IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人株式会社の特許一覧

特開2024-27796高耐熱性高タフネス繊維、および、その製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027796
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】高耐熱性高タフネス繊維、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/80 20060101AFI20240222BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
D01F6/80 331
D01F6/60 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130897
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠介
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB11
4L035BB13
4L035BB15
4L035BB66
4L035BB72
4L035BB76
4L035BB89
4L035BB91
4L035EE01
4L035EE09
4L035EE20
4L035MG04
4L035MG05
(57)【要約】
【課題】強度、伸度および耐熱性の物性のバランスが優れる高耐熱性高タフネス繊維を提供する。
【解決手段】300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上と高い耐熱性を有し、破断強度が5.0~10.0cN/dtex、破断伸度が15~40%の高タフネス繊維が得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断強度が5.0~10.0cN/dtex、破断伸度が15~40%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上であることを特徴とする高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項2】
350℃における乾熱寸法変化率が7%以下である請求項1に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項3】
400℃における乾熱寸法変化率が15%以下である請求項1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項4】
軟化点(ガラス転移温度)が280℃以上である請求項1に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項5】
高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイルおよびテレフタロイルからなる群から選ばれる3種のモノマー単位、またはメタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位を含む共重合アラミド重合体を含んでなる、請求項1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項6】
高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が35以上60以下:65以下40以上である共重合アラミド重合体を含んでなる、請求項1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
【請求項7】
高耐熱性高タフネス繊維の製造方法であって、
メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイルおよびテレフタロイルからなる群から選ばれる3種のモノマー単位、またはメタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が35以上60以下:65以下40以上であり、重量平均分子量が40万~100万である共重合アラミド重合体を用いて、以下(1)~(5)のステップで製造する、請求項1に記載の高耐熱性高タフネス繊維の製造方法。
(1).前記共重合アラミド重合体をアミド系溶媒に5~25質量%の範囲で溶解させて紡糸用ドープとし、紡糸口金に通し、
(2).アミド系溶媒を1~19質量%、無機塩を3~50質量%を含む水性凝固浴中に紡出して凝固し、
(3).水性洗浄浴水洗し、引き続き沸水延伸浴中で1.1~5.0倍の範囲で延伸し、
(4).100~250℃の範囲で乾熱処理を行い、
(5).290~380℃の範囲で熱処理を加えながら、延伸倍率1.1~3.0倍の範囲で熱延伸する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、強度、伸度のバランスが優れ、高い耐熱性を有していることを特徴とする高耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紡糸技術の発展により、様々な繊維が工業化され、繊維を構成する化学構造と紡糸条件を選択することで、求められる性能・用途に応じた物性をもつ繊維が開発・製造されている。高強度、高弾性繊維は、高強度の構造体を与えることができるが、伸度が低い場合、大きな変形に対しては緩和することができずに破断してしまう。これら繊維の強伸度はトレードオフの関係にあり、強度と伸度の双方を満たす高タフネス繊維の開発は困難であった。
【0003】
高タフネス繊維に関する報告例としては以下のようなものがある。例えば、特開昭59-100710号公報(特許文献1)では、超延伸したポリエチレン繊維を熱収縮処理することにより強度15~25g/de、伸度15~25%の高タフネスポリエステル繊維を報告している。また、特開2000-144527号公報(特許文献2)ではオイリングおよび集束の位置を調整することにより強度8~9g/de、伸度10~15%のポリエステル繊維を得る方法を報告している。また、特開2008-308786号公報(特許文献3)では紡糸線上の温度履歴を制御することによって、強度が8~10cN/dtex、伸度が20~25%以上のポリエステル繊維を報告しているが、いずれも汎用繊維であり、耐熱性が比較的低いものである。
【0004】
一方で、強度に加え材料開発において必要な性能として耐熱性が挙げられる。例えば、全芳香族ポリアミドからなる繊維(アラミド繊維と称する場合がある)は、高強度・耐熱・難燃性繊維として特に有用なものである。
【0005】
例えば、パラフェニレンテレフタルアミドから構成されるパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、高強度、高弾性率を有することから、各種マトリックスの補強材やロープ等の工業資材として幅広く用いられている。また、メタフェニレンイソフタルアミドから構成されるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性に加え柔軟な繊維であり、例えば防護衣等の防災安全衣料用途や耐熱性が要求されるゴム補強材等の産業用途に用いられている。
【0006】
これらアラミド繊維の機械物性は、パラ型では破断強度15~20cN/dtex、破断伸度1~5%(デュポン(株)製「ケブラー」(登録商標)、帝人(株)製「トワロン」(登録商標))等が挙げられ、メタ型では、破断強度3~6cN/dtex、破断伸度30~60%(デュポン(株)製「ノーメックス」(登録商標)、帝人(株)製「コーネックス」(登録商標))が挙げられ、これらの繊維物性を考慮した用途開発が行われてきた。
【0007】
しかしながら、アラミド繊維を用いる場合、耐熱性が必要な分野において、さらに高強度が求められる場合は、一般的にパラ型を用いるが、使用変形を伴いにくい用途に限定される。一方、耐熱性が必要な分野において、柔軟性が求められる場合は、メタ型を用いるが、強度を犠牲にする必要があった。
【0008】
したがって、アラミド繊維相当の耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた特徴を有する合成繊維を得ることは有用であるが、従来技術では得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59-100710号公報
【特許文献2】特開2000-144527号公報
【特許文献3】特開2008-308786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前述した背景の通り、高耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた高耐熱性高タフネス繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、複数の特定のモノマーを特定の比率で共重合にしたポリマーを繊維とすることにより、高耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた高耐熱性高タフネス繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明によれば、
1.破断強度が5.0~10.0cN/dtex、破断伸度が15~40%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上であることを特徴とする高耐熱性高タフネス繊維。
2.350℃における乾熱寸法変化率が7%以下である前記1に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
3.400℃における乾熱寸法変化率が15%以下である前記1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
4.軟化点(ガラス転移温度)が280℃以上である前記1に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
5.高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイルおよびテレフタロイルからなる群から選ばれる3種のモノマー単位、またはメタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位を含む共重合アラミド重合体を含んでなる、前記1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
6.高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が35以上60以下:65以下40以上である共重合アラミド重合体を含んでなる、前記1または2に記載の高耐熱性高タフネス繊維。
7.高耐熱性高タフネス繊維の製造方法であって、
メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイルおよびテレフタロイルからなる群から選ばれる3種のモノマー単位、またはメタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が35以上60以下:65以下40以上であり、重量平均分子量が40万~100万である共重合アラミド重合体を用いて、以下(1)~(5)のステップで製造する、前記1に記載の高耐熱性高タフネス繊維の製造方法。
(1).前記共重合アラミド重合体をアミド系溶媒に5~25質量%の範囲で溶解させて紡糸用ドープとし、紡糸口金に通し、
(2).アミド系溶媒を1~19質量%、無機塩を3~50質量%を含む水性凝固浴中に紡出して凝固し、
(3).水性洗浄浴水洗し、引き続き沸水延伸浴中で1.1~5.0倍の範囲で延伸し、
(4).100~250℃の範囲で乾熱処理を行い、
(5).290~380℃の範囲で熱処理を加えながら、延伸倍率1.1~3.0倍の範囲で熱延伸する。
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明で得られる高耐熱性高タフネス繊維は、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上と高い耐熱性を有し、破断強度が5.0~10.0cN/dtex、破断伸度が15~40%の高タフネス繊維であり、強度と伸度のバランスがとれた高耐熱性高タフネス繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の高耐熱性高タフネス繊維は、破断強度が5.0~10.0cN/dtex、破断伸度が15~40%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上である。かかる高耐熱性高タフネス繊維を構成するポリマーとして、全芳香族ポリアミド(以下、アラミドと称する場合がある)が挙げられ、具体的にはメタ型およびパラ型芳香族ジアミン成分とメタ型およびパラ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、共重合により合成されるものである。
【0015】
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む構造から構成される共重合アラミド重合体からなる全芳香族ポリアミドである。
【0016】
本発明の高耐熱性高タフネス繊維において、共重合アラミド重合体からなる全芳香族ポリアミドはランダム共重合されており、好ましくは、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイルおよびテレフタロイルからなる群から選ばれる3種のモノマー単位、またはメタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が35以上60以下:65以下40以上であることが好ましく、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が40以上60以下:60以下40以上であることがより好ましい。
【0017】
メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が60より大きいまたは35未満であった場合、目的の熱安定性を達成することができない。なお、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの組み合わせを下記表1に示す。
【0018】
本発明は、例1~4に示すように3種のモノマー単位を含むか、例5~6のように2種類のモノマー単位を含むことが好ましい。特に例5~6のように2種類のモノマー単位を含むことがより好ましい。
【0019】
換言すると、高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる3種類の構造のみからなるか、メタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位のみからなることがより好ましい。また、例5~6に示す2種類の構造のみからなることがとくに好ましい。換言すると、高耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンテレフタルアミド単位、またはパラフェニレンイソフタルアミド単位のみからなることがより好ましい。
【0020】
【表1】
【0021】
全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミンまたはパラフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等、およびこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。
【0022】
本発明の全芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、およびこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。同様に、パラ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、テレフタル酸クロライド、テレフタル酸ブロマイド等のテレフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。
【0023】
本発明の全芳香族ポリアミドの重合方法としては、メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドとを含む生成ポリアミドの良溶媒ではない有機溶媒系(例えばテトラヒドロフラン)と無機の酸受容剤ならびに可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触させることによって、ポリメタフェニレンイソフタルアミド重合体の粉末を単離する方法(界面重合、特公昭47-10863号公報)、またはアミド系溶媒で上記ジアミンと酸クロライドを溶液重合し次いで水酸化カルシウム、酸化カルシウム等で中和する方法(溶液重合、特開平8-074121号公報、特開平10-88421号公報)などに記載の公知のメタアラミドの重合方法を用いて共重合アラミド重合体を製造できるが、これに限定されるものではない。
【0024】
なお、本発明に用いられる全芳香族ポリアミド共重合体(共重合アラミド重合体ともいう)の重量平均分子量は、実用に耐え得る破断強度を持つ繊維を形成し得る観点から、後述する分析方法に従い40万~100万であることが必要である。なお、重量平均分子量40万に満たない場合、破断強度が著しく減少するだけでなく、安定な紡糸を行うことができなくなる。また、分子量が100万を超える場合、後述する全芳香族ポリアミド溶液を作製し紡出する際、粘度が高すぎるため取扱が難しく、専用の設備が必要となってしまう。
【0025】
本発明で規定する分子量範囲のポリマーは、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーの混合物を使用することができ、混合比の調整により全体分子量が規定する分子量範囲の値であればよい。例えば、重量平均分子量が20万のポリマーと80万のポリマーを混合し、この混合されたポリマーの重量平均分子量が60万であった場合、本発明で規定する分子量範囲のため、利用は何ら問題ない。
【0026】
本発明の全芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られた全芳香族ポリアミドを用いて、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、洗浄工程、沸水延伸工程、乾熱処理工程、熱延伸工程を経て製造される。
【0027】
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、本発明の全芳香族ポリアミドを溶媒に溶解して、紡糸液(ドープ)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常アミド系溶媒を用い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらの中では溶解性と取扱い安全性の観点から、NMP、またはDMAcを用いることが好ましい。
【0028】
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、通常は5~25質量%の範囲とすることが必要である。安定な紡糸を達成するためには7~20質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0029】
本発明ではドープ中に無機塩を導入してもよく、ドープに対して0~20質量%の無機塩を含むことが好ましく、安定した紡糸性を得るためには0~10質量%の無機塩がより好ましい。
【0030】
ここで、20質量%を超えた無機塩を含むと凝固速度が速くなりすぎてしまい、繊維中に多数のボイドを形成することから目的の物性を持った繊維を得ることができない。なお、無機塩としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウムなどの塩化物塩を使用することが好ましい。
【0031】
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られたドープを凝固液中に紡出して凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、紡糸孔径、配列状態等は特に制限する必要はなく、例えば、紡糸孔数が10~30000個、紡糸孔径が0.03~0.2mmのステープルファイバー用の多ホール紡糸口金等を用いることができる。
【0032】
また、紡糸口金から紡出する際のドープの温度は、20~90℃の範囲が好ましく、70~90℃がより好ましい。
本発明の繊維を得るために用いる凝固浴としては、アミド系溶媒を1~19質量%を含む水溶液であり、好ましくは3~15質量%含む水溶液である。この水溶液の温度は50~90℃の範囲が好ましい。
【0033】
また、凝固浴中に、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム等の無機塩を3~50質量%含む必要があり、好ましくは20~50質量%、より好ましくは30~45質量%含むことがよい。
前記のように、ドープを紡糸口金から凝固液中に紡出して凝固浴を通過させて凝固糸を得る。
【0034】
[洗浄工程、沸水延伸工程]
かくして得られた凝固糸は、水性洗浄浴にて十分水洗され、沸水延伸工程に送られる。
沸水延伸浴中の延伸倍率は1.1~5.0倍の範囲が必要であり、1.1~3.0倍の範囲がより好ましい。延伸を当該倍率の範囲で行い、分子鎖配向を上げることにより、最終的に得られる繊維の強度を確保することができる。
【0035】
[乾熱処理工程]
上記の洗浄・延伸工程を経た繊維に対して、好ましくは、乾熱処理工程を実施する。乾熱処理工程においては、上記の洗浄工程により洗浄が実施された繊維を、100~250℃の範囲で乾熱処理をする。好ましくは100~200℃の範囲で乾熱処理をする。また、乾熱処理は定長下で行うのが好ましい。なお、上記の乾熱処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
【0036】
[熱延伸工程]
本発明においては、上記乾熱処理工程を経た繊維に対して、熱延伸工程を施す。熱延伸工程においては、290~380℃の範囲で熱処理を加えながら延伸を実施する。処理温度は、好ましく290~350℃の範囲である。290℃に満たない場合、高倍率延伸ができないため不適であり、380℃を超えると繊維の変色や断糸が起きる可能性がある。熱延伸工程において、延伸倍率は、1.1~3.0倍の範囲が必要であり、好ましくは1.1~2.5倍の範囲である。なお、熱延伸処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
【0037】
以上の方法により得られる高耐熱性高タフネス繊維の破断強度は、5.0~10.0cN/dtexであり、下限は6.0cN/dtex以上がより好ましい。破断強度が5.0cN/dtexに満たない場合、本発明が目的とする高タフネスとしての強度としては不十分である。また、破断伸度は15%~40%が必要であり、20%~40%が好ましい。破断伸度が15%未満である場合、伸度が十分ではないことから高タフネス性の発揮が不十分である。破断伸度が40%を超えると、充分な強度を得ることが困難となる。
【0038】
本発明の高耐熱性高タフネス繊維は、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が85%以上であることが必要であり、90%以上が好ましい。また、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が65%以上であることが必要であり、70%以上が好ましい。
【0039】
本発明の高耐熱性高タフネス繊維は、350℃における乾熱寸法変化率が7%以下であることが好ましく、6%以下がより好ましい。また、400℃における乾熱寸法変化率が15%以下であることが好ましく、14%以下がより好ましい。
本発明の高耐熱性高タフネス繊維の軟化点(ガラス転移温度)は280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。
【実施例0040】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。尚、実施例および比較例における各物性値は、下記の方法で測定した。
【0041】
[重量平均分子量Mw]
JIS-K-7252に準じ、サイズ排除クロマトグラフィー用カラムを装着した高速液体クロマトグラフィー装置にて分析をおこない、展開溶媒にはジメチルホルムアミド(塩化リチウムを0.01モル%含有)を用いて測定した。なお、標準分子量サンプルとしてはシグマアルドリッチ製ポリスチレンセット(ピークトップ分子量Mp=400~2000000)を用いた。
【0042】
[単繊維繊度]
JIS-L-1015に準じ、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛け繊度にて表記した。
【0043】
[破断強度、破断伸度]
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS-L-1015に準じ、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g/dtex)
引張速度 :20mm/分
【0044】
[破断強度保持率]
300℃または350℃で30分間の乾熱処理を行ったサンプルについて、引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS-L-1015に準じ、以下の条件で強度を測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g/dtex)
引張速度 :20mm/分
強度保持率は次の式(1)により求めた。
(乾熱処理後の強度/乾熱処理前の強度)×100・・・式(1)
【0045】
[ガラス転移温度]
繊維の軟化点(ガラス転移温度)は、日立ハイテクサイエンス製の熱機械分析装置TMAを用いて、JIS K 7196に準拠して求めた。
【0046】
[乾熱寸法変化率]
JIS-L-1013に準じ、B法に準拠した測定を実施し、350℃および400℃における寸法変化率を求めた。
【0047】
[実施例1]
NMPに対しアミンモノマーを溶解した後、この溶液を0℃まで冷却し、メカニカルスターラーで攪拌しながら酸クロライドモノマーを投入した。この際、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の60モル%、テレフタロイルモノマー単位が40モル%、溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が10.7%になるよう調整した。また、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドを使用し、重量比が1:4となるようにした。アミンモノマーはメタフェニレンジアミンを使用した。重合の進行による粘度および溶液温度の上昇が停滞したことを確認後、上記酸クロリドモノマーと等量の水酸化カルシウムを投入し、透明になるまで攪拌することで、共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を作成した。重量平均分子量は51万であった。
【0048】
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが43質量%、NMPが10質量%、残りの水が47質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出して凝固糸条を得た。
【0049】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて1.3倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0050】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が335℃の熱板にて2.2倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.8dtex、破断強度5.6cN/dtex、破断伸度40%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が96%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が100%、350℃における乾熱寸法変化率が5.1%、400℃における乾熱寸法変化率が10.0%、ガラス転移温度が300℃であった。
【0051】
[実施例2]
実施例1に準じた溶液重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の55モル%、テレフタロイルモノマー単位が45モル%である共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を合成した。ポリマー溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が10.7%になるよう調整した。酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドを使用し、重量比が1:9となるようにした。アミンモノマーはメタフェニレンジアミンを使用した。重量平均分子量は45万であった。
【0052】
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが45質量%、NMPが12質量%、残りの水が43質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出して凝固糸条を得た。
【0053】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて1.6倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0054】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて2.0倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.7dtex、破断強度6.3cN/dtex、破断伸度29%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が100%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が82%、350℃における乾熱寸法変化率が4.9%、400℃における乾熱寸法変化率が10.3%、ガラス転移温度が315℃であった。
【0055】
[実施例3]
実施例1に準じた溶液重合により、メタフェニレンジアミン単位が全体の50モル%、テレフタロイルモノマー単位が50モル%である共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を合成した。ポリマー溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が10.7%になるよう調整した。この際、酸クロライドモノマーはテレフタル酸クロライドを使用した。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンを使用した。重量平均分子量は56万であった。このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40質量%、NMPが10質量%、残りの水が50質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
【0056】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.0倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0057】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて1.5倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.7dtex、破断強度8.3cN/dtex、破断伸度23%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が97%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が72%、350℃における乾熱寸法変化率が2.4%、400℃における乾熱寸法変化率が5.0%、ガラス転移温度が317℃であった。
【0058】
[実施例4]
実施例1に準じた溶液重合により、メタフェニレンジアミン単位が全体の40モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が60モル%である共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を合成した。ポリマー溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が10.0%になるよう調整した。この際、酸クロライドモノマーはテレフタル酸クロライドを使用した。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が4:1となるようにした。重量平均分子量は55万であった。このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40質量%、NMPが10質量%、残りの水が50質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
【0059】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて1.8倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0060】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて1.6倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.7dtex、破断強度7.6cN/dtex、破断伸度22%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が96%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が90%、350℃における乾熱寸法変化率が6.4%、400℃における乾熱寸法変化率が13.7%、ガラス転移温度が300℃であった。
【0061】
[比較例1]
メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の100モル%である全芳香族ポリアミド繊維(帝人(株)製「コーネックス」(登録商標))の物性測定をしたところ、繊度2.2dtex、破断強度4.6cN/dtex、破断伸度50%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が80%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が58%、350℃における乾熱寸法変化率が7.0%、400℃における乾熱寸法変化率が15.9%、ガラス転移温度が265℃であった。
【0062】
[比較例2]
実施例1に準じた溶液重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の75モル%、テレフタロイルモノマー単位が25モル%である共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を合成した。ポリマー溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が15.0%になるよう調整した。酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドを使用し、重量比が1:1となるようにした。アミンモノマーはメタフェニレンジアミンを使用した。重量平均分子量は60万であった。
【0063】
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40質量%、NMPが10質量%、残りの水が50質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
【0064】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.0倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0065】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて2.0倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度2.0dtex、破断強度4.6cN/dtex、破断伸度33%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が75%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が60%、350℃における乾熱寸法変化率が23.0%、400℃における乾熱寸法変化率が30.6%、ガラス転移温度が268℃であった。
【0066】
[比較例3]
実施例1に準じた溶液重合により、メタフェニレンジアミン単位が全体の25モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が75モル%である共重合アラミド重合体を含むポリマー溶液を合成した。ポリマー溶液全体に対して重合後のポリマーの質量濃度が9.5%になるよう調整した。この際、酸クロライドモノマーはテレフタル酸クロライドを使用した。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が1:1となるようにした。重量平均分子量は53万であった。このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40質量%、NMPが10質量%、残りの水が50質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
【0067】
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は190秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて1.5倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
【0068】
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて1.7倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.7dtex、破断強度10.5cN/dtex、破断伸度13%、300℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が89%、350℃で30分の乾熱処理後における強度保持率が84%、350℃における乾熱寸法変化率が8.5%、400℃における乾熱寸法変化率が11.9%、ガラス転移温度が288℃であった。
前記の実施例及び比較例で得られた繊維の物性を表2に示す。
【0069】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明で得られる高耐熱性高タフネス繊維は、強度、伸度および耐熱性の物性のバランスが優れていることから、耐熱性を犠牲にして汎用繊維が使用されていた用途や、複数の繊維の組み合わせにより機械物性を補っていた用途に好適に使用できる。また、補強材用途において適度な強度と柔軟性を兼ねそろえた新規な耐熱性高タフネス材料、例えば変形を多く伴い強度が求められるゴム補強分野の材料に適用できる。