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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027804
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/13 20190101AFI20240222BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130924
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 久和
(72)【発明者】
【氏名】出田 武臣
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 悟史
(72)【発明者】
【氏名】宮浦 拓人
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA08
4D059BD12
4D059BD15
4D059BD21
4D059BJ03
4D059DA57
4D059DA70
4D059DB11
4D059DB32
4D059EA01
4D059EA20
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】乾燥時間の短縮及び撹拌羽根を回転させるモータの負荷の軽減を図ることができる、汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥装置及び汚泥乾燥システムを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る汚泥乾燥方法は、添加物が汚泥乾燥装置1に投入可能な大きさであるか否か確認して添加物を選定する添加物選定工程Step1と、混合物の乾燥終了時重量が汚泥乾燥装置1の許容重量以下であるか否か確認して添加物の添加量を設定する添加量設定工程Step2と、を含んでいる。
【選択図】図2



【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に固形の添加物を添加した混合物を乾燥装置で乾燥する汚泥乾燥方法において、
前記添加物が前記乾燥装置に投入可能な大きさであるか否か確認して前記添加物を選定する添加物選定工程と、
前記混合物の乾燥終了時重量が前記乾燥装置の許容重量以下であるか否か確認して前記添加物の添加量を設定する添加量設定工程と、
を含むことを特徴とする汚泥乾燥方法。
【請求項2】
前記添加物選定工程は、前記添加物の最大直径が前記乾燥装置の可動部における最小隙間より小さいか否か確認する工程である、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項3】
前記添加量設定工程における前記乾燥装置の許容重量は、乾燥終了時に前記乾燥装置が運転可能な状態であるか否かにより設定される、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項4】
前記添加量設定工程は、前記汚泥の投入量、前記汚泥の乾燥開始時含水率及び前記汚泥の乾燥終了時含水率のデータを取得し、前記汚泥の乾燥終了時重量を算出する工程を含む、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項5】
前記添加量設定工程は、前記添加物の添加量を仮定する工程を含む、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項6】
前記添加量設定工程は、前記添加物の乾燥開始時含水率のデータを取得し、前記添加物の乾燥終了時重量を算出する工程を含む、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項7】
前記添加量設定工程は、前記混合物の乾燥終了時重量を算出する工程を含む、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項8】
前記添加量設定工程は、前記乾燥装置の乾燥終了時許容重量のデータを取得し、前記混合物の乾燥終了時重量が前記許容重量以下であるか否か判断する工程を含む、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項9】
前記添加物は、前記汚泥と異なる物質である、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項10】
汚泥に固形の添加物を添加した混合物を乾燥させる乾燥装置と、
前記乾燥装置に前記汚泥を供給する汚泥供給装置と、
前記乾燥装置又は前記汚泥供給装置に前記添加物を供給する添加物供給装置と、
前記乾燥装置に蒸気を供給する蒸気供給手段と、を含み、
前記添加物供給装置は、前記乾燥装置に投入可能な大きさの前記添加物を前記混合物の乾燥終了時重量が前記乾燥装置の許容重量以下となるように供給するように構成されている、
ことを特徴とする汚泥乾燥システム。
【請求項11】
前記添加物は、最大直径が前記乾燥装置の可動部における最小隙間より小さくなるように選定されている、請求項10に記載の汚泥乾燥システム。
【請求項12】
前記乾燥装置の許容重量は、乾燥終了時に前記乾燥装置が運転可能な状態であるか否かにより設定されている、請求項10に記載の汚泥乾燥システム。
【請求項13】
前記添加物は、前記汚泥と異なる物質である、請求項10に記載の汚泥乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥システムに関し、特に、汚泥の乾燥処理の改善に適した汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥は、固体と液体の中間性状を示す泥状の廃棄物であり、鉱工業・農水産業・食品加工産業等の生産活動、下水道施設・廃水処理施設等の種々の分野から発生する。これらの汚泥は、従来、廃棄物処理施設に搬送されて処分されることが多かったが、近年、環境保全・資源の有効活用等の観点から肥料や燃料として再利用する需要も増大してきている。
【0003】
汚泥は大量の水分を含んでいることから、廃棄や再利用の工程の途中で汚泥を乾燥させて重量を減らしたいという要望がある。例えば、特許文献1には、有機性汚泥と炭素分を含み粒径が数ミリ以下の固形細粒体とを予混合し、固形細粒体を有機性汚泥中に分散させた後、有機性汚泥と固形細粒体の混合物を乾燥機に投入することを特徴とする有機性汚泥の乾燥処理方法が開示されている。特許文献1に記載された発明によれば、有機性汚泥が乾燥機内部に付着することを軽減し、円滑に乾燥処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-254921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚泥の乾燥処理では、乾燥時間を短縮したいという潜在的なニーズがある。また、本願発明者らの研究開発によれば、汚泥の乾燥が進行し半固体状態になると撹拌羽根を回転させるモータに過大な負荷が生じるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、乾燥時間の短縮及び撹拌羽根を回転させるモータの負荷の軽減を図ることができる、汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、汚泥に固形の添加物を添加した混合物を乾燥装置で乾燥する汚泥乾燥方法において、前記添加物が前記乾燥装置に投入可能な大きさであるか否か確認して前記添加物を選定する添加物選定工程と、前記混合物の乾燥終了時重量が前記乾燥装置の許容重量以下であるか否か確認して前記添加物の添加量を設定する添加量設定工程と、を含むことを特徴とする汚泥乾燥方法が提供される。
【0008】
前記添加物選定工程は、前記添加物の最大直径が前記乾燥装置の可動部における最小隙間より小さいか否か確認する工程であってもよい。
【0009】
前記添加量設定工程における前記乾燥装置の許容重量は、乾燥終了時に前記乾燥装置が運転可能な状態であるか否かにより設定されてもよい。
【0010】
前記添加量設定工程は、前記汚泥の投入量、前記汚泥の乾燥開始時含水率及び前記汚泥の乾燥終了時含水率のデータを取得し、前記汚泥の乾燥終了時重量を算出する工程を含んでいてもよい。
【0011】
前記添加量設定工程は、前記添加物の添加量を仮定する工程を含んでいてもよい。
【0012】
前記添加量設定工程は、前記添加物の乾燥開始時含水率のデータを取得し、前記添加物の乾燥終了時重量を算出する工程を含んでいてもよい。
【0013】
前記添加量設定工程は、前記混合物の乾燥終了時重量を算出する工程を含んでいてもよい。
【0014】
前記添加量設定工程は、前記乾燥装置の乾燥終了時許容重量のデータを取得し、前記混合物の乾燥終了時重量が前記許容重量以下であるか否か判断する工程を含んでいてもよい。
【0015】
前記添加物は、前記汚泥と異なる物質であってもよい。
【0016】
また、本発明によれば、汚泥に固形の添加物を添加した混合物を乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に前記汚泥を供給する汚泥供給装置と、前記乾燥装置又は前記汚泥供給装置に前記添加物を供給する添加物供給装置と、前記乾燥装置に蒸気を供給する蒸気供給手段と、を含み、前記添加物供給装置は、前記乾燥装置に投入可能な大きさの前記添加物を前記混合物の乾燥終了時重量が前記乾燥装置の許容重量以下となるように供給するように構成されている、ことを特徴とする汚泥乾燥システムが提供される。
【0017】
前記添加物は、最大直径が前記乾燥装置の可動部における最小隙間より小さくなるように選定されていてもよい。
【0018】
前記乾燥装置の許容重量は、乾燥終了時に前記乾燥装置が運転可能な状態であるか否かにより設定されていてもよい。
【0019】
前記添加物は、前記汚泥と異なる物質であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明に係る汚泥乾燥方法及び汚泥乾燥システムによれば、添加物が乾燥装置に投入可能な大きさであるか否か確認して添加物を選定し、混合物の乾燥終了時重量が乾燥装置の許容重量以下であるか否か確認して添加物の添加量を設定するようにしたことから、汚泥を含む混合物の乾燥時間の短縮及び乾燥装置の撹拌羽根を回転させるモータの負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】汚泥乾燥装置の一例を示す全体構成図である。
図2】一実施形態に係る汚泥乾燥方法を示すフロー図である。
図3】運転時間と蒸気量の関係を示す図であり、(a)は添加物を添加しない場合、(b)は添加物を添加した場合、を示している。
図4】運転時間とモータの電流値の関係を示す図であり、(a)は添加物を添加しない場合、(b)は添加物を添加した場合、を示している。
図5】汚泥乾燥システムの一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図1図5を用いて説明する。ここで、図1は、汚泥乾燥装置の一例を示す全体構成図である。図2は、一実施形態に係る汚泥乾燥方法を示すフロー図である。
【0023】
汚泥乾燥装置1は、例えば、図1に示したように、筒状の本体部2と、本体部2の両端部を塞ぐ一対の蓋体3と、本体部2に汚泥及び添加物を含む被乾燥物を供給する供給口4と、本体部2に供給された汚泥及び添加物を撹拌する複数の撹拌羽根5と、撹拌羽根5を回転させるモータ6と、本体部2のガスを外部に排出する排気口7と、乾燥終了後の乾燥ケーキを外部に排出する排出口8と、を備えている。
【0024】
モータ6は、本体部2の軸方向に挿通されたシャフト9を回転可能に構成されており、シャフト9に撹拌羽根5が配置されている。また、撹拌羽根5及びシャフト9は、汚泥乾燥の熱源となる蒸気が供給可能に構成されていてもよい。伝熱後の蒸気(凝縮水)は撹拌羽根5及びシャフト9の外部に排出される。
【0025】
本体部2は、汚泥乾燥の熱源となる蒸気が供給可能に構成されていてもよい。伝熱後の蒸気(凝縮水)は本体部2の外部に排出される。また、図1に示した供給口4、排気口7及び排出口8の配置は単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。また、汚泥と添加物とを別々に本体部2に供給するように、添加物用の供給口を備えていてもよい。
【0026】
汚泥は、例えば、下水道施設から発生する固体と液体の中間性状を示す泥状の廃棄物である。汚泥は、他の廃水処理施設等から発生するものであってもよいし、鉱工業・農水産業・食品加工産業等の生産活動によって発生するものであってもよい。
【0027】
なお、図1に示した汚泥乾燥装置1は、いわゆるバッチ式の乾燥装置であるが、連続式の乾燥装置であってもよい。
【0028】
乾燥処理は、汚泥乾燥装置1に汚泥及び添加物を投入した後、モータ6を駆動させて撹拌羽根5を回転させて汚泥及び添加物を撹拌しながら、本体部2内に蒸気を供給し、汚泥と添加物との混合物を乾燥させる。このとき、モータ6は所定の間隔で正転及び反転を繰り返すように駆動される。汚泥中の水分は、蒸発し排気口7から排気処理システムに搬送される。乾燥終了後の汚泥(乾燥ケーキ)は排出口8から取り出される。
【0029】
ここで、図3は、運転時間と蒸気量の関係を示す図であり、(a)は添加物を添加しない場合、(b)は添加物を添加した場合、を示している。図4は、運転時間とモータの電流値の関係を示す図であり、(a)は添加物を添加しない場合、(b)は添加物を添加した場合、を示している。
【0030】
図3(a)及び図4(a)に示した図は、下水道施設から発生する汚泥に添加物を添加せずに汚泥を乾燥させた異なる4日の試験データを示したものである。図3(a)に示した蒸気量は、乾燥処理中に排気口7から排気された時間あたりの蒸気量(kg/hr)を示している。図4(a)に示した電流値は、乾燥処理中にモータ6の駆動に要した電流値(A)を示している。なお、汚泥の投入量は各試験日とも2tである。
【0031】
図3(a)に示したように、蒸気量は試験日によってばらつきが大きく、この試験では乾燥開始から8~12時間の運転時間まで蒸気が排出されている。乾燥開始から長時間に渡って蒸気が発生するということは、汚泥の乾燥処理の終了までに時間を要することを意味している。
【0032】
図4(a)に示したように、電流値は乾燥処理の終盤(例えば、乾燥開始から12~16時間の運転時間の範囲)で突出した高い数値を示していることがわかる。これは、汚泥の乾燥が進行し半固体状態になると撹拌羽根5を回転させるモータ6に過大な負荷が生じることを意味している。なお、モータ6は乾燥処理中に正転及び反転を繰り返していることから、その電流値は数分置きに一定(40A程度)のピーク値を示すこととなる。
【0033】
本実施形態に係る汚泥乾燥方法は、乾燥開始から蒸気が発生する時間をできるだけ短くすること、乾燥処理の終盤におけるモータ6の電流値をできるだけ低くすることを目的としている。
【0034】
本実施形態に係る汚泥乾燥方法は、汚泥に固形の添加物を添加した混合物を汚泥乾燥装置1で乾燥する汚泥乾燥方法において、上述の目的を達成するために、添加物の形状を選定し、添加物の添加量を設定することを特徴としている。
【0035】
本実施形態に係る汚泥乾燥方法は、図2に示したように、添加物が汚泥乾燥装置1に投入可能な大きさであるか否か確認して添加物を選定する添加物選定工程Step1と、混合物の乾燥終了時重量が汚泥乾燥装置1の許容重量以下であるか否か確認して添加物の添加量を設定する添加量設定工程Step2と、を含んでいる。
【0036】
添加物選定工程Step1は、添加物の最大直径が汚泥乾燥装置1の可動部における最小隙間より小さいか否か確認する工程である。添加物は、例えば、木材チップ、石炭、金属球、樹脂材等、汚泥と異なる物質であればよい。例えば、汚泥を乾燥させたペレットは、汚泥と同じ物質であり、乾燥処理中に汚泥と一体化してしまうため添加物の選定から除外される。
【0037】
汚泥乾燥装置1の可動部の最小隙間は、例えば、撹拌羽根5の先端と本体部2の内面との隙間、撹拌羽根5と蓋体3との隙間等であり、概ね10~20mm程度である。汚泥乾燥装置1の可動部の最小隙間より添加物の大きさ(例えば、最大直径)が大きい場合には、可動部に添加物が詰まってモータ6の負荷が大きくなる可能性があるため、添加物の大きさを制御する必要がある。
【0038】
例えば、図2に示したように、添加物選定工程Step1は、添加物を選定する工程(Step11)と、添加物の最大直径のデータを取得し、汚泥乾燥装置1の可動部最小隙間のデータを取得し、これらのデータを比較して添加物が汚泥乾燥装置1に投入可能か否かを判断する工程(Step12)を含む。
【0039】
また、乾燥後の汚泥を肥料又は燃料として利用する場合には、汚泥乾燥装置1から排出された乾燥ケーキをペレット製造装置でペレット化する場合がある。したがって、添加物の大きさが汚泥乾燥装置1の可動部の最小隙間より小さい場合であっても、ペレット製造装置の成形機に投入可能な大きさとなるように添加物の大きさ(最大直径)を更に小さくしてもよい。
【0040】
なお、ペレット製造装置が乾燥ケーキを投入可能な大きさに調整する粉砕手段を備えているような場合には、添加物選定工程Step1において、添加物の最大直径を選定する条件に乾燥処理以外の条件を追加する必要はない。
【0041】
添加量設定工程Step2は、乾燥処理の終盤におけるモータ6の負荷を考慮して添加物の添加量を設定する工程である。この添加量設定工程Step2における汚泥乾燥装置1の許容重量は、例えば、乾燥終了時に汚泥乾燥装置1が運転可能な状態であるか否かにより設定される。
【0042】
例えば、図2に示したように、添加量設定工程Step2は、汚泥の投入量のデータ、汚泥の乾燥開始時含水率のデータ及び汚泥の乾燥終了時含水率のデータを取得し、汚泥の乾燥終了時重量を算出する工程(Step21)を含む。
【0043】
汚泥の投入量は、汚泥乾燥装置1に投入可能な最大重量以下に設定される。具体的には、汚泥乾燥装置1に投入可能な最大重量に添加物を添加可能な余裕代を持たせた所定の閾値以下の重量に設定される。汚泥の投入量は、汚泥乾燥装置1の規模によって異なるものである。
【0044】
汚泥の乾燥開始時含水率のデータは、汚泥乾燥装置1に投入される汚泥の含水率を計測することによって取得することができる。下水道施設のように日や季節によって汚泥の性状が異なる場合には、その都度、含水率を計測することが好ましい。また、食品加工産業等の生産活動によって発生する汚泥のように、汚泥の含水率が制御されている場合には、含水率を計測せずに制御値を使用してもよい。
【0045】
汚泥の乾燥終了時含水率のデータは、汚泥乾燥装置1により排出される乾燥ケーキの目標含水率から取得する。
【0046】
汚泥の乾燥終了時重量は、例えば、汚泥の投入量が2.0t、汚泥の乾燥開始時含水率が80%の場合、乾燥開始時の汚泥に含まれる水分が1.6tであり固形分が0.4tである。汚泥の乾燥終了時含水率が20%とすれば、乾燥終了時の汚泥に含まれる水分は0.1t、固形分は0.4tと計算することができ、汚泥の乾燥終了時重量は0.5tと算出することができる。
【0047】
添加量設定工程Step2は、添加物の添加量を仮定する工程(Step22)を含む。汚泥乾燥装置1に投入可能な最大重量又は余裕代を含む閾値と汚泥の投入量との差分の範囲内で添加物の添加量を仮に設定する。例えば、汚泥乾燥装置1に投入可能な最大重量が2.4tであったとすれば、乾燥開始時に最大0.4t分の添加物を添加可能である。また、例えば、余裕代を含む閾値が2.2tであったとすれば、添加物の添加量の上限は0.2t(=200kg)に設定することができる。
【0048】
次に、添加量設定工程Step2は、添加物の乾燥開始時含水率のデータを取得し、添加物の乾燥終了時重量を算出する工程(Step23)を含む。例えば、添加物が含水率15%の木材チップであり、仮設定した添加量が100kgであり、木材チップが乾燥処理中に水分を吸収するものとする。このとき、添加物の乾燥開始時に含まれる水分が15kgであり固形分が85kgであることから、添加物の乾燥終了時含水率が20%とすれば、乾燥終了時の添加物に含まれる水分は21.25kg、固形分は85kgと計算することができ、添加物の乾燥終了時重量は106.25kgと算出することができる。
【0049】
また、添加物が含水率30%の木材チップであり、仮設定した添加量が100kgであるものとする。このとき、添加物の乾燥開始時に含まれる水分が30kgであり固形分が70kgであることから、添加物の乾燥終了時含水率が20%とすれば、乾燥終了時の添加物に含まれる水分は17.5kg、固形分は70kgと計算することができ、添加物の乾燥終了時重量は87.5kgと算出することができる。
【0050】
なお、添加物が水分を吸収しない物質又は水分を蒸発しない物質である場合には、添加物の乾燥開始時重量と乾燥終了時重量は同じ数値に設定することができる。
【0051】
次に、添加量設定工程Step2は、混合物(汚泥+添加物)の乾燥終了時重量を算出する工程(Step24)を含む。具体的には、前工程Step21,23で算出された汚泥及び添加物の乾燥終了時重量の総和を算出する。
【0052】
例えば、汚泥の乾燥終了時重量が0.5t、添加物の乾燥終了時重量は106.25kgの場合には、混合物の乾燥終了時重量は606.25kgと算出することができる。また、例えば、汚泥の乾燥終了時重量が0.5t、添加物の乾燥終了時重量は87.5kgの場合には、混合物の乾燥終了時重量は587.5kgと算出することができる。
【0053】
次に、添加量設定工程Step2は、汚泥乾燥装置1の乾燥終了時許容重量のデータを取得し、混合物の乾燥終了時重量が許容重量以下であるか否か判断する工程(Step25)を含む。乾燥終了時許容重量のデータは、汚泥乾燥装置1の設計仕様又は試験結果から取得することができる。
【0054】
例えば、汚泥乾燥装置1が最大2.4tの汚泥(含水率80%)を故障することなく乾燥(含水率20%)できるものとすれば、乾燥終了時許容重量は0.6t(=600kg)と算出することができる。
【0055】
このとき、前工程Step24で算出した混合物の乾燥終了時重量が606.25kgの場合(添加物が含水率15%の木材チップ100kgの場合)は、汚泥乾燥装置1の許容重量を超えていることから、添加物の添加量を仮定する工程(Step22)に戻って添加量を再仮定する。
【0056】
例えば、添加物を含水率15%の木材チップ80kgに仮定すると、混合物の乾燥終了時重量は585kgと算出することができ、汚泥乾燥装置1の許容重量(600kg)以下となり、添加物の添加量を80kgに設定することができる。
【0057】
また、前工程Step24で算出した混合物の乾燥終了時重量が587.5kgの場合(添加物が含水率30%の木材チップ100kgの場合)は、汚泥乾燥装置1の許容重量(600kg)以下であることから、添加物の添加量を100kgに設定することができる。
【0058】
ここで、図3(b)及び図4(b)は、添加物が含水率15%・最大直径15mmの木材チップであり、添加量が60kgである場合の試験結果を示したものである。図3(b)に示したように、全ての試験日において8~9時間の運転時間で蒸気の発生がなくなっており、図3(a)の添加物を添加しない場合と比較して乾燥時間を短縮することができる。
【0059】
この現象は、上述したように汚泥に所定の添加物を添加したことにより、混合物が乾燥処理中に半固体状態になった場合であっても、添加物を起点にして混合物を破壊させることができ、汚泥の伝熱面積を拡張することができるため、すなわち、半固体状態の汚泥から水分の抜けやすい破断面を増やすことができるためであるものと考えられる。
【0060】
また、図4(b)に示したように、全ての試験日において乾燥処理の終盤におけるモータ6の電流値を安定させることができ、図4(a)の添加物を添加しない場合と比較してモータ6の負荷を軽減することができる。
【0061】
次に、上述した汚泥乾燥装置1を用いた汚泥乾燥システム11について、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、汚泥乾燥システムの一例を示す全体構成図である。
【0062】
汚泥乾燥システム11は、例えば、図5に示したように、汚泥に固形の添加物を添加した混合物を乾燥させる汚泥乾燥装置1と、汚泥乾燥装置1に汚泥を供給する汚泥供給装置12と、汚泥供給装置12に添加物を供給する添加物供給装置13と、汚泥乾燥装置1に蒸気を供給する蒸気供給手段14と、乾燥ケーキをペレット化するペレット製造装置15と、を備えている。
【0063】
汚泥供給装置12は、例えば、汚泥乾燥装置1に投入する汚泥を含む混合物の供給量を調整するホッパである。汚泥供給装置12には、例えば、下水道施設・食品加工設備等で発生した汚泥が搬送されて投入される。
【0064】
添加物供給装置13は、例えば、図2に示したフローにより大きさ及び添加量が設定された添加物が供給される。また、添加物供給装置13は、添加物から異物を除去したり、設定した大きさの添加物を選別したり、設定した大きさとなるように添加物を粉砕したりする機能を含んでいてもよい。なお、図5では、添加物供給装置13から汚泥供給装置12に添加物を供給する場合を図示しているが、添加物供給装置13は、添加物を汚泥乾燥装置1に供給するように構成されていてもよい。
【0065】
蒸気供給手段14は、例えば、給水された水を加熱して蒸気を生成するボイラ14aと、蒸気を貯留するアキュムレータ14bと、を備えている。伝熱後の蒸気(凝縮水)は、例えば、ボイラ14aに回収される。なお、汚泥乾燥装置1の乾燥処理に伴って生じるガスは、例えば、排気処理システムに搬送される。
【0066】
ペレット製造装置15は、汚泥乾燥装置1により乾燥された汚泥及び添加物の混合物(乾燥ケーキ)を所定の大きさに圧縮してペレット化する装置である。ペレット製造装置15は、乾燥後の汚泥を肥料又は燃料として利用する場合に用いられることが多い。
【0067】
添加物の大きさ(最大直径)は、汚泥乾燥装置1の可動部の最小隙間より小さく、かつ、ペレット製造装置15の成形機に投入可能な大きさに設定してもよい。なお、ペレット製造装置15が破砕手段を備えているような場合には、添加物の大きさ(最大直径)がペレット製造装置15の成形機に投入可能な大きさであるか否かは考慮しなくてもよい。
【0068】
上述した本実施形態に係る汚泥乾燥システム11によれば、汚泥乾燥装置1に投入可能な大きさの添加物を混合物の乾燥終了時重量が汚泥乾燥装置1の許容重量以下となるように供給することができ、乾燥時間の短縮及び乾燥装置の撹拌羽根を回転させるモータの負荷の軽減を図ることができる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1 汚泥乾燥装置
2 本体部
3 蓋体
4 供給口
5 撹拌羽根
6 モータ
7 排気口
8 排出口
9 シャフト
11 汚泥乾燥システム
12 汚泥供給装置
13 添加物供給装置
14 蒸気供給手段
14a ボイラ
14b アキュムレータ
15 ペレット製造装置
Step1 添加物選定工程
Step2 添加量設定工程

図1
図2
図3
図4
図5