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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027805
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240222BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240222BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240222BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240222BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240222BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240222BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/12
H02J7/00 X
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/00 P
H02J7/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130929
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA01
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA20
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BC21
5H125CA01
5H125CD02
5H125EE06
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】電動モータの始動の適否に関する情報を運転者に報知可能な電動作業車を提供する。
【解決手段】電動作業車は、電動作業車の駆動を制御する駆動制御ユニット6Bと、電動作業車の車両状態情報を表示する表示ユニット70と、表示ユニット70における表示を制御する報知制御ユニット7とを備え、表示ユニット70は、電動モータ1の始動許可を示す始動許可表示体を備え、駆動制御ユニット6Bは、電動モータの始動許可判定を行う始動判定部62を備え、報知制御ユニット7は、始動判定部62の判定結果に基づいて始動許可表示体に対する表示制御信号を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動する電動作業車であって、
前記電動作業車の駆動を制御する駆動制御ユニットと、前記電動作業車の車両状態情報を表示する表示ユニットと、前記表示ユニットにおける表示を制御する報知制御ユニットとが備えられ、
前記表示ユニットは、前記電動モータの始動許可を示す始動許可表示体を備え、
前記駆動制御ユニットは、前記電動モータの始動許可判定を行う始動判定部を備え、
前記報知制御ユニットは、前記始動判定部の判定結果に基づいて前記始動許可表示体に対する表示制御信号を生成する、電動作業車。
【請求項2】
前記バッテリの充電時には、前記始動判定部は始動禁止を判定する請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記表示ユニットは、前記バッテリの充電状態を示す充電表示体を備え、前記充電表示体は、正常充電中は正常充電を表示し、異常充電終了時には異常充電終了を表示する請求項1に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記表示ユニットは、電動駆動系のエラーを表示する電動駆動警告表示体と、車両状態エラーを表示する車両状態警告表示体とを備えている請求項1に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記表示ユニットは、前記バッテリのバッテリ残量を表示するバッテリ残量表示体と、前記バッテリの温度を表示するバッテリ温度表示体とを備えている請求項1に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記駆動制御ユニットは、電動駆動系の状態に基づいて、前記電動モータの出力を制限する出力制限部を備え、前記表示ユニットは、前記電動モータの出力制限時に当該出力制限を示す出力制限表示体を備える請求項1に記載の電動作業車。
【請求項7】
前記報知制御ユニットは、音声報知デバイスを介して、運転者に報知すべき情報を音声で報知する請求項1から6のいずれか一項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動する電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動作業車は、バッテリ及び電動モータを動力源とする走行車両であるので、バッテリの状態に関するバッテリ情報及び電動モータの状態に関する電動モータ情報は重要である。したがって、このバッテリ情報及び電動モータ情報は、電動作業車の管理者(運転者)に報知する必要がある。特許文献1に記載された電動作業車では、バッテリの残り容量が表示装置に表示される。
【0003】
特許文献2に記載された充電式電動車両では、表示装置の表示部に、稼働情報が表示される。稼働情報には、車両累積稼働時間、及び、駆動用バッテリに関する情報である駆動用バッテリの温度、バッテリ残量、推定稼働可能時間が含まれる。さらに、電動車両が普通充電モード又は急速充電モードである場合、バッテリ残量、充電に関する経過時間や残り時間、普通充電中又は急速充電中であることを示す情報、充電の進捗を示す情報が表示される。また、運転者が表示装置の操作部を操作することで、駆動用バッテリの電圧や温度もしくは電流などの表示も可能である。さらに、この充電式電動車両では、駆動用バッテリの異常や高電圧回路の異常などを起因とする電動モータの動作不能が判定され、その判定結果を表示する表示灯も備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-080703号公報
【特許文献2】特開2021-123882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動作業車においては、電動モータが動作可能であっても、安全等を考慮すれば、電動モータの始動が不適切であり場合がある。このことから、電動モータの単純な動作可否判定だけでなく、現状の電動作業車の状態が電動モータの始動に適しているかどうかが判定されること、つまり、電動モータの始動タイミングの適否判定が行われると、好都合である。しかしながら、特許文献1や特許文献2などの従来の電動作業車では、電動モータ始動タイミングの適否判定の結果を表示するという技術思想は考慮されていない。このため、電動モータを始動させてはいけない状況であるにもかかわらず、電動作業車に不慣れな運転者などは、電動モータを始動しまうという不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動作業車は、充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動するものであって、前記電動作業車の駆動を制御する駆動制御ユニットと、前記電動作業車の車両状態情報を表示する表示ユニットと、前記表示ユニットにおける表示を制御する報知制御ユニットとが備えられ、
前記表示ユニットは、前記電動モータの始動許可を示す始動許可表示体を備え、前記駆動制御ユニットは、前記電動モータの始動許可判定を行う始動判定部を備え、前記報知制御ユニットは、前記始動判定部の判定結果に基づいて前記始動許可表示体に対する表示制御信号を生成する。
【0007】
この構成によれば、電動作業車の駆動を制御する駆動制御ユニットの始動判定部によって、電動モータの始動許可判定が行われ、この判定結果が始動許可であれば、表示ユニットの始動許可表示体が電動モータの始動許可を表示する。つまり、電動モータの始動の適否に関する情報が、始動許可表示体を通じて運転者に報知される。運転者は、始動許可表示体が電動モータの始動許可を示していれば、電動モータの始動を行い、始動許可表示体が始動許可を示していなければ、電動モータの始動を行わない。これにより、運転者は、適正なタイミングで電動モータを始動することができる。
【0008】
特に不適切な電動モータの始動タイミングは、バッテリの充電時である。このため、本発明では、前記バッテリの充電時には、前記始動判定部は始動禁止を判定する。
【0009】
本発明の実施形態の1つでは、前記表示ユニットは、前記バッテリの充電状態を示す充電表示体を備え、前記充電表示体は、正常充電中は正常充電を表示し、異常充電終了時には異常充電終了を表示する。この構成では、表示ユニットに、始動許可表示体以外に、バッテリの充電状態を示す充電表示体が備えられているので、運転者は、電動モータの始動タイミングだけでなく、電動モータの動作に影響する充電状態も、把握可能である。
【0010】
本発明の実施形態の他の1つでは、前記表示ユニットは、電動駆動系のエラーを表示する電動駆動警告表示体と、車両状態エラーを表示する車両状態警告表示体とを備えている。この構成では、表示ユニットを通じて、運転者は、電動作業車の電動モータを含む電動駆動系に問題が生じていること、及び電動作業車の車両状態に問題が生じていることを、把握できる。
【0011】
さらに好適な、本発明の実施形態では、前記表示ユニットは、前記バッテリのバッテリ残量を表示するバッテリ残量表示体と、前記バッテリの温度を表示するバッテリ温度表示体とを備えている。運転者が、バッテリ管理としてまず注目しなければならないバッテリ残量とバッテリ温度とが、表示ユニットを通じて、その他の情報とともに示されることは、電動作業車の総合的な状態の把握に有利である。
【0012】
走行状態、作業状態、充電状態等によって規定される電動駆動系の状態によっては、電動モータの動作が不適当であるとしても、低出力であれば、電動モータの動作が許可される場合がある。また、緊急避難等のためには、低出力に制限されても、電動モータの動作を続行させる必要がある。このような低出力制限下での電動モータの動作は、運転者が把握していることが好ましい。このことから本発明では、前記駆動制御ユニットは、電動駆動系の状態に基づいて、前記電動モータの出力を制限する出力制限部を備え、前記表示ユニットは、前記電動モータの出力制限時に当該出力制限を示す出力制限表示体を備える。
【0013】
種々の情報を表示ユニットで表示することで、上述したような利点が得られるが、運転者は前方を注視する必要があり、また、表示ユニットに日光が差し込んだ場合、表示が見えづらくなる。このような問題に対処するため、本発明では、前記報知制御ユニットは、音声報知デバイスを介して、運転者に報知すべき情報を音声で報知する。特に、異常発生時には、当該異常を報知する音声警告が行われる。この構成では、視覚情報と音声情報とが視覚的かつ聴覚的に運転者に伝えられるので、運転者への報知情報が途絶える不都合が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】モータや走行用バッテリの配置を示す左側面図である。
図3】動力伝達の流れを示す模式図である。
図4】ステアリングホイール及びフロントパネルとの正面図である。
図5】メータパネルの正面図である。
図6】バッテリシステムの機能部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0016】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本発明に係る電動作業車の一例としてのトラクタについて説明する。図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0017】
トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。カバー部材12は、機体前部に配置されている。運転部3は、カバー部材12の後方に配置されている。
【0018】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。ステアリングホイール32は、運転部3に搭乗して運転座席31に着座した運転者によって操作可能である。ステアリングホイール32の操作により左右の前車輪10は操向操作される。運転座席31の前方には、フロントパネル13が設けられており、フロントパネル13の一部がメータパネル13aとして形成されている。運転者は、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0019】
トラクタは、走行用バッテリであるバッテリ4を備えている。カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りで、開閉揺動可能である。カバー部材12が閉状態であるとき、バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。カバー部材12の前部分における左側面には、充電用カバー12aが揺動開閉可能に設けられている。この充電用カバー12aが開放されることで、充電時に給電ケーブルが差し込まれる充電電力接続部44が露出する。
【0020】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及び電動モータ1を備えている。バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換して、電動モータ1に供給する駆動用電力を生成する。駆動用電力は、インバータ14によって生成される交流電力である。
【0021】
図2及び図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0022】
油圧ポンプ15aは、電動モータ1からの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が無段階に変速されるように構成されている。
【0023】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0024】
図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。電動モータ1から出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0025】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0026】
図4には、ステアリングホイール32及びフロントパネル13が示されており、図5には、フロントパネル13に組み込まれたメータパネル13aが示されている。メータパネル13aは、運転者に種々の情報を報知する表示ユニット70として、構成されている。表示ユニット70は、左LED表示部70Lと、右LED表示部70Rと、中央LED表示部70Cと、液晶表示部70Dとを備えている。左LED表示部70Lと、右LED表示部70Rと、中央LED表示部70Cとは、液晶表示部70Dを下方から包囲している。
【0027】
左LED表示部70Lは、左方向指示器LED71a、電装品用バッテリLED71b、パーキングブレーキLED71c、マスタ警告LED71d、等を含む。左方向指示器LED71aは、左方向への旋回を示す表示体である。電装品用バッテリLED71bは、電装品用バッテリ41(図6参照)の状態を示す表示体である。パーキングブレーキLED71cは、パーキングブレーキのON・OFFを示す表示体である。マスタ警告LED71dは、バッテリ制御系、電動駆動系、機械制御系における異常発生を示す車両状態エラーが検知されると生成される車両状態情報に基づいて、点灯される車両状態警告表示体である。
【0028】
右LED表示部70Rは、右方向指示器LED72a、バッテリLED72b、バッテリ温度LED72c、冷却水温LED72d、等を含む。右LED表示部70Rは、右方向への旋回を示す表示体である。バッテリLED72bは、電動モータ1の電力源としてのバッテリ4の状態、特に低電圧を警告する表示体である。バッテリ温度LED72cは、バッテリ4の高温度を警告する表示体である。冷却水温LED72dは、インバータ14等を冷却する冷却水の高温度を警告する表示体である。
【0029】
中央LED表示部70Cは、始動許可LED73a、充電状態LED73b、出力制限LED73c、電動系LED73d、等を含む。始動許可LED73aは、電動モータ1の始動が許可される場合に点灯する始動許可表示体として用いられ、「READY」という文字を表示する。バッテリ4の充電中は、走行禁止であるため、始動許可LED73aは消灯する。コンセントの形状を示している充電状態LED73bは、バッテリ4の充電状態を示す充電表示体として用いられる。充電電力接続部44に給電ケーブルが差し込まれ、充電制御処理が開始されると、充電状態LED73bは、点灯される。さらに、充電状態LED73bは、正常充電中には正常表示(点灯)され、異常充電終了時には異常充電終了表示(高速点滅)される。出力制限LED73cは、バッテリ4やインバータ14の状態により、電動モータ1の出力が制限された場合に、点灯する出力制限表示体として用いられる。電動系LED73dは電動駆動警告表示体として用いられ、電動モータ1を含む電動駆動系において異常が発生した場合に点灯する。
【0030】
液晶表示部70Dには、バッテリ残量表示領域74a、バッテリ温度表示領域74b、回転数表示領域74c、多目的表示領域74d、等が含まれている。バッテリ残量表示領域74aは、セグメント棒グラフとして形成されており、バッテリ4のバッテリ残量を段階的に表示するバッテリ残量表示体として用いられる。バッテリ温度表示領域74bも、セグメント棒グラフとして形成されており、バッテリ4のバッテリ温度を段階的に表示するバッテリ温度表示体として用いられる。回転数表示領域74c及び多目的表示領域74dは、デジタル数値表示で一般的に用いられている7セグメント表示体である。多目的表示領域74dは、通常はアワーメータや走行当たりのバッテリ消費メータとして用いられるが、エラー発生時には、エラーコードを表示する。
【0031】
図6に示すように、表示ユニット70は、報知制御ユニット7の表示ユニット70からの表示制御信号により表示制御される。報知制御ユニット7は制御ユニット6と接続されており、制御ユニット6からの報知指令に基づいて、表示制御信号を生成する。報知制御ユニット7は、メータパネル13aに組み込まれた表示ユニット70及び警告音や人工音声などの音声警告を出力する音声報知デバイス80を制御し、走行状態、作業状態、バッテリ状態(充電量や温度)、走行始動可否、等を視覚的あるいは聴覚的に報知する。
【0032】
〔モータ・バッテリ制御系の構成〕
図6は、バッテリ4と電動モータ1との制御に係る構成を模式的に示している。モータ・バッテリ制御系は、アクセル装置33と、キー装置34と、制御ユニット6と、インバータ14とを備えている。制御ユニット6は電動モータ1の作動を制御する。アクセル装置33は、運転部3に配置されている。アクセル装置33の構造は図示されていないが、アクセル装置33は、揺動操作可能なレバーと、レバーの揺動操作によって操作されるポテンショメータとを備えている。アクセル装置33は制御ユニット6と接続されている。キー装置34も制御ユニット6に接続されている。キー装置34はフロントパネル13に設けられ、制御ユニット6に対するON操作(電源接続)及びOFF操作(電源遮断)を行う。
【0033】
制御ユニット6は、さらに、インバータ14と接続されており、アクセル装置33の指令に応じて、インバータ14に駆動指令を与える。インバータ14は、制御ユニット6の指令に応じて、バッテリ4から電動モータ1に供給される電力を調整して電動モータ1の出力を制御する。
【0034】
バッテリ4は、充電制御部43によって、充電電力接続部44に接続された給電装置45から充電される。充電電力接続部44には給電用ソケットが設けられており、充電時には、給電用ソケットは、給電装置45からの充電ケーブルの給電用コネクタと接続される。
【0035】
バッテリ4は、例えば、リチウムイオンバッテリであり、低電圧の小型の単位電池であるバッテリセル40を多数積層した状態で構成されている。バッテリ状態を検出するバッテリ状態検出部5には、バッテリ電圧検出器51とバッテリ温度検出部52とが含まれている。バッテリ電圧検出器51は、直列に接続されている複数のバッテリセル40同士の接続点の電圧をセル電圧として検出することができる。バッテリ電圧検出器51とバッテリ温度検出部52の検出信号は、制御ユニット6に送られる。
【0036】
トラクタには、バッテリ4の他に、制御ユニット6及びその他の電装品に電力を供給する電装品用バッテリ41も備えられている。電装品用バッテリ41は、電装品を駆動するために低電圧(12ボルト)の電力を供給する。電装品用バッテリ41は、DC/DCコンバータ42を介してバッテリ4から供給される電力によって充電される。DC/DCコンバータ42は、制御ユニット6によって駆動制御される。電装品用バッテリ41の充電状態も制御ユニット6によって管理される。
【0037】
制御ユニット6は、本発明に特に関係する機能要素として、充電制御ユニット6Aと駆動制御ユニット6Bとを備えている。充電制御ユニット6Aは、バッテリ4に対する充放電を制御する。駆動制御ユニット6Bは、このトラクタの駆動を制御する。
【0038】
充電制御ユニット6Aはバッテリ管理部60を有する。バッテリ管理部60は、充電電力接続部44の給電用ソケットに給電装置45からの充電ケーブルの給電用コネクタが差し込まれたことが検出されると、充電モードとなる。バッテリ管理部60から、充電制御部43に充電開始指令が送られると、充電制御部43の充電プログラムが実行され、バッテリ4が充電される。充電が適切に終了すると、制御ユニット6は休止状態となり、電源が遮断される。この充電処理においてエラーが発生すると、バッテリ管理部60は、エラー情報を生成して、報知制御ユニット7に送る。
【0039】
駆動制御ユニット6Bは、モータ制御部61、始動判定部62、出力制限部63を有する。モータ制御部61は、電動モータ1の駆動を制御する。具体的には、アクセル装置33からの信号に基づいて、電動モータ1を駆動するための駆動信号を生成し、インバータ14に与える。始動判定部62は、始動許可判定ルールに基づいて、電動モータ1の始動許可判定を行う。例えば、始動許可判定ルールには、「バッテリ4の充電時は始動禁止」、「キー装置34によってON操作が行われた際に、電動駆動制御系に問題がなければ、始動許可」、「バッテリ電圧の低下やバッテリ温度の上昇などバッテリ状態が限界値を超えると始動禁止」などが含まれる。始動判定部62による判定結果は、報知制御ユニット7に送られ、表示ユニット70の記始動許可表示体である始動許可LED73aの表示制御に用いられる。
【0040】
出力制限部63は、バッテリ電圧の低下やバッテリ温度の上昇などバッテリ状態が悪化した場合、電動モータ1の出力を前設定された制限出力値に制限するように、モータ制御部61に出力制限指令を与える。電動モータ1の出力制限が実行された場合、報知制御ユニット7は、表示ユニット70の出力制限表示体である出力制限LED73cを点灯させる。
【0041】
〔別実施の形態〕
(1)充電時における始動禁止は、給電装置45からの充電ケーブルが充電電力接続部44に接続された時点で判定されてもよいし、実際に充電処理が実行された時点で判定されてもよい。
【0042】
(2)表示ユニット70における各表示体の形態は、図5に示された形態に限定されない。その配置も、少なくとも部分的には、フロントパネル13以外の場所でもよい。また、報知制御ユニット7、表示ユニット70、音声報知デバイス80の少なくとも一部、あるいは全体が、タブレットコンピュータのような汎用端末で構成されてもよい。
【0043】
(3)図5で示された機能ブロック図の各機能ブロックは、複数に分割されてもよいし、複数の機能ブロックが統合されてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、トラクタに限らず、田植機、コンバイン、建設機械等、種々の電動作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 :電動モータ
4 :バッテリ
43 :充電制御部
44 :充電電力接続部
5 :バッテリ状態検出部
51 :バッテリ電圧検出器
52 :バッテリ温度検出部
6 :制御ユニット
6A :充電制御ユニット
60 :バッテリ管理部
6B :駆動制御ユニット
61 :モータ制御部
62 :始動判定部
63 :出力制限部
7 :報知制御ユニット
70 :表示ユニット
70C :中央LED表示部
70D :液晶表示部
70L :左LED表示部
70R :右LED表示部
71d :マスタ警告LED(車両状態警告表示体)
72b :バッテリLED(充電表示体)
73a :始動許可LED(始動許可表示体)
73b :充電状態LED
73c :出力制限LED(出力制限表示体)
73d :電動系LED(伝動駆動警告表示体)
13a :メータパネル
74a :バッテリ残量表示領域(バッテリ残量表示体)
74b :バッテリ温度表示領域(バッテリ温度表示体)
80 :音声報知デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6