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特開2024-27702バイオマスのトレファクションシステム
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  • 特開-バイオマスのトレファクションシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027702
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】バイオマスのトレファクションシステム
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/14 20060101AFI20240222BHJP
   F27B 7/34 20060101ALI20240222BHJP
   F27B 7/42 20060101ALI20240222BHJP
   F27B 7/18 20060101ALI20240222BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20240222BHJP
   C10L 9/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F27B7/14
F27B7/34
F27B7/42
F27B7/18
C10L5/44
C10L9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130718
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】522330005
【氏名又は名称】印出 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】印出 晃
【テーマコード(参考)】
4H015
4K061
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA08
4H015BA09
4H015BB03
4H015CB01
4K061AA08
4K061BA12
4K061DA01
4K061EA07
4K061GA02
4K061GA05
4K061GA06
(57)【要約】
【課題】収率70%以上、低位発熱量5,000kcal/h以上のバイオマスの半炭化物を生産するのに適したトレファクションシステムを提供すること。
【解決手段】バイオマスのトレファクションシステム1は、空気を遮断した状態で、バイオマスを250~350℃に加熱する半炭化処理を行うリアクター4として、パドル式リアクターを用いている。回転炉とは異なり、リアクター4の内部11において、パドル24に干渉しない任意の位置に温度センサーを配置して内部の雰囲気温度、材温度を直接、測定できる。リアクターの内部11において、バイオマスW2の搬送方向に沿って行われる半炭化の各処理プロセスにおける温度を測定して制御に反映できるので、各プロセスの温度管理等の制御を高精度かつ最適な状態で行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをリアクター内において熱分解して半炭化状態にするバイオマスのトレファクションシステムにおいて、
前記リアクターはパドル式リアクターであり、
前記パドル式リアクターは、
リアクター筒状本体と、
前記リアクター筒状本体の内部に配置した回転軸と、
前記回転軸を中心として回転して、前記リアクター筒状本体の内部に投入されたバイオマスの撹拌および前記回転軸に沿った方向への搬送を行う複数のパドルと、
を備えていることを特徴とするバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記パドルには、
第1パドルと、
前記第1パドルとは、前記回転軸に対する取付け角、回転速度および回転方向のうちの少なくとも一つが異なる第2パドルと、
が含まれているバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項3】
請求項1において、
前記パドルには、
前記回転軸に対する取付け角、回転速度および回転方向のうちの少なくとも一つを変更可能な可変式パドルが含まれているバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項4】
請求項1において、
前記リアクターを外周側から加熱する外部加熱炉を備えており、
前記外部加熱炉は、前記リアクター内のバイオマスの搬送方向に沿って複数の加熱区画に仕切られており、
各加熱区画には、個別に制御可能なバーナーがそれぞれ配置されているバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項5】
請求項4において、
前記リアクターの内部の雰囲気温度および内部を搬送されるバイオマスの材温度の少なくとも一方を検出する温度検出部を備えており、
前記温度検出部は、前記リアクターの内部において、前記加熱区画のそれぞれに対応する前記搬送方向の各ゾーンの雰囲気温度またはバイオマスの材温度を検出可能であるバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項6】
請求項5において、
前記温度検出部により検出された前記雰囲気温度または前記材温度に基づき、前記バーナーを駆動して前記加熱区画のそれぞれによる前記リアクターの加熱状態を制御する制御部を備えているバイオマスのトレファクションシステム。
【請求項7】
請求項6において、
前記パドルには、前記回転軸に対する取付け角、回転速度および回転方向のうちの少なくとも一つを変更可能な可変式パドルが含まれており、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された前記雰囲気温度または前記材温度に基づき、前記可変式パドルの前記取付け角、前記回転速度または前記回転方向を変更して、前記ゾーンのそれぞれにおけるバイオマスの搬送速度、搬送方向または滞留時間を調整するバイオマスのトレファクションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスをリアクター内において熱分解して半炭化状態にするバイオマスのトレファクションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
PKS(椰子がら)、木質(チップ、ペレット、おが粉)、バーク、建廃チップ等のバイオマスを半炭化(トレファクション)することにより、エネルギー密度を高め、粉砕性等を向上させるバイオマスの燃料化技術が知られている。バイオマスの半炭化処理では、一般に、所定の乾燥状態にしたバイオマスをロータリーキルン炉に投入し、空気を遮断した低酸素濃度雰囲気において間接加熱により250℃~350℃程度に加熱して炭化させるようにしている。
【0003】
特許文献1には、内部加熱式のロータリーキルン炉を用いた半炭化方法が記載されている。この方法では、ロータリーキルン炉内に配置した配管から過熱蒸気を処理対象物に直接に吹き付けて加熱している。特許文献2には、炭化炉等として利用される外熱式ロータリーキルンが記載されている。この外熱式ロータリーキルンにおいては、回転するロータリーキルン炉の軸方向の複数箇所の温度を外周側から非接触式の温度計を用いて計測し、計測結果に基づきロータリーキルン炉の温度制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-174660号公報
【特許文献2】特開2008-180451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半炭化処理(トレファクション処理)においては、処理温度(バイオマスの材温度)が数度違うだけでも、得られた製品(半炭化物、半炭化燃料)の物性が大きく変わってしまう。しかしながら、半炭化処理に用いられている内熱式ロータリーキルンや外熱式ロータリーキルンを用いたリアクター(以下、従来の方式のリアクター)では、精度の高い温度制御ができないという課題がある。
【0006】
すなわち、半炭化処理の研究開発・試作等においては、その殆どが炭化処理用のリアクターを改造したロータリーキルン型の装置が用いられている。これらの従来の方式のリアクターでは、リアクター本体が回転するという構造上の理由から、リアクターの出入口付近の雰囲気温度しか測定できない。このため、例えば特許文献2に記載されているように、リアクターの外周面の温度を非接触式に温度計を用いて測定して内部の雰囲気温度を推定するしかなく、半炭化処理に必要なリアクター内の各部の雰囲気温度および処理対象のバイオマスの材温度を直接に測定することができない。
【0007】
半炭化の処理温度帯、例えば250℃~350℃では、処理中のバイオマスが或る温度を超えると発熱反応による自己発熱によって、急速に温度が上昇してオーバーシュートしてしまい、部分的に収率の低い炭となってしまう。従来の方式のリアクターの出入口付近の雰囲気温度情報等で処理温度を制御したのでは、部分的なオーバーシュートを防ぐことができない。また、リアクターの外周面温度から内部の雰囲気温度を推定する場合にも内部の処理温度を精度よく制御できない場合が多く、部分的なオーバーシュートを防ぐことができない。オーバーシュートを防ぐために全体の設定温度帯を下げると、半炭化が不十分になってしまう。
【0008】
また、半炭化処理では、原料(バイオマス)は、リアクター投入後から排出まで、「乾燥」、「昇温」、「温度保持」などのリアクター内で各プロセスを順次に辿るため、各プロセスにおいて高精度かつ最適な温度制御が必要とされる。従来の方式のリアクターは構造的に、各プロセスにおける高精度で最適な温度制御が不可能である。特に、長時間の連続処理において、安定した収率、物性を保持することが困難である。
【0009】
これらの事情により、従来の方式のリアクターを用いて半炭化したバイオマスは、半炭化不足のものと過度に炭化したものが混ざり合った混合物となり、HGI値(ハードグローブ粉砕性指数)も収率も低くなってしまう。バイオマスの半炭化処理により、収率70%以上、低位発熱量5,000kcal/kg以上の半炭化物を得るためには、大部分のヘミセルロースを分解し、セルロースの一部を分解する必要があるが、これを実現するための高精度かつ最適な温度制御が、従来の方式のリアクターでは不可能である。
【0010】
これに加えて、従来の方式のリアクターは、構造上気密性が悪く、低酸素濃度が維持できず発火することがある。低酸素濃度を維持するために窒素ガスなどの不活性ガスを通気させる場合には、ランニングコストが高くなってしまう。また、タールが発生するため長時間の連続運転ができない、過剰に発生した木ガスによるガス爆発が起こりやすいなどの改善すべき点がある。
【0011】
以下に、従来の方式のリアクターの問題点を箇条書きにして纏めて示す。
(1)半炭化処理に用いるリアクターとしてロータリーキルンが使用されているが、回転炉のため、内部に温度センサーを取り付けることができず、炉内各部の雰囲気温度や材温度を測定して、これらの温度を制御することが難しい。
(2)半炭化処理においてバイオマスのガス化が始まると、わずかの温度上昇により熱分解が加速され不可逆的なオーバーシュート状態となり、制御が難しく、製品の品質も安定しない。また発生した木ガスによるガス爆発が起こりやすい。
(3)従来の方式のリアクターは、構造上気密性を保つのが困難で低酸素濃度を維持することが難しい。酸素がリアクター内にリークすると、オーバーシュート、炭化、発火に繋がる。そのため、低酸素濃度を維持するために、窒素ガスなどの不活性ガスを充てんさせる方式もあるが、コストが嵩む。
(4)温度制御が不安定であるため、設定温度よりも温度が上昇した際に熱分解が過剰に起こり、タールが大量に発生する。
(5)ロータリーキルンは熱伝達が悪いため設置面積が大きくなる。
(6)半炭化処理においては、リアクターへの投入から排出までの間に各反応プロセスが順次に発生し、各プロセス応じたゾーニングおよび最適な温度制御等が必要である。従来の方式のリアクターでは炉内各部に温度センサーの設置が出来ないため、炉内のゾーニング、最適な温度制御等が困難である。その結果、製品の品質が安定しない。
(7)炉内にバイオマスやタールが付着、停滞しやすい。
【0012】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、リアクター内部の雰囲気温度、処理されるバイオマスの材温度を高精度かつ最適な状態に制御可能なリアクターを備え、収率70%以上、低位発熱量5,000kcal/h以上のバイオマスの半炭化物を生産するのに適したトレファクションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、バイオマスをリアクター内において熱分解して半炭化状態にするバイオマスのトレファクションシステムにおいて、前記リアクターとしてパドル式リアクターを用いることを特徴としている。パドル式リアクターは、リアクター筒状本体と、このリアクター筒状本体の内部に配置した回転軸と、この回転軸を中心として回転してリアクター筒状本体の内部に投入されたバイオマスの撹拌および回転軸に沿った方向への搬送を行う複数のパドルとを備えている。
【0014】
本発明のパドル式リアクターのリアクター筒状本体は回転せず、その内部に配置したパドルが回転する。回転炉とは異なり、固定式のリアクター筒状本体の内部において、パドルに干渉しない位置に温度センサーを配置して内部の雰囲気温度、材温度を直接、測定できる。リアクター筒状本体の内部において、バイオマスの搬送方向に沿って行われる半炭化の各処理プロセスにおける温度を測定して制御に反映できるので、各プロセスの温度管理等の制御を高精度かつ最適な状態で行うことができる。これにより、過剰な熱分解に起因するオーバーシュートを回避でき、製品の品質が安定し、タールの発生も抑制でき、発生した木ガスに起因するガス爆発も起こりにくい。
【0015】
また、本発明のパドル式リアクターは、従来の方式のリアクターにおける回転炉に比べて、気密性が高い。このため、内部を低酸素状態に維持することが容易であり、発火リスクを低減できる。
【0016】
さらに、パドル式リアクターは、ロータリーキルンと比較して次のような利点がある。まず、ロータリーキルンはその内部において原料の付着、一部の原料が内部に長期に滞留するなどの弊害が起こる。パドル式リアクターでは、リアクター筒状本体の内部に投入された処理対象のバイオマスを、パドルで掻き出すため、内周面などへの原材料、タールの付着が少なく、材料が内部に長期滞留する事態も起きにくい。また、ロータリーキルンと比較して、パドルは攪拌能力が圧倒的に高いので、材温度のばらつきが小さく、処理ムラができにくい。また、熱伝達性が高くなるため材料に熱を伝えやすい。したがって、装置の小型化にも有利である。
【0017】
本発明のトレファクションシステムにおいて、リアクターを外周側から加熱する外部加熱炉を配置し、この外部加熱炉を、リアクター内のバイオマスの搬送方向に沿って複数の加熱区画に仕切り、各加熱区画に、個別に制御可能なバーナーをそれぞれ配置することができる。さらに、リアクター内の雰囲気温度、搬送されるバイオマスの材温度を検出する温度検出部を配置し、この温度検出部により、リアクター内の加熱区画のそれぞれに対応する複数箇所において雰囲気温度または搬送されるバイオマスの材温度を検出することができる。
【0018】
この構成によれば、温度検出部により検出されたリアクター内の雰囲気温度または材温度に基づき、バーナーを駆動して加熱区画のそれぞれによるリアクター内の搬送方向に沿った各部位の加熱状態を適切に制御できる。この結果、リアクター内における各処理プロセスに最適な温度制御を精度良く行うことが可能になる。これにより、適切な材温環境を形成することができ、爆燃や、オーバーシュートを防ぐことができ、品質の良い半炭化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は本発明の実施の形態に係るバイオマスのトレファクションシステムの概略構成図、(B)はリアクターおよび外部加熱炉の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したバイオマスのトレファクションシステムの実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明を実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。
【0021】
図1(A)は本発明の実施の形態に係るバイオマスのトレファクションシステムの概略構成図であり、図1(B)はそのリアクターおよび外部加熱炉の模式図である。バイオマスのトレファクションシステム1は、処理対象のバイオマスW1の投入部2、投入されたバイオマスW1を乾燥する乾燥炉3、乾燥後のバイオマスW2に半炭化処理を施すリアクター4、リアクター4に付設されている外部加熱炉5、リアクター4から排出される処理後の半炭化物W3を回収する回収部6、各部の駆動制御を司る駆動制御装置7を備えている。
【0022】
リアクター4は、投入された乾燥後のバイオマスW2を、空気を遮断した状態で、例えば、250~350℃に加熱して半炭化状態にするものであり、本例のリアクター4はパドル式リアクターである。図1(A)には、リアクター4内におけるバイオマスW2の搬送方向に直交する方向から見た場合のリアクター4および外部加熱炉5の内部構成を模式的に示してあり、図1(B)には、搬送方向から見た場合のリアクター4、外部加熱炉5の内部構成を模式的に示してある。
【0023】
リアクター4は、両端が封鎖された円筒形状をしたリアクター筒状本体10を備えており、その内部11が半炭化処理用の反応室となっている。リアクター筒状本体10の一方の端の上側外周面部分にはバイオマスW2の投入口12が形成され、他方の端の下側外周面部分には処理後の半炭化物W3の排出口13が形成されている。リアクター筒状本体10の内部11の中心には、同軸状態で、回転軸20が架け渡されており、回転軸20の両側の軸端部21、22はリアクター筒状本体10の両側の端壁によって不図示の軸受を介して回転自在の状態で支持されている。リアクター筒状本体10から投入側に突出している軸端部21は、ギヤードモータ等の回転駆動源23に連結されている。
【0024】
リアクター筒状本体10の内部11において、回転軸20には、当該回転軸20を中心として直径方向に延びる一対のパドル24が、軸方向に沿って一定の間隔で複数取り付けられている。回転軸20が回転すると、回転軸20を中心として、回転軸20と共に各パドル24が回転する。各パドル24は同一構成であり、回転軸20から半径方向に延びるパドル支軸25と、このパドル支軸25の先端に取り付けたパドル本体板26とを備えている。パドル本体板26は、例えば、回転軸20の軸方向に対して所定の角度だけ傾斜した姿勢でパドル支軸25に取り付けられており、回転軸20を中心に回転すると、バイオマスW2を撹拌すると共に、投入側から排出側に向かう搬送方向にバイオマスW2を送り出すように構成されている。
【0025】
リアクター筒状本体10の内部は、ここで行われるバイオマスW2の半炭化処理の各プロセスに対応させて、例えば、投入側から排出側に向けて4つのゾーンZ1~Z4に分けることができる。本例では、各ゾーンZ1~Z4の雰囲気温度あるいは材温度を測定するために、これらのゾーンZ1~Z4に温度センサー81~84を配置してある。ゾーンZ1~Z4の数は4つに限定されるものではなく、それより少ないゾーンあるいはそれより多いゾーンに分けることもできる。また、各温度センサー81~84は、パドル24に干渉しない位置であればリアクター筒状本体10の内部11において任意の位置に配置でき、その数も4か所に限定されるものではなく、それより多い箇所、少ない箇所に配置することもできる。
【0026】
リアクター4に付設されている外部加熱炉5は、リアクター筒状本体10の外周を取り囲む箱型断面形状で、リアクター筒状本体10とほぼ同一の長さの炉である。外部加熱炉5の内部は、仕切り板50によって、その長さ方向に沿って複数の加熱区画に仕切られている。本例では、ゾーン数に対応させて、長さ方向に3枚の仕切り板50が所定の間隔で配置されて、投入側から排出側に向けて4つの加熱区画51~54に仕切られている。また、外部加熱炉5は、加熱区画51~54の熱源として、各加熱区画51~54に、個別に制御可能なバーナー55~58が付設されている。
【0027】
次に、駆動制御装置7はリアクター制御部71を備えており、リアクター制御部71は、温度センサー81~84により検出されたリアクター4の内部11の各ゾーンの雰囲気温度、材温度に基づき、バーナー55~58を制御して加熱区画51~54のそれぞれによるリアクター4の加熱状態を調整する。
【0028】
このように構成したトレファクションシステム1は、リアクター4としてパドル式リアクターを用いている。リアクター4は、ロータリーキルンのような回転炉とは異なり、リアクター筒状本体10それ自体は回転せず、回転軸20のみが回転する。このため、リアクター筒状本体10内の任意の位置に温度センサー81~84を設置できる。リアクター筒状本体10の内部11における各ゾーンの雰囲気温度および材温度を直接に測定することができるので、リアクター制御部71は、ゾーン毎の温度制御を高い精度で行うことができる。
【0029】
また、回転軸20のみが回転するので、この両側の軸端部21、22を支持している軸受け部分の気密性を確保することで、リアクター筒状本体10の内部11に外部から空気が侵入することを防止できる。このように、ロータリーキルンより構造的に気密性を維持することが安易であるので、炉内を低酸素状態に維持しやすいという利点がある。
【0030】
さらに、パドル24は、ロータリーキルンに比べて数十倍の撹拌能力があり、高速回転することで熱伝達の速度も大きくなり、材温度のばらつきを小さくでき、結果として炉の長さを短くできる。また、パドル24によりバイオマスW2の掻き出しが行われるので、リアクター筒状本体10の内部11に、バイオマスW2やタールの付着が少ないという利点もある。
【0031】
また、本例では、外部加熱炉5内に仕切り板50を設け、リアクター4の投入側から排出側に向けて搬送方向に沿って、リアクター4の各ゾーンZ1~Z4に対応させて、複数の加熱区画51~54に分割し、それぞれの加熱区画51~54にバーナー55~58を設置してある。リアクター制御部71は、各ゾーンに配置した温度センサー81~84の出力に基づき、リアクター4の内部11における各ゾーンZ1~Z4の雰囲気温度、材温度を別々に制御している。これにより、リアクターの内部11の各ゾーンZ1~Z4を、半炭化の各プロセスに最適の温度状態に精度良く制御されるので、高品質の半炭化物W3が得られる。また、熱分解のオーバーシュートを抑えることができるので、オーバーシュートに起因するタールの発生も抑制できる。
【0032】
次に、パドル式リアクターを用いる場合には、リアクターの内部11を搬送されるバイオマスW2の搬送速度、滞留時間を変更することが容易である。例えば、パドル24のうちの一部のパドル24の取付け角度を変える。リアクターの内部11における一つのゾーン内に位置するパドル24の取付け角度を、他のゾーンに位置するパドル24の取付け角とは異なる角度にする。これにより、取付け角を変更したパドル24が位置しているゾーンにおけるバイオマスW2の搬送速度を速く、あるいは遅くし、または、滞留あるいは逆送りさせることができる。
【0033】
また、回転軸20として、同心状に配置した複数の中空回転軸を配置し、一つのゾーン内に位置するパドル24が取り付けられている中空回転軸と、他のゾーン内に位置するパドル24が取り付けられている中空回転軸とを、個別に回転駆動できるように構成することもできる。このようにすれば、各ゾーンのパドル24を個別に正転、逆転、停止させることができ、ゾーン毎に、バイオマスW2の搬送方向(前進、停滞、後退)を制御することができ、また、搬送速度を変更することもできる。これにより、リアクターの内部11で行われる各プロセスでのバイオマスW2の搬送スピードを微調整でき、その滞留時間も変更できる。その結果、リアクターの内部11における各部でのバイオマスW2への熱伝達量を精度良く調整でき、雰囲気温度、材温度を最適な状態に維持できる。
【0034】
以上説明したように、本例のトレファクションシステム1は、パドル式のリアクター4を備えているので、リアクターの内部11の雰囲気温度、処理されるバイオマスW2の材温度を高精度かつ最適な状態に制御することができる。よって、収率70%以上、低位発熱量5,000kcal/h以上のバイオマスの半炭化物W3を生産可能なトレファクションシステムを実現できる。
【符号の説明】
【0035】
1 トレファクションシステム
2 投入部
3 乾燥部
4 リアクター
5 外部加熱炉
6 回収部
7 駆動制御装置
10 リアクター筒状本体
11 内部
12 投入口
13 排出口
20 回転軸
21、22 軸端部
23 回転駆動源
24 パドル
25 パドル支軸
26 パドル本体板
50 仕切り板
51~54 加熱区画
55~58 バーナー
71 リアクター制御部
81~84 温度センサー
Z1~Z4 ゾーン
W1、W2 バイオマス
W3 半炭化物
図1