(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027700
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】デリバリーカテーテル及びデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20240222BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130716
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000153258
【氏名又は名称】株式会社JIMRO
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠二
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB32
4C267BB40
4C267CC09
4C267HH04
4C267HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内管の先端付け根部分におけるキンクを防止する。
【解決手段】デリバリーカテーテル2のインナーシャフト10をアウターチューブ20に軸方向へ移動可能に挿通する。インナーシャフト10の内管11における手元側の部分14の外周を被覆管12で覆い、先端部分13を延び出せる。先端部分13の付け根部分13bより先端側の部分13aの外周にステント3を設ける。先端部分13における被覆管12の近くの先端付け根部分13bに曲げ集中緩和部30を設ける。内管11における曲げ集中緩和部30を含む先端付け根部分13bの曲げ剛性が、手元側の部分14と被覆管12を合わせた曲げ剛性より低く、かつ内管11における先端側の部分13aとステント3とを合わせた曲げ剛性より高い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、前記インナーシャフトが、
先端部分の外周に前記ステントが設けられる内管と、
前記先端部分が延び出るようにして、前記内管における前記先端部分より手元側の部分の外周を覆う被覆管と、
前記先端部分における前記被覆管の近くの先端付け根部分に設けられた曲げ集中緩和部と、
を備え、前記先端部分における前記先端付け根部分より先端側の部分が、前記ステントのためのステント配置部分になっており、
前記内管における前記曲げ集中緩和部を含む前記先端付け根部分の曲げ剛性が、前記内管における前記手元側の部分と前記被覆管とを合わせた曲げ剛性より低く、かつ前記内管における前記先端側の部分と前記ステントとを合わせた曲げ剛性より高いことを特徴とするデリバリーカテーテル。
【請求項2】
前記曲げ集中緩和部が、前記先端付け根部分の外周を囲む環状に形成されており、前記曲げ集中緩和部の外径が、前記両側部分の外径より大径であることを特徴とする請求項1に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項3】
前記曲げ集中緩和部が、前記内管とは別体の環状体を含み、前記環状体が、前記内管の外周に嵌められていることを特徴とする請求項2に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項4】
前記曲げ集中緩和部が、前記内管と同体をなして管径方向外側へ隆起する環状の隆起部を含むことを特徴とする請求項2に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項5】
ステントと、前記ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルとを備えたデリバリーシステムであって、前記デリバリーカテーテルが、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、前記インナーシャフトが、
内管と、
前記内管の先端部分が延び出るようにして、前記内管における前記先端部分より手元側の部分の外周を覆う被覆管と、
前記先端部分における前記被覆管の近くの先端付け根部分に設けられた曲げ集中緩和部と、
を備え、前記ステントが、前記先端部分における前記先端付け根部分より先端側の部分の外周に設けられて、該先端側の部分と前記アウターチューブとの間に挟まれており、
前記内管における前記曲げ集中緩和部を含む前記先端付け根部分の曲げ剛性が、前記手元側の部分と前記被覆管とを合わせた曲げ剛性より低く、前記先端側の部分と前記ステントとを合わせた曲げ剛性より高く、
前記デリバリーシステムにおける、前記曲げ集中緩和部が配置された先端付け根部の曲げ剛性が、前記先端付け根部より手元側の被覆管配置部の曲げ剛性より低く、前記先端付け根部より先端側のステント配置部の曲げ剛性より高いことを特徴とするデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いるデリバリーカテーテル及びデリバリーシステムに関し、特に、ステントを病変部まで届けて、開通させた病変部に留置するデリバリーカテーテル及びデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
デリバリーカテーテルは、アウターチューブと、該アウターチューブに挿通されたインナーチューブとを備えている。インナーシャフトは、内管と、該内管を覆う被覆管とを含む。内管の先端部分は、被覆管から延び出ている。該内管の先端部分の外周にステントが設けられる。ステントは、窄められた状態で、アウターチューブの内周面と内管の外周面との間に挟まれて保持される。ステント及びデリバリーカテーテルによって、デリバリーシステムが構成されている。該デリバリーシステムが、患者の体内の病変部まで差し入れられる。その後、インナーチューブに対してアウターチューブが手元側へ引かれることによって、ステントがリリースされて病変部に留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-248332号公報
【特許文献2】特開2012-239758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記リリース前のステントは、通常、内管の先端部分における被覆管近くの先端付け根部分よりも先端側の部分に配置されており、先端付け根部分には被さっていない。したがって、デリバリーシステムにおける先端側部(内管の前記先端側の部分の配置部)は、内管とステントとアウターチューブによって構成され、先端付け根部(内管の前記先端付け根部分の配置部)は、内管とアウターチューブによって構成され、それより手元側の被覆管配置部は、内管と被覆管とアウターチューブによって構成されている。このため、デリバリーシステムにおいては、先端付け根部が最も可撓性が高くて曲がりやすく、被覆管配置部が、最も可撓性が低くて曲がりにくい。かかるデリバリーシステムを病変部まで差し入れる際、病変部までの体内経路に大きく曲がる部分があると、先端付け根部が集中的に曲げ変形されやすく、内管の先端付け根部分がキンク(曲げ座屈)を起こすおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、デリバリーカテーテル及びステントを含むデリバリーシステムにおける先端付け根部が集中的に曲げ変形されるのを抑制又は緩和して、該先端付け根部における内管のキンクを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、前記インナーシャフトが、
先端部分の外周に前記ステントが設けられる内管と、
前記先端部分が延び出るようにして、前記内管における前記先端部分より手元側の部分の外周を覆う被覆管と、
前記先端部分における前記被覆管の近くの先端付け根部分に設けられた曲げ集中緩和部と、
を備え、前記先端部分における前記先端付け根部分より先端側の部分が、前記ステントのためのステント配置部分になっており、
前記内管における前記曲げ集中緩和部を含む前記先端付け根部分の曲げ剛性が、前記内管における前記手元側の部分と前記被覆管とを合わせた曲げ剛性より低く、かつ前記内管における前記先端側の部分と前記ステントとを合わせた曲げ剛性より高いことを特徴とする。
これによって、ステントのリリース前のデリバリーシステムにおける、前記曲げ集中緩和部が配置された先端付け根部の曲げ剛性が、それより手元側の被覆管配置部の曲げ剛性より低く、それより先端側のステント配置部の曲げ剛性より高くなるようにできる。
【0007】
また、本発明は、ステントと、前記ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルとを備えたデリバリーシステムであって、前記デリバリーカテーテルが、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、前記インナーシャフトが、
内管と、
前記内管の先端部分が延び出るようにして、前記内管における前記先端部分より手元側の部分の外周を覆う被覆管と、
前記先端部分における前記被覆管の近くの先端付け根部分に設けられた曲げ集中緩和部と、
を備え、前記ステントが、前記先端部分における前記先端付け根部分より先端側の部分の外周に設けられて、該先端側の部分と前記アウターチューブとの間に挟まれており、
前記内管における前記曲げ集中緩和部を含む前記先端付け根部分の曲げ剛性が、前記手元側の部分と前記被覆管とを合わせた曲げ剛性より低く、前記先端側の部分と前記ステントとを合わせた曲げ剛性より高く、
前記デリバリーシステムにおける、前記曲げ集中緩和部が配置された先端付け根部の曲げ剛性が、前記先端付け根部より手元側の被覆管配置部の曲げ剛性より低く、前記先端付け根部より先端側のステント配置部の曲げ剛性より高いことを特徴とする。
すなわち、当該デリバリーシステムにおいては、曲げ剛性が、被覆管配置部、先端付け根部、ステント配置部の順に、手元側から先端側へ向かって徐々に、ないしは段階的に低くなっている。
【0008】
好ましくは、前記曲げ集中緩和部が、前記先端付け根部分の外周を囲む環状に形成されており、前記曲げ集中緩和部の外径が、前記両側部分の外径より大径である。
【0009】
好ましくは、前記曲げ集中緩和部が、前記内管とは別体の環状体を含み、前記環状体が、前記内管の外周に嵌められている。
【0010】
好ましくは、前記曲げ集中緩和部が、前記内管と同体をなして管径方向外側へ隆起する環状の隆起部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デリバリーシステムの先端付け根部が集中的に曲げ変形されるのを抑制又は緩和でき、内管の先端付け根部分におけるキンクを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るデリバリーカテーテルを備えたデリバリーシステムを、ステントをリリースした状態で示す側面図である。
【
図2】
図2(a)は、前記デリバリーシステムの先端部付近を、ステントのリリース前の収容状態で示す側面断面図である。
図2(b)は、前記ステントをリリースする途中の状態におけるデリバリーシステムの先端部付近の側面断面図である。
図2(c)は、前記ステントをリリースした状態のデリバリーシステムの先端部付近の側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2(a)の円部IIIの拡大側面断面図である。
【
図4】
図4は、ステントのリリース前のデリバリーシステムの先端部付近を湾曲された状態で示す解説側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るデリバリーカテーテルの先端付け根部分及びその両側部分の拡大側面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係るデリバリーカテーテルの先端付け根部分及びその両側部分の拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図4)>
図1は、デリバリーシステム1を示したものである。デリバリーシステム1は、例えば大腸癌等の閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いられるものであり、デリバリーカテーテル2と、ステント3を備えている。デリバリーカテーテル2によって、ステント3が病変部まで届けられて、リリースされる。ステント3は、筒状のワイヤメッシュによって構成されている。
以下の説明では、特に断らない限り、デリバリーシステム1は、ステント3のリリース前の状態であるものとする。
【0014】
図1に示すように、デリバリーカテーテル2は、内側手元操作部4と、外側手元操作部5と、インナーシャフト10と、アウターチューブ20を含む。筒状の外側手元操作部5に内側手元操作部4が軸方向へ移動可能に挿通されている。内側手元操作部4の先端部からインナーシャフト10が延び、外側手元操作部5の先端部からアウターチューブ20が延びている。
【0015】
図1及び
図2に示すように、アウターチューブ20にインナーシャフト1が軸方向へ移動可能に挿通されている。
図2(a)~同図(c)に示すように、インナーシャフト10は、内管11と、被覆管12を備えている。内管11の材質は、例えばPEEK等の樹脂によって構成されている。内管11の外径、内径及び管厚は、全長にわたって一定である。内管11の先端部分13を除いてそれより手元側(
図2(a)において右側)の部分14の外周は、樹脂製の被覆管12によって覆われている。以下、内管11における被覆管12にて覆われた部分14を「被覆管内部分14」と称す。内管11の先端部分13は、被覆管12から延び出ている。
図2(a)に示すように、内管10の先端には円錐形状の先端ピース17が設けられている。
【0016】
図2(a)に示すように、内管11の先端部分13の外周にリリース前のステント3が設けられている。ステント3の外周にアウターチューブ20が被さっている。内管11の先端部分13とアウターチューブ20との間にステント3が挟まれることによって、ステント3が保持されている。
図2(b)に示すように、内管11の先端部分13の1又は複数の所定箇所の外周には、リリース操作等の際にステント3との摩擦抵抗を高めるための環状の抵抗部15が設けられている。
【0017】
図2(a)に示すように、リリース前のステント3の手元端(
図2(a)において右端)は、被覆管12に達していない。言い換えると、内管11の先端部分13における被覆管12の近くの先端付け根部分13bには、ステント3が被せられていない。内管11の先端部分13のうち先端付け根部分13bよりも先端側(
図2(a)において左側)の部分13aだけにステント3が被せられている。先端側部分13aが、ステント3のためのステント配置部分となっている。
【0018】
図3に示すように、内管13の先端付け根部分13bには、その外周を囲む環状体30(曲げ集中緩和部)が設けられている。環状体30は、内管11とは別体の環状の部材であり、内管11の外周に嵌められている。環状の環状体30の内周面が、接着剤16を介して内管11の外周面に接着されている。環状体30の材質は、特に限定が無く、樹脂でもよく、金属でもよい。好ましくは、環状体30は、可撓性又は弾性を有している。
【0019】
環状体30の手元端30eは、被覆管12の先端に当接又は近接するように配置されている。なお、図示は省略するが、被覆管12の先端に環状キャップが設けられていてもよく、該環状キャップに環状体30の手元端が当接又は近接するように配置されていてもよい。
【0020】
環状体30の外径は、内管13における当該環状体30を挟んで管軸方向の両側部分13a,14の外径より大径である。かつ、環状体30の外径は、被覆管12の外径より小径である。環状体30の管厚は、被覆管12の外半径と内管11の外半径との差より小さい。
図2(a)に示すように、環状体30(曲げ集中緩和部)の軸長L
30は、好ましくはL
30=1mm~4mm程度である。内管13の先端部分13(先端ピース17の手元端から被覆管2の先端までの部分)の全長L
13に対する環状体30(曲げ集中緩和部)の軸長L
30の割合は、好ましくは(L
30/L
13)=0.005~0.04程度である。
【0021】
環状体30は、先端付け根部13bへの曲げ変形の集中を緩和する曲げ集中緩和部として機能している。内管11における環状体30(曲げ集中緩和部)を含む先端付け根部分13bの曲げ剛性は、内管11の被覆管内部分14(手元側の部分)と被覆管12とを合わせた曲げ剛性より低く、かつ内管11の先端側部分13aとステント3とを合わせた曲げ剛性より高い。また、内管11における環状体30(曲げ集中緩和部)を含む先端付け根部分13bの曲げ剛性は、内管11における環状体30を挟んで管軸方向の両側部分13a,14の曲げ剛性より高い。
【0022】
図3に示すように、リリース前のステント3の手元端は、環状体30の先端30fに近接又は当接するように配置されている。したがって、
図2(a)に示すように、デリバリーシステム1における先端側部1a(内管11の先端側の部分13aの配置部ひいてはステント3の配置部)は、主に、内管11とステント3とアウターチューブ20とによって構成されている。デリバリーシステム1における先端付け根部1b(内管11の先端付け根部分13bの配置部)は、主に、内管11とアウターチューブ20と環状体30とによって構成されている。デリバリーシステム1における先端付け根部1bより手元側の被覆管配置部1cは、主に、内管11と被覆管12とアウターチューブ20によって構成されている。
【0023】
デリバリーシステム1における先端付け根部1bの曲げ剛性は、それより手元側の被覆管配置部1cの曲げ剛性より低く、それより先端側のステント配置部1aの曲げ剛性より高い。デリバリーシステム1の曲げ剛性は、被覆管配置部1c、先端付け根部1b、ステント配置部1aの順に、手元側から先端側へ向かって徐々に、ないしは段階的に低くなっている。
【0024】
デリバリーシステム1においては、環状体30によって、先端付け根部1bの曲げ剛性(撓みにくさ)を補強できる。すなわち、デリバリーシステム1の曲げ剛性が、先端付け根部1bにおいて不連続に低下するのを防止できる。言い換えると、デリバリーシステム1の可撓性が、先端付け根部1bにおいて不連続に増大するのを防止できる。
【0025】
デリバリーシステム1は、次のようにして、閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いられる。
図2(a)に示すように、デリバリーシステム1は、先端側部1bにステント3が収容された状態で病変部へ向けて差し入れられる。
図4に示すように、前記病変部までの体内経路に大きく曲がる部分があった場合、その曲がりに合わせてデリバリーシステム1が湾曲変形される。このとき、環状体30によって、先端付け根部1bに曲げが集中しないようにできる。これによって、デリバリーカテーテルを、ステント配置部1aから被覆管配置部1cまでほぼ均等な曲率で湾曲変形させることができる。この結果、内管11の先端付け根部分13bがキンク(曲げ座屈)を起こすのを防止することができる。
【0026】
デリバリーシステム1の先端を前記病変部まで差し入れた後、内側手元操作部4に対して外側手元操作部5を手元側へ引く。そうすることで、
図2(b)~
図2(c)に示すように、インナーシャフト4に対してアウターチューブ5が手元側へ引かれる。これによって、ステント3が、デリバリーカテーテル2からリリースされ、弾性的に拡径展開されて病変部を開通させる。展開されたステント3が病変部に留置されることによって、病変部の開通状態が維持される。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図5)>
図5に示すように、第2実施形態においては、内管11における先端付け根部分13bに、環状の隆起部32が形成されている。隆起部32は、内管11と同体をなして管径方向外側へ隆起されている。隆起部32の外径は、内管11における隆起部32を挟んで管軸方向の両側部分13a,14の外径より大径である。隆起部32の手元端32eが被覆管12の先端に当接又は近接している。リリース前のステント3の手元端は、隆起部32の先端32fに近接又は当接している。
【0028】
隆起部32によって曲げ集中緩和部が構成されている。隆起部32によって先端付け根部1bの曲げ剛性(撓みにくさ)を補強でき、内管11の先端付け根部分13bがキンク(曲げ座屈)を起こすのを防止できる。
【0029】
<第3実施形態(
図5)>
図5に示すように、第3実施形態においては、曲げ集中緩和部33が、内管11の先端付け根部分13bと被覆管内部分14とに跨るように設けられている。曲げ集中緩和部33の手元側部分33bの外周に被覆管12の先端側管部分12aが被さっている。曲げ集中緩和部33の先端側部分33aが、被覆管12より先端側へ延び出ている。曲げ集中緩和部33は、内管11とは別体の環状体によって構成されていてもよく、内管11と同体の隆起部によって構成されていてもよい。被覆管23における先端側管部分12aは、それより手元側の管部分12bよりも曲げ集中緩和部33の厚み分だけ薄肉であってもよい。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、曲げ集中緩和部が、内管11の先端付け根部分13bに埋め込まれた埋設部材であってもよい。
曲げ集中緩和部の曲げ剛性が、当該曲げ集中緩和部の手元側から先端側へ向かって連続的又は段階的に低下していてもよい。
曲げ集中緩和部が、被覆管12と同体であり、かつ外径が被覆管12の外径より小径であってもよい。
曲げ集中緩和部が、環状体30と隆起部33の両方を含んでいてもよい。
曲げ集中緩和部の手元端面と被覆管の先端面との間に、キンクを起こさない程度(例えば数mm以下)の隙間が形成されていてもよい。
被覆管の先端部分の内周面と内管の外周面との間には、被覆管と内管どうしを軸合わせするための筒状のスペーサが設けられていてもよい。好ましくは、前記スペーサは、軟質樹脂によって構成されており、デリバリーカテーテルの曲げ剛性にほとんど影響を与えることがない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば閉塞又は狭窄した病変部の治療具に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 デリバリーシステム
1a 先端側部(ステント配置部)
1b 先端付け根部(内管の先端付け根部分及び曲げ集中緩和部の配置部)
1c 被覆管配置部
2 デリバリーカテーテル
3 ステント
4 内側手元操作部
5 外側手元操作部
10 インナーシャフト
11 内管
12 被覆管
12a 被覆管の先端側管部分
12b 手元側の管部分
13 内管の先端部分
13a 先端側部分(ステント配置部分)
13b 先端付け根部分
14 被覆管内部分(手元側の部分)
20 アウターチューブ
30 環状体(曲げ集中緩和部)
30e 環状体の手元端
30f 環状体の先端
32 隆起部(曲げ集中緩和部)
32e 隆起部の手元端
32f 隆起部の先端
33 曲げ集中緩和部
33a 先端側部分
33b 手元側部分