(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027801
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】パイルキャップのせん断強度算定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240222BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130907
(22)【出願日】2022-08-19
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】松浦 恒久
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA12
2D046AA14
2D046CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】杭上部のパイルキャップを含む柱基礎梁の接合構造において、パイルキャップの終局せん断強度を適正に評価する。
【解決手段】既製杭Pの杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップ1と基礎梁2と柱3とを接合してなるパイルキャップ1のせん断強度算定方法であって、パイルキャップ1のせん断強度は、パイルキャップ1の高さH
pcと基礎梁2の梁せいD
bとの比から得られた低減係数α
jを、せん断強度式に乗じて評価することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、
前記パイルキャップのせん断強度は、前記パイルキャップ高さHpcと前記基礎梁せいDbとの比から得られた低減係数αjを、せん断強度式に乗じて評価することを特徴とするパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項2】
前記低減係数αjは、前記パイルキャップ高さHpcに対して前記基礎梁せいDbの
0.77・Dbを基準として、
αj=Hpc/0.77・Db≦1.0
とした請求項1に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項3】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の有効幅bjは、前記基礎梁の梁幅bbに基礎梁の左右側面に協力幅(ba1+ba2)を設け、
bj=bb+ba1+ba2
とした請求項1に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項4】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状および前記接合部への加力方向を考慮して設定された請求項1に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項5】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部に形成された圧縮ストラットの範囲をもとにして設定された請求項1に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項6】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状が十字形をなす場合に、柱せいDcと柱面からパイルキャップ端部までの距離Da1との和、
Dj=Dc+Da1
とした請求項4に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項7】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状がト字形をなし、前記接合部が軸力増加方向に加力される場合に、90度折曲げ筋水平投影長さD’cと柱面からパイルキャップ端部までの距離Da1の和、
Dj=D’c+Da1
とした請求項4に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項8】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状がト字形をなし、前記接合部が軸力減少方向に加力される場合に、柱せいDcと柱面から杭頭接合筋直径に200mmを加えた仮想RC円柱断面端部までの距離Da2との和、
Dj=Dc+Da2
とした請求項4に記載のパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項9】
既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、
前記パイルキャップのせん断強度は、接合部における杭頭部、柱、基礎梁、所定高さのパイルキャップに配筋された各鉄筋位置から求められる応力中心間距離jp,jc,jb,jpcで区画された面積を、有効せん断面積(jc・jb+(jp-jc)・jpc)とし、基準となるパイルキャップ高さでの有効せん断面積との比率をもって低減係数αjを評価することを特徴とするパイルキャップのせん断強度算定方法。
【請求項10】
既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、
前記パイルキャップのせん断強度は、接合部におけるパイルキャップ(幅Dpc,高さHpc)と柱(柱せいDc)と基礎梁(梁せいDb)の投影面積
(Dc・Db+(Dpc-Dc)・Hpc)とし、基準となるパイルキャップ高さでの投影面積との比率をもって低減係数αjを評価することを特徴とするパイルキャップのせん断強度算定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎において、杭頭部を囲むように設けられ、基礎梁と柱との接合部材として機能するパイルキャップのせん断強度を、合理的に算定できるようにしたパイルキャップのせん断強度算定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎と上部構造との接合部は、杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップ、基礎梁、および柱が一体的に接合されて構成される。一般にパイルキャップを含む柱と基礎梁接合部(以下、単に接合部と記す。接合構造と記す場合も同義)および基礎梁は鉄筋コンクリート造(以下、RC造と記す。)からなり、各部材内には多数の構造鉄筋が配筋されている。さらにRC造の柱が杭頭部に立設されると、各部材の主筋がパイルキャップ内で錯綜し、配筋作業にも多くの労力を必要としていた。
【0003】
出願人は、この課題を解決するために、施工を簡略化した接合構造と、従来工法に比べて小断面のパイルキャップの杭基礎構造(小断面パイルキャップ構造)を開発している(特許文献1)。この接合構造では、外殻鋼管付き高強度コンクリートパイル(以下、SC杭と記す。)やプレストレスト鉄筋高強度コンクリートパイル(以下、PRC杭と記す。)などの既製杭の頭部に接合鋼管および接合筋を配置し、杭中空部および接合鋼管と杭との隙間にコンクリートを充填することにより杭頭部を一体化する工法で構築され、杭に入力された力は、充填されたコンクリート、接合筋を介して小断面のパイルキャップに応力伝達が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7(a)、(b)に示したような従来の構造からなる接合構造の接合部50においても、パイルキャップ51は杭頭部P、柱52、基礎梁53を接合する重要な接合部材として機能するが、慣例的な安全側の数値として杭径の2.5倍程度の一辺長を有する略正方形の平断面とされ、構造設計においては、杭Pに作用する水平力によるコ-ン破壊(a)、水平せん断破壊(b)の確認程度がなされていた。しかし、基礎部分の構造部材は上部の構造部材とは異なり、地震により損傷を受けた場合に修復を行うことは困難である。このため、柱52、基礎梁53が接合されたパイルキャップ51を含む杭上部の接合部50は十分な終局強度を有することが求められていた。
【0006】
また、特許文献1に示したようなパイルキャップを含む接合部の構造設計においても、接合部における柱、基礎梁の接合形状、荷重方向、パイルキャップの高さの影響を考慮したせん断終局強度を考慮した設計が必要であるが、従来これらの影響を考慮した接合部の終局せん断強度を評価する式は提案されていなかった。さらに、出願人による上述した小断面パイルキャップ構造の開発過程で行った構造試験では、基礎梁に対してパイルキャップの高さが小さい場合には、試験結果値と計算値との比が1.0となり、計算値に余裕がなく危険側の評価となった。このため、せん断強度算定において、所定の低減係数を設定することで、安全側の評価を得ることが必要であることを認識している。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解消するために、杭上部のパイルキャップを含む柱基礎梁の接合構造において、パイルキャップの高さを基にした低減係数を導入することで、パイルキャップのせん断強度を適正に評価するようにしたパイルキャップのせん断強度算定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、前記パイルキャップの終局せん断強度は、前記パイルキャップ高さHpcと前記基礎梁せいDbとの比から得られた低減係数αjを、終局せん断強度式に乗じて評価することを特徴とする。
【0009】
前記低減係数αjは、前記パイルキャップ高さHpcに対して前記基礎梁せいDbの
0.77・Dbを基準として、
αj=Hpc/0.77・Db≦1.0
とすることが好ましい。
【0010】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の有効幅bjは、前記基礎梁の梁幅bbに基礎梁の左右側面に協力幅(ba1+ba2)を設け、
bj=bb+ba1+ba2
とすることが好ましい。
【0011】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいは、前記接合部での前記基礎梁の接合形状および前記接合部への加力方向を考慮して設定されることが好ましい。
【0012】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部に形成された圧縮ストラットの範囲をもとにして設定されることが好ましい。
【0013】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状が十字形をなす場合に、柱せいDcと柱面からパイルキャップ端部Da1までの距離との和、Dj=Dc+Da1とすることが好ましい。
【0014】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状がト字形をなし、前記接合部が軸力増加方向に加力される場合に、90度折曲げ筋水平投影長さD’cと柱面からパイルキャップ端部までの距離Da1との和、Dj=D’c+Da1とすることが好ましい。
【0015】
前記接合部に作用するせん断力に対する有効断面積を求める際の部材有効せいDjは、
前記接合部での前記既製杭、基礎梁及び柱の接合形状がト字形をなし、前記接合部が軸力減少方向に加力される場合に、柱せいDcと柱面から杭頭接合筋直径に200mmを加えた仮想RC円柱断面端部までの距離Da2との和、Dj=Dc+Da2とすることが好ましい。
【0016】
他のパイルキャップのせん断強度算定方法の発明として、既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、前記パイルキャップのせん断強度は、接合部における杭頭部、柱、基礎梁、所定高さのパイルキャップに配筋された各鉄筋位置から求められる応力中心間距離jp,jc,jb,jpcで区画された面積を、有効せん断面積(jc・jb+(jp-jc)・jpc)
とし、基準となるパイルキャップ高さでの有効せん断面積との比率をもって低減係数αjを評価することを特徴とする。
【0017】
さらに、パイルキャップのせん断強度算定方法の発明として、既製杭の杭頭部を囲むように設けられるパイルキャップと基礎梁と柱とを接合してなるパイルキャップのせん断強度算定方法であって、前記パイルキャップの終局せん断強度は、接合部におけるパイルキャップ(幅Dpc,高さHpc)と柱(柱せいDc)と基礎梁(梁せいDb)の投影面積
(Dc・Db+(Dpc-Dc)・Hpc)とし、基準となるパイルキャップ高さでの投影面積との比率をもって低減係数αjを評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パイルキャップの終局せん断強度を安全側に評価できることより、これまで慣例に基づいて断面が決められていたパイルキャップの断面を合理的に決定することができるという効果を奏する。このときパイルキャップを構成するコンクリート量を削減できることよりCO2の削減に寄与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるパイルキャップのせん断強度算定方法における接合部の有効幅b
jの考え方を示した接合部の模式平面図(a)、立面図(b)。
【
図2】本発明によるパイルキャップのせん断強度算定方法における接合部の有効せいD
jの考え方を示した接合部の模式立面図。
【
図3】パイルキャップ高さの異なる接合部の試験体と支持状態を示した説明図。
【
図4】
図3に示した試験体によるせん断力載荷試験における荷重-変形関係(包絡線表示)を示したグラフ。
【
図5】本発明によるパイルキャップのせん断強度算定方法における接合部の有効せん断面積の考え方を示した接合部の模式立面図。
【
図6】本発明によるパイルキャップのせん断強度算定方法における接合部の有効投影面積の考え方を示した接合部の模式立面図。
【
図7】従来の接合部の設計時における破壊モード(コーン破壊、水平せん断破壊)を模式的に示した接合部の模式立面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のパイルキャップのせん断強度算定方法について、以下、添付図面を参照して説明する。
【0021】
パイルキャップを介して杭、基礎梁、及び柱を接合してなる接合部を模した試験体のせん断破壊試験において、せん断破壊した試験体について各部材の損傷状況を確認すると、パイルキャップの損傷よりパイルキャップ上部の柱基礎梁の接合部の損傷の方が激しく、パイルキャップはおおむね軽微な損傷に収まっている。このような破壊状況を鑑み、既往の上部構造の柱梁接合部のせん断強度式が適用できるかの検討を行い、以下の算定式を得た。
【0022】
本発明で提案するせん断力の算定式は、「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」(以下、RC規準)における柱梁接合部の設計方針に沿い、大地震動に対する接合部の安全性確保の観点から終局せん断強度式に基づくが、せん断強度式自体は「鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説」(以下、靱性指針と記す。)による式を基礎とした。具体的に、本発明で提案する接合部のせん断強度式は次式の通りである。
【0023】
ここで、以下の算定式の根拠となる接合部の部材構成について、
図1,
図2を参照して簡単に説明する。
図1は、接合部10における有効幅b
j、有効せいD
jに相当する部位を示した模式平面図である。同図に示された接合部10では、平面視して略正方形状のパイルキャップ1の上面中央に断面形状が一辺D
cの略正方形状の柱2が位置し、柱2の側面に2本の梁幅b
bの基礎梁3の端部が接合されている。また、
図2以降(
図3は試験体であり、スケールは異なるが部材の接合状態、形状は同様である。)においても接合部10を構成する各部材(杭P、パイルキャップ1、柱2、基礎梁3)は同様であり、同一部材には同一符号を付している。なお、基礎梁3の接合状態、形状は一例であり、この接合状態、形状に限らず、本発明の適用が可能である。
【0024】
本発明のパイルキャップのせん断強度算定方法では、式(1)によりせん断強度Vjuを算定することとした。
Vju=αj・κ・φ・Fj・bj・Dj (1)
bj=bb+ba1+ba2 (2)
Dj=Dc’ +Dai (3)
ここに、αj:低減係数
κ:接合部の形状による係数
φ:直交梁の有無による補正係数
Fj:接合部のせん断強度の基準値
bj:接合部の有効幅
Dj:接合部の有効せい
Dc’:柱せいDcまたは90度折曲げ筋水平投影長さD’c(mm)
Da1:柱面からパイルキャップ端部までの距離(mm)
Da2:柱面から杭頭接合筋直径200mmを加えた仮想RC円柱断面端部までの距離(mm)
【0025】
以下において、式(1)における各項の詳細について説明する。
[パイルキャップ高さの影響を考慮した低減係数α
j]
本発明の技術的特徴は、提案せん断強度算定式に低減係数α
jを導入した点にある。低減係数α
jの検証は、以下のせん断力載荷試験結果をもとに行った。
図3(a)、(b)は、本発明のパイルキャップを備えた杭・柱・基礎梁による部分架構のせん断力載荷試験の試験体と試験体の支持状態を模式的に示したモデル図である。
図4は、
図3各図に示したせん断力載荷試験における層間変形角と層せん断力との関係を示した荷重変形曲線(包絡線)である。
図4に示したように、最大耐力にはパイルキャップ高さの影響が確認でき、パイルキャップ高さが低くなると耐力が低下する。この影響を考慮するために、パイルキャップの高さの影響を評価した低減係数α
jを設定した。低減係数α
jは基礎梁せいの0.77・D
bを基準とし、次式で求めることとした。
α
j=H
pc/0.77・D
b≦1.0
ここにH
pc:パイルキャップの高さ
D
b:基礎梁せい
以下に示す表1(計算値および載荷試験結果(実験値)との対比)により低減係数α
jの導入の妥当性が確認できる。すなわち、本発明において低減係数α
jを考慮した接合部のパイルキャップのせん断強度(計算値)と実験値の比は、表1に示すように安全側に評価することができるが、低減係数α
jを考慮しない場合、パイルキャップ高さが低い試験体は、実験値と計算値の比が1.0で、計算値に余裕がなく危険側の評価となる。
【0026】
【0027】
(接合部有効断面積を求める際の有効幅b
j)
接合部において、部材幅はパイルキャップ部分と接合部とで大きく異なるが、大きく損傷した部位が接合部であるため靭性指針を準拠し、
図1に示した梁の左右の側面に協力幅(b
a1+b
a2)を求め、これに梁幅b
bを加えた値を有効幅b
jとした(式(2))。b
aiはb
i/2またはD
c/4の小さい方、b
iは梁両側面からこれに平行する柱側面までの長さである。
【0028】
(接合部有効断面積を求める際の接合部の有効せいD
j)
本発明の対象となる接合部では、接合部下半部に柱断面より大きなパイルキャップが存在する。ため、この部分において、
図2に示したようなコンクリートストラットが形成されるものと推測できる。また、靭性指針に倣って、接合部の主たるせん断抵抗機構をコンクリートストラット作用(圧縮ストラット作用)によるものと考え、コンクリートストラットの水平投影長さを接合部有効せいD
jとみなし、接合部の有効せいD
jは、十字形では柱せいD、ト字形接合部では90度折曲げ筋の接合部内水平投影長さを用いた。また、ト形接合部において、引き抜き作用によって柱基礎梁間が開く方向(軸力減少方向)と圧縮作用によって柱基礎梁間が閉じる方向(軸力増加方向)とにおいて、形成されるコンクリートストラットの領域の差(柱の有効せい)を考慮している(式(3))。
【0029】
(接合部の形状による係数κ、直交梁の有無による補正係数φ)
接合部において、基礎梁の接合状態は、柱の相対する面にそれぞれ基礎梁が接合された十字形接合部と、柱に1本の基礎梁が接合されたト形接合部とが想定できるが、個々の接合部に対して:十字形接合部(κ=1.0)、ト形接合部(κ=0.7)と設定している。さらに、直交梁の有無による補正係数φとして、両側直交梁付き接合部(φ=1.0)、両側直交梁付き以外の場合(φ=0.85)とした。
【0030】
[有効せん断面積比に基づく低減係数α
jの評価]
上述したパイルキャップ高さH
pcと基礎梁せいD
bとの比率によって低減係数を設定することとしたが、
図5に示したように、所定高さのパイルキャップを備えた接合部における杭頭部、柱、基礎梁、パイルキャップに配筋された各鉄筋位置から求められる応力中心間距離j
p,j
c,j
b,j
pcで区画された面積を、有効せん断面積
(j
c・j
b+(j
p-j
c)・j
pc)
とし、基準となる有効せん断面積との比率をもって低減係数α
jを評価することも好ましい。
【0031】
[見付け面積比に基づく低減係数α
jの評価]
他の低減係数α
jの評価手法として、
図6に示したように、接合部におけるパイルキャップと柱と基礎梁の投影面積(D
c・D
b+(D
pc-D
c)・H
pc)とし、基準となる投影面積との比率をもって低減係数α
jを評価することも好ましい。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 パイルキャップ
2 柱
3 基礎梁
10 接合部
P 杭