(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027810
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】光学表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240222BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240222BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240222BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240222BHJP
G02B 23/02 20060101ALN20240222BHJP
G02B 23/10 20060101ALN20240222BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/02
G02B23/02
G02B23/10
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130935
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】太田 人嗣
(72)【発明者】
【氏名】濱出 唯芽
(72)【発明者】
【氏名】井出 光隆
【テーマコード(参考)】
2H039
2H052
2H199
3K107
【Fターム(参考)】
2H039AA05
2H039AB04
2H039AB22
2H039AC09
2H052AF22
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA68
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC41
3K107EE21
(57)【要約】
【課題】外景光の明るさ低下を抑制できる光学表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の光学表示装置は、画像光を射出する画像表示素子と、画像表示素子から射出された画像光を偏向する偏向部材と、対物レンズおよび接眼レンズを含むレンズ群を収容する鏡筒を有する光学機器と、光学機器の鏡筒に設けられ、レンズ群の光軸に交差する方向へ少なくとも偏向部材を移動させた状態に保持する移動機構と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を射出する画像表示素子と、
前記画像表示素子から射出された前記画像光を偏向する偏向部材と、
対物レンズおよび接眼レンズを含むレンズ群を収容する鏡筒を有する光学機器と、
前記光学機器の前記鏡筒に設けられ、前記レンズ群の光軸に交差する方向に少なくとも前記偏向部材を移動させる移動機構と、を備える、
ことを特徴とする光学表示装置。
【請求項2】
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に交差し、前記鏡筒の外周面に直交する回転軸の周りに前記第1筐体部が回転することで、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
【請求項3】
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記第1筐体部に設けられた第1磁石と、前記鏡筒に設けられた第2磁石と、前記鏡筒における前記第2磁石と異なる位置に設けられる第3磁石と、を含み、
前記第1磁石と前記第2磁石とが吸着することで前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なった状態に前記第1筐体部と前記鏡筒とを固定する第1位置と、
前記第1磁石と前記第3磁石とが吸着することで前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない状態に前記第1筐体部と前記鏡筒とを固定する第2位置と、の間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
【請求項4】
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に沿う回転軸の周りに前記第1筐体部が回転することで、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
【請求項5】
前記画像表示素子からの前記画像光が入射する光入射部と、前記光入射部から入射した前記画像光を全反射により伝播させる導光部と、前記導光部を伝搬し前記偏向部材で偏向された前記画像光を射出する光射出部と、を有する導光部材をさらに備え、
前記偏向部材は、前記導光部材に設けられ、
前記導光部材は、前記第1筐体部に保持されている、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【請求項6】
前記画像表示素子からの前記画像光が入射する光入射部と、前記光入射部から入射した前記画像光を全反射により伝播させる導光部と、前記導光部を伝搬し前記偏向部材で偏向された前記画像光を射出する光射出部と、を有し、前記偏向部材が設けられた導光部材と、
前記移動機構を介して前記鏡筒に接続され、前記導光部材を保持する保持部材と、
前記画像表示素子を収容する第2筐体部と、
前記第2筐体部を前記鏡筒に固定する固定部と、をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に交差し、前記鏡筒の外周面の接線に沿う回転軸の周りに前記保持部材が回転することで、前記導光部材の前記光入射部と前記画像表示素子とが対向し、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記導光部材の前記光入射部と前記画像表示素子とが対向せず、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
【請求項7】
前記第1位置において、前記導光部材の前記光入射部と前記第2筐体部との位置を規定する位置決め部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の光学表示装置。
【請求項8】
前記位置決め部材は、前記第2筐体部に設けられた第1磁石と、前記第1磁石と異なる極性を有し前記導光部材に設けられた第2磁石と、を含み、
前記位置決め部材は、前記偏向部材が前記第1位置に位置した場合に、前記第1磁石と前記第2磁石とが吸着する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光学表示装置。
【請求項9】
前記第1磁石と前記第2磁石との吸着面は、前記レンズ群の前記光軸と直交する、
ことを特徴とする請求項8に記載の光学表示装置。
【請求項10】
前記偏向部材は、前記対物レンズの光入射側に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【請求項11】
前記偏向部材は、前記接眼レンズの光射出側に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ディスプレイから射出された光を対物レンズと接眼レンズとの間に設けられた半透過反射性を有するビームスプリッターで反射させることで使用者の眼に導くようにする光学装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光学装置ではビームスプリッターを取り外しすることができず、ディスプレイで映像を表示しない場合であっても外景からの光はビームスプリッターを透過する。このため、外景光の明るさが常に低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様によれば、画像光を射出する画像表示素子と、前記画像表示素子から射出された前記画像光を偏向する偏向部材と、対物レンズおよび接眼レンズを含むレンズ群を収容する鏡筒を有する光学機器と、前記光学機器の前記鏡筒に設けられ、前記レンズ群の光軸に交差する方向に少なくとも前記偏向部材を移動させる移動機構と、を備える、光学表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の光学表示装置の概略構成を示す図である。
【
図4】第2実施形態の光学表示装置の断面構成を示す図である。
【
図5】位置決め部材の要部構成を示す斜視図である。
【
図6】第3実施形態の光学表示装置の正面図である。
【
図7】第4実施形態の光学表示装置の要部構成を示す斜視図である。
【
図9】変形例の光学表示装置の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0008】
図1は本実施形態の光学表示装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように本実施形態の光学表示装置100は、双眼鏡(光学機器)2と、光学表示ユニット3と、を備えている。双眼鏡2は、左右一対の鏡筒20R,20Lと、各鏡筒20R,20Lを互いに連結する連結部21とから構成されている。各鏡筒20R,20Lは、いずれも略円筒形状を有している。鏡筒20Rの内部には右眼用レンズ群22Rが収容され、鏡筒20Lの内部には左眼用レンズ群22Lが収容されている。右眼用レンズ群22Rおよび左眼用レンズ群22Lは双眼鏡光学系を構成しており、各々の光軸PR,PLは互いに平行である。
【0009】
以下の説明では、必要に応じてXYZ座標系を用いて光学表示装置100の各部材の配置を説明する。本実施形態において、X軸に沿う方向は接眼レンズを覗く双眼鏡2の使用者Mから視た左右方向に対応し、Y軸に沿う方向は使用者Mから視た前後方向に対応し、Z軸に沿う方向はX軸およびY軸に直交し、使用者Mから視た上下方向に対応する。以下の説明においては、X軸方向と平行な方向を左右方向Xと呼び、Y軸方向と平行な方向を前後方向Yと呼び、Z軸方向と平行な方向を上下方向Zと呼ぶ。また、X軸方向のうち+X側を「左側」と呼び、Y軸方向のうち-X側を「右側」と呼ぶ。また、Y軸方向のうち+Y側を「前側」と呼び、Y軸方向のうち-Y側を「後側」と呼ぶ。また、Z軸方向のうち+Z側を「上側」と呼び、Z軸方向のうち-Z側を「下側」と呼ぶ。
【0010】
右眼用レンズ群22Rは、対物レンズ23R、接眼レンズ24Rおよびプリズムを含む。左眼用レンズ群22Lは右眼用レンズ群22Rと同様の構成を有する。左眼用レンズ群22Lは、対物レンズ23L、接眼レンズ24Lおよびプリズムを含む。
【0011】
対物レンズ23R,23Lおよび接眼レンズ24R,24Lは、いずれも複数枚のレンズで構成されてもよいし、1枚のレンズで構成されてもよい。
本実施形態の場合、プリズムは、例えば一対のダハプリズムで構成される。対物レンズ23Rおよび接眼レンズ24Rの間および対物レンズ23Lおよび接眼レンズ24Lの光路はプリズムによってそれぞれ折り曲げられるが、対物レンズ23Rおよび接眼レンズ24Rの光軸PRおよび対物レンズ23Lおよび接眼レンズ24Lの光軸PLは直線状とされている。本実施形態の双眼鏡2はいわゆるダハプリズムタイプとなっている。
【0012】
本実施形態において、光学表示ユニット3は双眼鏡2の鏡筒20Rの光入射側の端部に取り付けられている。光学表示ユニット3の少なくとも一部は双眼鏡2の鏡筒20Rに対して移動可能に取り付けられている。光学表示ユニット3は、双眼鏡2により観察される外景の観察像に所望の画像光を重ね合わせて表示することができる。
【0013】
図2は光学表示装置100の断面構成を示す図である。
図2に示すように、光学表示ユニット3は、画像光GLを射出する画像表示部101と、画像表示部101から射出された画像光GLを導光させる導光部材102と、導光部材102内を伝搬する画像光GLを偏向することで導光部材102の外部に取り出す偏向部材103と、移動機構104と、第1筐体部105と、を備える。
【0014】
第1筐体部105は、画像表示部101、導光部材102および偏向部材103を保持する筐体である。第1筐体部105は、断面視において、略L字状の外形を有している。第1筐体部105は、画像表示部101を収容する第1収容部1051と、導光部材102および偏向部材103を収容する第2収容部1052と、を含む。第1収容部1051は前後方向Yに延び、第2収容部1052は第1収容部1051に接続され、上下方向Zに延びる。
【0015】
第1筐体部105は、鏡筒20Rの光入射側における上側(+Z側)に移動機構104を介して第1収容部1051が支持されている。第1筐体部105は、移動機構104によって、後述のように鏡筒20Rの外周面201に回転可能に支持されている。移動機構104は第1筐体部105を回転可能に支持する回転軸104aと、回転軸104aを支持するベース部104bとを有する。
【0016】
第1筐体部105の第2収容部1052には、外景の光を偏向部材103に入射させる第1開口1052aと、第1開口1052aから入射し偏向部材103を透過した外景光OLおよび偏向部材103で偏向された画像光GLを外部に射出する第2開口1052bと、が設けられている。
【0017】
画像表示部101は、画像表示素子1010と、投射光学系1011と、を有する。画像表示素子1010は、例えばトップエミッション型の有機ELパネルで構成されている。これにより、画像表示素子1010は、フルカラーの画像光GLを射出することができる。投射光学系1011は、例えば凸レンズで構成され、画像表示素子1010から射出された画像光GLを平行化して後述の導光部材102に入射させる。
【0018】
導光部材102は板状の導光部1020と、導光部1020の長さ方向の一端側に設けられた光入射部1021と、導光部1020の長さ方向の他端側に設けられた光射出部1022と、を備えている。本実施形態において、導光部1020、光入射部1021および光射出部1022は例えば、ガラスやプラスチックなどの透光性部材で一体に構成されている。
【0019】
導光部1020は、画像光GLを全反射により伝播させる。導光部1020は、互いに対向する第1面1020aおよび第2面1020bを有する。
【0020】
光入射部1021は、画像表示部101からの画像光GLを導光部材102内に入射させる。光入射部1021は、画像光GLが入射する入射面1021aと、入射面1021aから入射した画像光GLの進行方向を偏向させる偏向部材1021bと、を有する。入射面1021aは導光部1020の第1面1020aの一部で構成される。偏向部材1021bは、例えば、回折素子、ホログラムやミラー等の光学素子で構成され、画像光GLの光路を所定方向に回折、つまり、画像光GLの光路を偏向させる。偏向部材1021bで偏向された画像光GLは、第1面1020aおよび第2面1020b間で全反射されることで導光部材102の内部を伝搬する。
【0021】
光射出部1022は、導光部1020内を全反射により伝播する画像光GLを反射させて導光部材102の外部に取り出す。光射出部1022は画像光GLを射出する射出面1022aを有する。射出面1022aは導光部1020の第1面1020aの一部で構成される。
【0022】
本実施形態において、射出側の偏向部材103は導光部1020の第2面1020bのうちの射出面1022aに対向する位置に設けられる。偏向部材103は、例えば、反射型体積ホログラムや回折素子で構成され、画像光GLの光路を所定方向に回折、つまり、画像光GLの光路を偏向させつつ、偏向部材103は光透過性を有する。
【0023】
本実施形態の移動機構104は、第1筐体部105を鏡筒20Rの外周面201に対して回転可能に支持する。具体的に移動機構104は、回転軸104aの周りに第1筐体部105を回転可能に支持する。回転軸104aは、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差し、鏡筒20Rの外周面201に直交する上下方向Zに沿う軸である。つまり、回転軸104aはZ軸と平行な軸であり、第1筐体部105はXY平面と平行な面に沿って回転する。
なお、移動機構104は、モータ等の駆動装置を用いて第1筐体部105を回転軸104aの周りに回転させる構成を採用しても良いし、双眼鏡2の使用者による手動操作によって第1筐体部105を回転軸104aの周りに回転させる構成を採用してもよい。
【0024】
第1筐体部105に保持された導光部材102は、移動機構104によって、双眼鏡2の鏡筒20Rの光入射側において、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動する。本実施形態において、偏向部材103は導光部材102とともに、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する左右方向Xに移動可能である。
【0025】
図3は移動機構104の動作説明図である。
図3は光学表示装置100を上側(+Z)から視た図である。
図3に示すように、移動機構104は、第1筐体部105が回転軸104aの周りに回転することで、第1筐体部105に収容された導光部材102および導光部材102に設けられた偏向部材103の位置を変更する。これにより、移動機構104は、偏向部材103の位置を第1位置P1と第2位置P2との間で切り替える。
第1位置P1において、偏向部材103と右眼用レンズ群22Rの光軸PRとが直線上に並んで重なる。画像表示部101は偏向部材103の位置が第1位置P1である場合に、画像表示素子1010から画像光GLを射出する。なお、移動機構104に不図示のラッチ構造を設け、第1位置P1および第2位置P2を切り替えるようにしてもよい。このようなラッチ機構を設けることで、偏向部材103が第1位置P1または第2位置P2の間を不用意に移動してしまうことが抑制されるので、光学表示装置200の使用時における操作性を向上できる。
【0026】
図2に示したように、本実施形態の光学表示装置100は、第1位置P1に位置する偏向部材103が右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に配置されるため、偏向部材103で偏向し導光部材102の光射出部1022(射出面1022a)から射出した画像光GLを右眼用レンズ群22Rに効率良く入射させることができる。
【0027】
本実施形態の光学表示装置100において、偏向部材103が第1位置P1に位置する場合に、第1筐体部105は、光軸PR方向に平面視して鏡筒20Rの全体を覆う形状を有している。このため、鏡筒20Rが導光部材102の背面側に露出しないため、光学表示装置100の外観の見栄えの低下を抑制することができる。
【0028】
本実施形態において、偏向部材103および導光部材102は光透過性を有する。このため、外景光OLは偏向部材103および導光部材102を通過することができる。本実施形態の光学表示装置100では、偏向部材103が第1位置P1に位置する場合においても、外景光OLのシースルー視が可能であり、使用者は外景光OLに画像光GLを重ねた像を視認することができる。
【0029】
一方、第2位置P2は、右眼用レンズ群22Rの光軸PRと偏向部材103とが重ならない位置である。第2位置P2は、上側(+Z)から視て、第1位置P1に対して回転軸104aの時計回りに例えば90°異なった位置である。なお、第2位置P2は、光軸PRと偏向部材103とが重ならない位置、つまり、偏向部材103で偏向された画像光GLが右眼用レンズ群22Rに入射できない位置であればよく、第1位置P1に対する回転角度は90°に限られず、回転軸104aの周りに反時計回りに回転した位置でもよい。
【0030】
本実施形態の光学表示装置100は、第2位置P2に切り替わることで、第1位置P1に対して時計回りに90°回転した位置に偏向部材103が移動するため、偏向部材103が右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に位置しなくなる。このため、導光部材102や偏向部材103を経由することなく対物レンズ23Rに直接入射した明るい外景光OLを双眼鏡2の使用者が視認することができる。
【0031】
ここで、光学表示ユニット3において、画像光GLを表示させない状態で外景のみを視認する場合がある。このように外景のみを視認する場合において、対物レンズ23Rの光入射側に導光部材102が設けられていると、導光部材102を透過する分だけ双眼鏡2の使用者の眼に視認される外景の明るさが低下してしまう。
【0032】
これに対して本実施形態の光学表示装置100では、移動機構104によって偏向部材103の位置を第2位置P2に切り替えることで、導光部材102を経由することなく対物レンズ23Rに直接入射した外景光OLを使用者が視認することができる。よって、双眼鏡2の使用者は明るい外景光OLを視認することができる。
【0033】
以上のように本実施形態の光学表示装置100は、画像光GLを射出する画像表示素子1010と、画像表示素子1010から射出された画像光GLを偏向する偏向部材103と、対物レンズ23Rと接眼レンズ24Rとを含む右眼用レンズ群22Rを収容する鏡筒20Rと対物レンズ23Lと接眼レンズ24Lとを含む左眼用レンズ群22Lを収容する鏡筒20Lとを有する双眼鏡2と、双眼鏡2の鏡筒20Rに設けられ、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に少なくとも偏向部材103を移動させる移動機構104と、を備える。
【0034】
本実施形態の光学表示装置100によれば、移動機構104によって偏向部材103を右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動することで、双眼鏡2の使用者の眼EYに画像光GLを視認させる状態と、双眼鏡2の使用者の眼EYに明るい外景光OLを視認させる状態とを容易に切り替えることができる。よって、双眼鏡2における外景の明るさ低下を抑制するとともに、外景に画像光GLを重ね合わせた光を視認させる付加価値の高い表示装置が提供される。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係る光学表示装置の構成を説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは移動機構の構成であり、それ以外の構成は共通である。このため、以下、第1実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0036】
図4は本実施形態の光学表示装置200の断面構成を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の光学表示装置200における光学表示ユニット203は、画像表示部101と、導光部材102と、偏向部材103と、移動機構204と、保持部材205と、第2筐体部206と、位置決め部材207と、を備える。
【0037】
保持部材205は、偏向部材103を保持する部材である。第1筐体部105は上下方向Zに延び、上側(+Z)の端部が移動機構204を介して鏡筒20Rの光入射側における上側(+Z側)に支持されている。移動機構204は、保持部材205を介して導光部材102に設けられた偏向部材103を回転可能に支持する回転軸204aと、回転軸204aを支持するベース部204bとを有する。
【0038】
本実施形態の移動機構204は、保持部材205を介して導光部材102および導光部材102に設けられた偏向部材103を鏡筒20Rの外周面201に対して回転可能に支持する。具体的に移動機構204は、回転軸204aの周りに保持部材205を介して導光部材102を回転可能に支持する。回転軸204aは、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差し、鏡筒20Rの外周面201の接線に沿う軸である。本実施形態の場合、回転軸204aは左右方向Xと平行な軸であり、保持部材205はYZ面と平行な面に沿って回転軸204a周りに回転する。
なお、移動機構204は、モータ等の駆動装置を用いて保持部材205を回転軸204aの周りに回転させる構成を採用しても良いし、双眼鏡2の使用者による手動操作によって保持部材205を回転軸204aの周りに回転させる構成を採用してもよい。
【0039】
保持部材205に保持された導光部材102は、移動機構204によって、双眼鏡2の鏡筒20Rの光入射側において、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動する。具体的に保持部材205は、回転軸204aの周りに片持ち状態で回転することで、下側(-Z)の端部を上下方向Zに移動可能とされている。本実施形態の移動機構204は、偏向部材103は導光部材102とともに、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する上下方向Zに移動可能である。
【0040】
第2筐体部206は、画像表示部101を内部に収容している。第2筐体部206は、例えば、ねじ等の固定部208を介して鏡筒20Rの光入射側における下側(-Z側)に取り付けられている。第2筐体部206は、投射光学系1011から投射された画像光GLを射出させるための開口206aが設けられている。
【0041】
移動機構204は、保持部材205が回転軸204aの周りに回転することで、保持部材205に保持された導光部材102および導光部材102に設けられた偏向部材103の位置を変更する。これにより、移動機構204は、偏向部材103の位置を第1位置P1と第2位置P2との間で切り替える。
【0042】
本実施形態において、第1位置P1は、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010とが対向し、右眼用レンズ群22Rの光軸PRと偏向部材103とが重なる位置である。第2位置P2は、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010とが対向せず、右眼用レンズ群22Rの光軸PRと偏向部材103とが重ならない位置である。なお、移動機構204に不図示のラッチ構造を設けることで、保持部材205が第1位置P1または第2位置P2の間を不用意に移動することを抑制して光学表示装置200の操作性を向上させてもよい。
【0043】
本実施形態の場合、第2位置P2は、左側(+X)から視て、第1位置P1に対して回転軸204aの時計回りに例えば90°異なった位置である。
本実施形態の光学表示装置200は、第2位置P2に切り替わることで、第1位置P1に対して時計回りに90°回転した位置に偏向部材103が移動するため、偏向部材103が右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に位置しなくなる。このため、導光部材102や偏向部材103を経由することなく対物レンズ23Rに直接入射した明るい外景光OLを双眼鏡2の使用者が視認することができる。
【0044】
位置決め部材207は、第1位置P1において、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010との位置を規定する。位置決め部材207によって光入射部1021と画像表示素子1010とが位置決めされることで、画像表示素子1010から射出された画像光GLが光入射部1021を介して導光部材102内に効率良く入射される。
【0045】
図5は位置決め部材207の要部構成を示す斜視図である。
図5に示すように、位置決め部材207は、第1磁石2071と、第2磁石2072と、を含む。第1磁石2071は第2筐体部206に設けられる。なお、
図5では図を見易くするため、第1磁石2071と第2磁石2072とが吸着していない状態を示している。
【0046】
第1磁石2071は、第2筐体部206の開口206aの左右方向Xの両側を挟むように設けられている。第1磁石2071は、開口206aの左側(+X側)に設けられ上側(+Z側)から下側(-Z側)に向かってN極およびS極が並んだ第1部位2071aと、開口206aの右側(-X側)に設けられ上側(+Z側)から下側(-Z側)に向かってS極およびN極が並んだ第2部位2071bと、で構成される。
【0047】
第2磁石2072は、導光部材102の第1面1020aに設けられる。第2磁石2072は、第2筐体部206に設けられ第1磁石2071とは異なる極性を有している。第2磁石2072は、第1磁石2071の第1部位2071aに対応する第3部位2072aと、第1磁石2071の第2部位2071bに対応する第4部位2072bと、で構成される。第3部位2072aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向かってS極およびN極が並んでおり、第1部位2071aと反対の極性を有する。第4部位2072bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向かってN極およびS極が並んでおり、第2部位2071bと反対の極性を有する。
【0048】
第1位置P1において、位置決め部材207は、第1磁石2071と第2磁石2072とが吸着する。第1磁石2071および第2磁石2072の吸着面、つまり、第1磁石2071および第2磁石2072において互いに対向する面71a,72aはXZ面と平行である。
【0049】
第1磁石2071および第2磁石2072の吸着面である面71a,72aに沿うXZ面は、Y軸と平行である右眼用レンズ群22Rの光軸PRと直交する。このため、位置決め部材207は、第1磁石2071および第2磁石2072が吸着すると、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010との前後方向Yの位置を規制することができる。
【0050】
本実施形態の位置決め部材207において、第1磁石2071および第2磁石2072はそれぞれ左右方向Xに離間して設けられため、第1磁石2071および第2磁石2072が吸着すると、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010との左右方向Xの位置を2箇所で規制することができる。このため、位置決め部材207は、光入射部1021および画像表示素子1010の左右方向Xの位置をより高精度で規制することができる。
【0051】
また、第1磁石2071および第2磁石2072はそれぞれ上下方向Zに2つの極性が並んでいる。このため、第1磁石2071および第2磁石2072が吸着すると、導光部材102の光入射部1021と画像表示素子1010との上下方向Zの位置を2箇所で規制することができる。よって、光入射部1021および画像表示素子1010の上下方向Zの位置精度を簡便な構成で高めることができる。
【0052】
本実施形態の光学表示装置200によれば、第1位置P1において、偏向部材103が右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に位置するため、偏向部材103で偏向し導光部材102の光射出部1022(射出面1022a)から射出した画像光GLを対物レンズ23Rから右眼用レンズ群22Rに効率良く入射させることができる。
【0053】
このように本実施形態の光学表示装置200によれば、移動機構204によって偏向部材103を右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動することで、双眼鏡2の使用者の眼EYに画像光GLを視認させる状態と、双眼鏡2の使用者の眼EYに明るい外景光OLを視認させる状態とを容易に切り替えることができる。よって、双眼鏡2における外景の明るさ低下を抑制するとともに、外景に画像光GLを重ね合わせた光を視認させる付加価値の高い表示装置が提供される。
【0054】
なお、本実施形態の移動機構204は、回転軸204aが鏡筒20Rの外周面201の上側(+Z)に設けられる場合を例に挙げたが、回転軸204aを設ける位置はこれに限られず、鏡筒20Rの外周面201における右側(-X)、左側(+X)、下側(-Z)に回転軸204aが設けられてもよい。
【0055】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態に係る光学表示装置の構成を説明する。本実施形態と第2実施形態との違いは移動機構の構成であり、それ以外の構成は共通である。このため、以下、第2実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0056】
図6は本実施形態の光学表示装置300の正面図である。
図6は光学表示装置300を前後方向Yの前側(+Y)から後側(-Y)に向かって視た図である。
図6に示すように、本実施形態の光学表示装置300における移動機構304は、回転軸304aの周りに保持部材205を回転可能に支持する。本実施形態の保持部材205は、導光部材102の外側面102aを枠状に保持している。
回転軸304aは、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに沿う軸である。本実施形態の場合、回転軸304aは前後方向Yと平行な軸であり、保持部材205はXZ面と平行な面に沿って回転軸304aの周りに回転する。
【0057】
移動機構304は、保持部材205が回転軸304aの周りに回転することで、第1位置P1と第2位置P2との間で偏向部材103の位置を切り替える。
本実施形態の場合、第1位置P1と第2位置P2とは、前側(+Y)から視て、回転軸204aに対する互いの位置が例えば120°異なっている。
本実施形態の光学表示装置300は、第2位置P2に切り替わることで、第1位置P1に対して例えば反時計回りに120°回転した位置に偏向部材103が移動するため、偏向部材103が右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に位置しなくなる。このため、導光部材102や偏向部材103を経由することなく対物レンズ23Rに直接入射した明るい外景光OLを双眼鏡2の使用者が視認することができる。
【0058】
なお、第2位置P2は、光軸PRと偏向部材103とが重ならない位置、つまり、偏向部材103で偏向された画像光GLが右眼用レンズ群22Rに入射できない位置であればよく、第1位置P1に対する回転角度は120°に限られず、回転軸104aに対して時計回りに回転した位置でもよい。
【0059】
このように本実施形態の光学表示装置300によれば、移動機構304によって偏向部材103を右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動することで、双眼鏡2の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡2の使用者の眼に明るい外景光を視認させる状態とを容易に切り替えることができる。よって、双眼鏡2における外景の明るさ低下を抑制するとともに、外景光に画像光を重ね合わせた光を視認させる付加価値の高い表示装置が提供される。
【0060】
なお、本実施形態の移動機構304は、回転軸304aが鏡筒20Rの上側(+Z)に設けられる場合を例に挙げたが、回転軸304aを設ける位置はこれに限られず、鏡筒20Rにおける右側(-X)、左側(+X)、下側(-Z)に回転軸304aが設けられてもよい。
【0061】
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4実施形態に係る光学表示装置の構成を説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは移動機構の構成であり、それ以外の構成は共通である。このため、以下、第1実施形態と共通の構成あるいは部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0062】
図7は本実施形態の光学表示装置400の要部構成を示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態の光学表示装置400における光学表示ユニット403の移動機構404は、複数の磁石4040と、基板4050と、を有する。
複数の磁石4040は、第1筐体部105に設けられた第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048と、鏡筒20Rの外周面201に設けられた第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047と、を含む。
【0063】
本実施形態の場合、第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048は、第1筐体部105の第1収容部1051の下面1051aにおいて環状に配置されている。
第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048は、周方向において互いの位置が異なっており、各々の大きさは等しい。第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048はそれぞれ一対の磁石片で構成され、各々の磁石片は第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048が並ぶ仮想円の中心を挟んで対向するように配置されている。
【0064】
例えば、第1磁石4041および第4磁石4044の極性はN極であり、第5磁石4045および第8磁石4048の極性はS極である。
【0065】
本実施形態の場合、第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047は、鏡筒20Rの外周面201に設けられた基板4050上に環状に配置されている。なお、基板4050の表面は平面であるため、第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047は外周面201に安定して設けられる。
【0066】
第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047は、周方向において互いの位置が異なっており、各々の大きさは等しい。第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047はそれぞれ一対の磁石片で構成され、各々の磁石片は第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047が並ぶ仮想円の中心を挟んで対向するように配置されている。
【0067】
例えば、第2磁石4042および第3磁石4043の極性はS極であり、第6磁石4046および第7磁石4047の極性はN極である。
【0068】
本実施形態において、第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048が並ぶ仮想円の中心と、第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047が並ぶ仮想円の中心とは一致している。第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048により構成される環状体の外形と、第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047により構成される環状体の外形とは等しい。
【0069】
移動機構404は、第1筐体部105に設けられた各磁石と、鏡筒20Rの外周面201に設けられた各磁石とが吸着することで、第1筐体部105を鏡筒20Rに固定可能である。移動機構104は、第1筐体部105に設けられた各磁石と、鏡筒20Rの外周面201に設けられた各磁石とを吸着させる際の磁石同士の組み合わせを変更することで、第1位置P1と第2位置P2との間で偏向部材103の位置を切り替え可能である。
【0070】
本実施形態において、第1位置P1は右眼用レンズ群22Rの光軸PRと偏向部材103とが重なる位置であり、第2位置P2は右眼用レンズ群22Rの光軸PRと偏向部材103とが重ならない位置である。
【0071】
図8は移動機構404の動作説明図である。
図8に示すように、移動機構404は、第1磁石4041と第2磁石4042とが吸着することで偏向部材103を第1位置P1に位置させ、第1磁石4041と第3磁石4043とが吸着することで偏向部材103を第2位置P2に位置させる。本実施形態の移動機構404は、第1筐体部105を回転軸404aの周りに回転させることで、第1位置P1と第2位置P2とを切り替える。ここで、回転軸404aは、第1筐体部105を支持する支持軸で規定されるものではなく仮想的に規定される軸である。
回転軸404aは、第1磁石4041、第4磁石4044、第5磁石4045および第8磁石4048による環状体の中心、および、第2磁石4042、第3磁石4043、第6磁石4046および第7磁石4047による環状体の中心を通る軸である。
回転軸404aは、右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差し、第1筐体部105に設けられた各磁石と鏡筒20Rの外周面201に設けられた各磁石との吸着面に直交する上下方向Zに沿う軸である。
【0072】
本実施形態の移動機構404では、偏向部材103が第1位置P1に位置する場合に、第1磁石4041と第2磁石4042とが吸着するとともに、第4磁石4044と第3磁石4043とが吸着し、第5磁石4045と第6磁石4046とが吸着し、第8磁石4048と第7磁石4047とが吸着する。
また、移動機構404では、偏向部材103が第2位置P2に位置する場合に、第1磁石4041と第3磁石4043とが吸着するとともに、第4磁石4044と第2磁石4042とが吸着し、第5磁石4045と第7磁石4047とが吸着し、第8磁石4048と第6磁石4046とが吸着する。
【0073】
本実施形態の光学表示装置400では、第1筐体部105を上側(+Z)に持ち上げることで第1筐体部105側の磁石と鏡筒20R側の磁石との吸着を解除した後、第1筐体部105を回転軸404aの周りに回転させた後、第1筐体部105側の磁石と鏡筒20R側の磁石とを再び吸着させることで、第1位置P1と第2位置P2とを容易に切り替えることができる。
【0074】
このように本実施形態の光学表示装置400によれば、移動機構404によって偏向部材103を右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動することで、双眼鏡2の使用者の眼EYに画像光GLを視認させる状態と、双眼鏡2の使用者の眼EYに明るい外景光OLを視認させる状態とを容易に切り替えることができる。よって、双眼鏡2における外景の明るさ低下を抑制するとともに、外景に画像光GLを重ね合わせた光を視認させる付加価値の高い表示装置が提供される。
【0075】
また、本実施形態の移動機構404は複数の磁石4040で構成されるため、第1位置P1と第2位置P2との切り替えを容易に行うことができる。また、複数の磁石4040の吸着力を利用することでラッチ機構を設けることなく、偏向部材103が第1位置P1または第2位置P2の間を不用意に移動することを抑制できるため、光学表示装置400の使用時の操作性を向上することができる。また、第1筐体部105を鏡筒20Rから取り外すことで通常の双眼鏡として利用することができる。
【0076】
なお、本実施形態の移動機構404は、複数の磁石4040として、第1磁石4041、第2磁石4042、第3磁石4043、第4磁石4044、第5磁石4045、第6磁石4046、第7磁石4047および第8磁石4048を用いる場合を例に挙げたが、複数の磁石4040の数はこれに限られない。複数の磁石4040は、少なくとも第1筐体部105に設けられた第1磁石4041と鏡筒20Rの外周面201に設けられた第2磁石4042および第3磁石4043とで構成されていればよい。
【0077】
上記実施形態の光学表示装置ではいずれも画像表示部101が鏡筒20Rの光入射側に配置される場合を例に挙げたが、画像表示部101は鏡筒20Rの光射出側に配置されていてもよい。以下、画像表示部101を鏡筒20Rの光射出側に配置した構成を変形例として説明する。
【0078】
(変形例)
図9は変形例の光学表示装置1100の断面構成を示す図である。
図9は第1実施形態に係る変形例である。
図9に示すように、変形例の光学表示装置1100において、光学表示ユニット3は鏡筒20Rの光射出側の端部に取り付けられている。すなわち、第2筐体部206は接眼レンズ24Rの光射出側に移動機構104を介して取り付けられている。
【0079】
本変形例において、導光部材102の入射面1021aは導光部1020の第1面1020aの一部で構成され、射出面1022aは導光部1020の第2面1020bの一部で構成される。偏向部材103は導光部1020の第1面1020aのうちの射出面1022aに対向する位置に設けられる。つまり、本変形例の場合、偏向部材103および画像表示部101は導光部材102の同一面(第1面1020a)側に配置されている。本変形例において、偏向部材103は、移動機構104を介して導光部材102とともに接眼レンズ24Rの光射出側に右眼用レンズ群22Rの光軸PRに交差する方向に移動可能とされている。
【0080】
本変形例の光学表示装置1100によれば、画像表示部101が接眼レンズ24R側に配置された構造においても、移動機構104によって偏向部材103を右眼用レンズ群22Rの光軸PRに対して進退させることができる。このため、双眼鏡2として外景を観察する場合、移動機構104によって偏向部材103の位置を第1位置P1から第2位置P2に切り替えることで、右眼用レンズ群22Rの光軸PR上に導光部材102および偏向部材103が配置されないので、接眼レンズ24Rから射出された外景光OLを使用者の眼EYに直接入射させることができる。よって、双眼鏡2の使用者は明るい外景を視認することができる。
【0081】
また、本変形例の場合、画像表示部101が接眼レンズ24Rの光射出側に配置されるため、画像表示部101からの画像光GLが右眼用レンズ群22Rを経由することなく使用者の眼EYに直接入射する。このため、使用者はより明るく鮮明な画像光GLを視認できる。
【0082】
本変形例を第2~第4実施形態に適用してもよい。つまり、光学表示ユニットを鏡筒20Rの光射出側の端部に取り付けるようにしてもよい。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、光源装置を構成する各種構成要素の数、配置、形状および材料等の具体的な構成は、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0084】
上記第1実施形態において、位置決め部材207として磁石を用いる場合を例に挙げて説明したが、導光部材102と第2筐体部206との隙間を一定に保持するスペーサー部材を位置決め部材として用いてもよい。スペーサー部材は導光部材102および第2筐体部206の一方あるいは両方に設けられてもよい。
【0085】
上記各実施形態では、ダハプリズムタイプの双眼鏡を例に挙げて説明したが、ポロ
プリズムタイプやガリレオタイプの双眼鏡にも本発明を適用することができる。また、光学機器として双眼鏡を例に挙げて説明したが、単眼鏡、ファインダーおよび顕微鏡にも本発明を適用することができる。
【0086】
上記各実施形態では、光学表示ユニット3を双眼鏡2の右眼用の鏡筒20Rに取り付ける場合を例に挙げたが、左眼用の鏡筒20Lに取り付ける場合にも本発明は適用可能である。また、両方の鏡筒20R,20Lに光学表示ユニット3を配置するようにしてもよい。
【0087】
上記第1実施形態では、第1筐体部105内に画像表示部101および導光部材102を収容する場合を例に挙げたが、第1筐体部105が導光部材102のみを収容してもよい。この場合において、移動機構104の回転軸104aは、画像表示部101を収容する他の筐体に形成してもよい。
また、上記第4実施形態においても、第1筐体部105が導光部材102のみを収容するようにしてもよい。この場合において、移動機構404を構成する複数の磁石4040は、画像表示部101を収容する他の筐体に形成してもよい。
【0088】
上記実施形態では、画像表示素子1010として有機ELパネルを用いる場合を例に挙げたが、画像表示素子1010は有機ELパネルに限ることなく、無機ELパネル、マイクロLEDパネル等の自発光型パネルを用いてもよい。また、液晶表示パネルを用いてもよい。
【0089】
上記各実施形態では、画像表示素子1010から射出された画像光GLを偏向する偏向部材103として反射型回折素子を用いる場合を例に挙げたが、導光部材102内部に埋め込んだ複数のハーフミラーで偏向部材を構成してもよい。偏向部材を構成する複数のハーフミラーは、導光部材102のうちの光射出部1022に対応する部分に埋め込まれた
誘電体多層膜で構成される。
【0090】
上記各実施形態では、画像表示素子1010から射出した画像光GLを導光部材102の入射面1021aから入射させた後、偏向部材1021bで画像光GLの光路を偏向させて導光部材102の内部を全反射で伝搬させる場合を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。例えば、偏向部材1021bを用いることなく、画像光GLを導光部1020の第1面1020aに対して斜め方向から入射させ、第1面1020aによる光の屈折を利用して画像光GLを導光部1020内に入射させ、全反射を利用して画像光GLを導光部材102内に伝搬させてもよい。
【0091】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
画像光を射出する画像表示素子と、
前記画像表示素子から射出された前記画像光を偏向する偏向部材と、
対物レンズおよび接眼レンズを含むレンズ群を収容する鏡筒を有する光学機器と、
前記光学機器の前記鏡筒に設けられ、前記レンズ群の光軸に交差する方向に少なくとも前記偏向部材を移動させる移動機構と、を備える、
ことを特徴とする光学表示装置。
【0092】
この構成の光学表示装置によれば、双眼鏡などの光学機器の鏡筒に設けられた移動機構によって偏向部材をレンズ群の光軸に交差する方向に移動することで、双眼鏡の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡の使用者の眼に明るい外景の光を視認させる状態とを容易に切り替えることができる。よって、双眼鏡における外景の明るさ低下を抑制するとともに、外景に画像光を重ね合わせた光を視認させる付加価値の高い光学表示装置を提供できる。
【0093】
(付記2)
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に交差し、前記鏡筒の外周面に直交する回転軸の周りに前記第1筐体部が回転することで、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする付記1に記載の光学表示装置。
【0094】
この構成によれば、第1筐体部を外周面に直交する回転軸の周りに回転させることで、双眼鏡の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡の使用者の眼に明るい外景の光を視認させる状態とを容易に切り替える構成を実現できる。
【0095】
(付記3)
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記第1筐体部に設けられた第1磁石と、前記鏡筒に設けられた第2磁石と、前記鏡筒における前記第2磁石と異なる位置に設けられる第3磁石と、を含み、
前記第1磁石と前記第2磁石とが吸着することで前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なった状態に前記第1筐体部と前記鏡筒とを固定する第1位置と、
前記第1磁石と前記第3磁石とが吸着することで前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない状態に前記第1筐体部と前記鏡筒とを固定する第2位置と、の間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする付記1に記載の光学表示装置。
【0096】
この構成によれば、第1筐体部に設けられた第1磁石に対して鏡筒側の第2磁石または第3磁石を吸着させることで、双眼鏡の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡の使用者の眼に明るい外景の光を視認させる状態とを容易に切り替える構成を実現できる。また、第1筐体部を鏡筒から取り外すことで通常の双眼鏡として利用することができる。
【0097】
(付記4)
少なくとも前記偏向部材を保持するとともに前記移動機構が設けられた第1筐体部をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に沿う回転軸の周りに前記第1筐体部が回転することで、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする付記1に記載の光学表示装置。
【0098】
この構成によれば、第1筐体部を光軸に沿う回転軸の周りに回転させることで、双眼鏡の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡の使用者の眼に明るい外景の光を視認させる状態とを容易に切り替える構成を実現できる。
【0099】
(付記5)
前記画像表示素子からの前記画像光が入射する光入射部と、前記光入射部から入射した前記画像光を全反射により伝播させる導光部と、前記導光部を伝搬し前記偏向部材で偏向された前記画像光を射出する光射出部と、を有する導光部材をさらに備え、
前記偏向部材は、前記導光部材に設けられ、
前記導光部材は、前記第1筐体部に保持されている、
ことを特徴とする付記2から付記4のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【0100】
この構成によれば、全反射を利用して画像光を内部に伝播させる導光部材を備えるため、画像光をミラーで反射して伝搬させる構成に比べて装置構成の薄型化および軽量化を図ることができる。
【0101】
(付記6)
前記画像表示素子からの前記画像光が入射する光入射部と、前記光入射部から入射した前記画像光を全反射により伝播させる導光部と、前記導光部を伝搬し前記偏向部材で偏向された前記画像光を射出する光射出部と、を有し、前記偏向部材が設けられた導光部材と、
前記移動機構を介して前記鏡筒に接続され、前記導光部材を保持する保持部材と、
前記画像表示素子を収容する第2筐体部と、
前記第2筐体部を前記鏡筒に固定する固定部と、をさらに備え、
前記移動機構は、前記レンズ群の前記光軸に交差し、前記鏡筒の外周面の接線に沿う回転軸の周りに前記保持部材が回転することで、前記導光部材の前記光入射部と前記画像表示素子とが対向し、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重なる第1位置と、前記導光部材の前記光入射部と前記画像表示素子とが対向せず、前記レンズ群の前記光軸と前記偏向部材とが重ならない第2位置との間で前記偏向部材の位置を切り替える、
ことを特徴とする付記1に記載の光学表示装置。
【0102】
この構成によれば、導光部材を保持する保持部材を鏡筒の外周面の接線に沿う回転軸の周りに回転させることで、導光部材とともに偏向部材の位置を移動させることができる。これにより、双眼鏡の使用者の眼に画像光を視認させる状態と、双眼鏡の使用者の眼に明るい外景の光を視認させる状態とを容易に切り替える構成を実現できる。
【0103】
(付記7)
前記第1位置において、前記導光部材の前記光入射部と前記第2筐体部との位置を規定する位置決め部材をさらに備える、
ことを特徴とする付記6に記載の光学表示装置。
【0104】
この構成によれば、位置決め部材を備えることで、導光部材の光入射部と第2筐体部内に収容された画像表示素子とを簡便且つ精度良く位置決めすることができる。よって、画像光を導光部材の光入射部に効率良く入射させることができる。
【0105】
(付記8)
前記位置決め部材は、前記第2筐体部に設けられた第1磁石と、前記第1磁石と異なる極性を有し前記第1筐体部に設けられた第2磁石と、を含み、
前記位置決め部材は、前記偏向部材が前記第1位置に位置した場合に、前記第1磁石と前記第2磁石とが吸着する、
ことを特徴とする付記7に記載の光学表示装置。
【0106】
この構成によれば、第1磁石と第2磁石とが吸着することで、光入射部および画像表示素子の位置合わせを簡便且つ高精度に行うことができる。
【0107】
(付記9)
前記第1磁石と前記第2磁石との吸着面は、前記レンズ群の前記光軸と直交する、
ことを特徴とする付記8に記載の光学表示装置。
【0108】
この構成によれば、位置決め部材は、第1磁石および第2磁石を吸着させることで、導光部材の光入射部と画像表示素子との光軸に沿う方向の位置を規制することができる。
【0109】
(付記10)
前記偏向部材は、前記対物レンズの光入射側に配置される、
ことを特徴とする付記1から付記9のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【0110】
この構成によれば、偏向部材が対物レンズの光入射側に配置されるため、偏向部材と使用者の顔とが接触することがない。このため、偏向部材の移動前後において接眼レンズ周辺の構造が変化しないため、画像光を視認する場合に双眼鏡の使用者に与える違和感を低減できる。
【0111】
(付記11)
前記偏向部材は、前記接眼レンズの光射出側に配置される、
ことを特徴とする付記1から付記9のうちのいずれか一項に記載の光学表示装置。
【0112】
この構成によれば、偏向部材が接眼レンズの光射出側に配置されるため、画像表示素子からの画像光がレンズ群を経由することなく使用者の眼に直接入射する。このため、使用者はより明るく鮮明な画像光を視認できる。
【符号の説明】
【0113】
2…双眼鏡(光学機器)、20L,20R…鏡筒、23L,23R…対物レンズ、24L,24R…接眼レンズ、100,200,300,400,1100…光学表示装置、102…導光部材、103…偏向部材、104,204,304,404…移動機構、104a,204a,304a,404a…回転軸、105…第1筐体部、201…外周面、205…保持部材、206…第2筐体部、207…位置決め部材、208…固定部、1010…画像表示素子、1020…導光部、1021…光入射部、1022…光射出部、2071,4041…第1磁石、2072,4042…第2磁石、4043…第3磁石、EY…眼、GL…画像光、P1…第1位置、P2…第2位置、PL,PR…光軸。