(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027774
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20240222BHJP
【FI】
F24H9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130864
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】竹下 昌也
(72)【発明者】
【氏名】森口 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 進
【テーマコード(参考)】
3L036
【Fターム(参考)】
3L036AA14
(57)【要約】
【課題】中和器について、筐体本体に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる給湯器を提供する。
【解決手段】給湯器1において、特定手段30は、第1嵌合部61及び第1係合部62を有する。第1嵌合部61は、連結基部60から前方に突出し、又は、連結基部60内かつ後方に凹む。第1係合部62は、連結基部60から係合方向の一方に突出し、又は、連結基部60内かつ係合方向の他方に凹む。固定具100は、第2嵌合部111、第2係合部122及び変形部121を有する。第2嵌合部111は、第1嵌合部61と凹凸嵌合可能である。第2係合部122は、第1係合部62と凹凸係合可能である。変形部121は、弾性変形によって第2係合部122を係合方向に変位させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の燃焼ガスを生成する燃焼装置と、
内部を通過する水を前記燃焼ガスにより加熱して湯に変換する熱交換器と、
前記燃焼ガス中の水蒸気の結露により生じたドレン水を中和する中和器と、
後壁、上壁、底壁、及び幅方向において互いに対向する一対の側壁を有し、前面が筐体開口によって開放された略箱状の筐体本体と、前記筐体開口を覆う前板と、を有する筐体であって、前記燃焼装置、前記熱交換器及び前記中和器を収容するとともに、前記中和器が前記底壁に載置される前記筐体と、
を備えた給湯器であって、
前記中和器と連結する中和器連結部と、前記中和器連結部と一体をなし、前記中和器連結部から離隔する位置にある被連結部と、を有する固定具と、
前記筐体本体に固定された状態で前記筐体に収容された特定手段であって、前記固定具の前記被連結部と連結することで前記固定具を経由して前記中和器の位置ずれを規制する連結基部を有する前記特定手段と、を備え、
前記特定手段は、前記連結基部に形成された第1嵌合部及び第1係合部を有し、
前記第1嵌合部は、前記連結基部から前方に突出し、又は、前記連結基部内かつ後方に凹み、
前記第1係合部は、前記連結基部から前後方向に直交する係合方向の一方に突出し、又は、前記連結基部内かつ前記係合方向の他方に凹み、
前記固定具は、前記被連結部に形成された第2嵌合部、第2係合部及び変形部を有し、
前記第2嵌合部は、前記第1嵌合部と凹凸嵌合可能であり、
前記第2係合部は、前記第1係合部と凹凸係合可能であり、
前記変形部は、弾性変形によって前記第2係合部を前記係合方向に変位させることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記被連結部は、前記第2嵌合部が形成された第1部分と、
前記第1部分に接続して後方に延び、前記変形部及び前記第2係合部が形成された第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記第2部分における前記第2係合部よりも後方に位置する部分に、後方かつ前記係合方向の前記一方に傾斜する案内部を有している請求項1記載の給湯器。
【請求項3】
前記被連結部は、前記第2部分から前記係合方向の前記他方に離隔する位置で前記第1部分に接続して後方に延びる第3部分を有し、
前記第3部分は、前記第1係合部と前記第2係合部とが凹凸係合する状態で、前記連結基部に前記係合方向の前記他方から当接する当接部を有し、
前記第3部分は、前記第3部分における前記当接部よりも後方に位置する部分に、後方かつ前記係合方向の前記他方に傾斜する対向案内部を有している請求項2記載の給湯器。
【請求項4】
前記中和器は、前記ドレン水を中和するための空間を前方から区画する前壁を有し、
前記被連結部及び前記連結基部は、前記中和器の前記前壁よりも前方に位置している請求項1乃至3のいずれか1項記載の給湯器。
【請求項5】
前記筐体の前記前後方向の長さは、前記筐体の前記幅方向の長さよりも大きい請求項1乃至3のいずれか1項記載の給湯器。
【請求項6】
前記第1嵌合部は、前記第2嵌合部と凹凸嵌合する機能とは別の機能も発揮するように構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の給湯器。
【請求項7】
前記特定手段は、前記燃焼装置であり、
前記連結基部は、前記燃焼ガスを生成するための燃料ガスが通過する流路を有し、
前記別の機能は、前記流路内の圧力、温度又は流速の測定を補助する機能である請求項6記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の給湯器の一例が開示されている。この給湯器は、燃焼装置、熱交換器、中和器及び筐体を備えている。
【0003】
燃焼装置は、高温の燃焼ガスを生成する。熱交換器は、内部を通過する水を燃焼ガスにより加熱して湯に変換する。中和器は、燃焼ガス中の水蒸気の結露により生じたドレン水を中和する。
【0004】
筐体は、筐体本体と、図示しない前板と、を有している。筐体本体は、後壁、上壁、底壁、及び幅方向において互いに対向する一対の側壁を有し、前面が筐体開口によって開放された略箱状である。前板は、筐体開口を覆う。筐体は、燃焼装置、熱交換器及び中和器を収容している。中和器は、底壁に載置されている。
【0005】
中和器は、容器及び上蓋を有している。特許文献1の
図2に示されているように、上蓋は、その後端縁から上方に突出する固定片を一体に有している。特許文献1の
図1に示されているように、中和器は、ネジが固定片のネジ穴に挿入され、さらに筐体本体の後壁にねじ込まれることにより、筐体本体に締結されている。これにより、中和器は、前後方向、上下方向及び幅方向に位置ずれが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、給湯器のメンテナンス性の向上のため、中和器について、筐体本体に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化が求められている。
【0008】
この点、上記従来の給湯器では、筐体本体の奥まった位置までユーザが手を差し入れてネジを着脱する必要があるため、作業の容易化が難しい。
【0009】
また、上記従来の給湯器とは異なる構成の給湯器が存在する。この給湯器では、例えば、筐体本体に固定された状態で筐体に収容された燃焼装置等である特定手段と、中和器とが固定具で連結されている。中和器と固定具の一端はネジで締結され、特定手段の一部と固定具の他端とはネジで締結されている。この場合も、ネジの着脱方向が前後方向でなかったり、ネジが中和器、特定手段及び固定具に囲まれて手を差し入れ難い位置にあったりすることにより、作業の容易化が難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、中和器について、筐体本体に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる給湯器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の給湯器は、高温の燃焼ガスを生成する燃焼装置と、
内部を通過する水を前記燃焼ガスにより加熱して湯に変換する熱交換器と、
前記燃焼ガス中の水蒸気の結露により生じたドレン水を中和する中和器と、
後壁、上壁、底壁、及び幅方向において互いに対向する一対の側壁を有し、前面が筐体開口によって開放された略箱状の筐体本体と、前記筐体開口を覆う前板と、を有する筐体であって、前記燃焼装置、前記熱交換器及び前記中和器を収容するとともに、前記中和器が前記底壁に載置される前記筐体と、
を備えた給湯器であって、
前記中和器と連結する中和器連結部と、前記中和器連結部と一体をなし、前記中和器連結部から離隔する位置にある被連結部と、を有する固定具と、
前記筐体本体に固定された状態で前記筐体に収容された特定手段であって、前記固定具の前記被連結部と連結することで前記固定具を経由して前記中和器の位置ずれを規制する連結基部を有する前記特定手段と、を備え、
前記特定手段は、前記連結基部に形成された第1嵌合部及び第1係合部を有し、
前記第1嵌合部は、前記連結基部から前方に突出し、又は、前記連結基部内かつ後方に凹み、
前記第1係合部は、前記連結基部から前後方向に直交する係合方向の一方に突出し、又は、前記連結基部内かつ前記係合方向の他方に凹み、
前記固定具は、前記被連結部に形成された第2嵌合部、第2係合部及び変形部を有し、
前記第2嵌合部は、前記第1嵌合部と凹凸嵌合可能であり、
前記第2係合部は、前記第1係合部と凹凸係合可能であり、
前記変形部は、弾性変形によって前記第2係合部を前記係合方向に変位させることを特徴とする。
【0012】
本発明の給湯器において、中和器が筐体本体に取り付けられた状態で、中和器が載置される底壁が中和器の重量を支持し、固定具の中和器連結部が中和器と連結する。そして、特定手段の連結基部と固定具の被連結部とは、第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合し、また、第1係合部と第2係合部とが凹凸係合することにより連結する。
【0013】
第2嵌合部が第1嵌合部と凹凸嵌合可能な構成とは、具体的には、第1嵌合部が突出する場合には第2嵌合部が被連結部内かつ前方に凹み、第1嵌合部が凹む場合には第2嵌合部が被連結部から後方に突出する構成である。第2嵌合部が被連結部内かつ前方に凹む構成は、例えば、有底穴、貫通穴、バーリング加工穴等である。第2係合部が第1係合部と凹凸係合可能な構成とは、具体的には、第1係合部が突出する場合には第2係合部が被連結部内かつ係合方向の一方に凹み、第1係合部が凹む場合には第2係合部が被連結部から係合方向の他方に突出する構成である。第2係合部が被連結部内かつ係合方向の一方に凹む構成も、例えば、有底穴、貫通穴、バーリング加工穴等である。
【0014】
この際、第1嵌合部及び第2嵌合部は、連結基部に対して被連結部が上下方向及び幅方向において位置ずれすることを規制する。また、第1係合部及び第2係合部は、連結基部に対して被連結部が少なくとも前後方向に位置ずれすることを規制する。
【0015】
その結果、中和器は、連結基部及び固定具によって、前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれが確実性高く規制される。
【0016】
一方、被連結部に形成された変形部の弾性変形によって第2係合部を係合方向の一方に変位させて第1係合部から離隔させれば、第1係合部と第2係合部との凹凸係合を容易に解除できる。そして、第2嵌合部を第1嵌合部に対して前方にスライドさせることにより、第1嵌合部と第2嵌合部との凹凸嵌合を容易に解除できる。
【0017】
つまり、本発明の給湯器は、特定手段の連結基部と固定具の被連結部との連結にビス等の締結手段が不要であり、特定手段の連結基部と固定具の被連結部との連結及び連結の解除を容易に実施できる。
【0018】
これにより、本発明の給湯器のメンテナンス作業を行う作業者は、前板を筐体本体から取り外した後、固定具の中和器連結部が中和器と連結したままで特定手段の連結基部と固定具の被連結部との連結を解除し、固定具が連結した状態の中和器を筐体本体から前方に取り出すことを容易に実施できる。なお、中和器が底壁に載置されているだけでなく、ネジ等によって底壁に締結されていれば、その締結を解除した後で、上記作業を行う。また、作業者は、その逆の動作により、固定具が連結した状態の中和器を筐体本体に取り付け、中和器を底壁に載置することを容易に実施できる。
【0019】
つまり、作業者は、筐体本体の前に位置して手を前後方向に動かす動作を主に行うことで、固定具が連結した状態の中和器の筐体本体に対する取り付け及び取り外しを実施できる。
【0020】
したがって、本発明の給湯器は、中和器について、筐体本体に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる。
【0021】
被連結部は、第2嵌合部が形成された第1部分と、第1部分に接続して後方に延び、変形部及び第2係合部が形成された第2部分と、を有していることが望ましい。そして、第2部分は、第2部分における第2係合部よりも後方に位置する部分に、後方かつ係合方向の一方に傾斜する案内部を有していることが望ましい。
【0022】
この場合、第2嵌合部を第1嵌合部よりも前方の位置から後方にスライドさせて第1嵌合部と第2嵌合部とを凹凸嵌合させるときに、案内部が連結基部に摺接しながら、第2係合部を第1係合部に向けて好適に案内できるので、第1係合部と第2係合部とを確実性高く凹凸係合させることができる。また、作業者は、案内部を把持して第2部分の変形部を係合方向の一方に弾性変形させることで第2係合部を第1係合部から容易に離隔させることができるので、第1係合部と第2係合部との凹凸係合を一層容易に解除できる。
【0023】
被連結部は、第2部分から係合方向の他方に離隔する位置で第1部分に接続して後方に延びる第3部分を有していることが望ましい。第3部分は、第1係合部と第2係合部とが凹凸係合する状態で、連結基部に係合方向の他方から当接する当接部を有していることが望ましい。そして、第3部分は、第3部分における当接部よりも後方に位置する部分に、後方かつ係合方向の他方に傾斜する対向案内部を有していることが望ましい。
【0024】
この場合、第2嵌合部を第1嵌合部よりも前方の位置から後方にスライドさせて第1嵌合部と第2嵌合部とを凹凸嵌合させるときに、案内部と対向案内部とが連結基部に対して係合方向の外側に位置して連結基部に摺接しながら、第2係合部を第1係合部に向けて好適に案内できるので、第1係合部と第2係合部とを一層確実性高く凹凸係合させることができる。また、第1係合部と第2係合部とが凹凸係合する状態で、第2部分における第2係合部と、第3部分の当接部とが連結基部を係合方向において挟持するので、第2係合部が第1係合部から外れ難い。
【0025】
中和器は、ドレン水を中和するための空間を前方から区画する前壁を有していることが望ましい。そして、被連結部及び連結基部は、中和器の前壁よりも前方に位置していることが望ましい。
【0026】
この場合、作業者は、固定具が連結した状態の中和器の筐体本体に対する取り付け及び取り外しを実施するときに、筐体本体の前に位置して手を前後方向に動かす動作について、主に自分に近い場所でそれ程手を延ばさずに行うことができる。その結果、この給湯器は、メンテナンス性の一層の向上を実現できる。
【0027】
筐体の前後方向の長さは、筐体の幅方向の長さよりも大きいことが望ましい。この場合、本発明の給湯器は、狭小設置型給湯器又はスリム給湯器と呼ばれる給湯器である。そして、作業者は、固定具が連結した状態の中和器の筐体本体に対する取り付け及び取り外しを実施するときに、筐体内で中和器を幅方向に動かし難い。このため、この給湯器は、本発明の作用効果を確実性高く享受できる。
【0028】
第1嵌合部は、第2嵌合部と凹凸嵌合する機能とは別の機能も発揮するように構成されていることが望ましい。別の機能の具体例として、燃焼装置又は熱交換器に係る圧力、温度又は流速の測定を補助する機能や、筐体内に収容された機能部品を支持又は位置決めする機能等が挙げられる。この場合、第1嵌合部が第2嵌合部と凹凸嵌合する機能のみを発揮する場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0029】
特定手段は、燃焼装置であることが望ましい。連結基部は、燃焼ガスを生成するための燃料ガスが通過する流路を有していることが望ましい。そして、別の機能は、流路内の圧力、温度又は流速の測定を補助する機能であることが望ましい。このような具体的構成により、部品点数を確実性高く削減できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の給湯器によれば、中和器について、筐体本体に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図2は、実施例1の給湯器の斜視図であって、前板を取り外した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1の給湯器の斜視図であって、前板を取り外した状態、かつ上壁、後壁及び一対の側壁を二点鎖線で図示した状態であって、燃焼装置、主熱交換器、副熱交換器及び中和器を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1の給湯器に係り、底壁、中和器、固定具及び燃焼装置の相対関係を示す部分斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例1の給湯器に係り、中和器、固定具及び燃焼装置の相対関係を示す部分斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例1の給湯器に係り、中和器、固定具及び燃焼装置の相対関係を示す部分斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例1の給湯器に係り、中和器、固定具及び連結基部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例1の給湯器に係り、固定具及び連結基部の部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2の給湯器に係り、固定具の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施例2の給湯器に係り、固定具及び連結基部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0033】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の給湯器1は、本発明の給湯器の具体的態様の一例である。以下の説明では、給湯器1の筐体8の前板89側、すなわち
図1の紙面手前側を給湯器1の前方と規定し、給湯器1の側壁84L側、すなわち
図1の紙面左側を給湯器1の左方と規定し、
図1の紙面上側を給湯器1の上方と規定する。そして、
図2以降の各図に示す前後、左右及び上下の各方向は、全て
図1に対応させて表示する。以下、給湯器1の構成要素について説明する。
【0034】
<筐体>
図1に示すように、給湯器1は、筐体8を備えている。筐体8は、筐体本体80及び前板89を有している。本実施例では、筐体本体80及び前板89はそれぞれ、鋼板等の金属板材からなる。
【0035】
筐体本体80は、
図3に二点鎖線で示す後壁81と、
図2に実線で示し、かつ
図3に二点鎖線で示す上壁82と、
図1~
図3に示す底壁83と、
図1及び
図2に実線で示し、かつ
図3に二点鎖線で示す一対の側壁84L、84Rと、を有している。
【0036】
図2に示すように、筐体本体80は、前面が筐体開口80Hによって開放された略箱状である。なお、
図2では、中和器50よりも前方に位置する制御部の図示を省略している。
【0037】
一対の側壁84L、84Rは、幅方向において互いに対向している。筐体8の幅方向は、前後方向及び上下方向に直交する方向であり、本実施例では左右方向と一致している。
【0038】
図1に示すように、前板89は、略矩形平板形状であり、筐体開口80Hを覆っている。筐体本体80及び前板89は、筐体8の内部空間を区画している。
【0039】
本実施例では、給湯器1は、狭小設置型給湯器又はスリム給湯器と呼ばれる給湯器であり、幅方向において狭小な設置場所に応じて、筐体8の幅方向の長さL2が制約されている。
【0040】
このため、筐体8の内部空間の容積を確保する必要があり、筐体8の前後方向の長さL1が筐体8の幅方向の長さL2よりも大きく、また、筐体8の上下方向の長さL3が筐体8の幅方向の長さL2よりも大幅に大きくなっている。本実施例では、長さL1は、長さL2の1.5倍よりも大きい。長さL3は、長さL2の3倍よりも大きい。
【0041】
狭小な設置場所に設置された給湯器1のメンテナンス作業を行う作業者は、前板89を筐体本体80から取り外して、筐体本体80の前に位置する状態で作業を行うことになる。
【0042】
<燃焼装置>
図2及び
図3に示すように、給湯器1は、燃焼装置30を備えている。燃焼装置30は筐体8に収容され、筐体8における上下方向の中間部に位置している。
【0043】
図3に示すように、燃焼装置30は略箱状体であり、内部に図示しない燃焼室及び複数のガスバーナを有している。
図2に示すように、燃焼装置30の底面側には、燃焼ファン30Fが接続されている。
【0044】
図4~
図6に示すように、燃焼装置30は、その左側面側にマニホールド35を有している。マニホールド35は、アルミ鋳造品であるマニホールド本体36と、板金加工部品であるマニホールドカバー37と、が組み合わされてなる。
【0045】
図6に示すように、マニホールド本体36の右側面の下端部における前後方向の中央には、ガス導入口36Aが下方に突出するように形成されている。マニホールド本体36の右側面には、複数のガス電磁弁36Vが組み付けられている。
【0046】
図7に示すように、マニホールド本体36の左側面には、流路60Cが凹設されている。
図5に示すように、マニホールドカバー37は、マニホールド本体36の左側面に締結されて、流路60Cを覆っている。
【0047】
ガス導入口36Aには、図示しないガス供給管、元ガス電磁弁、ガス比例弁等を通過した燃料ガスが導入される。燃料ガスは、都市ガスやプロパンガス等である。ガス導入口36Aに導入された燃料ガスは、流路60Cを通過する。流路60Cは、複数に分岐し、燃焼装置30の複数のガスバーナに燃料ガスを供給する。複数のガス電磁弁36Vは、流路60Cの途中において、各ガスバーナへの燃料ガスの供給を調整する。
【0048】
燃焼装置30は、燃焼ファン30Fによって燃焼室内に燃焼用空気を供給し、各ガスバーナから吐出する燃料ガスを燃焼させることにより、高温の燃焼ガスを生成する。
【0049】
<主熱交換器及び副熱交換器>
図2及び
図3に示すように、給湯器1は、主熱交換器41及び副熱交換器42を備えている。主熱交換器41及び副熱交換器42は、本発明の「熱交換器」の一例である。
【0050】
主熱交換器41及び副熱交換器42は、筐体8に収容されている。主熱交換器41は、燃焼装置30よりも上方に位置している。副熱交換器42は、主熱交換器41よりも上方に位置している。
【0051】
図3に示すように、主熱交換器41は、缶体41Bを有している。缶体41Bは、上面側と下面側とが開放されている。缶体41Bの下面側は、燃焼装置30の上面側に接続されている。燃焼装置30によって生成された燃焼ガスは、缶体41Bの内部を通過する。
【0052】
主熱交換器41は、内部に図示しない伝熱管及び複数の伝熱フィンを有している。主熱交換器41は、伝熱管内を流通する水と、缶体41Bの内部を通過する燃焼ガスとの間で熱交換を行い、燃焼ガスの顕熱を吸収する。
【0053】
副熱交換器42は、外箱42Bを有している。
図2に示すように、外箱42Bの前面の上部には、排気口49が設けられている。排気口49は、略円筒状をなして前方に突出している。
図1に示すように、排気口49は、前板89の上端部に貫設された円形開口を通過して、筐体8の前面に露出している。
【0054】
図3に示すように、外箱42Bは、下面側が開放されており、その下面側が主熱交換器41の缶体41Bの上面側に接続されている。缶体41Bを通過した燃焼ガスは、外箱42Bの内部を通過した後、排気口49を経由して筐体8の外部に排気される。
【0055】
副熱交換器42は、図示しない伝熱管を有している。伝熱管は、複数の直線部分と、円弧状に折り返して各直線部分を連通させる複数の折り返し部分とを含んで蛇行するコルゲート管である。
【0056】
副熱交換器42は、伝熱管内を流通する水と、缶体41Bの内部を通過する燃焼ガスとの間で熱交換を行い、燃焼ガスの潜熱を吸収する。
【0057】
図1に示すように、筐体本体80の底壁83の下面側には、給水ポートP1、給湯ポートP2等が保持されている。
【0058】
図2に示すように、外部の給水源から供給されて給水ポートP1を通過した水は、水量制御部45等を通過し、給水管P1Aを経由して、副熱交換器42の伝熱管に流入する。副熱交換器42の伝熱管から流出する加熱途中の水は、中間給水管P1Bを経由して、主熱交換器41の伝熱管に流入する。主熱交換器41の伝熱管から流出する湯は、図示しない給湯管を経由して給湯ポートP2に到達する。
【0059】
こうして、主熱交換器41及び副熱交換器42は、それぞれの内部を通過する水を燃焼ガスにより加熱して湯に変換する。そして、給湯器1は、給湯ポートP2を経由して、給湯器1が設置される住宅の台所や浴室にある水栓金具等に給湯する。
【0060】
<燃焼装置、主熱交換器及び副熱交換器が筐体本体に固定される構成>
図3に示すように、燃焼装置30と、主熱交換器41の缶体41Bと、副熱交換器42の外箱42Bと、が接続されることにより、燃焼装置30、主熱交換器41及び副熱交換器42は、一つの組立構造物を構成している
【0061】
燃焼装置30の底面には、固定金具93Aが締結されている。固定金具93Aは、燃焼装置30の後面よりも下方において屈曲して下方に延びている。固定金具93Aにおける下方に延びる部分には、固定金具93Bが締結されている。
【0062】
固定金具93Bは、前後方向から見て逆U字形状に折り曲げられており、後方に突出している。固定金具93Bの後端部には、後壁81に沿う複数の屈曲片が形成されている。固定金具93Bの複数の屈曲片は、後壁81に締結されている。
【0063】
副熱交換器42の外箱42Bの上面側における排気口49に近い部分には、固定金具91が締結されている。固定金具91は、左右方向から見て逆U字形状に折り曲げられている。固定金具91の上部分は、上壁82に沿って左右方向に延びている。固定金具91の上部分は、上壁82に締結されている。
【0064】
副熱交換器42の外箱42Bの後面には、固定金具92が締結されている。固定金具92は略矩形板であり、後壁81に沿って左右方向に延びている。固定金具92は、後壁81に締結されている。
【0065】
こうして、燃焼装置30、主熱交換器41及び副熱交換器42は、筐体本体80の後壁81及び上壁82に固定された状態で筐体8に収容されている。
【0066】
<中和器>
図2~
図4に示すように、給湯器1は、中和器50を備えている。中和器50は、筐体8に収容され、燃焼装置30よりも下方に位置している。中和器50は、底壁83に直に載置されている。中和器50は、中和器本体51及び蓋体52を有している。
【0067】
図4に示すように、中和器本体51は、上面が開放され、内部にドレン水を中和するための空間が形成された略箱状の樹脂成形品である。中和器本体51は、前壁59を有している。前壁59は、ドレン水を中和するための空間を前方から区画している。
【0068】
蓋体52は略平板形状であり、その一部の領域に箱状膨出部53が形成された樹脂成形品である。蓋体52は、その外周縁が中和器本体51の上端部の周縁に接合されて中和器本体51を覆うことにより、ドレン水を中和するための空間を上方から区画している。箱状膨出部53は、蓋体52の後部分から略箱形状をなして上方に膨出している。
【0069】
蓋体52は、オーバーフロー水導入口54A及びドレン水導入口54Bを有している。オーバーフロー水導入口54Aは、蓋体52の前部分から円筒状をなして上方に突出している。ドレン水導入口54Bは、蓋体52の箱状膨出部53の上面から円筒状をなして上方に突出している。
【0070】
オーバーフロー水導入口54Aは、図示しないオーバーフロー水配管を経由して、図示しないシスターンのオーバーフロー水排出口と接続している。シスターンは、暖房回路の循環水を貯留する容器である。ドレン水導入口54Bは、図示しないドレン水配管を経由して、副熱交換器42の図示しないドレン水排出口と接続している。
【0071】
図1及び
図4に示すように、筐体本体80の底壁83の下面側には、ドレン水排出ポートP3がネジによって締結されている。中和器本体51の底壁には、図示しないドレン水排出口が下方に突出するように形成されている。中和器本体51のドレン水排出口は、底壁83の図示しない挿通穴を通過して、ドレン水排出ポートP3に内挿されている。
【0072】
図4に示すように、中和器本体51は、大気開放用接続口54Cを有している。大気開放用接続口54Cは、前壁59の下端部から円筒状をなして前方に突出している。
図1に示すように、中和器50の排水側は、大気開放用接続口54C及び接続管P4を経由して図示しない大気開放弁と接続している。
【0073】
副熱交換器42で燃焼ガス中の水蒸気が結露することにより生じたドレン水は、図示しないドレン水配管と、ドレン水導入口54Bと、を経由して中和器50内に導入される。中和器50は、そのドレン水を中和し、ドレン水排出口及びドレン水排出ポートP3を経由して筐体8の外部に排出する。
【0074】
<中和器の底壁側が筐体本体に固定される構成>
図3に示すように、中和器本体51の右壁は、周辺部材との干渉を避けるため、その前部分に対して後部分が複数の段状をなして左方に凹んでいる。
【0075】
図3及び
図4に示すように、中和器本体51の右壁における前方かつ下方に位置する角部には、被固定片51Aが右方に突出するように形成されている。被固定片51Aには、図示しないネジ挿通穴が前後方向に貫設されている。
【0076】
筐体本体80の底壁83には、被固定片51Aよりも後方に位置する部分が上方に切り起されてなる固定片83Aが形成されている。
【0077】
中和器50が筐体本体80の底壁83に載置された状態で、被固定片51Aが固定片83Aに前方から当接する。この状態で、前方からネジが被固定片51Aのネジ挿通穴に挿入され、さらに固定片83Aにねじ込まれることにより、中和器50の底壁側が筐体本体80の底壁83に固定されている。
【0078】
図示は省略するが、中和器本体51のドレン水排出口が通過する底壁83の挿通穴は、ドレン水排出口の外周面に対して十数mm程度の隙間を有している。
【0079】
被固定片51Aを固定片83Aに締結するネジを取り外し、また、ドレン水排出ポートP3を底壁83に締結するネジを取り外して中和器本体51のドレン水排出口及び底壁83からドレン水排出ポートP3を分離することにより、中和器50の底壁側が筐体本体80の底壁83に対して前方に十数mm程度スライド可能となる。
【0080】
<燃焼装置の一部が中和器の位置ずれを規制する構成>
筐体本体80に固定された状態で筐体8に収容された燃焼装置30は、本発明の「特定手段」の一例である。
図6~
図8に示すように、燃焼装置30のマニホールド本体36は、連結基部60を有している。
【0081】
以下に説明するように、連結基部60は、後述する固定具100の被連結部106と連結することで固定具100を経由して中和器50の位置ずれを規制する。
【0082】
連結基部60は、マニホールド本体36における前方かつ下方に位置する部分である。
図6に示すように、連結基部60は、中和器50の前壁59よりも前方に位置している。
【0083】
図7に示すように、連結基部60は、流路60Cの前端部分を有している。また、連結基部60は、流路60Cの前端部分よりも下方に位置する部分が下方に向かって膨出しており、その膨出部分60Bが左方に突出する円柱60Aを有している。燃焼装置30のマニホールド本体36は、連結基部60に形成された第1嵌合部61及び第1係合部62を有している。
【0084】
第1嵌合部61は、連結基部60の前端縁から前方に突出する円柱である。第1嵌合部61の前面の外周縁は、面取り加工されている。
【0085】
本実施例では、第1嵌合部61の突出長さは13mm程度であり、第1嵌合部61の外径は12mm程度である。本実施例では、第1嵌合部61の中心は、前後方向に水平に延びている。
【0086】
第1嵌合部61には、その中心に沿ってネジ穴61A及び圧力測定用細孔61Bが形成されている。ネジ穴61Aは、第1嵌合部61の前面から後方に延びている。圧力測定用細孔61Bの前端は、ネジ穴61Aの後端に接続している。圧力測定用細孔61Bの後端は、流路60Cの前端部分に接続している。
【0087】
通常は、ネジ穴61Aにシールネジ61Sがねじ込まれることにより、圧力測定用細孔61Bが塞がれている。給湯器1のメンテナンス作業を行う作業者は、ネジ穴61Aからシールネジ61Sを取り外し、圧力測定器の接続端部をネジ穴61Aにねじ込むことにより、流路60C内の圧力を測定できる。
【0088】
つまり、第1嵌合部61は、流路60C内の圧力の測定を補助する機能を発揮するように構成されている。流路60C内の圧力の測定を補助する機能は、本発明の「第2嵌合部と凹凸嵌合する機能とは別の機能」の一例である。
【0089】
図7及び
図8に示すように、第1係合部62は、円柱60Aの左面から連結基部60の膨出部分60B内かつ右方に凹み、さらに膨出部分60Bを貫通する丸穴である。第1係合部62は、円柱60Aの左面側において面取り加工されている。
【0090】
本実施例では、第1係合部62の内径は、3.5mm程度であり、面取り加工は0.5mm程度である。本実施例では、第1係合部62の中心は、左右方向に水平に延びている。
【0091】
左右方向は、本発明の「前後方向に直交する係合方向」の一例である。左右方向における左方は、本発明の「係合方向の一方」の一例である。左右方向における右方は、本発明の「係合方向の他方」の一例である。
【0092】
図5及び
図7に示すように、中和器50は、被連結凸部55を有している。被連結凸部55は、箱状膨出部53の上面における前方かつ右方の角部から上方に向かって突出し、かつ前後方向に延びる板状片である。
【0093】
図7に示すように、被連結凸部55の前端縁及び後端縁には、補強リブ55A、55Bが左方から接続している。被連結凸部55の上端部には、ネジ挿通穴55Hが左右方向に貫設されている。
【0094】
図5~
図8に示すように、給湯器1は、固定具100をさらに備えている。固定具100は、鋼板等の金属板材が打ち抜き加工、バーリング加工、折り曲げ加工等されてなる。
【0095】
図7に示すように、固定具100は、中和器連結部105、中間部101及び被連結部106を有している。
【0096】
中和器連結部105は、上下方向及び前後方向に延びる矩形平板形状である。中和器連結部105の上部分には、ネジ穴105Hが形成されている。ネジ穴105Hは、中和器連結部105の上部分の中央がバーリング加工されて右方に短く突出する円筒の内周に雌ネジが形成されてなる。
【0097】
中和器連結部105は、当接片105Aを有している。当接片105Aは、中和器連結部105の前端縁におけるネジ穴105Hよりも下方に位置する部分から左方に屈曲し、かつ上下方向に延びる板状片である。
【0098】
中間部101は、中和器連結部105の上端縁に接続し、上下方向及び前後方向に延びる矩形平板形状である。中和器連結部105及び中間部101は、左右方向から見てL字形状である。中間部101の前後方向の長さは、中間部101の上下方向の長さ、及び中和器連結部105の上下方向の長さ、よりも大幅に大きい。
【0099】
被連結部106は、第1部分110、第2部分120及び第3部分130を有している。
【0100】
第1部分110は、前後方向から見てT字形状である。第2部分120は、第1部分110における上部分よりも幅が狭い下部分の左端縁に接続して後方に延びている。第3部分130は、第1部分110の下部分の右端縁に接続して、換言すると、第2部分120から右方に離隔する位置で第1部分110に接続して、後方に延びている。
【0101】
被連結部106は、第1部分110の左端縁が中間部101の前端縁に接続することにより、中間部101を介して中和器連結部105と一体をなしている。被連結部106は、中和器連結部105から前方に離隔する位置にある。
【0102】
中間部101には、補強凸条101Cが形成されている。補強凸条101Cは、右方に凹み、かつネジ穴105Hよりも上方に位置する部分から中間部101の前端縁まで前後方向に延びて、中間部101を補強している。
【0103】
第1部分110の上部分の左側には、補強凸条110Cが形成されている。補強凸条110Cは、後方に凹み、かつ第1部分110の左端縁まで左右方向に延びて、第1部分110を補強している。
【0104】
補強凸条101Cの前端と補強凸条110Cの左端とが接続することにより、中間部101と第1部分110との接続部を補強している。
【0105】
図5に示すように、中和器連結部105が中和器50の被連結凸部55に右方から当接する状態で、ネジ105Sが左方から被連結凸部55のネジ挿通穴55Hに挿入され、さらに中和器連結部105のネジ穴105Hにねじ込まれることにより、中和器連結部105が中和器50の被連結凸部55と連結している。
【0106】
この状態で、中和器連結部105の当接片105Aは、補強リブ55Aに前方から当接する。これにより、当接片105Aは、被連結部106を下方に移動させるような固定具100のネジ105S周りの回転を規制する一方、その逆向きの回転を許容する。
【0107】
図7に示すように、固定具100は、被連結部106に形成された第2嵌合部111、変形部121及び第2係合部122を有している。
【0108】
第2嵌合部111は、第1部分110の上部分の右側に形成されている。第2嵌合部111は、第1部分110の一部がバーリング加工されて前方に短く突出するように形成された円筒である。第2嵌合部111の内径は、第2嵌合部111が第1嵌合部61に嵌合可能、かつ第2嵌合部111が第1嵌合部61に対して前後方向にスライド可能な大きさに設定されている。
【0109】
つまり、第2嵌合部111は、前方に突出する第1嵌合部61に整合するように、被連結部106の第1部分110内かつ前方に凹み、さらに第1部分110を貫通している。
図5、
図6及び
図8に示すように、第2嵌合部111は、第1嵌合部61と凹凸嵌合可能である。
【0110】
凹凸嵌合する第1嵌合部61及び第2嵌合部111は、連結基部60に対して被連結部106が上下方向及び幅方向において位置ずれすることを規制する。
【0111】
図6に示すように、被連結部106は、第1嵌合部61と第2嵌合部111とが凹凸嵌合する状態で、中和器50の前壁59よりも前方に位置している。
【0112】
図7及び
図8に示すように、変形部121及び第2係合部122は、第2部分120に形成されている。
【0113】
変形部121は、前後方向及び上下方向に延びる矩形平板形状であり、第2部分120の前部分を構成している。変形部121の前端縁は、第1部分110の下部分の左端縁に接続している。
【0114】
第2係合部122は、変形部121の中央がプレス加工されて右方に短く突出する凸部である。第2係合部122の右側を向く面は、球面の一部のように湾曲している。第2係合部122の大きさは、第2係合部122が第1係合部62に係合可能な大きさに設定されている。
【0115】
具体的には、
図8に示すように、第2係合部122の外周面は、第1係合部62における面取り加工された斜面に当接可能である。その状態で、第2係合部122の頂点は、第1係合部62の中心に位置して第1係合部62における円筒状の内周面に囲まれた空間に進入する。
【0116】
つまり、第2係合部122は、右方に凹む第1係合部62に整合するように、被連結部106の第2部分120の変形部121から右方に突出している。第2係合部122は、第1係合部62と凹凸係合可能である。
【0117】
凹凸係合する第1係合部62及び第2係合部122は、連結基部60に対して被連結部106が少なくとも前後方向に位置ずれすることを規制する。
【0118】
変形部121は、後端縁が前端縁に対して左方又は右方に変位するように弾性可能である。変形部121は、弾性変形によって第2係合部122を左右方向に変位させる。
【0119】
図7及び
図8に示すように、第2部分120は、案内部125を有している。案内部125は、第2部分120における変形部121及び第2係合部122よりも後方に位置する矩形平板形状の部分である。案内部125の前端縁は、変形部121の後端縁に接続している。案内部125は、後方かつ左方に傾斜している。
【0120】
作業者は、案内部125を把持して左方に動かすことにより、変形部121について、後端縁が前端縁に対して左方に変位するように弾性変形させることができる。このような変形部121の弾性変形によって第2係合部122を左方に変位させて第1係合部62から離隔させれば、第1係合部62と第2係合部122との凹凸係合を容易に解除できる。
【0121】
図6及び
図8に示すように、第3部分130は、当接部133及び対向案内部135を有している。
【0122】
当接部133は、前後方向及び上下方向に延びる矩形平板形状であり、第3部分130の前部分を構成している。当接部133の前端縁は、第1部分110の下部分の右端縁に接続している。
【0123】
当接部133は、第1係合部62と第2係合部122とが凹凸係合する状態で、
連結基部60の膨出部分60Bの右面に右方から当接する。つまり、当接部133は、第2係合部122と共に膨出部分60Bを挟持する。
【0124】
対向案内部135は、第3部分130における当接部133よりも後方に位置する矩形平板形状の部分である。対向案内部135の前端縁は、当接部133の後端縁に接続している。対向案内部135は、後方かつ右方に傾斜している。
【0125】
案内部125と対向案内部135とは、左右方向において互いに対向し、かつ互いの後端縁が離隔する距離が互いの前端縁が離隔する距離よりも大きくなるように傾斜している。
【0126】
これにより、第2嵌合部111を第1嵌合部61よりも前方の位置から後方にスライドさせて第1嵌合部61と第2嵌合部111とを凹凸嵌合させるときに、案内部125と対向案内部135とが連結基部60の膨出部分60Bに対して左右方向の外側に位置して膨出部分60Bに摺接しながら、第2係合部122を第1係合部62に向けて好適に案内できる。
【0127】
この際、第2係合部122が膨出部分60Bの円柱60Aの左面に乗り上げるときに変形部121が弾性変形して復元力を蓄え、第2係合部122が第1係合部62に係合し始めたときに復元力を開放することで、第1係合部62と第2係合部122とを確実性高く凹凸係合させることができる。
【0128】
<作用効果>
実施例1の給湯器1において、中和器50が筐体本体80に取り付けられた状態で、中和器50が載置される底壁83が中和器50の重量を支持し、固定具100の中和器連結部105が中和器50の被連結凸部55と連結する。
【0129】
そして、燃焼装置30のマニホールド本体36の連結基部60と固定具100の被連結部106とは、第1嵌合部61と第2嵌合部111とが凹凸嵌合し、また、第1係合部62と第2係合部122とが凹凸係合することにより連結する。
【0130】
この際、第1嵌合部61及び第2嵌合部111は、連結基部60に対して被連結部106が上下方向及び幅方向において位置ずれすることを規制する。また、第1係合部62及び第2係合部122は、連結基部60に対して被連結部106が少なくとも前後方向に位置ずれすることを規制する。
【0131】
その結果、中和器50は、連結基部60及び固定具100によって、前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれが確実性高く規制される。
【0132】
一方、被連結部106に形成された変形部121の弾性変形によって第2係合部122を左方に変位させて第1係合部62から離隔させれば、第1係合部62と第2係合部122との凹凸係合を容易に解除できる。そして、第2嵌合部111を第1嵌合部61に対して前方に10数mm程度スライドさせることにより、第1嵌合部61と第2嵌合部111との凹凸嵌合を容易に解除できる。
【0133】
つまり、この給湯器1は、連結基部60と固定具100の被連結部106との連結にビス等の締結手段が不要であり、連結基部60と固定具100の被連結部106との連結及び連結の解除を容易に実施できる。
【0134】
これにより、この給湯器1のメンテナンス作業を行う作業者は、以下に説明するように、固定具100が連結した状態の中和器50を筐体本体80から前方に取り出すことを容易に実施できる。
【0135】
初めに、
図2に示すように、作業者は、前板89を筐体本体80から取り外し、中和器50よりも前方に位置する制御部、接続管P4、中和器50のオーバーフロー水導入口54A及びドレン水導入口54Bにそれぞれ接続する2本の配管等を取り外す。
【0136】
そして、
図4に示すように、作業者は、中和器50の被固定片51Aを底壁83の固定片83Aに締結するネジを取り外し、また、ドレン水排出ポートP3を中和器本体51のドレン水排出口及び底壁83から分離する。これにより、中和器50の底壁側が筐体本体80の底壁83に対して前方に十数mm程度スライド可能となる。
【0137】
次に、作業者は、案内部125を把持して変形部121を左方に弾性変形させて、第1係合部62と第2係合部122との凹凸係合を解除する。そして、作業者は、中和器50の底壁側を筐体本体80の底壁83に対して前方にスライドさせたり、中和器50の蓋体52側が前方に移動するように中和器50を傾斜させたりすることにより、固定具100の第2嵌合部111を第1嵌合部61に対して前方にスライドさせて、第1嵌合部61と第2嵌合部111との凹凸嵌合を解除する。
【0138】
こうして、作業者は、固定具100の中和器連結部105が中和器50の被連結凸部55とネジ105Sの締結によって連結したままで、連結基部60と固定具100の被連結部106との連結を容易に解除することができる。そして、作業者は、固定具100が連結した状態の中和器50を少し持ち上げて筐体本体80から前方に取り出すことを容易に実施できる。
【0139】
また、作業者は、その逆の動作により、固定具100が連結した状態の中和器50を筐体本体80に取り付け、中和器50を底壁83に載置することを容易に実施できる。
【0140】
つまり、作業者は、筐体本体80の前に位置して手を前後方向に動かす動作を主に行うことで、固定具100が連結した状態の中和器50の筐体本体80に対する取り付け及び取り外しを実施できる。
【0141】
したがって、実施例1の給湯器1は、中和器50について、筐体本体80に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体80に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる。
【0142】
また、この給湯器1において、
図7に示すように、被連結部106は、第2嵌合部111が形成された第1部分110と、第1部分110に接続して後方に延び、変形部121及び第2係合部122が形成された第2部分120と、を有している。そして、第2部分120は、第2部分120における第2係合部122よりも後方に位置する部分に、後方かつ左方に傾斜する案内部125を有している。この構成により、第2嵌合部111を第1嵌合部61よりも前方の位置から後方にスライドさせて第1嵌合部61と第2嵌合部111とを凹凸嵌合させるときに、案内部125が連結基部60の膨出部分60Bにおける円柱60Aの左面に摺接しながら、第2係合部122を第1係合部62に向けて好適に案内できるので、第1係合部62と第2係合部122とを確実性高く凹凸係合させることができる。また、作業者は、案内部125を把持して第2部分120の変形部121を左方に弾性変形させることで第2係合部122を第1係合部62から容易に離隔させることができるので、第1係合部62と第2係合部122との凹凸係合を一層容易に解除できる。
【0143】
さらに、この給湯器1において、被連結部106は、第2部分120から右方に離隔する位置で第1部分110に接続して後方に延びる第3部分130を有している。第3部分130は、第1係合部62と第2係合部122とが凹凸係合する状態で、連結基部60の膨出部分60Bに右方から当接する当接部133を有している。そして、第3部分130は、第3部分130における当接部133よりも後方に位置する部分に、後方かつ右方に傾斜する対向案内部135を有している。この構成により、第2嵌合部111を第1嵌合部61よりも前方の位置から後方にスライドさせて第1嵌合部61と第2嵌合部111とを凹凸嵌合させるときに、案内部125と対向案内部135とが連結基部60の膨出部分60Bに対して左右方向の外側に位置して膨出部分60Bに摺接しながら、第2係合部122を第1係合部62に向けて好適に案内できるので、第1係合部62と第2係合部122とを一層確実性高く凹凸係合させることができる。また、第1係合部62と第2係合部122とが凹凸係合する状態で、第2係合部122と当接部133とが連結基部60を左右方向において挟持するので、第2係合部122が第1係合部62から外れ難い。
【0144】
また、この給湯器1において、
図6に示すように、被連結部106及び連結基部60は、中和器50の前壁59よりも前方に位置している。この構成により、作業者は、固定具100が連結した状態の中和器50の筐体本体80に対する取り付け及び取り外しを実施するときに、筐体本体80の前に位置して手を前後方向に動かす動作について、主に自分に近い場所でそれ程手を延ばさずに行うことができる。その結果、この給湯器1は、メンテナンス性の一層の向上を実現できる。
【0145】
さらに、この給湯器1において、
図1に示すように、筐体8の前後方向の長さL1は、筐体8の幅方向の長さL2よりも大きい。つまり、この給湯器1は、狭小設置型給湯器又はスリム給湯器と呼ばれる給湯器である。そして、作業者は、固定具100が連結した状態の中和器50の筐体本体80に対する取り付け及び取り外しを実施するときに、筐体8内で中和器50を幅方向に動かし難い。このため、この給湯器1は、本発明の作用効果を確実性高く享受できる。
【0146】
また、この給湯器1において、
図7に示すように、第1嵌合部61は、第2嵌合部111と凹凸嵌合する機能とは別の機能も発揮するように構成されている。別の機能は、燃焼装置30のマニホールド本体36に凹設された流路60C内の圧力の測定を補助する機能である。この構成により、仮に第1嵌合部61が第2嵌合部111と凹凸嵌合する機能のみを発揮する場合と比較して、部品点数を確実性高く削減できる。
【0147】
(実施例2)
図9及び
図10に示すように、実施例2の給湯器では、実施例1に係る固定具100について、被連結部106の代わりに、被連結部206を有するように変更している。
【0148】
また、
図10に示すように、この給湯器では、実施例1に係るマニホールド本体36について、第1嵌合部61及び第1係合部62の代わりに、連結基部60に形成された第1嵌合部261及び第1係合部262を有するように変更している。なお、第1嵌合部61は、流路60C内の圧力の測定を補助する機能のために残してある。
【0149】
実施例2のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0150】
第1嵌合部261は、連結基部60における第1嵌合部61よりも下方に位置する前面から連結基部60内かつ後方に凹む有底丸穴である。第1嵌合部261の開口縁は、面取り加工されている。第1嵌合部261の中心は、前後方向に水平に延びている
【0151】
第1係合部262は、連結基部60の膨出部分60Bの左面から左方に短く突出する凸部である。第1係合部262の左側を向く面は、球面の一部のように湾曲している。
【0152】
図9に示すように、固定具100の被連結部206において、第1部分110は、実施例1に係る第2嵌合部111が形成された上部分の右側が削除されている。第1部分110の下部分の左端縁には、第2部分120が接続している。第1部分110の下部分の右端縁には、第3部分130が接続している。そして、固定具100は、実施例1に係る第2嵌合部111の代わりに、被連結部206に形成された第2嵌合部211を有している。第2嵌合部211は、第1部分110の下部分の中央に形成されている。
【0153】
第2嵌合部211は、第1部分110の一部がバーリング加工されて後方に突出するように形成された円筒である。
図10に示すように、第2嵌合部211の外径は、第2嵌合部211が第1嵌合部261に嵌合可能、かつ第2嵌合部211が第1嵌合部261に対して前後方向にスライド可能な大きさに設定されている。
【0154】
つまり、第2嵌合部211は、後方に凹む第1嵌合部261に整合するように、被連結部206の第1部分110から後方に突出している。第2嵌合部211は、第1嵌合部261と凹凸嵌合可能である。
【0155】
凹凸嵌合する第1嵌合部261及び第2嵌合部211は、連結基部60に対して被連結部206が上下方向及び幅方向において位置ずれすることを規制する。
【0156】
図9及び
図10に示すように、固定具100は、実施例1に係る第2係合部122の代わりに、被連結部206に形成された第2係合部222を有している。第2係合部222は、第2部分120に形成されている。
【0157】
第2係合部222は、変形部121の中央がバーリング加工されて左方に短く突出するように形成された円筒である。第2係合部222の大きさは、第2係合部222が第1係合部262に係合可能な大きさに設定されている。
【0158】
つまり、第2係合部222は、左方に突出する第1係合部262に整合するように、被連結部206の第2部分120の変形部121内かつ左方に凹み、さらに変形部121を貫通している。第2係合部222は、第1係合部262と凹凸係合可能である。
【0159】
凹凸係合する第1係合部262及び第2係合部222は、連結基部60に対して被連結部206が少なくとも前後方向に位置ずれすることを規制する。
【0160】
このような構成である実施例2の給湯器は、実施例1の給湯器1と同様に、中和器50について、筐体本体80に取り付けられた状態で前後方向、上下方向及び幅方向の位置ずれを確実性高く規制できるとともに、筐体本体80に対する取り付け及び取り外しの作業の容易化を実現できる。
【0161】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0162】
実施例1、2では、第1嵌合部61、261の中心は、前後方向に水平に延びているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、第1嵌合部の中心は、水平に対して若干傾斜しつつ前後方向に延びていてもよい。
【0163】
実施例1、2では、係合方向が左右方向(幅方向)であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、係合方向は、上下方向であってもよい。また、係合方向は、前後方向に直交し、かつ上下方向及び左右方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【0164】
実施例1、2では、特定手段が燃焼装置30であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、特定手段は、熱交換器であってもよいし、燃焼装置、熱交換器及び中和器とは異なる装置又は部材であってもよい。
【0165】
実施例1、2では、中和器50が底壁83に直に載置されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、中和器は、筐体本体の底壁の上面側に組み付けられた台座によって下から支持されることにより、底壁に間接的に載置されていてもよい。
【0166】
実施例1、2では、被連結部106、206は、金属板材の折り曲げ加工等によって、中和器連結部105と一体をなしているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、被連結部は、複数の部材の締結や溶接等によって、中和器連結部と一体をなしていてもよい。
【0167】
実施例1、2では、固定具100は金属製であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、固定具は、樹脂製、又は繊維強化樹脂製であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は例えば、給湯機能のみを有する給湯器、給湯機能と風呂追焚機能とを有する給湯器、給湯機能と、暖房機器との間で湯水を循環させる機能とを有する給湯暖房機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0169】
1…給湯器
30…燃焼装置(特定手段)
41、42…熱交換器(41…主熱交換器、42…副熱交換器)
50…中和器
81…後壁
82…上壁
83…底壁
84L、84R…一対の側壁
80…筐体本体
80H…筐体開口
89…前板
8…筐体
105…中和器連結部
106、206…被連結部
100…固定具
60…連結基部
61、261…第1嵌合部
62、262…第1係合部
111、211…第2嵌合部
122、222…第2係合部
121…変形部
110…第1部分
120…第2部分
125…案内部
130…第3部分
133…当接部
135…対向案内部
59…前壁
L1…筐体の前後方向の長さ
L2…筐体の幅方向の長さ
60C…流路