(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027772
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20240222BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20240222BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01G4/32 531
H01G4/32 540
H01G4/32 301F
H01G4/32 305A
H01G4/228 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130861
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】村上 耕之
(72)【発明者】
【氏名】山川 慶之
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB03
5E082AB04
5E082EE07
5E082EE24
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082GG08
5E082HH28
5E082HH47
(57)【要約】
【課題】フィルムコンデンサに関して、ESL(等価直列インダクタンス)に対する低減効果とともにバスバーの繋ぎ部に対する折り曲げ加工性の向上を図る。
【解決手段】第1および第2のバスバー2,3はそれぞれ本体基板部2a,3a、繋ぎ部2b,3b、複数の接続端子部2c,3cを有している。両繋ぎ部2b,3bは、幅方向Wに沿った折り曲げ領域2b
21,2b
22を伴う状態で幅方向Wに対して交差する方向Xで折り曲げられ、両者間に絶縁板7を介在させた対向状態の重合領域Aを形成している。第1の繋ぎ部2bにおいて、折り曲げ領域2b
21,2b
22にまで亘る切欠き部2b
3が形成され、切欠き部2b
3によって幅方向Wで複数に分割した分割繋ぎ部2b
Dの各々の幅方向Wにおける長さが複数の接続端子部2c,3cの幅に比べて大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の電極に本体基板部が接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーと、前記コンデンサ素子と少なくとも前記第1および第2のバスバーの本体基板部とを被覆する樹脂層とを備えるとともに、
前記第1のバスバーは一方端が前記第1のバスバーの本体基板部に繋がる第1の繋ぎ部を有し、前記第1の繋ぎ部の他方端において前記樹脂層から露出する部分の遊端辺の複数箇所から第1の接続端子部が突出され、
前記第2のバスバーは一方端が前記第2のバスバーの本体基板部に繋がる第2の繋ぎ部を有し、前記第2の繋ぎ部の他方端において前記樹脂層から露出する部分の遊端辺の複数箇所から第2の接続端子部が突出され、
前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部とは、前記遊端辺が延びる幅方向に沿った折り曲げ領域を伴う状態で前記幅方向に対して交差する方向で折り曲げられているとともに、両者間に絶縁部材を介在させた対向状態の重合領域を形成しており、
前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部のうち少なくとも一方の繋ぎ部において、前記折り曲げ領域に前記交差方向に亘って切り欠かれた切欠き部が形成され、当該切欠き部によって前記幅方向で複数に分割された分割繋ぎ部の各々の前記幅方向における長さが前記第1および第2の接続端子部の幅に比べて大きいことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1および第2の繋ぎ部における重合領域は、前記第1および第2の接続端子部に面一状態で連接する水平領域と、この水平領域に対して屈折状態で連接する垂直領域とを有し、
前記切欠き部は、前記水平領域と前記垂直領域に跨って切り欠かれた第1の切欠きを有する請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記第1の切欠きに加えて前記垂直領域と前記本体基板部に跨って切り欠かれた第2の切欠きを有する請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第1の切欠きと前記第2の切欠きとの間には、隣接する前記分割繋ぎ部を接続する架け渡し部が設けられている請求項3に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記架け渡し部の水平方向に延びる上辺または下辺位置が前記樹脂層を形成するための充填樹脂の充填高さ基準位置に設定されている請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記複数の分割繋ぎ部の各々の幅方向の長さが同じである請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記切欠き部は、前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部の両方の繋ぎ部に形成され、前記幅方向における前記第1の繋ぎ部の前記切欠き部の位置と前記第2の繋ぎ部の前記切欠き部の位置が一致している請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関し、ESL(等価直列インダクタンス)に対する低減効果とともにバスバーの繋ぎ部に対する折り曲げ加工性の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は第1の従来例における第1のバスバー2と第2のバスバー3を表している。第1のバスバー2の構成要素として、2aは第1の本体基板部、2bは逆L字状に折り曲げられた第1の繋ぎ部、2cは第1の接続端子部、第2のバスバー3の構成要素として、3aは第2の本体基板部、3bは逆L字状に折り曲げられた第2の繋ぎ部、3cは第2の接続端子部である。軸方向を上下方向とする姿勢のコンデンサ素子群(図示せず)の上面の電極に第1の本体基板部2aが接続され、第2の本体基板部3aはコンデンサ素子群の下面の電極に接続されている。第1の繋ぎ部2bは垂直領域と水平領域とで逆L字状に折り曲げられ、垂直領域の下端部が第1の本体基板部2aに連接されている。複数の第1の接続端子部2cが第1の繋ぎ部2bの遊端辺2b
1からさらに水平方向外方へ突出している。第2の繋ぎ部3bは垂直領域と水平領域とで逆L字状に折り曲げられている。その垂直領域の下端部が第2の本体基板部3aに連接されている。複数の第2の接続端子部3cが第2の繋ぎ部3bの遊端辺3b
1からさらに水平方向外方へ突出している。第2の繋ぎ部3bの垂直領域は第1の繋ぎ部2bの垂直領域より上下寸法が大きくなっている。第1の本体基板部2aと第2の本体基板部3aとの上下寸法の差はコンデンサ素子群の高さにほぼ匹敵している。第1の繋ぎ部2bの水平領域と第2の繋ぎ部3bの水平領域との上下寸法の差は両者間に介装される絶縁板の厚みにほぼ匹敵している。
【0003】
第1の繋ぎ部2bの水平領域と垂直領域との境界部分が上位の折り曲げ領域2b21であり、垂直領域と第1の本体基板部2aとの境界部分が下位の折り曲げ領域2b22である。
【0004】
第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aがハッチングで強調表示されている。この重合領域Aにおいては、第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの間の狭いすき間に断面形状逆L字形のアングル状に折り曲げられた絶縁板(図示せず)が介在されている。重合領域Aにおいて、第1の繋ぎ部2bに流れる電流の方向と第2の繋ぎ部3bに流れる電流の方向とが互いに逆方向(反平行)となり、それぞれの電流が作る磁界が互いに打ち消し合って、ないしは減じ合ってバスバーのESLを低減化する。
【0005】
図12は第2の従来例における第1のバスバー2と第2のバスバー3を表している。第2の従来例の場合には、複数の第1の接続端子部2cを第1の本体基板部2aに連接する第1の繋ぎ部2bは、第1の接続端子部2cの横幅w
3と同程度の小幅な寸法となっている。すなわち、
図11の第1の従来例に比べると、第1の接続端子部2cに対応する部分を残して第1の繋ぎ部2bが大きく切除されている。第1の接続端子部2cの根元相当位置(
図11の遊端辺2b
1参照)から上位の折り曲げ領域2b
21を通り越して下位の折り曲げ領域2b
22に至る広い範囲で切除されている。2b
3′がその切除縁である。
【0006】
このように上位・下位の折り曲げ領域2b21,2b22を含めた広い範囲に亘って第1の繋ぎ部2bを切除するのは、折り曲げ加工における折り曲げ抵抗を大幅に軽減して折り曲げ加工の精度を向上し、第1の接続端子部2cの位置の精度を改善するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の従来例(
図11)の場合には、複数の第1の接続端子部2cを第1の本体基板部2aに連接する第1の繋ぎ部2bは、第1の本体基板部2aの横幅の全域にわたる非分割で単一の繋ぎ部として構成されている。この繋ぎ部2bはベタ(すきま(切欠き)のないさま;一面に広がっているさま)の状態である。非分割で単一の(つまりベタの)繋ぎ部の場合、対向する一対のL字状の繋ぎ部2b,3bどうしの重合面積S2(これは上位の第1の繋ぎ部2bの面積とほぼ同じ)を大きくすることも可能であるが、折り曲げ領域2b
21,2b
22の幅は本体基板部2aの全幅と同じか同程度の大きなものとなり、折り曲げ加工における折り曲げ抵抗が大きなものになる。そのため、折り曲げ加工の精度が悪く、接続端子部および繋ぎ部先端(遊端辺2b
1)の位置の精度が低いものとなる。結果的に、重合面積S2を大きくすることができず、バスバーのESLを低減化することができない。
【0009】
第2の従来例(
図12)の場合には、第1の接続端子部2cと第1の本体基板部2aとの間に位置してこれら両者を連接する第1の繋ぎ部2bは、その幅w
3が第1の接続端子部2cと同程度の短い寸法のものとなっている。すなわち、上位の折り曲げ領域2b
21を通り下位の折り曲げ領域2b
22に至る比較的大きな面積の領域が切除されている。切除した範囲は重合領域を形成することはできない。そのため、第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aが第1の従来例(
図11)に比べて大きく減少している(切除縁2b
3′参照)。
【0010】
第2の従来例にあっては曲げ抵抗をできるだけ減じたいために切り取りの面積をなるべく大きくしている。切り取りを行うことなく残存する領域は曲げ抵抗を低減する上で不利益となるからである。その結果として重合領域Aの面積(具体的には、分割された単位の重合面積をS3、接続端子部2cの個数をnとして、S3×nの面積)が小さくなってしまい、ESLが増大悪化してしまう。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、フィルムコンデンサに関して、ESLに対する低減効果とともにバスバーの繋ぎ部に対する折り曲げ加工性の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0013】
本発明によるフィルムコンデンサは、
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の電極に本体基板部が接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーと、前記コンデンサ素子と少なくとも前記第1および第2のバスバーの本体基板部とを被覆する樹脂層とを備えるとともに、
前記第1のバスバーは一方端が前記第1のバスバーの本体基板部に繋がる第1の繋ぎ部を有し、前記第1の繋ぎ部の他方端において前記樹脂層から露出する部分の遊端辺の複数箇所から第1の接続端子部が突出され、
前記第2のバスバーは一方端が前記第2のバスバーの本体基板部に繋がる第2の繋ぎ部を有し、前記第2の繋ぎ部の他方端において前記樹脂層から露出する部分の遊端辺の複数箇所から第2の接続端子部が突出され、
前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部とは、前記遊端辺が延びる幅方向に沿った折り曲げ領域を伴う状態で前記幅方向に対して交差する方向で折り曲げられているとともに、両者間に絶縁部材を介在させた対向状態の重合領域を形成しており、
前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部のうち少なくとも一方の繋ぎ部において、前記折り曲げ領域に前記交差方向に亘って切り欠かれた切欠き部が形成され、当該切欠き部によって前記幅方向で複数に分割された分割繋ぎ部の各々の前記幅方向における長さが前記第1および第2の接続端子部の幅に比べて大きいことを特徴とする。
【0014】
この場合において、切欠き部は本体基板部に繋がる部分の折り曲げ領域に及んでいる。切欠き部は連続していてもよいし、非連続でもよい。この切欠き部が形成された繋ぎ部においては、切欠き部によって折り曲げ領域の幅方向で複数に分割された分割繋ぎ部の各々の前記幅方向における長さが前記第1および第2の接続端子部の幅に比べて大きくなっている。
【0015】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0016】
第1のバスバー、第2のバスバーにおいて、第1および第2の繋ぎ部は絶縁部材を挟んで互いに対向する重合領域を形成するが、その重合領域を形成する2つの対向する繋ぎ部の少なくとも一方は複数の分割繋ぎ部となっている。
【0017】
そして、複数の分割繋ぎ部の各々の幅方向における長さが第1および第2の接続端子部の幅に比べて大きいので(換言すれば、切欠き部の幅を充分に小さくすることができるので)、比較的大きな重合領域を確保することができる。
【0018】
第1の従来例(
図11)の場合には、複数の接続端子部を本体基板部に連接する繋ぎ部は、本体基板部の横幅の全域にわたる非分割で単一の繋ぎ部として構成されている。この繋ぎ部はベタ(すきま(切欠き)のないさま;一面に広がっているさま)の状態である。非分割で単一の(つまりベタの)繋ぎ部の場合、対向する一対の繋ぎ部どうしの重合面積は大きく確保されるが、折り曲げ領域の幅は本体基板部の全幅と同じか同程度の大きなものとなり、折り曲げ加工における折り曲げ抵抗が大きなものになる。その結果、折り曲げ加工の精度が悪く、接続端子部の位置の精度が低いものとなる。
【0019】
第2の従来例(
図12)の場合には、複数の接続端子部を本体基板部に連接する繋ぎ部は、接続端子部の横幅と同程度の小幅な寸法となっている。これにより、折り曲げ加工における折り曲げ抵抗が大幅に軽減されて折り曲げ加工の精度が向上し、接続端子部の位置の精度が改善される。しかし、対向する一対の繋ぎ部どうしの重合面積が大幅に低下し、ESLが増大化してしまう。
【0020】
これら両従来例に対して、本発明の上記の特徴によれば、切欠き部が形成された繋ぎ部は複数の分割繋ぎ部の集合体からなっている。切欠き部と分割繋ぎ部の幅寸法について、切欠き部は繋ぎ部を複数の分割繋ぎ部に分ける機能を発揮すればよくて、その幅はかなり狭いものですむ。一方、個々の分割繋ぎ部の幅は、切欠き部の幅を除く比較的広い幅を確保することが可能である。
【0021】
したがって、異極性の一対のバスバーの逆並走面積として展開する重合領域の面積は、個々の分割繋ぎ部の幅が大きいほど大きくでき、従来例に比べて充分に大きく確保されることになる。重合領域においては、第1の繋ぎ部に流れる電流の方向と第2の繋ぎ部に流れる電流の方向とが互いに逆方向(反平行)となり、それぞれの電流が作る磁界が互いに打ち消しあって、ないしは減じ合ってバスバーのESLを低減化するが、その効果は、バスバーの逆並走面積が大きいほど大きい。その結果、一対のバスバーの対向配置によるESLに対する低減効果が向上する。
【0022】
加えて、繋ぎ部の折り曲げ加工においては、繋ぎ部がその幅方向で分割された分割繋ぎ部を単位として折り曲げ加工することが可能となる。すなわち、分割繋ぎ部を単位として折り曲げ加工することは、その折り曲げ抵抗が、切欠き部を有しない従来のベタ方式の大幅寸法(一端から他端までの差し渡しの寸法)の繋ぎ部に対する折り曲げ加工における折り曲げ抵抗に比べて充分に小さくなり、折り曲げ加工の精度が向上する。そして、折り曲げ加工の精度が向上すると、曲げ先つまり接続端子部および繋ぎ部の遊端辺の位置の精度が向上する。
【0023】
以上を総合すると、本発明によれば、繋ぎ部形成における折り曲げ加工の容易性、接続端子部・繋ぎ部の位置精度の正確性および低ESLをともに達成することが可能となる。
【0024】
上記構成の本発明のフィルムコンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0025】
〔1〕前記第1および第2の繋ぎ部における重合領域は、前記第1および第2の接続端子部に面一状態で連接する水平領域と、この水平領域に対して屈折状態で連接する垂直領域とを有し、前記切欠き部は、前記水平領域と前記垂直領域に跨って切り欠かれた第1の切欠きを有する。
【0026】
繋ぎ部における重合領域の形態として、屈折した状態で連接する水平領域と垂直領域とからなる断面形状逆L字形のアングル状に形成されることがある。
【0027】
当該構成の場合、コンデンサ素子はその軸方向が上下方向に一致し、コンデンサ素子の電極面とバスバーの本体基板部は水平となっている。本体基板部と接続端子部とを連接する繋ぎ部における重合領域を、接続端子部に面一状態で連接する水平領域と水平領域に対して屈折状態で連接する垂直領域とで断面逆L字形に構成した場合には、重合領域での電流の逆並走距離を大きく確保することが可能となる。切欠き部の横断の態様は、水平領域と垂直領域との境界線を中央に挟んで、水平領域と垂直領域の双方に跨っている。その結果、一対のバスバーの対向配置によるESLに対する低減効果が向上する。
【0028】
アングル状の折り曲げ形態は優れた強度を有するが、反面、折り曲げ抵抗も相当に大きいものとなる。アングル状の折り曲げ形態に対して、水平領域と垂直領域に跨る第1の切欠きを形成すると、折り曲げ抵抗を充分に小さなものにしながら、重合面積を充分に大きなものとして確保することができる。
【0029】
〔2〕前記切欠き部は、前記第1の切欠きに加えて前記垂直領域と前記本体基板部に跨って切り欠かれた第2の切欠きを有する構成。
【0030】
この構成の場合、折り曲げ領域が前記幅方向に対して交差する方向(折り曲げ方向)で2段に並列していて、それぞれの折り曲げ領域を横断する状態に切欠き部が形成されている。折り曲げが1段の場合は折り曲げ抵抗は比較的小さいが、折り曲げ段数が2段となると折り曲げ抵抗は増大する。本発明の当該構成は、折り曲げ領域が2段に並列している場合に、折り曲げ領域のすべてに対して切欠き部を横断形成するので、折り曲げ加工における折り曲げ抵抗を低減する上で特に有効である。
【0031】
〔3〕前記第1の切欠きと前記第2の切欠きとの間には、隣接する前記分割繋ぎ部を接続する架け渡し部が設けられている構成。
【0032】
切欠き部を第1の切欠きと第2の切欠きのセットで構成する場合に、両方の切欠きを一連につないで構成するほか、本構成のように両方の切欠きの間に架け渡し部を設けて、その架け渡し部で隣接する分割繋ぎ部どうしを接続するという方式がある。これによりESLをさらに低減することができる。また、第1の切欠きと第2の切欠きを連続させて形成すると、経年劣化等の外的要因のために折り曲げ抵抗の低減効果が効き過ぎになり、結果として、接続端子部や繋ぎ部遊端辺の位置の精度を悪化させる可能性がある。そこで、両方の切欠きの間を架け渡し部を残して隣接する分割繋ぎ部どうしを接続すると、外的要因による位置精度の悪化を抑制することができる。
【0033】
〔4〕前記架け渡し部の水平方向に延びる上辺または下辺位置が前記樹脂層を形成するための充填樹脂の充填高さ基準位置に設定されている構成。
【0034】
この構成によれば、上位のバスバーの主要部である本体基板部を被覆する樹脂層を形成するための充填樹脂高さ位置の制御を容易化することが可能となる。充填する樹脂が次第に上昇していくと、充填樹脂は下位の第2の切欠きの最下部位置の開口を下方から上方に抜けて流動する。これで、樹脂層の上面高さ位置が所定位置の充填完了位置に近づいたことを前もって確認することができる。架け渡し部の上辺または下辺位置を樹脂充填量の規定位置に定めておき、次第に上昇してくる充填樹脂がその規定位置に達したタイミングで樹脂充填の完了とすることで、樹脂充填量のインジケータとして利用することができる。これにより、充填樹脂によって本体基板部の上面を正確に所定の厚さで被覆することができる。適切な量の樹脂を安定して充填することが可能となり、生産性を高める(歩留まりを改善する)ことができる。架け渡し部は隣接する分割繋ぎ部の補強と樹脂充填量のインジケータとを兼ねる。
【0035】
〔5〕前記複数の分割繋ぎ部の各々の幅方向の長さ(幅寸法)を同じにすると、以下の効果が得られる。第1の接続端子部、第2の接続端子部に流入あるいは流出する電流量は、接続端子部を本体基板部に連絡する繋ぎ部の幅寸法によって規定される。複数の分割繋ぎ部の各々の幅寸法を同じにすることにより、各接続端子部に流入あるいは流出の電流量を均等化し、繋ぎ部を複数分割したことに伴う分流崩れ(各接続端子部に流れる電流量のバランスの崩れ)を防止することができる。
【0036】
〔6〕前記切欠き部は、前記第1の繋ぎ部と前記第2の繋ぎ部の両方の繋ぎ部に形成されている構成によれば、第1のバスバーでも第2のバスバーでも位置精度が向上し、さらに前記幅方向における前記第1の繋ぎ部の前記切欠き部の位置と前記第2の繋ぎ部の前記切欠き部の位置が一致していれば重合領域が最大化されESL低減に大きく寄与する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、一対のバスバーの逆並走面積を大きく確保しながら、繋ぎ部の折り曲げ抵抗を減少させることができる。結果として、ESLに対する低減効果を向上させながら、バスバーの繋ぎ部に対する折り曲げ加工性(接続端子部および繋ぎ部の遊端辺の位置の精度)の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施例におけるフィルムコンデンサの要部(バスバーにおける繋ぎ部)の構成を示す斜視図
【
図2】
図1の構成要素の第1のバスバーと第2のバスバーとを水平前後方向に大きく離した状態の斜視図
【
図3】同上構成要素の第1のバスバーと第2のバスバーとを充分に近接させた状態の斜視図
【
図4】本発明の実施例におけるフィルムコンデンサの側面視断面図
【
図6】同上実施例における分割繋ぎ部の平面図(正規位置関係からずらせた状態)
【
図7】同上実施例における分割繋ぎ部の平面図(正規位置関係にある状態)
【
図8】別の実施例におけるフィルムコンデンサの要部(バスバーにおける繋ぎ部)の構成を示す斜視図
【
図9】同上別実施例で一対のバスバーを前後方向に離した状態の斜視図
【
図10】同上別実施例で一対のバスバーを前後方向で近づけた状態の斜視図
【
図11】第1の従来例のフィルムコンデンサの要部の構成を示す斜視図
【
図12】第2の従来例のフィルムコンデンサの要部の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、上記構成の本発明のフィルムコンデンサにつき、
図1~
図7を用いて、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0040】
これらの図において、1はコンデンサ素子、1Aはコンデンサ素子群、2は第1のバスバー、3は第2のバスバー、4はコンデンサ素子ユニット、5はケース、6は樹脂層、7は絶縁板(本発明の「絶縁部材」に相当)である。
図1~
図3、
図6、
図7においては、コンデンサ素子群1A、ケース5、樹脂層6および絶縁板7は図示を省略している。
【0041】
図1では、第1のバスバー2における水平領域と垂直領域とからなるアングル状の第1の繋ぎ部2bと第2のバスバー3における同じく水平領域と垂直領域とからなるアングル状の第2の繋ぎ部3bとが所定の位置まで互いに近接して重合領域Aを構成している状態が示されている。当該のフィルムコンデンサの構造を理解しやすくするため、
図2を設け、
図1の状態から第1のバスバー2と第2のバスバー3とを水平前後方向に大きく離間させた状態を表している。
図3は
図2の状態から第1のバスバー2と第2のバスバー3とを近接させ、
図1に対してその直前の状態を表している。
【0042】
図4はフィルムコンデンサの構造の概要を示す。コンデンサ素子1は、誘電体フィルム上にアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した2枚の金属化フィルムを重ね、さらにその重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に整形することにより形成されている。コンデンサ素子1(コンデンサ素子群1A)の上下の軸方向の両端面には正負一対の電極1a,1bが形成されている。複数個のコンデンサ素子1が両端面を上下方向に向かせて隣接して配列され、コンデンサ素子群1Aが構成されている。
【0043】
コンデンサ素子群1Aの両端の正負一対の電極1a,1bにそれぞれ第1のバスバー2の本体基板部2a、第2のバスバー3の本体基板部3aが電気的かつ機械的に接続され、コンデンサ素子ユニット4を構成している。コンデンサ素子ユニット4の本体部であるコンデンサ素子群1Aの全体と第1および第2のバスバー2,3の主要部である本体基板部2a,3aがケース5内に収納され、ケース5内に樹脂を充填してコンデンサ素子ユニット4の本体部を樹脂層6にて被覆して保護している。
【0044】
第1のバスバー2は、コンデンサ素子群1Aの上面の電極1aに接続された第1の本体基板部2aと、この第1の本体基板部2aに繋がる状態で一旦上方へ延び、さらにケース5の水平方向の外側に延びて逆L字状に曲がる第1の繋ぎ部2bと、この第1の繋ぎ部2bの遊端辺2b1の複数箇所からさらに水平方向外方へ突出される第1の接続端子部2cとを有している。第1の本体基板部2aの全体と第1の繋ぎ部2bの下端側一部分とが樹脂層6内に埋設され、第1の繋ぎ部2bの上側部分と複数の第1の接続端子部2cは樹脂層6から露出している。
【0045】
同様に、第2のバスバー3は、コンデンサ素子群1Aの下面の電極1bに接続された第2の本体基板部3aと、この第2の本体基板部3aに繋がる状態で一旦上方へ延び、さらにケース5の水平方向の外側に延びて逆L字状に曲がる第2の繋ぎ部3bと、この第2の繋ぎ部3bの遊端辺3b1の複数箇所からさらに水平方向外方へ突出される第2の接続端子部3cとを有している。第2の本体基板部3aの全体と第2の繋ぎ部3bの下端側一部分とが樹脂層6内に埋設され、第2の繋ぎ部3bの上側部分と複数の第2の接続端子部3cは樹脂層6から露出している。
【0046】
第1の接続端子部2cと第2の接続端子部3cとが一組のペアを構成し、そのペアの複数組がそれぞれ非対向並列の状態(面と面が対向するのではなく、面方向で横並びする状態)で近接配置されている。つまり、第1の接続端子部2cと第2の接続端子部3cとは絶縁板7の厚みの違いだけのほぼ同一水平面内に配置され、その面方向で互いに位置を異にした平行姿勢で配置されている。両接続端子部2c,3cの先端部にはネジ挿通孔(締結孔)2c1,3c1が形成されている。なお、絶縁部材としては樹脂等の絶縁物で形成された絶縁板に限らず、絶縁紙を用いてもよい。
【0047】
複数の第1の接続端子部2cの群は第1の繋ぎ部2bを介して第1のバスバー2の本体基板部2a側と繋がっている。同様に、複数の第2の接続端子部3cの群は第2の繋ぎ部3bを介して第2のバスバー3の本体基板部3a側と繋がっている。第2のバスバー3の本体基板部3aがコンデンサ素子群1Aの下面の電極1bに接続されている関係で、第2の繋ぎ部3bの縦板部分は第1の繋ぎ部2bよりも長く構成されている。
【0048】
断面逆L字状の第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとは、遊端辺2b1,3b1の長手方向である幅方向Wに沿った上位の折り曲げ領域2b21,3b21と下位の折り曲げ領域2b22,3b22を伴う状態で幅方向Wに対して交差して階段状に屈折する折り曲げ方向Xで折り曲げられている。つまり、折り曲げ方向Xに沿う状態で逆L字状に屈曲している。折り曲げ領域2b21,2b22,3b21,3b22は細線の破線で表されている。
【0049】
この第1の繋ぎ部2bの折り曲げの形状は第2の繋ぎ部3bの折り曲げの形状と平行的な関係にあり、両者間の薄肉で扁平に広がるすき間に絶縁板7を介在させる重合状態で第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bは対向配置されている(
図3参照)。絶縁板7も断面形状逆L字形のアングル状に折り曲げられている。
【0050】
第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aにおいては、一方の第1の繋ぎ部2bを流れる電流と他方の第2の繋ぎ部3bを流れる電流とが反平行の状態で流れ、それぞれの電流が形成する磁界の回転方向を互いに逆方向とすることにより、磁界を打ち消し合う、ないしは減じ合うようになっている(詳しくは後述する)。
【0051】
第1の繋ぎ部2bにおいて、幅方向Wに沿った折り曲げ領域が折り曲げ方向(幅方向に対して交差する方向)Xで2つ並行して形成されている。上位の折り曲げ領域2b21と下位の折り曲げ領域2b22である。上位の折り曲げ領域2b21は遊端辺2b1に近い位置にあり、下位の折り曲げ領域2b22は遊端辺2b1から離れた位置にある。上方から見たとき、上位の折り曲げ領域2b21は山折りの曲げ状態であり、下位の折り曲げ領域2b22は谷折りの曲げ状態となっている。
【0052】
第1の繋ぎ部2bにおいて、遊端辺2b1から本体基板部2aの方に向けて切欠き部2b3が形成されている。この切欠き部2b3は、切欠きの開始端が遊端辺2b1に臨んでおり、そこから本体基板部2aに近づく状態で逆L字状に沿って遊端辺2b1に近い方の上位の折り曲げ領域2b21に達し、さらにその折り曲げ領域2b21を少し越えた位置で終端となる。そして、小幅の架け渡し部2b4を介して切欠き部2b3が継続し、遊端辺2b1から遠い方の下位の折り曲げ領域2b22を少し越えた位置で終端となる。
【0053】
第2の繋ぎ部3bにおいて、遊端辺3b1から本体基板部3aの方に向けて切欠き部3b3が形成されている。この切欠き部3b3は、切欠きの開始端が遊端辺3b1に臨んでおり、そこから本体基板部3aに近づく状態で逆L字状に沿って遊端辺3b1に近い方の上位の折り曲げ領域3b21に達し、さらにその折り曲げ領域3b21を少し越えた位置で終端となる。そして、広幅の架け渡し部3b4を介して切欠き部3b3が継続し、遊端辺3b1から遠い方の下位の折り曲げ領域3b22を少し越えた位置で終端となる。
【0054】
本実施例では、
図7に示すように幅方向において切欠き部2b
3と切欠き部3b
3の形成位置が一致しており、隣接する第1の接続端子部2cと第2の接続端子部3cからなる一対の接続端子部の中間位置M1と、当該一対の接続端子部に隣合う両側の一対の接続端子部の中間位置M2、M3の幅方向中間位置に切欠き部2b
3と切欠き部3b
3とが形成されており、これにより一対の接続端子部ごとのESLのばらつきを最小化することができるが、切欠き部2b
3と切欠き部3b
3の形成位置はこれに限定されない。
【0055】
本実施例の場合、第1の繋ぎ部2bにおける切欠き部2b3は架け渡し部2b4で仕切られた上位の第1の切欠き2b3Uと下位の第2の切欠き2b3Dとを有している。さらに、第2の繋ぎ部3bにおける切欠き部3b3は架け渡し部3b4で仕切られた上位の第1の切欠き3b3Uと下位の第2の切欠き3b3Dとを有している。このように、第1の繋ぎ部2bの切欠き部2b3も第2の繋ぎ部3bの切欠き部3b3も複数(本実施例では2つ)の分離した切欠きから構成されている。そして、繋ぎ部2b,3bの遊端辺2b1,3b1に近い第1の切欠き2b3U,3b3Uはその遊端辺に開いた形状とし、第2の切欠き2b3D,3b3Dは遊端辺を含む端部に開いた形状とすることなく閉じた形状としている。
【0056】
絶縁板7を挟んで(介在させて)対向する第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aは、第1の接続端子部2cの突出の根元である遊端辺2b1から始まって当該の重合領域Aにおける下位の折り曲げ領域2b22に至るまで展開している。特に、遊端辺2b1側では第1の接続端子部2cの根元近傍にまで重合領域Aを確保することが可能となる。したがって、異極性の一対のバスバー2,3の逆並走面積を形成する重合領域Aをハッチングで示すように充分に広く確保することができる。その結果、一対のバスバー2,3の逆並走対向によるESLに対する低減効果が向上する。
【0057】
1つの分割繋ぎ部2bDの幅方向ピッチwPは、一連の繋ぎ部2bの全体的な幅方向ピッチよりも充分に短い。したがって、分割繋ぎ部2bDの一つひとつは、その折り曲げ加工に対する抵抗性が全体的な繋ぎ部2bの折り曲げ加工に対する抵抗性よりも小さなものとなる。例えば、全体的な繋ぎ部2bが2分割されている場合、1つの分割繋ぎ部2bDの折り曲げ加工に対する抵抗性はおよそ2分の1に低減し、全体的な繋ぎ部2bが5分割されている場合、1つの分割繋ぎ部2bDの折り曲げ加工に対する抵抗性はおよそ5分の1に低減する。
【0058】
上述のように折り曲げ加工に対する抵抗性が低減する結果、第1の繋ぎ部2bにおいて、個々の分割繋ぎ部2bDに連接されている接続端子部2cおよび第1の繋ぎ部2bの遊端辺2b1の加工後の位置精度は充分に改善される。第2の繋ぎ部3bにおいても同様で、接続端子部3cおよび第2の繋ぎ部3bの遊端辺3b1の加工後の位置精度は充分に改善される。その結果として、実使用において、外部の電気機器からの接続端子との位置決めの精度が向上し、機械的接続の精度が向上する。
【0059】
さらに、一つひとつの分割繋ぎ部2bDは、接続端子部2cの突出の根元である遊端辺2b1から始まって当該の分割繋ぎ部2bDにおける下位の折り曲げ領域2b22に至るまで展開している。分割繋ぎ部2bDの遊端辺2b1の位置精度を従来例に比較して高めることができるため、遊端辺2b1側では接続端子部2cの根元近傍にまで分割繋ぎ部2bDすなわち重合領域Aを確保することが可能となる。
【0060】
図12に示した第2の従来例にあっては、第1の接続端子部2cと第1の本体基板部2aとの間に位置してこれら両者を連接する第1の繋ぎ部2bは、その幅w
3が第1の接続端子部2cと同程度の短い寸法のものとなっている。すなわち、遊端辺2b
1に開口(連通)し、上位の折り曲げ領域2b
21を通り、遊端辺2b
1から遠い下位の折り曲げ領域2b
22に至る比較的大きな面積の領域が切除されている。2b
3′がその切除縁である。切除した範囲は重合領域を形成することはできない。そのため、第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aがハッチングで示すように大きく減少している。
【0061】
これに対して、本発明実施例においては、第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの重合領域Aの大きさは、複数個の切欠き部2b3を除いただけなので最大限の領域を確保することができる。
【0062】
すなわち、対向面積を大きくしてESLの低減を図り、加えて、曲げ抵抗をなるべく小さくして接続端子部2c,3cおよび遊端辺2b1,3b1の位置精度を向上することにより両バスバー間の距離(第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとの間隙寸法)の精度を高め、ESLを確実に低減することができる。
【0063】
本実施例の場合、次のようなメリットもある。
【0064】
コンデンサ素子ユニット4の本体部をケース5内に収容して、ケース5内に樹脂を充填する際に、架け渡し部2b
4の上辺位置(上位の第1の切欠き2b
3Uの下端縁)から充填樹脂が抜けるタイミング(架け渡し部が樹脂で覆われて見えなくなったタイミング)を起点として、所定の高さ寸法(0mm以上)まで樹脂表面が到達すれば、樹脂充填を停止する。これにより、適切な量の樹脂を安定して充填することが可能となり、歩留まりを改善し、生産性を高めることができる。すなわち、切欠き部2b
3における架け渡し部2b
4を樹脂注入量のインジケータとして利用することができる。この場合の様子を
図5に示す。
図5では、樹脂層6を形成するための充填樹脂の高さ位置を架け渡し部2b
4の上辺位置としている。
【0065】
次に、
図6、
図7を用いて、分割繋ぎ部2b
Dの幅方向ピッチw
Pについて説明する。
図6は
図2(第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとが正規の位置関係に対して離間した状態となっている。)に対応し、
図7は
図1(第1の繋ぎ部2bと第2の繋ぎ部3bとが正規の位置関係となっている。)に対応する。
【0066】
第1のバスバー2の第1の繋ぎ部2bに設けられる切欠き部2b3と第2のバスバー3の第2の繋ぎ部3bに設けられる切欠き部3b3の位置関係を同一位置にして、第1のバスバー2の分割繋ぎ部2bDと第2のバスバー3の分割繋ぎ部3bDを正確に重ね合わせる構造とする。
【0067】
第1のバスバー2における第1の繋ぎ部2bの諸要素(構造・形状関係、寸法関係など)と第2のバスバー3における第2の繋ぎ部3bの諸要素(構造・形状関係、寸法関係など)とは左右反転の対称性を有している。第1の繋ぎ部2bにおける切欠き部2b3の位置および幅方向ピッチwPは第2の繋ぎ部3bにおける切欠き部3b3の位置および幅方向ピッチwPと等価的となっている。接続端子部2cの幅方向ピッチも同じwPであり、接続端子部3cの幅方向ピッチも同じwPである。第1の繋ぎ部2bの1つの分割繋ぎ部2bDにおいて、左側の切欠き部2b3から接続端子部2cまでの寸法をa、接続端子部2cの付け根部の寸法をb、接続端子部2cから右側の切欠き部2b3までの寸法をcとする。第2の繋ぎ部3bの1つの分割繋ぎ部3bDにおいて、右側の切欠き部3b3から接続端子部3cまでの寸法はa、接続端子部3cの付け根部の寸法はb、接続端子部3cから左側の切欠き部3b3までの寸法はcとなっている。
【0068】
分割繋ぎ部2bDの幅方向ピッチwPについては、分流崩れ(各接続端子部に流れる電流量のバランスの崩れ)を防止する観点から、すべての分割繋ぎ部2bDについて、それぞれの幅方向ピッチwP1,wP2,wP3…を互いに等しくするのが最適であるが、これに限定されない。
【0069】
複数の分割繋ぎ部2bDの集合体である全体的な繋ぎ部2bは複数の切欠き部2b3を有しているため、その展開面積は切欠き部2b3を有していない全体的な繋ぎ部2bの展開面積よりも減少する。しかしながら、切欠き部2b3の面積の合計は分割繋ぎ部2bDの面積の合計に比較して充分に小さなものであるので、曲げ加工性の向上に伴う両バスバー間の相対距離精度の向上を加味すると、切欠き部2b3を有していない全体的な繋ぎ部2bと比較してもESLを低減することができる。その結果、一対のバスバー2,3の対向配置によるESLに対する低減効果が向上する。
【0070】
図8、
図9に別の実施例を示す。これらの図において、先に説明した実施例の図で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとする。本実施例においては、第2のバスバー3における第2の繋ぎ部3bには切欠き部3b
3が設けられていない。その他の構成ならびに作用効果については、先に説明した実施例の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0071】
なお、上記の実施例の構成のほか本発明は次の実施形態をも含み得るものとする。
【0072】
上位の第1の切欠き2b
3U,3b
3Uを遊端辺に開いた形状とすることに代えて、
図10のように遊端辺を含む端部に開いた形状とすることなく閉じた形状としてもよい。このような構成でも、折り曲げ領域に切欠き部が形成されている限り、バスバー位置精度の向上とともに、ESLの低減を図ることができる。また、第2の繋ぎ部3bにおいて、下位の第2の切欠き3b
3Dを形成することなく、上位の第2の切欠き3b
3Uのみを形成してもよい。
【0073】
本実施例の場合、第1の繋ぎ部2bにおいても第2の繋ぎ部3bにおいても、第1の切欠き2b3U,3b3Uと第2の切欠き2b3D,3b3Dとを形成したが、第1の繋ぎ部2bまたは第2の繋ぎ部3bのいずれか一方において第1の切欠きと第2の切欠きの一方または両方を形成しないようにしてもよい。その場合は、2段屈折が離れている方の第2の繋ぎ部3bで切欠き部を形成することなく、2段屈折が近接している方の第1の繋ぎ部2bでは第1の切欠き2b3Uと第2の切欠き2b3Dの両方もしくは上位の第1の切欠き2b3Uを残すことが好ましい。
【0074】
第1の繋ぎ部2bの諸要素(構造・形状関係、寸法関係など)と第2の繋ぎ部3bの諸要素との間に上記した左右反転の対称性をもたせることが好ましいが、そのような規則性から多少外れるような実施例でもかまわない。
【0075】
また、架け渡し部2b4を形成することなく、切欠き部2b3が遊端辺2b1から下位の折り曲げ領域2b22に至るまで連続的に連なっている構成を採用してもよい。
【0076】
そして、樹脂層6は、単一の充填樹脂に限らず、複数の充填樹脂を用いてもよい。
【0077】
また、ケース5を用いる代りに金型を用いてモールドした樹脂を外装樹脂とする樹脂モールド型のフィルムコンデンサとして本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、フィルムコンデンサに関して、ESLに対する低減効果とともにバスバーの繋ぎ部に対する折り曲げ加工性の向上を図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 コンデンサ素子
1a,1b 電極
2 第1のバスバー
2a 第1の本体基板部
2b 第1の繋ぎ部
2c 第1の接続端子部
2b1 遊端辺
2b21 上位の折り曲げ領域
2b22 下位の折り曲げ領域
2b3 切欠き部
2bD 分割繋ぎ部
3 第2のバスバー
3a 第2の本体基板部
3b 第2の繋ぎ部
3c 第2の接続端子部
6 樹脂層
7 絶縁板
A 重合領域