(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027806
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 53/14 20190101AFI20240222BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240222BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240222BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60L53/14
B60L50/60
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130930
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA03
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA20
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BC21
5H125CD04
5H125DD03
5H125DD04
5H125DD05
5H125EE47
5H125EE48
(57)【要約】
【課題】バッテリ充電時における、盗難防止などのセキュリティが強化された電動作業車の提供。
【解決手段】電動作業車は、人為操作デバイスの第1操作に応答して制御ユニットを動作状態に切り替えるとともに人為操作デバイスの第2操作に応答して制御ユニットを休止状態に切り替える制御状態切替部35と、バッテリの充電を制御する充電制御部43とが備えられ、制御ユニットは、電動モータ1の駆動を制御するモータ制御部61と、バッテリの充電を可能にする充電モードと電動モータ1の駆動を可能にする作業モードとを設定するモード設定部62と、充電終了後の電動モータ1の始動を禁止する始動禁止部63と、始動禁止を解除する始動禁止解除部64とを備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動する電動作業車であって、
前記電動作業車を制御する制御ユニットと、人為操作デバイスの第1操作に応答して前記制御ユニットを動作状態に切り替えるとともに前記人為操作デバイスの第2操作に応答して前記制御ユニットを休止状態に切り替える制御状態切替部と、前記バッテリへの充電電力を受ける充電電力接続部と、前記充電電力による前記バッテリの充電を制御する充電制御部とが備えられ、
前記制御ユニットは、前記電動モータの駆動を制御するモータ制御部と、前記バッテリの充電を可能にする充電モードと前記電動モータの駆動を可能にする作業モードとを設定するモード設定部と、充電終了後の前記電動モータの始動を禁止する始動禁止部と、前記電動モータの始動禁止を解除する始動禁止解除部とを備えている電動作業車。
【請求項2】
前記始動禁止部による前記始動禁止は、前記人為操作デバイスの前記第1操作への操作によって解除される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記充電モード時における充電開始指令後の所定時間内に前記バッテリの充電が開始されない場合、前記制御ユニットの電源が遮断される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記バッテリの充電終了後、前記人為操作デバイスを用いた前記第2操作の状態が維持されている場合、前記制御ユニットの電源が遮断される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記バッテリの充電終了後、前記人為操作デバイスを用いた前記第1操作の状態が維持されていれば、所定時間経過後に前記制御ユニットの電源が遮断される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記作業モードにおけるモータ始動指令後に、前記電動モータが始動状態に移行しない場合、所定待機時間後に前記制御ユニットの電源が遮断される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項7】
エラー発生により前記電動モータが停止した場合、前記制御ユニットの電源が遮断される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項8】
前記制御ユニットは、給電装置からの給電線が前記充電電力接続部に接続されたことに応答して、前記電動モータを停止状態にする請求項1に記載の電動作業車。
【請求項9】
前記充電電力接続部が充電接続されるとともに、前記人為操作デバイスが前記第2操作の状態から前記第1操作へ操作されることで、前記充電モードが設定される請求項1から8のいずれか一項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動する電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動作業車では、例えば、特許文献1に記載されるように、バッテリの電力が消費されると、バッテリは接続口を介して外部の給電装置と接続され、この給電装置からの電力により、バッテリが充電される。バッテリの充電に必要な時間は、1時間を超えるので、充電の間に、運転者(管理人)が充電場所から離れることがあり、その際、電動作業車が盗難される可能性がある。
【0003】
プラグイン自動車では、道路沿い等に設けられた充電ステーションに駐車して、バッテリの充電が行われることが一般的である。例えば、特許文献2に記載されたプラグイン自動車管理システムでは、プラグイン自動車には侵入センサ及びカメラが設けられており、充電ステーションには画像モニタが設けられている。侵入センサがプラグイン自動車に対する不正操作を検出したときには、カメラによって撮影した映像を画像モニタに表示する。これにより、充電ステーションにおけるバッテリ充電時のセキュリティが強化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-000957号公報
【特許文献2】特開2010-182239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動作業車が利用可能な充電ステーションは、あまり普及されていない。また、充電時に機能する盗難防止用カメラなどを電動作業車に搭載することは、照明が必要な夜間の撮影を考慮すると、環境問題やコスト上の問題が生じる。このような実情に鑑み、バッテリ充電時における、盗難防止などのセキュリティがより効果的に強化された電動作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動作業車は、充電可能なバッテリから給電される電動モータの動力によって駆動するものであって、前記電動作業車を制御する制御ユニットと、人為操作デバイスの第1操作(例えば、ON操作)に応答して前記制御ユニットを動作状態に切り替えるとともに前記人為操作デバイスの第2操作(例えば、OFF操作)に応答して前記制御ユニットを休止状態に切り替える制御状態切替部と、前記バッテリへの充電電力を受ける充電電力接続部と、前記充電電力による前記バッテリの充電を制御する充電制御部とが備えられ、
前記制御ユニットは、前記電動モータの駆動を制御するモータ制御部と、前記バッテリの充電を可能にする充電モードと前記電動モータの駆動を可能にする作業モードとを設定するモード設定部と、充電終了後の前記電動モータの始動を禁止する始動禁止部と、前記電動モータの始動禁止を解除する始動禁止解除部とを備えている。
【0007】
この構成によれば、バッテリの充電が終了しても、始動禁止部によって電動モータの始動が禁止されているので、この始動禁止が解除されない限り、電動モータは始動しない。このため、バッテリ充電が終了した電動作業車が、第三者によって走行され、盗難される不都合がなくなる。
【0008】
始動禁止部による電動モータの始動禁止は、電動作業車の正規の運転者(管理者)によって、解除されなければならない。この解除操作は、電動作業車の正規の運転者にとって、できるだけ簡易であることが好ましい。このことから、本発明では、前記始動禁止部による前記始動禁止は、前記人為操作デバイスの前記第1操作への操作によって解除される。なお、この人為操作デバイスは、電動作業車への搭乗が可能になる動作(ドアの開放など)などに必要となる操作キーと兼用すると、好都合である。
【0009】
1つの実施形態では、充電モードの設定下で、人為操作デバイスの操作により充電開始指令が発令されることにより、充電が開始する。このような実施形態において、充電開始指令が発令されても、バッテリの充電が開始されない場合、何らかの異常発生と見なされる。したがって、そのような場合には、制御ユニットの電源が遮断されることが好ましい。このことから、実施形態の1つでは、前記充電モード時における充電開始指令後の所定時間内(例えば1分以内)に前記バッテリの充電が開始されない場合、前記制御ユニットの電源が遮断される。
【0010】
バッテリの充電が終了した時に、人為操作デバイスを用いた第2操作状態(OFF状態)が維持されている場合、少なくともしばらくの間は制御系の動作が不要であるとみなされるので、制御ユニットの電源を遮断することが、省エネや盗難防止の観点から好ましい。このことから、本発明では、前記バッテリの充電終了後、前記人為操作デバイスを用いた前記第2操作の状態が維持されている場合、前記制御ユニットの電源が遮断される。
【0011】
また、バッテリの充電が終了した時に、制御系が動作状態であれば、すぐに制御系の動作が要求される可能性があるので、しばらくの間、その状態を維持し、所定時間の経過後に制御ユニットの電源が遮断されることが好ましい。このことから、本発明では、前記バッテリの充電終了後、前記人為操作デバイスを用いた前記第1操作の状態(ON状態)が維持されていれば、所定時間経過後(例えば1分後)に前記制御ユニットの電源が遮断される。
【0012】
電動作業車の走行が可能となる作業モードにおいて、制御ユニットの制御系を走行制御が可能となるように、人為操作デバイスを用いて電動モータに対するモータ始動指令が発令されても、電動モータが始動可能状態にならない場合がある。このような場合は、制御ユニット等に問題が生じているとみなされる。このため、そのような問題による不都合を回避するために、本発明では、前記作業モードにおけるモータ始動指令後に、前記電動モータが始動状態に移行しない場合、所定待機時間後に前記制御ユニットの電源が遮断される。
【0013】
エラー発生により前記電動モータが停止した場合、制御ユニットを中核とする制御系に損傷等が生じないようにする必要がある。このことから、本発明では、エラー発生により前記電動モータが停止した場合、前記制御ユニットの電源が遮断される。
【0014】
本発明の好適な実施形態として、前記制御ユニットは、給電装置からの給電線が前記充電電力接続部に接続されたことに応答して、前記電動モータを停止状態とする。これにより、バッテリの充電中に電動モータが不測に動作する不都合が回避される。
【0015】
給電線の充電電力接続部への接続後に行われるバッテリの充電のために、充電モードが設定される必要がある。この充電モードの設定は、運転者による意識された操作を通じて行われることが好ましい。このことから、本発明の実施形態の1つでは、前記充電電力接続部に充電接続されるとともに、前記人為操作デバイスが前記第2操作の状態から前記第1操作へ操作されることで、前記充電モードが設定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】モータや走行用バッテリの配置を示す左側面図である。
【
図4】バッテリシステムの機能部を示す機能ブロック図である。
【
図5】制御系における制御の流れの一例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0018】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本発明に係る電動作業車の一例としてのトラクタについて説明する。
図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0019】
トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。カバー部材12は、機体前部に配置されている。運転部3は、カバー部材12の後方に配置されている。
【0020】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。ステアリングホイール32は、運転部3に搭乗して運転座席31に着座した運転者によって操作可能である。ステアリングホイール32の操作により左右の前車輪10は操向操作される。運転座席31の前方には、フロントパネル13が設けられており、フロントパネル13の一部がメータパネル13aとして形成されている。メータパネル13aには、運転者に種々の情報を報知する表示ユニット70が組み込まれている。運転者は、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0021】
トラクタは、走行用バッテリであるバッテリ4を備えている。カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りで、開閉揺動可能である。カバー部材12が閉状態であるとき、バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。カバー部材12の前部分における左側面には、充電用カバー12aが揺動開閉可能に設けられている。この充電用カバー12aが開放されることで、充電時に給電ケーブルが差し込まれる充電電力接続部44が露出する。
【0022】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及び電動モータ1を備えている。バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換して、電動モータ1に供給する駆動用電力を生成する。駆動用電力は、インバータ14によって生成される交流電力である。
【0023】
図2及び
図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。
図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0024】
油圧ポンプ15aは、電動モータ1からの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が無段階に変速されるように構成されている。
【0025】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0026】
図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。電動モータ1から出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0027】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、
図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0028】
〔モータ・バッテリ制御系の構成〕
図4は、バッテリ4と電動モータ1との制御に係る構成を模式的に示している。モータ・バッテリ制御系は、アクセル装置33と、キー装置34と、制御ユニット6と、インバータ14とを備えている。制御ユニット6は電動モータ1の作動を制御する。アクセル装置33は、ステアリングホイール32の近傍に備えられている。アクセル装置33の構造は図示されていないが、アクセル装置33は、揺動操作可能なレバーと、レバーの揺動操作によって操作されるポテンショメータとを備えている。アクセル装置33は制御ユニット6と接続されている。
【0029】
キー装置34も制御ユニット6に接続されている。キー装置34はフロントパネル13に設けられ、制御ユニット6に対するON操作及びOFF操作を行う。この実施形態では、キー装置34は、制御状態切替部35と、持ち運び可能な操作キー36とからなる。制御状態切替部35には、操作キー36が差し込み装着可能な差し込み部35aと、人為的に押し操作される押しボタン式のスイッチ35bとが付属している。操作キー36とスイッチ35bとは、本発明の人為操作デバイスとして機能する。この実施形態では、操作キー36が差し込み部35aに差し込み装着された状態における、スイッチ35bの押し操作が、人為操作デバイスの第1操作(ON操作)とみなされる。さらに、操作キー36が差し込み部35aに差し込み装着された状態における、さらなるスイッチ35bの押し操作が、人為操作デバイスの第2操作(OFF操作)とみなされる。人為操作デバイスの第1操作に応答して、制御状態切替部35は、制御ユニット6を動作状態(電源通電状態:ON状態)に切り替える切替信号を制御ユニット6に送る。また、人為操作デバイスの第2操作に応答して制御状態切替部35は、制御ユニット6を休止状態(電源遮断状態:OFF状態)に切り替える切替信号を制御ユニット6に送る。なお、操作キー36は、一般的な車両用のキーと同様に、当該作業車でのみ識別可能な鍵として機能するものである。
【0030】
制御ユニット6は、さらに、インバータ14と接続されており、アクセル装置33の指令に応じて、インバータ14に駆動指令を与える。インバータ14は、制御ユニット6の指令に応じて、バッテリ4から電動モータ1に供給される電力を調整して電動モータ1の出力を制御する。
【0031】
制御ユニット6は、表示制御ユニット7とも接続されている。表示制御ユニット7は、メータパネル13aに組み込まれた表示ユニット70、ランプ、ブザー等の運転者に情報を報知するデバイスを通じて、例えば、走行状態、作業状態、バッテリ情報(充電量や温度)等を視覚的あるいは聴覚的に報知する。
【0032】
バッテリ4は、充電制御部43によって、充電電力接続部44に接続された給電装置45から充電される。充電電力接続部44には給電用ソケットが設けられており、充電時には、給電用ソケットは、給電装置45からの充電ケーブルの給電用コネクタと接続される。
【0033】
バッテリ4は、例えば、リチウムイオンバッテリであり、低電圧の小型の単位電池であるバッテリセル40を多数積層した状態で構成されている。バッテリ状態を検出するバッテリ状態検出部5には、バッテリ電圧検出器51とバッテリ温度検出部52が含まれている。バッテリ電圧検出器51は、直列に接続されている複数のバッテリセル40同士の接続点の電圧をセル電圧として検出することができる。バッテリ電圧検出器51とバッテリ温度検出部52の検出信号は、制御ユニット6に送られる。
【0034】
トラクタには、バッテリ4の他に、制御ユニット6及びその他の電装品に電力を供給する電装品用バッテリ41も備えられている。電装品用バッテリ41は、電装品を駆動するために低電圧(12ボルト)の電力を供給する。電装品用バッテリ41は、DC/DCコンバータ42を介してバッテリ4から供給される電力によって充電される。DC/DCコンバータ42は、制御ユニット6によって駆動制御される。
【0035】
制御ユニット6には、本発明に特に関係する機能要素として、バッテリ管理部60、モータ制御部61、モード設定部62、始動禁止部63、始動禁止解除部64を備えている。
【0036】
制御ユニット6は、バッテリ4の充電を可能にする充電モードと電動モータ1の駆動を可能にする作業モードとに設定可能である。この2つのモードの設定は、モード設定部62によって行われる。
【0037】
始動禁止部63は、電動モータ1の始動を禁止する。始動禁止解除部64は、始動禁止部63による電動モータ1の始動禁止を解除する。例えば、電動モータ始動禁止の利用例の1つでは、バッテリ4の充電が終了後に、始動禁止部63は、電動モータ1の始動を禁止する。これにより、充電終了後において、何らかの特別な操作を行わない限り、電動モータ1が始動しないので、充電が終了したトラクタが、盗難されることが抑制される。また、他の利用例の1つでは、充電電力接続部44の給電用ソケットに給電装置45からの充電ケーブルの給電用コネクタが差し込まれることが検出されると、始動禁止部63は、電動モータ1の始動を禁止する。これにより、充電電力接続部44に充電ケーブルの給電用コネクタが差し込まれた状態では、電動モータ1は始動されない。いずれにせよ、始動禁止部63による電動モータ1の始動禁止は、運転者(管理者)による人為操作デバイスを用いた操作、例えば、第1操作への操作の確認信号を受けた始動禁止解除部64によって解除される。
【0038】
バッテリ管理部60は、セル電圧、インバータ総電圧、コンバータ入力電圧、キー装置34からの信号、等に基づいて、バッテリ4の充放電を管理する。例えば、充電電力接続部44の給電用ソケットに給電装置45からの充電ケーブルの給電用コネクタが差し込まれたことが検出されるとともに、人為操作デバイスが第2操作の状態から第1操作へ操作されたことが検出されると、モード設定部62が、制御ユニット6を充電モードに設定する。より具体的には、充電電力接続部44に充電ケーブルの給電用コネクタが差し込まれと、制御ユニット6は充電待機状態となり、この充電待機状態において、キー装置34における操作によって、制御状態切替部35が、切替信号(充電開始指令として機能する第1操作)を制御ユニット6に送ると、制御ユニット6は充電モードとなり、充電制御部43の充電プログラムが実行され、バッテリ4の充電処理が開始される。バッテリ4の充電処理が終了し、制御状態切替部35が、制御ユニット6を休止状態に切り替える切替信号(第2操作)を制御ユニット6に送ると、電源が遮断され、制御ユニット6は休止状態となる。充電中に、人為操作デバイスを用いた第1操作が行われると、制御ユニット6は充電待機状態となり、充電処理は中断される。
【0039】
この実施形態では、充電ケーブルが充電電力接続部44に差し込まれた状態で、例えば、人為操作デバイスを用いた第1操作によって、制御ユニット6は休止状態から動作状態に切り替えられ、充電開始指令が発令され、充電が開始する。その際、充電を開始させるべく人為操作デバイスを用いた第1操作が行われても、バッテリ4の充電が開始されない場合、何らかの異常が発生したと見なされる。そのような異常の発生による二次的な問題を回避するため、充電開始指令が発令されても、第1操作後の所定時間内にバッテリ4の充電が開始されない場合、制御ユニット6が休止状態に切り替えられ、制御ユニット6の電源が遮断されるとよい。なお、充電を開始させる操作として、別な操作方法あるいは別の操作デバイスが用いられてもよい。
【0040】
モータ制御部61は、電動モータ1の駆動を制御する。具体的には、アクセル装置33からの信号に基づいて、電動モータ1を駆動するための駆動信号を生成し、インバータ14に与える。
【0041】
このトラクタに搭載されている、制御ユニット6を含む制御系では、バッテリ充電や電動モータ制御に関する種々の制御処理が、実行可能である。そのような制御処理を以下に列挙する。
(1)バッテリ4の充電が終了した時に、人為操作デバイスによる第2操作状態(OFF状態)が維持されていれば、制御ユニット6の電源が遮断される。
(2)バッテリ4の充電が終了した時に、人為操作デバイスを用いた第1操作状態(ON状態)が維持されていれば、所定時間の経過後に制御ユニット6の電源が遮断(OFF状態)される。
(3)走行制御が可能となる作業モードにおいて、モータ始動指令が発令されても、電動モータ1が始動状態に移行しない場合、所定待機時間後(例えば5秒後)に制御ユニット6の電源が遮断される。
(4)エラー発生により前記電動モータが停止した場合、制御ユニット6を中核とする制御系に影響が及ばないように、制御ユニット6の電源が遮断される。
(5)給電装置45からの給電線が充電電力接続部44に接続されたことに応答して、始動禁止だけでなく、電動モータ1が動作状態であれば、停止状態となる。また、電動モータ1の始動禁止と電動モータ1の停止状態とを同等に扱うことも可能である。
(6)バッテリ電圧の低下やバッテリ温度の上昇などバッテリ状態が悪化した場合、電動モータ1の出力を前設定された制限出力値に制限する。
【0042】
次に、この制御ユニット6における制御の流れの一例が、
図5に示されたチャート図を用いて説明される。このチャート図では、制御ユニット6は、電源が遮断される休止状態と、電源が接続された動作状態とに区分けされている。さらに、動作状態は、トラクタが走行可能となる作業モードとバッテリ4の充電が可能となる充電モードとに区分けられる。
【0043】
休止状態で駐車しているトラクタは、キー装置34に対するON操作により、動作状態に移行する(#a)。キー装置34に対するON操作は、制御ユニット6による制御のトリガーとなり、各種機能の初期処理が実行される(#b)。初期処理が終了すると、充電接続が行われていない状態(充電接続なし)か、あるいは充電接続が行われている状態(充電接続有り)であるか、判定される。
【0044】
充電接続なしの場合(#c1)、トラクタは作業モードとなって待機する。モータ始動指令が発令されると(#d)、モータ始動状態であるか、あるいはモータ非始動状態であるかチェックされ、モータ始動状態であれば(#d1)、トラクタは、走行状態(一時的な停車を含む)となる(#e)。トラクタの走行状態において、キー装置34に対するOFF操作及び充電接続が検出されると、駐車処理(停車処理)(#f)が行われる。駐車処理が完了する(#g)と、制御ユニット6への電源が遮断され、休止状態となり、トラクタは駐車状態となる。モータ始動指令が発令されたにもかかわらず(#d)、所定時間経過してもモータ始動状態にならない場合(#d2)、駐車処理(停車処理)(#f)に移行して、休止状態となる。
【0045】
初期処理(#b)の終了後、充電電力接続部44に給電装置45からの充電ケーブルが接続されると、充電待機状態となる(#h)。充電待機状態において、キー装置34がOFF操作状態からON操作されると、充電開始指令が発令され(#i1)、充電モードになる。つまり、充電電力接続部44に給電装置45からの充電ケーブルが接続された後、充電モードに移行するためには、キー装置34に対するOFF操作からON操作への操作が必要となる。
【0046】
充電モードに移行すると、充電制御部43によって、バッテリ4の充電処理が行われる(#j)。充電処理中は、制御ユニット6は電源と接続状態となる。充電処理が終了すれば、始動禁止部63は電動モータ1の始動を禁止する(#l)。充電処理が終了した時点で、キー装置34に対する操作状態がOFF操作状態であれば(#m1)、制御ユニット6への電源が遮断され、休止状態となり、トラクタは駐車状態となる。充電処理が終了した時点で、キー装置34に対する操作状態がON操作状態であれば(#m2)、所定時間経過後(例えば1分後)に(#m3)、キー装置34の操作状態が強制的にOFF操作状態となる(#m4)。これにより、制御ユニット6への電源が遮断され、制御ユニット6は休止状態となり、トラクタは駐車状態となる。
【0047】
充電開始指令が出されたにもかかわらず、充電が開始されていなければ(#k)、所定時間経過後に(#n)、制御ユニット6への電源が遮断され、制御ユニット6は休止状態となり、トラクタは駐車状態となる。
【0048】
充電待機状態において、キー装置34がOFF操作状態で、充電ケーブルが接続されない充電接続なしの状態が所定時間(例えば5秒)続くと(#i2)、充電モードには移行せず、制御ユニット6への電源が遮断され、休止状態となり、トラクタは駐車状態となる。
【0049】
なお、充電電力接続部44に給電装置45からの充電ケーブルが接続された時点で、電動モータ1が駆動状態であれば、制御ユニット6は、電動モータ1を停止状態(非駆動状態)にするが、その際、始動禁止部63も機能して、電動モータ1の始動も禁止してもよい。もちろん、電動モータ1の停止状態(非駆動状態)への移行、及び電動モータ1の始動禁止を、共通して始動禁止部63が行ってもよい。電動モータ1の停止および始動禁止は、電動モータ1への給電を停止することによって実現できるが、インバータ14を停止させることによって実現させてもよい。
【0050】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、キー装置34の人為操作デバイスが差し込み部35aに差し込み装着可能操作キー36とスイッチ35bとから構成されたが、この構成に代えて、人為操作デバイスが無線通信によってON操作やOFF操作を行うものであってもよい。キー装置34の構成は自在である。
【0051】
(2)
図4で示された機能ブロック図の各機能ブロックは、複数に分割されてもよいし、複数の機能ブロックが統合されてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、トラクタに限らず、田植機、コンバイン、建設機械等、種々の電動作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 :電動モータ
2 :機体フレーム
3 :運転部
4 :バッテリ
5 :バッテリ状態検出部
6 :制御ユニット
7 :表示制御ユニット
10 :前車輪
11 :後車輪
12 :カバー部材
13 :フロントパネル
13a :メータパネル
14 :インバータ
15 :静油圧式無段変速機
15a :油圧ポンプ
15b :油圧モータ
16 :トランスミッション
17 :ミッドPTO軸
18 :リヤPTO軸
19 :草刈装置
30 :保護フレーム
31 :運転座席
32 :ステアリングホイール
33 :アクセル装置
34 :キー装置
35 :制御状態切替部
35a :込み部
35b :スイッチ
36 :操作キー
40 :バッテリセル
41 :電装品用バッテリ
42 :DC/DCコンバータ
43 :充電制御部
44 :充電電力接続部
45 :給電装置
51 :バッテリ電圧検出器
52 :バッテリ温度検出部
60 :バッテリ管理部
61 :モータ制御部
62 :モード設定部
63 :始動禁止部
64 :始動禁止解除部
70 :表示ユニット