(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027762
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】医療用コイル体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61M25/00 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130845
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑軌
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA03
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB06
4C267BB14
4C267BB16
4C267CC09
4C267FF01
(57)【要約】
【課題】回転性が改善された医療用コイル体を提供する。
【解決手段】医療用コイル体10は、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部1を備えている。医療用コイル体20は、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線21のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第2コイル部2をさらに備え、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませた構造を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空螺旋状に巻回された複数の第1素線のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部を備えた、医療用コイル体。
【請求項2】
中空螺旋状に巻回された複数の第2素線のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第2コイル部をさらに備え、
前記第1コイル部の間引きした部分と前記第2コイル部の間引きした部分とをかみ込ませた構造を有する、請求項1に記載の医療用コイル体。
【請求項3】
前記第1素線の剛性は、前記第2素線の剛性と異なっている、請求項2に記載の医療用コイル体。
【請求項4】
前記第1コイル部における前記第1素線の巻回直径は、前記第2コイル部における第2素線の巻回直径と同じである、請求項2に記載の医療用コイル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用コイル体に関し、詳細には、血管内の狭窄原因物質(例えば血栓)を吸引するための吸引カテーテルのサポートデバイスに用いられる医療用コイル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管内の狭窄原因物質(例えば血栓)を吸引するための医療器具として、吸引カテーテルが知られている。
図10に示すように、従来の吸引カテーテル200では、吸引カテーテル200をガイドワイヤ201を用いて標的血管BVまで誘導した後、マイクロカテーテル202を軸に吸引カテーテル200を閉塞部まで進めて、狭窄原因物質を吸引する。
【0003】
しかし、
図10に示すように、従来の吸引カテーテル200では、吸引カテーテル200の内径とマイクロカテーテル202の外径との違いにより生じた段差203により、血管BV内で吸引カテーテル200が引っ掛かることがある。この問題に鑑み、近年では、
図11(a)に示すようなサポートデバイス300が提案されている。サポートデバイス300は、インナーガイドワイヤ302と、インナーガイドワイヤ302の外周に設けられた外装体301とを備えている。
【0004】
図11(b)は、
図11(a)のサポートデバイス300の縦断面図である。
図11(b)に示すように、サポートデバイス300において、外装体301は、1本の素線を密に巻回した1条コイル体303の周囲面に樹脂304を被覆させた構造を有している。1条コイル体303の中空部305に、インナーガイドワイヤ302が押し引き可能に挿入されている。このような構造を有するサポートデバイス300を吸入カテーテルに適用することにより、吸引カテーテルの内径とインナーガイドワイヤ302の外径との違いを低減することができる。その結果、血管内で吸引カテーテルが引っ掛かることを抑制することができる。
【0005】
例えば、特許文献1には、芯材と、芯材の少なくとも先端側部分を被包するコイルとを備えるガイドワイヤが開示されている。コイルは、1条コイル体から構成されている。特許文献1には、ガイドワイヤの外面の全体もしくは所望部分の外面には、カテーテル等の筒状体内面との摩擦抵抗を低下させるための潤滑性付与剤をコーティングしてもよいことが記載されている。例えば、特許文献2には、後端側から先端側へ徐変縮径する部分を有する芯線の芯線先端部を外側コイルへ貫挿した構造を有する医療用ガイドワイヤが開示されている。外側コイルは、いずれも1条コイル体である外側第1コイルと外側第2コイルとから成っている。特許文献2には、外側コイルの外周に親水性樹脂被膜が形成されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-046603号公報
【特許文献2】特開2016-221249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11(a)に示すようなサポートデバイス300の外装体301に用いられる1条コイル体303は、柔軟性に優れる。しかし、その柔軟性ゆえに、血管内で外装体301を回転させようとした場合、外装体301に回転が伝わり難いことが知られている。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、柔軟性を確保しつつ、回転性が改善された医療用コイル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部を備えた、医療用コイル体を提供する(発明1)。
【0010】
複数の素線(線材)を密に並べて巻回した多条コイルは、1条の素線を密に巻回した1条コイル(単線コイル)に比べて回転性に優れる。しかし、剛性が高いため、柔軟性に劣る傾向がある。かかる発明(発明1)では、第1コイル部が、複数の第1素線のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成されているので、第1コイル部の剛性が低減され、柔軟性が確保されている。したがって、柔軟性を確保しつつ、回転性が改善された医療用コイル体が実現されている。
【0011】
上記発明(発明1)は、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第2コイル部をさらに備え、前記第1コイル部の間引きした部分と前記第2コイル部の間引きした部分とをかみ込ませた構造を有していてもよい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、医療用コイル体は、第1素線と第2素線とが密に巻回した構造を有するので、剛性が向上している。
【0013】
上記発明(発明2)において、前記第1素線の剛性は、前記第2素線の剛性と異なっていることが好ましい(発明3)。
【0014】
かかる発明(発明3)によれば、第1素線及び第2素線として、剛性の異なる2種の素線を用いることにより、医療用コイル体の剛性を調節することができる。
【0015】
上記発明(発明2)において、前記第1コイル部における前記第1素線の巻回直径は、前記第2コイル部における第2素線の巻回直径と同じであることが好ましい(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、第1コイル部の間引きした部分と第2コイル部の間引きした部分とをより密にかみ込ませることができるので、医療用コイル体の剛性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転性が改善された医療用コイル体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る医療用コイル体の構造を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る医療用コイル体の変形例の構造を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る医療用コイル体の構造を示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る医療用コイル体の変形例の構造を示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【
図5】医療用コイル体を適用したサポートデバイスの構造を示す概略説明図である。
【
図6】
図5のサポートデバイスの部分拡大図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【
図7】
図5のサポートデバイスにおける第一実施形態に係る医療用コイル体の適用例1を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)は医療用コイル体の横断面図、(c)は多条コイル体の横断面図である。
【
図8】
図5のサポートデバイスにおける第二実施形態に係る医療用コイル体の適用例2を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)は医療用コイル体の横断面図である。
【
図9】
図5のサポートデバイスにおける第一実施形態に係る医療用コイル体及び第二実施形態に係る医療用コイル体の適用例3を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)~(d)は医療用コイル体の横断面図である。
【
図10】血管内に挿入された従来の吸引カテーテルを説明する図である。
【
図11】従来のサポートデバイスの構造を示す概略説明図であって、(a)は全体側面図、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、記載された実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するための例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0020】
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る医療用コイル体の構造を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係る医療用コイル体の変形例の構造を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【0021】
第一実施形態に係る医療用コイル体10は、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部1を備えている。第1コイル部1は、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより、第1素線11の巻回密度が粗となるように構成されている。
【0022】
複数の素線(線材)を並べて帯状体とし、この帯状体を密に巻回した多条コイルは、1条の素線を密に巻回した1条コイル(単線コイル)に比べて回転性に優れる。しかし、剛性が高いため、柔軟性に劣る傾向がある。医療用コイル体10では、第1コイル部1が、複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成されているので、第1コイル部1の剛性が低減され、柔軟性が確保されている。したがって、柔軟性を確保しつつ、回転性が改善された医療用コイル体10が実現されている。医療用コイル体10は、吸引カテーテルのサポートデバイスの外装体に適用することができ、特に、外装体の先端部に好適に用いることができる。サポートデバイスの外装体の先端部に医療用コイル体10を適用した場合、柔軟性が確保されていることにより、外装体の復元力が低減するので、血管壁から受ける抵抗が減少する。その結果、血管壁から受ける抵抗により外装体の回転性が低減することが抑制される。
【0023】
第1コイル部1を構成する第1素線11の数は特に限定されない。
図1及び
図2に示すように、第1素線11の数は、例えば、6条であってもよい。
【0024】
第1コイル部1において、間引かれている第1素線11の数は特に制限されない。
図1は、12条の第1素線11のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成された第1コイル部1を備えた医療用コイル体10の例である。
図1(b)では、間引かれた隣接する6条からなる帯状体を破線で示している。例えば、第1コイル部1は、12条の第1素線11のうち、隣接する8条からなる帯状体を間引くことにより形成されていてもよく、隣接する4条からなる帯状体を間引くことにより形成されていてもよい。
図2は、12条の第1素線11のうち、1条おきに合計6条の第1素線11を間引くことにより形成された第1コイル部1を備えた医療用コイル体10の例である。
図2(b)では、間引かれた第1素線を破線で示している。例えば、第1コイル部1は、2条おきに合計6条の第1素線11を間引くことにより形成されていてもよく、3条おきに合計6条の第1素線11を間引くことにより形成されていてもよい。
【0025】
第1素線11として、例えば、中実の線材、複数の撚り線を互いに撚り合わせた構造を有する撚り線材が挙げられる。一般的に、中実の線材の剛性は、撚り線材の剛性よりも高い。第1素線11が中実の線材である場合、その直径は、例えば、0.15mm程度であってもよい。第1素線11が撚り線材である場合、撚り線材は、例えば、直径が0.05mm程度の7条の撚り線を互いに撚り合わせることによって形成されていてもよい。
【0026】
〔第二実施形態〕
図3は、本発明の第二実施形態に係る医療用コイル体の構造を示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
図4は、本発明の第二実施形態に係る医療用コイル体の変形例の構造を示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【0027】
第二実施形態に係る医療用コイル体20は、第2コイル部2をさらに備えることを除き、第一実施形態に係る医療用コイル体10と同様の構造を有する。そのため、同一の要素には同一の符号を用いて、説明を省略することがある。
【0028】
医療用コイル体20は、第一実施形態の第1コイル部1に加えて、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線21のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第2コイル部2を備えている。第2コイル部2は、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線21のうち、少なくとも1条を間引くことにより、第2素線21の巻回密度が粗となるように構成されている。
図3及び
図4に示すように、医療用コイル体20は、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませた構造を有している。医療用コイル体20は、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませるように配置することで、第1素線11及び第2素線21の巻回密度が密となるように構成されている。
【0029】
医療用コイル体20は、第1素線11と第2素線21とが密に巻回した構造を有するので、剛性が向上している。医療用コイル体20は、吸引カテーテルのサポートデバイスの外装体に適用することができ、特に、外装体の基端部に好適に用いることができる。サポートデバイスの外装体の基端部に医療用コイル体20を適用した場合、剛性が向上していることにより、外装体の回転性がより向上する。
【0030】
第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とのかみ込み箇所は、レーザー溶接等により接合されていてもよい。間引きした部分と間引きした部分とのかみ込み箇所が接合されていると、医療用コイル体20の剛性がより向上する。
【0031】
第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませることができる限り、第2コイル部2において、間引かれている第2素線21の数は特に制限されない。
図3及び
図4に示すように、間引かれている第2素線21の数は、例えば、6条であってもよい。ただし、第1コイル部1を構成する第1素線11の数と、第2コイル部2において間引かれている第2素線21の数とは、等しいことが好ましい。このような構成によれば、第1素線11及び第2素線21の巻回密度をより密にすることができる。
【0032】
図3は、12条の第2素線21のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成された第2コイル部2を備えた医療用コイル体20の例である。例えば、第2コイル部2は、12条の第2素線21のうち、隣接する8条からなる帯状体を間引くことにより形成されていてもよく、隣接する4条からなる帯状体を間引くことにより形成されていてもよい。
図4は、12条の第2素線21のうち、1条おきに合計6条の第2素線21を間引くことにより形成された第2コイル部2を備えた医療用コイル体20の例である。例えば、第2コイル部2は、2条おきに合計6条の第2素線21を間引くことにより形成されていてもよく、3条おきに合計6条の第2素線21を間引くことにより形成されていてもよい。
【0033】
第1素線11と同様に、第2素線21として、例えば、中実の線材、複数の撚り線を互いに撚り合わせた構造を有する撚り線材が挙げられる。第2素線21が中実の線材である場合、その直径は、例えば、0.15mm程度であってもよい。第2素線21が撚り線材である場合、撚り線材は、例えば、直径が0.05mm程度の7条の撚り線を互いに撚り合わせることによって形成されていてもよい。
【0034】
医療用コイル体20において、第1素線11の剛性は、第2素線21の剛性と異なっていることが好ましい。このような構成によれば、第1素線11及び第2素線21として、剛性の異なる2種の線材を用いることにより、医療用コイル体20の剛性を調節することができる。
図3及び
図4は、第1素線11として中実の線材を用い、第2素線21として撚り線材を用いた医療用コイル体20の例である。
【0035】
医療用コイル体20において、第1コイル部1における第1素線11の巻回直径は、第2コイル部2における第2素線21の巻回直径と同じであることが好ましい。このような構成によれば、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをより密にかみ込ませることができるので、医療用コイル体20の剛性が向上する。
【0036】
医療用コイル体20は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより第1コイル体1を形成する。同様に、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線21のうち、少なくとも1条を間引くことにより第2コイル体2を形成する。次に、一方の端部から順に、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませていく。最後に、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とのかみ込み箇所を、レーザー溶接等により接合する。このようにすることで、医療用コイル体20が得られる。
【0037】
なお、上述した医療用コイル体10、20の周囲面に親水性樹脂を被覆させたものは、吸引カテーテルのサポートデバイスの外装体として用いられうる。
【0038】
〔医療用コイル体を適用したサポートデバイス〕
以下、上記実施形態に係る医療用コイル体を適用したサポートデバイスについて、
図5~9を用いて説明する。
【0039】
図5は、上記実施形態に係る医療用コイル体を適用したサポートデバイス100の構造を示す概略説明図である。サポートデバイス100は、外装体50と、外装体50の内腔51に挿入され、外装体50の先端52から押し引き可能なインナーガイドワイヤ60とを備える。サポートデバイス100は、血管内の狭窄原因物質(例えば血栓)を吸引するための吸引カテーテルを標的血管まで誘導するためのデバイスである。
【0040】
図6は、
図5のサポートデバイス100の部分拡大図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
図6に示すように、サポートデバイス100は、インナーガイドワイヤ60とインナーガイドワイヤ60の外周に設けられた外装体50とを備える。外装体50は、上記実施形態に係る医療用コイル体10、20の周囲面に樹脂53を被覆させた構造を有している。このような構造であることにより、吸引カテーテルの内径とインナーガイドワイヤ60の外径との違いが低減されているので、血管内で吸引カテーテルが引っ掛かることを抑制することができる。なお、
図6は、外装体50が医療用コイル体10を有する場合の例である。
【0041】
本明細書において、「先端側」とは、サポートデバイス100の外装体50の軸線方向に沿う方向であって、サポートデバイス100が標的血管に向かって進行する方向を意味する。「基端側」とは、サポートデバイス100の外装体50の軸線方向に沿う方向であって、上記先端側と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。なお、
図5においては、図示左側が体内へと挿入される「先端側」であり、図示右側が手技者によって操作される「基端側」である。
【0042】
(適用例1)
図7は、
図5のサポートデバイス100における第一実施形態に係る医療用コイル体10の適用例1を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)は医療用コイル体10の横断面図、(c)は多条コイル体30の横断面図である。適用例1では、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部1を備えた医療用コイル体10と、複数の素線31を並べて帯状体とし、この帯状体を密に巻回した多条コイル体30とが直列に接続されている。例えば、医療用コイル体10を外装体50の先端側に位置させ、多条コイル体30を外装体50の基端側に位置させることにより、外装体50の先端側では復元力が低減するので、血管壁から受ける抵抗が減少し、外装体50の回転性が低減することが抑制される。一方、外装体50の基端側では、剛性が確保されているので、外装体50の操作性がより向上する。
【0043】
多条コイル体30を構成する素線31は、第1素線11と同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、素線31の剛性は、第1素線11の剛性と同じであってもよく、異なっていてもよい。
図7は、素線31と第1素線11とが共に中実の線材である場合の例である。
【0044】
多条コイル体30における素線31の巻回直径は、医療用コイル体10における第1素線1の巻回直径と同じであることが好ましい。このような構成によれば、多条コイル体30にと医療用コイル体10との接続部分を滑らかにすることができる。
【0045】
(適用例2)
図8は、
図5のサポートデバイス100における第二実施形態に係る医療用コイル体20の適用例2を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)は医療用コイル体20の横断面図である。適用例2は、中空螺旋状に巻回された複数の第1素線11のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第1コイル部1と、中空螺旋状に巻回された複数の第2素線21のうち、少なくとも1条を間引くことにより形成された第2コイル部2を備え、第1コイル部1の間引きした部分と第2コイル部2の間引きした部分とをかみ込ませた構造を有する医療用コイル体20を備えている。例えば、医療用コイル体20を外装体50の基端側に位置させることにより、外装体50の基端側の剛性が向上するので、外装体50の回転性がより向上する。
【0046】
図8では、第1コイル部1は、12条の第1素線11のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成されており、第2コイル部2は、12条の第2素線21のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成されている。
図8は、第1素線11として中実の線材を用い、第2素線21として撚り線材を用いた医療用コイル体20の例である。
【0047】
例えば、適用例2において、外装体50の先端側に第一実施形態に係る医療用コイル体10をさらに位置させてもよい。医療用コイル体10と医療用コイル体20とが直列に接続されていてもよい。
【0048】
(適用例3)
図9は、
図5のサポートデバイス100における第一実施形態に係る医療用コイル体10及び第二実施形態に係る医療用コイル体20の適用例3を示す概略説明図であって、(a)は縦断面図、(b)は医療用コイル体10の横断面図、(c)は医療用コイル体20aの横断面図、(d)は医療用コイル体20bの横断面図である。適用例3では、医療用コイル体10と、医療用コイル体20とが直接に接続されている。
【0049】
図9に示すように、適用例3は、3つの医療用コイル体10、20a及び20bを備え、これらが直接に接続されている。医療用コイル体10は、12条の第1素線11のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成されている。医療用コイル体20aは、12条の第1素線11のうち、隣接する10条からなる帯状体を間引くことにより形成された第1コイル部1と、12条の第2素線21のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成された第2コイル部2とから構成されている。医療用コイル体20bは、12条の第1素線11のうち、隣接する7条からなる帯状体を間引くことにより形成された第1コイル部1と、12条の第2素線21のうち、隣接する6条からなる帯状体を間引くことにより形成された第2コイル部2とから構成されている。このように、異なる構造を有する医療用コイル体10、20a及び20bを組み合わせて用いることで、外装体50の剛性を調節することができる。例えば、
図9の例では、外装体50の先端側から基端側にかけて剛性が増加している。
【0050】
適用例3において、医療用コイル体10における第1素線11は、医療用コイル体20a及び20bにおける第1素線11と同じであってもよく、第2素線21と同じであってもよい。
図9は、医療用コイル体10における第1素線11及び医療用コイル体20a及び20bにおける第2素線21として、撚り線材を用い、医療用コイル体20a及び20bにおける第1素線11として中実の線材を用いた場合の例である。
【0051】
以上、本発明に係る医療用コイル体ついて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態では、医療用コイル体がサポートデバイスの外装体に用いられる場合を例として説明したが、本発明の医療用コイル体は、サポートデバイスの外装体の用途に限られるものではなく、例えば、各種ガイドワイヤや、貫通カテーテル、ガイディングカテーテル、バルーンカテーテルなどの各種カテーテルに適用されてもよい。
【0052】
一般に、ガイドワイヤは、中実のコアシャフトの外周にコイル体が外装された構造を有している。本発明の医療用コイル体は、ガイドワイヤのコイル体としても用いることができる。例えば、特開2011-199号公報の
図1に示されるような、外側可撓管体4の内側でコアシャフト2の先端部22を囲う内側可撓管体5を備え、内側可撓管体5は、その先端51がコアシャフト2の先端から後端側に離間して位置するように配されているガイドワイヤにおいては、内側可撓管体5(インナーコイル体)及び外側可撓管体4(アウターコイル体)として本発明の医療用コイル体を用いることができる。
【0053】
一般に、カテーテルは、中空のカテーテルシャフトの壁面に補強のためのコイル体が埋め込まれた構造を有している。本発明の医療用コイル体は、カテーテルシャフトのコイル体としても用いることができる。例えば、特開2018-033985号公報の
図2に示されるような、半径方向に内側から順に、内層10と、内層10の外周に巻回された第一コイル体20と、第一コイル体20を被覆する中間層30と、中間層30の外周に巻回された第二コイル体40と、第二コイル体40を被覆する外層50と、を有しているカテーテルシャフト60においては、第一コイル体20及び第二コイル体40として本発明の医療用コイル体を用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
10、20 医療用コイル体
1 第1コイル部
11 第1素線
2 第2コイル部
21 第2素線
100 サポートデバイス
50 外装体
51 内腔
52 先端
53 樹脂
60 インナーガイドワイヤ