(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027802
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】避難安全性能評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 90/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q90/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130908
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】521250009
【氏名又は名称】株式会社九門
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】九門 宏至
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】避難安全検証を行う際に各条件に応じて使用された演算式を識別することを可能とする避難安全性能評価システムを提供する。
【解決手段】建築物の火災時の避難安全性能を評価するための避難安全性能評価システム10は、居室避難完了時間が経過した時における居室避難完了時間及び居室の煙層上昇温度に応じて定まる第1演算式群を用いて居室煙層下端高さを求める居室煙層算出部18と、階避難完了時間が経過した時における階避難完了時間、火災室隣接部分の煙層上昇温度及び火災室における漏煙開始時間に応じて定まる第2演算式群を用いて火災室隣接部分の煙層下端高さを求める火災室煙層算出部20と、第1演算式群及び第2演算式群は夫々複数の演算式の中から条件に応じて選択されており、選択された複数の演算式と選択されていない複数の演算式とを識別可能にする識別表示部22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の火災時の避難安全性能を評価するための避難安全性能評価システムであって、
前記建築物において検証対象となる階にある居室毎に在室者全員が前記居室からの避難を完了するまでに要する居室避難完了時間を算出し、火災発生部からの煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する居室煙降下時間を算出し、前記居室避難完了時間が前記居室煙降下時間を超えない場合に前記居室からの避難が可能であると判断する居室避難検証部と、
前記検証対象となる階に存在する者の全員が直通階段、又は地上への避難を完了するまでに要する階避難完了時間を算出し、避難経路において前記煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する階煙降下時間を算出し、前記階避難完了時間が前記階煙降下時間を超えない場合に前記直通階段への避難が可能であると判断する階避難検証部と、
前記建築物の全ての階において前記居室避難検証部及び前記階避難検証部によって夫々避難が可能であると判断された場合に、前記建築物の在館者が前記建築物の外部へ避難するまでに要する全館避難完了時間を算出し、前記直通階段内又は堅穴区画内への前記煙やガスの流入時間を算出し、前記全館避難完了時間が前記流入時間を超えない場合に避難可能であると判断する全館避難検証部と、
前記居室避難完了時間が経過した時における前記煙やガスに基づいた居室煙層下端高さについて、前記居室避難完了時間が経過した時における前記居室避難完了時間及び居室の煙層上昇温度に応じて定まる第1演算式群を用いて前記居室煙層下端高さを求める居室煙層算出部と、
前記階避難完了時間が経過した時における前記煙やガスに基づいた火災室隣接部分の煙層下端高さについて、前記階避難完了時間が経過した時における前記階避難完了時間、前記火災室隣接部分の煙層上昇温度及び火災室における漏煙開始時間に応じて定まる第2演算式群を用いて前記火災室隣接部分の煙層下端高さを求める火災室煙層算出部と、
前記第1演算式群及び前記第2演算式群は夫々複数の演算式の中から条件に応じて選択されており、選択された複数の演算式と選択されていない複数の演算式とを識別可能にする識別表示部と、
を備えることを特徴とする避難安全性能評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の避難安全性能評価システムにおいて、
前記識別表示部は、前記選択された複数の演算式と前記選択されていない複数の演算式とを含む演算式を一覧表示し、前記選択された複数の演算式のみをハイライト表示することを特徴とする避難安全性能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難安全性能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築基準法の告示で定められた演算式により、避難完了時間及び煙降下時間を算出し、これらを比較することによって建物の安全性能を評価する避難安全検証法による性能設計を行う必要がある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、建築物の設計段階、または既存建物のプラン変更もしくは用途変更段階における、建築物の火災時の避難安全性能を評価するためのコンピュータシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築基準法の告示で定められた複数の演算式を用いて様々な検証がなされているが、これらの演算式は様々な条件の中から定まった式が用いられている。近年、これらの検証はシステムを用いてなされることもあるが、上記複数の演算式の中でどのような式を使って演算がなされたかを後から分析することが困難なことがある。
【0006】
本発明の目的は、避難安全検証を行う際に各条件に応じて使用された演算式を識別することを可能とする避難安全性能評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る避難安全性能評価システムは、建築物の火災時の避難安全性能を評価するための避難安全性能評価システムであって、前記建築物において検証対象となる階にある居室毎に在室者全員が前記居室からの避難を完了するまでに要する居室避難完了時間を算出し、火災発生部からの煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する居室煙降下時間を算出し、前記居室避難完了時間が前記居室煙降下時間を超えない場合に前記居室からの避難が可能であると判断する居室避難検証部と、前記検証対象となる階に存在する者の全員が直通階段、又は地上への避難を完了するまでに要する階避難完了時間を算出し、避難経路において前記煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する階煙降下時間を算出し、前記階避難完了時間が前記階煙降下時間を超えない場合に前記直通階段への避難が可能であると判断する階避難検証部と、前記建築物の全ての階において前記居室避難検証部及び前記階避難検証部によって夫々避難が可能であると判断された場合に、前記建築物の在館者が前記建築物の外部へ避難するまでに要する全館避難完了時間を算出し、前記直通階段内又は堅穴区画内への前記煙やガスの流入時間を算出し、前記全館避難完了時間が前記流入時間を超えない場合に避難可能であると判断する全館避難検証部と、前記居室避難完了時間が経過した時における前記煙やガスに基づいた居室煙層下端高さについて、前記居室避難完了時間が経過した時における前記居室避難完了時間及び居室の煙層上昇温度に応じて定まる第1演算式群を用いて前記居室煙層下端高さを求める居室煙層算出部と、前記階避難完了時間が経過した時における前記煙やガスに基づいた火災室隣接部分の煙層下端高さについて、前記階避難完了時間が経過した時における前記階避難完了時間、前記火災室隣接部分の煙層上昇温度及び火災室における漏煙開始時間に応じて定まる第2演算式群を用いて前記火災室隣接部分の煙層下端高さを求める火災室煙層算出部と、前記第1演算式群及び前記第2演算式群は夫々複数の演算式の中から条件に応じて選択されており、選択された複数の演算式と選択されていない複数の演算式とを識別可能にする識別表示部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る避難安全性能評価システムにおいて、前記識別表示部は、前記選択された複数の演算式と前記選択されていない複数の演算式とを含む演算式を一覧表示し、前記選択された複数の演算式のみをハイライト表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、避難安全検証を行う際に各条件に応じて使用された演算式を識別することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システムを示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システムにおいて、居室煙層下端高さを算出するための演算式が表示された図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システムにおいて、火災室隣接部分の煙層下端高さを算出するための演算式が表示された図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システムにおいて、居室煙層下端高さの算出結果が示されている出力図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システムにおいて、火災室隣接部分の煙層下端高さの算出結果が示されている出力図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0012】
図1は、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10を示す図である。
図2は、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10において、居室煙層下端高さを算出するための演算式が表示された図である。
図3は、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10において、火災室隣接部分の煙層下端高さを算出するための演算式が表示された図である。
【0013】
図4は、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10において、居室煙層下端高さの算出結果が示されている出力図である。
図5は、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10において、火災室隣接部分の煙層下端高さの算出結果が示されている出力図である。
【0014】
避難安全性能評価システム10は、建築物の火災時の避難安全性能を評価するためのシステムである。避難安全性能評価システム10は、建築基準施工令(第129条、第129条の2)に規定されている「階避難安全性能」及び「全館避難安全性能」の検証を行う機能を有する。
【0015】
「階避難安全性能」とは、検証の対象となる階のいずれかの居室(火災発生のおそれの少ない室を除く。)で火災が発生した場合においても、当該階に存在する者(当該階を通らなければ避難できない者を含む。)のすべてが当該階から直通階段の一階までの避難を完了するまでの間、当該階の各居室及び各居室から直通階段に通ずる主たる廊下その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする避難安全性能を意味する。
【0016】
また、「全館避難安全性能」とは、当該建築物のいずれの居室(火災室)で火災が発生した場合においても当該建築物に存在する者のすべてが当該建築物から地上までの避難を完了するまでの間、当該建築物の各居室及び各居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする避難安全性能を意味する。
【0017】
避難安全性能評価システム10は、居室避難検証部12と、階避難検証部14と、全館避難検証部16と、居室煙層算出部18と、火災室煙層算出部20と、識別表示部22と、建物データ入力部24と、記憶部26とを備えている。避難安全性能評価システム10は、ユーザ端末4と接続されている。
【0018】
居室避難検証部12は、火災室となる居室において、在室者が居室の外へ安全に避難できるか否かを確認する。
【0019】
具体的には、居室避難検証部12は、建築物において検証対象となる階にある居室毎に在室者全員が居室からの避難を完了するまでに要する居室避難完了時間を算出し、火災発生部からの煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する居室煙降下時間を算出し、居室避難完了時間が居室煙降下時間を超えない場合に居室からの避難が可能であると判断する機能を有する。
【0020】
階避難検証部14は、居室避難検証部12の検証によって全居室が避難可能であると判断された場合に、火災室以外の居室も含め、検証を行う階に存在する者(当該階を通らなければ避難できない人も含む)がその階から安全に避難できるか否かを確認する。
【0021】
具体的には、階避難検証部14は、検証対象となる階に存在する者の全員が直通階段、又は地上への避難を完了するまでに要する階避難完了時間を算出し、避難経路において煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する階煙降下時間を算出し、階避難完了時間が階煙降下時間を超えない場合に直通階段、又は地上への避難が可能であると判断する機能を有する。
【0022】
全館避難検証部16は、建築物全体からの避難について検討を行う。各階で階避難安全性能が確保されていても、火災室からの煙が直通階段や他の階に流入すると、火災室のある階以外の階からの避難が困難になるおそれがあるからである。そこで、全館避難検証部16は、火災の発生した居室以外の人も含めて在館者全員が地上まで安全に避難できるか否かを確認する。
【0023】
具体的には、全館避難検証部16は、建築物の全ての階において居室避難検証部12及び階避難検証部14によって夫々避難が可能であると判断された場合に、建築物の在館者が建築物の外部へ避難するまでに要する全館避難完了時間を算出し、直通階段内又は堅穴区画内への煙やガスの流入時間を算出し、全館避難完了時間が流入時間を超えない場合に避難可能であると判断する機能を有する。
【0024】
居室煙層算出部18は、居室避難完了時間が経過した時における煙やガスに基づいた居室煙層下端高さについて、居室避難完了時間が経過した時における居室避難完了時間及び居室の煙層上昇温度に応じて定まる第1演算式群を用いて居室煙層下端高さを求める機能を有する。
【0025】
具体的には、
図2に示される演算式を用いて求める。
図2に示される演算式は、国土交通省告示第四百七十五号に規定される建築基準法施行令に定められるものである。
【0026】
ここで、ΔTr,roomは、居室避難完了時間に応じ、予め定められた式によって計算した当該居室の煙層上昇温度である。
【0027】
Zroomは、居室煙層下端高さであり、tpass(room)は、居室出口通過時間のうち最大のものであり、tescape(room)は、居室退避完了時間である。また、Pr,roomは、居室避難完了時間が経過した時における当該居室の煙層密度であり、Aroomは、居室の床面積であり、Hroomは、当該居室の基準点から天井までの高さの平均である。
【0028】
hroomは、当該居室の床面の最も低い位置から基準点までの高さであり、Zphaze1(room)は、予め定められた式によって計算した火災発生後百秒間が経過した時における居室煙層下端高さである。
【0029】
Vs(r,room)は、予め定められた式によって計算した当該居室の煙等発生量であり、Ve(r,room)は、予め定められた式によって計算した当該居室の有効排煙量である。
【0030】
火災室煙層算出部20は、階避難完了時間が経過した時における煙やガスに基づいた火災室隣接部分の煙層下端高さについて、階避難完了時間が経過した時における階避難完了時間、火災室隣接部分の煙層上昇温度及び火災室における漏煙開始時間に応じて定まる第2演算式群を用いて前記火災室隣接部分の煙層下端高さを求める機能を有する。
【0031】
具体的には、
図3に示される演算式を用いて求める。
図3に示される演算式は、国土交通省告示第四百七十五号に規定される建築基準法施行令に定められるものである。
【0032】
tescape(floor)は、階退避完了時間であり、Zfloorは、火災室隣接部分の煙層下端高さである。ΔTf1floorは、予め定められた式によって計算した火災室隣接部分の煙層上昇温度であり、tpass(floor)は、階出口通過時間のうち最大のものであり、td(room)は、予め定められた式によって計算した当該火災室における漏煙開始時間である。
【0033】
Hfloorは、当該火災室隣接部分の基準点から天井までの高さの平均であり、Vs(f1floorは、予め定められた式によって計算した当該火災室隣接部分の煙等発生量である。Ve(f1floor)は、予め定められた式によって計算した当該火災室隣接部分の有効排煙量であり、Afloorは、当該火災室隣接部分の床面積である。
【0034】
識別表示部22は、複数の演算式の中から条件に応じて選択されており、選択された複数の演算式(第1演算式群及び第2演算式群)と選択されていない複数の演算式とを識別可能にする機能を有する。識別表示部22は、選択された複数の演算式と選択されていない複数の演算式とを含む演算式を一覧表示し、選択された複数の演算式のみをハイライト表示する機能を有する。
【0035】
図4に示されるように、居室煙層算出部18の機能を用いて居室煙層下端高さを求める一例を説明すると、例えば、ここで示される条件では、ΔT
r,room≦180であり、かつ、ΔT
r,room>√(500/3t
pass(room))であり、かつ、t
escape(room)>5/3であるため、Z
room=1.9533である。このように、Z
roomを求めるために用いられる演算式をハイライト表示し、かつ、判定ルートに「〇」を表示している。
【0036】
図5に示されるように、火災室煙層算出部20の機能を用いて災室隣接部分の煙層下端高さを求める一例を説明すると、例えば、ここで示される条件では、t
escape(floor)≦10であり、かつ、ΔT
f1floorは、≦180であり、かつ、ΔT
f1floor>√(500/3t
pass(floor))であり、かつ、t
escape(floor)>t
d(room)であるため、Z
floor=0.000である。このように、Z
floorを求めるために用いられる演算式をハイライト表示し、かつ、判定ルートに「〇」を表示している。
【0037】
建物データ入力部24は、居室避難検証部12、階避難検証部14及び全館避難検証部16により検証するための建築物のデータを入力する機能を有する。ここでは、建物全体のデータをインポートとし、その後、居室データや建具データなどについて具体的な属性などを与える。
【0038】
建物データ入力部24の機能を用いて、居室データ(部屋の形状、用途、内装の種類(不燃材、準不燃材、難燃材)、排煙方式(無排煙、自然排煙、機械排煙、第二種排煙)、設計床高さ、天井高さなど)を入力する。また、居室データとして、床面積(壁芯面積)、用途に応じた歩行速度、用途に応じた在室者・密度、積載可燃物の発熱量などを入力する。
【0039】
また、建具は、居室の開口部に設けられるものであり、片開き扉、親子扉、両開き扉、大型扉、片引き戸、三方枠、シャッター、窓といった種類がある。建物データ入力部24の機能を用いて、建具の種別、幅、高さ、取付高さ、防煙性能、有効幅、親扉幅などの建具データを入力する。
【0040】
建物データ入力部24は、インポートされた建物全体のデータを画面上に表示し、各居室等に対して、各種パラメータを選択したり、数値を入力することができるため、効率良く入力することができる。
【0041】
記憶部26は、建物データ入力部24により入力されたデータなどを記憶する機能を有している。
【0042】
続いて、上記構成避難安全性能評価システム10の作用について説明する。近年、建築物を設計する際に避難安全検証法による性能設計が必要となっている。一般的に、経験の浅い専門家によって避難安全検証がなされた場合は、審査機関による認証を得るために長時間要してしまうという課題がある。このような課題に対し、本発明に係る実施形態の避難安全性能評価システム10は顕著な効果を発揮する。
【0043】
最初に、避難安全検証を行う対象となる建築物の建物データ入力部24の機能を用いて入力する。そして、インポートされた建物全体のデータを画面上に表示し、居室データや建具データなどについて入力する(S2)。この工程は、建物データ入力部24の機能によって実行される。
【0044】
例えば、居室データ(部屋の形状、用途、内装の種類、排煙方式(無排煙、自然排煙、機械排煙、第二種排煙)、設計床高さ、天井高さ、床面積、用途に応じた歩行速度、用途に応じた在室者・密度、積載可燃物の発熱量などを入力する。
【0045】
また、建具データ(片開き扉、親子扉、両開き扉、大型扉、片引き戸、三方枠、シャッター、窓)といった種類や、建具の幅、高さ、取付高さ、防煙性能、有効幅、親扉幅などを入力する。
【0046】
これらの居室データや建具データなどの建物データを入力した後、階避難安全性能について検証する。最初に、火災室となる居室において、在室者が居室の外へ安全に避難できるか否かを確認する(S4)。
【0047】
具体的には、建築物において検証対象となる階にある居室毎に在室者全員が居室からの避難を終了するまでに要する居室避難完了時間を算出し、火災発生部からの煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する居室煙降下時間を算出し、居室避難完了時間が居室煙降下時間を超えない場合に居室からの避難が可能であると判断する。この工程は、居室避難検証部12の機能によって実行される。S4の工程において、居室からの避難ができないと判断された場合には、当該居室の設計を再検討などする必要がある。
【0048】
S4の工程において、検証対象となる階の全ての居室について、居室からの避難が可能と判断された場合には、火災室以外の室も含め、検証を行う階に存在する者(当該階を通らなければ避難できない人も含む)がその階から安全に避難できるか否かを確認する(S6)。
【0049】
具体的には、検証対象となる階に存在する者の全員が直通階段、又は地上への避難を終了するまでに要する階避難完了時間を算出し、避難経路において煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する階煙降下時間を算出し、階避難完了時間が階煙降下時間を超えない場合に直通階段への避難が可能であると判断する。この工程は、階避難検証部14の機能によって実行される。S6の工程において、直通階段への避難ができないと判断された場合には、避難経路等の設計を再検討などする必要がある。
【0050】
S6の工程において、検証の対象となる建築物の全ての階について避難が可能であると判断された場合には、火災の発生した室以外の人も含めて在館者全員が地上まで安全に避難できるか否かを確認する(S8)。
【0051】
具体的には、全館避難検証部16は、建築物の全ての階において居室避難検証部12及び階避難検証部14によって夫々避難が可能であると判断された場合に、建築物の在館者が建築物の外部へ避難するまでに要する全館避難完了時間を算出し、直通階段内又は堅穴区画内への煙やガスの流入時間を算出し、全館避難完了時間が流入時間を超えない場合に避難可能であると判断する。この工程は、全館避難検証部16の機能によって実行される。S8の工程において、建築物の外部への避難ができないと判断された場合には、全館全般の設計を再検討などする必要がある。
【0052】
ここで、上記のような避難安全検証を行うに場合において、居室避難完了時間が経過した時における煙やガスに基づいた居室煙層下端高さを求めたり、階避難完了時間が経過した時における煙やガスに基づいた火災室隣接部分の煙層下端高さを求めることがある。
【0053】
この際、
図4,5に示されるように、複数の演算式の中から各条件に応じて選択された演算式と、選択されていない演算式が一覧表示されており、選択された演算式のルートがハイライトされている。これにより、避難安全性能評価システム10を用いて避難安全検証を行う担当者がどのような条件でどのような演算式が用いられたか等について容易に解析することができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
4 ユーザ端末、10 避難安全性能評価システム、12 居室避難検証部、14 階避難検証部、16 全館避難検証部、18 居室煙層算出部、20 火災室煙層算出部、22 識別表示部、24 建物データ入力部、26 記憶部。