(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027689
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電気炉
(51)【国際特許分類】
F27D 11/02 20060101AFI20240222BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240222BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F27D11/02 A
F27B17/00 B
F27D17/00 101A
F27D17/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130689
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 昭廣
(72)【発明者】
【氏名】三河 直矢
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝
【テーマコード(参考)】
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056BB06
4K056CA02
4K056CA04
4K056DA02
4K056DA22
4K056DA36
4K063AA05
4K063AA12
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA01
4K063FA14
4K063FA18
(57)【要約】
【課題】加熱効率に優れ、排気管に耐火材をライニングする必要のない製造コストの廉価な電気炉を提供する。
【解決手段】ヒータ機構20を、外側筒部21と、内側筒部22と、ヒータ本体24と、エダクタ部25とで構成し、エダクタ部25のノズル管25aからエダクタ用外部空気A3を吸引し、その吸引力で炉体10の内部の高温空気A2を、外側通路部P1を通過させて吸引したエダクタ用外部空気A3とともに排出管25bから排出させることにより、外側通路部P1を通過する高温空気A2と内側通路部P1を通過する常温空気A1を熱交換して常温空気A1を予熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を熱源としたヒータ機構によって、炉体の内部に載置された被加熱材を加熱処理する電気炉であって、
前記ヒータ機構を、
前記炉体に連通されて後部が外方に突出するように設けられた外側筒部と、
前記外側筒部の内部に、前記外側筒部に沿うように設けられ、前記外側筒部との間に前記炉体の内部の高温空気が通過する外側通路部を形成し、かつ内部に外部からの常温空気が通過する内側通路部を形成する内側筒部と、
前記内側筒部の前記炉体側である前部に設けられたヒータ本体と、
前記外側筒部の後部に直交して下方から前記外側筒部の下部内周面まで延び、前記外側筒部に連通するように設けられたノズル管,及び前記外側筒部の後部に直交して前記外側筒部に連通するように設けられ、前記外側筒部の上部内周面から上方に延び、前記ノズル管に対向する位置に配置された排出管とを有し、前記外側通路部の内周面側を含めて形成されるエダクタ部とで構成し、
前記エダクタ部のノズル管からエダクタ用外部空気を吸引し、その吸引力で前記炉体の内部の高温空気を、前記外側通路部を通過させて前記吸引したエダクタ用外部空気とともに前記排出管から排出させることにより、前記外側通路部を通過する高温空気と前記内側通路部を通過する常温空気を熱交換して常温空気を予熱することを特徴とする電気炉。
【請求項2】
前記内側筒部の中間部の外周面に凸部を加えたことを特徴とする請求項1に記載の電気炉。
【請求項3】
前記内側通路部に、前記常温空気を送るためのエアブロアを連結したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や非鉄金属を加熱処理するために使用される電気炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や非鉄金属を加熱処理する炉として、電気を熱源として利用した電気炉が存在する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示す電気炉は、炉体の外部に冷却ファンを設け、この冷却ファンに、外気を炉体の内部に供給して炉体内部の加熱空気を外部に放散させるという冷却機能を持たせている。
【0003】
また、こうした従来の電気炉としては、例えば、
図4と
図5に示すものが知られている。
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右それぞれに金属ヒータ31を設けるとともに、炉体30の上部中央に回転ファン32を設け、これらの金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、回転ファン32でその加熱した空気を対流させることによって被加熱材Tを加熱している。なお、炉体30内部の加熱された空気は、排気管(排気ダクト)(図示せず)を通して外部に排出される。
【0004】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部にエアヒータ41を取付け、外部の空気をそのエアヒータ41を通して加熱して炉体40の内部に取り入れ、その加熱した空気で被加熱材Tを加熱している。なお、加熱された空気は、
図4に示す電気炉と同様に、炉体40の外部に排気管(図示せず)を通して排出されるようになっている。
【0005】
図4および
図5に示す電気炉はいずれも炉体内部の高温な空気をそのまま排気管を通して排出するので、排気管に耐火材をライニング(裏打ち)する必要がある。なお、特許文献1に記載の電気炉は小型であるため、排気管は設けていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および
図4と
図5に示す従来技術の電気炉は、いずれも電気を加熱源として利用しているので、カーボンニュートラルの観点から極めて好ましい。
【0008】
しかしながら、これら電気炉のいずれにも改善の余地がある。すなわち、特許文献1に示す電気炉は、冷却ファンによる冷却機能を持たせているので、自ずと加熱効率が低下する。従って、加熱効率の向上が求められる。
【0009】
また、
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右に設けた金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、それを回転ファン32で対流させるので、加熱された空気の攪拌効果が十分とはいえず、加熱効率に課題が残る。また、被加熱材Tには加熱された空気が常に一定の方向から作用することからも加熱効率に問題がある。これらは、特に、被加熱材Tの形状が複雑な場合に顕著である。また、排気管に耐火材をライニングする必要があるので、そのための製造コストが必要となる。
【0010】
また、この電気炉における回転ファン32は、高温である炉体30の内部に設けられているので、変形やインペラバランスの崩れによる振動などの損傷が発生し易く、その寿命が短いといった問題もある。
【0011】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部の空気(すなわち常温の空気)をエアヒータ41で加熱し、その加熱した空気を被加熱材Tに作用させた後、排気するので、常に常温の空気を必要な高温まで加熱する必要がある。したがって、エネルギーの損失が大きく、加熱効率が低い。また、排気管に耐火材をライニングする必要があるので、そのための製造コストが嵩む。
【0012】
そこで、本発明の目的とするところは、加熱効率に優れ、排気管に耐火材をライニングする必要をなくすことによって、製造コストの廉価な電気炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の電気炉(1)は、本発明の電気炉(1)は、電気を熱源としたヒータ機構(20)によって、炉体(10)の内部に載置された被加熱材Tを加熱処理するものであって、
前記ヒータ機構(20)を、
前記炉体(10)に連通されて後部が外方に突出するように設けられた外側筒部(21)と、
前記外側筒部(21)の内部に、前記外側筒部(21)に沿うように設けられ、前記外側筒部(21)との間に前記炉体(10)の内部の高温空気A2が通過する外側通路部(P1)を形成し、かつ内部に外部からの常温空気(A1)が通過する内側通路部(P1)を形成する内側筒部(22)と、
前記内側筒部(22)の前記炉体(10)側である前部に設けられたヒータ本体(24)と、
前記外側筒部(21)の後部に直交して下方から前記外側筒部(21)の下部内周面まで延び、前記外側筒部(21)に連通するように設けられたノズル管(25a)、及び前記外側筒部(21)の後部に直交して前記外側筒部21に連通するように設けられ、前記外側筒部(21)の上部内周面から上方に延び、前記ノズル管(25a)に対向する位置に配置された排出管(25b)とを有し、前記外側通路部(P1)の内周面側を含めて形成されるエダクタ部(25)とで構成し、
前記エダクタ部(25)のノズル管(25a)からエダクタ用外部空気(A3)を吸引し、その吸引力で前記炉体(10)の内部の高温空気(A2)を、前記外側通路部(P1)を通過させて前記吸引したエダクタ用外部空気(A3)とともに前記排出管(25b)から排出させることにより、前記外側通路部(P1)を通過する高温空気(A2)と前記内側通路部(P1)を通過する常温空気(A1)を熱交換して常温空気(A1)を予熱することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電気炉(1)は、前記内側筒部(22)の中間部の外周面に凸部(22a)を加えたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の電気炉(1)は、前記内側通路部(P1)に、前記常温空気(A1)を送るためのエアブロア(50)を連結したことを特徴とする。
【0016】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気炉によれば、電気を熱源としたヒータ機構によって、炉体の内部に載置された被加熱材を加熱処理するものにおいて、ヒータ機構にエダクタ部を設けたので、加熱効率に優れた製品を提供することができる。
【0018】
すなわち、エダクタ部のノズル管からエダクタ用外部空気を吸引し、その吸引力で炉体の内部の高温空気を、外側通路部を通過させてエダクタ用外部空気とともに排出管から排出させるといういわゆるベンチュリー効果を現出させる。この際に、外側通路部を通過する高温空気と内側通路部を通過する常温空気を熱交換させ、それにより常温空気を予熱する。従って、ヒータ本体に達する常温空気はすでに加熱された状態にあり、その結果、ヒータ本体によって、より高温に加熱することができるので、電気炉の加熱効率を高めることができる。
【0019】
また、外側通路部を通過する高温空気は常温空気との熱交換によってその温度が低下し、また、エダクタ用外部空気と共に排出されることによってもその温度が低下する。従って、この高温空気を排出する排出管に耐火材をライニングする必要がない。その結果、ライニングを行うためのコストを削減し、製造コストを低減することができる。
【0020】
また、本発明によれば、内側筒部の中間部の外周面に凸部を加えたので、内側筒部の中間部外周面の表面積を大きくすることができる。また、この凸部によって外側筒部を通過する高温空気の流れをやや滞留させた状態とすることができる。これら二つの理由により、外側通路部を通過する高温空気と内側通路部を通過する常温空気との熱交換を、より効果的に行わせることができる。従って、電気炉の加熱効率をさらに高めることができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、内側通路部に常温空気を送るためのエアブロアを連結したので、充分な量の常温空気を、ヒータ本体を通して炉体の内部に供給することができる。これにより、電気炉の加熱効率をさらに高めることができる。
【0022】
このように、ヒータ機構にエダクタ部を設けて高い加熱効率を得るようにした構成は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図4】従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図5】他の従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態に係る電気炉1を説明する。この電気炉1は、電気を熱源として作動するヒータ機構20によって、炉体10の内部に載置された被加熱材Tを加熱処理する製品であり、その大きな特徴はヒータ機構20にある。
【0025】
すなわち、このヒータ機構20は、外側筒部21、内側筒部22、ヒータ本体24、およびエダクタ部25を備える。
外側筒部21は、炉体10の路壁を貫通して炉体10の内部に連通し、その後部が炉体10の外方に向かって突出するように設けられる。
【0026】
内側筒部22は、外側筒部21の内部に、外側筒部21と同心軸上に設けられ、外側筒部21との間の隙間を炉体10の内部の高温空気A2が通過する外側通路部P1としている。また、内側筒部22の内部を、外部からの常温空気A1が通過する内側通路部P1としている。内側筒部22の内側通路部P1を形成する部分は、高温空気A2と常温空気A1とが熱交換する熱交換部23を形成する。
【0027】
ヒータ本体24は、内側筒部22に内蔵された状態で、内側筒部22の炉体10側である前部に設けられる。ヒータ本体24は電源に電気ケーブル24aで接続され、電気で駆動する。
【0028】
エダクタ部25は、ノズル管25aと排出管25bを備える。ノズル管25aは、外側筒部21の後部に直交した状態で、その下方から外側筒部21の下部内周面まで延び、外側筒部21に連通する。ノズル管25aは、下端部が大径で上端部が小径な略逆円錐体形状を成す。
【0029】
排出管25bは、外側筒部21の後部に直交して外側筒部21に連通するように設けられ、前記外側筒部21の上部内周面から上方に延び、ノズル管25aに対向するように配置される。排出管25bは、ノズル管25aとは逆に、下端部が小径で上端部が大径の略円錐体形状を成す。
【0030】
エダクタ部25は、これらノズル管25aおよび排出管25bと外側通路部P1(内周面側)とで形成される。また、ノズル管25aには、エダクタ用外部空気A3を供給するためのエア供給器60が連結される。
【0031】
なお、本実施形態におけるヒータ機構20では、内側筒部22の中間部の外周面に複数の凸部22aを設けている。この複数の凸部22aは、それぞれが独立してリング形状を形成するものであっても良いし、複数で一つの螺旋状のネジ形状を形成するものであっても良い。複数の凸部22aを設けた場合、内側筒部22の内側通路部P1を形成する部分と複数の凸部22aとで、高温空気A2と常温空気A1とが熱交換する熱交換部23を形成する。複数の凸部22aの高さは限定されないが、高くするほど高温空気A2の流れを抑制するので熱交換部23の機能を高めることが可能となる。なお、本実施形態における凸部22aは、外側通路部P2の高さ幅のほぼ1/2の高さに設定している。
また、内側通路部P1には、常温空気A1を送るためのエアブロア50を連結している。
【0032】
本実施形態に係る電気炉1は次のように作動する。まず、炉体10の内部に被加熱材Tを載置した状態で、外部の常温空気A1をエアブロア50によってヒータ機構20の内側通路部P1に送り、ヒータ本体24によって加熱して高温空気A2として炉体10の内部に供給する。この高温空気A2によって、炉体10の内部の被加熱材Tを加熱処理する。
【0033】
同時に、エア供給器60によって、エダクタ用外部空気A3をエダクタ部25のノズル管25aから吸引させ、外側通路部P1の後部を通して排出管25bから排出する。なお、このエダクタ用外部空気A3は、内側通路部P1に送る常温空気A1と同じ大気中の空気である。
【0034】
ノズル管25aがエダクタ用外部空気A3を吸引したことによる吸引力により、外側通路部P1には負圧が発生する。この際、ノズル管25aは略逆円錐体形状を成すので、ノズル管25aの上端部から噴出するエダクタ用外部空気A3によって外側通路部P1には極めて大きな負圧が生じる(ベンチュリー効果)。この大きな負圧によって、炉体10の内部の高温空気A2が外側通路部P1に連続的に吸い込まれ、エダクタ用外部空気A3と混ざり合った状態で、排出空気A4として排出管25bから排出される。また、排出管25bは略円錐体形状を成すので、ここを通過するエダクタ用外部空気A3は円滑に排出される。
【0035】
ここで、外側通路部P1と内側通路部P1は同心軸上に設けているので、両者の間に形成される外側通路部P1はその全体にわたって均一な隙間を形成する。従って、炉体10の内部の高温空気A2を円滑に通過させることができる。
【0036】
この状態において、外側通路部P1を通過する高温空気A2と内側通路部P1を通過する常温空気A1とが、両者の間に位置する内側筒部22を介して間接的に接触し、熱交換を行う。すなわち、常温空気A1は高温空気A2との熱交換によって予熱された状態でヒータ本体24に達する。従って、予熱された常温空気A1は、ヒータ本体24によって効率的にさらに高温まで加熱される。その結果、電気炉1の加熱効率を高めることができる。
【0037】
一方、高温空気A2は常温空気A1との熱交換によって冷却されて排出管25bから排出される。さらに、この高温空気A2は、外側通路部P1を通過するエダクタ用外部空気A3と混合状態となって、より冷却された状態で排出管25bから排出される。従って、高温が作用しない排出管25bには耐火材をライニングする必要がなく、その結果、耐火材でライニングするための製造コストを省き、製造コストを低減することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、内側筒部22の中間部の外周面に凸部22aを設けているので、内側筒部22の中間部外周面の表面積を大きくすることができ、高温空気A2と常温空気A1とをより広い面積において熱交換させることができる。同時に、この凸部22aによって外側通路部P1を通過する高温空気A2の流れを抑制し、滞留状態で緩やかに通過させることができる。こうしたはたらきにより、外側通路部P1を通過する高温空気A2と内側通路部P1を通過する常温空気A1との熱交換を、より効果的に行わせることができる。従って、電気炉1の加熱効率をさらに高めることができる。
【0039】
また、本実施形態では、内側通路部P1に、常温空気A1を送るためのエアブロア50を連結しているので、このエアブロア40を調節することによって充分な量(あるいは適量)の常温空気A1を炉体10の内部に供給することができる。従って、加熱処理する被加熱材Tの種類に対応した効果的な加熱効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 電気炉
10 炉体
20 ヒータ機構
21 外側筒部
22 内側筒部
22a 凸部
23 熱交換部
24 ヒータ本体
24a 電気ケーブル
25 エダクタ部
25a ノズル管
25b 排出管
30 炉体
31 金属ヒータ
32 回転ファン
40 炉体
41 エアヒータ
50 エアブロア
60 エア供給器
T 被加熱材
P1 内側通路部
P2 外側通路部
A1 常温空気
A2 高温空気
A3 エダクタ用外部空気
A4 排出空気