(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027712
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6562 20140101AFI20240222BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240222BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240222BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240222BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240222BHJP
【FI】
H01M10/6562
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130743
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】組電池において、電池の冷却効率をさらに向上させる。
【解決手段】組電池は、複数の電池を保持する保持部材と、保持部材を介して複数の電池を積層方向に積層した積層電池と、積層電池に隣接して積層方向に延伸し、複数の電池を冷却する冷却風の流路を形成する通風路と、を有する。通風路は、冷却風を通風路に取り込む吸気口を有する。保持部材は、通風路側と通風路の反対側とに開孔して通風路から積層電池へ冷却風を通風させる通風孔を有する。通風孔は、複数の電池の底面と保持部材の底面との間に形成された空間に向けて開孔した底面通風孔を含む。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を保持する保持部材と、
前記保持部材を介して前記複数の電池を積層方向に積層した積層電池と、
前記積層電池に隣接して前記積層方向に延伸し、前記複数の電池を冷却する冷却風の流路を形成する通風路と、を有し、
前記通風路は、
前記冷却風を前記通風路に取り込む吸気口を有し、
前記保持部材は、
前記通風路側と該通風路の反対側とに開孔して前記通風路から前記積層電池へ前記冷却風を通風させる通風孔を有し、
前記通風孔は、
前記複数の電池の底面と前記保持部材の底面との間に形成された空間に向けて開孔した底面通風孔を含む、ことを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記積層電池及び前記通風路を収容する筐体を有し、
前記通風路は、
前記複数の電池を冷却した後の前記冷却風を排出する排気口をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記保持部材は、
前記複数の電池をそれぞれ保持する複数の個別保持部材を連結して構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記複数の個別保持部材は、前記積層方向における端面に凹部を有し、
前記底面通風孔は、前記複数の個別保持部材のうちの第1の個別保持部材に形成された前記凹部と、該第1の個別保持部材の前記積層方向に隣接する前記複数の個別保持部材のうちの第2の個別保持部材に形成された前記凹部と、が向かい合うように形成された、ことを特徴とする請求項3に記載の組電池。
【請求項5】
前記通風路が、前記積層電池のうちの第1の積層電池と第2の積層電池との間に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項6】
前記通風路が前記積層電池のうちの第1の積層電池と第2の積層電池との間に配置されたユニットが複数積層され、
積層された複数の前記ユニットが備える複数の前記通風路は、前記吸気口で集合し、互いに連通する、ことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項7】
前記積層電池は、前記通風路のうちの第1の通風路と第2の通風路との間に配置され、
前記第1の通風路は、前記吸気口を有し、前記第2の通風路は、前記排気口を有し、
前記第1の通風路と前記第2の通風路は、前記第1の通風路から前記積層電池を経て前記第2の通風路に至る前記冷却風の流路を形成し、
前記第1の通風路の前記通風孔は、前記第1の通風路から前記積層電池へ前記冷却風を通風させ、
前記第2の通風路の前記通風孔は、前記積層電池から前記第1の通風路へ前記冷却風を通風させる、ことを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項8】
複数の電池を保持する保持部材と、
前記保持部材を介して前記複数の電池を積層方向に積層した積層電池と、
前記積層電池に隣接して前記積層方向に延伸し、前記複数の電池を冷却する冷却風の流路を形成する通風路と、を有し、
前記通風路は、
前記冷却風を前記通風路に取り込む吸気口を有し、
前記保持部材は、
前記通風路側と該通風路の反対側とに開孔して前記通風路から前記積層電池へ前記冷却風を通風させる通風孔を有し、
前記通風路の断面積は、全ての前記通風孔の開口面積の合計よりも大きい、ことを特徴とする組電池。
【請求項9】
前記通風孔は、
積層された前記複数の電池の主面の間に形成された空間に向けて開孔した主面通風孔を含む、ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の組電池。
【請求項10】
前記保持部材は、
前記電池の高さ方向に複数の前記主面通風孔を等間隔に有する、ことを特徴とする請求項9に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV:Electric Vehicle)や駆動の一部をモータで補助するハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)の電源として、大容量かつ高出力の二次電池が求められる。二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池であり、複数の二次電池を直列に接続してモジュールにし、複数のモジュールを直列又は並列に接続してパック化して使用される。
【0003】
二次電池は、充放電を行うと二次電池内部の構成物質の電気抵抗などで自己発熱する。自己発熱による温度上昇は、二次電池の劣化を早め寿命を短くする。そのため、二次電池は、適切に冷却されることが必要である。よって、電池パックは、特許文献1~3に開示されているように、空気や水などの冷体の流路を内部に設け、二次電池を冷却する構造が採用されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010-153141号公報
【特許文献2】特願2015-005362号公報
【特許文献3】特願2019-131026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、冷媒の流路構造に改善余地があり、電池の冷却効率をさらに向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一態様では、複数の電池を保持する保持部材と、前記保持部材を介して前記複数の電池を積層方向に積層した積層電池と、前記積層電池に隣接して前記積層方向に延伸し、前記複数の電池を冷却する冷却風の流路を形成する通風路と、前記積層電池及び前記通風路を収容する筐体と、を有し、前記通風路は、前記冷却風を前記通風路に取り込む吸気口と、前記複数の電池を冷却した後の前記冷却風を排出する排気口と、を有し、前記保持部材は、前記通風路側と該通風路の反対側とに開孔して前記通風路から前記積層電池へ前記冷却風を通風させる通風孔を有し、前記通風孔は、前記複数の電池の底面と前記保持部材の底面との間に形成された空間に向けて開孔した底面通風孔を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、組電池において、電池の冷却効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態1の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す平面図。
【
図3】実施形態1の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す斜視図。
【
図4】実施形態1の電池パック内部で電池を保持する電池ホルダの構成例を示す斜視図。
【
図5】実施形態1の電池パック内部で電池を保持する電池ホルダの構成例を示す斜視図。
【
図6】実施形態1の複数の電池ホルダの連結を示す斜視図。
【
図7】実施形態1の複数の電池ホルダの連結を示す側面図。
【
図8】実施形態1の電池ホルダを連結して形成される通風孔を示す側面図。
【
図9】実施形態1の電池ホルダの通風孔の断面と主通風路の断面の定義を示す斜視図。
【
図12】実施形態1の電池ホルダのB-B線による断面図。
【
図13】従来技術(断面積比の条件なし)と、実施形態1(断面積比の規定あり)の電池モジュールにおける温度分布のシミュレーション結果の比較図。
【
図14】実施形態2の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す斜視図。
【
図15】実施形態2と同様の電池パックの構成に対して、断面積比の規定なしの電池モジュールにおける温度分布を説明するための図。
【
図16】実施形態3の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す斜視図。
【
図17】実施形態3と同様の電池パックの構成に対して、断面積比の規定なしの電池モジュールにおける温度分布を説明するための図。
【
図18】実施形態4の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す斜視図。
【
図19】実施形態4の電池パックの電池モジュール及び主通風路を示す斜視図(上段の電池モジュール及び主通風路を取り除いた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の各々の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各々の実施形態の理解を容易にするために、図面において、構成部材の大きさや比率を誇張したり、簡略化したりしている場合がある。各々の実施形態の説明では、同一の構成に対して同一符号を付与して重複する説明を省略する。各々の実施形態では、同一の複数の構成を、それぞれを区別する場合には同一符号に添え字を付加して説明し、区別しない場合には添え字を除く同一符号で説明する。
【0010】
各々の実施形態の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸を座標軸とする正系のXYZ直交座標系を用いる。X軸、Y軸、及びZ軸の各軸の矢印は、座標軸の正方向を示す。X軸は、電池の幅方向の座標軸である。Y軸は、電池の積層方向の座標軸である。Z軸は、電池の高さ方向の座標軸である。X軸及びY軸で構成される平面をXY平面、Y軸及びZ軸で構成される平面をYZ平面、X軸及びZ軸で構成される平面をXZ平面と称する。但し、XYZ直交座標系では、相対的な位置関係が表されるに過ぎない。
【0011】
[実施形態1]
(実施形態1の電池パック1の概要)
図1は、実施形態1の電池パック1を示す斜視図である。
図1は、電池筐体2に電池モジュール3及び主通風路4を収容した状態の電池パック1を概略的に示す。
図2は、実施形態1の電池パック1の電池モジュール3及び主通風路4を示す平面図である。
図3は、実施形態1の電池パック1の電池モジュール3及び主通風路4を示す斜視図である。電池パック1は、電気自動車やハイブリッド電気自動車といった、電力を駆動エネルギーとする各種車両に電力供給源として搭載される。
【0012】
電池パック1は、中空状の電池筐体2と、2つの電池モジュール(積層電池)3a,3bと、主通風路4とを備える組電池である。電池筐体2の素材は、強度や耐久性、加工性などの要求仕様を満せば、どのような素材でもよい。また、電池筐体2内に収容される電池モジュール3の数は、2つに限定されない。
【0013】
電池モジュール(積層電池)3は、複数の電池31が複数の電池ホルダ32(
図4~
図6を参照して後述)のそれぞれを介してY軸方向(積層方向)に積層された積層電池である。電池31は、巻回式の二次電池であり、電池巻回群が金属製の電池缶に収容されたものである。電池モジュール3aは、主通風路4のX軸負方向側に配置される。電池モジュール3bは、主通風路4のX軸正方向側に配置される。
【0014】
主通風路4は、電池モジュール3に隣接する。主通風路4は、Y軸に沿って延伸し、電池筐体2内で電池31を冷却する冷却用空気の通風路を構成する。主通風路4は、例えば電池モジュール3a,3bをX軸方向に並べた際の電池モジュール3a,3bの間隙を、Z軸の両方向側から閉塞するように電池モジュール3a,3bに板状部材を取り付けて形成することができる。主通風路4は、Y軸負方向側に吸気ダクト41を備える。吸気ダクト41は、Y軸負方向側に開口する吸気口411を備える。
【0015】
吸気ダクト41、主通風路4、及び排気ダクト21は、電池31を冷却する冷却風の流路を形成する通風路を構成する。すなわち、通風路は、冷却風を通風路に取り込む吸気口411と、電池31を冷却した後の冷却風を排出する排気口421とを備える。
【0016】
電池31を冷却する冷媒である例えば冷却用空気は、矢印A(
図1)で示すように、吸気口411から吸気ダクト41を介して主通風路4内に取り込まれる。そして、冷却用空気は、矢印B(
図2)で示すように、電池モジュール3a,3bの主通風路4側に設けられた通風孔群332(
図8)を介して細かく分岐して、主通風路4から電池モジュール3a,3b側へ流れる。
【0017】
さらに、冷却用空気は、矢印C(
図3)で示すように、電池モジュール3a,3bの主通風路4の反対側に設けられた通風孔群332(
図8)を介して、電池モジュール3a,3bから離れる方向へ流れる。最後に、冷却用空気は、電池パック1の電池筐体2の内壁に衝突して進路を変え、矢印D(
図1)で示すように、電池筐体2のZ軸正方向側に設けられた排気ダクト21の排気口221からZ軸正方向に向けて排出される。
【0018】
なお、電池パック1は、電池筐体2と排気口211を備えない構成でもよい。この場合、冷却風は、吸気口411と通風孔(第1通風孔322a、第2通風孔322b、第3通風孔326、第4通風孔328、第5通風孔330等)との間で通風される流路を形成する。
【0019】
(電池ホルダ32の構成例)
図4及び
図5は、実施形態1の電池パック1内部で電池31を保持する電池ホルダ32の構成例を示す斜視図である。
図5は、
図4に示す電池ホルダ32を矢印Eの方向から見た斜視図である。電池ホルダ32の素材は、強度や耐久性、加工性などの要求仕様を満せば、どのような素材でもよい。電池ホルダ32は、電池31を保持する個別保持部材である。
【0020】
電池ホルダ32は、
図4及び
図5に示すように、第1底面部321aと、第2底面部321bとを備える。また、電池ホルダ32は、第1通風孔322aと、第2通風孔322bとを備える。また、電池ホルダ32は、第1支持台323aと、第2支持台323bと、柱部324と、第1梁部325と、第3通風孔326と、第2梁部327と、第4通風孔328と、第3梁部329と、第5通風孔330と、第4梁部331とを備える。
【0021】
電池ホルダ32は、第1梁部325、第2梁部327、第3梁部329、及び第4梁部331を含むXZ平面と平行な仮想面に関して対称な構造である。
【0022】
第1底面部321aは、電池ホルダ32の最もZ軸負方向側に位置し、電池ホルダ32に保持された状態で電池31を積層した電池モジュール3の底面(Z軸負方向側の面)を構成する。第1底面部321aは、電池ホルダ32が他の電池ホルダ32とY軸方向に連結されると、他の電池ホルダ32の第2底面部321bと共に電池モジュール3の底面を構成する。
【0023】
第1支持台323aは、電池31が電池ホルダ32によって保持される際に、電池31の底面(Z軸負方向側の面)と接して電池31を支持する。第1支持台323aは、電池ホルダ32が他の電池ホルダ32とY軸方向に連結されると、他の電池ホルダ32の第2支持台323bと共に電池31の支持面を構成する。
【0024】
第1支持台323aは、XY平面視した場合に、第1底面部321aと比較して、Y軸方向の幅が狭い。第2支持台323bは、XY平面視した場合に、第2底面部321bと比較して、Y軸方向の幅が第1支持台323aと同程度に狭い。よって、電池31が第1支持台323a及び第2支持台323bによって支持される際に、第1支持台323a及び第2支持台323bと接触しない非接触領域が、電池31の底面に生じる。電池31の底面の非接触領域は、第1底面部321a及び第2底面部321bと対向し、電池31の底面を直接冷却する冷却用空気の流路322(
図12)を形成する。
【0025】
柱部324は、第1底面部321a及び第2底面部321bのX軸方向の両端側からそれぞれ垂直方向(Z軸正方向)に延伸する。第1梁部325は、第1支持台323a及び第2支持台323bに対してZ軸正方向に立設しつつ、2つの柱部324の間を渡っている。
【0026】
第3通風孔326は、2つの柱部324において、第1梁部325が接続される位置と、第2梁部327が接続される位置の中間に設けられる。
【0027】
第2梁部327は、2つの柱部324のそれぞれの第3通風孔326と第4通風孔328の中間位置において、2つの柱部324の間を渡っている。
【0028】
第4通風孔328は、2つの柱部324において、第2梁部327が接続される位置と、第3梁部329が接続される位置の中間に設けられる。
【0029】
第3梁部329は、2つの柱部324のそれぞれの第4通風孔328と第5通風孔330の中間位置において、2つの柱部324の間を渡っている。
【0030】
第5通風孔330は、2つの柱部324において、第3梁部329が接続される位置と、第4梁部331が接続される位置の中間位置に設けられる。
【0031】
第4梁部331は、2つの柱部324のそれぞれの第5通風孔330よりも上方(Z軸正方向)の位置において、2つの柱部324の間を渡っている。
【0032】
図6は、実施形態1の複数の電池ホルダ32の連結を示す斜視図である。
図7は、実施形態1の複数の電池ホルダ32の連結を示す側面図である。
図8は、実施形態1の電池ホルダ32を連結して形成される通風孔群332を示す側面図である。
図6、
図7、及び
図8は、例示であり、図示を適宜簡略化している。
【0033】
複数の電池ホルダ32は、
図6に示すように、Y軸方向に連結されることで、隣り合う2つの電池ホルダ32の間に、電池31を1つずつ保持する保持スペース32aが形成される。電池31を保持する保持スペース32aの底面は、隣り合う2つの電池ホルダ32の一方の第1支持台323aと他方の第2支持台323bが向い合うことで形成される。保持スペース32aは、第1梁部325と、第2梁部327と、第3梁部329と、第4梁部331とによって、隣接する保持スペース32aと区画される。
【0034】
また、電池ホルダ32は、
図6及び
図7に示すZ軸に平行な破線L1を含むXZ平面に平行な仮想面内に、第1梁部325と、第2梁部327と、第3梁部329と、第4梁部331とを有する。よって、1つの保持スペース32aは、隣り合う2つの電池ホルダ32のそれぞれの第3通風孔326、第4通風孔328、及び第5通風孔330を介して冷却用空気が流入及び流出させる。言い換えると、1つの電池ホルダ32は、隣り合う2つの保持スペース32aに対して、第3通風孔326、第4通風孔328、及び第5通風孔330を介して冷却用空気を流入及び流出させる。
【0035】
また、2つの電池ホルダ32が連結されると、
図7に示すように、一方の電池ホルダ32の第1通風孔322aと、他方の電池ホルダ32の第2通風孔322bは、YZ平面視した場合に、電池31の積層方向の互いに逆向きで接する。このとき、2つの電池ホルダ32は、底面通風孔322hを形成する。底面通風孔322hは、隣接する電池ホルダ32のX軸方向の両端にそれぞれに1つずつ形成される。
【0036】
底面通風孔322hは、電池31の底面と、保持部材(電池ホルダ32)の第1底面部321a及び第2底面部321bとの間に形成された空間に向けて開孔している。よって、隣接する電池ホルダ32のX軸方向の両端の底面通風孔322hは、流路322(
図12)によって接続される。
【0037】
このように、実施形態1の電池パック1内部で電池31を保持する保持部材32Sは、複数の電池31をそれぞれ保持する複数の個別保持部材(電池ホルダ32)を連結して構成されたものである。この構成では、例えば底面通風孔322hを構成する第1通風孔322a及び第2通風孔322bを、電池31の積層方向(例えばY軸正方向)と積層方向の逆方向(例えばY軸負方向)とに向い合う形で切り込まれた切り込みとして形成できる。言い換えると、電池ホルダ32は、積層方向(Y軸方向)における端面に凹部を有する。凹部とは、電池ホルダ32のX軸方向の両端にわたって、電池ホルダ32をYZ平面で断面視した場合に第1底面部321aと第1支持台323aとの間に形成される空間である。底面通風孔322hは、一つの電池ホルダ32に形成された凹部と、電池ホルダ32の積層方向に隣接する他の電池ホルダ32に形成された凹部とが向かい合うように形成されている。よって、底面通風孔322hの形成のための精密加工が容易になるという利点がある。
【0038】
しかし、電池31の保持部材の構成方法は、複数の電池31をそれぞれ保持する電池ホルダ32を連結する方法に限定されない。第1通風孔322a及び第2通風孔322bを含む各通風孔及び流路322(
図12)を備えることができれば、保持部材の構成方法は問わない。
【0039】
図8は、電池モジュール3bをX軸正方向から見た側面図である。
【0040】
図8に示すように、電池モジュール3bには、支持台323(第1支持台323a及び第2支持台323b)のZ軸方向の高さ位置を境に、下方に底面通風孔群332L、上方に主面通風孔群332Uを備える。底面通風孔群332Lは、複数の底面通風孔322hを含む。主面通風孔群332Uは、複数の第3通風孔326、複数の第4通風孔328、及び複数の第5通風孔330を含む。底面通風孔群332Lと主面通風孔群332Uを、通風孔群332と総称する。
【0041】
底面通風孔群332Lは、保持スペース32aによって保持されている電池31の底面を直接冷却する冷却用空気を、X軸方向の主通風路4側から流入させ、主通風路4の反対側から排出させる。
【0042】
主面通風孔群332Uは、保持スペース32aによって保持され積層されている電池31の主面の間の空間に向けて、電池31の主面を直接冷却する冷却用空気を、X軸方向の主通風路4側から流入させ、主通風路4の反対側から排出させる。電池31の主面は、電池31が積層されると向かい合う電池31の面である。
【0043】
電池ホルダ32の主面通風孔群332U(第3通風孔326、第4通風孔328、第5通風孔330)は、柱部324において、例えば等間隔に設けられる。
【0044】
第3通風孔326は、主に、電池31の下部の放熱対策と、電池31の固縛強度補強と、後述の式(1)の断面積比を充足するためのサイズ調整とを目的とする。すなわち、設計段階において、底面通風孔322h(第1通風孔322a.第2通風孔322b)、第4通風孔328、及び第5通風孔330のサイズが決定された後に、式(1)の断面積比を充足するように、第3通風孔326のサイズが調整される。
【0045】
第4通風孔328は、主に、電池31の内部の捲回群の発熱対策を目的とする。第4通風孔328は、通風孔の中央が電池31の捲回の中央付近になるように設けられる。
【0046】
第5通風孔330は、主に、電池パック1のバスバや、電池端子部の発熱対策を目的とする。第3通風孔326は、電池ホルダ32の強度の許容範囲内で、Z軸正方向のより高い位置に設けられる。
【0047】
なお、
図8は、電池モジュール3bのX軸正方向側の側面の通風孔群332を示しているが、電池モジュール3bのX軸負方向側(主通風路4側)の側面、電池モジュール3bのX軸の両方向側の側面にも、同様に通風孔群332が設けられる。
【0048】
図9は、実施形態1の通風孔群332の断面3CSと主通風路4の断面4CSの定義を示す斜視図である。
図10は、
図9のA-A断面図である。
図11は、
図9のB-B断面図である。
図12は、実施形態1の電池ホルダ32のB-B線(
図9)による断面図であり、
図11に示す電池モジュール3bの断面3CSの拡大図である。
図9、
図10、
図11、及び
図12は、例示であり、図示を適宜簡略化している。
【0049】
X軸に平行なA-A線(
図9)による主通風路4の断面4CSを
図10に示すように定義する。また、Y軸に平行なB-B線(
図9)による電池モジュール3bの断面3CSを
図11に示すように定義する。
【0050】
電池モジュール3bの開口面積S2は、断面3CSに含まれる通風孔群332(底面通風孔群332L、主面通風孔群332U)の開口面積の総和と定義する。この開口面積は、YZ平面視した場合の第3通風孔326、第4通風孔328、及び第5通風孔330の開口面積から電池31によって閉塞される断面積を差引いた電池ホルダ32の空間の断面積である。電池モジュール3aの断面3CS及び開口面積S2も、電池モジュール3bと同様に定義される。
【0051】
このとき、主通風路4の断面積S1は、電池モジュール3a,3bの開口面積S2の総和(S2+S2)よりも大きいという断面積比の関係が成り立つ。すなわち、下記式(1)の条件が成立する。
S1>2×S2・・・(1)
【0052】
主面通風孔群332U及び底面通風孔群332Lの各孔寸法は、電池31と電池ホルダ32を含む電池モジュール3、主通風路4、及び電池ホルダ32の仕様や素材に合わせて、強度や耐久性、加工性などの要求仕様を満たすように最適化されて決定される。
【0053】
(実施形態1の効果(断面積比に関して))
図13は、従来技術(断面積比の条件なし)と、実施形態1(断面積比の規定あり)の電池モジュールにおける温度分布のシミュレーション結果の比較図である。
図13は、電池モジュール及び主通風路をXY平面視した場合の電池モジュールの温度分布を、相対的な高温T1、中温T2、及び低温T3の3段階で概略表示している。シミュレーションの実行条件は、従来技術と実施形態1で同一である。
図13では、主通風路4x,4のY軸負方向側が吸気口である。
【0054】
従来技術の電池モジュール3ax,3bx及び主通風路4xでは、
図13(a)に示すように、高温T1が吸気口付近に分布し、吸気口から遠ざかるにつれて中温T2、及び低温T3が分布した。
【0055】
一方、実施形態1の電池モジュール3a,3b及び主通風路4xでは、
図13(b)に示すように、高温T1がほとんど分布せず、吸気口からの距離に関わらず概ね中温T2が分布し、主通風路4の付近に低温T3が若干分布するのみであった。実施形態1の各電池31の温度の標準偏差は、
図13(a)に示す従来技術と比較して、1/3程度となった。
【0056】
すなわち、実施形態1の電池モジュール3では、上記式(1)の断面積比を順守することで、主通風路4から主面通風孔群332U及び底面通風孔群332Lへの冷却用空気の分配量が、吸気口からの距離に関わらず概ね均等になった。各電池31に均等に冷却用空気が行き届くことから、各電池31の温度のばらつきが少ない結果となった。各電池31の温度のばらつきが少なくなることで、電池の劣化を抑制し、電池寿命を延ばす効果がある。
【0057】
(実施形態1の効果(底面通風孔群332Lに関して))
従来技術では、電池の主面を冷却用空気により直接冷却し、電池の底面を熱伝導により間接冷却していた。このように、電池パックのサイズや、生産コスト、安全性などの制約上、電池の冷却可能な面は限られることが多い。しかし、冷却用空気を用いる空冷式では、熱伝導率が低いため、冷却効率が問題となる上、電池パックの配置場所が熱的に不安定である場合、電池の底面からの放熱は期待できず、冷却効率が低下していた。
【0058】
この問題に対して、実施形態1の電池パック1では、主面通風孔群332Uに加え、底面通風孔群332Lを設けることで、電池31の底面を主面と同様に冷却用空気で直接冷却し、安定した冷却効率を得ることができる。特に、電池パックの底面を介した熱伝導による放熱が期待できない場合、電池パックの底面への冷却用空気の気流が少量でもあれば冷却効果は大きい。電池31の略全面に冷却用空気を通風することで、例えば車両に配置された電池パックは、他の車両内部品の熱的影響をあまり受けず、安定的に冷却される。
【0059】
シミュレーションの結果、実施形態1は、従来技術と比較して、主面通風孔群332Uに加え、底面通風孔群332Lを設けることで、電池パック1全体で、電池31の温度上昇を2~4%程度抑制できた。
【0060】
また、電池の底面を熱伝導により冷却する従来技術と比較して、実施形態1では、熱伝導シートなどを削減できるので、電池パック1の製造コスト及び製造工数を削減できる。
【0061】
[実施形態2]
図14は、実施形態2の電池パック1B内部の電池モジュール3及び主通風路4a,4bを示す斜視図である。
図14に示すように、電池パック1Bでは、2つの主通風路4a,4bを、1つの電池モジュール3に対して、X軸方向の両側に配置する構成を採用する。冷却用空気は、矢印F(
図14)の方向に吸気ダクト41の吸気口411から主通風路4bに取り込まれ、実施形態1と同様の電池モジュール3内の流路を経由して、主通風路4aの排気ダクト42の排気口421から矢印G(
図14)の方向に排出される。
【0062】
図15は、実施形態2と同様の電池パックの構成に対して、断面積比の規定なしの電池モジュールにおける温度分布を説明するための図である。シミュレーションの実行条件は、実施形態1と同一である。
【0063】
電池パック1Bの構成において、上記式(1)の断面積比を順守しない場合、
図15に示すように、吸気ダクト41付近の領域R1の電池31の温度が相対的に高くなり、排気ダクト42付近の領域R2の電池31の温度が相対的に低くなった。
【0064】
一方、電池パック1Bの構成において、底面通風孔322hを設け、上記式(1)の断面積比を順守することで、実施形態1の電池パック1と同様に、より効率的な電池31の冷却が可能となり、各電池31の温度のばらつきが低減される。
【0065】
なお、電池パック1Bの構成において2つの主通風路4a,4bを入れ替えた構成の電池パックも、電池パック1Bと同様である。
【0066】
[実施形態3]
図16は、実施形態3の電池パック1C内部の電池モジュール3及び主通風路4a,4cを示す斜視図である。
図16に示すように、電池パック1Cでは、2つの主通風路4c,4bを、1つの電池モジュール3に対して、X軸方向の両側に配置する構成を採用する。主通風路4cは、実施形態2の主通風路4aのY軸方向の向きを入れ替えたものである。冷却用空気は、矢印H(
図16)の方向に吸気ダクト41の吸気口411から主通風路4aに取り込まれ、実施形態1と同様の電池モジュール3内の流路を経由して、主通風路4cの排気ダクト42の排気口421から矢印I(
図16)の方向に排出される。
【0067】
図17は、実施形態3と同様の電池パックの構成に対して、断面積比の規定なしの電池モジュールにおける温度分布を説明するための図である。シミュレーションの実行条件は、実施形態1と同一である。
【0068】
電池パック1Cの構成において、上記式(1)の断面積比を順守しない場合、
図17に示すように、吸気ダクト41及び排気ダクト42付近の領域R3の電池31の温度が相対的に低くなった。また、吸気ダクト41及び排気ダクト42からY軸方向に最も遠い領域R4の電池31の温度が相対的に高くなった。
【0069】
一方、電池パック1Cの構成において、底面通風孔322hを設け、上記式(1)の断面積比を順守することで、実施形態1の電池パック1と同様に、より効率的な電池31の冷却が可能となり、各電池31の温度のばらつきが低減される。
【0070】
[実施形態4]
図18及び
図19は、実施形態4の電池パック1Dの電池モジュール3及び主通風路4を示す斜視図である。電池パック1Dは、実施形態1の電池モジュール3a,3b及び主通風路4のユニットを、Z軸方向に2段積層した4つの電池モジュール3a,3bと1つの主通風路4Dの構成を採用している。なお、ユニットの積層数は、2段に限定されない。
【0071】
実施形態4では、Z軸方向の上方の電池モジュール3a,3b間の主通風路4と、Z軸方向の下方の電池モジュール3a,3b間の主通風路4とで、1本の主通風路4Dを構成する。
図19は、電池パック1D内のZ軸方向の上段の電池モジュール3a,3b及び主通風路4のユニットの図示を省略している。
【0072】
電池パック1Dは、吸気ダクト41D及び排気ダクト42Dを有する。積層された前述のユニットが備える複数の主通風路4は、吸気ダクト41Dの吸気口411Dで集合し、互いに連通する。冷却用空気は、
図18及び
図19の矢印Jに示すように、吸気ダクト41Dの吸気口411Dから取り込まれる。そして、冷却用空気は、主通風路4及び実施形態1と同様の電池モジュール3a,3b内の流路を経由して、
図18及び
図19の矢印Kに示すように、排気ダクト42Dの排気口421Dから排出される。
【0073】
電池パック1Dは、電池モジュール3a,3bを積層している分だけ多くの冷却用空気を必要とする。しかし、底面通風孔322hを設け、上記式(1)の断面積比を順守することで、実施形態1の電池パック1と同様に、より効率的な電池31の冷却が可能となり、各電池31の温度のばらつきが低減される。
【0074】
実施形態の適用対象の電池は、リチウムイオン電池をはじめとする二次電池に限定されない。例えば、ニッケル水素電池や鉛電池といったその他の二次電池、一次電池、あるいはその他の電池にも適用できる。
【0075】
以上の説明はあくまで一例であり、本願開示に係る技術は上述の実施形態の構成に何ら限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本願開示に係る技術を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の機能及び構成に関し、矛盾がない限りにおいて他の実施形態又は変形例の機能及び構成を以って追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1B,1C,1D:電池パック、2:電池筐体、3,3a,3b:電池モジュール、4,4a,4b,4c,4D:主通風路、31:電池、32:電池ホルダ、32S:保持部材、322a:第1通風孔、322b:第2通風孔、326:第3通風孔、328:第4通風孔、330:第5通風孔、322h:底面通風孔、322L:底面通風孔群、332U:主面通風孔群、411,411D:吸気口、221,421,421d:排気口