(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027739
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ゴルフ会員権時価評価装置、ゴルフ会員権時価評価方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130795
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】520462654
【氏名又は名称】株式会社住地ゴルフ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕介
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB53
(57)【要約】
【課題】精度の高い時価評価を可能とするゴルフ会員権時価評価装置、ゴルフ会員権時価評価方法及びコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】ゴルフ会員権の識別情報を取得する識別情報取得部と、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得する価格取得部と、前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される評価部と
を備えるゴルフ会員権時価評価装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ会員権の識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得する価格取得部と、
前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される評価部と
を備えるゴルフ会員権時価評価装置。
【請求項2】
前記価格取得部は、
前記取引価格情報として、前記ゴルフ会員権の希望購入価格情報と、前記ゴルフ会員権の希望売却価格情報とを取得可能に構成され、
さらに、前記ゴルフ会員権の購入希望件数情報と、前記ゴルフ会員権の売却希望件数情報とを取得可能に構成され、
前記評価部は、
前記ゴルフ会員権の希望購入価格情報と、
前記ゴルフ会員権の購入希望件数情報と、
前記ゴルフ会員権の希望売却価格情報と、
前記ゴルフ会員権の売却希望件数情報と
に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される請求項1に記載のゴルフ会員権時価評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、
前記購入希望件数が前記売却希望件数よりも大きい場合は、前記希望購入価格と前記希望売却価格との平均よりも高い評価額を前記ゴルフ会員権の前記時価評価額情報として生成するように構成され、
前記購入希望件数が前記売却希望件数よりも小さい場合は、前記希望購入価格と前記希望売却価格との平均よりも低い評価額を前記ゴルフ会員権の前記時価評価額情報として生成するように構成される
請求項2に記載のゴルフ会員権時価評価装置。
【請求項4】
前記価格取得部はさらに、
前記ゴルフ会員権の入会預託金情報を取得可能に構成され、
前記評価部はさらに、
前記入会預託金情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される請求項3に記載のゴルフ会員権時価評価装置。
【請求項5】
ゴルフ会員権の識別情報を取得するステップと、
前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得するステップと、
前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成するステップと
を含むゴルフ会員権の時価評価方法。
【請求項6】
コンピュータに、
ゴルフ会員権の識別情報を取得させ、
前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得させ、
前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成させる
ためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ会員権時価評価装置、ゴルフ会員権時価評価方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場が発行するゴルフ会員権とは、そのゴルフ場を優先的に利用等することができる権利である。ゴルフ会員権には、売買を行うための市場が形成されており、発行当時の価格とは異なる価格で取引される。例えば、数千万円以上で取引されるゴルフ会員権も存在する。
【0003】
このようなゴルフ会員権は、企業が保有する場合、貸借対照表に含める会計処理の対象となることから、正確な時価を評価することが好ましい。しかしながらゴルフ会員権の時価評価は、仲介業者等の個人的な経験によるため、評価額にばらつきがあった。
【0004】
特許文献1には、ゴルフ会員権の時価評価をコンピュータにより求める装置及びそのための評価システム等が開示されている。
特許文献2には、ゴルフ会員権情報処理装置を含むゴルフ会員権評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-140424号公報
【特許文献2】特開2003-248762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のゴルフ会員権の評価システムは、「評価しようとするゴルフ場の近隣ゴルフ場のゴルフ会員権の時価A」に関する情報等に基づいてゴルフ会員権の時価を評価する。しかしながら、たとえ近隣のゴルフ場であっても、ゴルフ場に応じてゴルフ会員権の評価額は大きく異なることがあるから、必ずしも正確な時価評価を行うことができない。
【0007】
特許文献2に記載のゴルフ会員権評価システムは、「評価基準日の売買の気配表で買い方の最も高い価格を」評価額として「採用する」。しかしながら、ゴルフ会員権の購入希望者である買い方が、実際の評価額よりも低い価格を希望購入価格として提示することは珍しくない。このため、特許文献2に記載のゴルフ会員権評価システムも、ゴルフ会員権の正確な時価評価を行うことができない。
【0008】
そこで本発明は、精度の高い時価評価を可能とするゴルフ会員権時価評価装置、ゴルフ会員権時価評価方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、ゴルフ会員権時価評価装置を開示する。このゴルフ会員権時価評価装置は、ゴルフ会員権の識別情報を取得する識別情報取得部と、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得する価格取得部と、前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される評価部とを備える。
【0010】
本出願は、ゴルフ会員権時価評価方法を開示する。このゴルフ会員権時価評価方法は、ゴルフ会員権の識別情報を取得するステップと、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得するステップと、前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成するステップとを含む。
【0011】
本出願は、コンピュータプログラムを開示する。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、ゴルフ会員権の識別情報を取得させ、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権の取引価格情報を取得させ、前記取引価格情報に基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成させるための命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るゴルフ会員権時価評価システムの機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るゴルフ会員権時価評価システムが備えるデータベースに格納される情報を示している。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るゴルフ会員権時価評価方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係るゴルフ会員権時価評価システム1の機能ブロック図である。同図に示されるように、ゴルフ会員権時価評価システム1は、ゴルフ会員権時価評価装置2(以下、「時価評価装置」と呼ぶ場合がある。)と、ゴルフ会員権時価評価装置2と情報を送受信可能な形態で接続されており、本実施形態に記載される各情報を格納可能に構成されたデータベース10と、ゴルフ会員権時価評価装置2と通信ネットワーク8を介して情報を送受信可能な形態で接続可能に構成される複数の情報端末13とを備える。
データベース10は、ゴルフ会員権毎に、ゴルフ会員権を識別するゴルフ会員権の識別情報に関連付けて、ゴルフ会員権の取引価格情報を含む情報を格納する。
図2は、データベース10に格納される情報の一例を示している。
【0015】
本実施形態において、ゴルフ会員権は、ゴルフ場の名称及び会員種別により識別される。例えば、
図2の「〇〇ゴルフ場」の「正会員」という情報は、所定のゴルフ場(「〇〇ゴルフ場」)が発行する「正会員」用のゴルフ会員権を意味するから、ゴルフ場の名称及び会員種別は、ゴルフ会員権を識別する情報に相当する。同様に、同図の「〇〇ゴルフ場」の「平日会員」という情報は、異なるゴルフ会員権を識別する情報に相当する。
【0016】
ただし、ゴルフ会員権と他のゴルフ会員権とを識別する情報は、これに限られるものではなく、ゴルフ会員権と他のゴルフ会員権とを識別可能な他の情報を含んでいてもよい。例えば、ゴルフ会員権を識別する情報は、入会条件(性別、年齢、国籍)、年会費、または、ゴルフ会員権の会員数等の情報をさらに含んでいてもよい。さらに、ゴルフ会員権を識別する情報は、そのゴルフ場を識別する情報(ゴルフ場のコース名、ゴルフ場が所属する地域、ゴルフ場の地形のタイプ、ゴルフ場の設立年等)を含んでいてもよい。
【0017】
ゴルフ会員権の会員種別としては、特に限定されないが、例えば、個人会員と、法人会員とが挙げられる。また、個人会員と法人会員とのそれぞれについて、例えば、正会員、平日会員(例えば、土曜日及び日曜日は会員権の利益を享受し得ない会員)、週日会員(例えば、土曜日又は日曜日は会員権の利益を享受し得ない会員)、特定会員(例えば、ゴルフ場が任意に定める日程は会員権の利益を享受し得ない会員)、新規会員、期間限定正会員(例えば、ゴルフ場が新規に募集をしている会員権であって、正会員と比較して安価で募集がされているが、正会員会員権の利益を享受し得る期間が予め定められている会員権)等が挙げられる。
【0018】
データベース10は、ゴルフ会員権を識別する情報に関連付けて、ゴルフ会員権の取引価格情報を格納する。ここでゴルフ会員権の取引価格情報とは、ゴルフ会員権の売買に伴って受領する、又は、支払う金額に関する情報である。
【0019】
ゴルフ会員権の取引価格情報は、ゴルフ会員権の希望取引価格に関する情報を含む。例えば、ゴルフ会員権の購入希望者が提示した希望購入価格を示す情報は、ゴルフ会員権の希望取引価格に関する情報に相当する。ただし、複数のゴルフ会員権の購入希望者により複数の希望購入価格が提示された場合、データベース10は、複数の希望購入価格のうち最高の希望購入価格を希望購入価格情報として格納し、時価評価装置による時価評価に利用させることが好ましい。
実際の成約価格は、最高の希望購入価格以上となるため、最高の希望購入価格を希望購入価格情報として時価評価を行うことにより、時価評価の精度を高めることが可能となる。同図には、「〇〇ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権の希望購入価格の最高値(買最高値)が940万円であることが示されている。
【0020】
加えてゴルフ会員権の売却希望者が提示した希望売却価格を示す情報は、ゴルフ会員権の希望取引価格に関する情報に相当する。ただし、複数のゴルフ会員権の売却希望者により複数の希望売却価格が提示された場合、データベース10は、複数の希望売却価格のうち最安の希望売却価格を希望売却価格情報として格納し、ゴルフ会員権時価評価装置2による時価評価の算定に利用させることが好ましい。実際の成約価格は、最安の希望売却価格以下となるため、最安の希望売却価格を希望売却価格情報として時価評価を行うことにより、時価評価の精度を高めることが可能となる。同図には、「〇〇ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権の希望売却価格の最安値(売最安値)が1300万円であることが示されている。
【0021】
加えてデータベース10は、ゴルフ会員権の取引価格情報として、預託金の金額を示す情報、入会預託金の金額を示す情報(本実施形態において、「入会預託金情報」という場合がある。)、名義書換料の金額を示す情報を格納する(
図2)。
【0022】
ここで預託金とは、そのゴルフ場の造成時に初期メンバーとして入会する際にゴルフ場に預け、所定期間経過後にゴルフ場から償還される本券記載の金額のことである。
【0023】
ここで入会預託金とは、ゴルフ会員権を購入することによりそのゴルフ場のメンバーに入会する際にゴルフ場に預け、ゴルフ会員権を売却することによりそのゴルフ場のメンバーから退会する際にゴルフ場から償還される金額のことである。
【0024】
さらにデータベース10は、ゴルフ会員権の取引希望件数に関する情報を格納する。ここで、取引希望件数とは、ゴルフ会員権の売却及び購入を含む取引を希望する件数に関する情報である。
【0025】
ゴルフ会員権の希望取引件数に関する情報は、ゴルフ会員権の購入希望件数を示す情報(本実施形態において、「購入希望件数情報」という場合がある。)及びゴルフ会員権の売却希望件数を示す情報(本実施形態において、「売却希望件数情報」という場合がある。)を含む。
図2には、「〇〇ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権の売却希望件数が10件であり、同じゴルフ会員権の購入希望件数が3件であることが示されている。本実施形態において、希望購入価格情報と購入希望件数情報とを合わせて「購入希望情報」と称する場合があり、希望売却価格情報と売却希望件数情報とを合わせて「売却希望情報」と称する場合がある。
【0026】
さらにデータベース10は、ゴルフ場の信頼度を示す情報を格納してもよい。ここでゴルフ場の信頼度とは、預託金の償還可能性等を反映した情報であり、預託金の償還可能性等は、ゴルフ場の経営状況、ゴルフ場を経営する母体の経営状況、過去の預託金の償還実績、ゴルフ場の評判等を総合的に考慮して決定されてもよい。ここで、ゴルフ場を経営する母体の経営状況を考慮するにあたっては、当該母体が上場企業である場合には、公開されている決算書(決算報告書)が参照されてもよい。
【0027】
本実施形態において、ゴルフ場の信頼度を示す情報は、「高」「中」「低」の3段階で示されており、
図2には「〇〇ゴルフ場」が高い信頼度(「高」)を有し、一方で「××ゴルフ場」は低い信頼度(「低」)を有することが示されている。ゴルフ場の信頼度を示す情報は、会員権の時価評価に習熟する者の実際の経験に基づいて決定することができる。このように、実際の経験に基づいて得られたゴルフ場の信頼度を示す情報をデータベース10に格納し、必要に応じてこの情報を時価評価に利用することにより、時価評価の精度を高めることが可能となる。
【0028】
データベース10は、預託金償還期限に関する情報を格納してもよい。預託金償還期限に関する情報とは、各ゴルフ会員権を発行するゴルフ場や管理団体が設定する預託金の償還期限を記録したものであって、償還期限を迎えるまでの期間は据置期間と呼ばれる場合もある。
【0029】
データベース10は、ゴルフ場の預託金の償還状況を示す情報を格納してもよい。ここでゴルフ場の預託金の償還状況を示す情報とは、当該ゴルフ場が償還を行っているか否か、当該ゴルフ場が償還を行う可能性、当該ゴルフ場が償還を行っている金額等に関する情報である。ここで、ゴルフ場が償還を行っているか否かに関する情報や、ゴルフ場が償還を行う可能性に関する情報としては、当業者間において知られているこれら情報を格納してもよく、現在や過去の会員権所有者へのヒアリングに基づく情報を格納してもよく、預託金の金額を示す情報に基づいて決定される預託金額面金額と、市場の売買価格に関する情報に基づいて算出される市場の売買価格金額との乖離の程度に基づく情報を格納してもよい。
【0030】
データベース10は、ゴルフ場を経営する母体の経営状況を示す情報を格納してもよい。ここで、ゴルフ場を経営する母体の経営状況を示す情報とは、公開されている貸借対照表や損益計算書等、当該母体が上場企業である場合には公開されている決算書(決算報告書)等に基づく情報である。データベース10は、ゴルフ場を経営する母体の経営状況を示す情報として、これらの決算書等に基づいて、当業者がゴルフ場を経営する母体の経営状況を決定した評価を格納してもよい。
【0031】
続いて時価評価装置の構成について説明する。時価評価装置は、ゴルフ会員権の識別情報を取得する識別情報取得部3と、識別情報で識別されるゴルフ会員権の取引価格情報を取得する価格取得部4と、取引価格情報に基づいて、評価対象のゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成される評価部5と、生成された時価評価額情報を出力する出力部と、出力された時価評価額情報を表示する表示部6と、本実施形態に示される各演算処理を実行するためのコンピュータプログラムを格納する記憶部7とを備える。
【0032】
識別情報取得部3は、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力したゴルフ会員権の識別情報を、通信ネットワーク8を介して取得する。さらに識別情報取得部3は、データベース10を参照し、顧客又は仲介業者が入力した識別情報を基に、データベース10から評価対象となるゴルフ会員権を特定するように構成してもよい。例えば、識別情報取得部3は、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力する「○○ゴルフ場」という情報を、通信ネットワーク8を介して取得する。そして識別情報取得部3は、データベース10を参照し、データベース10において「○○ゴルフ場」という識別情報と関連付けて格納されている各情報の有無を検出し、さらに、評価対象となるゴルフ会員権を特定してもよい。
なお、識別情報取得部3が、データベース10を参照する際に用いる識別情報の数及び種類は、特に限定されず、1つでもよく、任意の2つ以上の識別情報の組み合わせであってもよい。また、識別情報取得部3が、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力する識別情報に基づいて特定する評価対象となるゴルフ会員権の数は、特に限定されず、1つでもよく、関連するゴルフ会員権を含む2つ以上であってもよい。例えば、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力する識別情報が「〇〇ゴルフ場」であるとき、識別情報取得部3が当該識別情報に基づいて特定する評価対象となるゴルフ会員権は、「〇〇ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権と、「平日会員」のゴルフ会員権との2つとなってもよく、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力する識別情報が「正会員」であるとき、識別情報取得部3が当該識別情報に基づいて特定する評価対象となるゴルフ会員権は、「〇〇ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権と、「××ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権との2つとなってもよい。このように、ゴルフ会員権の識別情報を、複数のゴルフ会員権を他のゴルフ会員権と識別可能な第1識別情報(例えば、「〇〇ゴルフ場」)と、第1識別情報と組み合わせて単一のゴルフ会員権を他のゴルフ会員権と識別可能な第2識別情報(例えば、「正会員」)とを含む構成とすることにより、第1識別情報で識別される複数のゴルフ会員権の時価評価額を同時に取得することも、第1識別情報及び第2識別情報で識別される単一のゴルフ会員権の時価評価額を取得することも可能となる。
【0033】
価格取得部4は、データベース10にアクセスし、識別情報取得部3が取得する識別情報によって特定されるゴルフ会員権のデータを参照し、取引価格情報を含む情報を取得し、評価部5に供給する。例えば、価格取得部4は、識別情報取得部3が取得する「〇〇ゴルフ場」という識別情報によって特定されるゴルフ会員権である「〇〇ゴルフ場」のデータを参照し、希望購入価格情報(940万円)と希望売却価格情報(1300万円)とを取引価格情報として取得する。
【0034】
価格取得部4が取得する取引価格情報は、名義書換料の金額を示す情報、預託金の金額を示す情報、入会預託金の金額を示す情報、ゴルフ場の信頼度を示す情報等の1つ又は任意の2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0035】
評価部5は、価格取得部4が取得する取引価格情報を含む情報に基づいて、ゴルフ会員権の時価評価を実行することにより時価評価額情報を生成可能に構成される。例えば、評価部5は、価格取得部4が取得する「○○ゴルフ場」の「正会員」のゴルフ会員権の取引価格情報に基づいて、後述するアルゴリズムに従って、ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成し、出力部に供給する。このアルゴリズムは、記憶部7に格納されるコンピュータプログラムに実装されている。
なお、評価部5は、価格取得部4が取得する取引価格情報を含む情報を、取得可能に構成されてもよい。
【0036】
出力部は、評価部5が生成するゴルフ会員権の時価評価額情報を、例えば、通信ネットワーク8を介して情報端末13に出力する。
【0037】
表示部6は、出力部が出力する時価評価額情報を、ゴルフ会員権時価評価装置2上に表示するためのディスプレイを備える。
【0038】
記憶部7は、評価部5が時価評価額情報を生成するためのアルゴリズムを実装するコンピュータプログラムを記憶する。例えば、記憶部7は、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力した識別情報に基づいて、評価対象の候補となるゴルフ会員権のデータを参照した回数又は頻度を記憶してもよい。
【0039】
通信ネットワーク8は、情報を送受信可能であれば特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value-Added Network)、CATV(Community Antenna television/Cable Television)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が挙げられる。また、この通信ネットワーク8を構成する伝送媒体も、情報を伝送可能な媒体であれば特に限定されず、特定の構成又は種類のものに限定されない。
【0040】
続いて情報端末13について説明する。通信ネットワーク8を介して時価評価装置に接続可能に構成される複数の情報端末13は、顧客又は仲介業者によるゴルフ会員権の識別情報の入力を受け付け、入力されたゴルフ会員権の識別情報を、通信ネットワーク8を介して時価評価装置2に送信し、時価評価装置2によるゴルフ会員権の時価評価額情報を、通信ネットワーク8を介して受信し、時価評価額情報を表示する。
【0041】
時価評価装置2及び情報端末13は、それぞれコンピュータから構成されてもよい。例えば、顧客が保有するスマートフォン、タブレット等の無線通信可能な情報端末13と、インターネット等の通信ネットワーク8を介してこの情報端末13に接続され、時価評価装置2として機能する仲介業者のコンピュータ等の情報端末13とから、ゴルフ会員権時価評価システム1に相当する構成を実現してもよい。また、構成の一部が遠隔地に設けられてもよい。例えば、データベース10の全部または一部を遠隔地に設け、通信ネットワーク8を介して通信可能に構成してもよい。
【0042】
さらに時価評価装置2及び情報端末13は、通信ネットワーク8を介することなく、一体的に構成されてもよい。例えば、仲介業者の営業所に時価評価装置2及び情報端末13として機能する一台のコンピュータを設置し、営業所の窓口において顧客から聞き取りを行ってゴルフ会員権を識別するための識別情報をコンピュータに入力し、同じコンピュータに時価評価を実行させてゴルフ会員権の時価評価額情報を生成、出力及び表示させることにより、ゴルフ会員権時価評価システム1に相当する構成を実現してもよい。時価評価装置2は、複数台のコンピュータから構成してもよい。
【0043】
[物理構成]
本実施形態に係る時価評価装置2を実現するための物理的構成について以下に説明する。時価評価装置2は、プロセッサ等から構成される演算処理部を有するCPU(Central Processing Unit)と、記憶部7に相当するRAM(Random Access Memory)及びROM(Read only Memory)と、データベース及び情報端末13と情報の送受信を行うための通信インターフェースとを備えるコンピュータから実現されることが可能である。評価装置は、さらにキーボード等から構成される入力部とディスプレイ等から構成される表示部6とを有してもよい。これらの各構成は、バスを介して相互にデータの送受信が可能に接続される。
【0044】
CPUは、ROMに格納されたコンピュータプログラム等を実行することにより、本実施形態に含まれるゴルフ会員権の評価を含む演算処理等を行う演算処理部を有する。CPUのプロセッサは、RAM、ROM、通信部及び入力部等から種々の情報(プロセスデータを含む)を受け取り、これら情報に基づいて時価評価額情報の生成を含む演算処理を実行し、時価評価額情報等を表示部6に表示させたり、RAM又はROMに格納させたりする。RAMは、記憶部7のうち、キャッシュメモリ・メインメモリ等の一次記憶として機能するものであり、例えば、SRAM及びDRAM等の揮発性の半導体記憶素子で構成されてよい。ROMは、記憶部7のうち二次記憶として機能するものであり、例えばフラッシュメモリ等の電気的に情報を書き換え可能な不揮発性半導体記憶素子又は磁気的に情報を書き換え可能なHDDで構成されてよい。ROMは、例えば、本実施形態に示される演算処理等を含む処理を実行するためのコンピュータプログラム及びデータを非一時的(Non-transitory)に記憶してよい。
【0045】
上記のような物理的構成において、主としてCPUが記憶部7に格納されるコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、時価評価装置2の識別情報取得部3、価格取得部4及び評価部5として機能させることが可能である。
【0046】
[評価方法]
以上のようなゴルフ会員権時価評価システム1を用いたゴルフ会員権の時価評価方法について説明する。
図3は、ゴルフ会員権時価評価方法のフローチャートである。
【0047】
(ステップS1)
まず、時価評価装置2の識別情報取得部3は、評価対象となるゴルフ会員権の識別情報を取得する(ステップS1)。例えば識別情報取得部3は、顧客又は仲介業者が情報端末13を用いて入力した「〇〇ゴルフ場」の「正会員」というゴルフ会員権を識別する情報を、通信ネットワーク8を介して取得する。
【0048】
(ステップS2)
次いで、時価評価装置2の価格取得部4は、識別情報で識別されるゴルフ会員権の取引価格情報を含む情報を取得する(ステップS2)。例えば、価格取得部4は、データベース10にアクセスすることにより、識別情報取得部3が取得した識別情報に関連付けてデータベース10に格納されている希望購入価格(例えば、940万円)及び希望売却価格(例えば、1300万円)を示す情報を取得し、さらに本実施形態においては、購入希望件数(例えば、3件)と、売却希望件数(例えば、10件)を示す情報を取得する。
【0049】
(ステップS3)
次いで、時価評価装置2の評価部5は、価格取得部4が取得した取引価格情報等の情報に基づいて、評価対象のゴルフ会員権の時価評価額情報を生成する(ステップS3)。ここで以下のステップS3-1乃至ステップS3-4は、評価部5が実行してもよいし、あるいは、営業所の窓口において顧客から聞き取りを行う仲介業者がマニュアルで実行してもよい。ただし少なくともステップS3-5は、時価評価装置2の評価部5が実行する。具体的には、以下のとおりである。
まず、評価対象のゴルフ会員権が、「預託金償還期限が過ぎ、預託金が減額で償還されている」に該当するか否かを判断する(ステップS3-1)。評価部5がステップS3-1を実行する場合、時価評価装置2は、情報端末13に、評価対象のゴルフ会員権の預託金償還期限に関する情報と、預託金が償還されているか否かに関する情報の入力を促す情報を表示させる。顧客から聞き取りを行う仲介業者が情報端末13を用いてこれら情報を入力し、評価部5がこれら情報を受信することにより、評価部5は、ステップS3-1を実行する。なお、データベース10がゴルフ会員権に関連付けて預託金償還期限に関する情報を格納し、評価部5が現在の日時とデータベース10に格納されている預託金償還期限とを比較することにより「預託金償還期限が過ぎ」ているか否かを判断するように構成してもよい。また、データベース10がゴルフ場の預託金償還状況(評価対象のゴルフ会員権のゴルフ場が償還を行っているか否か、償還を行う可能性、償還される金額等)に関する情報と、各ゴルフ会員権の当初の預託金金額に関する情報とを格納し、評価部5がこれら情報を参照することにより「預託金が減額で償還されている」か否かを判断するように構成してもよい。本ステップを介して評価対象のゴルフ会員権の預託金が償還済みであるか否かを判断し、償還されていない場合は信頼度等に基づいてゴルフ会員権の評価額を取得(生成)し、償還済みの場合(すなわち、当初の預託金の額面金額以上の金額の償還を受けられない可能性が高いゴルフ会員権である場合)は市場の売買価格に関する情報(取引価格情報)に基づいて評価額を算出するステップS3-5を実行する。
【0050】
続いて評価対象のゴルフ会員権が、「預託金償還期限が過ぎ、預託金が減額で償還されている」に該当しない、すなわち、預託金償還期限が過ぎていないか、または、預託金が減額で償還されていない場合(ステップS3-1:NO)、「会員権業者の仲介を認めず、コース斡旋価格で売買されている」に該当するか否かを判断する(ステップS3-2)。
【0051】
評価部5がステップS3-2を実行する場合、データベース10がゴルフ会員権に関連付けて会員権業者の仲介を認めているか認めていないかを示す情報を格納し、評価部5がこの情報を取得することにより、本ステップが実行されるように構成してもよい。
【0052】
評価対象のゴルフ会員権が、「会員権業者の仲介を認めず、コース斡旋価格で売買されている」に該当する場合(ステップS3-2:YES)、評価部5は、コースの斡旋価格を時価評価額とする(ステップS3-2-1)。例えばデータベース10がゴルフ会員権に関連付けて斡旋価格を示す情報を格納し、評価部5が斡旋価格を示す情報を取得し、斡旋価格をそのゴルフ会員権の時価評価額とすることにより、本ステップが実行されてもよい。データベース10が斡旋価格を示す情報を格納していない場合、上述したように、仲介業者がゴルフ場に問い合わせることにより斡旋価格を示す情報を取得することにより、本ステップが実行されるように構成してもよい。
【0053】
以上述べたようにゴルフ会員権の種類及び状態に応じて、異なる評価手法が選択されるように構成することにより精度の高い時価評価が可能となる。
【0054】
他方、評価対象のゴルフ会員権が、「会員権業者の仲介を認めず、コース斡旋価格で売買されている」に該当しない場合(ステップS3-2:NO)、評価部5は、評価対象のゴルフ会員権が、「譲渡不可の会員権である」に該当するか否かを判断する(ステップS3-3)。例えばデータベース10がゴルフ会員権に関連付けて、譲渡不可の会員権であるか否かを示す情報を格納し、評価部5がこの情報を取得することにより、本ステップが実行されるように構成してもよい。
【0055】
評価対象のゴルフ会員権が、「譲渡不可の会員権である」に該当しない場合(ステップS3-3:NO)、評価部5は、評価対象のゴルフ会員権が、「名義書換停止中である」に該当するか否かを判断する(ステップS3-4)。例えばデータベース10がゴルフ会員権に関連付けて、名義書換停止中か否かを示す情報を格納し、評価部5がこの情報を取得することにより、本ステップが実行されるように構成してもよい。
【0056】
評価対象のゴルフ会員権が、「譲渡不可の会員権である」に該当する場合(ステップS3-3:YES)、または、「名義書換停止中である」に該当する場合(ステップS3-4:YES)、評価部5は、預託金額面金額に預託金償還可能性を考慮し評価額とする(ステップS3-3-1)。
【0057】
例えば
図2に示されるように、データベース10がゴルフ会員権に関連付けて、預託金の金額を示す情報(同図の「預託金」)及びゴルフ場の信頼度を示す情報(同図の「ゴルフ場信頼度」)を格納し、評価部5がデータベース10から取得した預託金の金額を示す情報及びゴルフ場の信頼度を示す情報に基づいて、ステップS3-3-1を実行するように構成することが可能である。
【0058】
具体的には、評価部5は、ゴルフ場の信頼度に応じた数値を、預託金額面金額に乗算した金額を、そのゴルフ会員権の時価評価額とすることにより、本ステップを実行する。
【0059】
預託金額面金額は、評価部5が、データベース10に格納されている預託金の金額を示す情報に基づいて決定することができる。
【0060】
ゴルフ場の信頼度に応じた数値は、評価部5が、データベース10に格納されているゴルフ場の信頼度を示す情報に基づいて決定することができる。ゴルフ場の信頼度が「高」又は「中」の場合は、ゴルフ場の信頼度に応じた数値は、0より大きく1.0以下の数値から選択される。ゴルフ場の信頼度が「低」の場合は、ゴルフ場の信頼度に応じた数値は0と決定され、預託金額面金額にこれを乗算することにより、時価評価額は0円と算出される。
たとえば評価部5は、高、中又は低の三段階で評価したゴルフ会員権の信頼度を参照し、信頼度が高の場合は1.0、中の場合は0.9、低の場合は0を、預託金の額面金額に乗算することにより時価評価額を算出してもよいが、これに限られない。例えば、信頼度が高の場合は0.9、中の場合は0.8、低の場合は0を、預託金の額面金額に乗算して時価評価額を算出してもよい。
【0061】
預託金償還可能性は、会員権の時価評価に習熟する者により個別具体的に判断されることが好ましい情報である。そこで本実施形態においては、預託金償還可能性を反映した情報としてゴルフ場の信頼度を示す情報を予めデータベース10に格納し、時価評価に利用することとした。
【0062】
ここで本出願の発明者らは、ゴルフ場によっては、預託金が預託されたにもかかわらず、まったく預託金が償還されない場合がある点に注目した。そこでそのようなゴルフ場に対する信頼度を「低」とし、かつ、「低」のゴルフ場であって、仲介業者の仲介が認められていないゴルフ会員権の時価評価額を0円とすることにより、実態に即した評価を実現することができる。
【0063】
他方、評価対象のゴルフ会員権が、「名義書換停止中である」に該当しない場合(ステップS3-4:NO)、評価部5は、そのゴルフ会員権の取引価格情報、すなわち市場におけるそのゴルフ会員権の売買価格に関する情報に基づいて時価評価額を算出する(ステップS3-5)。また、評価対象のゴルフ会員権が、「預託金償還期限が過ぎ、預託金が減額で償還されている」に該当する場合(ステップS3-1:YES)も、同様に評価部5は、市場におけるそのゴルフ会員権の売買価格に関する情報に基づいて時価評価額を算出する(ステップS3-5)。
【0064】
評価部5は、価格取得部4がデータベース10から取得した評価対象のゴルフ会員権の希望購入価格情報(
図2の「買最高値」)及び購入希望件数情報を含む購入希望情報と、希望売却価格情報(同図の「売最安値」)及び希望売却件数情報を含む売却希望情報とを、価格取得部4から取得する。
【0065】
ここで本出願の発明者らは、特許文献2の「評価基準日の売買の気配表で買い方の最も高い価格を」評価額として採用する時価評価方法を採用する場合、必ずしも、正確な時価評価とならない点に着目した。
【0066】
例えば、本来1000万円の価値を有するゴルフ会員権に対し、成約可能性が極めて低いことを承知の上で、実際の価値よりも極めて安い価格(例えば、100万円)を希望購入価格として提示する購入希望者が存在する。このような場合、特許文献2の時価評価方法によれば、本来1000万円の価値を有するゴルフ会員権であるにもかかわらず、100万円の評価額となってしまう。
そこで本出願の発明者らは、より正確な評価額を取得するために、購入希望件数に関する情報と、売却希望件数に関する情報とをゴルフ会員権時価評価装置2に取得させ、これら情報に基づいて時価評価を行うことにより、時価評価の精度を高めることが可能となる点に着目した。
【0067】
例えば
図2に示されるように「〇〇ゴルフ場」の「正会員」について、購入希望件数が3件であり売却希望件数が10件であることは、3件の購入希望件数に対し10件もの売却希望件数が殺到していることを意味する。このように売却希望件数が購入希望件数よりも大きい場合は、多数の売却希望件数が競争して少数の購入希望件数を奪い合うことになる。
【0068】
そこで本実施形態の評価部5は、このような場合、単純に希望売却価格の最安値(例えば、1300万円)と希望購入価格の最高値(例えば、940万円)の平均である1120万円よりも安い評価額(例えば、1000万円)を時価評価額とする。
【0069】
例えば評価部5は、希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値のそれぞれについて、取引希望件数情報を基に重み付け処理を行い、重み付け処理後の希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値を加算した額を評価額としてもよい。
【0070】
重み付け処理としては、例えば、希望購入価格には、売却希望件数/合計取引希望件数を重み係数として乗算し、希望売却価格には、購入希望件数/合計取引希望件数を重み係数として乗算することを行ってもよい。例えば、購入希望件数が3件、希望購入価格の最高値が940万円、売却希望件数が10件、希望売却価格の最安値が1300万円であるときは、希望購入価格の最高値(940万円)に、売却希望件数/合計取引希望件数(10/13)を乗算した値と、希望売却価格の最安値(1300万円)に、購入希望件数/合計取引件数(3/13)を乗算した値とを加算した額(1023万円)を評価額とする。
【0071】
上記の場合、重み付け処理を行った希望購入価格の最高値と、重み付け処理を行った希望売却価格の最安値とを加算することにより、評価額は、希望売却価格の最安値と、希望購入価格の最高値との単純平均の値(1120万円)よりも、希望される件数の少ない取引項目である購入の希望購入価格の最高値の価格に近づいた値(1023万円)が評価額となる。
【0072】
重み付け処理としては、上記の他、単純平均により算出される価格を、希望件数の少ない取引項目(購入又は売却)の価格に近づける処理であれば特に限定されない。
【0073】
反対に、例えば
図2に示されるように「〇〇ゴルフ場」の「平日会員」について、購入希望件数が5件であり売却希望件数が1件であることは、1件の売却希望件数に対し5件もの購入希望件数が殺到していることを意味する。このように売却希望件数が購入希望件数よりも小さい場合は、多数の購入希望件数が競争して少数の売却希望件数を奪い合うことになる。
【0074】
そこで本実施形態の評価部5は、このような場合、単純に希望売却価格の最安値(例えば、700万円)と希望購入価格の最高値(例えば、450万円)の平均である575万円よりも高い評価額(例えば、600万円)を時価評価額とする。
【0075】
例えば評価部5は、希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値のそれぞれについて、取引希望件数情報を基に重み付け処理を行い、重み付け処理後の希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値を加算した額を評価額としてもよい。
【0076】
重み付け処理としては、例えば、購入希望件数が5件、希望購入価格の最高値が450万円、売却希望件数が1件、希望売却価格の最安値が700万円であるときは、希望購入価格の最高値(450万円)に、売却希望件数/合計取引希望件数(1/6)を乗算した値と、希望売却価格の最安値(700万円)に、購入希望件数/合計取引希望件数(5/6)を乗算した値とを加算した額(約658万円)を評価額とする。
【0077】
上記の場合、重み付け処理を行った希望購入価格の最高値と、重み付け処理を行った希望売却価格の最安値とを加算することにより、評価額は、希望売却価格の最安値と、希望購入価格の最高値との単純平均の値(575万円)よりも、取引希望件数の少ない取引項目である売却の希望売却価格の最安値の価格に近づいた値(約658万円)が評価額となる。
【0078】
重み付け処理としては、上記の他、単純平均により算出される価格を、取引希望件数の少ない取引項目(購入又は売却)の価格に近づける処理であれば特に限定されない。
【0079】
すなわち、本実施形態において、評価部5は、購入希望件数が売却希望件数よりも大きい場合は、希望購入価格の最高値と希望売却価格の最安値との平均値よりも高い価格を評価額として算出するように構成され、購入希望件数が売却希望件数よりも小さい場合は、希望購入価格の最高値と希望売却価格の最安値との平均値よりも安い価格を評価額として算出するように構成される。これにより、希望売却価格の最安値と希望購入価格の最高値との平均値よりも成約可能性の高い価格を評価額として算出し、市場の実態に則した時価評価を実現することができる。
【0080】
次いで、評価部5は、ステップS3-2-1、ステップS3-3-1又はステップS3-5において算出した評価額を補正する(ステップS3-6)。本実施形態において、評価部5が、「評価額を補正する」とは、入会預託金(
図2)の存在を考慮すること等が挙げられる。預託金制ゴルフ会員権の売買においても、買い手は、当該ゴルフ会員権のゴルフ場に対して預託金を預託することが求められる場合がある。よって、本実施形態においては、評価対象のゴルフ会員権が、入会預託金が存在するゴルフ場のゴルフ会員権である場合には、入会預託金の額面金額を加算することにより、評価額を補正し得る。
【0081】
以上のとおりであるから、本実施形態に係るゴルフ会員権時価評価方法によれば、ゴルフ会員権の購入希望件数情報と、ゴルフ会員権の売却希望件数情報とを取得し、購入希望件数が売却希望件数よりも大きい場合は、希望購入価格の最高値と希望売却価格の最安値との平均値よりも高い評価額を時価評価額情報として生成し、購入希望件数が売却希望件数よりも小さい場合は、希望購入価格の最高値と希望売却価格の最安値との平均値よりも安い評価額を時価評価額情報として生成するように構成されているから、精度の高い時価評価が可能となる。
【0082】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照して第1実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。以下、第1実施形態に記載されたゴルフ会員権時価評価システム1及びゴルフ会員権時価評価方法の変形例について記載する。なお第1実施形態と同様の構成乃至機能を有する技術要素については記載を省略乃至簡略化し、異なる部分を中心に説明する。
【0083】
[変形例1]
本実施形態に係る評価部5は、時価評価額情報を一点の数値情報として生成するが、これに限られない。例えば、評価部5は、時価評価額情報を、上限値と下限値とから構成される数値範囲情報として生成してもよい。
【0084】
上限値と下限値のそれぞれの算出は、本実施形態に記載の評価処理を介して算出される評価額に基づいて行ってもよい。
【0085】
例えば、本実施形態に記載の重み付け処理を介して一点の数値情報として算出される評価額に、任意の数値を加算した値を上限値として採用してもよく、当該評価額に任意の数値を減算した値を下限値として採用してもよい。ここで、成約可能性の高い価格を評価額として算出し、市場の実態に則した時価評価を実現させる観点から、数値範囲情報として生成される時価評価額情報は、希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値の平均値と、取引希望件数の大きい取引項目(購入又は売却)の希望価格と、に挟まれる数値範囲を数値範囲情報の生成に用いないことが好ましい。よって、希望購入価格の最高値と希望売却価格の最安値との平均値を、上限値又は下限値として採用してもよい。
【0086】
上記任意の数値の設定は、当業者が経験に基づいて適宜設定することができるが、例えば、希望売却価格の最安値と、希望購入価格の最高値との差額を当業者が適宜設定する数値で除した値を当該任意の数値として設定してもよい。
【0087】
例えば、購入希望件数が3件、希望購入価格の最高値が940万円、売却希望件数が2件、希望売却価格の最安値が1100万円であって、本実施形態に記載の評価処理を介して算出される評価額が1036万円であり、希望売却価格の最安値と、希望購入価格の最高値との差額を4で除した値([1036万円-940万円]/4=40)を当該任意の数値として設定すると仮定する。この場合、評価額に当該任意の数値を加算した値である1100万円(1036万円+40万円=1076万円)を上限値として採用してよい。一方、評価額に当該任意の数値を減算した値である996万円(1036万円-40万円=996万円)を下限値として採用すると、評価部5が算出する時価評価額情報に、希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値の平均値である1020万円よりも安い価格が含まれることとなり、好ましくない。よって、このような場合には、下限値の算出に用いる任意の数値の設定を変更してもよいし、希望購入価格の最高値及び希望売却価格の最安値の平均値を下限値として採用してもよい。
【0088】
ここで、上限値の算出に用いる任意の数値と、下限値の算出に用いる任意の数値とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0089】
[変形例2]
第1実施形態において評価部5は、評価対象のゴルフ会員権の購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格に基づいて時価評価額情報を生成するにあたり、これら4つの情報を所定の数式にあてはめることにより時価評価額情報を生成した。本変形例2にかかる評価部5は、ゴルフ会員権の過去の成約実績に基づいて、時価評価額情報を生成する。
【0090】
評価部5は、評価対象のゴルフ会員権の購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格に基づいて時価評価額情報を生成するにあたり、類似する購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格を有する過去の成約情報に基づいて時価評価額情報を生成する。具体的には、複数(例えば100以上)のゴルフ会員権について、成約前のゴルフ会員権の購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格及び成約価格をデータベースに格納し、評価部5は、データベース10にアクセスすることにより、評価対象のゴルフ会員権の購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格と類似する過去の成約情報における成約価格(またはその成約価格を補正した値)を、時価評価額情報として生成可能に構成される。
【0091】
あるいは評価部5は、過去の成約情報に基づいて生成された学習モデルに基づいて時価評価額情報を生成可能に構成されていてもよい。具体的には、複数(例えば100以上)のゴルフ会員権の希望買件数、希望購入価格、希望売件数、希望売却価格を入力とし、成約価格を出力とする学習モデルを機械学習の手法に基づいて生成しておき、評価部5は、評価対象のゴルフ会員権の希望買件数、希望購入価格、希望売件数、希望売却価格をこの学習モデルに入力することにより、時価評価額情報を生成可能に構成されてもよい。このとき時価評価額情報は、上限値と下限値を有する数値範囲情報として生成されてもよい。
【0092】
このような成約情報は、評価対象のゴルフ会員権と同一の識別情報で特定されるゴルフ会員権の成約情報であってもよいし、異なるゴルフ会員権の成約情報であってもよく、たとえば、評価対象のゴルフ会員権とは異なるゴルフ会員権の成約情報を用いて学習モデルを生成してもよい。異なるゴルフ会員権であっても、所定の購入希望件数、希望購入価格、売却希望件数、希望売却価格の状態から成約に至るプロセスは類似することが少なくないから、有効な学習モデルを生成することが可能となる。また、異なるゴルフ会員権の成約情報を用いることにより学習データ数を増加させることが可能となるから、評価精度を高めることが可能となる。
【0093】
以上のような構成を実現する時価評価装置の価格取得部4は、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権、又は、前記識別情報で識別される前記ゴルフ会員権とは異なる識別情報で識別される他のゴルフ会員権の過去の成約価格情報と、前記過去の時点における、前記ゴルフ会員権の希望購入価格情報と、前記ゴルフ会員権の購入希望件数情報と、前記ゴルフ会員権の希望売却価格情報と、前記ゴルフ会員権の売却希望件数情報とを取得可能に構成され、以上のような構成を実現する時価評価装置の評価部5は、前記過去の時点における、前記ゴルフ会員権の希望購入価格情報と、前記ゴルフ会員権の購入希望件数情報と、前記ゴルフ会員権の希望売却価格情報と、前記ゴルフ会員権の売却希望件数情報とに基づいて、評価対象の前記ゴルフ会員権の時価評価額情報を生成可能に構成されてよい。
【0094】
[変形例3]
本実施形態に係る評価部5は、高、中又は低の三段階で評価したゴルフ会員権の信頼度を参照し、信頼度に応じた数値を預託金の額面金額に乗算することにより預託金償還可能性を考慮するが、これに限られない。例えば、評価対象のゴルフ会員権が、その預託金が分割して返済されるゴルフ会員権である場合、ゴルフ場の信頼度を示す情報と、現在の日時情報とに基づいて、償還可能性のある預託金金額を算出してもよい。例えば、預託金が分割して償還されるゴルフ会員権である場合、全額償還される前に、ゴルフ場の経営状況如何によっては償還が停止される可能性(会員にとってのリスク)があることを勘案し、償還可能性のある預託金金額を算出し、これを評価額としてもよい。リスクの勘案としては、例えば、分割償還に際してゴルフ場が設定する金利分に相当する金額を預託金から減額することにより、リスクを勘案してもよい。
【0095】
[変形例4]
本実施形態に係る評価部5は、高、中又は低の三段階で評価したゴルフ会員権の信頼度を参照することにより預託金償還可能性を考慮するが、これに限られない。例えば、評価対象のゴルフ会員権が分割されている場合には、分割されたゴルフ会員権の売却によって得られる金額を、償還可能性のある預託金金額とみなして評価することにより、預託金償還可能性を考慮してもよい。
【0096】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 ゴルフ会員権時価評価システム
2 ゴルフ会員権時価評価装置
3 識別情報取得部
4 価格取得部
5 評価部
6 表示部
7 記憶部
8 通信ネットワーク
10 データベース
13 情報端末