(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027785
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの調整方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240222BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240222BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240222BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240222BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240222BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
G02B7/02 Z
G03B5/00 Z
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
G03B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130882
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
【テーマコード(参考)】
2H044
2H045
2H141
2K203
5D107
【Fターム(参考)】
2H044AJ07
2H045AB02
2H045AB03
2H045AB38
2H141MA12
2H141MB23
2H141MB24
2H141MC05
2H141MD12
2H141MD16
2H141MD23
2H141MD24
2H141MD40
2K203GB13
2K203GB62
2K203MA35
5D107AA07
5D107BB20
5D107CC09
5D107CC10
5D107DD11
5D107DE02
(57)【要約】
【課題】光学要素を保持する可動体と可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、固定体に対して可動体を振動させるアクチュエータにおいて、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、構成を簡素化することが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1では、可動体3に固定される保持用磁石7に磁気的に吸引される被吸引部材8は、平板状に形成され被吸引部材8の厚さ方向において保持用磁石7の一方側に配置されるとともに固定体4に固定されている。固定体4には、被吸引部材8が配置される被吸引部材配置穴4eが形成されており、被吸引部材8の厚さ方向における被吸引部材配置穴4eの幅は、被吸引部材8の厚さの2倍以上となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学要素を保持する可動体と、前記可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに前記可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、前記固定体に対して前記可動体を振動させるアクチュエータであって、
前記固定体に対する前記可動体の回動方向である可動体回動方向において前記固定体に対して前記可動体を一定位置で保持するための永久磁石である保持用磁石と、軟磁性体または永久磁石によって構成されるとともに前記保持用磁石に磁気的に吸引される被吸引部材とを備え、
前記保持用磁石は、前記可動体および前記固定体のいずれか一方に固定され、
前記可動体および前記固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、
前記被吸引部材は、平板状に形成され前記被吸引部材の厚さ方向において前記保持用磁石の一方側に配置されるとともに、前記可動体および前記固定体のいずれか他方に固定され、
前記可動体および前記固定体のいずれか他方には、前記被吸引部材が配置される被吸引部材配置穴が形成され、
前記被吸引部材の厚さ方向における前記被吸引部材配置穴の幅は、前記被吸引部材の厚さの2倍以上となっていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記被吸引部材の厚さ方向における前記被吸引部材配置穴の幅は、前記被吸引部材の厚さの4倍以上となっていることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記被吸引部材配置穴は、前記被吸引部材の厚さ方向に直交する第1方向において前記可動体および前記固定体のいずれか他方を貫通する貫通穴であることを特徴とする請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
光学要素を保持する可動体と、前記可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに前記可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、前記固定体に対して前記可動体を振動させるアクチュエータであって、前記固定体に対する前記可動体の回動方向である可動体回動方向において前記固定体に対して前記可動体を一定位置で保持するための永久磁石である保持用磁石と、軟磁性体または永久磁石によって構成されるとともに前記保持用磁石に磁気的に吸引される被吸引部材とを備え、前記保持用磁石は、前記可動体および前記固定体のいずれか一方に固定され、前記可動体および前記固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、前記被吸引部材は、平板状に形成され前記被吸引部材の厚さ方向において前記保持用磁石の一方側に配置されるとともに、前記可動体および前記固定体のいずれか他方に固定され、前記可動体および前記固定体のいずれか他方には、前記被吸引部材が配置される被吸引部材配置穴が形成されているアクチュエータの調整方法であって、
前記被吸引部材配置穴に配置される前記被吸引部材の枚数を変更することで、または、
非磁性体からなる平板状の非磁性板を、前記被吸引部材配置穴に配置される前記被吸引部材と前記保持用磁石との間であってかつ前記被吸引部材配置穴の中に配置して前記被吸引部材の厚さ方向における前記被吸引部材と前記保持用磁石との距離を変更することで、あるいは、
前記被吸引部材配置穴に配置される前記被吸引部材を、軟磁性体によって構成される前記被吸引部材とするのか、それとも、永久磁石によって構成される前記被吸引部材とするのかを選択することで、
前記保持用磁石と前記被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整して、前記アクチュエータの共振周波数を調整することを特徴とするアクチュエータの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学要素を振動させるためのアクチュエータに関する。また、本発明は、かかるアクチュエータの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投射光が透過するガラス板(光学ガラス)を振動させるための画素ずらし装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の画素ずらし装置は、プロジェクタに搭載されている。この画素ずらし装置は、ガラス板が固定されるガラスフレームと、ガラスフレームを回動可能に保持するベースと、ベースに対してガラスフレームを回動させる駆動部とを備えている。駆動部は、ガラスフレームに固定される駆動用磁石と、駆動用磁石に対向配置されるとともにベースに固定される駆動用コイルとを備えている。
【0003】
また、特許文献1に記載の画素ずらし装置は、駆動用コイルが非通電状態であるときに、ベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームを一定位置で保持するための(すなわち、ベースに対してガラスフレームを一定の姿勢で保持するための)制動部を備えている。制動部は、ガラスフレームに固定される1個のフレーム側制動用磁石と、ベースに固定される2個のベース側制動用磁石とを備えている。フレーム側制動用磁石は、2個のベース側制動用磁石の間に挟まれている。駆動用コイルが非通電状態であるときには、フレーム側制動用磁石と2個のベース側制動用磁石との間に生じる磁気的反発力によって、ベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームが一定位置で保持されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の画素ずらし装置は、2個のベース側制動用磁石のそれぞれの位置を調整するための2本のセットスクリューを備えている。この画素ずらし装置では、セットスクリューによってベース側制動用磁石の位置を調整することで、フレーム側制動用磁石とベース側制動用磁石との距離を調整することが可能になっている。すなわち、この画素ずらし装置では、セットスクリューによって、フレーム側制動用磁石とベース側制動用磁石との間に生じる磁気的反発力を調整することが可能になっている。
【0005】
そのため、特許文献1に記載の画素ずらし装置では、駆動用コイルが非通電状態であるときのベースに対するガラスフレームの回動方向におけるガラスフレームの位置を調整することが可能になっている。また、この画素ずらし装置では、フレーム側制動用磁石とベース側制動用磁石との間に生じる磁気的反発力を調整することで、ガラス板およびガラスフレームがベースに対して振動するときの画素ずらし装置の共振周波数を調整することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の画素ずらし装置では、上述のように、ガラス板およびガラスフレームがベースに対して振動するときの画素ずらし装置の共振周波数を調整することが可能になっている。しかしながら、この画素ずらし装置では、画素ずらし装置の共振周波数を調整するために2本のセットスクリューが必要になる。したがって、この画素ずらし装置では、装置の構成が複雑になって装置のコストが高くなるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、光学要素を保持する可動体と可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、固定体に対して可動体を振動させるアクチュエータにおいて、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、構成を簡素化することが可能なアクチュエータを提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題は、光学要素を保持する可動体と可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、固定体に対して可動体を振動させるアクチュエータにおいて、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータの構成を簡素化することが可能となるアクチュエータの調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のアクチュエータは、光学要素を保持する可動体と、可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、固定体に対して可動体を振動させるアクチュエータであって、固定体に対する可動体の回動方向である可動体回動方向において固定体に対して可動体を一定位置で保持するための永久磁石である保持用磁石と、軟磁性体または永久磁石によって構成されるとともに保持用磁石に磁気的に吸引される被吸引部材とを備え、保持用磁石は、可動体および固定体のいずれか一方に固定され、可動体および固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、被吸引部材は、平板状に形成され被吸引部材の厚さ方向において保持用磁石の一方側に配置されるとともに、可動体および固定体のいずれか他方に固定され、可動体および固定体のいずれか他方には、被吸引部材が配置される被吸引部材配置穴が形成され、被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材配置穴の幅は、被吸引部材の厚さの2倍以上となっていることを特徴とする。
【0011】
本発明において、被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材配置穴の幅は、たとえば、被吸引部材の厚さの4倍以上となっている。
【0012】
本発明のアクチュエータでは、保持用磁石に磁気的に吸引される被吸引部材は、平板状に形成されるとともに被吸引部材の厚さ方向において保持用磁石の一方側に配置されている。また、本発明では、可動体および固定体のいずれか他方に、被吸引部材が配置される被吸引部材配置穴が形成されており、被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材配置穴の幅は、被吸引部材の厚さの2倍以上となっている。
【0013】
そのため、本発明では、たとえば、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材の枚数を変更することで、保持用磁石と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整することが可能になる。また、本発明では、たとえば、被吸引部材と同じ厚さの非磁性体からなる平板状の非磁性板を、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材と保持用磁石との間であってかつ被吸引部材配置穴の中に配置して、被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材と保持用磁石との距離を変更することで、保持用磁石と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整することが可能になる。
【0014】
また、本発明では、可動体および固定体のいずれか一方に保持用磁石が固定され、可動体および固定体のいずれか他方に被吸引部材が固定されているため、保持用磁石と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整することで、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能になる。このように、本発明では、被吸引部材の厚さ方向の幅が被吸引部材の厚さの2倍以上となっている被吸引部材配置穴と平板状の被吸引部材とを利用した簡易な構成で、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能になる。したがって、本発明では、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータの構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、被吸引部材配置穴は、被吸引部材の厚さ方向に直交する第1方向において可動体および固定体のいずれか他方を貫通する貫通穴である。この場合には、第1方向における被吸引部材配置穴の一方側が塞がっている場合と比較して、たとえば、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材の枚数を変更するときや、被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材と保持用磁石との距離を変更するときの作業を行いやすくなる。
【0016】
また、上記の課題を解決するため、本発明のアクチュエータの調整方法は、光学要素を保持する可動体と、可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに可動体を回動可能に保持する固定体とを備え、固定体に対して可動体を振動させるアクチュエータであって、固定体に対する可動体の回動方向である可動体回動方向において固定体に対して可動体を一定位置で保持するための永久磁石である保持用磁石と、軟磁性体または永久磁石によって構成されるとともに保持用磁石に磁気的に吸引される被吸引部材とを備え、保持用磁石は、可動体および固定体のいずれか一方に固定され、可動体および固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、被吸引部材は、平板状に形成され被吸引部材の厚さ方向において保持用磁石の一方側に配置されるとともに、可動体および固定体のいずれか他方に固定され、可動体および固定体のいずれか他方には、被吸引部材が配置される被吸引部材配置穴が形成されているアクチュエータの調整方法であって、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材の枚数を変更することで、または、非磁性体からなる平板状の非磁性板を、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材と保持用磁石との間であってかつ被吸引部材配置穴の中に配置して被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材と保持用磁石との距離を変更することで、あるいは、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材を、軟磁性体によって構成される被吸引部材とするのか、それとも、永久磁石によって構成される被吸引部材とするのかを選択することで、保持用磁石と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整して、アクチュエータの共振周波数を調整することを特徴とする。
【0017】
本発明のアクチュエータの調整方法では、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材の枚数を変更することで、または、非磁性体からなる平板状の非磁性板を、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材と保持用磁石との間であってかつ被吸引部材配置穴の中に配置して被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材と保持用磁石との距離を変更することで、あるいは、被吸引部材配置穴に配置される被吸引部材を、軟磁性体によって構成される被吸引部材とするのか、それとも、永久磁石によって構成される被吸引部材とするのかを選択することで、保持用磁石と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整して、アクチュエータの共振周波数を調整している。
【0018】
そのため、本発明のアクチュエータの調整方法でアクチュエータを調整すれば、平板状の被吸引部材と被吸引部材配置穴とを利用した簡易な構成で、または、平板状の被吸引部材と平板状の非磁性板と被吸引部材配置穴とを利用した簡易な構成で、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能になる。したがって、本発明のアクチュエータの調整方法でアクチュエータを調整すれば、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータの構成を簡素化することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のアクチュエータでは、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータの構成を簡素化することが可能になる。また、本発明のアクチュエータの調整方法でアクチュエータを調整すれば、光学要素および可動体が固定体に対して振動するときのアクチュエータの共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータの構成を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるアクチュエータの斜視図である。
【
図3】
図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
【
図6】(A)~(D)は、
図1に示すアクチュエータの共振周波数の調整方法を説明するための図であり、(E)は、本発明の他の実施の形態にかかるアクチュエータの共振周波数の調整方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(アクチュエータの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1の平面図である。
図3は、
図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。
図4は、
図2のE部の拡大図である。
図5は、
図4のF-F断面の断面図である。
【0023】
以下の説明では、
図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、左右方向の一方側である
図1等のX1方向側を「右」側とし、その反対側である
図1等のX2方向側を「左」側とし、前後方向の一方側である
図1等のY1方向側を「前」側とし、その反対側である
図1等のY2方向側を「後ろ」側とし、上下方向の一方側である
図1等のZ1方向側を「上」側とし、その反対側である
図1等のZ2方向側を「下」側とする。
【0024】
本形態のアクチュエータ1は、光学要素としての光学ガラス2を振動させるための装置であり、プロジェクタに搭載されて使用される。光学ガラス2は、光の透過性を有するガラス板であり、正方形の平板状に形成されている。光学ガラス2は、プロジェクタの投射光学系の一部を構成している。アクチュエータ1は、プロジェクタが投影する映像を高画質化するために、光学ガラス2を所定の周波数で一定角度振動させて光学ガラス2の姿勢を周期的に変える。たとえば、アクチュエータ1は、光学ガラス2を60Hzで振動させる。
【0025】
アクチュエータ1は、全体として上下方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されている。アクチュエータ1は、光学ガラス2を保持する可動体3と、可動体3を回動可能に保持する固定体4とを備えている。可動体3および固定体4は、枠状に形成されている。光学ガラス2は、可動体3の内周側に配置されている。可動体3は、固定体4の内周側に配置されている。アクチュエータ1は、固定体4に対して可動体3を振動させる。
【0026】
また、アクチュエータ1は、固定体4に対して可動体3が傾く方向に可動体3を回動させて光学ガラス2を振動させる磁気駆動機構5と、固定体4に対する可動体3の回動の支点となる支点部6と、固定体4に対する可動体3の回動方向である可動体回動方向において固定体4に対して可動体3を一定位置で保持するための保持用磁石7および磁性板8、9とを備えている。
【0027】
本形態では、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用コイル16に電流が供給されていないときに(すなわち、駆動用コイル16が非通電状態であるときに)、可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が所定の基準位置に配置されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、光学ガラス2の厚さ方向と上下方向とが一致している。
【0028】
また、可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、プロジェクタに搭載されたアクチュエータ1では、光学ガラス2の厚さ方向とプロジェクタの投射光学系の光軸方向とが一致しているとともに、プロジェクタの投射光学系の光軸が光学ガラス2の中心を通過する。なお、光学ガラス2が振動するときの固定体4に対する可動体3の回動角度は、たとえば、0.5°未満であって非常に小さい。そのため、光学ガラス2が振動しているのか否かにかかわらず、光学ガラス2の厚さ方向は、上下方向とほぼ一致している。
【0029】
可動体3は、固定体4の外周側から見たときに固定体4に対して可動体3が傾く方向に回動可能となっている。また、可動体3は、光学ガラス2の厚さ方向に直交する第1直交方向(
図2のV方向)を回動の軸方向として固定体4に対して回動可能となっている。すなわち、可動体3は、第1直交方向を軸線方向とする軸線L1(
図2参照)を回動中心にして固定体4に対して回動可能となっている。第1直交方向は、上下方向に直交している。また、第1直交方向は、上側から見たときに、前後方向に対して
図2の時計回りの方向へ45°ずれた方向となっている。光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、軸線L1は、光学ガラス2の中心を通過している。支点部6は、第1直交方向における可動体3の両端側に配置されている。
【0030】
可動体3は、光学ガラス2を保持するガラスホルダである。可動体3は、非磁性材料で形成されている。また、可動体3は、樹脂材料で形成されている。可動体3は、上述のように枠状に形成されている。具体的には、可動体3は、正方形または長方形の枠状に形成されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、外形が正方形状または長方形状をなす可動体3の外周面を構成する4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。
【0031】
可動体3には、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用磁石15が配置される磁石配置凹部3aと、保持用磁石7が配置される磁石配置凹部3bとが形成されている。磁石配置凹部3aは、可動体3の右端から左側に向かって窪んでいる。磁石配置凹部3bは、可動体3の左端から右側に向かって窪んでいる。磁石配置凹部3a、3bは、光学ガラス2の厚さ方向における可動体3の全域に形成されている。また、
図3に示すように、可動体3には、第1直交方向の両側に向かって突出する突起部3cが形成されている。突起部3cは、円柱状に形成されている。円柱状に形成される突起部3cの軸方向は、第1直交方向と一致している。
【0032】
上述のように、光学ガラス2は、可動体3の内周側に配置されている。光学ガラス2は、可動体3に固定されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、外形が正方形状をなす光学ガラス2の外周面を構成する4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。
【0033】
固定体4は、非磁性材料で形成されている。また、固定体4は、樹脂材料で形成されている。固定体4は、上述のように枠状に形成されている。具体的には、固定体4は、正方形または長方形の枠状に形成されている。外形が正方形状または長方形状をなす固定体4の外周面を構成する4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。固定体4には、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用コイル16が配置されるコイル配置凹部4aと、磁性板9が配置される磁性板配置凹部4bとが形成されている。
【0034】
コイル配置凹部4aおよび磁性板配置凹部4bは、固定体4の右辺部に形成されている。コイル配置凹部4aは、固定体4の右辺部の左端から右側に向かって窪んでいる。コイル配置凹部4aは、固定体4の上下方向の全域に形成されている。磁性板配置凹部4bは、コイル配置凹部4aの右側に形成されている。磁性板配置凹部4bは、コイル配置凹部4aよりも右側に窪んでいる。磁性板配置凹部4bは、固定体4の上下方向の全域には形成されておらず、固定体4の右辺部の下端側には、磁性板9が載置される磁性板載置部4cが形成されている(
図2参照)。磁性板載置部4cの上面は、上下方向に直交する平面となっている。
【0035】
また、固定体4には、支点部6の一部を構成する後述の板バネ13が配置されるバネ配置部4dと、磁性板8が配置される磁性板配置穴4eとが形成されている。バネ配置部4dは、正方形または長方形の枠状に形成される固定体4の、一方の対角線上の2個の角部に形成されている。具体的には、バネ配置部4dは、固定体4の右後端の角部と左前端の角部とに形成されている。磁性板配置穴4eは、固定体4の左辺部に形成されている。磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通する貫通穴である。また、磁性板配置穴4eは、前後方向に細長い長方形の角穴である。磁性板配置穴4eの右側面および左側面は、左右方向に直交する平面となっている。
【0036】
支点部6は、球状に形成される球体(ボール)11と、球体11を保持するための球体保持部材12と、球体11の一部に所定の接触圧で接触する凹曲面状の接触面13a(
図3参照)が形成される板バネ13とを備えている。球体11は、セラミックスで形成されている。球体保持部材12は、金属材料で形成されている。球体保持部材12は、筒状に形成される円筒部と筒部の一端に繋がる底部とを有する有底の円筒状に形成されている。球体保持部材12の内径は、球体11の外径よりも大きくなっている。
【0037】
球体保持部材12は、可動体3の突起部3cに固定されている。突起部3cは、第1直交方向の内側から球体保持部材12の内周側に軽圧入されている。球体保持部材12は、接着剤によって突起部3cに固定されている。球体11は、球体保持部材12の内周側に配置されている。球体保持部材12の底部は、突起部3cの先端面よりも第1直交方向の外側に配置されている。突起部3cの先端面と球体保持部材12の底部との間には、球体11を配置するための隙間が形成されている。
【0038】
球体保持部材12の底部には、球体保持部材12の内周側に配置される球体11の一部を球体保持部材12の外部に配置させるための貫通穴が形成されている。この貫通穴の内径は、球体11の外径よりも小さくなっている。球体11は、突起部3cの先端面に形成される凹部の底面に接触するとともに、貫通穴の縁に接触している。球体11の一部は、球体保持部材12の底部よりも第1直交方向の外側に配置されており、球体保持部材12の外部に配置されている。球体11は、突起部3cと球体保持部材12とによって可動体3に保持されている。
【0039】
板バネ13は、バネ性を有するステンレス鋼板等の金属板を所定形状に折り曲げることで形成されている。板バネ13は、U形状に形成されている。板バネ13は、上下方向から見たときの板バネ13の形状がU形状となるようにバネ配置部4dに配置されている。板バネ13は、位置決めされた状態でバネ配置部4dに固定されている。板バネ13の接触面13aは、球体保持部材12の外部に配置される球体11の一部に第1直交方向の外側から所定の接触圧で接触している。板バネ13は、第1直交方向の内側に向かって球体11を付勢している。
【0040】
磁気駆動機構5は、駆動用磁石15と、駆動用磁石15に対向配置される駆動用コイル16とを備えている。駆動用磁石15は、永久磁石である。駆動用磁石15は、可動体3に固定されている。具体的には、駆動用磁石15は、磁石配置凹部3aの中に配置されており、可動体3の右面側に固定されている。駆動用磁石15は、前後方向に細長い直方体状に形成されている。駆動用磁石15は、上下方向において分極された2個の着磁部15aによって構成されている(
図3参照)。より具体的には、駆動用磁石15は、光学ガラス2の厚さ方向において分極された2個の着磁部15aによって構成されている。
【0041】
駆動用コイル16は、たとえば、導線が空芯状に巻回されることで形成された空芯コイルである。駆動用コイル16は、フレキシブルプリント基板17に実装されている。また、駆動用コイル16は、コイル配置凹部4aの中に配置されている。フレキシブルプリント基板17は、固定体4に固定されている。駆動用コイル16は、フレキシブルプリント基板17を介して固定体4に固定されている。駆動用磁石15と駆動用コイル16とは左右方向で対向している。
【0042】
磁気駆動機構5は、第1直交方向を回動の軸方向として固定体4に対して可動体3を回動させる。なお、フレキシブルプリント基板17には、固定体4に対する可動体3の回動位置を検知するためのホールセンサ(図示省略)が実装されている。ホールセンサは、駆動用磁石15に対向配置されている。駆動用コイル16には、ホールセンサの検知結果に基づいて電流が供給される。
【0043】
保持用磁石7は、永久磁石である。保持用磁石7は、可動体3に固定されている。具体的には、保持用磁石7は、磁石配置凹部3bの中に配置されており、可動体3の左面側に固定されている。保持用磁石7は、前後方向に細長い直方体状に形成されている。また、保持用磁石7は、駆動用磁石15と同様に構成されており、上下方向において分極された2個の着磁部7aによって構成されている。より具体的には、保持用磁石7は、光学ガラス2の厚さ方向において分極された2個の着磁部7aによって構成されている。
【0044】
図2に示すように、保持用磁石7の前後方向の中心と駆動用磁石15の前後方向の中心とは、前後方向においてずれている。具体的には、保持用磁石7の前後方向の中心は、駆動用磁石15の前後方向の中心よりも後ろ側に配置されている。本形態では、光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、保持用磁石7と駆動用磁石15とは、可動体3の中心に対して点対称に配置されている。また、光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、保持用磁石7と駆動用磁石15とは、光学ガラス2の中心に対して点対称に配置されている。
【0045】
磁性板8は、磁性を有する金属材料によって形成されている。すなわち、磁性板8は、磁性体によって構成されている。磁性板8は、平板状に形成されている。具体的には、磁性板8は、細長い長方形状の平板状に形成されている。磁性板8の厚さは薄くなっている。たとえば、磁性板8の厚さは、0.1~0.2(mm)程度となっており、非常に薄くなっている。磁性板8は、磁性板8の厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。すなわち、本形態の左右方向(X方向)は、磁性板8の厚さ方向となっている。また、磁性板8は、長方形状の平板状に形成される磁性板8の長辺方向と前後方向とが一致するように配置されている。
【0046】
磁性板8は、磁性板配置穴4eの中に配置されており、磁性板配置穴4eの中で固定されている。すなわち、磁性板8は、固定体4に固定されている。磁性板8は、接着剤によって磁性板配置穴4eに固定されている。たとえば、磁性板8は、熱硬化性の接着剤によって磁性板配置穴4eに固定されている。また、磁性板8は、保持用磁石7の左側に配置されている。すなわち、磁性板8は、磁性板8の厚さ方向において保持用磁石7の一方側に配置されている。保持用磁石7の左側面は、左右方向に略直交する平面となっており、上下方向において2極に着磁されている。
【0047】
磁性板8は、保持用磁石7に磁気的に吸引されている。駆動用コイル16が非通電状態であるときに、保持用磁石7の左側面の上下方向の中心と磁性板8の上下方向の中心とは、設計上、上下方向において一致している。本形態の磁性板8は、保持用磁石7に磁気的に吸引される被吸引部材となっている。また、本形態の磁性板配置穴4eは、被吸引部材である磁性板8が配置される被吸引部材配置穴となっている。また、本形態の上下方向(Z方向)は、被吸引部材である磁性板8の厚さ方向に直交する第1方向となっている。
【0048】
上述のように、磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通する貫通穴であり、固定体4の上端および固定体4の下端で開口している。また、上述のように、磁性板配置穴4eは、前後方向に細長い長方形の角穴であり、磁性板配置穴4eの右側面および左側面は、左右方向に直交する平面となっている。磁性板配置穴4eの前後方向の長さは、磁性板8の前後方向の長さ(長辺方向の長さ)よりも長くなっている。
【0049】
磁性板配置穴4eの左右方向の幅W(
図4、
図5参照)は、磁性板8の厚さt(
図5参照)よりも広くなっている。具体的には、磁性板配置穴4eの左右方向の幅Wは、磁性板8の厚さtの2倍以上となっている。より具体的には、磁性板配置穴4eの幅Wは、磁性板8の厚さtの4倍以上となっている。たとえば、磁性板配置穴4eの幅Wは、磁性板8の厚さtの6倍程度となっており、磁性板配置穴4eには、左右方向で重なった状態の5枚の磁性板8を配置することが可能になっている。磁性板配置穴4eの右側面は、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板8が接触する接触面となっている。
【0050】
磁性板9は、磁性板8と同様に構成されており、平板状に形成されている。磁性板9は、磁性板9の厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、磁性板9は、長方形状の平板状に形成される磁性板9の長辺方向と前後方向とが一致するように配置されている。磁性板9は、磁性板配置凹部4bの中に配置されている。磁性板9は、磁性板載置部4cに載置されており、磁性板9の下端面は、磁性板載置部4cの上面に接触している。磁性板9は、フレキシブルプリント基板17に固定されており、フレキシブルプリント基板17を介して固定体4に固定されている。
【0051】
磁性板9は、駆動用磁石15の右側に配置されている。駆動用磁石15の右側面は、左右方向に略直交する平面となっており、上下方向において2極に着磁されている。磁性板9は、駆動用磁石15に磁気的に吸引されている。駆動用コイル16が非通電状態であるときに、駆動用磁石15の右側面の上下方向の中心と磁性板9の上下方向の中心とは、設計上、上下方向において一致している。磁性板配置凹部4bの左右方向の幅は、磁性板9の厚さよりも広くなっている。具体的には、磁性板配置凹部4bの左右方向の幅は、磁性板9の厚さの2倍以上となっている。より具体的には、磁性板配置凹部4bの左右方向の幅は、磁性板9の厚さの4倍以上となっており、たとえば、磁性板9の厚さの6倍程度となっている。
【0052】
本形態では、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を一定位置で保持するための磁気的吸引力(すなわち、固定体4に対して可動体3を一定の姿勢で保持するための磁気的吸引力)が、磁性板8と保持用磁石7との間、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じている。具体的には、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を基準位置で保持するための磁気的吸引力が、磁性板8と保持用磁石7との間、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じている。
【0053】
(アクチュエータの調整方法)
図6(A)~(D)は、
図1に示すアクチュエータ1の共振周波数の調整方法を説明するための図である。
【0054】
本形態では、アクチュエータ1が搭載されるプロジェクタの仕様等に応じて、光学ガラス2および可動体3が固定体4に対して振動するときのアクチュエータ1の共振周波数を調整する。具体的には、保持用磁石7と磁性板8との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整することで、アクチュエータ1の共振周波数を調整する。より具体的には、たとえば、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を変更することで、保持用磁石7と磁性板8との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整する。
【0055】
すなわち、
図5に示すように、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を1枚にしたり、
図6(A)に示すように、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を2枚にしたり、
図6(B)に示すように、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を3枚にしたりすることで、保持用磁石7と磁性板8との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整する。複数枚の磁性板8が磁性板配置穴4eに配置される場合には、複数枚の磁性板8は、左右方向で重なっている状態で接着剤によって磁性板配置穴4eに固定されている。
【0056】
あるいは、左右方向における磁性板8と保持用磁石7との距離を変更することで、保持用磁石7と磁性板8との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整する。左右方向における磁性板8と保持用磁石7との距離を変更するときには、非磁性体からなる平板状の非磁性板20を使用する(
図6(C)、(D))。非磁性板20は、磁性板8と同形状に形成されており、非磁性板20の厚さと磁性板8の厚さtとは等しくなっている。
【0057】
また、左右方向における磁性板8と保持用磁石7との距離を変更するときには、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8と磁性板配置穴4eの右側面との間に非磁性板20を配置して固定する。すなわち、磁性板8と保持用磁石7との左右方向の距離を変更するときには、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8と可動体3に固定される保持用磁石7との間であって、かつ、磁性板配置穴4eの中に非磁性板20を配置して固定する。たとえば、
図6(C)に示すように、磁性板配置穴4eの右側面と磁性板8との間に1枚の非磁性板20を配置したり、
図6(D)に示すように、磁性板配置穴4eの右側面と磁性板8との間に2枚の非磁性板20を配置したりすることで、磁性板8と保持用磁石7との左右方向の距離を変更する。この場合には、非磁性板20は、アクチュエータ1の一部分を構成している。
【0058】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、磁性板8が配置される磁性板配置穴4eの左右方向の幅Wが磁性板8の厚さtの2倍以上となっている。そのため、本形態では、上述のように、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を変更することが可能になるとともに、磁性板配置穴4eの右側面と磁性板8との間に非磁性板20を配置することで左右方向における磁性板8と保持用磁石7との距離を変更することが可能になる。また、本形態では、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を変更したり、左右方向における磁性板8と保持用磁石7との距離を変更したりすることで、保持用磁石7と磁性板8との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整している。
【0059】
このように、本形態では、左右方向の幅Wが磁性体8の厚さtの2倍以上となっている磁性体配置穴4eと平板状の磁性板8とを利用した簡易な構成で、または、磁性体配置穴4eと磁性板8と平板状の非磁性板20とを利用した簡易な構成で、アクチュエータ1の共振周波数を調整している。そのため、本形態では、アクチュエータ1の共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータ1の構成を簡素化することが可能になる。
【0060】
本形態では、磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通する貫通穴である。そのため、本形態では、上下方向における磁性板配置穴4eの一方側が塞がっている場合と比較して、磁性板配置穴4eに配置される磁性板8の枚数を変更するときや、磁性板8と保持用磁石7との左右方向の距離を変更するときの作業を行いやすくなる。
【0061】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0062】
上述した形態において、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整することでアクチュエータ1の共振周波数を調整しても良い。具体的には、たとえば、磁性板配置凹部4bに配置される磁性板9の枚数を変更することで、または、磁性板9とフレキシブルプリント基板17との間に非磁性板20を配置して左右方向における磁性板9と駆動用磁石15との距離を変更することで、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整しても良い。
【0063】
この場合には、アクチュエータ1は、保持用磁石7および磁性板8を備えていなくても良い。また、この場合には、駆動用磁石15は、可動体回動方向において固定体4に対して可動体3を一定位置で保持するための保持用磁石となっており、磁性板9は、保持用磁石である駆動用磁石15に磁気的に吸引される被吸引部材となっている。また、上述した形態において、アクチュエータ1は、磁性板9を備えていなくても良い。
【0064】
上述した形態において、アクチュエータ1は、磁性板8に代えて、永久磁石からなる平板状の調整用磁石21(
図6(E)参照)を備えていても良い。調整用磁石21は、たとえば、磁性板8と同形状に形成されている。この変更例では、調整用磁石21は、保持用磁石7に磁気的に吸引される被吸引部材となっている。この変更例では、たとえば、磁性板配置穴4eに配置される調整用磁石21の枚数を変更したり、左右方向における調整用磁石21と保持用磁石7との距離を変更したりすることで、保持用磁石7と調整用磁石21との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整する。
【0065】
また、上述した形態において、調整用磁石21を用いてアクチュエータ1の共振周波数を調整しても良い。具体的には、磁性板配置穴4eに配置される被吸引部材を、軟磁性体によって構成される磁性板8とするのか、それとも、永久磁石によって構成される調整用磁石21とするのかを選択することで、保持用磁石7と被吸引部材との間に生じる磁気的吸引力の強さを調整してアクチュエータ1の共振周波数を調整しても良い。
【0066】
この場合であっても、磁性体配置穴4eと、磁性板8または平板状の調整用磁石21とを利用した簡易な構成で、アクチュエータ1の共振周波数が調整されるため、上述した形態と同様に、アクチュエータ1の共振周波数を調整することが可能であっても、アクチュエータ1の構成を簡素化することが可能になる。なお、この場合には、磁性板配置穴4eの左右方向の幅Wが磁性板8の厚さtの2倍未満となっていても良い。また、調整用磁石21の厚さと磁性板8の厚さtとが異なっていても良い。
【0067】
上述した形態において、複数枚の磁性板8が磁性板配置穴4eに配置される場合に、磁性板配置穴4eに配置される複数枚の磁性板8の外形が一定になっていなくても良い。ただし、この場合であっても、磁性板配置穴4eに配置される複数枚の磁性板8の厚さtは等しくなっている。また、上述した形態において、磁性板8の厚さtと非磁性板20の厚さとが等しくなっていなくても良い。さらに、上述した形態において、磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通していなくても良い。また、上述した形態において、磁性板配置穴4eは、固定体4の左端において開口していても良い。また、上述した形態において、磁性板配置穴4eの幅Wは、磁性板8の厚さtの4倍未満となっていても良い。
【0068】
上述した形態において、保持用磁石7が固定体4に固定され、磁性板8が可動体3に固定されていても良い。この場合には、磁性板8が配置される被吸引部材配置穴が可動体3に形成されている。また、上述した形態において、駆動用磁石15が固定体4に固定され、駆動用コイル16および磁性板9が可動体3に固定されていても良い。さらに、上述した形態において、磁気駆動機構5は、駆動用コイル16に加えて、保持用磁石7に対向配置される駆動用コイルを備えていても良い。この場合には、保持用磁石7は、磁気駆動機構5の一部を構成しており、駆動用磁石としての機能を果たす。
【0069】
上述した形態において、アクチュエータ1は、プロジェクタ以外の装置に搭載されて使用されても良い。この場合には、光学ガラス2以外の光学要素が可動体3に保持されていても良い。たとえば、レンズ、プリズム、反射板または光学フィルタ等の光学素子が可動体3に保持されていても良い。また、撮像素子が可動体3に保持されていても良い。可動体3に撮像素子が保持されている場合には、アクチュエータ1は、たとえば、カメラに搭載されている。本明細書における「光学要素」には、撮像素子も含まれている。
【符号の説明】
【0070】
1 アクチュエータ
2 光学ガラス(光学要素)
3 可動体
4 固定体
4e 磁性板配置穴(被吸引部材配置穴)
7 保持用磁石
8 磁性板(被吸引部材)
20 非磁性板
21 調整用磁石(被吸引部材)
t 被吸引部材の厚さ
W 被吸引部材の厚さ方向における被吸引部材配置穴の幅
X 被吸引部材の厚さ方向
Z 第1方向