(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027744
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】建設機械の油圧配管接続方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
E02F9/00 E
E02F9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130814
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015AA04
2D015BA00
(57)【要約】
【課題】油圧配管路の接続作業時に作動油が漏れ出すことを防止できる建設機械の油圧配管接続方法を提供する。
【解決手段】作動油タンク30と作業装置駆動用油圧アクチュエータとの間の油圧配管路途中に設けられる油圧配管継手を介して、作動油タンク側油圧配管41と作業装置側油圧配管とが互いに接続分離可能に形成された建設機械の油圧配管接続方法であって、作動油タンク内を外部環境に対して一定の負圧にする真空ポンプ51を備えた負圧発生装置50を準備し、油圧配管継手に取り付けた配管路閉塞部材(例えばプラグ)によって油圧配管路を遮断した状態で、負圧発生装置を使用して作動油タンク内を負圧にする段階と、配管路閉塞部材に代えて作業装置側油圧配管を油圧配管継手に取り付け、油圧配管路を連通した状態にする段階とを順に行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油タンクと作業装置駆動用油圧アクチュエータとの間の油圧配管路途中に設けられる油圧配管継手を介して、作動油タンク側油圧配管と作業装置側油圧配管とが互いに接続分離可能に形成された建設機械の油圧配管接続方法であって、
前記作動油タンク内を外部環境に対して一定の負圧にする真空ポンプを備えた負圧発生装置を準備し、
前記油圧配管継手に取り付けた配管路閉塞部材によって前記油圧配管路を遮断した状態で、前記負圧発生装置を使用して前記作動油タンク内を負圧にする段階と、
前記配管路閉塞部材に代えて前記作業装置側油圧配管を前記油圧配管継手に取り付け、前記油圧配管路を連通した状態にする段階とを順に行うことを特徴とする建設機械の油圧配管接続方法。
【請求項2】
前記負圧発生装置は、箱状のケース内に収容された状態で準備され、該準備には、前記作動油タンクを収容するハウスの上面に前記ケースを載置する段階と、
前記真空ポンプの吸気管を前記ケースから取り出して前記作動油タンクに接続する段階とが含まれることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧配管接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧配管接続方法に関し、詳しくは、油圧駆動される作業装置を備えた建設機械の油圧配管接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、動力源としてエンジンパワーユニットを搭載している建設機械は、回転駆動される油圧ポンプによって作動油タンクから作動油を取得し、これを油圧配管によって各種油圧アクチュエータに分配供給している。また、建設機械のなかでも杭打機は、作動油タンクが設けられたベースマシンと、作業装置が設けられたフロント部との間の送油をフレームに固定した油圧配管継手で中継していることが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の建設機械では、組立や保守において、油圧配管継手を境にして作動油タンクと油圧配管とを配管路途中で分離・接続する作業が行われている。しかしながら、作動油を貯留した作動油タンク内は、常圧又は正圧状態に置かれているため、作業時に油圧配管路を開放した途端、作動油が外部に漏れ出してしまい、作業性の低下及び後処理に伴うコスト増加の要因となっていた。
【0005】
そこで本発明は、油圧配管路の接続作業時に作動油が漏れ出すことを防止できる建設機械の油圧配管接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械の油圧配管接続方法は、作動油タンクと作業装置駆動用油圧アクチュエータとの間の油圧配管路途中に設けられる油圧配管継手を介して、作動油タンク側油圧配管と作業装置側油圧配管とが互いに接続分離可能に形成された建設機械の油圧配管接続方法であって、前記作動油タンク内を外部環境に対して一定の負圧にする真空ポンプを備えた負圧発生装置を準備し、前記油圧配管継手に取り付けた配管路閉塞部材によって前記油圧配管路を遮断した状態で、前記負圧発生装置を使用して前記作動油タンク内を負圧にする段階と、前記配管路閉塞部材に代えて前記作業装置側油圧配管を前記油圧配管継手に取り付け、前記油圧配管路を連通した状態にする段階とを順に行うことを特徴としている。
【0007】
また、前記負圧発生装置は、箱状のケース内に収容された状態で準備され、該準備には、前記作動油タンクを収容するハウスの上面に前記ケースを載置する段階と、前記真空ポンプの吸気管を前記ケースから取り出して前記作動油タンクに接続する段階とが含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油圧配管接続方法によれば、作動油タンク側油圧配管と作業装置側油圧配管との間を接続する作業に先立ち、負圧発生装置を使用して作動油タンク内を負圧にしておくので、油圧配管継手において、配管路閉塞部材と作業装置側油圧配管との付け替えで生じる一時的な油路の開放が起きても、作動油を油圧配管路内に保持することが可能となり、簡単な方法で作動油の漏出を防止することができる。これにより、建設機械の組立や保守における作業負担の低減と作業環境の改善、コストの削減に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図8】負圧発生装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図8は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した一形態例を示している。杭打機11は、
図1乃至
図4に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持する起伏シリンダ17とを備えている。また、上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられ、上部旋回体14の前部上方には、配管を支持する配管案内アーム19が設けられている。さらに、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ20が設けられるとともに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト21が搭載されている。
【0011】
リーダ16は、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、上端部にはトップシーブ22が、下端部には下部ガイド23がそれぞれ装着されており、リーダ16の前面には作業装置の一例であるオーガ24が昇降可能に装着されている。オーガ24は、出力軸24aを回転可能に備えた装置本体を中心に構成され、周知のラックピニオン式昇降機構を構成するオーガ昇降駆動用油圧モータ24bによって回転駆動されることにより、リーダ16の前面に沿って昇降する。
【0012】
また、オーガ24は、装置本体内の減速機構に接続されるオーガ回転駆動用油圧モータ24cを備えている。オーガ回転駆動用油圧モータ24cは、斜板の傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧モータである。これにより、オーガ24は、油圧で回転駆動され、出力軸24aに連結した施工部材(例えば鋼管杭P)に回転力を付与する。
【0013】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム25と、該メインフレーム25の上部旋回体幅方向(
図3の左右方向)の両側部に枠組みされたフロアフレーム26,27とが一体に結合されているフレーム体を有している。右側のフロアフレーム26上の前部には、オーガ24や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室28が設置され、後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収容する機器収容ハウス29が設置されている。一方、左側のフロアフレーム27上には、パワーユニットを構成するエンジンや、該エンジンによって駆動される油圧ポンプ等を収容するエンジン収容ハウス31が設けられている。両ハウス29,31は、上面が平坦状に形成され、杭打機11の保守を行う際には作業足場にもなる。
【0014】
杭打機11に備えられる油圧回路(一例として作業系の油圧回路)は、
図6に示すように、作動油を貯留する作動油タンク30と、オーガ24を作動させるためのオーガ昇降駆動用油圧モータ24b及びオーガ回転駆動用油圧モータ24cからなる作業装置駆動用油圧アクチュエータと、操作圧力信号(パイロット2次圧)を受けてこれらを油圧制御する制御バルブVとを有している。また、杭打機11の組立や保守を行う観点から、作動油タンク30と作業装置駆動用油圧アクチュエータとの間の油圧配管路途中に設けられる油圧配管継手43を介して、作動油タンク側油圧配管(油圧ホース)41と作業装置側油圧配管(油圧ホース)42とが互いに接続分離可能に形成されている。
【0015】
油圧配管継手43は、複数のホースアダプタを集中配置したプレート状のものであって、
図2や
図5などにも示すように、左前側のジャッキ20と左側のフロアフレーム26との間に設けられた狭隘部において、メインフレーム25の側壁25aの開口に整合して固定され、該固定状態で、作業装置側油圧配管42の取付け・取外しが可能とされている。これにより、油圧配管路は、作業装置側油圧配管42を油圧配管継手43に取り付けて連通した状態と、取り外して遮断した状態とに変更することが可能である。そして、杭打機11の組立時における遮断状態では、あらかじめ油圧配管継手43に配管路閉塞部材(例えばプラグ)が取り付けられる。
【0016】
配管路閉塞部材は、油圧配管継手43が作動油タンク30よりも相対的に低位置に設けられていることから、通常、作動油タンク30の給油前に取り付けられる。これにより、給油を行う際に、作動油タンク側油圧配管41において、行きと戻り側の配管路(P、Tライン)内の作動油が油圧配管継手43から流出しないように阻止される。
【0017】
ここで、油圧配管継手43に対して油圧配管接続作業を行う場合、可搬式の負圧発生装置50が使用される。負圧発生装置50は、
図7及び
図8に示されるように、主に、電動の真空ポンプ51と、該真空ポンプ51の電源となるバッテリ52と、真空ポンプ51の吸気管51aに連結される真空計53とを備え、これらを箱状のケース54内に一体で収容したものである。ケース54は、持ち運びが容易なものであればよく、例えば、市販のプラスチックコンテナなどが採用できる。
【0018】
吸気管51aは、環状にまとめられてケース54内に収容されるものであるが、機器収容ハウス29の上面にケース54を載置した使用状態で、ケース54内から外に取り出され、ハウス29の作業用開口(蓋付き開口)Hを通じて作動油タンク30にアクセス容易な長さを有している。また、吸気管51aの先端部には、作動油タンク30に接続するためのアタッチメントとして連結部55が着脱可能になっている。
【0019】
連結部55は、作動油タンク30の上面に設けられた給油口などの開口部30aに着脱可能に装着され、該開口部30aを気密に閉塞する蓋体56と、該蓋体56を貫通し、作動油タンク30の内外を連通させる連結管57と、該連結管57に設けられる圧力調整弁58とを備え、ワンタッチカプラ59を介して、連結管57と吸気管51aとが互いに連結される。圧力調整弁58は、作動油タンク30内が所望の気圧になったときに、弁体が閉じるように構成されている。
【0020】
以下では、負圧発生装置50を使用した油圧配管接続方法について説明する。適用場面としては、例えば、組立工場において、ベースマシン15とフロント部(リーダ16やオーガ24などの大型部品)とを連結するための2次組立工程が想定される。この場合、直前の1次組立工程が終わると作動油が給油され、これにより、ベースマシン15は、油圧を得て走行や作動確認が行える状態になっている。このとき、作業装置側油圧配管42の配管接続(ホース接続)が予定される油圧配管継手43は、あらかじめ配管路閉塞部材によって閉塞され、作動油が流出しないように手当てがなされている。また、作動油タンク30は、その構造上、油温が上昇すると、内部の空気が熱膨張して正圧が発生する。
【0021】
油圧配管接続作業は、ベースマシン15のエンジン停止状態で行われ、準備した負圧発生装置50は、機器収容ハウス29の上面にケース54が載置されて使用可能な状態とされる。このような載置安定状態で、真空ポンプ51の吸気管51aをケース54から取り出して作動油タンク30に接続する(
図8)。すなわち、負圧発生装置50の蓋体56を作動油タンク30の開口部30aに装着した後、ワンタッチカプラ59にて連結管57と吸気管51aとを接続する。
【0022】
次いで、油圧配管継手43を配管路閉塞部材で閉塞した状態のまま、真空ポンプ51を作動させて作動油タンク30内の空気を排出し、作動油タンク30内を外部環境に対して一定の負圧に、例えば、-0.02MPaGの負圧状態にする。その後、圧力調整弁58によって圧力が管理された状態で、油圧配管継手43に対して、配管路閉塞部材に代えて作業装置側油圧配管42を取り付け、油圧配管路を連通した状態にする(
図5)。
【0023】
このとき、配管路閉塞部材と作業装置側油圧配管42との付け替えで生じる一時的な油路の開放が起こるが、作動油タンク30内の負圧の作用で作動油が油圧配管路内に保持され、これにより、油圧配管継手43から作動油の流出が抑えられる。配管接続を終えた後は、取付作業とは逆の手順で作動油タンク30から負圧発生装置50を取り外す。そして、作動油タンク30の開口部30aを閉じ、油圧配管接続の作業完了となる。
【0024】
2次組立工程を終えた杭打機11は、油圧配管路が連通状態となり、エンジンを駆動することでパワーユニットから必要となる動力が、例えば、作業装置駆動用油圧アクチュエータ24b,24cを作動させる圧油が得られ、オーガ24の昇降を含む各種動作によって杭打ち機能を発揮できる状態となる(
図1)。
【0025】
このように、本発明の油圧配管接続方法によれば、作動油タンク側油圧配管41と作業装置側油圧配管42との間を接続する作業に先立ち、負圧発生装置50を使用して作動油タンク30内を負圧にしておくので、油圧配管継手43において、配管路閉塞部材と作業装置側油圧配管42との付け替えで生じる一時的な油路の開放が起きても、作動油を油圧配管路内に保持することが可能となり、簡単な方法で作動油の漏出を防止することができる。これにより、建設機械の組立や保守における作業負担の低減と作業環境の改善、コストの削減に寄与するものとなる。
【0026】
また、負圧発生装置50がケース54内に収容された状態で準備され、該準備において、ハウス29の上面にケース54を載置する段階と、真空ポンプ51の吸気管51aをケース54から取り出して作動油タンク30に接続する段階とを含むので、作業の段取りが迅速かつ安全に行えるだけでなく、作業後の撤収もまた迅速かつ安全に行えることから、作業負担の低減と作業環境の改善に大きく寄与するものとなる。
【0027】
なお、本実施例では、油圧配管接続方法を杭打機に適用したが、これに限られず、クレーンやアースドリルなど、掘削装置や荷役装置を備えた各種建設機械に適用することができる。また、適用場面には、定期的な保守や現場における突発的な対応も想定され、特に油圧配管路が長く、管路内に残油が多く生じやすい杭打機にとって顕著な効果が発揮される。さらに、負圧発生装置の構成は任意であり、例えば、手動式真空ポンプを用いた構成であってもよく、アタッチメントや作業用工具などと一緒にケース内に収容しておくことで、組立や保守などの現場において作業の円滑な進行に資するものとなる。
【符号の説明】
【0028】
11…杭打機、12…下部走行体、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…リーダ、17…起伏シリンダ、18…リーダサポート、19…配管案内アーム、20…ジャッキ、21…カウンタウエイト、22…トップシーブ、23…下部ガイド、24…オーガ、24a…出力軸、24b…オーガ昇降駆動用油圧モータ、24c…オーガ回転駆動用油圧モータ、25…メインフレーム、25a…側壁、26,27…フロアフレーム、28…運転室、29…機器収容ハウス、30…作動油タンク、30a…開口部、31…エンジン収容ハウス、41…作動油タンク側油圧配管、42…作業装置側油圧配管、43…油圧配管継手、50…負圧発生装置、51…真空ポンプ、51a…吸気管、52…バッテリ、53…真空計、54…ケース、55…連結部、56…蓋体、57…連結管、58…圧力調整弁、59…ワンタッチカプラ