はタッチパネル等)を有し、補助装具10の使用者は、該操作部を手動で操作することで、SMA130bへの電流をON又はOFFにしてもよい。この場合、使用者は、アクチュエータ114を手動で操作して、ロック部112を、係合位置P1又は非係合位置P2に任意に配置させることができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、動力部120(
図10)が、一対のSMA130a及び130bを有する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、動力部120は、例えば、SMA130aの代わりに、弾性の線条体(例えば、ゴム紐)を有してもよい。この場合においても、動力部120は、
図10及び
図11に示すような、回動部118の回動動作を実現できる。
【0084】
なお、レバー部58の側面58aと、ハウジング106の底部106aとの当接部分に、低摩擦係数の滑り材(例えば、樹脂)を設けてもよい。この構成によれば、アーム18及び20が屈曲位置と伸展位置との間で屈伸するときに、レバー部58の側面58aが底部106a上を、より円滑に摺動できる。
【0085】
また、アーム18及び20が伸展位置から屈曲位置へ移動する間、側面58aは、底部106aに対して摺動しつつ当接するが、側面58aと底部106aとの当接点での該側面58aの法線方向が、軸線A2(又はA6)と略平行となるように、該側面58aの湾曲形状が定められてもよい。
【0086】
この構成によれば、側面58aは、アーム18及び20が伸展位置から屈曲位置へ移動する間、常に、底部106aに対し第1方向D1へ力を効果的に加えることができる。これにより、第1の付勢部104及び第2の付勢部108を効果的に圧縮させることができる。その一方で、第1の付勢部104及び第2の付勢部108は、レバー部58の側面58aに対し、該側面58aの法線方向と平行となる第2方向D2へ力を加えることができるので、レバー部58を第1の相対位置RP1へ向かって効果的に付勢することができる。
【0087】
なお、補助装具10は、一対の機構部12を有し、該一対の機構部12の一方が、大腿部B1、脛部B2及び膝関節B3の左側に配置される一方、該一対の機構部12の他方が、大腿部B1、脛部B2及び膝関節B3の右側に配置されてもよい。この場合において、該一対の機構部12は、左右対称の構造を有してもよい。
【0088】
また、上述した補助力生成機構100の構成は、一例であって、種々の変更を加えることができる。例えば、補助力生成機構100からアクチュエータ114を省略し、使用者が手動でロック部112を係合位置P1又は非係合位置P2に配置させてもよい。また、アクチュエータ114は、SMA130a及び130bの代わりに、回動部118を回動させるモータ(例えば、マイクロモータ)を有してもよい。
【0089】
また、ロック部112は、リング部112a及び溝部112bを有する形態に限定されない。例えば、ロック部112は、スライダ110に対して径方向に進退し、該スライダ110に形成された係合穴と脱離可能に係合するピンを有するものであってもよいし、第2の付勢部108(又はハウジング106)に対するスライダ110の移動を禁止可能な他の如何なる構造をしてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態においては、第1の付勢部104は、第2の付勢部108よりも大きい付勢力F1(>F2)を生成可能である場合について述べた。しかしながら、これに限らず、第1の付勢部104は、共通の変位量xに対し、第2の付勢部108と同じ付勢力F1(=F2)、又は、第2の付勢部108よりも小さい付勢力F1(<F2)を生成可能に構成されてもよい。
【0091】
この場合において、第1のばね定数k1は、第2のばね定数k2と同じか、又は第2のばね定数k2よりも小さい値に設定されてもよい。なお、第1の付勢部104及び第2の付勢部108の少なくとも一方は、ばねに限らず、空圧シリンダ、又は、互いに反発する一対の磁石等、第2の方向D2へ作用する付勢力を生成可能な如何なる構造を有してもよい。
【0092】
次に、
図15及び
図16を参照して、他の実施形態に係る補助装具70について説明する。補助装具70は、上述の補助装具10と、制御部72、センサ74(
図16)、及び電源76をさらに備える点で、相違する。なお、
図15においては、理解の容易のために、装着バンド14及び16を図示していない。電源76は、アーム18(具体的には、本体部26の第2の部分38)に固定され、制御部72と、及びアクチュエータ114の動力部120(具体的には、SMA130b)とに電力を供給する。例えば、電源76は、乾電池を有してもよい。
【0093】
センサ74は、身体Bの姿勢を検出する。ここで、
図17に示すように、身体Bは、斜面を歩いて登るときに、右の脚B11と左の脚B12とを、斜面前方(つまり、斜面上側)へ交互に繰り出すように歩く。
図17では、右の脚B11が斜面前方に繰り出されている姿勢を示している。
【0094】
この姿勢においては、右の脚B11の大腿部B1と脛部B2との屈曲角度は、左の脚B12の大腿部B1と脛部B2との屈曲角度よりも小さくなり、右の脚B11の大腿部B1及び脛部B2は、より深く屈曲している一方、左の脚B12の大腿部B1及び脛部B2は、実質伸展している。
【0095】
本実施形態においては、センサ74は、このような屈曲度合いに応じた脚B11の姿勢を検出する。一例として、センサ74は、脚B11の足裏B4に設けられた圧力センサ74Aを有する。ここで、身体Bが斜面を歩いているとき、脚B11が斜面前方に位置する場合(つまり、脚B11の大腿部B1及び脛部B2が深く屈曲している場合)と、斜面後側に位置する場合(つまり、脚B11の大腿部B1及び脛部B2が伸展している場合)とで、足裏B4に掛かる圧力が変化する。圧力センサ74Aは、このように脚B11の姿勢に応じて変化する圧力を、検出データαとして検出する。
【0096】
他の例として、センサ74は、脚B11の足の甲B5に設けられたジャイロセンサ74Bを有する。身体Bが斜面を歩いているときに脚B11を斜面前後に移動させると、これに応じて足の甲B5の傾斜角度が変化する。ジャイロセンサ74Bは、このように脚B11の姿勢に応じて変化する傾斜角度を、検出データαとして検出する。
【0097】
さらに他の例として、センサ74は、脚B11の膝関節B3又は足首B6の屈曲角度を計測する角度センサ74Cを有する。身体Bが斜面を歩いているとき、脚B11が斜面前方に位置する場合と、斜面後側に位置する場合とで、膝関節B3又は足首B6の屈曲角度が変化する。角度センサ74Cは、このように脚B11の姿勢に応じて変化する屈曲角度を、検出データαとして検出する。
【0098】
さらに他の例として、センサ74は、脚B11の大腿部B1、脛部B2、膝関節B3、足裏B4、足の甲B5、及び足首B6のうちの少なくとも2つの部位に設けられたモーションキャプチャ74Dを有する。モーションキャプチャ74Dは、脚B11の姿勢を検出データαとして検出する。
【0099】
このように、センサ74(例えば、圧力センサ74A、ジャイロセンサ74B、角度センサ74C、モーションキャプチャ74D)は、身体B(具体的には、脚B11)の姿勢を検出データα(例えば、圧力、傾斜角度、屈曲角度、姿勢のデータ)として検出し、該検出データαを制御部72へ供給する。
【0100】
制御部72は、例えば、プロセッサ(CPU、GPU等)、及びメモリ(RAM、ROM等)を有し、アーム18(具体的には、本体部26の第2の部分38)に固定されている。制御部72は、センサ74の検出データαに基づいて、ロック部112を係合位置P1と非係合位置P2との間で移動させるようにアクチュエータ114を制御する。以下、制御部72が実行するアクチュエータ114の制御方法について説明する。
【0101】
制御部72は、センサ74の検出データαに基づいて、脚B11が斜面前方に移動したか、又は、斜面後側に移動したかを判定する。例えば、制御部72は、検出データαと閾値αthとを比較することで、脚B11が斜面前方に移動したか、又は斜面後側に移動したかを判定する。この閾値αthは、脚B11が斜面前方又は後方に移動したときにセンサ74によって検出される検出データαに対応する値として、実験的又はシミュレーション等の手法により、予め定められる。
【0102】
制御部72は、脚B11が斜面前方に移動したと判定したとき、アクチュエータ114の動力部120を動作させて(具体的には、電源76からSMA130bに電流を加えて)、ロック部112を非係合位置P2に配置させる。これにより、
図17に示すように脚B11が斜面前方に繰り出されたときに、補助力生成機構100は、第1の付勢部104及び第2の付勢部108の作用による補助力Fa
12を生成し、補助装具10は、該補助力Fa
12によって、歩行中の脚B11の屈伸運動を補助する。
【0103】
一方、制御部72は、脚B11が斜面後方に移動した(
図17の脚B12を参照)と判定したとき、アクチュエータ114の動力部120を動作させて、ロック部112を係合位置P1に配置させる。これにより、脚B11が斜面後方に在るときは、補助力生成機構100は、第1の付勢部104の作用による補助力Fa
1を生成し、補助装具10は、該補助力Fa
1によって歩行中の脚B11の屈伸運動を補助する。このように、制御部72は、斜面を歩行する脚B11の姿勢(具体的には、脚B11の屈曲度合い)に応じて、補助力Faを、補助力Fa
12と補助力Fa
1との間で切り替えるように、アクチュエータ114を制御する。
【0104】
以上のように、本実施形態においては、補助装具70は、係合位置P1と非係合位置P2との間でロック部112を駆動するアクチュエータ114の動作を制御する制御部72を備える。この構成によれば、補助力生成機構100が生成する補助力Faを、補助力Fa12と補助力Fa1との間で、自動で切り替えることができる。
【0105】
また、本実施形態においては、補助装具70は、身体B(具体的には、脚L1)の姿勢を検出するセンサ74をさらに備える。そして、制御部72は、センサ74の検出データα(例えば、圧力、傾斜角度、屈曲角度、姿勢のデータ)に基づいて、ロック部112を係合位置P1と非係合位置P2との間で移動させるように、アクチュエータ114を制御する。
【0106】
この構成によれば、身体Bの歩行状況に応じて、補助力生成機構100が生成する補助力Faを、補助力Fa12又は補助力Fa1に最適化できる。具体的には、上述したように、脚B11が斜面前方に在るとき(換言すれば、脚B11の大腿部B1及び脛部B2が深く屈曲しているとき)には、より小さな補助力Fa12を補助力生成機構100に生成させている。これにより、深く屈曲した脚B11を柔軟に補助できる。その一方で、脚B11が斜面後方に在るとき(換言すれば、脚B11の大腿部B1及び脛部B2が伸展しているとき)には、より大きな補助力Fa1を補助力生成機構100に生成させている。これにより、脚B11を強固に支えることができる。
【0107】
なお、本実施形態においては、右の脚B11に装着した補助装具70の機能について説明したが、2つの補助装具70を、左の脚B11と右の脚B12にそれぞれ装着してもよいことを理解されたい。この場合において、左の脚B12に装着される補助装具70の機構部12と、右の脚B11に装着される補助装具70の機構部12とは、互いに左右対称となる構造を有してもよい。
【0108】
なお、制御部72は、脚B11が斜面前方に移動したと判定したときに、アクチュエータ114を動作させてロック部112を係合位置P1に配置する一方、脚B11が斜面後方に移動したと判定したときに、アクチュエータ114を動作させてロック部112を非係合位置P2に配置してもよい。
【0109】
なお、
図18に示すように、身体Bが斜面を横断するように歩く場合においても、制御部72は、センサ74の検出データαに基づいて、ロック部112を係合位置P1と非係合位置P2との間で移動させるようにアクチュエータ114を制御してもよい。例えば、制御部72は、検出データαに基づいて、右の脚B11が斜面下側に在るか、又は斜面上側に在るかを判定する。
【0110】
図18に示す場合、右の脚B11は、斜面下側に在る。この場合、右の脚B11に装着された補助装具70Aの制御部72は、検出データαに基づいて脚B11が斜面下側に在ると判定し、該補助装具70Aのロック部112を係合位置P1に配置するように、アクチュエータ114を制御する。こうして、脚B11が斜面下側に在るとき、補助装具70Aの補助力生成機構100は、第1の付勢部104の作用による補助力Fa
1を生成し、補助装具70Aは、該補助力Fa
1によって歩行中の脚B11の屈伸運動を補助する。
【0111】
反対に、補助装具70Aの制御部72は、検出データαに基づいて脚B11が斜面上側に在ると判定した場合は、補助装具70Aのロック部112を非係合位置P2に配置するように、アクチュエータ114を制御する。こうして、脚B11が斜面上側に在るとき、補助装具70Aの補助力生成機構100は、第1の付勢部104及び第2の付勢部108の作用による補助力Fa12を生成し、補助装具70Aは、該補助力Fa12によって、歩行中の脚B11の屈伸運動を補助する。
【0112】
ここで、
図18のように脚B11が斜面下側に在るとき、該脚B11の大腿部B1及び脛部B2は比較的に伸展した状態となる。この場合、補助装具70Aは、より大きな補助力Fa
1を補助力生成機構100に生成させ、これにより、伸展状態の脚B11を強固に支えることができる。
【0113】
一方、脚B11が斜面上側に在るとき、該脚B11の大腿部B1及び脛部B2は比較的深く屈曲することになる。この場合、補助装具70Aは、より小さな補助力Fa12を補助力生成機構100に生成させ、これにより、屈曲した脚B11を柔軟に補助することができる。
【0114】
なお、左の脚B12に装着された補助装具70Bの制御部72も、同様に、センサ74の検出データαに基づいて、該脚B12が斜面下側に在る場合はロック部112を係合位置P1に配置させる一方、
図18のように該脚B12が斜面上側に在る場合はロック部112を非係合位置P2に配置させるように、アクチュエータ114を制御してもよい。
【0115】
なお、上述の実施形態においては、制御部72及び電源76が、アーム18(第2の部分38)に固定される場合について述べた。しかしながら、これに限らず、制御部72及び電源76の少なくとも一方は、アーム20又はリンク部22に固定されてもよいし、又は、機構部12に固定されることなく、使用者が保持してもよい。
【0116】
なお、上述の実施形態においては、補助装具10及び70を、大腿部B1と脛部B2の屈伸運動を補助するために、該大腿部B1及び脛部B2に装着する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、補助装具10又は70を、例えば、人体Bの前腕部と上腕部の屈伸運動を補助するために、該前腕部及び上腕部に装着してもよい。以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0117】
10,70,70A,70B 補助装具
12 機構部
14,16 装着バンド
18,20 アーム
22 リンク部
72 制御部
74 センサ
100 補助力生成機構
104 第1の付勢部
108 第2の付勢部
110 スライダ
110a スライダ本体
110b 爪部
112 ロック部
112a リング部
112b 溝部
114 アクチュエータ
118 回動部
120 動力部
130a,130b 形状記憶合金(SMA)